ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N |
---|---|
管理番号 | 1319947 |
審判番号 | 不服2015-19925 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-05 |
確定日 | 2016-10-18 |
事件の表示 | 特願2011-167340「吸引式ガス検知器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 29474、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年7月29日を出願日とする特許出願であって、平成27年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、同査定の謄本は同年8月11日に請求人に送達された。 これに対し、同年11月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出された。 その後、当審において平成28年6月21日付けで最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年8月25日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 (1)請求項1について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、つぎのとおりに補正する補正事項(以下、「補正事項1」という。下線は、本件補正による補正箇所を示す。)をその一部に含むものである。 「【請求項1】 ガスが導入されるガス導入口と、ガスが排出されるガス排出口と、前記ガス導入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、前記ガス導入口を介して前記ガス流路にガスを吸引するガス吸引手段と、前記ガス流路に吸引されたガスを検知するガス検知素子とを備える吸引式ガス検知器であって、 前記ガス排出口が、ハウジングの表面に開口して設けられており、前記ガス流路とは別の部分としての壁部が前記ガス排出口を囲むように且つ前記ハウジングの表面から突出するように立設されており、該壁部に、前記ガス排出口と外部とを連通する連通部が複数設けられている吸引式ガス検知器。」 (2)段落0006について 本件補正は、段落0006を、つぎのとおりに補正する補正事項(以下、「補正事項2」という。下線は、本件補正による補正箇所を示す。)をその一部に含むものである。 「【0006】 本発明の吸引式ガス検知器に係る第1特徴構成は、ガスが導入されるガス導入口と、ガスが排出されるガス排出口と、前記ガス導入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、前記ガス導入口を介して前記ガス流路にガスを吸引するガス吸引手段と、前記ガス流路に吸引されたガスを検知するガス検知素子とを備える吸引式ガス検知器であって、前記ガス排出口が、ハウジングの表面に開口して設けられており、前記ガス流路とは別の部分としての壁部が前記ガス排出口を囲むように且つ前記ハウジングの表面から突出するように立設されており、該壁部に、前記ガス排出口と外部とを連通する連通部が複数設けられている点にある。 第2特徴構成は、前記複数の連通部は、それぞれ異なる方向で外部と連通する点にある。」 2 補正の適否 (1)特許法第17条の2第3項及び第4項について 補正事項1及び2における、「ガス排出口」が「ハウジングの表面に開口して設けられて」いること、及び、「壁部」が、「ガス流路とは別の部分」で、「ガス排出口を囲むように且つハウジングの表面から突出するように立設されて」いることは、出願当初の明細書の段落0032、図1(a),(b)、及び図7(a),(b)に記載された事項といえるから、 補正事項1及び2に特許法第17条の2第3項に違反するところはない。 また、補正事項1によって単一性の要件を満たす一群の発明から逸脱するとはいえないから、補正事項1に特許法第17条の2第4項に違反するところはない。 (2)補正の目的について 補正事項1は、請求項1に記載した発明(及び請求項1を直接的、間接的に引用する請求項2及び3に記載した発明)を特定するために必要な事項である「ガス排出口」について、「ハウジングの表面に開口して設けられて」いるとの限定を、「壁部」について、「ガス流路とは別の部分」で、「ガス排出口を囲むように且つ前記ハウジングの表面から突出するように立設されて」いるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1ないし3に記載された発明と補正後の請求項1ないし3に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、上記の限定により、「ガス排出口」及び「壁部」を明確化する補正でもあるので、同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当する。 (3)独立特許要件についての検討 本件補正の補正事項1によって補正された請求項1ないし3に記載された発明(以下、「補正発明1ないし3」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 特許法第29条第2項について (ア)刊行物の記載事項 本願の出願日前に公衆に利用可能とされ、原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3117308号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付加したものである。)。 a 「【請求項1】 試料ガス中に含まれる総揮発性有機化合物を測定するTVOC測定装置であって、 a)導入された試料ガス中の炭化水素濃度を測定する検出手段と、 b)試料ガスを吸引するポンプが途中に設けられた試料ガスの導入流路と、 c)該導入流路に吸引された試料ガスの一部を分岐して前記検出手段に導入する検出流路と、 d)前記導入流路に吸引された試料ガスのうちの前記検出流路に流れる分の残りを装置外部に排出するために、その途中に試料ガスの流通量を調節する弁が設けられ、末端部が装置外部に引き出された排出流路と、を備え、 前記排出流路にあって前記弁の下流側において装置外部に試料ガスを吐き出す排出経路を複数有することを特徴とするTVOC測定装置。 【請求項2】 一本の前記排出流路の末端部に複数の排気開口を前記排出経路として形成してなることを特徴とする請求項1に記載のTVOC測定装置。」 b 「【0018】 本実施例のTVOC測定装置の特徴的な構成として、排出流路3にあって圧力制御弁4の下流側にあたり、装置外部に露出するように配設されている末端部5において、排気経路が5a、5bの2つに分岐されている。したがって、圧力制御弁4を経て流れて来る試料ガスは、排気経路5a、5bのいずれからも装置外部に排出される。装置外部に露出した末端部5の具体的な構造を示すのが図2である。具体的には、この排出流路3の末端部5は例えば本測定装置の筐体の上面からさらに煙突状に上に突設されたものとすることができる。」 c 「【0019】 図2に示すように、この例では、排出流路3の管路自体は一本であるが、鉛直上方に開放された端面開口が第1排気経路5aとなり、管路にあって端面開口近傍の周壁に穿設された穴がもう1つの第2排気経路5bとなっている。即ち、第1排気経路5aは管路の軸方向の経路であり、f1で示す方向に試料ガスは放出される。他方、第2排気経路5bは管路の軸方向に垂直な経路であり、f1とは直交するf2で示す方向に試料ガスが放出される。」 d 「【0020】 これにより、測定者が測定実行中に誤って第1排気経路5aの一部又は全部を塞いでしまった場合でも、もう1つの第2排気経路5bを経て試料ガスの円滑な排出が確保できる。同様に、第2排気経路5bの一部又は全部を塞いでしまった場合でも、もう1つの第1排気経路5aを経て試料ガスの円滑な排出が確保できる。その結果、排出流路3と検出流路6との分岐点Pでのガス圧は何ら影響を受けず、検出流路6を通して水素炎イオン化検出器10に一定流量の試料ガスを送り続けることができる。」 e 「【0024】 1…導入流路 2…ポンプ 3…排出流路 4…圧力制御弁 5…末端部 5a、5b…排気経路 6…検出流路 7…流量抵抗管 8…圧力センサ 9…制御部 10…水素炎イオン化検出器(FID)」 f 図1 g 図2 h 上記aないしgの記載内容を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されている。 「試料ガス中に含まれる総揮発性有機化合物を測定するTVOC測定装置であって、 a)導入された試料ガス中の炭化水素濃度を測定する検出手段10と、 b)試料ガスを吸引するポンプ2が途中に設けられた試料ガスの導入流路1と、 c)該導入流路1に吸引された試料ガスの一部を分岐して前記検出手段10に導入する検出流路6と、 d)前記導入流路1に吸引された試料ガスのうちの前記検出流路6に流れる分の残りを装置外部に排出するために、その途中に試料ガスの流通量を調節する弁4が設けられ、末端部5が筐体から装置外部に突設された排出流路3と、を備え、 一本の前記排出流路3の末端部5に複数の排気開口を、前記末端部5の端面開口である第1排気経路5a、及び、前記末端部5の周壁に穿設された穴である第2排気経路5b、として形成してなるTVOC測定装置。」(以下、「引用発明1」という。) (イ)対比 補正発明1と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の「試料ガス」、「TVOC測定装置」、「検出手段10」、「筐体」及び「ポンプ2」は、それぞれ、 補正発明1の「ガス」、「吸引式ガス検知器」、「ガス検知素子」、「ハウジング」及び「ガス吸引手段」に相当する。 b 引用発明1の「導入流路1」は、「試料ガス」が「吸引され」る「流路」であり、その端部に「試料ガス」の「吸引口」を当然に備えるものであるから、 引用発明1の当該「試料ガス」の「吸引口」が、補正発明1の「ガス導入口」に相当する。 c 引用発明1の「排気開口」が、補正発明1の「ガス排出口」に相当する。 してみると、引用発明1の「導入流路1」、「検出流路6」及び「排出流路3」が一体となったものは、引用発明1の当該「試料ガス」の「吸引口」と引用発明1の「第1排気経路5a」を、連通するものであるといえるから、 引用発明1の「導入流路1」、「検出流路6」及び「排出流路3」が一体となったものは、 補正発明1の「ガス流路」に相当する。 d 引用発明1の「筐体から装置外部に突設された」「排出流路3の末端部5」「の周壁」と、 補正発明1の「前記ガス流路とは別の部分として」「前記ガス排出口を囲むように」「前記ハウジングの表面から突出するように立設されて」いる「該壁部」とは、 「ハウジングの表面から突出するように立設されている壁部」という点で共通する。 e 引用発明1の「末端部5の周壁に穿設された穴である第2排気経路5b」と、 補正発明1の「該壁部に」「設けられている」「前記ガス排出口と外部とを連通する連通部」とは、 「壁部に設けられている連通部」という点で共通する。 f 上記aないしeを踏まえると、補正発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。 <一致点> 「 ガスが導入されるガス導入口と、ガスが排出されるガス排出口と、前記ガス導入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、前記ガス導入口を介して前記ガス流路にガスを吸引するガス吸引手段と、前記ガス流路に吸引されたガスを検知するガス検知素子とを備える吸引式ガス検知器であって、 壁部が前記ハウジングの表面から突出するように立設されており、該壁部に、前記ガス排出口と外部とを連通する連通部が設けられている吸引式ガス検知器。」 <相違点1> 補正発明1は、「ガス排出口」が、「ハウジングの表面に開口して設けられて」いるのに対して、 引用発明1では、「排気開口」が、「末端部5の端面開口である第1排気経路5a、及び、末端部5の周壁に穿設された穴である第2排気経路5b、として形成」されている点。 <相違点2> 補正発明1は、「連通部」が、「ハウジングの表面に開口して設けられて」いる「前記ガス排出口を囲むように」「前記ガス流路とは別の部分として」「前記ハウジングの表面から突出するように立設されて」いる「該壁部に」「設けられている」「前記ガス排出口と外部とを連通する連通部」であるのに対して、 引用発明1では、「第2排気経路5b」が、「筐体から装置外部に突設された」「排出流路3の末端部5」「の周壁に穿設された穴である第2排気経路5b」である点。 <相違点3> 補正発明1は、「連通部」が、「複数設けられている」のに対して、 引用発明1では、「第2排気経路5b」が、「複数」設けられるのか明らかでない点。 (ウ)判断 上記相違点1ないし3について検討する。 a 相違点1及び2について 引用発明1の「末端部5の端面開口である第1排気経路5a、及び、末端部5の周壁に穿設された穴である第2排気経路5b、として形成」されている「排気開口」は、「筐体から装置外部に突設された」「末端部5」に設けることを意図しており、「筐体から装置外部に突設された」部分に形成されるものを、敢えて「筐体」の表面に移設することについて、引用発明1には、記載も示唆もないし、そのように構成する動機付けもあるとはいえない。 さらに、引用発明1の「排出流路3の末端部5」「の周壁」は、「排出流路3」と「一体」の部材であるから、これを、敢えて「別体」に切り離すことについて、引用発明1には記載も示唆もないし、そのように構成する動機付けもあるとはいえない。 以上をまとめると、引用発明1において、「連通部」が「設けられている」「排出流路3の末端部5」「の周壁」を「排出流路3」と「別体」とした上で、「筐体」の表面の「排気開口」を取り囲むようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平08-152383号公報(以下、「引用例2」という。)、及び、特開2000-310436号公報(以下、「引用例3」という。)にも、上記相違点1及び2に係る構成については、記載も示唆もされていないから、相違点1及び2に係る構成を引用発明1に採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b 相違点3について、 引用発明1には、「複数」の「排気開口」を設ける点が記載されており、「複数」は2以上の数を意味するから、引用発明1において、「第2排気経路5b」を「排出流路3の末端部5」の「周壁」に、「複数」設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 c 上記a及びbのとおりであるから、補正発明1は、引用発明1並びに引用例2及び3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、補正発明1を直接的、間接的に引用する補正発明2及び3は、補正発明1をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明並びに引用例2及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許法第36条第6項第2号について a 補正事項1により、「ガス排出口」が「ハウジングの表面に開口して設けられて」いること、及び、「壁部」が、「ガス流路とは別の部分」で、「ガス排出口を囲むように且つハウジングの表面から突出するように立設されて」いることが特定され、 「壁部」が、ガス流路を構成する部分とは別の部分(ガス流路を構成していない部分)であることが明らかになるとともに、ガス流路を構成する部材とは異なる物質あるいは成形方法で作成されて接続されるものであるとは解されなくなったので、 補正発明1(及び補正発明1を直接的、間接的に引用する補正発明2及び3)が明確でないとはもはやいえない。 ウ 小括 上記ア及びイのとおりであるとともに、他に本願を拒絶すべき理由も発見しないから、補正発明1ないし3は、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 3 むすび 上記2のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するものである。 第3 本願発明について (1)本願発明1ないし3 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1ないし3」という。)は、本件補正の補正事項1により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)原査定の拒絶理由について 原査定の拒絶理由(特許法第29条第2項)は、概略、引用発明1並びに引用例2及び3を引用するものである。 そして、本願発明1ないし3は、補正発明1ないし3について、上記第2の2(3)アで検討したとおり、当業者が引用発明1並びに引用例2及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本願発明1ないし3は、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 (3)当審拒絶理由について 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)の概要は、以下のとおりである。 「 請求項1には、「ガス流路とは別体の壁部を立設し」との記載がある。 しかしながら、上記記載の「別体の壁部」とは、ガス流路を構成する部材とは異なる物質あるいは成形方法で作成されて接続されるものを指すとも、ガス流路を構成する部分とは別の部分(ガス流路を構成していない部分)であることを指すとも解釈できるから、発明が不明確である。 したがって、請求項1に記載された発明、並びに、請求項1を直接的、間接的に引用する請求項2及び3に記載された発明は明確でないから、本願のそれらの請求項の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」 そして、本願発明1ないし3が明確でないとはいえないことは、補正発明1ないし3について、上記第2の2(3)イで検討したとおりである。 したがって、本願発明1ないし3は、当審拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 (4) むすび 以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-03 |
出願番号 | 特願2011-167340(P2011-167340) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01N)
P 1 8・ 121- WY (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 萩田 裕介、清水 督史、磯田 真美 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
小川 亮 藤田 年彦 |
発明の名称 | 吸引式ガス検知器 |
代理人 | 特許業務法人R&C |