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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1320880
審判番号 不服2015-19004  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-22 
確定日 2016-10-26 
事件の表示 特願2010-264845「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日出願公開、特開2011-119729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月29日(パリ条約による優先権主張、優先権主張番号10-2009-0118084、優先日2009年12月1日、優先権主張番号10-2009-0118085、優先日2009年12月1日、優先権主張番号10-2010-0031987、優先日2010年4月7日、大韓民国)の出願であって、平成26年3月27日付けで拒絶理由通知が通知され、同年7月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月26日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、平成27年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月17日付けで同年1月28日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。

第2 平成27年10月22日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年10月22日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?15(平成26年7月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?12と補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
胴体と、
前記胴体に設けられた第1電極及び前記第1電極と離隔している第2電極と、
前記第1電極及び第2電極のうちのいずれか1つの上に形成され、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結される発光チップと、
前記第1電極及び第2電極の間に配置した保護キャップと、を含み、
前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有することを特徴とする、発光素子。」

(補正後)
「【請求項1】
胴体と、
前記胴体に設けられた第1電極及び前記第1電極と離隔している第2電極と、
前記第1電極及び第2電極のうちのいずれか1つの上に形成され、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結される発光チップと、
前記第1電極及び第2電極の間に配置した保護キャップと、を含み、
前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり、
前記第1電極は、一側面から突出する第1突出部と他側面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部と前記第2突出部は第1電極の相互反対方向に配置され、
前記第2電極は、一側面から突出する第3突出部と他側面から突出する第4突出部とを有し、前記第3突出部と前記第4突出部は第2電極の相互反対方向に配置され、
前記第1電極の隅及び前記第2電極の隅はそれぞれ陥没した曲面を有することを特徴とする、発光素子。」(下線は、請求人が補正箇所に付した。)

2 本件補正についての検討
(1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について
ア 本件補正は、整理すると次の事項を含むものである。
[補正事項1]
補正前の請求項1に記載された「幅が狭くなる経路を有する」を、「幅が狭くなり」とすること。
[補正事項2]
補正前の請求項1に、「前記第1電極は、一側面から突出する第1突出部と他側面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部と前記第2突出部は第1電極の相互反対方向に配置され、前記第2電極は、一側面から突出する第3突出部と他側面から突出する第4突出部とを有し、前記第3突出部と前記第4突出部は第2電極の相互反対方向に配置され」との記載を付加すること。
[補正事項3]
補正前の請求項1に、「前記第1電極の隅及び前記第2電極の隅はそれぞれ陥没した曲面を有する」との記載を付加すること。

イ 以下、補正事項1?3について検討する。

(ア)補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1における「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」を、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり」としたものである。

補正前の請求項1には、「前記保護キャップは、下側から上側に向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」と記載されている。
「前記保護キャップ」は、「経路を有する」とは、「保護キャップは、経路を有する」とはどのような意味であるのか理解できず、更に、「経路」とは、「何の経路」を意味するのか不明である。

一方、「保護キャップ」について、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】、【0131】には、以下のように記載されている。
・「【0034】
図1乃至図4をまた参照すると、上記第1電極31及び第2電極32の間に突出するように上記保護キャップ27が形成できる。上記保護キャップ27は、上記第1電極31及び第2電極32と上記胴体20との間の隙間を覆って水分や空気などの浸透を防止し、長期的には上記隙間ができることを防止することによって、上記発光素子10の信頼性を向上させることができる。」
・「【0131】
第1電極71aと第2電極71bとが離隔して形成される時、第1電極71aと第2電極71bとの間の空間に設けられる保護キャップ74は胴体の下側から浸透する異質物、例えば、ほこり、湿気、及びその他の汚染物質が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透することを最小化する。保護キャップ74は、上側は狭く、下側は広く形成され、下側から上側へ向ける経路を斜線で形成して異質物が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透するパス(path)を最大化する。」(下線は当審で付加した。以下同じ。)

上記段落【0034】の記載を参照すると、第1電極と第2電極との間の隙間を覆う保護キャップにより水分や空気などの浸透は防止されるので、段落【0131】の上記下線部の記載は、図23に記載のように、「保護キャップ74は、上側は狭く、下側は広く形成され、異質物が下側から上側へ向かう経路は斜めに形成され、異質物が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透するパスが最大化される。」ことを意味するものと認められる。

したがって、補正前の請求項1の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」との記載は、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり、異質物が下側から上側へ向かう経路は斜めに形成されて、異質物が第1電極と第2電極との間に浸透するパスが最大化される」ことを意味するものと認められる。

他方、保護キャップが、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるならば、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり、異質物が下側から上側へ向かう経路は斜めに形成されて、異質物が第1電極と第2電極との間に浸透するパスが最大化される」こととなることは明らかである。

したがって、補正事項1は、補正前の請求項1における「前記保護キャップ」について、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」ことを、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり」と明確化したものであるといえる。

よって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。
また、補正事項1が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。

(イ)補正事項2について
補正事項2は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「前記第一電極」及び「前記第二電極」について、それぞれ「一側面から突出する第1突出部と他側面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部と前記第2突出部は第1電極の相互反対方向に配置され」、「一側面から突出する第3突出部と他側面から突出する第4突出部とを有し、前記第3突出部と前記第4突出部は第2電極の相互反対方向に配置され」という構成を追加して、「前記第一電極」及び「前記第二電極」を限定する補正である。
したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項2により補正された事項は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)の段落【0030】及び図面の図5、6に記載されているから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(ウ)補正事項3について
補正事項3は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「前記第一電極」及び「前記第二電極」について、「前記第1電極の隅及び前記第2電極の隅はそれぞれ陥没した曲面を有する」という構成を追加して、「前記第一電極」及び「前記第二電極」を限定する補正である。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項3により補正された事項は、当初明細書等の段落【0102】、【0103】、【0123】及び図13、20に記載されているから、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(エ)補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。
また、補正事項1?3は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(2)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」の箇所に記載したとおりである。

イ 引用例の記載と引用発明
(ア)引用例1:国際公開2008/081794号
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた国際公開2008/081794号(以下「引用例1」という。)には、「発光装置およびその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?12とともに以下の事項が記載されている。

a 「[0001] 本発明は、発光装置およびその製造方法に係り、特に、照明器具、バックライト、車載用発光装置、ディスプレイ、動画照明補助光源、その他の一般的民生用光源などに用いられる高出力、高信頼性の発光装置およびその製造方法に関する。」

b 「[0019] かかる手順によれば、発光装置の製造方法は、第1樹脂成形体の凹部と周辺部と底面部と同じ形状の空間が予め形成された上金型と、対応する下金型とを用いるので、発光素子のケーシングとして機能する肉厚の周辺部と、第1樹脂成形体の凹部の底面を形成する肉薄の底面部とを一度に製造することができる。」

c「[0022] 以下、図面を参照して本発明の発光装置およびその製造方法を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。
(第1実施形態)
[発光装置の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の概略を模式的に示す構成図であって、(a)は主発光面側から見た平面図、(b)は(a)のI-I線断面図である。また、図2は、図1(b)の要部を拡大して示す断面図である。
[0023] 第1実施形態に係る発光装置1は、発光素子10と、第1リードフレーム20と、第2リードフレーム30と、第1樹脂成形体40と、第2樹脂成形体50とを備える。本実施形態の発光装置1において、発光素子10が載置されている側を主面側と呼び、その反対側を裏面側と呼ぶ。第1および第2リードフレーム20,30は、発光素子10と電気的に接続されている。第1樹脂成形体40は、第1および第2リードフレーム20,30の上に発光素子10を収容する凹部40aを形成する周辺部40bと凹部40aの底面を形成する底面部40cとを有する。第2樹脂成形体50は、第1樹脂成形体40の凹部40aに収容された発光素子10を被覆している。第1樹脂成形体40は、エポキシ樹脂を必須成分とする熱硬化性エポキシ樹脂組成物から構成され、第2樹脂成形体50の底面側において底面部40cが発光素子10の配設領域およびワイヤ60の配設領域を除いて第1および第2リードフレーム20,30の表面を覆うと共に、第2樹脂成形体50の底面側において底面部40cの厚さが第1および第2リードフレーム20,30の表面から発光素子10の先端までの厚さよりも薄い。以下、各構成部材について詳述する。
[0024]<発光素子>
発光素子10は、例えば、窒化ガリウム系化合物半導体から成るLED等から構成される。発光素子10は、主発光面を上向きにして、第1リードフレーム20に、例えば、ダイボンド樹脂(接続部材)11を介して載置される。…(略)…
[0026]<第1リードフレームおよび第2リードフレーム>
第1リードフレーム(-極)20および第2リードフレーム(+極)30は、一対の正負の電極である。第1リードフレーム20および第2リードフレーム30は、発光素子10と図示しない外部電極とを接続するものであり、例えば、鉄、リン青銅、銅合金等の電気良導体の金属部材で構成されている。第1リードフレーム20および第2リードフレーム30は、図1に示すように、上面(以下、主面という)の一部と裏面とが第1樹脂成形体40から露出している。…(略)…
[0028]<第2リードフレーム>
第2リードフレーム30は、第1樹脂成形体40から露出している部分として、第2インナーリード部30aと、第2アウターリード部30bとを有している。図1に示すように、第2インナーリード部30aと、第1リードフレーム20の第1インナーリード部20aとの間には、所定の間隔の隙間が設けられている。
…(略)…
[0030]<第1樹脂成形体>
(第1樹脂成形体の構造)
第1樹脂成形体40は、熱硬化性樹脂から構成され、トランスファ・モールド工程により、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形されている。
第1樹脂成形体40は、図1(b)に示すように、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30の上に、発光素子10を収容する凹部40aを形成する周辺部40bと、凹部40aの底面を形成する底面部40cとを有している。…(略)…
[0031] 第1樹脂成形体40の底面部40cは、詳細には、図2に示すように、発光素子10の配設領域72,73と、ワイヤ60aの配設領域71と、ワイヤ60bの配設領域(第2インナーリード部30a)とを除いて、第1および第2リードフレーム20,30の表面を覆っている。図2に示す拡大断面図では、底面部40cのことを便宜上、被覆部41,42,43,44と呼ぶこととする。これら被覆部41,42,43,44は、図1(a)に示すように、平面視では、第1インナーリード部20aおよび第2インナーリード部30aを取り囲む連続した領域を示し、説明の都合上、4つの符号が付されている。」

d 「[0037][発光装置の製造方法]
図1に示した発光装置の製造方法について、図4を参照(適宜図1および図2参照)して説明する。図4は、図1に示した発光装置の製造工程を模式的に示す断面図である。ここで、ハウジング形成用モールド金型200は、上金型201および下金型202と、エジェクトピン203,204とを備えている。上金型201には、第1樹脂成形体40の周辺部40bと底面部40cと同じ形状の空間が予め形成されている。また、図1に示した発光装置1の第1リードフレーム20および第2リードフレーム30として所定長に切断されて形成される前の段階において、発光素子10を実装する表面にめっきが施された金属平板のことを、第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′と表記する。なお、第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′は、上面にめっきが施されている。
…(略)…
[0039]<第1の工程>
第1の工程では、図4(a)に示すように、上金型201と下金型202とによって、第1リードフレーム20′と第2リードフレーム30′とを、第1および第2リードフレーム20′,30′間の隙間をあけて配置し、図4(b)に示すように、挟み込む。図4(a)では、説明の都合上、第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′の下面と下金型202とが離間した状態で示したが、第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′は加熱された下金型202に固定される。図4(b)に示す挟み込みにおいては、上金型201も同様に加熱されている。
[0040]<第2の工程>
第2の工程では、上金型201と下金型202とで挟みこまれた空間に第1熱硬化性樹脂を注入して上金型201に形成された空間に充填する。具体的には、上金型201および下金型202に繋がる所定の容器に例えばピストンにより圧力を加えることにより、所定の容器から、図4(b)に示す材料注入ゲート205より、上金型201の空間に、溶融状態の第1熱硬化性樹脂が注入される。そして、図4(c)に示すように、上金型201に形成された空間が、溶融状態の第1熱硬化性樹脂によって充填される。
[0041]<第3の工程>
第3の工程では、上金型201に形成された空間に充填された第1熱硬化性樹脂を第1樹脂成形体40として、第1および第2リードフレーム20′,30′と共に一体成形する。具体的には、上金型201に形成された空間に充填された第1熱硬化性樹脂を加熱する。そして、加熱により硬化(仮硬化)した第1熱硬化性樹脂によって、第1樹脂成形体40が成形される。なお、硬化が不十分な場合は、さらに所定温度で所定時間加熱することで成形体の強度を向上させ、上金型201から成形体を離型可能なものとする(後硬化)。
[0042] 第1熱硬化性樹脂を硬化させた後、エジェクトピン203,204で、成形品(ハウジング)を突き出しながら、上金型201を外し、次に、下金型202を第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′から外す。上金型201および下金型202から取り外された成形品を図4(d)に示す。図4(d)に示すように、成形品には、発光素子10のケーシングとなる部分が形成されており、かつ、発光素子10の配設領域およびワイヤボンディングエリアに必要な領域を除いた第1および第2リードフレーム20′,30′の表面を覆う樹脂コート(被覆部)が形成されている。

e 図1は、「本発明の第1実施形態に係る発光装置の概略を模式的に示す構成図であって、(a)は主発光面側から見た平面図、(b)は(a)のI-I線断面図」であり、以下のとおりである。
上記摘記事項cの段落[0023]を踏まえると、図1から、第2リードフレーム30は、第1リードフレーム20と離隔していることが見てとれる。

f 図2は、「図1(b)の要部を拡大して示す断面図」であり、以下のとおりである。
上記摘記事項cの段落[0031]を踏まえると、図2から、被覆部43は、第1リードフレーム20と第2リードフレーム30との間の隙間に配置されていることが見てとれる。


g 図4は、「図1に示した発光装置の製造工程を模式的に示す断面図」であり、以下のとおりである。
上記摘記事項c、dを踏まえて、図4(b)、(c)及び図2を参照すると、図4(c)の工程で、被覆部43が配置される領域のうち、第1リードフレーム20′と第2リードフレーム30′との間の領域、すなわち、第1樹脂成形体40が成形される領域であって、第1リードフレーム20′と第2リードフレーム30′との間の領域は、図4(b)の工程では、「上金型201に形成された空間」と連通していることが見てとれる。

(イ)引用発明
a 上記(ア)の摘記事項cの段落[0024]から、「発光素子10は、主発光面を上向きにして、第1リードフレーム20に載置され」、段落[0026]によると、第1リードフレーム20は、「上面(以下、主面という)の一部と裏面とが第1樹脂成形体40から露出している」から、図1(b)も参照すると、発光素子10は、第1リードフレーム20の上面に載置されていることは明らかである。
したがって、「発光素子10は、主発光面を上向きにして、第1リードフレーム20の上面に載置され」たものであるといえる。

b 以上から、図1、2を参酌してまとめると、引用例1によって、以下の発明(以下「引用発明」という。)が、公衆に利用可能となつた。

「発光素子10と、第1リードフレーム20と、第1リードフレーム20と離隔している第2リードフレーム30と、第1樹脂成形体40と、第2樹脂成形体50とを備え、
第1および第2リードフレーム20,30は、発光素子10と電気的に接続され、
発光素子10は、主発光面を上向きにして、第1リードフレーム20の上面に載置され、
第1リードフレーム20および第2リードフレーム30は、上面の一部と裏面とが第1樹脂成形体40から露出し、
第2リードフレーム30の第2インナーリード部30aと、第1リードフレーム20の第1インナーリード部20aとの間には、所定の間隔の隙間が設けられ、
第1樹脂成形体40は、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形され、
第1樹脂成形体40は、第1および第2リードフレーム20,30の上に、発光素子10を収容する凹部40aを形成する周辺部40bと、凹部40aの底面を形成する底面部40cとを有し、
底面部40cは、発光素子10の配設領域72,73と、ワイヤ60aの配設領域71と、ワイヤ60bの配設領域(第2インナーリード部30a)とを除いて、第1および第2リードフレーム20,30の表面を覆っており、底面部40cのことを便宜上、被覆部41,42,43,44と呼び、これら被覆部41,42,43,44は、平面視では、第1インナーリード部20aおよび第2インナーリード部30aを取り囲む連続した領域を示し、
周辺部40bは、発光素子10のケーシングとして機能し、
被覆部43は、第1インナーリード部20aと第2インナーリード部30aとの間の隙間に配置されている、発光装置1。」

(ウ)引用例2:特開2008-251937号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に国内において頒布された刊行物である特開2008-251937号公報(以下「引用例2」という。)には、「半導体発光装置」(発明の名称)に関して、図1?6とともに以下の事項が記載されている。

a 「【0006】
本発明によって提供される半導体発光装置は、ボンディング部を有するリードフレームと、上記ボンディング部の表面に搭載された半導体発光素子と、上記リードフレームの一部を覆うケースと、を備える半導体発光装置であって、上記ボンディング部の裏面は、上記ケースから露出しており、上記リードフレームは、上記ボンディング部から延びており、表面が上記ボンディング部の表面と面一であり、裏面が上記ボンディング部の裏面よりも上記ケース内方に位置する薄肉延出部をさらに備えていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記薄肉延出部を上記ケースが抱え込む格好となる。これにより、上記リードフレームのうち上記ケースから露出する部分の面積を大きくしても、上記リードフレームが上記ケースから抜け出ることを防止することができる。したがって、上記半導体発光装置からの熱を適切に逃がすことが可能であり、上記半導体発光装置の小型化と高輝度化とを図ることができる。」

b 「【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1?図5は、本発明に係る半導体発光装置の一例を示している。本実施形態の半導体発光装置Aは、リードフレーム1、LEDチップ2、ケース3、および透光樹脂4を備えている。半導体発光装置Aは、長さが4mm程度、幅が1mm程度、高さが0.6mm程度の、ごく小型の長矩形状とされている。なお、図1においては、理解の便宜上、透光樹脂4を省略している。
【0012】
リードフレーム1は、たとえばCu、Ni、またはこれらの合金からなり、2つの部分に分割されている。図2に示すように、リードフレーム1は、裏面がケース3から露出している。このうち、比較的長手状とされた部分は、ボンディング部11、複数の薄肉延出部12、および複数の厚肉延出部13を有している。
【0013】
ボンディング部11は、帯状とされており、表面にLEDチップ2がボンディングされる部分である。薄肉延出部12は、ボンディング部11から延びており、本実施形態においては、その厚さがボンディング部11の半分程度の厚さとされている。図4に示すように、薄肉延出部12の表面は、ボンディング部11の表面と面一とされている。薄肉延出部11の裏面は、ボンディング部11の裏面よりもケース3の内方に位置しており、ケース3によって覆われている。図5に示すように、厚肉延出部13は、ボンディング部11から延びており、その厚さがボンディング部11と同じとされている。厚肉延出部13の表面は、ボンディング部11の表面と面一であり、厚肉延出部13の裏面は、ケース3から露出している。本実施形態においては、複数の薄肉延出部12と複数の厚肉延出部13とがフレーム1の長手方向において交互に配置されている。
…(略)…
【0015】
ケース3は、たとえば白色樹脂製であり、全体が長矩形枠状とされている。図3?図5に示すように、ケース3の内面は、テーパ状のリフレクタ3aとされている。リフレクタ3aは、LEDチップ2から側方に発せられた光を上方に向けて反射するためのものである。図4に示すように、ケース3は、薄肉延出部12を抱え込む格好となっている。また、図2に示すように、ケース3と複数の薄肉延出部12および複数の厚肉延出部13とは、互いに入り込みあう関係となっている。」

c 「【0018】
本実施形態によれば、薄肉延出部12をケース3が抱え込む格好となっている。これにより、ケース3によるリードフレーム1の保持力を高めることが可能である。これにより、リードフレーム1がケース3から抜け出ることを防止することができる。この結果、半導体発光装置Aは、図2に示すように、幅が1mm程度のごく狭幅であるにも関わらず、リードフレーム1のうちケース3から露出する部分の面積を大きくすることができる。したがって、LEDチップ2からの熱を適切に逃がすことが可能であり、半導体発光装置Aの小型化と高輝度化とを図ることができる。」

d 「【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る半導体発光装置の一例を示す要部平面図である。
【図2】本発明に係る半導体発光装置の一例を示す底面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV-V線に沿う断面図である。
【図6】従来の半導体発光装置の一例を示す断面図である。
【図7】図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0022】
A 半導体発光装置
1 リードフレーム
2 LEDチップ(半導体発光素子)
3 ケース
4 透光樹脂
5 ワイヤ
11 ボンディング部
12 薄肉延出部
13 厚肉延出部」
図1?7は、以下のとおりである。


e 引用例2の段落【0012】、【0013】の記載及び図1?3から、リードフレーム1は、LEDチップ2がボンディングされる部分であるボンディング部11、複数の薄肉延出部12、および複数の厚肉延出部13を有している、比較的長手状とされた部分(図1?3のリードフレーム1の右側部分。以下「第1リードフレーム」と呼ぶ。)、及び当該部分と離隔している部分(図1?3のリードフレーム1の左側部分。以下「第2リードフレーム」と呼ぶ。)に分割されていることが開示されているといえる。
図1、2、4、5を参照すると、第1リードフレームにおいて、一側面及び他側面それぞれから薄肉延出部12が突出し、当該それぞれの薄肉延出部12は第1リードフレームの相互反対方向に配置されていることが見てとれる。
また、図1?3を参照すると、第2リードフレームにおいても、一側面及び他側面それぞれから、第1リードフレームの薄肉延出部12とほぼ同様な薄肉延出部が突出し、当該それぞれの薄肉延出部は第2リードフレームの相互反対方向に配置されていることが見てとれる。

(エ)引用例3:特開2004-266246号公報
本願の最先の優先日前に国内において頒布された刊行物である特開2004-266246号公報(以下「引用例3」という。)には、「発光装置」(発明の名称)に関して、図1?9とともに以下の事項が記載されている。

a 「【0007】
以下、この発明を構成する各要素について説明をする。
(発光素子)
発光素子には発光ダイオード、レーザダイオード等の周知構成のものを用いることができる。…(略)…
【0009】
(内部電極部)
基板部において発光素子のマウント面には4つの内部電極が表出されている。即ち、第1の発光素子の正極側へ連結される第1の内部正電極と、第1の発光素子の負極側へ連結される第1の内部負電極と、第2の発光素子の正極側へ連結される第2の内部正電極と、第2の発光素子の負極側へ連結される第2の内部負電極である。この発明において、同極の電極は対角に配置されている。すなわち、第1の内部正電極と第2の内部正電極とが対角に配置され、第1の内部負電極と第2の内部負電極とが対角に配置されている。
各発光素子はその基板を同極の内部電極上にマウントし、その上部電極をワイヤにより他極の内部電極に連結する。…(略)…
各内部電極において他の内部電極へ対向する角部は面取り(角取り)することが好ましい。当該角部が直角ないし鋭角に形成されていると、ここから電極が剥離し易くなるためである。従って、当該角部を面取りすることにより、内部電極の機械的安定性が向上する。」

b 「【0012】
以下、この発明の実施例について説明をする。
図2は実施例の発光装置11の平面図、図3は同断面図、及び図4は同底面図である。この発光装置11は平面視矩形の基板部12を有する。この基板部12の上面には円筒状のカバー部21が形成され、その内周面23は反射面に形成されている。基板部12の裏面には係合用の凹凸が形成されている。
内部電極部を構成する内部電極13a、13b、13c、13dはカバー部21内に表出している。内部電極13aの上に発光素子15の基板がマウントされ、発光素子15の表面電極はリードを介して内部電極13cへ連結されている。…(略)…内部電極13dの上には発光素子16の基板がマウントされ、発光素子16の表面電極はリードを介して内部電極13bへ連結されている。…(略)…
【0014】
基板部12は絶縁性の合成樹脂を材料として型成形される。電極部分は導電性金属を折り曲げ加工して形成されている。」

c 「【0022】
図8に他の実施例の発光装置61の平面図を示す。図2と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
…(略)…
【0023】
この実施例の各内部電極63a、63b、63c、63dの各角部64a、64b、64c、64dは面取りされている。これにより各内部電極63a、63b、63c、63dにおいて各角部64a、64b、64c、64dが基板部12から剥離し難くなる。この実施例では、各内部電極の角部を面取りのため半円状に削除したが、当該角部をR面とすることもできる。」

d 図8は、「他の実施例の発光装置の構成を示す平面図」であり、以下のとおりである。


ウ 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「発光素子10」、「第1リードフレーム20」、「第2リードフレーム30」、及び「発光装置1」は、それぞれ補正発明の「発光チップ」、「第1電極」、「第2電極」、及び「発光素子」に相当する。

(イ)引用発明の「第1樹脂成形体40」は、「第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形され」たものであるから、「『第1リードフレーム20および第2リードフレーム30』は、『第1樹脂成形体40』に設けられた」ものであるといえる。

また、引用発明の「第1樹脂成形体40」は、「第1および第2リードフレーム20,30の上に、発光素子10を収容する凹部40aを形成する周辺部40bと、凹部40aの底面を形成する底面部40cとを有す」るものである。
したがって、引用例1の図1(b)も参照すると、引用発明の「周辺部40b」は補正発明の「胴体」に相当し、「第1リードフレーム20および第2リードフレーム30」は、「『胴体』に設けられた」ものであるといえる。

更にまた、引用発明は、「第1リードフレーム20と、第1リードフレーム20と離隔している第2リードフレーム30と、第1樹脂成形体40」とを備えるものである。
以上から、補正発明と引用発明とは、「胴体と、前記胴体に設けられた第1電極及び前記第1電極と離隔している第2電極」を含む点で一致する。

(ウ)引用発明において、「第1および第2リードフレーム20,30は、発光素子10と電気的に接続され」、「『発光素子10』は、『第1リードフレーム20の上面に載置され』」るものであるから、補正発明と引用発明とは、「前記第1電極及び第2電極のうちのいずれか1つの上に形成され、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結される発光チップ」を含む点で一致する。

(エ)補正発明の「保護キャップ」と引用発明の「被覆部43」とを対比する。
(a)「保護キャップ」に関連して、本願の明細書の発明の詳細な説明には、以下のような記載がある。
・「【0034】
図1乃至図4をまた参照すると、上記第1電極31及び第2電極32の間に突出するように上記保護キャップ27が形成できる。上記保護キャップ27は、上記第1電極31及び第2電極32と上記胴体20との間の隙間を覆って水分や空気などの浸透を防止し、長期的には上記隙間ができることを防止することによって、上記発光素子10の信頼性を向上させることができる。
【0035】
上記保護キャップ27は、上記第1電極31及び第2電極32の間に上記胴体20が突出するように形成された構造を示す。したがって、上記保護キャップ27は、上記発光素子1の製造工程で上記胴体20と一体形成されることができ、上記胴体20と同一な材質で形成できる。」

・「【0131】
第1電極71aと第2電極71bとが離隔して形成される時、第1電極71aと第2電極71bとの間の空間に設けられる保護キャップ74は胴体の下側から浸透する異質物、例えば、ほこり、湿気、及びその他の汚染物質が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透することを最小化する。保護キャップ74は、上側は狭く、下側は広く形成され、下側から上側へ向ける経路を斜線で形成して異質物が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透するパス(path)を最大化する。」

・「【0140】
保護キャップ84は第1電極81aと第2電極81bとの間の空間を封入して外部の異質物が発光チップ80に浸透することを一次に防止する。保護キャップ84の上側及び下側は、各々第1電極81a及び第2電極81bの上側及び下側と水平をなす。」

以上の記載によれば、「保護キャップ」は、第1電極31及び第2電極32と上記胴体20との間の隙間を覆い、発光素子1の製造工程で上記胴体20と一体形成されることができ、上記胴体20と同一な材質で形成でき、第1電極71aと第2電極71bとが離隔して形成される時、第1電極71aと第2電極71bとの間の空間に設けられるとの実施形態を含んでいるものと解される。

(b)一方、引用発明において、「第1樹脂成形体40は、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形され」、「第1樹脂成形体40は、…(略)…周辺部40bと…(略)…底面部40cとを有し」、「底面部40cは、発光素子10の配設領域72,73と、ワイヤ60aの配設領域71と、ワイヤ60bの配設領域(第2インナーリード部30a)とを除いて、第1および第2リードフレーム20,30の表面を覆っており、底面部40cのことを便宜上、被覆部41,42,43,44と呼び、これら被覆部41,42,43,44は、平面視では、第1インナーリード部20aおよび第2インナーリード部30aを取り囲む連続した領域を示し」、「被覆部43は、第1インナーリード部20aと第2インナーリード部30aとの間の隙間に配置されている」ものである。
したがって、引用発明においては、「被覆部41,42,43,44」は、「周辺部40b」(胴体)とともに、「第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形され」る第1樹脂成形体40の一部であるものであるといえる。

更に、上記(ア)の摘記事項dの[発光装置の製造方法]についての説明を参照すると、引用例1には、第1の工程で、第1リードフレーム20′および第2リードフレーム30′が加熱された下金型202に固定され、第2の工程で、上金型201に形成された空間が、溶融状態の第1熱硬化性樹脂によって充填され、第3の工程で、当該第1熱硬化性樹脂を加熱し、加熱により硬化した第1熱硬化性樹脂によって、第1樹脂成形体40が成形されることが開示されている。
また、上記(ア)gに記載のように、引用例1の図4(b)の工程では、次の図4(c)の工程で「被覆部43」が配置される領域のうち、第1リードフレーム20′と第2リードフレーム30′との間の領域は、「上金型201に形成された空間」と連通している。

これらの引用例1の記載事項とともに、金型を用いてリードフレームと一体成形される樹脂成形体は、当該リードフレームと隙間なく形成されることが、技術常識であることも更に勘案すると、引用発明の「被覆部43」は、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30とともに一体形成され、かつ第1リードフレーム20と第2リードフレーム30との間の隙間(空間)に設けられるものであるといえる。

(c)上記(a)、(b)から、本願の明細書の発明の詳細な説明に開示された「保護キャップ27」と、引用発明の「被覆部43」は、いずれも、発光素子の製造工程で胴体と一体形成されることができ、胴体と同一な材質で形成でき、第1電極と第2電極との間の隙間を覆うものであるから、「保護キャップ」である点で一致するといえる。
したがって、引用発明の「被覆部43」は、補正発明の「保護キャップ」に実質的に相当するといえる。
よって、引用発明は、補正発明の「前記第1電極及び第2電極の間に配置した保護キャップと、を含み」との構成を実質的に備えるものである。

(オ)以上をまとめると、補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「胴体と、
前記胴体に設けられた第1電極及び前記第1電極と離隔している第2電極と、
前記第1電極及び第2電極のうちのいずれか1つの上に形成され、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結される発光チップと、
前記第1電極及び第2電極の間に配置した保護キャップと、を含む、発光素子。」

<相違点1>
補正発明では、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くな」るのに対し、引用発明では、「底面部40c」のうち「被覆部43」(保護キャップ)は、「(第1リードフレーム20の)第1インナーリード部20aと(第2リードフレーム30の)第2インナーリード部30aとの間の隙間に配置されている」ものの、該「隙間」は「所定の間隔の隙間」である点。

<相違点2>
補正発明では、「前記第1電極は、一側面から突出する第1突出部と他側面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部と前記第2突出部は第1電極の相互反対方向に配置され、前記第2電極は、一側面から突出する第3突出部と他側面から突出する第4突出部とを有し、前記第3突出部と前記第4突出部は第2電極の相互反対方向に配置され」たものであるのに対し、引用発明では、第1リードフレーム20と第2リードフレーム30について、補正発明の上記の特定はなされていない点。

<相違点3>
補正発明では、「前記第1電極の隅及び前記第2電極の隅はそれぞれ陥没した曲面を有する」のに対し、引用発明では、第1リードフレーム20と第2リードフレーム30について、補正発明の上記の特定はなされていない点。

エ 判断
上記相違点1?相違点3について検討する。
(ア)相違点1について
第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔している第2リードフレームと、第1リードフレーム又は第2リードフレームのいずれか1つの上面に載置されたLEDチップと、第1リードフレームおよび第2リードフレームと一体成形された樹脂成形体とを備える発光装置であって、樹脂成形体は、第1および第2リードフレームの上に、LEDチップを収納する凹部を形成する周辺部(胴体)を有し、第1リードフレームと第2リードフレームとの間の隙間も覆う発光装置において、前記隙間を、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるように形成することにより、外部の異物、水分がチップまで浸透する経路を長くて複雑にさせたり、リードフレームとパッケージ本体(樹脂成形体)との間の結合力と機密性を改善させたり、パッケージ・クラックの発生を抑制したり、リードフレームと成形樹脂との密着性を向上させ、これらの界面での剥離を抑制したりすることは、例えば、下記の周知例1、2に記載されている。
また、樹脂成形体の内部に半導体チップが埋め込まれ、当該樹脂成形体で、タブ(本願発明の「第1電極又は第2電極に」に相当。)とリード(本願発明の「第2電極又は第1電極」に相当。)との間の隙間も封止された半導体装置において、前記隙間を、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるように形成することにより、タブのパッケージからの剥離を一層防止でき、タブとレジン(樹脂)の密着性をさらに向上させることは、例えば、下記の周知例3に記載されている。
このように、上記のような発光装置又は半導体装置において、第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔している第2リードフレームとの間の隙間を、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるように形成することは、当業者における周知技術である。

引用発明の「発光装置1」は、「発光素子10と、第1リードフレーム20と、第1リードフレーム20と離隔している第2リードフレーム30と、第1樹脂成形体40」とを備え、「発光素子10」は、「第1リードフレーム20の上面に載置され」、「第1樹脂成形体40は、第1リードフレーム20および第2リードフレーム30と一体成形され」、「第1樹脂成形体40」は、「第1および第2リードフレーム20,30の上に、発光素子10を収容する凹部40aを形成する周辺部40bと、凹部40aの底面を形成する底面部40cとを有し」、「底面部40cのことを便宜上、被覆部41,42,43,44と呼び」、「被覆部43は、第1インナーリード部20aと第2インナーリード部30aとの間の隙間に配置されている」ものであるから、「上記のような発光装置」であることは明らかである。
また、引用発明において、被覆部43と第1インナーリード部20a又は第2インナーリード部30aとの間の界面は、外部の異物や水分がLEDチップ10まで浸透する経路となり得ること、第1および第2リードフレーム20,30と第1樹脂成形体40との間の結合力・密着性と気密性は十分に高い方がよく、これら界面での剥離を抑制すべきこと、及び、パッケージ・クラックの発生は抑制すべきことは当該技術の分野における一般的な課題であることと認められる。
したがって、上記一般的な課題を勘案すると、引用発明において、前記周知技術に基づいて、第1インナーリード部20aと第2インナーリード部30aとの間の隙間を、「所定の間隔」であるものに替えて、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるような構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

以上のとおり、引用発明において、前記周知技術に基づいて、補正発明の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くな」るとの構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことであるから、引用発明において、前記周知技術に基づいて、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(a)周知例1:特開2007-288198号公報
・「【0025】
以下、本発明の好ましい実施例を添付の図面を参照に詳しく説明する。
本発明によるLEDパッケージの第1実施例が図4乃至8に図示されている。
【0026】
本実施例のLEDパッケージ100は、一対の金属製リードフレーム110、120とこれらを囲う絶縁性パッケージ本体130とを含む。
【0027】
第1リードフレーム110は、平らな基部112を含み、この基部112の両端から一対の延長部114が延長される。基部112は、後述するヒートシンクである回路基板(図10参照)とより広い面積で接触できるよう出来るだけ大きい広さで提供されることが好ましい。延長部114は基部112より小さい幅で形成され、パッケージ本体130に囲まれリードフレーム110をパッケージ本体130に頑固に固定させる役割をする。勿論、延長部114を基部112と同一幅で形成することも出来るが、これは例えば、後述のパッケージ本体130の強度が充分である場合に好ましい。
【0028】
第2リードフレーム120は、第1リードフレーム110と予め定められた間隔を置いて並んで形成され、基部122と一対の延長部124とを含む。上記基部122と延長部124は同一幅で形成されるが、これに限られない。
…(略)…
【0031】
パッケージ本体130は、リードフレーム110、120の周りに射出成形され、これらリードフレーム110、120を囲う。この際、パッケージ本体130の上部中央には、リードフレーム110、120の基部112、122の中央部分を上方へ露出させる凹部またはコップ部132が形成され、このコップ部132はLEDチップ140の装着空間となる。コップ部132の上部には輪状の突起134が形成され、この突起134は一定幅W以下に形成される。」

・「【0044】
図13は、本発明によるLEDパッケージの他の実施例を図7に該当する断面に示した図面である。本実施例のLEDパッケージ100-2は、第1及び第2リードフレーム110-2、120-2の基部112-2、122-2の底面の両側が面取りされ、斜面113、123を形成したことを除いては前述のLEDパッケージ100、100-1と同一構成である。
【0045】
このような斜面113、123は、外部の異物、水分がチップ140まで浸透する経路を長くて複雑にする。また、斜面113、123をパッケージ本体130の樹脂が覆うことにより、リードフレームの基部112-2、122-2とパッケージ本体130との間の結合力と機密性が改善される。」

・「【0050】
以下、図15乃至図19を参照に本発明によるLEDパッケージ100の製造方法を段階的に説明する。
…(略)…
【0057】
次いで、図17に図示したようにフレーム構造体102bを金型Mに装着し、金型Mの中に樹脂を射出して、図18に図示した形態のパッケージ本体130を形成する。このパッケージ本体130の形態は、図4乃至図8に図示したものと同一である。
【0058】
続いて、パッケージ本体130の凹部132の中の第1リードフレーム部110bの基部112にLEDチップ140を載せて電気的に連結し、第2リードフレーム部120bの基部122とはワイヤ142で電気的に連結する。LEDチップ140は、垂直構造で図示したが平面構造であることも出来る。この場合、LEDチップはワイヤにより第1リードフレーム部110bの基部112に電気的に連結される。
…(略)…
【0061】
また、フレーム構造体102bの形態を少し変形するだけで、図13または図14に図示したパッケージフレーム100-2、100-3を得ることが出来る。
【0062】
例えば図20に図示したように、フレーム構造体102bを用意する際に、基部122-2の底面の両側に長さ方向に斜面123を形成し、このフレーム構造体102bで前述の図17乃至図19の作業を行うと、図13に図示したパッケージフレーム100-2を得ることが出来る。図20において、便宜上基部122-2の底面両側の斜面は図示省略し、その斜面の形態は図13のものと同一である。」

・図13は、「本発明によるLEDパッケージの他の実施例を図7に該当する断面に示した図面」であり、以下のとおりである。


・図20は、「本発明によるLEDパッケージの製造方法の変形された一段階を示した斜視図」であり、以下のとおりである。


(b)周知例2:国際公開2007/142018号
・「[0025] 本発明の光半導体素子搭載用パッケージは、光半導体素子搭載領域となる凹部を有する光半導体素子搭載用パッケージであって、少なくとも前記凹部側面を形成する、熱硬化性光反射用樹脂組成物からなる樹脂成形体と、前記凹部底面の一部を形成するように対向して配置された少なくとも一対の正および負のリード電極と、を一体化してなり、前記樹脂成形体と前記リード電極の接合面に隙間がないことを特徴とするものである。なお、正のリード電極の一端と負のリード電極の一端は、それぞれの表面(主面)が露出して凹部の底面を形成するように互いに対向して配置され、その間は成形樹脂により分離されていることが望ましい。また、正のリード電極の他端と負のリード電極の他端は、樹脂成形体との一体化直後には、樹脂成形体側面から突き出すように設けられ、その突き出したアウターリード部は、例えば、図3に示すようにパッケージ成形体の接合面の内側に折り曲げられ、 J-ベンド(Bend)型の正負の接続端子部となることが望ましい。勿論、本発明における接続端子部の構造は、 J-ベンド(Bend)型に限られるものではなく、ガルウィング型等の他の構造であってもよい。
[0026] 以下、本発明の光半導体素子搭載用パッケージの各構成、製造方法ならびに当該パッケージを用いた光半導体装置について詳述する。
[0027] (リード電極)
リード電極は、例えば、鉄入り銅等の高熱伝導体を用いて構成することができ、例えば、0.15mm厚の銅合金属からなる長尺金属板をプレスにより打ち抜き加工することで形成できる。…(略)…
[0028] また、本発明において、少なくとも一対のリード電極は、パッケージの凹部底面の一部を形成するように対向して配置されているが、当該対向するリード電極端部における背面と側面との交わる角は曲線を帯びていることが好ましい(図4のR1参照。なお、リード電極の背面とは、パッケージの凹部底面にて露出する面(主面)の裏面である)。このように、成形樹脂が注入される方向に合わせてリード電極端部に丸みを設けると、成形樹脂の流れがスムーズとなり、リード電極間に成型樹脂が隙間なく充填され易くなり、リード電極間を確実に分離することができ、また、リード電極と成形樹脂体との密着性が強化される。さらに、樹脂成形体とリード電極との接合ラインが曲線を帯びるため、接合ラインにおける応力集中が回避され、パッケージ・クラックの発生を抑制することができる。
[0029] 一方、対向するリード電極端部における主面と側面との交わる角は鋭角に盛り上がっていることが好ましい(図4のR2参照)。これにより、成形樹脂がリード電極間からリード電極主面上へ流出することを効果的に阻止することができ、発光素子のダイボンディン不良やワイヤーボンディング不良を防止することができる。また、リード電極と成形樹脂との密着性が向上し、これらの界面での剥離を抑制することができる。」

・「[0043](パッケージの製造方法)
本発明の光半導体素子搭載用パッケージの製造方法は、特に限定されないが、熱硬化性光反射用樹脂組成物とリード電極をトランスファー成形により一体成形し、製造することが好ましい。トランスファ成形により成形することで、リード電極と樹脂成形体の間に隙間が生じ難くなる。より具体的には、例えば、リード電極を所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から熱硬化性光反射用樹脂組成物を注入し、…(略)…」

・図4は、「本発明の光半導体素子搭載用パッケージのリード電極端部の好ましい構造を示す断面図」であり、以下のとおりである。


(c)周知例3:特開2002-261187号公報
・「【0037】(実施形態1)図1乃至図17は本発明の一実施形態(実施形態1)である半導体装置、特にノンリード型半導体装置及びその製造方法に係わる図である。本実施形態1では四角形のパッケージの裏面にタブ及びこのタブに連なるタブ吊りリード並びにタブが露出するQFN型の半導体装置に本発明を適用した例について説明する。
【0038】QFN型の半導体装置1は、図1乃至図4に示すように、偏平の四角形体(矩形体)からなる絶縁性樹脂で形成される封止体(パッケージ)2を有している。パッケージ2の内部には半導体素子(半導体チップ:チップ)が埋め込まれている。この半導体チップ3は四角形のタブ4のタブ表面(主面)に接着剤5によって固定されている(図2参照)。
【0039】図4に示すように、パッケージ2の裏面(下面)は実装される面側(実装面)となる。パッケージ2の裏面にはタブ4及びタブ吊りリード6並びにリード7の一面(実装面14)が露出する構造となっている。これらタブ4及びタブ吊りリード6並びにリード7は、パターニングした一枚の銅製のリードフレームで形成される。従って、本実施形態1ではこれらタブ4及びタブ吊りリード6並びにリード7の厚さは同じになっている。
【0040】図4に示すように、タブ4の4隅は放射状に延在するタブ吊りリード6に連なり、リードフレームの状態ではタブ4を支持する部材となっている。また、タブ4の周辺には、内端をタブ4に近接させるリード7が四角形のパッケージ2の各辺に沿って所定間隔で複数配置されている。タブ吊りリード6及びリード7の外端はパッケージ2の周縁にまで延在している。
【0041】パッケージ2は偏平の四角形体となっているとともに、角部(隅部)は面取り加工が施されて斜面10となっている。一箇所の斜面10はパッケージ2の形成時のレジン(樹脂)を注入したゲートに連なっていた箇所であり、また、他の3箇所の斜面5はパッケージ2の成形時空気が逃げるエアーベント箇所に連なっていた箇所である。」

・「【0051】タブ4は、図10に示すように、逆台形断面となり、パッケージ2を構成するレジン内に埋没するタブ表面21の面積がパッケージ2から露出するタブ裏面22の面積よりも大きくなっている。従って、タブ4の周縁の三角形状断面の突出部分23はパッケージ2内に食い込むことになり、タブ4のパッケージ2からの剥離を一層防止でき、タブ4とレジンの密着性はさらに向上する。
【0052】なお、タブ4を逆台形とするため、即ち、タブ4の周縁を三角形状断面の突出部分23とするには、両面エッチングを施す際に、表面側のエッチングレジストパターンが裏面側のエッチングレジストパターンよりも大きくすることによって形成することができる。例えば表面側のエッチングパターンが裏面側より0.1mm外周の大きなパターンを採用することにより、図10に示すような突出部分23を形成することができる。」

・「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態(実施形態1)であるノンリード型半導体装置の模式的断面図である。
【図2】前記ノンリード型半導体装置の一部を示す拡大断面図である。
【図3】前記ノンリード型半導体装置の平面図である。
【図4】前記ノンリード型半導体装置の底面図である。
…(略)…
【図10】前記リードフレームのタブの拡大断面図である。」

・図1?4、10は、以下のとおりである。


(イ)相違点2について
a 上記イ(ウ)eのとおり、引用例2の図1?5から、第1リードフレームにおいて、一側面及び他側面それぞれから薄肉延出部12が突出し、当該それぞれの薄肉延出部12は第1リードフレームの相互反対方向に配置され、第2リードフレームにおいて、一側面及び他側面それぞれから、薄肉延出部が突出し、当該それぞれの薄肉延出部は第2リードフレームの相互反対方向に配置されていることが見てとれ、また、上記イ(ウ)a、cのとおり、引用例2には、薄肉延出部12をケース3が抱え込む格好となっていることにより、これにより、リードフレームのうち上記ケースから露出する部分の面積を大きくしても、リードフレームがケースから抜け出ることを防止することができ、したがって、半導体発光装置からの熱を適切に逃がすことが可能であり、半導体発光装置の小型化と高輝度化とを図ることができる旨が記載されている。

b 引用発明と引用例2に記載の技術とは、第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔している第2リードフレームと、第1リードフレーム又は第2リードフレームのいずれか1つの上面に載置された発光素子(LEDチップ)と、樹脂製ケースとを備える発光装置であって、樹脂製ケースは、第1および第2リードフレームの上に、発光チップを収納する凹部を形成する周辺部(胴体)を有し、第1リードフレームと第2リードフレームとの間の隙間も覆い、第1リードフレームおよび第2リードフレームは、上面の一部と裏面の少なくとも一部とが樹脂製ケースから露出する発光装置である点で共通する。
また、引用発明の発光装置1において、発光素子からの放熱経路の確保と第1および第2リードフレーム20、30が第1樹脂成形体40からの抜け出ることの防止を必要とすることは技術常識である。

したがって、引用発明において、引用例2に記載の技術に基づいて、リードフレームがケースから抜け出ることを防止することができ、かつ、発光素子からの放熱経路を確保するために、第1リードフレーム20(第1電極)と第2リードフレーム30(第2電極)について、相違点2に係る補正発明の「前記第1電極は、一側面から突出する第1突出部と他側面から突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部と前記第2突出部は第1電極の相互反対方向に配置され、前記第2電極は、一側面から突出する第3突出部と他側面から突出する第4突出部とを有し、前記第3突出部と前記第4突出部は第2電極の相互反対方向に配置され」との構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について
a 上記イ(エ)aの段落【0009】、同bの段落【0014】及び引用例3の図3を参照するとともに、正極側へ連結される内部電極と負極側へ連結される内部電極との間の隙間は絶縁すべきことは技術常識であること、及び、合成樹脂材料を型成形することによってリードと一体化する基部を形成する場合に、第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔し、対向する他の第2リードフレームとの間の隙間に合成樹脂材料を配置することは、上記「(ア)相違点1について」で摘記した周知例1(段落【0057】、図7を参照。)及び周知例2(段落[0043]、図4を参照。)に記載されているように、慣用手段であることを勘案すると、引用例3には、第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔し、対向する他の第2リードフレームとの間の隙間に、合成樹脂材料が配置されていることが示唆されているものと認められる。
上記イ(エ)aの段落【0009】、cの段落【0023】及び引用例3の図8を参照すると、引用例3には、「他の実施例の発光装置61」として、各内部電極の他の内部電極へ対向する角部を半円状に削除することにより、角部を面取りして電極が基板部12から剥離し難くしたものが開示されている。

b 引用発明と引用例3に記載の技術とは第1リードフレームと、第1リードフレームと離隔し、対向する他の第2リードフレームと、第1リードフレーム又は第2リードフレームのいずれか1つの上面に載置される発光素子(LEDチップ)と、第1および第2リードフレームの上に、発光素子を収納する凹部を形成する円筒状の周辺部(胴体)を少なくとも備える発光装置である点で共通する。
上記「(ア)相違点1について」のbにおける検討から、引用例1には、発光装置1の第1リードフレーム20の第1インナーリード部20aと第2リードフレーム30の第2インナーリード部30aとの間の隙間に、第1樹脂成形体40の一部である樹脂材料が配置されていることが示唆されているといえるから、上記aを勘案すると、引用発明において、引用例3に記載の技術に基づいて、第1および第2のリードフレームが第1樹脂成形体40から剥離し難くするために、第1リードフレーム20の隅及び第2リードフレーム30の隅をそれぞれ陥没した曲面を有する」との構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、引用発明において、引用例3に記載の技術に基づいて、相違点3に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)判断についてのまとめ
以上検討したとおり、引用発明において、引用例2及び引用例3に記載の技術、並びに周知技術及び慣用手段に基づいて、相違点1?相違点3に係る補正発明の構成、それぞれを採用することは、いずれも当業者が容易になし得たことである。

そして、補正発明が奏する作用効果について、本願の明細書の発明の詳細な説明には、以下のような記載がある。
・「【0131】
第1電極71aと第2電極71bとが離隔して形成される時、第1電極71aと第2電極71bとの間の空間に設けられる保護キャップ74は胴体の下側から浸透する異質物、例えば、ほこり、湿気、及びその他の汚染物質が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透することを最小化する。保護キャップ74は、上側は狭く、下側は広く形成され、下側から上側へ向ける経路を斜線で形成して異質物が第1電極71aと第2電極71bとの間に浸透するパス(path)を最大化する。」

一方、上記「(ア)相違点1について」で摘記した周知例1には、第1及び第2リードフレームの基部の底面の両側を面取りし、斜面を形成することで、外部の異物、水分がチップまで浸透する経路を長くて複雑にすることが記載されているから、補正発明が、上記段落【0131】に記載されたような、引用発明と比較した有利な効果を有していたとしても、当業者は補正発明に容易に想到できたことと認められる。
したがって、上記相違点1?相違点3を総合判断しても、補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。

よって、補正発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例2及び引用例3に記載の技術、並びに周知技術及び慣用手段に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、補正発明が特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

3 補正却下の決定についてのむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成26年7月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1 本件補正の内容」の(補正前)に記載したとおりのものである。

第4 引用例の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の最先の優先日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた国際公開2008/081794号(引用例1、再掲)には、「発光装置およびその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?12とともに上記「第2 2(2)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(2)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。

第5 対比・判断
1 対比
上記「第2 2(1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について」の「ア」、「イ」で検討したとおり、本願発明は、補正発明における「幅が狭くなり」との記載を「幅が狭くなる経路を有する」とするとともに、補正発明における限定を省くものである。
そうすると、上記「第2 2(2)独立特許要件について」において検討したのと同様に検討すると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「胴体と、
前記胴体に設けられた第1電極及び前記第1電極と離隔している第2電極と、
前記第1電極及び第2電極のうちのいずれか1つの上に形成され、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結される発光チップと、
前記第1電極及び第2電極の間に配置した保護キャップと、を含む、発光素子。」

<相違点4>
本願発明では、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」のに対し、引用発明では、「底面部40c」のうち「被覆部43」(保護キャップ)は、「(第1リードフレーム20の)第1インナーリード部20aと(第2リードフレーム30の)第2インナーリード部30aとの間の隙間に配置されている」ものの、該「隙間」は「所定の間隔の隙間」である点。

2 判断
上記相違点4について検討する。

本願発明の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」との発明特定事項は、上記「第2 2(1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について」の「イ(ア)補正事項1について」で検討したとおり、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり、異質物が下側から上側へ向かう経路は斜めに形成されて、異質物が第1電極と第2電極との間に浸透するパスが最大化される」ことを意味するものと認められる。
また、上記「イ(ア)補正事項1について」で検討したとおり、保護キャップが、「下側から上側へ向かって徐々に幅が狭く」なるならば、「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり、異質物が下側から上側へ向かう経路は斜めに形成されて、異質物が第1電極と第2電極との間に浸透するパスが最大化される」こととなることは明らかである。
したがって、本願発明の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」との発明特定事項と、補正発明の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなり」との発明特定事項とは、技術的な意味が実質的に異なるものではない。

そうすると、上記「第2 2(2)独立特許要件について」の「エ(ア)相違点1について」において検討したのと同様な理由により、引用発明において、前記周知技術に基づいて、本願発明の「前記保護キャップは、下側から上側へ向かって徐々に幅が狭くなる経路を有する」との構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことであるから、引用発明において、前記周知技術に基づいて、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-27 
結審通知日 2016-05-31 
審決日 2016-06-14 
出願番号 特願2010-264845(P2010-264845)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司芝沼 隆太  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
恩田 春香
発明の名称 発光素子  
代理人 重森 一輝  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 金山 賢教  
代理人 市川 英彦  
代理人 小野 誠  

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