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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1319813
審判番号 不服2015-4148  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-03 
確定日 2016-09-21 
事件の表示 特願2011-518932「分析物測定及び管理装置並びに関連した方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日国際公開、WO2010/009382、平成24年 3月29日国内公表、特表2012-507309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年7月17日(パリ条約による優先権主張:平成20年7月18日 米国)を国際出願日として出願された外国語特許出願であって、平成26年1月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月30日付けで拒絶査定がなされ、その謄本は同年11月4日に請求人に送達された。
これに対し、平成27年3月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出された。
その後、本件審判請求は、特許法第162条に規定する審査(前置審査)に付され、平成27年5月27日付けで審査官より拒絶の理由が通知され、請求人に対して期間を指定して意見書の提出を求めたが、請求人より何らの応答もなかったことから、特許法第164条第3項の規定による審査の結果の報告が特許庁長官になされた(前置報告書)。

第2 平成27年3月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年3月3日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項27を次のとおりに補正(下線は補正箇所を示す。)する補正事項をその一部に含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項27の記載
「【請求項27】
メモリ内に複数の治療投与プロトコルが格納された分析物測定装置の操作方法であって、前記メモリはプロセッサと連絡し、前記プロセッサはユーザインプットとインターフェイスし、様々なアウトプット情報を提供するように構成され、前記方法が、外部ソースから前記メモリ内にロードされたプロトコルを有する前記プロセッサにより生成された選択メニューにアクセスすること、
前記複数の治療投与プロトコルから1つの治療投与プロトコルを選択すること、
前記メモリ内に格納された1つ又は多数の分析物の量又は濃度値に基づいて、ユーザに投与されるべき治療薬の投与量情報をアウトプットすること、
前記アウトプットされた後、前記プロセッサが、治療薬の量を入力するよう促すこと、
を含む、方法。」
イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項27の記載
「【請求項27】
メモリ内に複数の治療投与プロトコルが格納された分析物測定装置の操作方法であって、前記メモリはプロセッサと連絡し、前記プロセッサはユーザインプットとインターフェイスし、様々なアウトプット情報を提供するように構成され、前記方法が、外部ソースから前記メモリ内にロードされたプロトコルを有する前記プロセッサにより生成された選択メニューにアクセスすること、
前記複数の治療投与プロトコルから1つの治療投与プロトコルを選択すること、
前記メモリ内に格納された1つ又は多数の分析物の量又は濃度値に基づいて、ユーザに投与されるべき治療薬の投与量情報をアウトプットすること、
前記アウトプットされた後、前記プロセッサが、治療薬の量を入力するよう促すこと、
前記プロセッサが、特定の時間窓内での治療薬投与量が予設定最小限を下回る場合に投与が再開されると、投与の非遵守の理由を入力するよう促すと共に、入力された非遵守の理由が病気であると、医療提供者に接触するよう促すこと
を含む、方法。」

(2)本件補正の目的について
上記請求項27についての補正事項は、「プロセッサ」について、「特定の時間窓内での治療薬投与量が予設定最小限を下回る場合に投与が再開されると、投与の非遵守の理由を入力するよう促すと共に、入力された非遵守の理由が病気であると、医療提供者に接触するよう促す」点をさらに限定するものであるから、その補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。
そこで、本件補正後の請求項27に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明の産業上の利用可能性について
ア 上記1(1)イに説示したように、本件補正発明は、「メモリ内に複数の治療投与プロトコルが格納された分析物測定装置の操作方法」に係るものであって、その方法の手順には、「特定の時間窓内での治療薬投与量が予設定最小限を下回る場合に投与が再開されると、投与の非遵守の理由を入力するよう促すと共に、入力された非遵守の理由が病気であると、医療提供者に接触するよう促す」ことが含まれるものと認められる。
イ これに対して、請求人が、本件補正により特定された「プロセッサが、特定の時間窓内での治療薬投与量が予設定最小限を下回る場合に投与が再開されると、投与の非遵守の理由を入力するよう促すと共に、入力された非遵守の理由が病気であると、医療提供者に接触するよう促す」特定事項の補正の根拠として示す、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】及び【0042】には、つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0041】
図7は、分析物測定装置の操作方法を示す例示的な流れ図を示す。方法700は、工程702、704、706、708、及び710を含んでもよい。工程702は、前回の分析物測定値及び治療薬投与量結果を検索することを含む。これらの実施形態において、前回の分析物測定値及び治療薬投与量結果は、分析物測定装置のメモリ、又は分析物測定装置に結合した着脱式メモリから検索される。工程704は、分析物測定装置のユーザが、推奨される分析物測定及び推奨される投与プロトコルを遵守したか否かを決定することを含む。遵守は、特定の時間窓内で分析物測定及び治療薬投与量を作製することを含んでもよい。工程706は、遵守が予設定最小限を下回る場合、分析物測定装置のユーザに推奨される投与プロトコルを再開するよう促すことを含む。」
(イ)「【0042】
工程708は、推奨される投与プロトコルを再開することを含む。工程710は、推奨される投与プロトコルの再開の記録を、分析物測定装置のメモリに格納することを含む。これらの実施形態において、方法は、ユーザに非遵守の理由を入力するよう促す、ことを更に含んでもよい。これらの実施形態において、方法は、非遵守の理由が病気である場合、推奨される投与プロトコルを再開する前に、医療提供者と接触するようユーザに提案する、ことを更に含んでもよい。これらの実施形態において、医療提供者は、遵守の限界を予設定することができる。これらの実施形態において、分析物測定装置は、分析物測定又は治療薬投与量に関して非遵守の場合、推奨される投与プロトコルを自動的に再開することができる。これらの実施形態において、分析物測定装置は、ユーザがある予設定時間の間、非遵守の場合、推奨される投与プロトコルを自動的に再開することができる。」
ウ 上記イの記載によれば、本件補正発明の上記アの手順が実行される間には、少なくとも、「分析物測定装置のユーザ」が、「推奨される分析物測定及び推奨される投与プロトコルを遵守したか否かを決定する」ために、「特定の時間窓内で分析物測定及び治療薬投与量を作製することを含」む点について記載されており、ここでの「特定の時間窓内」で「治療薬投与量を作製する」ためには、その時間内において「治療薬」が投与されることが前提であり、その投与は、ユーザが注射により行うものであることは、例えば段落【0016】において「治療薬送達装置」について「・・・分析物測定及び管理装置100は、ユーザ作動式の治療薬送達装置と共に使用される。この関連で、用語「ユーザ作動式」は、単一の治療薬送達事象を開始するのに装置とユーザとの間の手動相互作用が必要であり(例えば、ユーザが装置上のボタンを押す)、そのような手動相互作用の不在下では治療薬がユーザに送達されない治療送達装置を指す。・・・そのようなユーザ作動式の治療薬送達装置の別の非限定的な例は、インスリンペン12である。インスリンペンは、インスリンのバイアル又はカートリッジが負荷され、使い捨て針に取り付けられる。インスリンペンの一部は再使用可能であってもよく、又はインスリンペンは完全に使い捨てであってもよい。」と記載されていることからも明らかといえる。
してみると、本件補正発明の操作方法には、「注射」という人体に対する外科的処置が含まれるものであって、その方法には、人間を手術する工程が含まれるものと言わざるを得ない。
エ 上記のことからすれば、本件補正発明は、人間を手術する方法に該当するものであって産業上利用することができる発明に該当しないから、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たさないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、請求人は、上記と同様の理由を通知した前置審査における拒絶の理由に対して何らの応答もしていない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成26年4月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】
糖尿病管理システムであって、
分析物測定装置を備え、前記分析物測定装置は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたプロセッサ及びメモリと、
前記プロセッサと連絡して、概して体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニットと、
前記プロセッサと連絡して、分析物及び治療薬に関する情報を表示するディスプレイと、
前記プロセッサ及びメモリと結合して、第1の無線モジュールにより受信したデータを前記メモリに格納する第1の無線モジュールと、
を含み、
前記プロセッサは、治療薬の量を入力するよう前記ディスプレイに表示し、
治療薬送達装置を備え、前記治療薬送達装置は、
送達装置ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、ユーザ又は医療提供者による作動により前記ユーザに前記薬剤の投与量を送達する送達機構と、
前記ハウジングに配置され、ユーザからの促し又は任意の行動なしに、前記第1の無線モジュールにシグナルを自動的に伝送するように構成された第2の無線モジュールと、
を含み、前記シグナルが、
(a)送達される治療薬のタイプ、
(b)前記ユーザに送達される治療薬の量、又は
(c)前記治療薬を投与する治療薬装置のタイプ、
を示す、糖尿病管理システム。」

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)引用例1(特表2002-531154号公報)
ア 本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-531154号公報(以下、「引用例1」という。)には、つぎの事項が記載されている。(下線は、当審が付加した。)
(ア)「【0005】
必要とされる全てのものをすぐに使える状態にしておくことを確実にする一つの手法は必要な装置の幾つかを単一の一体的なユニットにすることである(例えば、米国特許第5,536,249号公報及び同第5,593,390号公報を参照)。このような多機能な装置は、通常、製造及び使用の両方に関して非常に複雑となることから、これは理想的な解決方法ではない。人々は自己治療のための装置の使用方法に通じ、安心があり、自信を持っている必要があるが、このような一体的な多機能装置はこれらを与えてはくれないのである。
【0006】
複数の機能を1つの機器に統合することの他の欠点は、商業上の販路を考えて、製造者が、全ての可能性ではなく、その機器が十分に大きな使用者集団に適したものにするために、最も重要な可能性のみを統合することである。こうして統合されていない機能は、典型的には異なる構造の別個の機器によって与えなくてはならなくなり、このことは、複数の機器が相互に正しく機能しているかについて不安を起こさせやすくし得る。
【0007】
さらに、一体的な多機能装置の機能及び個々の装置は、他の全てを最新のものへ更新(アップデート)せずにアップデートするのは、不可能ではないにしても、非常に困難である。
【0008】
本発明によれば、例えば糖尿病の治療に関連するそれぞれの機能に対して、ランセット装置、体液分析装置、予め定められた量の薬物を患者へ投与するための単数又は複数の薬物投与装置のような別個の装置を配置することが可能である。さらに、例えば、血液分析装置用の試験ストリップ(試験片)、針、血液を拭き取るためのナプキン、余分なインスリンカートリッジ、ブドウ糖錠剤、廃棄容器などといった、糖尿病患者が使用する幾つかの他の補助物が存在する。
【0009】
本発明の目的は、機能及び情動の両方でのより高い安全水準と、患者への有効なフィードバックとが得られるように、疾病の自己治療のために患者によって使用される複数の機器/ユニットに関連する電子データの有効な監視を行う方法を提供することにある。」
(イ)「【0045】
図2はキャップ10を備えた投与装置20を示しており、ここでは、キャップ10が機能主モジュール(すなわち機能上の主モジュール)として指定されている。投与装置20は図1に示されている投与装置20に対応しているが、簡略化して示されている送信、記憶(蓄積)、受信手段12を有しているという付加的な特徴を備えている。これにより、投与装置20が、記憶されたデータ、すなわち、時間、日付、薬物の量及びタイプを記憶及び表示のために主モジュールの受信手段12を介して機能主モジュール10へ送信することが可能となる。その後、最後の2回の投与情報(時間、日付、薬物のタイプ及び量)を主モジュールの表示装置11上で容易に見ることができるようになる。主モジュール10がない又は作動していなければ、例えば、使用者が主モジュール10を停止させていた又は主モジュール10が壊れていたならば、投与装置20は、主モジュール10が利用可能となり患者が投与装置20上で情報を見ることができるようになるまで単に情報を局所的に(すなわち端末に)記憶しておくか又は新しい機能主モジュールを指定する。」
(ウ)「【0046】
投与装置20はさらに主モジュール10から受信手段12を介して情報を受信することができる。この情報は、例えば、医師や専門治療チームによって又は例えば記憶されているレジメに従って自動的に、遠隔操作で指示された予め定められた薬物の量とすることができる。このとき、受信した情報は、投与する薬物の正確な量を自動的に設定し患者がその面で悩む必要がないようにするために使用される。このことは、特に患者が新規の使用者や年輩の使用者や障害のある使用者である場合に、大きな利点となる。
【0047】
BGM30がさらに示されており、BGM30は、ボタン36を操作することによって、BGM30による分析のための血液サンプルを含んだ試験ストリップ52を挿入するための手段34を有している。分析の結果は、記憶され、表示装置32に表示されるか、又は記憶のため及びより大きな表示装置11上での表示のために送信手段12を介して主モジュール10へ送信される。患者は、同時に、所定時間の間の最後の2回の結果を提供されることができる。」
(エ)「【0053】
図4はBGMを備えたキャップと2つの投与装置とを示している。キャップ10及びBGM30は図2?図3に関して既に説明されたユニットに対応している。図2?図3に示されている投与装置20よりも寸法が小さいが機能が類似である2つの投与装置80、90がさらに示されている。
【0054】
2つの投与装置80、90は、2つの異なる種類のインスリン、例えば即効性のインスリンと長時間作用性のインスリンとを収容することが可能である。このようにして、使用者は、将来的な時間範囲の間に、例えば週末旅行などの間に、必要となる全ての装置を非常に小型の形態にしてすぐに使用できるように準備しておくことができる。これにより、使用者は、より大きな時間尺度では投与装置80、90の一方の長時間作用性インスリンを投与して自分の血糖値の釣り合いを保ち、即効性インスリンを必要としているかを確認するために定期的を基本としてBGM30を使用し、それに従って他方の投与装置により即効性インスリンを投与することができる。各投与装置は、それぞれの通信手段12を介したBGM30との通信に基づいて、予め定められた量の薬物を与えることができる。
【0055】
さらに、個々の投与装置80、90は、上述したプロトコルの1つに従って互いと通信してデータを交換し、それによって、それらが局所的に記憶している情報を監視し、自己治療システムに所属している各ユニットが他のユニットの情報及び状態を分かっているように又は少なくともそれらを受信することができるようにできる。このことは、例えば使用者の家庭に設けられ情報の収集全般に責任を負っているユニットと情報を交換する必要があるのは投与装置80、90の一方のみでよいという効果をさらに有している。」
(オ)「【0063】
図7は本発明の実施態様によるBGMの略機能線図を示している。BGMは、以下の機能ブロック、すなわち、「制御装置」と、「受信手段」と、「送信手段」と、「記憶手段」と、「表示手段」と、「血糖値/濃度の測定」とから構成されている。
【0064】
中央のブロックは、他の全機能ブロックの仕事並びに処理情報を調整、監視、制御する機能ブロック「制御装置」である。「受信手段」及び「送信手段」は、それぞれ、情報データの受信及び送信を担当している。機能ブロック「血糖値/濃度の測定」は、例えば血液サンプルを含んだ試験ストリップの血糖値/濃度の測定を行う。「表示手段」は、患者に関連する情報、例えば測定の結果及び測定の時間及び日付を含んだタイムスタンプを表示することができる。測定の結果は後で読み出しするために「記憶手段」に記憶され、さらに「送信手段」によって他の機器(例えば機能主モジュール)へ送られることが可能である。これら全ての仕事は「制御装置」ブロックの監督及び調整の下で行われる。
【0065】
よって、本発明によるBGMは以下のようにして操作することができる。血糖値/濃度の測定の要求が「入力手段」を通して患者によって又は「受信手段」を通して他の機器によってなされると、制御装置はその要求を受信して、「血糖値/濃度の測定」ブロックを機能させ、「血糖値/濃度の測定」ブロックは、患者が血液サンプルを含んだ試験ストリップを機器のスロットに挿入したときに、血糖値の測定を開始し、実行する。校正用試験ストリップの挿入によって、前もって、測定装置の校正を行うことができる。次に、測定の結果及びタイムスタンプが記憶手段に伝達され、制御装置は、他の装置、好ましくは機能主モジュールが作動しており範囲内にあれば、送信手段を介してそれにその結果を送ることができる。
【0066】
これら全ての機能ブロックは、従来技術の構成要素又は標準的な構成要素によって実施することができる。「制御装置」と標識されたブロックは、例えば任意のタイプのCPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ソフトウェアが入っているEEPROM(電気的消去可能ROM)又はROM、ファームウェアなどによって実施することができる。機能ブロック「記憶手段」は標準的なRAMとすることができる。
BGMは本発明により使用され得る機器の例に過ぎない。他の任意の体液分析装置、例えば脂質モニタ又は類似のものを使用することができる。 」
(カ)「【0067】
図8は本発明の実施態様による投与装置の略機能線図を示している。投与装置は、以下の機能ブロック、すなわち、「制御装置」と、「受信手段」と、「送信手段」と、「記憶手段」と、「表示手段」と、「入力手段」と、「適用量の薬物の投与」とからなる。これら機能ブロックは、ブロック「適用量の薬物の投与」を除いて、図7のBGMについて前述した各ブロックに対応するものであり、したがって、再度説明はしない。
【0068】
機能ブロック「適用量の薬物の投与」は、適用量の薬物、例えばインスリンを投与する。薬物の量は、「入力手段」を通して患者によって設定されるか、又は「受信手段」を介して受信された情報に従って「制御装置」ブロックによって電気機械的に設定され得る。この情報は、医師、専門治療チームによって、又は年輩者や身体障害者が適用量の薬物を投与するためにしなくてはならないのは入力手段を通して投与装置を作動させることのみとなるように自動的に、指示され得る。投与装置の作動後、情報、例えば薬物の種類(長時間作用性インスリン又は即効性インスリン)、薬物の量及び対応するタイムスタンプ(日付及び時間)が、「記憶手段」に記憶され、機器(好ましくは機能主モジュール)へ送信される。」
(キ)「【0070】
図9は本発明の実施態様による機能主モジュールの略機能線図を示している。主モジュールは、以下の機能ブロック、すなわち、「制御装置」と、「受信手段」と、「送信手段」と、「記憶手段」と、「表示手段」と、「入力手段」と、「外部機能」とからなる。これら機能ブロックは、ブロック「外部機能」を除いて、図7を参照して前述したブロックに対応しており、したがって、再度説明はしない。
【0071】
機能主モジュールは、それ自体と他の存在し且つ作動している全ての機器との間の情報及びデータの交換の調整、監督及び制御を担当しているモジュールである。これら機器は、どの機器が存在し且つ作動しているかを主モジュールが常に分かるように、機器が範囲内にあるときに、機器自体を主モジュールに識別させる。さらに、主モジュールは、例えばさらに他の記憶及び処理のために、特定のユニットを介して、後で外部のユニット/システム(例えばコンピュータ又はデータベース)へ読み出す且つ/又は送信するべく、個々の機器で生成された全ての情報及びデータを受信、記憶する。関連する情報は、主モジュールの相対的に大きな表示装置上に表示され、患者によって操作され得る。
【0072】
主モジュールの仕事の一部は外部ユニットで実施することができ、逆もまた可能である。
主モジュールは、図9において機能ブロック「外部機能」によって表されているような機器の何れかとすることができるが、この実施態様では、図2?図4に示されているキャップユニット10であり、それ自体は外部機能を有していない。他の機能はこのブロックで容易に実施され得る。」
(ク)図2


(ケ)図2から、キャップ10とBGM30が一体に形成されていること、キャップ10、BGM30、及び投与装置20が、それぞれハウジングを有するものであることが見て取れる。

イ 引用例1に記載された発明について
上記ア(ア)ないし(キ)の記載並びに、(ク)の図面及び(ケ)の認定事実を総合して整理すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「 BGM30と一体化された機能主モジュールとして指定されているキャップ10を備えた投与装置20であって、
投与装置は、ハウジングを有するものであり、制御装置と、受信手段と、送信手段と、記憶手段と表示手段と入力手段と適用量の薬物の投与手段とからなり、適用量の薬物の投与手段は、適用量の薬物、例えばインスリンを投与するものであり、記憶された時間、日付、薬物の量及びタイプを含むデータを記憶及び表示のために機能主モジュールであるキャップ10の受信手段12を介して機能主モジュールであるキャップ10へ送信することが可能とされており、医師、専門治療チームによって、又は年輩者や身体障害者が適用量の薬物を投与するためにしなくてはならないのは入力手段を通して投与装置を作動させることのみであり、
BGM30は、ハウジングを有するものであり、任意のタイプのCPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ソフトウェアが入っているEEPROM(電気的消去可能ROM)又はROM、ファームウェアなどによって実施される制御装置と、標準的なRAMからなる記憶手段と血液サンプルを含んだ試験ストリップの血糖値/濃度の測定を行う血糖値/濃度の測定手段と、患者に関連する情報、例えば測定の結果及び測定の時間及び日付を含んだタイムスタンプを表示することができる表示手段とから構成されており、分析の結果は、記憶のため及びより大きな表示装置上での表示のために送信手段を介して機能主モジュールであるキャップ10へ送信されるよう構成されており、
機能主モジュールであるキャップ10は、ハウジングを有するものであり、制御装置と、受信手段と送信手段と記憶手段と表示手段と入力手段と外部機能とからなるものである投与装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)
(2)引用例2(特表2007-510469号公報)について
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特表2007-510469号公報(以下、「引用例2」という。)には、つぎの事項が記載されている。(下線は当審が付加した。)
ア 「【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス-リファレンス
本出願はその開示内容の全体が本明細書で参照文献として引用される2003年11月6日に出願された米国仮特許出願第60/518,571号の優先権を主張している。
【0002】
本発明は大まかに言って使用者ベースの薬剤導入システムに関する。より詳しく言うと、本発明はコンテナまたはケース内に収容された薬剤導入器具すなわちペンを含みペンがケース内に存在することまたはペンがケースの近くあることがケース内で構成された手段によってまたはシステムに収容されたメーターまたはパーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)のようなシステムのひとつまたは複数の別のコンポーネントによって検出される薬剤導入システムに関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤注入装置および生理的液体特性監視装置は医療分野で知られている。それらの装置の非常に一般的なひとつの用途は糖尿病患者にインスリンを導入し患者の血糖値を監視することである。それらの装置の携帯の容易さおよび用い易さが増加することによって糖尿病患者は自己管理した治療プログラムで服用できるようになりそれによって患者の自律性およびプライバシーのレベルが高められる。このことは糖尿病患者の血糖値は毎日または毎時間変化することもあるのでとりわけ有益である。」
イ 「【0030】
使用時には、システム2は図3のブロック図に示されたひとつまたは複数のいずれかのプロトコルに基づいて動作するように構成されている。図3のプロトコル30では、薬剤導入装置12および薬剤導入装置13がケース10から取り出されたとき、またはケース
10からある特定の距離だけ離されたとき(ステップ32)、検出器またはセンサー21は薬剤導入装置が取り外されたことを示し好ましくはそのイベント(事象の発生)のタイムスタンプを詰める(crating)信号をメーター11に送る。これによってメーター11がトリガされて作動を開始し映像を(ディスプレー22に)表示し使用者に音響的に(図示されていないマイクロフォンによって)促進しまたは問い合わせる(ステップ34)。例えば、使用者は血糖値の測定を行うようにまたは薬剤導入情報を入力するように問い合わされまたは催促されることもある。使用者がメーター11を用いて血糖値の測定を行うと、メーター11は使用者にヘルスケアプラクティショナー(Health Care Practitioner:HCP)から入力されたアルゴリズムおよび/または使用者によって予めまたはそのときに入力されたパラメーターに基づいて指定されたインスリンの投薬量を示して催促する(ステップ36)。使用者は指定された投薬量で薬剤導入装置12を用いて自分自身への投与を行うことも行わないこともある。使用者はリアルタイムの状況が指定された投薬量以外での服用を必要とする場合には指定された以外の投薬量での服用を選択することもある。そのような状況は、例えば糖尿病患者による見込まれたすなわち典型的な摂取量の炭水化物に対する変化があった場合、すなわち、食事中に患者が食事の前に見込んでいた量よりも多いまたは少ない量の炭水化物を食べたことに気づいた場合などがある。別の場合には、患者は血糖値の測定を選択しないにもかかわらずある投薬量のインスリンを投与することもある。これは、患者の血糖値が例えば食事の後のように時刻によらずかなり予測できる場合に起こり得るシナリオである。血糖値の測定が行われない場合、メーター11は使用者にある投薬量のインスリンが投与されたか否かを問い合わせて、インスリンが投与されていた場合には使用者に薬剤の投薬量の情報を入力し検証するように要求する(ステップ38)。投薬量の情報の入力を容易にするために、システムは例えば1単位のインスリンというような設定されたデジタル読み取り値を最初に表示するように構成されていて、使用者はその読み取り値を好ましくはメーター11またはPDAのアップ・ダウントグルキーによって調節するようになっていることもある。投薬量が入力されるとメーター11は投薬量データをメーターのメモリに記憶する。投薬量のデータは次に無線通信装置15を介して自動的に外部の装置16に伝達されるか使用者が伝達するように催促される。薬剤導入装置12および薬剤導入装置13がケース10内に戻されると、メーター11はトリガされてターンオフすることもある。
【0031】
図3のプロトコル40のフロー図に示されているように、システム2およびメーター11は使用者によって作動されるスイッチによって作動を開始および停止されて(ステップ42)使用者が利用可能なシステムメモリのチェック、データ、アルゴリズム、またはプログラムのダウンロード、データの送信および入力、メーターまたはPDAのカスタム化すなわちフォーマットのような複数の機能を実行できる(ステップ44)ように構成されている。プロトコル50のフロー図に示されているように、メーター11は試験細片18をメーター11に挿入することによって作動を開始(ステップ52)してそれによってプロトコルのフロー図30に示されているのと同様のプロトコル・ステップ(ステップ54からステップ64)がトリガされるようにも構成されている。」

3 本願発明と引用発明1との対比・判断
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 本願発明の「分析物測定装置」と引用発明1の「BGM」と一体化された「キャップ10」との対比
(ア)引用発明1の「BGM」は「血液サンプルを含んだ試験ストリップの血糖値/濃度の測定を行う血糖値/濃度の測定手段」を備え、また、「患者に関連する情報、例えば測定の結果及び測定の時間及び日付を含んだタイムスタンプを表示することができる表示手段」を備えているものであるから、BGMは、血液サンプルの血糖値の測定結果を表示することができるものであるといえる。
そして、引用発明1の「BGMと一体化されたキャップ10」は、BGMが備える機能をもつ装置であるといえる。
ここで、本願発明の「概して体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニット」との特定事項における「概して」が特定する技術的内容は明確ではないものの、「概して」の意味が「ひっくるめて。一般的にいって。大体。おおむね。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であることからすれば、当該「測定ユニット」が、「体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニット」を特定するものであることに他ならない。
してみると、引用発明1の「BGMと一体化されたキャップ10」は、分析物測定機能を備える装置である点で、本願発明の「分析物測定装置」と共通するものといえる。
(イ)また、引用発明1の「BGM」が備える「血液サンプルを含んだ試験ストリップの血糖値/濃度の測定を行う血糖値/濃度の測定手段」、「任意のタイプのCPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ソフトウェアが入っているEEPROM(電気的消去可能ROM)又はROM、ファームウェアなどによって実施される制御装置」、「標準的なRAMからなる記憶手段」は、それぞれ、本願発明の分析物測定装置が含むところの、「概して体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニット」、「プロセッサ」、「メモリ」に相当するものである。
(ウ)そして、引用発明1がハウジングを有するものであるところ、このハウジング内に「制御装置」や「記憶手段」が配置されていること、「測定手段」や「表示手段」が「制御手段」と連絡してそれぞれの動作を行うものであることは、技術的に明らかであるし、引用発明1がそのようなものであることは、上記2(1)ア(オ)の段落【0064】の記載から裏付けられる。
(エ)引用発明1の「キャップ10」は、「ハウジングを有するものであり、制御装置と、受信手段と送信手段と記憶手段と表示手段と入力手段と外部機能とからなるものであ」り、「投与装置」からの「記憶された時間、日付、薬物の量及びタイプを含むデータ」を受信し、表示するものであるし、BGMからの分析結果を受信して、表示するものといえるし、引用発明1の「キャップ10」は、投与装置から伝送されたデータを受信する受信手段12を有するものである。
そうすると、引用発明1の「BGMと一体形成されたキャップ10」と本願発明の「分析物測定装置」とは、「分析物測定機能を有する装置」であって、「当該装置が備えるプロセッサと連絡し、分析物及び治療薬に関する情報を表示するディスプレイ」と「当該装置が備えるプロセッサ及びメモリと結合して受信したデータをメモリに格納する手段」を有する限りで共通するものといえる。
(オ)上記(ア)ないし(エ)をまとめると、本願発明の「分析物測定装置」と引用発明1の「BGMと一体化されたキャップ10」とは、「分析物測定機能を備える装置は、分析物測定装置のハウジング内に配置されたプロセッサ及びメモリと、前記プロセッサと連絡して概して体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニットと、分析物及び治療薬に関する情報を表示するディスプレイと、プロセッサ及びメモリと結合して受信したデータをメモリに格納する手段を含」むものである点で共通する。
イ 本願発明の「治療薬送達装置」と引用発明1の「投与装置」との対比
(ア)引用発明1の「投与装置」は、「適用量の薬物」を患者に投与する装置であるから、本願発明の「治療薬送達装置」といい得るものである。
(イ)引用発明1の「投与装置」は、「適用量の薬物の投与手段」からなり、「医師、専門治療チームによって、又は年輩者や身体障害者が適用量の薬物を投与するためにしなくてはならないのは入力手段を通して投与装置を作動させることのみであ」るから、本願発明の「治療送達装置」の備える「ユーザ又は医療提供者による作動により前記ユーザに前記薬剤の投与量を送達する送達機構」を有するものであることは、技術的に明らかである。
(ウ)引用発明1の「投与装置」は、「送信手段」を有し、「記憶された時間、日付、薬物の量及びタイプを含むデータを記憶及び表示のために主モジュールの受信手段12を介して機能主モジュール10へ送信することが可能とされて」いるものであるから、本願発明の「治療薬送達装置」の「前記ハウジングに配置され、ユーザからの促し又は任意の行動なしに、前記第1の無線モジュールにシグナルを自動的に伝送するように構成された第2の無線モジュール」を含み、前記シグナルが、(a)送達される治療薬のタイプ、(b)前記ユーザに送達される治療薬の量、又は (c)前記治療薬を投与する治療薬装置のタイプ、を示す」ものとは、「治療薬送達装置」が「ユーザからの促し又は任意の行動なしに、シグナルを自動的に伝送するように構成された手段」を含み「前記シグナル」が「(a)送達される治療薬のタイプ、(b)前記ユーザに送達される治療薬の量」である点で共通するものといえる。
(エ)引用発明1の「投与装置」は、ハウジングを備えており、適用量の薬物の投与手段がハウジング内に配置されていることや「受信手段12」がハウジングに配置されていることは、図2から明らかである。
(オ)上記(ア)ないし(エ)をまとめると、本願発明の「治療薬送達装置」と引用発明1の「投与装置」とは、「前記治療薬送達装置は、送達装置ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、ユーザ又は医療提供者による作動により前記ユーザに前記薬剤の投与量を送達する送達機構と、前記ハウジングに配置され、ユーザからの促し又は任意の行動なしに、シグナルを自動的に伝送するように構成された手段と、を含み、前記シグナルが、(a)送達される治療薬のタイプ又は(b)前記ユーザに送達される治療薬の量を示す」ものである点で共通するものといえる。
ウ 引用発明1の「投与装置」は、BGMと一体化された機能主モジュールとして指定されているキャップ10を備えるものであるところ、この「投与装置」及び「キャップ10」からシステムが構成されているものである。
また、引用発明1の「投与装置」がインスリンを投与するものであり、「BGM」は、血糖値をの測定を行い、測定の結果を表示するものであり、機能主モジュールであるキャップ10は、表示手段を備え、投与されたインスリンの量やタイプを受信して記憶・表示を行うものである。
してみると、投与装置及びBGMと一体化されたキャップ10からなるシステムは、糖尿病管理システムであるといえる。
エ 以上アないしウでの対比を踏まえると、本願発明と引用発明1とは、つぎの点で一致し、つぎの相違点で相違する。
<一致点>
糖尿病管理システムであって、
分析物測定装置のハウジング内に配置されたプロセッサ及びメモリと、
前記プロセッサと連絡して概して体液中の分析物の量を表す数値を提供する測定ユニットと、
分析物測定機能を有する装置が備えるプロセッサと連絡し、分析物及び治療薬に関する情報を表示するディスプレイと、
分析物測定機能を有する装置が備えるプロセッサ及びメモリと結合して受信したデータをメモリに格納する手段を含み、
治療薬送達装置を備え、前記治療薬送達装置は、
送達装置ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、ユーザ又は医療提供者による作動により前記ユーザに前記薬剤の投与量を送達する送達機構と、
前記ハウジングに配置され、ユーザからの促し又は任意の行動なしに、シグナルを自動的に伝送するように構成された手段と、を含み、前記シグナルが、
(a)送達される治療薬のタイプ又は(b)前記ユーザに送達される治療薬の量を示す
糖尿病管理システム。」
<相違点1>
本願発明は「ディスプレイ」及び「第1の無線モジュール」が「分析物測定装置」に含まれるものであり、「ディスプレイ」は「分析物測定装置」の「プロセッサ」と連絡し、「第1の無線モジュール」は「分析物測定装置」の「プロセッサ」及び「メモリ」と結合するものであり、「治療薬送達装置」の「第2の無線モジュール」は、分析物測定装置に含まれる「第1の無線モジュール」にシグナルを伝送するよう構成されているのに対して、引用発明1の「表示手段」及び「受信手段」は「BGMと一体化されたキャップ10」に含まれるものであり、引用発明1の「投与装置」は「キャップ10」の「受信手段」にデータを送信するように構成されているものであって、データの送信が無線であるか否かが不明である点

<相違点2>
本願発明の「分析物測定装置」に含まれる「プロセッサ」が「治療薬の量を入力するようにディスプレイに表示」するものであるのに対して、引用発明1には、「BGMと一体化されたキャップ10」は、そのような表示を行うものであるのか否かが不明である点

(2)判断
ア 相違点1について
(ア)上記2(1)ア(キ)には、引用発明1において、機能主モジュールは、「外部機能によって表されているような機器の何れかとすることができる」(段落【0072】)と記載されているように、引用発明1の「キャップ10」が備える機能主モジュールをその他の機能を有するいずれかの装置、すなわち「BGM」とすることについても示唆されている。
(イ)上記示唆に接した当業者であれば、引用発明1において、「BGMと一体化されているキャップ10」のもつ機能を、「BGM」が備えるようにすることは、容易に想到し得るものといえるし、そのようにすることに格別の技術的困難性はない。
そして、「キャップ10」のもつ機能を「BGM」が備えるようにすること、すなわち、「キャップ10」の「表示手段」及び「受信手段」をBGMが備えるようにした場合には、表示手段及び受信手段は、BGMが備える「プロセッサ」や「メモリ」と連絡、結合されるものとなることは技術的に明らかである。
(ウ)引用発明1において、機能主モジュールであるキャップ10の「表示手段」及び「受信手段」を「BGM」に備えるように構成すると、引用発明1の「投与装置」は、「BGM」が備える受信手段にデータを送信するように構成されることになることは明らかである。
(エ)また、複数の機器間でデータを無線で相互に送受信するための無線モジュールは、本願優先権主張日前において慣用されるデータ通信手段といえるから、引用発明1の「BGM」、「キャップ10」及び「投与装置」の間でデータを伝送する手段として無線モジュールを採用することも当業者が適宜選択し得る程度のことというべきである。
(オ)してみると、引用発明1において、「キャップ10」が備える「表示装置」及び「受信手段」の機能を、「BGM」が備える「表示手段」及び「受信手段」が奏するように構成し、無線モジュールによりデータを伝送するようにすることにより、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことというべきである。
イ 相違点2について
上記2(2)に説示した事項から、引用例2には、「血糖値の測定をメータ11を用いて行った結果を用いてインスリンの投薬量を示して催促した場合に、使用者が指定された以外の投薬量を投与を行わない場合に、当該メータ11により、使用者にインスリンの投薬量の情報を入力することを要求する」ものが記載されていると認められるところ、引用発明1においても、このような必要性が生じる場合が想定されることは明らかである。
そして、引用発明1のものにおいても必要とされる場合に、引用例2に記載されているような「使用者にインスリンの投薬量の情報を入力することが要求する」機能を奏するようにすること、すなわち、機能主モジュールにそのような機能を備えるように構成することに格別の困難性はない。
また、機能主モジュールの機能をBGMが備えるようにすることの容易性については、上記アで検討したとおりであるし、ここでの「使用者にインスリンの投薬量の情報を入力することが要求する」機能を機能主モジュールが備えるようにすることが、上記アでの検討に影響を与えるものでもない。
以上のとおりであるから、引用発明1に引用例2に記載の技術を適用し、本願発明の相違点2に係る構成のようにすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
ウ 本願発明の効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用例1及び2に記載された事項並びに本願優先権主張日前の技術常識に基づいて当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用例2に記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
上記で検討したように、本願発明は、本願優先権主張日前に頒布された引用発明1に記載された発明及び引用例2に記載の技術並びに周知技術事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-13 
結審通知日 2016-04-19 
審決日 2016-05-06 
出願番号 特願2011-518932(P2011-518932)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 尾崎 淳史
小川 亮
発明の名称 分析物測定及び管理装置並びに関連した方法  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  

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