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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1320734
審判番号 不服2015-14387  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-31 
確定日 2016-10-19 
事件の表示 特願2011-166568「表面の異常および/または特徴を検出する光学システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開,特開2012- 21994〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成16年6月24日(パリ条約による優先権主張日:平成15年6月24日 米国,平成16年6月22日 米国)を国際出願日とする特願2006-517681号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成23年7月29日に新たな特許出願として分割したものであって,平成25年8月16日付けで拒絶理由が通知され,平成26年2月20日に意見書及び手続補正書が提出され,同年7月3日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成27年1月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ,同年3月23日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ,それに対して,同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成27年7月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定

1 補正の却下の決定の結論
平成27年7月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

2 理由
(1) 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲について,平成26年2月20日付け手続補正書に

「【請求項1】
サンプルの異常を検出する光学装置であって、
サンプルの表面上の照明される領域に対して、サンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器と、
第1の検出器アレイと、
放射光線から生じ、サンプル表面上の照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を前記第1のアレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器と、を備え、
前記第1の光学機器が光線をサンプルの表面に反射する集光光学機器の集光開口に反射器を有し、前記反射器が集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状を有する光学装置。

【請求項2】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
サンプルの表面上で焦点の合った第1のラインに対して斜めの第1の入射角度で放射光線を第1の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第1の焦点の合った光線と前記第1の焦点の合った光線を通ると共に前記表面に垂直な方向とが前記第1の焦点の合った光線の入射面を規定し、前記第1のラインが前記第1の焦点の合った光線の入射面に実質的に存在する、焦点を合わせるステップと、
サンプルの表面上の照明される領域に対して垂直方向または略垂直方向の第2の入射角度で放射光線を第2の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第2の入射角度が前記第1の入射角度とは異なる、焦点を合わせるステップと、
前記第1および/または第2の焦点の合った光線から生じ、サンプル表面上の第1のラインおよび/または照明される領域から散乱または反射される放射線を集光すると共に前記ラインおよび/または前記照明される領域の一部分から集光される放射線を複数の検出器アレイの各々における対応する検出器へと焦点を合わせるステップであって、前記複数の検出器アレイのうちの1つが前記照明される領域の垂直または略垂直角度の暗視野での作像を検出するように配置され、前記複数の検出器アレイのうちの他のものが二重暗視野検出での検出器アレイである、焦点を合わせるステップと、
を含む光学方法。

【請求項3】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
サンプルの表面上で焦点が合った第1のラインに対して斜めの第1の入射角度で放射光線を第1の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップと、
サンプルの表面上の照明される領域に対して垂直方向または略垂直方向の第2の入射角度で放射光線を第2の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第2の入射角度が前記第1の入射角度とは異なる、焦点を合わせるステップと、
前記第1および/または第2の焦点の合った光線から生じ、サンプル表面上の第1のラインおよび/または照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に前記ラインおよび/または前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を複数のアレイの各々における対応する検出器へと焦点を合わせるステップであって、前記焦点を合わせるステップが一つ以上の空間周波数で散乱される放射線を瀘過する空間フィルタに前記集光された放射線を通過させるようにし、前記複数のアレイのうちの1つが前記照明される領域の垂直または略垂直角度の暗視野での作像を検出するように配置され、前記複数のアレイのうちの他のものが二重暗視野検出での検出器アレイである、焦点を合わせるステップと、
を含む光学方法。

【請求項4】
請求項2または3記載の方法において、
前記第1および第2の焦点の合った光線が、少なくとも一つの紫外線または深紫外線の波長を有する方法。

【請求項5】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
サンプルの表面上の照明される領域に対して、サンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップと、
放射光線から生じ、サンプル表面上の照明される領域から散乱される放射線を集光光学機器によって集光すると共に前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせるステップと、を含み、
前記焦点を合わせるステップが光線をサンプルの表面に反射する集光光学機器の集光開口に反射器を用い、前記反射器が前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状を有する光学方法。」

とあったものを、

「【請求項1】
サンプルの異常を検出する光学装置であって、
サンプルの表面上の照明される領域に対して、そのサンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器と、
第1の検出器アレイと、
サンプル表面上で、放射光線により照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に、前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を前記第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器と、を備え、
前記第1の光学機器が反射器をさらに有し、前記反射器が前記対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置されると共に、光線をサンプルの表面に反射し、前記反射器の形状が前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状であり、
前記光学装置が、前記集光光学機器から分離されると共に、前記集光光学機器の集光開口の外側への方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光する集光チャンネルをさらに備える光学装置。

【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記集光チャンネルが、前記反射器が反射していない散乱される放射線を集光する装置。

【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記集光チャンネルが、サンプル表面に対して斜めの角度を成す軸を有する光学機器を備える装置。

【請求項4】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
サンプルの表面上で焦点の合った第1のラインに対して斜めの第1の入射角度で放射光線を第1の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第1の焦点の合った光線と前記第1の焦点の合った光線を通ると共に前記表面に垂直な方向とが前記第1の焦点の合った光線の入射面を規定し、前記第1のラインが前記第1の焦点の合った光線の入射面に実質的に存在する、焦点を合わせるステップと、
サンプルの表面上の照明される領域に対して垂直方向または略垂直方向の第2の入射角度で放射光線を第2の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第2の入射角度が前記第1の入射角度とは異なる、焦点を合わせるステップと、
前記第1および/または第2の焦点の合った光線から生じ、サンプル表面上の第1のラインおよび/または照明される領域から散乱または反射される放射線を集光すると共に前記ラインおよび/または前記照明される領域の一部分から集光される放射線を複数の検出器アレイの各々における対応する検出器へと焦点を合わせるステップであって、前記複数の検出器アレイのうちの1つが前記照明される領域の垂直または略垂直角度の暗視野での作像を検出するように配置され、前記複数の検出器アレイのうちの他のものが二重暗視野検出での検出器アレイである、焦点を合わせるステップと、
を含む光学方法。

【請求項5】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
サンプルの表面上で焦点が合った第1のラインに対して斜めの第1の入射角度で放射光線を第1の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップと、
サンプルの表面上の照明される領域に対して垂直方向または略垂直方向の第2の入射角度で放射光線を第2の焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップであって、前記第2の入射角度が前記第1の入射角度とは異なる、焦点を合わせるステップと、
前記第1および/または第2の焦点の合った光線から生じ、サンプル表面上の第1のラインおよび/または照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に前記ラインおよび/または前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を複数のアレイの各々における対応する検出器へと焦点を合わせるステップであって、前記焦点を合わせるステップが一つ以上の空間周波数で散乱される放射線を瀘過する空間フィルタに前記集光された放射線を通過させるようにし、前記複数のアレイのうちの1つが前記照明される領域の垂直または略垂直角度の暗視野での作像を検出するように配置され、前記複数のアレイのうちの他のものが二重暗視野検出での検出器アレイである、焦点を合わせるステップと、
を含む光学方法。

【請求項6】
請求項4または5記載の方法において、
前記第1および第2の焦点の合った光線が、少なくとも一つの紫外線または深紫外線の波長を有する方法。

【請求項7】
サンプルの異常を検出する光学方法であって、
(a)サンプルの表面上の照明される領域に対して、そのサンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせるステップと、
(b)サンプル表面上で、放射光線により照明される領域から散乱される放射線を集光光学機器によって集光すると共に、前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせるステップと、を含み、
反射器が前記(a)の焦点を合わせるステップで用いられ、前記反射器が前記対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置されると共に、光線をサンプルの表面に反射し、前記反射器の形状が前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状であり、
前記光学方法が、(c)前記集光光学機器の集光開口の外側への方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光するステップをさらに含む光学方法。

【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記(c)の集光するステップが、前記反射器が反射していない散乱される放射線を集光する方法。

【請求項9】
請求項7記載の方法において、
前記(c)の集光するステップが、サンプル表面に対して斜めの角度を成す軸に沿って散乱される放射線を集光する方法。」

と補正するものである。(下線は,補正箇所を明示するために当審が付与。)

(2) 補正の目的について
本件補正は,請求項の数を5から9に増加する増項補正であるから,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「第36条第5項に規定する請求項の削除」、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」、同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」には該当しない。

また、同項第2号には「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定されているところ,この「特許請求の範囲の減縮」の解釈については,「同号にいう「特許請求の範囲の減縮」とは,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであって,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,増項補正,補正後の各請求項の記載により特定される各発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないというべきである。」(平成16年4月14日に知財高裁で言渡された平成15年行(ケ)230号判決参照)と判示される一方で,「同号は,かっこ書を含めてその要件を明確に規定しているのであるから,問題となる補正が同号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには,それがいわゆる増項補正であるかどうかではなく,(1)特許請求の範囲の減縮であること,(2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,(3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること,という要件・・・を満たすことが必要であり,かつそれで十分であるというべきである。」(平成27年2月18日に知財高裁で言渡された平成26年(行ケ)第10057号判決参照)(原文では,要件を示す(1)(2)(3)は,丸数字)と判示されている。

まず,平成15年(行ケ)230号判決の判示に従い,補正前の請求項と補正後の請求項とが,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものであるかどうかについて検討する。本件補正後の請求項1ないし9に係る発明のうち,請求項4ないし6に係る発明は,本件補正前の請求項2ないし4に係る発明と一対一またはこれに準ずるような対応関係を有している。しかしながら,本件補正後の請求項1については,本件補正前の請求項1に少なくとも集光チャネルを付加したものであり,本件補正後の請求項2及び3については,本件補正後の請求項1を引用し,当該集光チャネルをさらに限定するものであるから,本件補正後の請求項1ないし3に係る発明は,本件補正前の請求項1に係る発明と一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものではない。また,本件補正後の請求項7については,本件補正前の請求項5に少なくとも(c)の集光するステップを付加したものであり,本件補正後の請求項8及び9については,本件補正後の請求項7を引用し,当該(c)の集光するステップをさらに限定するものであるから,本件補正後の請求項7ないし9に係る発明は,本件補正前の請求項5に係る発明と一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものではない。

次に,平成26年(行ケ)第10057号判決の判示に従い,(1)特許請求の範囲の減縮であること,(2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,(3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることという要件を満たすものであるかどうか検討する。本件補正により請求項1?3に付加された集光チャネルは,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するための事項でなかったことから,集光チャネルを付加する当該補正事項は,補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。また,本件補正により請求項7?9に付加された(c)の集光するステップは,本件補正前の請求項5に記載した発明を特定するための事項でなかったことから,(c)の集光するステップを付加する当該補正事項は,補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。

したがって,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正を含むことから,同法第17条の2第4項の規定に適合していないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3) 独立特許要件について
上記のとおり,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合していないが,仮に本件補正が,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるとすれば,本件補正後の請求項に係る発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する必要があるので,念のため検討する。

ア 本願補正発明
本件補正後の請求項1ないし9に係る発明は,平成27年7月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認める。そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は以下のとおりのものである。なお,(A)?(F)の見出し記号は,当審で付記したものである。

「【請求項1】
(A)サンプルの異常を検出する光学装置であって、
(B)サンプルの表面上の照明される領域に対して、そのサンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器と、
(C)第1の検出器アレイと、
(D)サンプル表面上で、放射光線により照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に、前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を前記第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器と、を備え、
(E)前記第1の光学機器が反射器をさらに有し、前記反射器が対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置されると共に、光線をサンプルの表面に反射し、前記反射器の形状が前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状であり、
(F)前記光学装置が、前記集光光学機器から分離されると共に、前記集光光学機器の集光開口の外側への方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光する集光チャンネルをさらに備える光学装置。

なお,平成27年7月31日付けの手続補正書では,請求項1の(E)の構成要件中に「前記対物レンズ」なる記載が見られるが,それ以前に「対物レンズ」という文言は見られないこと,そして対物レンズと集光光学機器の間に反射器が配置されていることは本願明細書の【0044】,【0050】,図10,11等と整合的であることから,「前記対物レンズ」は「対物レンズ」の誤記と認め,上記のように認定した。

イ 刊行物1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に頒布された特公平6-10656号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は審決で付与。)

(刊1-ア)「(産業上の利用分野)
この発明は、半導体ウエハ等の被検査体について、その表面に存在する微小な凹凸などの欠陥を光学的に検出する装置に関する。」(第1頁第2欄第9行から第12行)

(刊1-イ)「半導体ウエハや、ビデオディスク等においては、その表面に存在する凹凸や傷などの欠陥によって製品の品質が大きく左右されるため、これらの欠陥を検出することによって製品の品質管理を行なう必要がある。このような表面欠陥検出装置としては種々の装置が提案されているが、非破壊検査として代表的なものは光学方式の検出装置であり、その従来例(特開昭57-131039号)を第23図に示す。・・・レーザビームLが被検査体57の表面で反射されることによって得られる反射光Rは、被検査体57の表面の平坦部で反射されてレーザビームLの入射光束と同じ光路を戻る正反射光(0次回折光)R0と、表面欠陥で散乱されてレーザビームLの入射光路とは異なる方向へ反射される散乱光Rdとを含んでいる。・・・一方、被検査体57の表面に欠陥が存在すると、正反射光R0は減少し、散乱光Rdは増加する。・・・また、第2の光電変換素子63の出力は第2欠陥検出回路65で処理して、散乱光Rdの増加による欠陥検出を行なう。これらの2種類の欠陥信号はそれぞれ単独で使用されることもあり、また、それらの差をとってS/N比を向上させることもある。・・・また、上記装置では、表面欠陥の有無については検出することができるものの、その欠陥の種類の判別までは行うことができない。」(第1頁第2欄第14行から第2頁第4欄第10行)

(刊1-ウ)「第1図はこの発明の一実施例である表面欠陥検査装置の概要図である。・・・第1図のレーザビームLは、光透過率分布フィルタ4のうち、透過率の小さい中心部分A(換言すれば反射率の大きな部分)によってそのほとんどが反射され、1/4波長板5を通った後、レンズ6を介して、このレンズ6の焦点距離fの位置にある被検査体表面7に照射される。このレーザビームLは被検査体表面7で反射されて反射光Rとなるが、この反射光Rは偏向性反射光Rtと散乱性反射光Rdとによって形成されている。・・・前述したように、レーザ光源1から発したレーザビームLは、光透過率分布フィルタ4の中心部分Aに入射する。被検査体表面7からの正反射光R0が、同じく中心部分Aへ再入射するということは、いうまでもなく、レーザビームLは被検査体表面7へ略垂直に入射されることを前提としている。すなわち、レーザ光源1、偏光ビームスプリッタ2、光透過率分布フィルタ4、1/4波長板5、およびレンズ6などの光学系は、レーザビームLを被検査体表面7へ略垂直に導くような幾何学的位置関係をもって配置されている。これらは第1図に図示する通りである。散乱性反射光Rdは、この光透過率分布フィルタ4のうち、透過率の大きさ部分Bに入射するため、その全部または大部分がこの光透過率分布フィルタ4を透過して光電変換手段8の受光面に入射する。」(第2頁第4欄第40行から第3頁第5欄第41行)

(刊1-エ)「C.散乱性欠陥検出系の構成と動作
次に、第2の反射光R2に基く散乱性欠陥検出について説明する。この散乱性欠陥検出は従来の装置を変形使用することによっても構成可能であるが、この実施例では、欠陥の存在のみでなく、その種類も容易に識別可能な新規な装置を利用する。そこでは、まず、第1図の光電変換手段8として、第17図に示すように、単位光電変換素子D1,D2,D3,…(以下、「単位素子」と言う。)を所定の規則に従って空間的に配列した光電変換素子アレイ80を使用し、これによって、第2の反射光R2の回折パターンの空間的強度分布の形態を検出する。そして、この強度分布の形態に関するデータによって散乱性欠陥の種類の判別をも行なう。」(第6頁第11欄第11行から第23行)

(刊1-オ)「上記実施例では透過率分布フィルタ4を光分離手段として用いたが、たとえば第21図(a)に示すような小型ミラー31や、同図(b)の小型プリズム32によって分離を行なうことも可能である。この場合には、第2の反射光R2は散乱性反射光Rdのみを含むため、散乱性反射光検出手段としては、散乱性反射光Rdのみによって欠陥検出を行なう検出系を使用する。」(第7頁第13欄第11行から第17行)

(刊1-カ) 第21図からみて,上記(刊1-オ)で摘記した「小型ミラー31」は,上記(刊1-ウ)で摘記した「散乱性反射光Rd」の「大部分」を透過する「光透過率分布フィルタ4」よりも,散乱性反射光を妨害しないことは明らかである。

(刊1-キ) 上記(刊1-ウ)及び(刊1-オ),第1図,第21図等からみて,「小型ミラー31」は,「光電変換素子アレイ」と「レンズ6」の間に配置されている。

ウ 刊行物1に記載された発明
上記(刊1-カ)及び(刊1-キ)を踏まえ,上記(刊1-ア)ないし(刊1-オ)の摘記事項の下線部を整理すると,刊行物には次の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

なお,刊行物1発明には摘記等の根拠となった箇所を付記してある。

「散乱光を検出することで被検査体の欠陥の有無を検出する表面欠陥検査装置であって(刊1-ア,刊1-イ,刊1-ウ),
レンズから焦点距離だけ離れた被検査体表面の位置に対して,その被検査体表面に対して略垂直にレーザービームをレンズの焦点距離の位置で焦点を合わせるレンズを含む光学系(刊1-ウ,刊1-オ)と,
光電変換素子アレイ(刊1-エ)と,を備え,
前記光学系は小型ミラーを有し,前記小型ミラーはレンズと前記光電変換素子アレイとの間に配置されるとともに,レーザービームを被検査体表面に反射し,光電変換素子アレイに入射する散乱性反射光の妨害を低減するものである(刊1-オ,刊1-カ,刊1-キ),表面欠陥検査装置。」

エ 刊行物2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に頒布された特表2001-512237号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は審決で付与。)

(刊2-ア)「【0001】本発明は一般的に表面検査システムに関し、さらに詳しく言えば、表面の異常および/または特徴を検出するための改良形システムに関する。」

(刊2-イ)「【0016】記載を容易にするために、本出願では同一の要素には同一の符号を付している。図1は、本発明の好適な実施形態を説明するもので、表面の検査システムの斜視図である。システム10は、被検査表面18上にある線20の形状の領域を照明するために、好ましくは平行化された光ビーム14を集束させたビーム16に集束させるための円柱レンズ12等の円柱の対物レンズを含む。ビーム14、すなわち集束ビーム16は表面18に対して入射角が斜角の方向である。上述したガラによるアプローチとは異なり、線20は実質的に集束ビーム16の入射面にある。この意味では、ビーム16の入射面はビーム16を含む共通面と表面18に対する22のような垂直方向により規定され、ビーム16を通過する。照明された線20がレンズ12の集束面にあるためには、円柱レンズ12が主要面が実質的に表面18に平行であるような方向に置かれる。線の像は像映サブシステム30により、CCD32の線形アレイ等の検出器のアレイに集束させる。線形アレイ32は線20に平行であることが好ましい。」

(刊2-ウ)「【0022】上記より、システム10は、ストーンストロム等のものよりもかなり小さいものである、有効「ピクセル」サイズが5×10ミクロンであるため、感度が非常に高いものであることがわかる。同時に、表面18のピクセル線全体がストーンストロム等のような単一の照明スポットの代わりに同時に照明および検出されるため、システム10はまた満足できる程度のスループットも有する。上述したように、線20の長さは平行化されたビーム14の大きさやレンズまたはレンズの組み合わせ12の物理的開口部の大きさによってのみ制限される。・・・」

(刊2-エ) 上記(刊2-ア)ないし(刊2-ウ)の摘記事項の下線部を整理すると,刊行物2には「表面の異常を検査する表面検査システムにおいて被検査表面を照明および検出するにあたり,単一の照明スポットに代えて線状とすることで,表面検査システムのスループットを満足できるものとすることができる。」という技術的事項が記載されていると認められる。

オ 刊行物3に記載された事項
本願の優先権主張日前に頒布された特開2000-162141号公報(以下,「刊行物3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は審決で付与。)

(刊3-ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、欠陥検査技術、特に、被検査面に混在した異物とスクラッチ(擦り傷)とを弁別する技術に関し、例えば、半導体ウエハや液晶パネルの表面を検査するのに利用して有効な技術に関する。」

(刊3-イ)「【0020】ステージ装置11の中心の真上には、異物3およびスクラッチ4において乱反射した散乱光のうち高角度の散乱光(以下、高角度光という。)31を受光するための高角度光受光装置30が設備されている。すなわち、垂直光照射装置20の光軸上には垂直光21を透過させる透孔を有した受光レンズ32が配置されており、受光レンズ32は高角度光31を収束して散乱光検出器(以下、高角度光検出器という。)33の受光面に結像させるようになっている。受光レンズ32の光軸の光学的な後方位置には垂直光21を透過させる透孔を有したミラー34が配置されており、ミラー34は受光レンズ32によって収束された高角度光31を第二のミラー35を介して高角度光検出器33の受光面に導いて結像させるようになっている。高角度光検出器33は光電子増倍管によって構成されており、高角度光31を高感度に検出するようになっている。」

(刊3-ウ)「【0022】ステージ装置11の中心の斜め上方には、異物3およびスクラッチ4において乱反射した散乱光のうち中角度の散乱光(以下、中角度光という。)41を受光するための中角度光受光装置40が設備されている。中角度光受光装置40は複数枚(本実施形態では四枚)の受光レンズ42を備えており、各受光レンズ42はステージ装置11の中心に対して同心円に配置され、かつ、各受光レンズ42の光軸は被検査面2となす角度θbが中角度(例えば、50度)になっている。各受光レンズ42の光軸上の光学的な後方位置には各散乱光検出器(以下、中角度光検出器という。)43がそれぞれ配置されており、各受光レンズ42は中角度光41を収束して中角度光検出器43の受光面に結像させるようになっている。中角度光検出器43は光電子増倍管によって構成されており、中角度光41を高感度に検出するようになっている。中角度光検出器43は欠陥特定装置36および欠陥弁別装置37に接続されている。

(刊3-エ)「【0025】被検査物としてのウエハ1はステージ装置11のテーブル12の上に同心に載せられて固定される。固定されたウエハ1はステージ装置11によって回転されながら半径方向に移動され、ウエハ1の被検査面2には垂直光照射装置20により垂直光21が照射される。この走査に伴って、垂直光21がウエハ1の被検査面2に付着した異物3に照射すると、異物3からは高角度光31および中角度光41が図3(a)に示されているように随時に発生する。また、垂直光21がウエハ1の被検査面2に形成されたスクラッチ4に照射すると、高角度光31および中角度光41が図3(b)に示されているように随時に発生する。

(刊3-オ)「【0026】この走査に伴って、各異物3および各スクラッチ4において随時に発生した高角度光31は高角度光受光装置30の受光レンズ32によって収束され、高角度光検出器33の受光面に随時に結像される。高角度光検出器33は異物3およびスクラッチ4の結像データを欠陥特定装置36および欠陥弁別装置37に随時に送信する。また、異物3およびスクラッチ4において随時に発生した中角度光41は中角度光受光装置40の受光レンズ42によって収束され、中角度光検出器43の受光面に随時に結像される。中角度光検出器43は異物3およびスクラッチ4の結像データを欠陥特定装置36および欠陥弁別装置37に随時に送信する。以上の作用により、垂直光21が被検査面2に相対的に走査されて照射された時の散乱光のうち高角度の高角度光31および中角度の中角度光41が採取される第一の採光工程が実施されたことになる。」

(刊3-カ) 上記(刊3-ア)ないし(刊3-オ)の摘記事項の下線部を整理すると,刊行物3には「被検査面に対して垂直方向から照射された垂直光が被検査面の異物とスクラッチにおいて乱反射し,その後受光レンズで収束した高角度及び中角度の散乱光を検出する,被検査物が載せられているステージ装置の真上に設けられ高角度光検出器及び斜め上方に設けられた中角度光検出器を用いた欠陥検査技術」が記載されていると認められる。

カ 刊行物4に記載された事項
本願の優先権主張日前に頒布された特開昭63-143831号公報(以下,「刊行物4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は審決で付与。)

(刊4-ア)「以上により、シリコンウェハ面板の表面に存在する各種の欠陥の散乱光の性質、特に分布特性について検討したが、上記の各種の欠陥を二つのグループに分けることができる。第1のグループとしては、微粒子欠陥、ヘイズ欠陥のごとく、比較的広範囲に散乱光が分布するものとし、第2グループとしては、ピッ欠陥など正反射光の光軸の近傍に集中するものである。」(第3頁右下欄第3行から第10行)

なお,「ピッ欠陥」は,刊行物4の第2頁左上欄第1行目の「微小な凹部(ピット)」や第3頁右上欄第17行目の「ピット欠陥」等の記載からみて,「ピット欠陥」の誤記と認められる。

(刊4-イ)「第5図は、上記の所論にもとずくこの発明の面板欠陥検出光学装置の構成の概念図である。・・・レーザ光源2よりのレーザビーム3はミラー4により光軸を変換し、投受光レンズ16により集束されて、小さい入射角θで面板1を照射する。散乱光のうち、第1グループの欠陥に対しては、レーザスポットSに接近して複数のオプチカルファイバ15の受光面をスポットSを指向するように配置し、これらを光電子増倍管15aに接続して第1の受光器を構成する。第2グループの欠陥に対しては、投受光レンズ16で、正反射光の光軸3aの近傍の散乱光を集束して、第2の受光器18がこれを受光する。」(第3頁右下欄第14行から第4頁左上欄第6行)

(刊4-ウ) 上記(刊4-イ)における「小さい入射角θ」なる記載と第5図から,レーザービームの入射角が面板1に対して略垂直であることと認められる。

(刊4-エ) 上記(刊4-ア)に記載されている散乱光と欠陥の種類との関係や上記(刊4-イ)に記載されている受光器の位置と検出対象としている欠陥の種類との関係を踏まえると,第5図から,オプチカルファイバ15は面板から斜め方向に散乱した光を検出するものであり,第2の受光器18は面板から略垂直方向に散乱した光を検出するものであることが見てとれる。

(刊4-オ) 上記(刊4-ア)ないし(刊4-エ)を総合すると,刊行物4には「面板に対して略垂直方向から照射されたレーザービームが面板の微粒子欠陥等の第1グループの欠陥により斜め方向に散乱した光を検出するための複数オプチカルファイバと面板のピット欠陥等の第2グループの欠陥により略垂直方向に散乱した光を検出するための第2の受光器を備えた面板欠陥検出光学装置」が記載されていると認められる。

キ 対比
本願補正発明と刊行物1発明を対比する。

(ア) 刊行物1発明と本願補正発明の(A)について
刊行物1発明における「被検査体」は検査の対象であるから,本願補正発明における「サンプル」に相当する。また,刊行物1発明における「表面欠陥検査装置」は「散乱光を検出することで」「欠陥の有無」を検出するものであるから,本願補正発明における「異常を検出する光学装置」に相当する。そうすると,刊行物1発明における「散乱光を検出することで被検査体の欠陥の有無を検出する表面欠陥検査装置」は,本願補正発明における「サンプルの異常を検出する光学装置」に相当する。

(イ) 刊行物1発明と本願補正発明の(B)について
刊行物1発明における「レーザービーム」は,本願補正発明における「放射光線」に相当する。そして,刊行物1発明における「レンズを含む光学系」は,レンズを含む一まとまりの光学的な機器のことであるから,刊行物1発明における「レンズから焦点距離だけ離れた被検査体表面の位置に対して,その被検体表面に対して略垂直にレーザービームをレンズの焦点距離の位置で焦点を合わせるレンズを含む光学系」は,本願補正発明における「サンプルの表面上の照明される領域に対して、そのサンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器」に相当する。

(ウ) 刊行物1発明と本願補正発明の(C)について
刊行物1発明における「光電変換素子アレイ」は,本願補正発明における「第1の検出器アレイ」に相当する。

(エ) 刊行物1発明と本願補正発明の(E)について
刊行物1発明における「小型ミラー」及び「レーザービーム」は,それぞれ,本願補正発明における「反射器」及び「光線」に相当する。そうすると,刊行物1発明における「前記光学系は小型ミラーを有し,前記小型ミラーはレンズと前記光電変換素子アレイとの間に配置されるとともに,レーザービームを被検査体表面に反射し,光電変換素子アレイに入射する散乱性反射光の妨害を低減するものである」という点と本願補正発明における「前記第1の光学機器が反射器をさらに有し、前記反射器が対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置されると共に、光線をサンプルの表面に反射し、前記反射器の形状が前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状であ」るという点は,「前記第1の光学機器が反射器をさらに有し」,「前記反射器」が「光線をサンプルの表面に反射する」という点で共通する。

(オ) 小括
以上のことから,両発明は,

(一致点)

(A)サンプルの異常を検出する光学装置であって、
(B)サンプルの表面上の照明される領域に対して、そのサンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器と、
(C)第1の検出器アレイと、
(E)前記第1の光学機器が反射器をさらに有し,前記反射器が光線をサンプルの表面に反射する光学機器。

である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明における「反射器の形状」が(E)「細長い形状」であるのに対し,刊行物1発明における反射器の形状は不明な点。

(相違点2)
本願補正発明が(D)「サンプル表面上で、放射光線により照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に、前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を前記第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器」とを備え,(E)で規定されるように「反射器」が「対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置され」ており,「反射器の形状」が「前記集光光学機器の集光開口の妨害を低減する」ものであるのに対し,刊行物1発明は,そのような集光光学機器を備えていない点。

(相違点3)
本願補正発明が(F)「前記集光光学機器から分離されると共に、前記集光光学機器の集光開口の外側への方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光する集光チャンネル」を備えているのに対し,刊行物1発明は,そのような集光チャネルを備えていない点。

ク 判断
これらの相違点について検討する。

(ア)相違点1について
サンプルの異常の検査スループットを向上することは,当業者にとって自明の課題である。上記(刊2-エ)のとおり,刊行物2には「表面の異常を検査する表面検査システムにおいて被検査表面の照明および検出するにあたり,単一の照明スポットに代えて線状とすることで,表面検査システムのスループットを満足できるものとすることができる」という技術的事項が記載されているところ,当業者であれば,検査スループットを向上するために,サンプルの異常の検出のための照明を線状にするとともに線状の照明を実現するために小型ミラーを細長い形状とすること,すなわち,相違点1に記載の本願補正発明の特定事項のごとく構成することは,当業者が容易に想到できたものである。

(イ)相違点2について
検査精度を向上させることはサンプルの異常の検査の技術分野において自明な課題であるところ,散乱光による欠陥の有無の検査精度を向上させるために,散乱光を集光し,散乱光の光束を集中させることで検出光量を増加させることは,上記の自明な課題を解決するための慣用手段にすぎない(なお,上記(刊2-ア),(刊2-イ)には,表面検査システムにおいて検出器で検出する光を集束させることが記載されている)。そして,刊行物1発明における「レンズ」は,「レーザービームをレンズの焦点距離の位置で焦点を合わせる」機能を有するので,本願補正発明における「対物レンズ」に相当するから,散乱光を検出することで被検査体の欠陥の有無を検出する刊行物1発明において,欠陥の有無の検査精度を向上させるために,サンプル表面上で,放射光線により照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を第1の検出器アレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器を,散乱光の方向について対物レンズ及び反射器の下流であって,第1の検出器の上流に設けることに格別の技術的困難はない。また,上記相違点1に関連し,反射器が光電変換素子アレイに入射する散乱性反射光の妨害を低減しないという刊行物1発明の機能を維持するために,反射器を細長い形状とするにあたり集光光学機器の集光開口の妨害を低減するものとすることは,反射器を細長い形状としたことに付随する事項にすぎない。すなわち,刊行物1発明において,相違点2に記載の本願補正発明の特定事項のごとく構成することは,当業者が容易に想到できたものである。

(ウ)相違点3について
上記(刊3-カ)のとおり,刊行物3には「被検査面に対して垂直方向から照射された垂直光が被検査面の異物とスクラッチにおいて乱反射し,その後受光レンズで収束した高角度及び中角度の散乱光を検出する,被検査物が載せられているステージ装置の真上に設けられ高角度光検出器及び斜め上方に設けられた中角度光検出器を用いた欠陥検査技術」が記載されている。
また,上記(刊4-オ)のとおり,刊行物4には「面板に対して略垂直方向から照射されたレーザービームが面板の微粒子欠陥等の第1グループの欠陥により斜め方向に散乱した光を検出するための複数オプチカルファイバと面板のピット欠陥等の第2グループの欠陥により略垂直方向に散乱した光を検出するための第2の受光器を備えた面板欠陥検出光学装置」が記載されている。
刊行物4の記載事項のとおり,欠陥の種類によって欠陥に伴う散乱光の方向が異なることが本願の優先権主張日前に知られていたところ,当業者であれば,様々な種類の欠陥の検査を可能とするために,刊行物1発明に,刊行物3や刊行物4に記載されているような,斜め方向への散乱光を検出するため検出器を設けること,そして散乱光の検出にあたり,たとえば刊行物3のように,レンズを用いて散乱光を収束すること,すなわち,上記相違点3に記載の本願補正発明のごとく構成することは,当業者が容易に想到できたものである。

(エ)効果について
請求人は,審判請求時に外的に付加した(F)の構成について,審判請求書で「小さな粒子付着は、表面が垂直方向または水平面に直角な方向に照明される場合に、より高い仰角で優先的に光を散乱し、大きな粒子付着のものよりも略垂直な仰角からさらに離れる。よって、より小さな粒子付着を検出することを可能にするために、水平面に直角な光軸24からさらに離れた方向に散乱される光を検出できることが重要である。・・・補正後の本願発明は・・・集光光学機器から分離され、集光光学機器の集光開口の外側の方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光する別の集光チャンネルを有し、集光開口内で集光光学機器によって集光されるものよりもより高い仰角で、略垂直な仰角とさらに離れて散乱される光を集光することが可能である。これにより、より小さな粒子付着を検出するための装置の性能を高めることができる。」と主張している。
しかし,小さな粒子付着を検出するために,斜め方向に散乱される光を検出することは,刊行物4に記載されていることから,請求人が主張する本願発明の効果は,当業者が刊行物1ないし4から予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。
また,サンプル上に線状の照明をすることによる検査スループットの向上等の本願発明の効果についても,当業者が刊行物1ないし4から予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。

ケ まとめ
以上のように,本願補正発明は,当業者が刊行物1発明及び刊行物2ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4) 補正の却下の決定についてのむすび
したがって,仮に本件補正が,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるとしても,本件補正後の請求項に係る発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年2月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
サンプルの異常を検出する光学装置であって、
サンプルの表面上の照明される領域に対して、サンプル表面に対して垂直方向または略垂直方向で放射光線を焦点の合った光線へと焦点を合わせる第1の光学機器と、
第1の検出器アレイと、
放射光線から生じ、サンプル表面上の照明される領域から散乱される放射線を集光すると共に前記照明される領域の一部分から集光された散乱される放射線を前記第1のアレイにおける対応する検出器へと焦点を合わせる集光光学機器と、を備え、
前記第1の光学機器が光線をサンプルの表面に反射する集光光学機器の集光開口に反射器を有し、前記反射器が集光光学機器の集光開口の妨害を低減する細長い形状を有する光学装置。」

2 刊行物について
刊行物及びそれらの記載事項並びに刊行物に記載された発明は,上記「第2 2 (3)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記「第2」で検討した本願補正発明から,反射器の相対的位置に関する限定事項(前記反射器が前記対物レンズと前記集光光学機器との間で、前記集光光学機器の集光開口内に対応すべく配置されると共に)と「前記光学装置が、前記集光光学機器から分離されると共に、前記集光光学機器の集光開口の外側への方向に沿って、サンプル表面上で、照明される領域から散乱される放射線を集光する集光チャンネルをさらに備える」という外的に付加した限定事項を省き,さらに表現を明瞭化する補正事項(「そのサンプル表面」,「サンプル表面上で、放射光線により照明される領域」,「光線をサンプルの表面に反射し」)を省いたものである。

そうすると,本願発明の特定事項を全て含み,他の特定事項を付加し,さらに明瞭化したものに相当する本願補正発明が,上記「第2 2」に記載したとおり,刊行物1発明及び刊行物2ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1発明及び刊行物2ないし4に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-18 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-06 
出願番号 特願2011-166568(P2011-166568)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 572- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治豊田 直樹  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 泉 卓也
信田 昌男
発明の名称 表面の異常および/または特徴を検出する光学システム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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