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審決分類 |
審判 一部申し立て 特29条の2 D06M 審判 一部申し立て 2項進歩性 D06M |
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管理番号 | 1319151 |
異議申立番号 | 異議2016-700065 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-01-26 |
確定日 | 2016-05-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5755626号「鉱物繊維用水性バインダー」の請求項1ないし2、4ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5755626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5755626号の請求項1ないし2、4ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5755626号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成24年10月31日(優先権主張平成23年11月4日)に特許出願され、平成27年6月5日にその特許権の設定登録がされた。 その後、その特許について、特許異議申立人熊野剛により特許異議の申立てがなされ、平成28年3月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年4月27日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア 請求項1に「併用である鉱物繊維用水性バインダー(X)。」とあるのを、「併用であって、該(B1)中のアミノ基とイミノ基の合計モル数に基づくアミノ基の割合が、30モル%以上である鉱物繊維用水性バインダー(X)。」に訂正する。 イ 請求項3を削除する。 ウ 請求項4に「請求項1?3のいずれか記載の水性バインダー。」とあるのを、「請求項1?2のいずれか記載の水性バインダー。」に訂正する。 エ 請求項5に「請求項1?4のいずれか記載の水性バインダー」とあるのを、「請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダー」に訂正する。 オ 請求項9に「請求項1?4のいずれか記載の水性バインダー」とあるのを、「請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダー」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの訂正は、請求項1に係る発明に請求項3で特定する事項を加えるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記イの訂正は、請求項3に係る発明を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記ウないしオの訂正は、上記イの訂正に伴い、「他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項1?9に対し請求されたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下「本件発明1ないし9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 少なくとも2個の、カルボキシル基および/または酸無水物基を有する(共)重合体(A)、少なくとも1個の水酸基と、少なくとも1個のアミノ基および/または少なくとも1個のイミノ基とを有する化合物(B1)を含有する架橋剤(B)および水を含有してなり、(A)中のカルボキシル基および/または酸無水物基に由来するカルボキシル基のモル数に対する、(B)中の水酸基、アミノ基およびイミノ基の合計モル数の比(γ1)が0.1以上0.8未満、かつ(B)中のアミノ基およびイミノ基の合計モル数の比(γ2)が0.05?0.4であって、該(B1)が炭素数2?10のヒドロキシルアミンのうちのアミノ基を有するものとイミノ基を有するものとの併用であって、該(B1)中のアミノ基とイミノ基の合計モル数に基づくアミノ基の割合が、30モル%以上である鉱物繊維用水性バインダー(X)。 【請求項2】 (A)と(B)の合計含有量が、2?80重量%である請求項1記載の水性バインダー。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 さらに、硬化促進剤(C)を含有させてなる請求項1?2のいずれか記載の水性バインダー。 【請求項5】 請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダーを付着させた鉱物繊維積層物を加熱、成形してなる鉱物繊維積層体。 【請求項6】 水性バインダーの固形分付着量が、鉱物繊維積層物の重量に基づいて0.4?40%である請求項5記載の積層体。 【請求項7】 復元性試験における復元割合が85%以上である、請求項5または6記載の鉱物繊維積層体。 【請求項8】 断熱材、保温材または吸音材用である請求項5?7のいずれか記載の積層体。 【請求項9】 請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダーが付着した鉱物繊維積層物を加熱、成形することを特徴とする鉱物繊維積層体の製造方法。 (2)訂正請求についての特許異議申立人の意見書提出の要否 訂正請求は、上記2.のとおり、特許異議申立てがされていない請求項3において特定する事項を、全ての請求項に加えるものであるから、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要はない。 (3)取消理由の概要 請求項1ないし2、4ないし9に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 1)本件特許の請求項1?2、4?9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない。 2)本件特許の請求項1?2、4?9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3)本件特許の請求項1?2、4?9に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 記 甲1.特開2007-211161号公報 甲2.特開2008-174891号公報 甲3.特願2010-291705号(特開2012-136412号) 甲4.特開平8-73416号公報 甲5.特開2000-351754号公報 甲6.向山光昭監訳「工業有機化学(第4版)」株式会社東京化学同人、2001年2月1日、第175ページ 甲7.BASF社、Safety date sheet、2011年3月10日、Product:Diethanolamine pure sol.85%、4/93ページ 甲8.株式会社日本触媒、安全データシート、1993年1月20日、ジエタノールアミン、2/10ページ 甲1?3は、審査において引用されたものと同じである。 (29条1項) 請求項1?2、4?9に係る発明は、甲4?8の技術常識を踏まえると、甲1又は甲2発明と実質的に同一である。 (29条2項) 請求項1?2、4?9に係る発明は、甲1又は甲2発明に、甲4?8の技術常識を参酌し、容易に発明をすることができたものである。 (29条の2) 請求項1?2、4?9に係る発明は、甲4?8の技術常識を踏まえると、甲3発明と実質的に同一である。 (4)判断 訂正の認容により、請求項1?2、4?9に係る発明は、取消理由が通知されていない訂正前請求項3で特定する「(B1)中のアミノ基とイミノ基の合計モル数に基づくアミノ基の割合が、30モル%以上である」なる事項を含むものとなった。 かかる事項は、いずれの証拠にも記載されていない。 よって、請求項1?2、4?9に係る発明が、(ア)甲1又は甲2発明と実質的に同一であるとも、(イ)甲1又は甲2発明に、甲4?8の技術常識を参酌し、容易に発明をすることができたものであるとも、(ウ)甲4?8の技術常識を踏まえると、甲3発明と実質的に同一であるとも、認めることはできない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1?2、4?9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?2、4?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも2個の、カルボキシル基および/または酸無水物基を有する(共)重合体(A)、少なくとも1個の水酸基と、少なくとも1個のアミノ基および/または少なくとも1個のイミノ基とを有する化合物(B1)を含有する架橋剤(B)および水を含有してなり、(A)中のカルボキシル基および/または酸無水物基に由来するカルボキシル基のモル数に対する、(B)中の水酸基、アミノ基およびイミノ基の合計モル数の比(γ1)が0.1以上0.8未満、かつ(B)中のアミノ基およびイミノ基の合計モル数の比(γ2)が0.05?0.4であって、該(B1)が炭素数2?10のヒドロキシルアミンのうちのアミノ基を有するものとイミノ基を有するものとの併用であって、該(B1)中のアミノ基とイミノ基の合計モル数に基づくアミノ基の割合が、30モル%以上である鉱物繊維用水性バインダー(X)。 【請求項2】 (A)と(B)の合計含有量が、2?80重量%である請求項1記載の水性バインダー。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 さらに、硬化促進剤(C)を含有させてなる請求項1?2のいずれか記載の水性バインダー。 【請求項5】 請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダーを付着させた鉱物繊維積層物を加熱、成形してなる鉱物繊維積層体。 【請求項6】 水性バインダーの固形分付着量が、鉱物繊維積層物の重量に基づいて0.4?40%である請求項5記載の積層体。 【請求項7】 復元性試験における復元割合が85%以上である、請求項5または6記載の鉱物繊維積層体。 【請求項8】 断熱材、保温材または吸音材用である請求項5?7のいずれか記載の積層体。 【請求項9】 請求項1?2、4のいずれか記載の水性バインダーが付着した鉱物繊維積層物を加熱、成形することを特徴とする鉱物繊維積層体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-05-13 |
出願番号 | 特願2012-240356(P2012-240356) |
審決分類 |
P
1
652・
16-
YAA
(D06M)
P 1 652・ 121- YAA (D06M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 井上 茂夫 |
登録日 | 2015-06-05 |
登録番号 | 特許第5755626号(P5755626) |
権利者 | 三洋化成工業株式会社 |
発明の名称 | 鉱物繊維用水性バインダー |