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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1320696
審判番号 不服2014-24714  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-03 
確定日 2016-10-19 
事件の表示 特願2009-538797「脂質及び界面活性剤の高分子集合体を含む組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年6月5日国際公開、WO2008/065451、平成22年4月8日国内公表、特表2010-511032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年11月29日(パリ条約による優先権主張:2006年11月29日及び同年12月5日 以上グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、並びに2006年12月8日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成21年9月1日及び平成22年11月25日にそれぞれ手続補正書が提出され、平成25年4月25日付けで拒絶理由が通知され、同年11月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年7月30日付けで拒絶査定され、同年12月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年3月20日付けで前置審査の結果が報告されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の結論]
平成26年12月3日付け手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成26年12月3日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号の場合の補正であって、その内容は、特許請求の範囲の請求項1を本件補正前の
「リン脂質及び界面活性剤を含む組成物であって、該界面活性剤が13.5?17の範囲のHLB数を有するエーテル界面活性剤であり、該界面活性剤の脂質に対する比が重量に基づき5:1?1:1であり、並びに該脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態であるという点で特徴付けられる、前記組成物。」
から
「リン脂質及び界面活性剤を含む組成物であって、該界面活性剤が13.5?17の範囲のHLB数を有するエーテル界面活性剤であり、該界面活性剤の脂質に対する比が重量に基づき5:1?1:1であり、該エーテル界面活性剤が:
(i)ラウレス、トリデセス、ミリステス、セテス、イソセテス、オレス、パレス、セテアレス若しくはコセスエーテルであるエトキシル化非芳香族アルコール界面活性剤、又は、エトキシル化芳香族アルコール界面活性剤;
(ii)プロポキシル化/エトキシル化エーテル界面活性剤;
(iii)ポリグリセリルエーテル界面活性剤;又は
(iv)糖エーテル界面活性剤
であり、並びに該脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態であるという点で特徴付けられ、該組成物が、5重量%未満の短鎖アルコールを含む、前記組成物。」
とする補正(以下、「補正1」という。)を含むものである。
ここで、補正1は、
(1)「エーテル界面活性剤」について、(i)?(iv)のものに特定する補正(以下、「補正事項1」という。)及び
(2)「組成物」が、「5重量%未満の短鎖アルコールを含む」ことを特定する補正(以下、「補正事項2」という。)
からなる。

2.本件補正の適否について
(1)本件補正の目的について
補正事項1は、組成物に含まれるエーテル界面活性剤について、その種類を限定するものであり、また補正事項2は、組成物を構成する成分及びその含有量を特定するものであるから、いずれも発明特定事項を限定するものであって、本件補正前後で請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正1は特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)独立特許要件について
上記のとおり、補正1は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項の場合に該当するので、さらに同条第6項で準用する同法第126条第7項の規定を充足しているか、すなわち本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

ア.実施可能要件について
補正発明1で使用する界面活性剤は、「13.5?17の範囲のHLB数を有するエーテル界面活性剤」であり、該エーテル界面活性剤は:
(i)ラウレス、トリデセス、ミリステス、セテス、イソセテス、オレス、パレス、セテアレス若しくはコセスエーテルであるエトキシル化非芳香族アルコール界面活性剤、又は、エトキシル化芳香族アルコール界面活性剤;
(ii)プロポキシル化/エトキシル化エーテル界面活性剤;
(iii)ポリグリセリルエーテル界面活性剤;又は
(iv)糖エーテル界面活性剤
であると特定されている。
これらのエーテル界面活性剤については、発明の詳細な説明の【0033】?【0046】で説明するとともに、【0061】には、適切な界面活性剤として具体的に「オクトキシノール-12、ノノキシノール-15、オクトキシノール-16、ノノキシノール-20、ラウレス-8、ラウレス-10、ラウレス 23、セテス-10、セテス-15、セテス-20、オレス-15、オレス-20、C11-15パレス-12、C11-15パレス-15、C11-15パレス-20、C11-15パレス-20、C12-C13パレス-23、セテアレス-20、セテアレス-25、セテアレス-30、イソセテス-20、イソステアレス-20」が挙げられている。なお、「ノノキシノール-20」までのものは「エトキシル化芳香族アルコール界面活性剤」に該当するものであり、「ラウレス-8」以降のもの(ただし、「イソステアレス-20」を除く。)は「エトキシル化非芳香族アルコール界面活性剤」に該当するものである。
ここで、補正発明1では、共界面活性剤の含有については特定されていないことから、まず、共界面活性剤を含有しないとしている「実施例2」(【0170】?【0175】)について検討する。(ただし、実施例2では「サンプルは、実施例1に記載されているものに類似した手順によって、水において調製した。2.5%の界面活性剤及び1%の脂質を含んでいる水溶液の範囲を調製した(この場合、共界面活性剤の欠如を強調する)。」(【0170】)と記載されているものの、表6の行1の脂質90Hの結果は、対応する実施例1の表4a及び4b並びに実施例3の表7の結果(いずれも共界面活性剤「S LPC」を含むものである。(実施例1の【0125】、及び実施例3の【0176】?【0178】や表7参照))から見ると、共界面活性剤を配合したもののようにも解される。すなわち、表6の界面活性剤「Brij 35P」を使用する場合は表7の「S LPC」を配合するものと濁度(FNU)が同一の数値又は表4aのものと平均濁度(FNU)が近似した数値であるし、さらに表6の界面活性剤「Triton X-165」を使用する場合は表4bのものと平均濁度(FNU)が近似した数値になっている。)
実施例2で使用している界面活性剤のうち、補正発明1で特定するエーテル界面活性剤に該当するものは、「Symp.AIC 200(HLB=15.7)」、「Triton X-165(HLB=16)」及び「Brij 35P(HLB=16.9)」の3つである。(なお、これらは、表4a及び4bを参酌すると、それぞれ「イソセテス-20」、「オクトキシノール-16」及び「ラウレス-23」に該当する。)
実施例2では、使用する脂質はいずれもリン脂質を含むものであり(【0170】?【0173】)、界面活性剤の脂質に対する比は重量に基づき2.5:1(【0170】)であるにもかかわらず、表6によると、脂質及び界面活性剤からなる高分子集合体の直径は100nm以上のものが含まれる。(なお、【0071】に「75未満のFNUの透明性は、典型的には100nm未満の粒子サイズを表す。」と記載されていることからみて、表6に記載されたFNU値が75未満のものが直径100nm未満と認める。)
また、「実施例1」(【0125】?【0169】)は、リン脂質及びエーテル界面活性剤以外に「S LPC共界面活性剤」を含むものであるが(【0125】)、表4a及び4bに示された結果は実施例2と同様であり、エーテル界面活性剤のHLBが13.5?17の範囲であっても、平均濁度(FNU)が75以上のものが多数存在し、特に表4a中の「オレス-20」や「セテアレス-20」は異なる商品名のものを使用するのみで平均濁度が大きく相違する結果となっている。なお、「共界面活性剤」の使用は「実施例3」(【0176】?【0178】)の結果から見て、溶液の透明性の顕著な改良、すなわち平均濁度(FNU)の低下の方向に働くものと認められることから、実施例1において「共界面活性剤」を使用しない場合にはFNUは示されたものよりさらに増加するものと解される。
さらに、(ii)プロポキシル化/エトキシル化エーテル界面活性剤、(iii)ポリグリセリルエーテル界面活性剤又は(iv)糖エーテル界面活性剤を配合することで、「脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態」となることを具体的に示す例は一切示されていない((ii)について表4c?4e参照。(iii)及び(iv)については実施例なし。)。
実施例4は、共界面活性剤(S LPC)及び活性剤をさらに含むものであるが、例えば、界面活性剤として「Brij 35P」(ラウレス-23:HLB=16.9)を採用しても、活性剤の種類によって濁度(FNU))は大きく変動するものであって、補正発明1で特定するエーテル界面活性剤のいずれを採用しても、「脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態」となることを確認することはできない。他の実施例を見ても同様である。
そうすると、HLB数が13.5?17であるエーテル界面活性剤を採用しても、その組成物は必ずしも「脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態」となるとはいえず、また、HLB数と高分子集合体の直径の関係にどのような傾向があるのかも把握することができないから、実施例2(さらに実施例1及び3を含めても)で平均濁度(FNU)が75未満となるエーテル界面活性剤を使用する組成物以外、どのようなリン脂質とHLB数が13.5?17の範囲のエーテル界面活性剤を組み合わせればよいか、当業者が理解することができない。
したがって、補正発明1の組成物を得るには、発明の詳細な説明の記載に加え出願時の技術常識を参照しても、当業者に過度の試行錯誤を要するものであり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということができない。

イ.小括
したがって、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
上記記載のとおり、平成26年12月3日付け手続補正書による補正は却下されたので、本願の請求項1?41に係る発明は、平成25年11月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?41にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「リン脂質及び界面活性剤を含む組成物であって、該界面活性剤が13.5?17の範囲のHLB数を有するエーテル界面活性剤であり、該界面活性剤の脂質に対する比が重量に基づき5:1?1:1であり、並びに該脂質及び界面活性剤が直径100nm未満の高分子集合体の形態であるという点で特徴づけられる、前記組成物。」

第4 当審の判断
実施可能要件について
本願発明1で特定する「エーテル界面活性剤」は「13.5?17の範囲のHLB数を有する」と特定するのみで、上記第2の2(2)における補正発明1のように、(i)?(iv)の特定がない。
そうすると、上記第2の2(2)アで示した事項はすべて妥当することになり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
したがって、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項及び他の理由について検討するまでもなくこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-20 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-06 
出願番号 特願2009-538797(P2009-538797)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 松浦 新司
関 美祝
発明の名称 脂質及び界面活性剤の高分子集合体を含む組成物  
代理人 石川 徹  

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