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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1319183
異議申立番号 異議2015-700258  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-03 
確定日 2016-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5729525号発明「非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5729525号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-20〕について訂正することを認める。 特許第5729525号の請求項1?5、8?17、19?20に係る特許を維持する。 特許第5729525号の請求項6?7、18に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5729525号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?20に係る特許についての出願は、2014年3月31日(2013年4月1日 2013年8月1日 2013年8月1日 2013年8月1日 2013年8月1日 2013年8月1日 日本国)を国際出願日とし、平成27年4月17日に特許権の設定登録がなされた。

その後、特許異議申立人 鈴木敏明(以下「異議申立人」という。)より、平成27年12月3日に特許異議の申立てがなされ、平成28年3月4日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月6日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年6月16日に異議申立人より意見書の提出がなされたものである。


第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、以下のア.?オ.の訂正事項からなる。
ア. 請求項1について、「下記一般式(I)?(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」を、
「下記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」に訂正し、
「【化3】

(式中、R^(31)?R^(33)は、それぞれ独立して炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?3のアルケニル基、又は炭素数6?8のアリール基を示し、qは1?4の整数である。
qが1の場合、R^(31)は-OSO_(3)-R^(37)であってもよく、この場合、R^(37)はR^(31)と同義である。
また、qが1の場合、L^(3)は、炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数3?6のアルキニル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、-CR^(34)R^(35)C(=O)OR^(36)基、又は炭素数6?12のアリール基を示し、qが2?4の場合、L^(3)は、エーテル結合、チオエーテル結合、又は-S(=O)_(2)-結合を含んでいてもよいq価の炭化水素連結基を示す。
R^(34)及びR^(35)は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1?4のアルキル基を示し、R^(36)は炭素数1?8のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、又は炭素数3?6のアルキニル基を示す。
また、L^(3)で示されるアルキル基及びアリール基、R^(34)?R^(36)で示されるアルキル基は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)」を削除する。

イ. 請求項1に記載された一般式(I)における置換基L^(1)のうちの「炭素数1?12のアルキル基」を、「炭素数1?4のアルキル基」に訂正する。

ウ. 請求項1に記載された一般式(I)のただし書きについて、「ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状であり、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、エステル基、硫黄原子を含有する有機基、リン原子を含有する有機基、アルキルカルボニル基、及びアリールカルボニル基は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。」を、
「ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。」に訂正する。

エ. 請求項1に記載された一般式(IV)の置換基Xについて、「Xは、SiR^(44)R^(45)基、第四級オニウム、周期律表第3?4周期のアルカリ金属、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属を示し、rは1又は2の整数である。
ただし、Xが、第四級オニウム、又は周期律表第3?4周期のアルカリ金属である場合、rは1であり、Xが、SiR^(44)R^(45)基、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属である場合、rは2である。」を、
「Xは、SiR^(44)R^(45)基、周期律表第3?4周期のアルカリ金属、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属を示し、rは1又は2の整数である。
ただし、Xが、周期律表第3?4周期のアルカリ金属である場合、rは1であり、Xが、SiR^(44)R^(45)基、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属である場合、rは2である。」に訂正する。

オ. 請求項1の記載を引用する請求項2?5、請求項8?17、請求項19?20も上記ア.?エ.と同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
訂正事項2は、以下のア.?イ.の訂正事項からなる。
ア. 請求項2について、「前記一般式(I)?(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」を、
「前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」に訂正する。

イ. 請求項2の記載を引用する請求項3?5、請求項8?16も上記ア.と同様に訂正する。

(3) 訂正事項3
訂正事項3は、以下のア.?オ.の訂正事項からなる。
ア. 請求項3について、「前記一般式(I)で表されるSO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、(I-2)又は(I-3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。」を、
「前記SO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、又は(I-2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。」に訂正し、
「【化7】

(式中、L^(13)は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されている炭素数1?8のアルキル基、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されている炭素数2?12のアルコキシアルキル基、又は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されている炭素数6?12のアリール基を示す。)」を削除する。

イ. 請求項3に記載された一般式(I-1)における置換基L^(11)のうちの「炭素数1?6のアルキル基」を、「炭素数1?4のアルキル基」に訂正する。

ウ. 請求項3に記載された一般式(I-1)のただし書きについて、「ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、及びアリール基は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。」を、「ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基は、直鎖状又は分岐状である。」に訂正する。

エ. 請求項3に記載された一般式(I-2)のただし書きについて、「ただし、前記アルケニル基、アルキニル基、及びアルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状であり、前記エステル基、硫黄原子を含有する有機基、リン原子を含有する有機基、アルキルカルボニル基、及びアリールカルボニル基は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。」を、
「ただし、前記アルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。」に訂正する。

オ. 請求項3の記載を引用する請求項4?5、請求甲8?16も上記ア.?エ.と同様に訂正する。

(4) 訂正事項4
訂正事項4は、以下のア.?イ.の訂正事項からなる。
ア. 請求項4に記載された、「リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、リチウム プロピルサルフェート、リチウム ブチルサルフェート、リチウム ペンチルサルフェート、リチウム ヘキシルサルフェート、リチウム ヘプチルサルフェート、リチウム オクチルサルフェート、リチウム iso-プロピルサルフェート、リチウム sec-ブチルサルフェート、リチウム トリフルオロメチルサルフェート、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート、リチウム 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルサルフェート、リチウム 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルサルフェート、リチウム メトキシエチルサルフェート、リチウム エトキシエチルサルフェート、リチウム メトキシプロピルサルフェート、リチウム フェニルサルフェート、リチウム 4-メチルフェニルサルフェート、リチウム 4-フルオロフェニルサルフェート、及びリチウム パーフルオロフェニルサルフェートから選ばれる一種又は二種以上である」を、
「リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、リチウム プロピルサルフェート、リチウム ブチルサルフェート、リチウム iso-プロピルサルフェート、リチウム sec-ブチルサルフェート、リチウム メトキシエチルサルフェート、リチウム エトキシエチルサルフェート、リチウム メトキシプロピルサルフェート、リチウム フェニルサルフェート、及びリチウム 4-メチルフェニルサルフェートから選ばれる一種又は二種以上である」と訂正する。

イ. 請求項4の記載を引用する請求甲8?16も上記ア.と同様に訂正する。

(5) 訂正事項5
訂正事項5は、以下のア.?イ.の訂正事項からなる。
ア. 請求項5に記載された、「リチウム ビニル サルフェート、リチウム アリル サルフェート、リチウム プロパルギル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-エトキシ-1-オキソプロパン-2-イル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-(2-プロピニルオキシ)プロパン-2-イル サルフェート、リチウム 2-(アクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-(メタクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル サルフェート、リチウム (2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル サルフェート、リチウム 2-(メタンスルホニル)エチル サルフェート、リチウム メタンスルホニル サルフェート、リチウム トリフルオロメタンスルホニル サルフェート、リチウム 2-(トリメチルシリル)エチル サルフェート、リチウム 2-シアノエチル サルフェート、リチウム 1,3-ジシアノプロピニル 2-サルフェート、リチウム (ジエトキシホスホリル)メチル サルフェート、リチウム ジエトキシホスホリル サルフェート、リチウム ジブトキシホスホリル サルフェート、及びリチウム ジフルオロホスホリル サルフェートから選ばれる一種又は二種以上である」を、
「リチウム ビニル サルフェート、リチウム アリル サルフェート、リチウム プロパルギル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-エトキシプロパン-2-イル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-(2-プロピニルオキシ)プロパン-2-イル サルフェート、リチウム 2-(アクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-(メタクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル サルフェート、リチウム (2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル サルフェート、リチウム 2-(メタンスルホニル)エチル サルフェート、リチウム メタンスルホニル サルフェート、リチウム 2-(トリメチルシリル)エチル サルフェート、リチウム 2-シアノエチル サルフェート、リチウム 1,3-ジシアノプロピニル 2-サルフェート、リチウム (ジエトキシホスホリル)メチル サルフェート、リチウム ジエトキシホスホリル サルフェート、リチウム ジブトキシホスホリル サルフェート、及びリチウム ジフルオロホスホリル サルフェートから選ばれる一種又は二種以上である」と訂正する。

イ. 請求項5の記載を引用する請求甲8?16も上記ア.と同様に訂正する。

(6) 訂正事項6
請求項6を削除する。

(7) 訂正事項7
請求項7を削除する。

(8) 訂正事項8
請求項8について、「請求項1?7のいずれかに記載の」を、「請求項1?5のいずれかに記載の」と訂正し、請求項8を引用する請求項9?16も同様に訂正する。

(9) 訂正事項9
請求項15について、「請求項1?14のいずれかに記載の」を、「請求項1?5,8?14のいずれかに記載の」と訂正し、請求項15を引用する請求項16も同様に訂正する。

(10) 訂正事項10
請求項16について、「請求項1?15のいずれかに記載の」を、「請求項1?5,8?15のいずれかに記載の」と訂正する。

(11) 訂正事項11
請求項17について、「前記一般式(I)?(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」を、
「前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」に訂正し、請求項17を引用する請求項19?20も同様に訂正する。

(12) 訂正事項12
請求項18を削除する。

(13) 訂正事項13
請求項19について、「請求項17又は18に記載の」を、「請求項17に記載の」と訂正し、請求項19を引用する請求項20も同様に訂正する。

(14) 訂正事項14
請求項20について、「請求項17?19のいずれかに記載の」を、「請求項17又は19に記載の」と訂正する。


2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1の、「下記一般式(III)で表されるSO_(4)基含有化合物」との選択肢を削除するとの上記1.(1)ア.の訂正事項と、
訂正前の請求項1に記載された一般式(I)における置換基L^(1)のうちの「炭素数5?12のアルキル基」との選択肢を削除するとの上記1.(1)イ.の訂正事項と、
訂正前の請求項1に記載された一般式(I)のただし書きから、前記アルキル基等は、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい旨の選択肢を削除するとの上記1.(1)ウ.の訂正事項と、
訂正前の請求項1に記載された一般式(IV)の置換基Xについて、「第四級オニウム」とするとの選択肢を削除するとの上記1.(1)エ.の訂正事項と、
請求項1の記載を引用する請求項2?5、請求項8?17、請求項19?20も上記1.(1)ア.?エ.と同様に訂正するとの上記1.(1)オ.の訂正事項とからなる。

してみると、上記1.(1)ア.?オ.からなる訂正事項1は、請求項1に係る発明と請求項1の記載を引用する請求項2?5、請求項8?17、請求項19?20に係る発明とついて、訂正前の発明特定事項のうちから特定の選択肢を削除する訂正事項であるといえるから、特許請求に範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2の、「前記一般式(III)で表されるSO_(4)基含有化合物」との選択肢を削除するとの上記1.(2)ア.の訂正事項と、請求項2の記載を引用する請求項3?5、請求項8?16も上記1.(2)ア.と同様に訂正するとの上記1.(2)イ.の訂正事項とからなる。
してみると、上記1.(2)ア.?イ.からなる訂正事項2は、請求項2に係る発明と請求項2の記載を引用する請求項3?5、請求項8?16に係る発明とついて、訂正前の発明特定事項のうちから特定の選択肢を削除する訂正事項であるといえるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項3
訂正事項3は、請求項3において、「前記一般式(I)で表されるSO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、(I-2)又は(I-3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。」を、「前記SO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、又は(I-2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。」に訂正する、すなわち、訂正前の請求項3についての、前記「一般式(II)?(IV)、(I-1)、(I-2)又は(I-3)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物」との特定を、前記「一般式(I-1)、又は(I-2)で表されるSO_(4)基含有化合物」に限定するとの上記1.(3)ア.の訂正事項と、
訂正前の請求項3に記載された一般式(I-1)における置換基L^(1)のうちから、「炭素数5?6のアルキル基」との選択肢を削除するとの上記1.(3)イ.の訂正事項と、
請求項3に記載された一般式(I-1)のただし書きの記載を、訂正後の請求項1の一般式(I)のただし書きの記載と整合させるための、上記1.(3)ウ.の訂正事項と、
請求項3に記載された一般式(I-2)のただし書きの記載を、訂正後の請求項1の一般式(I)の括弧書きの記載と整合させるための、上記1.(3)エ.の訂正事項と、
請求項3の記載を引用する請求項4?5、請求項8?16も上記1.(3)ア.?エ.と同様に訂正するとの上記1.(3)オ.の訂正事項とからなる。

してみると、1.(3)ア.?オ.からなる訂正事項3は、請求項3に係る発明と請求項3の記載を引用する請求項4?5、請求項8?16に係る発明とついて、特許請求の範囲を減縮する、上記1.(3)ア.?イ.の訂正事項と、訂正後の請求項1の一般式(I)の括弧書きの記載と整合させるための、上記1.(3)ウ.?エ.の訂正事項とからなることから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前に請求項4に記載されていた、一般式(I-1)で表されるSO_(4)基含有化合物についての選択肢から、「リチウム ペンチルサルフェート、リチウム ヘキシルサルフェート、リチウム ヘプチルサルフェート、リチウム オクチルサルフェート」、「リチウム トリフルオロメチルサルフェート、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート、リチウム 2,2,3,3-テトラフルオロプロピルサルフェート、リチウム 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルサルフェート」、「リチウム 4-フルオロフェニルサルフェート、及びリチウム パーフルオロフェニルサルフェート」を削除するとの上記1.(4)ア.の訂正事項と、請求項4の記載を引用する請求甲8?16も上記1.(4)ア.と同様に訂正するとの上記1.(4)イ.の訂正事項とからなる。

してみると、上記1.(4)ア.?イ.からなる訂正事項4は、請求項4に係る発明と請求項4の記載を引用する請求項8?16に係る発明とついて、訂正前の発明特定事項のうちから特定の選択肢を削除する訂正事項であるといえるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前に請求項5に記載されていた、一般式(I-2)で表されるSO_(4)基含有化合物についての記載における、「リチウム トリフルオロメタンスルホニル サルフェート」を削除するとともに、「リチウム 1-オキソ-1-エトキシ-1-オキソプロパン-2-イル サルフェート」との誤記を、願書に最初に添付した明細書の段落0063の化合物AC6の構造式の記載、及び、同明細書の段落0077の化合物AC6についての記載に基づいて、「リチウム 1-オキソ-1-エトキシプロパン-2-イル サルフェート」に正すとの、上記1.(5)ア.の訂正事項と、請求項5の記載を引用する請求項8?16も上記1.(5)ア.と同様に訂正するとの上記1.(5)イ.の訂正事項とからなる。

してみると、1.(5)ア.?イ.からなる訂正事項5は、請求項5に係る発明と請求項5の記載を引用する請求項8?16に係る発明とついて、訂正前の発明特定事項のうちから特定の選択肢を削除するとともに、訂正前の発明特定事項にある誤記を訂正する訂正事項であるといえるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(6) 訂正事項6?7
訂正事項6は請求項6に係る発明を削除するものであるし、訂正事項7は請求項7に係る発明を削除するものであるから、訂正事項6?7は、いずれも、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(7) 訂正事項8?10
訂正事項8?10は、訂正事項6?7により請求項6?7に係る発明が削除されることに伴い、請求項8に係る発明、請求項8を引用する請求項9?16に係る発明、請求項15に係る発明、請求項15を引用する請求項16に係る発明、及び、請求項16に係る発明について、請求項6?7を引用しないように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8) 訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項17の、「前記一般式(III)で表されるSO_(4)基含有化合物」との選択肢を削除するとの訂正事項と、請求項17の記載を引用する請求項19?20も同様に訂正するとの訂正事項とからなる。
してみると、訂正事項11は、請求項17に係る発明と請求項17の記載を引用する請求項19?20に係る発明とついて、訂正前の発明特定事項のうちから特定の選択肢を削除する訂正事項であるといえるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(9) 訂正事項12
訂正事項12は、請求項18に係る発明を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(10) 訂正事項13?14
訂正事項13?14は、訂正事項12により請求項18に係る発明が削除されることに伴い、請求項19に係る発明、請求項19を引用する請求項20に係る発明、請求項20に係る発明について、請求項18を引用しないように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11) 訂正事項1?14について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用される請求項はなく、したがって、訂正事項1?14には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されない。

また、訂正事項1?14は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。


3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-20〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申し立てについて
1. 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明20」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、添加剤として、下記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする蓄電デバイス用非水電解液。
【化1】


(式中、L^(1)は、炭素数1?4のアルキル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、炭素数6?12のアリール基、炭素数2?7のアルケニル基、炭素数3?8のアルキニル基、炭素数3?18の鎖状又は環状エステル基、炭素数が1?6の硫黄原子を含有する有機基、炭素数が4?10のケイ素原子を含有する有機基、炭素数が2?7のシアノ基を含有する有機基、炭素数が2?12のリン原子を含有する有機基、-P(=O)F_(2)基、炭素数2?7のアルキルカルボニル基、又は炭素数7?13のアリールカルボニル基を示す。
ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。)
【化2】


(式中、L^(2)は、エーテル結合、チオエーテル結合、又は-S(=O)_(2)-結合を含んでいてもよいp価の炭化水素連結基を示し、pは2?4の整数である。ただし、L^(2)は、L^(2)の有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化3】


(式中、L^(4)は、炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数3?6のアルキニル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、-CR^(41)R^(42)C(=O)OR^(43)基、又は炭素数6?12のアリール基を示し、Xは、SiR^(44)R^(45)基、周期律表第3?4周期のアルカリ金属、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属を示し、rは1又は2の整数である。
ただし、Xが、周期律表第3?4周期のアルカリ金属である場合、rは1であり、Xが、SiR^(44)R^(45)基、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属である場合、rは2である。
R^(41)及びR^(42)は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1?4のアルキル基を示し、R^(43)は炭素数1?8のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、又は炭素数3?6のアルキニル基を示し、R^(44)及びR^(45)はそれぞれ独立して炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?3のアルケニル基、又は炭素数6?8のアリール基を示す。
また、前記アルキル基及びアリール基は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
非水電解液中における前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物の含有量が合わせて0.001?5質量%である、請求項1に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項3】
前記SO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、又は(I-2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【化4】


(式中、L^(11)は、炭素数1?4のアルキル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、又は炭素数6?12のアリール基を示す。ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基は、直鎖状又は分岐状である。)
【化5】


(式中、L^(12)は、炭素数2?7の直鎖又は分枝のアルケニル基、炭素数3?8の直鎖又は分枝のアルキニル基、炭素数3?18の鎖状又は環状エステル基、炭素数3?18の鎖状又は環状炭酸エステル基、炭素数が1?6の硫黄原子を含有する有機基、炭素数が4?10のケイ素原子を含有する有機基、炭素数2?7のシアノ基を含有する有機基、炭素数2?12のリン原子を含有する有機基、-P(=O)F_(2)基、炭素数2?7のアルキルカルボニル基、又は炭素数7?13のアリールカルボニル基を示す。ただし、前記アルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。)
【請求項4】
前記一般式(I-1)で表されるSO_(4)基含有化合物が、リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、リチウム プロピルサルフェート、リチウム ブチルサルフェート、リチウム iso-プロピルサルフェート、リチウム sec-ブチルサルフェート、リチウム メトキシエチルサルフェート、リチウム エトキシエチルサルフェート、リチウム メトキシプロピルサルフェート、リチウム フェニルサルフェート、及び、リチウム 4-メチルフェニルサルフェートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項3に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項5】
前記一般式(I-2)で表されるSO_(4)基含有化合物が、リチウム ビニル サルフェート、リチウム アリル サルフェート、リチウム プロパルギル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-エトキシプロパン-2-イル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-(2-プロピニルオキシ)プロパン-2-イル サルフェート、リチウム 2-(アクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-(メタクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル サルフェート、リチウム (2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル サルフェート、リチウム 2-(メタンスルホニル)エチル サルフェート、リチウム メタンスルホニル サルフェート、リチウム 2-(トリメチルシリル)エチル サルフェート、リチウム 2-シアノエチル サルフェート、リチウム 1,3-ジシアノプロピニル 2-サルフェート、リチウム (ジエトキシホスホリル)メチル サルフェート、リチウム ジエトキシホスホリル サルフェート、リチウム ジブトキシホスホリル サルフェート、及びリチウム ジフルオロホスホリル サルフェートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項3に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】
非水溶媒が、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む、請求項1?5のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項9】
環状カーボネートが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、及び炭素-炭素不飽和結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項8に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項10】
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オンから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項9に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項11】
フッ素原子を有する環状カーボネートが、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、及びトランス又はシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項9又は10に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項12】
鎖状カーボネートが、対称鎖状カーボネート及び非対称鎖状カーボネートから選ばれる一種又は二種である、請求項8に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項13】
非対称鎖状カーボネートが、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項12に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項14】
対称鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項12又は13に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項15】
更に、下記一般式(V)で表されるフッ素含有化合物を含む、請求項1?5,8?14のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【化6】



(式中、R^(51)?R^(53)はそれぞれ独立して炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?3のアルケニル基、炭素数6?8のアリール基、又はS(=O)_(2)F基を示す。)
【請求項16】
電解質塩が、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiSO_(3)F、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート、LiPO_(2)F_(2)、LiN(SO_(2)CF_(3))_(2)、LiN(SO_(2)F)_(2)、ビス[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウム、及びジフルオロビス[オキサレート-O,O’]リン酸リチウムから選ばれる一種又は二種以上のリチウム塩を含む、請求項1?5,8?15のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項17】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、前記非水電解液が、添加剤として、請求項1に記載の前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物から選ばれる少なくとも一種を非水電解液中に0.001質量%以上、5質量%未満含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項18】 (削除)
【請求項19】
正極の活物質が、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる一種又は二種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物、又は鉄、コバルト、ニッケル、及びマンガンから選ばれる一種又は二種以上を含有するリチウム含有オリビン型リン酸塩である、請求項17に記載の蓄電デバイス。
【請求項20】
負極の活物質が、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物、及びチタン酸リチウム化合物から選ばれる一種以上を含有する、請求項17又は19に記載の蓄電デバイス。」


2. 取消し理由の概要
(訂正前の)請求項1?20に係る特許に対して、平成28年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

I) 本件特許の請求項1?4、8?9、12、14、16?17、19?20に係る発明は、その発明に係る特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであり、それら特許は取り消すべきものと認められる。

II) 本件特許の請求項1?4、6?14、16?20に係る発明は、その発明に係る特許出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その発明に係る特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、それら特許は取り消すべきものと認められる。



刊行物1:特開2003-68359号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開2012-174339号公報(甲第4号証)
刊行物3:特開2007-103214号公報(甲第5号証)
刊行物4:特開平8-306386号公報(本件特許明細書に記載の特許文献3)


3. 刊行物の記載
(1) 刊行物1(甲第1号証)の記載(当審注:「…」は記載の省略を表す。)
ア. 「【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学ディバイス用として利用される優れたサイクル特性を示す電解質、電解液…に関する。」(【0001】)

イ. 「【従来技術】近年の携帯機器の発展に伴い、その電源として電池やキャパシタのような電気化学的現象を利用した電気化学ディバイスの開発が盛んに行われるようになった。また、電源以外の電気化学ディバイスとしては、電気化学反応により色の変化が起こるエレクトロクロミックディスプレイ(ECD)が挙げられる。
これらの電気化学ディバイスは、一般に一対の電極とその間を満たすイオン伝導体から構成される。このイオン伝導体には溶媒、高分子またはそれらの混合物中に電解質と呼ばれるカチオン(A+)とアニオン(B-)からなる塩類(AB)を溶解したものが用いられる。この電解質は溶解することにより、カチオンとアニオンに解離して、イオン伝導する。ディバイスに必要なイオン伝導度を得るためには、この電解質が溶媒や高分子に十分な量溶解することが必要である。実際は水以外のものを溶媒として用いる場合が多く、このような有機溶媒や高分子に十分な溶解度を持つ電解質は現状では数種類に限定される。例えば、リチウム電池用電解質としては、LiClO_(4)、LiPF_(6)、LiBF_(4) 、LiAsF_(6)、LiN(SO_(2)CF_(3))_(2)、LiN(SO_(2)C_(2)F_(5))_(2) 、LiN(SO_(2)CF_(3))(SO_(2)C_(4)F_(9))およびLiCF_(3)SO_(3)のみである。カチオンの部分はリチウム電池のリチウムイオンのように、ディバイスにより決まっているものが多いが、アニオンの部分は溶解性が高いという条件を満たせば使用可能である。」(【0002】?【0003】)

ウ. 「【発明が解決しようとする課題】ディバイスの応用範囲が多種多様化している中で、それぞれの用途に対する最適な電解質が探索されているが、現状ではアニオンの種類が少ないため最適化も限界に達している。また、既存の電解質は種々の問題を持っており、新規のアニオン部を有する電解質が要望されている。具体的にはClO_(4)イオンは爆発性、AsF_(6)イオンは毒性を有するため安全上の理由で使用できない。唯一実用化されているLiPF_(6)も耐熱性、耐加水分解性などの問題を有する。LiN(CF_(3)SO_(2))_(2)、LiN(SO_(2)C_(2)F_(5))_(2) 、LiN(SO_(2)CF_(3))(SO_(2)C_(4)F_(9))およびLiCF_(3)SO_(3)は安定性が高く、イオン伝導度も高いため非常に優れた電解質であるが、電池内のアルミニウムの集電体を電位がかかった状態で腐食するため使用が困難である。」(【0004】)

エ. 「【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み鋭意検討の結果、新規の化学構造的な特徴を有する電解質を数種類組み合わせた系を見出し本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物と、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち少なくとも一つよりなる電気化学ディバイス用電解質で、
【化2】

Mは、遷移金属、周期律表の III族、IV族、またはV族元素、A^(a+)は、金属イオン…、aは、1?3、bは、1?3、pは、b/a、mは1?4、qは、0または1をそれぞれ表し、R^(1)はC_(1)?C_(10)のアルキレン、C_(1)?C_(10)のハロゲン化アルキレン、C_(4)?C_(20)のアリーレン、またはC_(4)?C_(20)のハロゲン化アリーレン…で、X^(1)、X^(2)は、O、S、またはNR^(2)で、R^(2)は、水素、C_(1)?C_(10)のアルキル、C_(1)?C_(10)のハロゲン化アルキル、C_(4)?C_(20)のアリール、またはC_(4)?C_(20)のハロゲン化アリール…をそれぞれ表し、Y^(1)、Y^(2)、Y^(3)は、それぞれ独立で、SO_(2)基またはCO基、R^(3)、R^(4)、R^(5)は、それぞれ独立で、電子求引性の有機置換基…をそれぞれ表す電気化学ディバイス用電解質であり、該電解質を非水溶媒に溶解したものよりなる電気化学ディバイス用電解液…を提供するものである。」(【0005】?【0008】)

オ. 「以下に、本発明をより詳細に説明する。
…まず本発明で使用される一般式(1)で示される化合物の具体例を次に示す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】


次に、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)で示される化合物の具体例としては、CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Li…等が挙げられる。…これらの電解質は単独で使用すると、電池内のアルミニウムの集電体を電位がかかった状態で腐食するため、充放電サイクルを繰り返すと容量が低下するという問題点を有する。本発明ではこれらのスルホニル基を有する電解質と一般式(1)の電解質を混合して使用することで、このアルミニウムの集電体の腐食を防止することが可能となった。…」(【0010】?【0024】)


(2) 刊行物2(甲第4号証)の記載
ア. 「本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と、その非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池に関する。」(【0001】)

イ. 「近年、携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。現在、この要求に応える高容量二次電池としては、正極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO_(2))、負極材料として炭素系材料、を用いたリチウムイオン二次電池が商品化されている。このようなリチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く、小型化および軽量化が図れることから、幅広い分野で電源としての使用が注目されている。しかしながら、LiCoO_(2)は希金属であるCoを原料として製造されるため、今後、資源不足が深刻化すると予想される。さらに、Coは高価であり、価格変動も大きいため、安価で供給の安定している正極材料の開発が望まれていた。
そこで、構成元素の価格が安価で、供給が安定しているマンガン(Mn)を基本組成に含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物の使用が有望視されている。その中でも、4価のマンガンイオンのみを含み、充放電の際にマンガン溶出の原因となる3価のマンガンイオンを含まないLi_(2)MnO_(3)という物質が注目されている。Li_(2)MnO_(3)は、今まで充放電不可能と考えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見出されてきている。しかしながらLi_(2)MnO_(3)は、充放電特性に関してさらなる改善が必要である。
充放電特性の改善のため、Li_(2)MnO_(3)とLiMeO_(2)(Meは遷移金属元素)との固溶体であるxLi_(2)MnO_(3)・(1-x)LiMeO_(2)(0<x≦1)の開発が盛んである。…
ところが4価のマンガンイオンを含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、使用に先立って充電することで正極活物質を活性化させる必要がある。この活性化工程では、リチウムマンガン酸化物系の正極活物質からリチウムイオンが放出されるとともに酸素が脱離し、その酸素によって非水電解液が酸化分解するという現象があった。また高温貯蔵試験において充電状態で貯蔵しても、正極表面において非水電解液が分解するという現象があった。このように非水電解液が酸化分解すると、電極表面に絶縁被膜が形成され、内部抵抗が高くなることによって、貯蔵後の充放電容量が低下するという問題があった。」(【0002】?【0005】)

ウ. 「本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、活性化処理が必要であるけれども高容量を発現する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、非水電解液の酸化還元分解による劣化を抑制することを解決すべき課題とする。」(【0012】)

エ. 「上記課題を解決する本発明の非水電解液の特徴は、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極をもつリチウムイオン二次電池に用いられ、スルトン基を有する鎖状化合物を含むことにある。」(【0013】)

オ. 「本発明の非水電解液は、スルトン基を有する鎖状化合物を含んでいる。この鎖状化合物としては、例えば、2,3-ブタンジオールジメタンスルホナート、2-メチレン-1,4-ブタンジオールジトシラート、2-メチレン-1,4-ブタンジオール1-トシラート4-(メタンスルホナート)、2-メチレン-1,4-ブタンジオールビス(メタンスルホナート)、2-メチレン-1,4-ブタンジオール1-(メタンスルホナート)4-トシラート、1,4-ブタンジオールジメタンスルホナート(別名ブスルファン)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(水素スルファート)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)、(1R,2R,3R)-1-(4-メチルフェニル)-2-(トシルメチル)-1,3-ブタンジオール、4-(トシルオキシ)-1-ブタノールなどの群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
本発明の非水電解液は、上記したスルトン基を有する鎖状化合物を含むこと以外は、従来と同様の構成とすることができ、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものとすることができる。…」(【0019】?【0020】)


(3) 刊行物3(甲第5号証)の記載
ア. 「リチウムを吸蔵・放出する正極およびリチウムを吸蔵・放出する負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、前記非水電解質が0.02M?0.2Mの硫酸エステル化合物を含有し、かつ、0.005M?0.04Mのリン酸シリルエステル化合物を含有することを特徴とした非水電解質二次電池。」(請求項1)

イ. 「民生用の携帯電話、ポータブル機器や携帯情報端末などの急速な小型軽量化・多様化に伴い、その電源である電池に対して、小型で軽量かつ高エネルギー密度で、さらに長期間繰り返し充放電が実現できる二次電池の開発が強く要求されている。なかでも、水溶液系電解液を使用する鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較して、これらの欲求を満たす二次電池としてリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が最も有望であり、活発な研究がおこなわれている。」(【0002】)

ウ. 「近年では、ハイブリッドカーなどの移動体用の電源としての非水電解質二次電池の需要もたかまってきており、従来から重要視されてきた高エネルギー密度であること以外に、高い入出力性能が長期にわたって持続することが要求されてきている。長期にわたって高い放電容量を維持することと、長期にわたって高い入出力特性を維持することは必ずしも一致しない。これは、低負荷で使用される非水電解質二次電池の放電容量の減少は、電極上での非水電解質の分解反応によって正極と負極の充電レベルのバランスが変化することが主な原因の1つであるのに対し、入出力特性の減少すなわち直流抵抗の増大は集電抵抗、電解液の液抵抗、正負極と電解質間での電荷移動抵抗などの増大が主な原因となるためである。したがって、高入出力が要求される用途においては、直流抵抗の増大を抑制する方法が重要となる。…
長期間の使用における非水電解質二次電池の直流抵抗の増大を抑制する方法に関しては未だ十分なものがなく、活物質、集電構造、セパレータ、非水電解質の改良、および電解液添加剤の添加とその混合方法の改良などによる更なる寿命特性の向上が必要とされている。」(【0007】?【0008】)

エ. 「 請求項1の発明によれば、リチウムを吸蔵・放出する正極およびリチウムを吸蔵・放出する負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、前記非水電解質が0.02M?0.2Mの硫酸エステル化合物を含有し、かつ、0.005M?0.04Mのリン酸シリルエステル化合物を含有することによって長期間の使用において直流抵抗の増加の小さい非水電解質二次電池を得ることができる。」(【0011】)

オ. 「…ここで、硫酸エステル化合物の具体例として硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチルメチル、硫酸エチルプロピル、硫酸メチルプロピル、硫酸ジプロピル、硫酸メチルフェニル、硫酸エチルフェニル、硫酸フェニルプロピル、硫酸ベンジルメチル、硫酸ベンジルエチル、硫酸アリルメチル、硫酸アリルエチル、硫酸アリルプロピル、硫酸ジアリル、硫酸アリルトリメチルシリル、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、硫酸プロピルトリメチルシリル、…等が例示され、アルキル基に結合する水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。…」(【0013】)

カ. 「非水電解質としては、電解液または固体電解質のいずれも使用することができる。…」(【0017】)

キ. 「また、硫酸エステル化合物を炭素数3以上の環状硫酸エステルとし、トリアルキルシリルエステルをリン酸トリストリメチルシリルとすることで長期間の使用時における直流抵抗の増加を著しく抑制でき、好適である。ここで、炭素数3以上の環状硫酸エステルは、前述の硫酸エステルの中から選択することができ、より好ましくは1、2-プロパンジオール硫酸エステル、1、2-ブタンジオール硫酸エステル、1、2-ペンタンジオール硫酸エステル1、2-ヘキサンジオール硫酸エステル、1、3-プロパンジオール硫酸エステル、1、3-ブタンジオール硫酸エステル、1、3-ペンタンジオール硫酸エステル等であり、直流抵抗の増加を抑制する効果が特に大きい。」(【0014】)

(4) 刊行物4(本件特許明細書に記載の特許文献3)の記載
ア. 「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、電解液の溶媒に非プロトン性の溶媒を使用することにより水素よりも還元力の大きい負極活物質を使用することが可能になった二次電池、すなわち非水電解液二次電池が、従前のアルカリ蓄電池に比べて大きな起電力を有することから注目されている。この非水電解液二次電池の負極材料として、○1(当審注:「○1」は丸数字の1を表す。)単位質量及び単位体積あたりの容量が大きい、○2(当審注:「○2」は丸数字の2を表す。)金属リチウムなどの溶解・析出型の負極材料と異なり吸蔵・放出型の負極材料であるので樹枝状の電析物の成長に起因する内部短絡が起こる虞れが無いなどの利点を有する、黒鉛、コークス等の炭素材料が提案されている。
しかしながら、炭素材料は非水電解液に対する濡れ性が良くないために、炭素材料を負極材料として使用した炭素負極を備える非水電解液二次電池には、高率放電特性が良くないという問題がある。すなわち、この種の電池には、大電流で放電すると、放電容量が大幅に低下するという問題がある。
本発明は、この問題を解決するべくなされたものであって、その目的とするところは、炭素材料の非水電解液に対する濡れ性を改善することにより、高率放電特性に優れた非水電解液二次電池を提供するにある。」(【0002】?【0004】)

イ. 「〔非水電解液の調製〕エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF_(6)を1モル/リットル溶かして非水電解液を調製した。次いで、この非水電解液に表1…に示す各種の陰イオン活性剤を種々の割合〔…0.0010モル/リットル…〕添加した。」(【0021】)

ウ. 「【表1】

」(【0022】)


4. 刊行物に記載された発明
(1) 刊行物1に記載された発明
上記3.(1)エ.?オ.からすると、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物と、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち少なくとも一つよりなる電気化学ディバイス用電解質を非水溶媒に溶解したものよりなる電気化学ディバイス用電解液であって、

Mは、遷移金属、周期律表の III族、IV族、またはV族元素、A^(a+)は、金属イオン…、aは、1?3、bは、1?3、pは、b/a、mは1?4、qは、0または1をそれぞれ表し、R^(1)はC_(1)?C_(10)のアルキレン、C_(1)?C_(10)のハロゲン化アルキレン、C_(4)?C_(20)のアリーレン、またはC_(4)?C_(20)のハロゲン化アリーレン…で、X^(1)、X^(2)は、O、S、またはNR^(2)で、R^(2)は、水素、C_(1)?C_(10)のアルキル、C_(1)?C_(10)のハロゲン化アルキル、C_(4)?C_(20)のアリール、またはC_(4)?C_(20)のハロゲン化アリール…をそれぞれ表し、Y^(1)、Y^(2)、Y^(3)は、それぞれ独立で、SO_(2)基またはCO基、R^(3)、R^(4)、R^(5)は、それぞれ独立で、電子求引性の有機置換基…をそれぞれ表す電気化学ディバイス用電解質であり、
一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物の具体例は、

であり、
一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物が、CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Liである、電気化学ディバイス用電解液。」
(以下、上記した一般式(1)?(4)で示される化学構造式よりなる化合物を、それぞれ、単に、「一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物」?「一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物」という。)

(2) 刊行物2に記載された発明
上記3.(2)エ.?オ.からすると、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させた非水電解液であって、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極をもつリチウムイオン二次電池に用いられ、スルトン基を有する鎖状化合物として、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)を含む非水電解液。」

(3) 刊行物3に記載された発明
上記3.(3)ア.、エ.?カ.からすると、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。
「リチウムを吸蔵・放出する正極およびリチウムを吸蔵・放出する負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池で用いる電解液であって、硫酸エステル化合物として、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリルを0.02M?0.2M含有し、かつ、0.005M?0.04Mのリン酸シリルエステル化合物を含有する非水電解質を用いる電解液。」

(4) 刊行物4に記載された発明
上記3.(4)イ.?ウ.からすると、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認める。
「エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF_(6) を1モル/リットル溶かして調製し、C_(12)H_(25)-O-SO_(2)-OLiを0.0010モル/リットル添加した、リチウム二次電池用の非水電解液。」


5. 対比・判断
5-1 本件特許発明1についての対比・判断
(1)本件特許発明1と引用発明1との対比・判断
ア. 本件特許発明1と引用発明1とを対比するに、本件特許発明1は、添加剤として、上記1.に示したとおりの、一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物から選ばれる少なくとも一種(以下、単に「特定のSO_(4)基含有化合物」という。)を含有するところ、引用発明1における、一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物は、上記4.(1)での認定からして、SO_(4)基含有化合物を包含していないから、本件特許発明1における特定のSO_(4)基含有化合物には該当しないし、CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Liは、SO_(4)基含有化合物であるものの、本件特許発明1における特定のSO_(4)基含有化合物には該当しないから、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

相違点1:本件特許発明1は、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのに対し、引用発明1は、SO_(4)基含有化合物として、CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Liを含有しているものの、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのか否か明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点1につき、以下、検討する。
引用発明1は、上記3.(1)エ.?オ.によれば、新規の化学構造的な特徴を有する電解質を数種類組み合わせて、電気化学ディバイス用電解質とするものであって、当該電気化学ディバイス用電解質を一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物と、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち少なくとも一つよりなる電解質とするものであり、一般式(1)?(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち、上記4.(1)での認定からして、一般式(2)で示される化学構造式よりなる化合物だけがSO_(4)基含有化合物を包含しているところ、一般式CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Liは、新規の化学構造的な特徴を有する一般式(2)の具体例として記載されている化合物であり、その一般式(2)は、本件特許発明1の一般式(I)において、L^(1)が、例えばCF_(3)CH_(2)-または(CF_(3))_(2)CH-のような少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基でなる、電子求引性の有機置換基である化合物を意味しているいえるところ、本件特許発明1の一般式(I)は、上記1.に示した請求項1の記載によれば、L^(1)は例えばCH_(3)CH_(2)-または(CH_(3))_(2)CH-のようなアルキル基でなる化合物は包含しているものの、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基でなる化合物を包含してはいない。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。

ウ. そこで、上記相違点1の容易想到性につき、検討する。
(ウ-1) 本件特許発明1は、本件特許の明細書の【0002】?【0010】、【0022】、【0262】?【0324】によれば、近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器の電源、電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されており、これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下や極寒の低温下等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められているところ、従来のリチウム二次電池では広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすい状況にあるため、高温保存後の低温放電特性等の広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液を提供することを発明が解決しようとする課題とするものであって、上記相違点1に係る発明特定事項を備えた本件特許発明1は、そのような課題を解決して、高温保存後の低温放電特性を向上できる非水電解液を提供することができるとの発明の効果を奏するものである。

(ウ-2) 上記(ウ-1)に示したような本件特許発明1に対し、引用発明1は、上記3.(1)ア.?オ.によれば、リチウム電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学ディバイス用として利用される優れたサイクル特性を示す電解液に関し、ディバイスの用途に対する最適な電解質が探索されているが、現状ではアニオンの種類が少ないため最適化も限界に達しているとの従来技術の問題点に鑑みてなされたもの、すなわち、本件特許発明1とは発明が解決しようとする課題を異にするものであって、新規な化学構造的な特徴を有する一般式(1)で示される化学構造式よりなる化合物と、新規な化学構造的な特徴を有する、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち少なくとも一つよりなる電気化学ディバイス用電解質を非水溶媒に溶解したものよりなる電気化学ディバイス用電解液に係る発明であり、一般式(1)?(4)で示される化学構造式よりなる化合物のうち、一般式(2)で示される化学構造式よりなる化合物だけがSO_(4)基含有化合物を包含しているところ、その一般式(2)は、上記イ.で示したとおりの化合物を意味しているといえるから、引用発明1において、CF_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CF_(3))_(2)CHOSO_(3)Liのような、その一般式(2)で示される化学構造式よりなる化合物を、例えばCH_(3)CH_(2)OSO_(3)Li、または(CH_(3))_(2)CHOSO_(3)Liのような化合物に変更するとの技術事項は、刊行物1に記載されていない発明とすることであるといえ、しかも前記の技術事項を行うことの動機付けは刊行物1には見当たらない。

(ウ-3) また、本件特許発明1が奏する、上記(ウ-1)に示したような、発明の効果は、上記(ウ-2)に示したような刊行物1の記載からは予想し得ない。


エ. むすび
上記ア.?ウ.での検討を踏まえると、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明であるとはいえないし、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであるとはいえないし、特許法第29条第2項に違反して特許を受けたものであるともいえない。


(2)本件特許発明1と引用発明2との対比・判断
ア. 本件特許発明1と引用発明2とを対比するに、本件特許発明1は、上記(1)ア.に示したとおり、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するところ、引用発明2における「2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)」は、本件特許発明1における特定のSO_(4)基含有化合物には該当しないから、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

相違点2:本件特許発明1は、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのに対し、引用発明2は、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)を含有しているものの、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのか否か明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点2につき、以下、検討する。
引用発明2は、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)を含有しているが、トリメチルシリル化合物は、本件訂正請求により、本件特許発明1における、添加剤としての特定のSO_(4)基含有化合物には包含されないこととなった。
してみると、上記相違点2も、実質的な相違点であるといえる。

ウ. そこで、上記相違点2の容易想到性につき、検討するに、本件特許発明1は上記(1)ウ(ウ-1)に示したとおりのものであるのに対し、引用発明2も、上記3.(2)ア.?エ.によれば、上記(1)ウ(ウ-2)での検討と同様にして、本件特許発明1とは発明が解決しようとする課題を異にするものであって、SO_(4)基含有化合物としては、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)のみを包含する、スルトン基を有する鎖状化合物を含む非水電解液に係る発明である。
してみると、引用発明2において、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオールビス(硫酸トリメチルシリル)を、それ以外のSO_(4)基含有化合物に変更するとの技術事項は、刊行物2に記載されていない発明とすることであるといえ、しかも前記の技術事項を行うことの動機付けは刊行物2には見当たらない。
また、本件特許発明1が奏する、上記(1)ウ(ウ-1)に示したような、発明の効果は、上記3.(2)ア.?エ.のような刊行物2の記載からは予想し得ない。

エ. むすび
上記ア.?ウ.での検討を踏まえると、本件特許発明1は、刊行物2に記載された発明であるとはいえないし、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであるとはいえないし、特許法第29条第2項に違反して特許を受けたものであるともいえない。


(3)本件特許発明1と引用発明3との対比・判断
ア. 本件特許発明1と引用発明3とを対比するに、本件特許発明1は、上記(1)ア.に示したとおり、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するところ、引用発明3における「硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリル」は、本件特許発明1における特定のSO_(4)基含有化合物には該当しないから、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

相違点3:本件特許発明1は、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのに対し、引用発明3は、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリルを含有しているものの、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのか否か明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点3につき、以下、検討する。
引用発明3は、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリルを含有しているが、トリメチルシリル化合物は、本件訂正請求により、本件特許発明1における、添加剤としての特定のSO_(4)基含有化合物には包含されないこととなった。
また、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリルとともに、上記3.(3)オ.に示されている硫酸エステル化合物の中には、本件特許発明1における、添加剤としての特定のSO_(4)基含有化合物は見当たらない。
してみると、上記相違点3も、実質的な相違点であるといえる。

ウ. そこで、上記相違点3の容易想到性につき、検討するに、本件特許発明1は上記(1)ウ(ウ-1)に示したとおりのものであるのに対し、引用発明3も、上記3.(3)ア.?カ.によれば、上記(1)ウ(ウ-2)での検討と同様にして、本件特許発明1とは発明が解決しようとする課題を異にするものであって、また、上記3.(3)キ.に示されているとおり、長期間の使用時における直流抵抗の増加を著しく抑制するには、SO_(4)基含有化合物を炭素数3以上の環状硫酸エステルとすることが好適であり、ここで、炭素数3以上の環状硫酸エステルは、上記3.(3)オ.に列挙した40種の化合物の中から選択することができるとされているように、SO_(4)基含有化合物であればどのような化合物でも、刊行物3記載の発明が解決しようとする課題が解決できるというものではないから、引用発明3において、硫酸メチルトリメチルシリル、硫酸エチルトリメチルシリル、又は硫酸プロピルトリメチルシリルを、上記3.(3)オ.に示されていないSO_(4)基含有化合物に変更する動機付けは刊行物3には見当たらない。
また、本件特許発明1が奏する、上記(1)ウ(ウ-1)に示したような、発明の効果は、上記3.(3)ア.?キ.のような刊行物3の記載からは予想し得ない。

エ. むすび
上記ア.?ウ.での検討を踏まえると、本件特許発明1は、刊行物3に記載された発明であるとはいえないし、刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであるとはいえないし、特許法第29条第2項に違反して特許を受けたものであるともいえない。


(4)本件特許発明1と引用発明4との対比・判断
ア. 本件特許発明1と引用発明4とを対比するに、本件特許発明1は、上記(1)ア.に示したとおり、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するところ、引用発明4における「C_(12)H_(25)-O-SO_(2)-OLi」は、本件特許発明1における特定のSO_(4)基含有化合物には該当しないから、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

相違点4:本件特許発明1は、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのに対し、引用発明4は、C_(12)H_(25)-O-SO_(2)-OLiを含有しているものの、添加剤として、特定のSO_(4)基含有化合物を含有するのか否か明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点4につき、以下、検討するに、引用発明4は、上記3.(4)ア.に示されるとおり、炭素材料の非水電解液に対する濡れ性を改善することを目的としているものであり、技術常識からして、引用発明4よりも炭素数の少ないSO_(4)基含有化合物を用いることは含まれていないといえる。
してみると、上記相違点4も実質的な相違点であるといえるし、C_(12)H_(25)-O-SO_(2)-OLiをSO_(4)基含有化合物として含有している引用発明4において、その化合物よりも炭素数の少ないSO_(4)基含有化合物を用いるように変更するとの技術事項は、刊行物4に記載されていない発明とすることであるといえ、しかも前記の技術事項を行うことの動機付けは刊行物4には見当たらない。

ウ. また、本件特許発明1が奏する、上記(ウ-1)に示したような、発明の効果は、上記上記3.(4)ア.?ウ.に示したような刊行物4の記載からは予想し得ない。


エ. むすび
上記ア.?ウ.での検討を踏まえると、本件特許発明1は、刊行物4に記載された発明であるとはいえないし、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第1項第3号に違反して特許を受けたものであるとはいえないし、特許法第29条第2項に違反して特許を受けたものであるともいえない。


(5) 小括
上記(1)?(4)での検討を踏まえると、平成28年3月4日付けで通知された取消理由によっては、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他の甲号証記載の発明によっても、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。


5-2 本件特許発明2?20についての対比・判断
本件特許発明2?5、8?17、19?20に係る発明は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項を備えたものであるから、上記5-1に示したのと同様の検討により、本件特許発明2?5、8?17、19?20に係る特許を取り消すことはできない。
なお、本件特許発明6?7、18に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許発明6?7、18に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1?5、8?17、19?20に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に、本件特許発明1?5、8?17、19?20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、対象となる請求項が存在しない、本件特許発明6?7、18に係る特許に対する、特許異議の申立てについては、却下すべきである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、添加剤として、下記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする蓄電デバイス用非水電解液。
【化1】

(式中、L^(1)は、炭素数1?4のアルキル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、炭素数6?12のアリール基、炭素数2?7のアルケニル基、炭素数3?8のアルキニル基、炭素数3?18の鎖状又は環状エステル基、炭素数が1?6の硫黄原子を含有する有機基、炭素数が4?10のケイ素原子を含有する有機基、炭素数が2?7のシアノ基を含有する有機基、炭素数が2?12のリン原子を含有する有機基、-P(=O)F_(2)基、炭素数2?7のアルキルカルボニル基、又は炭素数7?13のアリールカルボニル基を示す。
ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。)
【化2】

(式中、L^(2)は、エーテル結合、チオエーテル結合、又は-S(=O)_(2)-結合を含んでいてもよいp価の炭化水素連結基を示し、pは2?4の整数である。ただし、L^(2)は、L^(2)の有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化3】

(式中、L^(4)は、炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数3?6のアルキニル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、-CR^(41)R^(42)C(=O)OR^(43)基、又は炭素数6?12のアリール基を示し、Xは、SiR^(44)R^(45)基、周期律表第3?4周期のアルカリ金属、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属を示し、rは1又は2の整数である。
ただし、Xが、周期律表第3?4周期のアルカリ金属である場合、rは1であり、Xが、SiR^(44)R^(45)基、又は周期律表第3?4周期のアルカリ土類金属である場合、rは2である。
R^(41)及びR^(42)は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1?4のアルキル基を示し、R^(43)は炭素数1?8のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、又は炭素数3?6のアルキニル基を示し、R^(44)及びR^(45)はそれぞれ独立して炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?3のアルケニル基、又は炭素数6?8のアリール基を示す。
また、前記アルキル基及びアリール基は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
非水電解液中における前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物の含有量が合わせて0.001?5質量%である、請求項1に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項3】
前記SO_(4)基含有化合物が、下記一般式(I-1)、又は(I-2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【化4】

(式中、L^(11)は、炭素数1?4のアルキル基、炭素数2?12のアルコキシアルキル基、又は炭素数6?12のアリール基を示す。ただし、前記アルキル基、アルコキシアルキル基は、直鎖状又は分枝状である。)
【化5】

(式中、L^(12)は、炭素数2?7の直鎖又は分枝のアルケニル基、炭素数3?8の直鎖又は分枝のアルキニル基、炭素数3?18の鎖状又は環状エステル基、炭素数3?18の鎖状又は環状炭酸エステル基、炭素数が1?6の硫黄原子を含有する有機基、炭素数が4?10のケイ素原子を含有する有機基、炭素数2?7のシアノ基を含有する有機基、炭素数2?12のリン原子を含有する有機基、-P(=O)F_(2)基、炭素数2?7のアルキルカルボニル基、又は炭素数7?13のアリールカルボニル基を示す。ただし、前記アルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝状である。)
【請求項4】
前記一般式(I-1)で表されるSO_(4)基含有化合物が、リチウム メチルサルフェート、リチウム エチルサルフェート、リチウム プロピルサルフェート、リチウム ブチルサルフェート、リチウム iso-プロピルサルフェート、リチウム sec-ブチルサルフェート、リチウム メトキシエチルサルフェート、リチウム エトキシエチルサルフェート、リチウム メトキシプロピルサルフェート、リチウム フェニルサルフェート、及びリチウム 4-メチルフェニルサルフェートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項3に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項5】
前記一般式(I-2)で表されるSO_(4)基含有化合物が、リチウム ビニル サルフェート、リチウム アリル サルフェート、リチウム プロパルギル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-エトキシプロパン-2-イル サルフェート、リチウム 1-オキソ-1-(2-プロピニルオキシ)プロパン-2-イル サルフェート、リチウム 2-(アクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-(メタクリロイルオキシ)エチル サルフェート、リチウム 2-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル サルフェート、リチウム (2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル サルフェート、リチウム 2-(メタンスルホニル)エチル サルフェート、リチウム メタンスルホニル サルフェート、リチウム 2-(トリメチルシリル)エチル サルフェート、リチウム 2-シアノエチル サルフェート、リチウム 1,3-ジシアノプロピニル 2-サルフェート、リチウム (ジエトキシホスホリル)メチル サルフェート、リチウム ジエトキシホスホリルサルフェート、リチウム ジブトキシホスホリル サルフェート、及びリチウム ジフルオロホスホリル サルフェートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項3に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】
非水溶媒が、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む、請求項1?5のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項9】
環状カーボネートが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、及び炭素-炭素不飽和結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項8に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項10】
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オンから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項9に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項11】
フッ素原子を有する環状カーボネートが、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、及びトランス又はシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンから選ばれる一種又は二種以上を含有する、請求項9又は10に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項12】
鎖状カーボネートが、対称鎖状カーボネート及び非対称鎖状カーボネートから選ばれる一種又は二種である、請求項8に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項13】
非対称鎖状カーボネートが、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項12に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項14】
対称鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる一種又は二種以上である、請求項12又は13に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項15】
更に、下記一般式(V)で表されるフッ素含有化合物を含む、請求項1?5,8?14のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【化6】

(式中、R^(51)?R^(53)はそれぞれ独立して炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?3のアルケニル基、炭素数6?8のアリール基、又はS(=O)_(2)F基を示す。)
【請求項16】
電解質塩が、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiSO_(3)F、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート、LiPO_(2)F_(2)、LiN(SO_(2)CF_(3))_(2)、LiN(SO_(2)F)_(2)、ビス[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウム、及びジフルオロビス[オキサレート-O,O’]リン酸リチウムから選ばれる一種又は二種以上のリチウム塩を含む、請求項1?5,8?15のいずれかに記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項17】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、前記非水電解液が、添加剤として、請求項1に記載の前記一般式(I)、(II)、及び(IV)のいずれかで表されるSO_(4)基含有化合物から選ばれる少なくとも一種を非水電解液中に0.001質量%以上、5質量%未満含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項18】 (削除)
【請求項19】
正極の活物質が、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる一種又は二種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物、又は鉄、コバルト、ニッケル、及びマンガンから選ばれる一種又は二種以上を含有するリチウム含有オリビン型リン酸塩である、請求項17に記載の蓄電デバイス。
【請求項20】
負極の活物質が、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物、及びチタン酸リチウム化合物から選ばれる一種以上を含有する、請求項17又は19に記載の蓄電デバイス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-30 
出願番号 特願2014-556871(P2014-556871)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森井 隆信  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
登録日 2015-04-17 
登録番号 特許第5729525号(P5729525)
権利者 宇部興産株式会社
発明の名称 非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイス  
代理人 片岡 誠  
代理人 片岡 誠  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  

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