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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1320620
審判番号 不服2015-17905  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-01 
確定日 2016-10-12 
事件の表示 特願2013-518539「複数のネットワークリソースのプロビジョニング」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日国際公開,WO2012/006034,平成25年 9月 5日国内公表,特表2013-534675〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2011年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年6月28日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成24年12月27日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出されると共に審査請求がなされ,平成26年1月10日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成26年4月15日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成26年4月21日付けで手続補正がなされ,平成26年8月28日付けで審査官により最後の拒絶理由が通知され,これに対して平成27年2月17日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年5月28日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成27年10月1日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年12月1日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年2月26日付け上申書の提出があったものである。

第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年10月1日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年10月1日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成27年2月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,スタックビルダーサービスにより実行される方法であって,
ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定する,受信することと,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること,
前記複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む,方法。
【請求項2】
前記ユーザーに関連したユーザーアカウントを維持することをさらに含み,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,ネットワークリソースのプロビジョニングの成功に関連する費用が,前記ユーザーに関連した前記ユーザーアカウントに請求されるよう,前記ユーザーのために前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも2つをプロビジョニングする要求のため事前に入力された命令を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの各々への呼び出しを有するテキストベースの命令を含むテキストファイルを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも1つに対して複数の異なるバージョンの特定のバージョンを指定する,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレートが,前記ユーザーによって選択された前記複数の別個のネットワークリソースのうちの1つのコンポーネントのための論理的な名前を指定する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートを解析することは,前記複数の別個のネットワークリソースの特性の分析に基づく依存を識別するために,前記テンプレートを解析することを含み,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,前記依存の少なくとも一部分に基づいた順番で前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記要求が,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも2つの間の依存をユーザーの指定により明示的に指定し,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,前記依存の少なくとも一部分に基づいた順番で前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされなかった場合,プロビジョニングが成功した前記複数の別個のネットワークリソースのリソースをロールバックすることをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサと,
前記1つまたは複数のプロセッサに接続されるメモリと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサに,
ユーザーから,1つまたは複数のクラウドコンピューティングのプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースから,テンプレートの少なくとも一部分に基づく別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックを生成する要求を受信するステップであって,前記テンプレートは前記別個のネットワークリソースを含む前記スタックを生成するための事前に入力された命令を含み前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定する,受信するステップと,
前記別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析するステップと,および
前記ユーザーのため前記別個のネットワークリソースの各々のプロビジョニングを試行するステップ,
を実施させる,テンプレートベースのスタックビルダー
を有する装置。
【請求項11】
前記テンプレートベースのスタックビルダーはさらに,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが,前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの各々のプロビジョニングに成功した場合,前記スタックのプロビジョニングが成功したことを前記ユーザーに通知すること,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが,前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの少なくとも1つのプロビジョニングに成功しなかった場合,前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを前記ユーザーに通知すること,
のために,前記1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能である,請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記テンプレートベースのスタックビルダーはさらに,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの少なくとも1つのプロビジョニングの成功に失敗した場合,前記テンプレートベースのスタックビルダーがプロビジョニングに成功した前記別個のネットワークリソースの各々をロールバックすること,
が前記1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能である,請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記要求は,ウェブアプリケーションに対する前記スタックを生成する要求を含み,前記別個のネットワークリソースは,クラウドベースの負荷分散サービス,クラウドベースの計算サービス,またはクラウドベースのストレージサービスである,請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記別個のネットワークリソースのうちの1つが,第1のエンティティによって管理されるクラウドコンピューティングプラットホームの少なくとも一部分を形成し,前記別個のネットワークリソースのうちのもう1つが,前記第1のエンティティから独立している第2のエンティティによって管理されるクラウドコンピューティングプラットホームの少なくとも一部分を形成する,請求項10に記載の装置。
【請求項15】
複数の異なるテンプレートを格納する,または複数の異なるテンプレートへアクセスするデータベースをさらに含み,前記複数の異なるテンプレートの各々は別個のネットワークリソースを含むスタックを生成するために事前に入力された命令を含む,請求項10に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,スタックビルダーサービスにより実行される方法であって,
ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む,受信すること,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること,
前記複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む,方法。
【請求項2】
前記ユーザーに関連したユーザーアカウントを維持することをさらに含み,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,ネットワークリソースのプロビジョニングの成功に関連する費用が,前記ユーザーに関連した前記ユーザーアカウントに請求されるよう,前記ユーザーのために前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも2つをプロビジョニングする要求のため事前に入力された命令を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの各々への呼び出しを有するテキストベースの命令を含むテキストファイルを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレートが,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも1つに対して複数の異なるバージョンの特定のバージョンを指定する,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレートが,前記ユーザーによって選択された前記複数の別個のネットワークリソースのうちの1つのコンポーネントのための論理的な名前を指定する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートを解析することは,前記複数の別個のネットワークリソースの特性の分析に基づく依存を識別するために,前記テンプレートを解析することを含み,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,前記依存の少なくとも一部分に基づいた順番で前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記要求が,前記複数の別個のネットワークリソースの少なくとも2つの間の依存をユーザーの指定により明示的に指定し,前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することは,前記依存の少なくとも一部分に基づいた順番で前記複数の別個のネットワークリソースのプロビジョニングを試行することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされなかった場合,プロビジョニングが成功した前記複数の別個のネットワークリソースのリソースをロールバックすることをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサと,
前記1つまたは複数のプロセッサに接続されるメモリと,
前記メモリに格納され,前記1つまたは複数のプロセッサに,
ユーザーから,1つまたは複数のクラウドコンピューティングのプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースから,テンプレートの少なくとも一部分に基づく別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックを生成する要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個のネットワークリソースを含む前記スタックを生成するための事前に入力された命令を含み,前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む,受信すること,
前記別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,および
前記ユーザーのため前記別個のネットワークリソースの各々のプロビジョニングを試行すること,
を実施させる,テンプレートベースのスタックビルダー
を有する装置。
【請求項11】
前記テンプレートベースのスタックビルダーはさらに,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが,前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの各々のプロビジョニングに成功した場合,前記スタックのプロビジョニングが成功したことを前記ユーザーに通知すること,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが,前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの少なくとも1つのプロビジョニングに成功しなかった場合,前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを前記ユーザーに通知すること,
のために,前記1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能である,請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記テンプレートベースのスタックビルダーはさらに,
前記テンプレートベースのスタックビルダーが前記ユーザーのために前記別個のネットワークリソースの少なくとも1つのプロビジョニングの成功に失敗した場合,前記テンプレートベースのスタックビルダーがプロビジョニングに成功した前記別個のネットワークリソースの各々をロールバックすること,
が前記1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能である,請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記要求は,ウェブアプリケーションに対する前記スタックを生成する要求を含み,前記別個のネットワークリソースは,クラウドベースの負荷分散サービス,クラウドベースの計算サービス,またはクラウドベースのストレージサービスである,請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記別個のネットワークリソースのうちの1つが,第1のエンティティによって管理されるクラウドコンピューティングプラットホームの少なくとも一部分を形成し,前記別個のネットワークリソースのうちのもう1つが,前記第1のエンティティから独立している第2のエンティティによって管理されるクラウドコンピューティングプラットホームの少なくとも一部分を形成する,請求項10に記載の装置。
【請求項15】
複数の異なるテンプレートを格納する,または複数の異なるテンプレートへアクセスするデータベースをさらに含み,前記複数の異なるテンプレートの各々は別個のネットワークリソースを含むスタックを生成するために事前に入力された命令を含む,請求項10に記載の装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
本件手続補正は,補正前の請求項1,及び,請求項10に係る発明における発明特定事項である,「テンプレート」に対して,「前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む」という限定事項を付加するものである。
前記限定事項について,平成24年12月27日付けで提出された,明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文(以下,これを「当初明細書等」という)の記載内容を検討すると,
当初明細書等の段落【0008】に,
「ある例において,その後,ユーザーは,リソースに関連した特定のパラメーターを指定するため,テンプレート内の命令を変更してもよく,変更したテンプレートを新しいテンプレートとして保存してもよい」,
同じく,段落【0022】に,
「例えば,ユーザーは,要求されたリソースのサイズ,要求されたリソースの構成要素のいくつか(例えばコンピュータ,データベース等),リソースの特定のバージョン,または他のパラメーターを指定するため,事前に入力された命令の中のあるパラメーターを変更してもよい」,
同じく,段落【0024】に,
「テンプレート(例えば,テキストファイル形式であり得る)を検索し解析してこれらのリソースをプロビジョニングする命令と同様,所望のリソースのアイデンティティーおよびパラメーター(例えばサイズ等)を決定してもよい」,
同じく,段落【0033】に,
「ユーザー102(1)は,ユーザーにより作成され,最近格納されたテンプレートを指定し,よって,サービス106はデータベース124からこのテンプレートを検索する。上で議論したように,ユーザー102(1)はこのテンプレートをカスタマイズした可能性がある。例えば,ユーザー102(1)にはリソースの特定のバージョン,リソースのサイズ,リソースの論理名等のあるパラメーターの値を指定している可能性がある」,
と記載され,上記引用の記載内容から,前記限定事項が,当初明細書等の範囲内のものであることは,明らかである。
そして,本件手続補正は,上記において言及したとおり,補正前の請求項1,及び,請求項10に係る発明の発明特定事項に,限定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものである。
そして,本件手続補正は,補正前の請求項1,及び,請求項10に係る発明の技術的特徴を変更するものでないことも明らかであるから,
したがって,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項?第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(1)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,スタックビルダーサービスにより実行される方法であって,
ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む,受信すること,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること,
前記複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む,方法。」

(2)引用刊行物に記載の事項
ア.原審の平成26年1月10日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2007-193696号公報(2007年8月2日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0009】
図12に,自動インストーラによって各計算ノード上に自動インストールされる一般的なソフトウェアスタック(ソフトウェアの階層構造)を示す。例としてOSがLinuxの場合を挙げる。
【0010】
各計算ノード上ではOSとしてのLinuxカーネルを底辺として,その上にLinuxシステムが動作する。更にその上層に,ジョブのスケジューリング・起動,クラスタソフトウェアマネジメント,クラスタステートマネジメントなど,ソフトウェアやジョブ,クラスタ状態の管理機構が動作する。そしして,これらの上層にはさらにノード間通信を行うアプリケーション(メッセージパッシング)が動作し,この上にはさらに上位のグリッド(GRID)アプリケーションなどが動作する場合もある。
【0011】
通常,標準的な計算ノードにインストールされるミドルウェア?アプリケーション層のソフトウェアパッケージは数百?数千にのぼる。また,特定のアプリケーションは特定の下位ミドルウェア上で動作するといったように,各レイヤー間には厳密な依存関係がある。すなわち,各ソフトウェア間には複雑な依存関係が生じる。また,各ソフトウェアが正しく動作するためには適切な設定ファイルが必要である。」

B.「【0014】
そこで,依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するための既存研究としてメタパッケージとよばれるものがある。メタパッケージとは,クラスタやシステム管理のエキスパートによって作成された「自動クラスタインストーラ設定のテンプレート集」である。メタパッケージは,インターネット上に公開されたメタパッケージリポジトリ経由で自由にインストールすることができる。
【0015】
具体的には,メタパッケージはジョブ実行環境一式,モニタリングシステム一式などのような機能をクラスタ上に実現するための自動インストーラ設定をそれぞれひとまとめにし,メタパッケージをダウンロードした各サイト用にカスタマイズが可能なテンプレートとしてパッケージングしたものである。
【0016】
クラスタ管理者は,メタパッケージリポジトリから必要なメタパッケージを機能単位で選択し,ローカルサイトの自動クラスタインストーラへ適用する。それぞれのテンプレート間には適切な依存関係があらかじめ明示的に定義されており,依存関係はメタパッケージ導入ツールによって適切にハンドリングされるため,最終的に計算ノードへインストールされるソフトウェア間の依存関係は自動的に解決される。また,メタパッケージにはソフトウェアごとの設定ファイルのテンプレートも含まれているため,先に述べた自動クラスタインストーラの初期設定コストは大幅に軽減される。すなわち,メタパッケージを導入すると正しい自動インストーラ設定を簡単に生成することができ,依存関係や設定ファイルの問題を解決することができる。」

C.「【0042】
図1に示すように,インストールシステム1は,メタパッケージサーバ2と,インストールサーバ3と,クラスタ(計算ノード又はクラスタノードともいう。)4とを有する。メタパッケージサーバ2には,メタパッケージ開発者6により作成されたメタパッケージがアップロードされている。インストールサーバ3には,クラスタ4をインストールするための自動インストーラ3aが作成される。
【0043】
このようなインストールシステム1においては,パッケージマネージャ5がメタパッケージサーバ2にアクセスしてメタパッケージを検索し,所望の機能を有するメタパッケージをダウンロードする。例えば,メタパッケージサーバ2において,MPI(Message Passing Interface)環境,グローバス(Globus),Java(登録商標)環境などの中からMPI環境及びJava(登録商標)環境という機能を具備するメタパッケージを検索する。そして,これをインストールサーバ3にダウンロードする。ダウンロードしたメタパッケージは,インストールサーバ3にて展開されるとこの際,図示せぬ表示部にカスタマイズ用のGUI,又はCUIなどのユーザインターフェース(UI)が表示される。クラスタ4の自動インストールを行なわせるユーザは,このUIに従ってインストール設定をカスタマイズして生成し,自動インストーラ3aへ入力する。自動インストーラ3aは,カスタマイズされたインストール設定に従ってクラスタ4の自動インストールを実行する。」

D.「【0049】
図3は,メタパッケージに含まれるファイルの具体的な内容とメタパッケージ開発者によるメタパッケージの生成プロセスを説明する図である。メタパッケージの主な構成要素ファイル20としては,パッケージ選択20a,UI定義20b,テンプレート定義20c及びスペック定義20dがある。パッケージ選択20aは,クラスタノードへインストールされるパッケージの集合を示す。また,テンプレート定義20cは,自動インストーラの設定ファイルを生成するためのテンプレートであり,各ソフトウェアの設定情報が記述されている。このテンプレート定義20cは,システムやアプリケーションソフトの設定情報が記録されているデータベース(レジストリ)である。UI定義20bは,メタパッケージ中のテンプレートに記述された設定情報をカスタマイズするために使用される。
スペック定義20dは,メタパッケージに使用されるスペックが定義されている。」

イ.原審拒絶理由において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2010-140403号公報(2010年6月24日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E.「【0017】
まず,要求元計算機2において,要求送信部1が操作員の要求に基づいて,構築が要求される計算機アーキテクチャを要求アーキテクチャとして示す構築要求情報を資源管理用計算機7に送信する。
例えば,要求送信部1は図5に示す構築要求情報を送信する。図5の例では,要求アーキテクチャの詳細として,CPUの性能,メモリサイズ,LAN(Local Area Network)の性能,ディスク性能,OS(Operating System)の種類等が示されている。」

F.「【0027】
まず,要求送信部1により計算機の利用要求を入力するための入力画面が表示装置に表示され,操作員による設定内容の入力がなされた後に,操作員の設定内容を示す構築要求情報(図5)が資源管理用計算機7に送信される。
資源管理用計算機7において,要求管理部3が通信部15を介して構築要求情報を受信し,受信した構築要求情報を受付ける(S301)(構築要求受信ステップ)。」

G.「【0029】
要求管理部3は,資源管理部5からの検索結果を調べ,利用可能な計算機本体がなかった場合(S303でNO)は,要求元計算機2が要求する計算機アーキテクチャを用意できなかった旨を通信部15を介して要求元計算機2の要求送信部1に回答する(S309)。
一方,利用可能な計算機本体が用意できた場合(S303でYES)は,3は,要求元計算機2からの構築要求情報に基づき計算機環境に関する必要資源の検索要求を生成し,検索要求を構成情報管理部4に対して送信する(S304)。
構成情報管理部4は,要求管理部3からの検索要求に基づき,要求された環境に合致する既構成ストレージがあるかを検索し,検索結果を要求管理部3に回答する(S313)。」

H.「【0031】
要求管理部3は,資源管理部5からの検索結果を調べ,利用可能なストレージがなかった場合(S307でNO)は,要求元計算機2が要求する計算機アーキテクチャを用意できなかった旨を通信部15を介して要求元計算機2の要求送信部1に回答する(S309)。
他方,利用可能なストレージを用意できた場合(S307でYES)は,要求管理部3は,要求元計算機2からの構築要求情報に基づき,システム構築部6に対して計算機環境構築を要求する(S308)。
【0032】
システム構築部6は,構成情報管理部4に要求元計算機2から要求されている計算機アーキテクチャを構築するために必要なシステムディスクイメージの保存場所の検索を依頼し,構成情報管理部4が,要求されている計算機アーキテクチャを構築するために必要なシステムディスクイメージの保存場所を検索する(S314)(システムディスクイメージ抽出ステップ)。
そして,システム構築部6は,構成情報管理部4により検索された保存場所から必要なシステムディスクイメージを用意されたストレージにSAN12を介してコピーし,また,SAN12を介して,システムディスクイメージが格納されたストレージを用意された計算機本体と接続する(S312)(システム構築ステップ)。
そして,要求管理部3は,要求された計算機環境が用意できた旨を通信部15を介して要求元計算機2の要求送信部1に回答する(S309)。」

ウ.原審拒絶理由において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,国際公開第2010/023139号(国際公開日;2010年3月4日,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

I.「Within the cloud computing system 106, the resource identifier 164 and the resource attributes 166 are received at the resource provisioning system 112 via the API 108. The resource provisioning system 112 provisions the newly provisioned resource Cl 150 that corresponds to the resource identifier 164 and that has the resource attributes 166. 」(7頁1行?4行)
(クラウド・コンピューティング・システム106の内部で,リソース識別子164と,リソース属性166は,API108を介して,リソース・プロビジョニング・システム112で受信される。リソース・プロビジョニング・システム112は,リソース識別子164に対応し,リソース属性166を有する,新しいプロビジョンされたリソースC1 150をプロビジョンする。<当審にて訳出>)

エ.原審拒絶理由において引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2005-266917号公報(2005年9月29日公開,以下,これを「引用刊行物4」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

J.「【0175】
次に,リソースマネージャに対して,ステップS241で選択した構成変更操作の実行を要求する(ステップS242)。ここで,要求の送り先であるリソースマネージャが属する管理ドメインと,構成変更操作の対象である資源が属する管理ドメインが一致するように送信先のリソースマネージャを選択する。このステップにおける処理対象の構成変更操作が複数あり,かつその対象の資源が複数の管理ドメインにまたがる場合,複数のリソースマネージャに対する構成変更実行要求の送信を行う。」

K.「【0211】
1回目の構成変更準備要求に含まれる構成変更操作1の内容は,以下の通りである。
【0212】
・対象の資源:特定の利用者に提供されていないサーバ機器5台
・操作の内容:対象の資源上でWWWサーバプログラムを起動する。
【0213】
1回目の構成変更準備要求に含まれる構成変更操作2の内容は,以下の通りである。
【0214】
・対象の資源:特定の利用者に提供されていないサーバ機器1台
・操作の内容:対象の資源上でアプリケーションWWWサーバプログラムを起動する。
【0215】
この要求に対して,リソースマネージャは,条件を満たす資源を選択し,構成変更準備の処理を行う。その結果,構成変更操作1に対して,server12, server14, server15, server18, server22(これらは具体的なサーバ名を示す)の5つのサーバ機器を選択し,構成変更操作2に対して,server05のサーバ機器を選択したと仮定する。リソースマネージャは,構成変更準備要求に対応する準備通知に,これらの資源名を含める。
【0216】
2回目の構成変更準備要求は,構成変更操作3,4を処理対象とする。これらの構成変更操作は,構成変更操作1,2に依存しており,構成変更操作1,2についての準備完了通知が到着した時点で構成変更準備要求の発行が可能になる。
【0217】
2回目の構成変更準備要求に含まれる構成変更操作3の内容は,以下の通りである。
【0218】
・対象の資源:server12, server14, server15, server18, server22
・操作の内容:対象の資源上で動作するWWWサーバに対して,server04上で動作するアプリケーションサーバの情報を登録する。
【0219】
2回目の構成変更準備要求に含まれる構成変更操作4の内容は,以下の通りである。
【0220】
・対象の資源:server04
・操作の内容:対象の資源上で動作するアプリケーションサーバに対して,server12,server14,server15,server18,server22上で動作するWWWサーバの情報を登録する。
【0221】
3回目の構成変更準備要求では,構成変更操作5を処理対象とする。構成変更操作5の発行は,それが依存する構成変更操作3,4についての準備完了通知が到着した時点で可能になる。
【0222】
3回目の構成変更準備要求に含まれる構成変更操作5の内容は以下の通りである。
【0223】
・対象の資源:WWWサーバの負荷分散装置
・操作の内容:振り分け先のWWWサーバの情報にserver12,server14,server15,server18,server22を追加する。」

オ.原審の平成27年5月28日付けの拒絶査定において,周知技術を示す目的で,引用刊行物4と共に例示された,本願の第1国出願前に既に公知である,特表2007-520814号公報(公表日;2007年7月26日,以下,これを「周知技術文献」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

L.「【0032】
さらに,ブロック306は特定のプロビジョニング環境の関係を表すリソースのサブタイプ間の「依存」関係を定義するステップを表す。例えば,経験豊富なネットワーク構築者は,図3から図4に示されるような特定のトポロジーを制作するかもしれないが,これはネットワークの様々なリソースのタイプのレイアウトであり,これらのリソースのタイプは互いに物理的かつ論理的に接続される。「依存」関係はこれらの定義された関係を記述する。
・・・・・(中略)・・・・・
【0037】
その後,ブロック310は,論理的なプロビジョニングの結果として確立されるべき論理的な関係を表すリソース間の「対応」関係を示す。例えば,図2および図3から図4のプロビジョニング環境では,プロビジョニングプロセスの一部は,同じ顧客に割り当てられる他のサーバーと通信できるようにサーバーを構成することになる。このプロセスの1ステップは,1セットのIPアドレスをサーバーに割り当てる,すなわち,サーバーのNICに割り当てることである。以下に示す1列目のリソースのサブタイプは,2列目のリソースのサブタイプに対応付けることになる。「対応」関係は反射的である。すなわち,リソースのサブタイプAがリソースのサブタイプBと「対応」すれば,リソースのサブタイプBはリソースのサブタイプAと「対応」する。
【0038】
議論中の例によると,「対応」関係は以下のように定義される。
・・・・・(中略)・・・・・
図6は,本発明によるプロビジョニング環境でリソース要求に従いリソースを識別,予約,および論理的にプロビジョニングするステップを示す高次のフローチャートを図示する。図示するようにプロセスはブロック400から始まり,その後受信した要求を示すブロック402に移る。リソース要求は1セットのリソースのタイプと予約されるべき各々の量を含む。リソースインスタンスがすでに前もって予約されている場合,要求はこの要求を満たすために使う以前に予約済みのリソースのリストも含んでもよい。さらに詳しくは,予約されるべきリソースの所要リストは,要求されるリソースのタイプのそれぞれについてのリソースのサブタイプと,量を含めて一致させるべき属性と値のリストを識別する。例えば,リソース要求は,サーバーの各グループについて,サーバーのサブタイプ,グループ内のサーバーの数,特定の仮想IPアドレスが要求されるかどうか,すなわちグループを負荷分散するべきかどうか,それがウエブサーバーかデータサーバーかなどサーバーが果たす役割を規定する,予約されるべきサーバーグループのリストを含んでもよい。」

(3)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Aの「自動インストーラによって各計算ノード上に自動インストールされる一般的なソフトウェアスタック(ソフトウェアの階層構造)を示す」という記載,及び,上記Cの「インストールサーバ3には,クラスタ4をインストールするための自動インストーラ3aが作成される」という記載から,
引用刊行物1においては,“各計算機ノードに,複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタックを自動インストールする自動インストーラを有するインストールサーバ”が存在することが読み取れ,
上記Bの「メタパッケージは,インターネット上に公開されたメタパッケージリポジトリ経由で自由にインストールすることができる」という記載から,引用刊行物1における「クラスタ」は,“インターネットに接続されている”ものであることは明らかであるから,以上に検討した事項から,
引用刊行物1は,“インターネットに接続されているクラスタを構成する各計算機ノードに,複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタックを自動インストールする自動インストーラを有するインストールサーバにおいて,前記自動インストーラの設定を含む方法”に関するものであることが読み取れる。

イ.上記Aの「各ソフトウェア間には複雑な依存関係が生じる。また,各ソフトウェアが正しく動作するためには適切な設定ファイルが必要である」という記載,及び,上記Bの「依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するための既存研究としてメタパッケージとよばれるものがある。メタパッケージとは,クラスタやシステム管理のエキスパートによって作成された「自動クラスタインストーラ設定のテンプレート集」である」という記載,同じく,上記Bの「メタパッケージをダウンロードした各サイト用にカスタマイズが可能なテンプレートとしてパッケージングしたものである」という記載から,
引用刊行物1には,“各ソフトウェアが正しく動作するために,依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するためのカスタマイズが可能なテンプレート”が記載されていることが読み取れる。

ウ.上記イ.においても引用した,上記Bの「メタパッケージをダウンロードした各サイト用にカスタマイズが可能なテンプレート」という記載,同じく,上記Bの「メタパッケージにはソフトウェアごとの設定ファイルのテンプレートも含まれている」という記載,及び,上記Cの「MPI環境及びJava(登録商標)環境という機能を具備するメタパッケージを検索する。そして,これをインストールサーバ3にダウンロードする」という記載と,上記ア.において検討した事項から,
引用刊行物1は,“複数のソフトウェアごとの設定ファイルである,或いは,複数の異なる機能を有するテンプレートを,インストールサーバにダウンロードする”ものであることが読み取れる。

エ.上記Cの「ダウンロードしたメタパッケージは,インストールサーバ3にて展開されるとこの際,図示せぬ表示部にカスタマイズ用のGUI,又はCUIなどのユーザインターフェース(UI)が表示される。クラスタ4の自動インストールを行なわせるユーザは,このUIに従ってインストール設定をカスタマイズして生成し,自動インストーラ3aへ入力する」という記載,上記Dの「メタパッケージの主な構成要素ファイル20としては,パッケージ選択20a,UI定義20b,テンプレート定義20c及びスペック定義20dがある」という記載,及び,同じく,上記Dの「テンプレート定義20cは,自動インストーラの設定ファイルを生成するためのテンプレートであり,各ソフトウェアの設定情報が記述されている。このテンプレート定義20cは,システムやアプリケーションソフトの設定情報が記録されているデータベース(レジストリ)である。UI定義20bは,メタパッケージ中のテンプレートに記述された設定情報をカスタマイズするために使用される」という記載と,上記イ.において検討した事項と,上記ウ.において検討した事項に含まれる「アプリケーションソフト」は,上記ア.等において検討した事項に含まれる「ソフトウェア」に相当するものであることから,
引用刊行物1においては,“テンプレートは,システムやソフトウェアの設定情報が記述され,前記設定情報は,ユーザによってカスタマイズされるものである”ことが読み取れる。

オ.上記Cの「自動インストーラ3aは,カスタマイズされたインストール設定に従ってクラスタ4の自動インストールを実行する」という記載と,上記エ.において検討した事項から,引用刊行物1において,“自動インストーラは,テンプレートに記述された,ユーザによってカスタマイズされた,インストール設定に従って,クラスタの自動インストールを実行する”ものであることが読み取れる。

カ.以上ア.?オ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「インターネットに接続されているクラスタを構成する各計算機ノードに,複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタックを自動インストールする自動インストーラを有するインストールサーバにおいて,前記自動インストーラの設定を含む方法であって,
各ソフトウェアが正しく動作するために,依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するためのカスタマイズが可能な,複数のソフトウェアごとの設定ファイルである,或いは,複数の異なる機能を有するテンプレートを,前記インストールサーバにダウンロードし,
前記テンプレートは,システムやソフトウェアの設定情報が記述され,前記設定情報は,ユーザによってカスタマイズされるものであって,
前記自動インストーラは,前記テンプレートに記述された,前記ユーザによってカスタマイズされた,インストール設定に従って,前記クラスタの自動インストールを実行する,方法。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明において,「クラスタ」は,「インターネット」,即ち,“ネットワーク”に接続されているものであるから,該「クラスタ」上で用いられる「ソフトウェア」は,“ネットワーク資源”であることは明らかである。
よって,引用発明における「インターネットに接続されているクラスタを構成する各計算機ノード」,及び,「ソフトウェア」が,
本件補正発明における「1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホーム」,及び,「ネットワークリソース」に相当する。

イ.引用発明において,「クラスタを構成する各計算機ノード」に対して,「複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタックを自動インストールする」ことは,前記「各計算機ノード」に対して,「複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタック」の準備をすることに他ならないので,上記ア.において検討した事項と併せると,引用発明における「自動インストール」,及び,「インストールサーバ」が,それぞれ,本件補正発明における「プロビジョニング」,及び,「リソースプロビジョニングサーバー」に相当する。
そして,引用発明における「複数のソフトウェア」に含まれる,各「ソフトウェア」が,それぞれ異なる「ソフトウェア」である態様を含むことは,明らかであって,引用発明において,「各計算機ノード」に「インストール」された,複数の異なる「ソフトウェア」を,「ユーザ」が使用することは,該「ユーザ」が,複数の異なる「サービス」の提供を受けることに他ならないから,以上検討した事項から,
引用発明における「インターネットに接続されているクラスタを構成する各計算機ノードに,複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタックを自動インストールする自動インストーラを有するインストールサーバ」が,
本件補正発明における「1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバー」に相当する。
したがって,引用発明における「方法」と,本件補正発明における「実行される方法」とは,
“1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,実行される方法”
である点で共通する。

ウ.引用発明において,「各ソフトウェアが正しく動作するために,依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するためのカスタマイズが可能な,複数のソフトウェアごとの設定ファイルである,或いは,複数の異なる機能を有するテンプレート」は,「複数のソフトウェア」ごとに,該「ソフトウェア」間の「依存関係」に対する設定が示される態様を含むものであることは,明らかであり,該「ソフトウェア」間の「依存関係」とは,該「ソフトウェア」間の「関連」についての情報であることも,明らかであるから,引用発明における「テンプレート」は,「ソフトウェア」間の「関連」を指定する情報を有する態様を含むものである。
また,引用発明においては,「テンプレートは,システムやソフトウェアの設定情報が記述され,前記設定情報は,ユーザによってカスタマイズされるもの」であるから,
引用発明は,該「テンプレート」に,「ユーザによってカスタマイズ」するための情報として,該「カスタマイズ」のための必要な“設定値”を有する態様を,含むものである。
そして,該「テンプレート」を「ダウンロード」することは,「自動インストール」の設定を行うための情報を受信することに他ならず,該受信は,「自動インストール」を設定するという要求に基づくことは,明らかである。

エ.引用発明においては,「自動インストーラは,前記テンプレートに記述された,前記ユーザによってカスタマイズされた,インストール設定に従って,前記クラスタの自動インストールを実行する」のであるから,「自動インストーラ」は,「テンプレートに記述された」,「インストール設定」に従って,該「テンプレート」によって識別される「複数のソフトウェアから構成されるソフトウェアスタック」を,「自動インストール」するものであるから,このことと,
本件補正発明における「テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングする」こととは,
“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングする”ことである点で共通する。

オ.上記イ.において検討したとおり,引用発明においては,「ソフトウェア」は,「ユーザー」に「サービス」を提供するものであって,上記ウ.において検討したとおり,引用発明においては,「テンプレート」が,「複数のソフトウェア」間の“関連”を示す情報を有する態様を含むものであるから,引用発明においては,「テンプレート」は,「サービス」を提供する「複数のソフトウェア」の“関連”を示す情報を有する態様を含むことは,明らかである。
したがって,上記において検討した,引用発明における“テンプレートが,サービスを提供する複数のソフトウェアの関連を示す情報を有すること”と,
本件補正発明における「テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定」することとは,
“テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有する”点で共通する。
更に,引用発明における「設定値」は,「ユーザー」によって,「テンプレート」が「カスタマイズ」される際に,「設定」されるものであるから,
本件補正発明における「パラメータ」と,“ユーザーに指定された設定情報”である点で共通する。
よって,以上,イ.,ウ.,及び,エ.において検討した事項と,上記において検討した事項から,
引用発明における「インターネットに接続されているクラスタを構成する各計算機ノードに,複数のソフトウェアを自動インストールする自動インストーラを有するインストールサーバにおいて,前記自動インストーラの設定を含む方法であって,
各ソフトウェアが正しく動作するために,依存関係の解決や設定ファイルの問題を解決するためのカスタマイズが可能な,複数のソフトウェアごとの設定ファイルである,或いは,複数の異なる機能を有するテンプレートを,前記インストールサーバにダウンロード」することと,
本件補正発明における「ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む,受信すること」とは,
“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数の設定情報を含む,受信すること”である点で共通する。

カ.引用発明において,「自動インストーラ」が,「テンプレートに記述された,前記ユーザによってカスタマイズされた,インストール設定に従って,前記クラスタの自動インストールを実行する」際に,引用発明における「テンプレート」の内容が,解析されていることは明らかであるから,上記ウ.において検討した事項と併せると,
引用発明における「自動インストーラは,前記テンプレートに記述された,前記ユーザによってカスタマイズされた,インストール設定に従って,前記クラスタの自動インストールを実行する」ことと,
本件補正発明における「プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること」とは,
“プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々をプロビジョニングすることを試行すること”である点で共通する。

キ.以上,ア.?カ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との一致点.及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,実行される方法であって,
テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有し,前記別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数の設定情報を含む,受信すること,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々をプロビジョニングすることを試行することを含む,方法。

[相違点1]
“実行される方法”に関して,
本件補正発明においては,「スタックビルダーサービスにより実行される方法」であるのに対して,
引用発明においては,“実行される方法”が,“何”によって実行されているのか,明確には示されていない点。

[相違点2]
“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること”に関して,
本件補正発明においては,「ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること」であるのに対して,
引用発明においては,「ソフトウェアスタック」が,「特定」のものであるかについての言及がない点。

[相違点3]
同じく,“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること”に関して,
本件補正発明においては,「ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること」であるのに対して,
引用発明においては,“ユーザーから,要求を受信する”点については,特に,言及されていない点。

[相違点4]
“テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有し”に関して,
本件補正発明においては,「テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定」するものであるのに対して,引用発明においては,「テンプレート」によって,“複数のソフトウェア”がどのように「関連付け」られているのか,明確には示されていない点。

[相違点5]
“ユーザーによって指定された1つまたは複数の設定情報”に関して,
本件補正発明においては,「別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータ」であるのに対して,
引用発明における「設定値」が,どのようなものであるか,明確には示されていない点。

[相違点6]
“解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々をプロビジョニングすること”に関して,
本件補正発明においては,「解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること」であるのに対して,
引用発明においては,「部分的にプロビジョニングする」ことに関しては,特に,言及されていない点。

[相違点7]
本件補正発明においては,「複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む」ものであるのに対して,
引用発明においては,「自動インストール」の「成功」,或いは,“失敗”についての「通知」を行う点については,特に,言及されていない点。

(5)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1]について
引用発明には,「ソフトウェアスタック」を,「自動インストール」するために必要な「設定」を,「テンプレート」用いて行うこと,及び,該「テンプレート」に対する「ユーザー」よる「カスタマイズ」によって行うことが含まれ,該「設定」のための操作は,引用刊行物1において,明文の記載はないものの,何らかの“ソフトウェア”によって実現されるものであることは,明らかであって,該“ソフトウェア”が,一種の「サービス」と言い得るものである。
そして,引用発明における,前記「サービス」は,「ソフトウェアスタック」が,「自動インストール」できるように「設定」する「サービス」とも言えるものであるから,「自動インストール」のための「ソフトウェアスタック」を構築するための「サービス」と言えるものである。
以上に検討したとおりであるから,引用発明においても,明文の記載はないものの,「スタック」を構築するための「サービス」において,「設定」が行われており,引用発明も,“スタックを構築するサービスによって実行される方法”と言い得るものである。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。

イ.[相違点2],及び,[相違点6]について
複数の「プロビジョニング」対象が存在する場合に,その何れかを「特定」して,「プロビジョニング」を行うことに関しては,例えば,上記Iに引用した,引用刊行物3の「The resource provisioning system 112 provisions the newly provisioned resource Cl 150 that corresponds to the resource identifier 164 and that has the resource attributes 166(リソース・プロビジョニング・システム112は,リソース識別子164に対応し,リソース属性166を有する,新しいプロビジョンされたリソースC1 150をプロビジョンする)」という記載内容にもあるとおり,“リソース識別子によって指定された,リソースのプロビジョニングを行う”こと,即ち,複数の「プロビジョニング」対象から,何れかを「特定」して,「部分的に」,「プロビジョニング」を行うことは,本願の第1国出願前に,当業者には既に知られた技術事項であり,引用発明においても,「ソフトウェアスタック」のうち,何れかを,「識別子」で指定し,「特定」して,「自動インストール」の対象とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点2],及び,[相違点6]は,格別のものではない。

ウ.[相違点3]について
“ユーザーから,要求を受信する”ことに関して,引用発明においても,「ユーザー」によって「カスタマイズ」が行われていることから,当該「カスタマイズ」のための「ユーザー」からの指示を受信していることは明らかである。
そして,上記Cにおいて引用した,引用刊行物1の「クラスタ4の自動インストールを行なわせるユーザは,このUIに従ってインストール設定をカスタマイズして生成し,自動インストーラ3aへ入力する」という記載から,引用発明が,“ユーザーが,自動インストーラに対して,自動インストールの実行指示を出す”態様を含むものであることは,明らかである。
以上に検討した事項から,引用発明において,「ユーザー」から,“自動インストールの要求を,自動インストーラが受信する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

エ.[相違点4]について
「関連付けを指定」する点に関しては,上記Jに引用した,引用刊行物4の「要求の送り先であるリソースマネージャが属する管理ドメインと,構成変更操作の対象である資源が属する管理ドメインが一致するように送信先のリソースマネージャを選択する」という記載,上記Kにおいて引用した,引用刊行物4の「この要求に対して,リソースマネージャは,条件を満たす資源を選択し,構成変更準備の処理を行う。その結果,構成変更操作1に対して,server12, server14, server15, server18, server22(これらは具体的なサーバ名を示す)の5つのサーバ機器を選択し,構成変更操作2に対して,server05のサーバ機器を選択したと仮定する。リソースマネージャは,構成変更準備要求に対応する準備通知に,これらの資源名を含める」という記載,同じく,上記Kにおいて引用した,引用刊行物4の「対象の資源上で動作するWWWサーバに対して,server04上で動作するアプリケーションサーバの情報を登録する」という記載,上記Lに引用した,周知技術文献の「ブロック306は特定のプロビジョニング環境の関係を表すリソースのサブタイプ間の「依存」関係を定義するステップを表す」という記載,上記Lに引用した,周知技術文献の「ブロック310は,論理的なプロビジョニングの結果として確立されるべき論理的な関係を表すリソース間の「対応」関係を示す。例えば,図2および図3から図4のプロビジョニング環境では,プロビジョニングプロセスの一部は,同じ顧客に割り当てられる他のサーバーと通信できるようにサーバーを構成することになる」という記載,及び,同じく,上記Lに引用した,周知技術文献の「本発明によるプロビジョニング環境でリソース要求に従いリソースを識別,予約,および論理的にプロビジョニングするステップを示す高次のフローチャートを図示する」という記載から,“プロビジョニングにおいて,リソース間の対応関係を指定する”ことは,本願の第1国出願前に,当業者には,周知の技術事項であって,
引用発明と,引用刊行物4に係る発明,及び,周知技術文献に開示の技術とは,ネットワークに接続された“リソース”の事前設定に関する技術である点で共通するので,
引用発明においても,「自動インストール」を行う際に,「テンプレート」を用いて,「複数のソフトウェア」同士の「関連付けを指定」するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点4]は,格別のものではない。

オ.[相違点5]について
システムの事前設定,即ち,「プロビジョニング」において,個々の構成要素の「パラメータ」を含む,設定要求を用いて,事前設定を行うようなことは,例えば,上記Eに引用した,引用刊行物2の「例えば,要求送信部1は図5に示す構築要求情報を送信する。図5の例では,要求アーキテクチャの詳細として,CPUの性能,メモリサイズ,LAN(Local Area Network)の性能,ディスク性能,OS(Operating System)の種類等が示されている」という記載,及び,上記Fに引用した,引用刊行物2の「要求送信部1により計算機の利用要求を入力するための入力画面が表示装置に表示され,操作員による設定内容の入力がなされた後に,操作員の設定内容を示す構築要求情報(図5)が資源管理用計算機7に送信される」という記載から,明らかなように,本願の第1国出願前に,当業者には,広く知られた技術事項であるから,引用発明においても,「テンプレート」に,「設定値」として,「複数のソフトウェア」,或いは,その他の構成要素に対して,“ユーザーによって指定されたパラメータ”を含ませるよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点5は,格別のものではない。

カ.[相違点7]について
「プロビジョニング」が,成功した場合,或いは,失敗した場合に「通知」を行う点については,上記Gに引用した,引用刊行物2の「要求管理部3は,資源管理部5からの検索結果を調べ,利用可能な計算機本体がなかった場合(S303でNO)は,要求元計算機2が要求する計算機アーキテクチャを用意できなかった旨を通信部15を介して要求元計算機2の要求送信部1に回答する」という記載,及び,上記Hに引用した,引用刊行物2の「要求管理部3は,要求された計算機環境が用意できた旨を通信部15を介して要求元計算機2の要求送信部1に回答する」という記載にもあるとおり,本願の第1国出願前に,当業者には,広く知られた技術事項であるから,
引用発明においても,「ユーザー」に対して,「自動インストール」の成功時,及び,失敗時に,その旨を通知するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点7]は,格別のものではない。

キ.以上,ア.?カ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点7]は,格別のものではなく,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,引用刊行物2?引用刊行物4に係る発明,及び,周知技術文献に開示された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年10月1日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年2月17日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次に記載のとおりのものである。

「1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,スタックビルダーサービスにより実行される方法であって,
ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定する,受信することと,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること,
前記複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および
前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む,方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物1として引用した,特開2007-193696号公報には,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,引用発明が記載されている。

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明から,「テンプレート」に対する,「別個の種類のサービスの前記別個のネットワークリソースに関連する,前記ユーザーによって指定された1つまたは複数のパラメータを含む」という限定事項を取り除いたものであるから,
本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
1つまたは複数のクラウドコンピューティングプラットホームの別個の種類のサービスの複数の別個の種類のネットワークリソースのプロビジョニングを実施するリソースプロビジョニングサービスサーバーにおいて,実行される方法であって,
テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信することであって,前記テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有する,受信すること,
プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々を識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々をプロビジョニングすることを試行することを含む,方法。

[相違点a]
“実行される方法”に関して,
本願発明においては,「スタックビルダーサービスにより実行される方法」であるのに対して,
引用発明においては,“実行される方法”が,“何”によって実行されているのか,明確には示されていない点。

[相違点b]
“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること”に関して,
本願発明においては,「ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること」であるのに対して,
引用発明においては,「ソフトウェアスタック」が,「特定」のものであるかについての言及がない点。

[相違点c]
同じく,“テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること”に関して,
本願発明においては,「ユーザーから,テンプレートによって識別された複数の別個のネットワークリソースの特定のセットのスタックをプロビジョニングするための要求を受信すること」であるのに対して,
引用発明においては,“ユーザーから,要求を受信する”点については,特に,言及されていない点。

[相違点d]
“テンプレートが,別個のサービスを提供する別個のネットワークリソースの関連付けの情報を有し”に関して,
本願発明においては,「テンプレートは前記別個の種類のサービスの1つまたは複数の別個のネットワークリソースの関連付けを指定」するものであるのに対して,引用発明においては,「テンプレート」によって,“複数のソフトウェア”がどのように「関連付け」られているのか,明確には示されていない点。

[相違点e]
“解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々をプロビジョニングすること”に関して,
本願発明においては,「解析に応答して前記複数の別個のネットワークリソースの各々を少なくとも部分的にプロビジョニングすることを試行すること」であるのに対して,
引用発明においては,「部分的にプロビジョニングする」ことに関しては,特に,言及されていない点。

[相違点f]
本願発明においては,「複数の別個のネットワークリソースの各々が無事にプロビジョニングされる場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功したことを通知すること,および前記複数の別個のネットワークリソースの1つまたは複数が無事にプロビジョニングされない場合は,前記ユーザーに前記スタックのプロビジョニングが成功しなかったことを通知することを含む」ものであるのに対して,
引用発明においては,「自動インストール」の「成功」,或いは,“失敗”についての「通知」を行う点については,特に,言及されていない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との[相違点a]?[相違点f]は,本件補正発明と,それぞれ,引用発明との[相違点1]?[相違点4],[相違点6],及び,[相違点7]と同じものであるから,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

なお,審判請求人は,平成28年2月26日付けで上申書を提出し,当該上申書において,本願の特許請求の範囲に対する補正案を提示しているが,当該補正案に示されている,請求項1についての,
「プロビジョニングを要求された前記複数の別個のネットワークリソースの各々,および,前記関連する1つまたは複数のパラメータを識別するために前記テンプレートを解析すること,
前記解析に少なくとも部分的に応答して,前記複数の別個のネットワークリソースの各々を前記関連する1つまたは複数のパラメータにしたがってプロビジョニングすることを試行すること」という記載に関して,
審判請求人が,補正の根拠としてあげている,段落【0008】,【0022】,【0024】,及び,【0033】には,「パラメータ」に関して,
「ユーザーは,リソースに関連した特定のパラメーターを指定するため,テンプレート内の命令を変更してもよく,変更したテンプレートを新しいテンプレートとして保存してもよい。」(段落【0008】),
「ユーザーは,要求されたリソースのサイズ,要求されたリソースの構成要素のいくつか(例えばコンピュータ,データベース等),リソースの特定のバージョン,または他のパラメーターを指定するため,事前に入力された命令の中のあるパラメーターを変更してもよい。」(段落【0022】),
「テンプレートに基づいたリソースプロビジョニングの要求を受信すると,ビルダー120は,テンプレート(例えば,テキストファイル形式であり得る)を検索し解析してこれらのリソースをプロビジョニングする命令と同様,所望のリソースのアイデンティティーおよびパラメーター(例えばサイズ等)を決定してもよい。」(段落【0024】),
「ユーザー102(1)はこのテンプレートをカスタマイズした可能性がある。例えば,ユーザー102(1)にはリソースの特定のバージョン,リソースのサイズ,リソースの論理名等のあるパラメーターの値を指定している可能性がある。」(段落【0033】),
と記載されていて,該「パラメータ」に関しては,上記引用の記載箇所以外,本願明細書の他の段落に記載がない。
そして,段落【0024】に記載された内容から,補正案における「テンプレートを解析する」ことは,本願明細書の発明の詳細な説明から読み取れるものの,
補正案における「前記解析に少なくとも部分的に応答して,前記複数の別個のネットワークリソースの各々を前記関連する1つまたは複数のパラメータにしたがってプロビジョニングすることを試行すること」(以下,これを「補正案の記載」という)は,本願明細書の発明の詳細な説明中に,対応する記載が存在しない。
補正案の記載における「パラメータにしたがってプロビジョニングする」が,単に,“パラメーターが変更された,リソースをプロビジョニングする命令に従って,プロビジョニングを行う”程度の意味であるならば,引用刊行物2の,例えば,【図5】等に示されているように,“設定されたパラメータによって,事前準備を行う”ことは,上記において指摘したとおり,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であるから,仮に,当該補正案を採用したとしても,拒絶理由は解消しない。
また,補正案の記載が,周知技術とは異なる技術事項を表現したものであるとすると,上記において指摘したとおり,そのような技術事項に関しては,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず,どのように実現するか不明である。
以上に検討したとおりであるから,仮に,上申書に提示の補正案を採用しても,拒絶理由は解消しない。
そして,上申書における,本願発明と,引用発明との対比に関する意見は,上記において検討したとおりであるから,補正案の採否にかかわらず,採用できない。

第8.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-12 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-05-31 
出願番号 特願2013-518539(P2013-518539)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 俊範漆原 孝治篠塚 隆杉浦 孝光  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 石井 茂和
須田 勝巳
発明の名称 複数のネットワークリソースのプロビジョニング  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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