• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1320951
審判番号 不服2015-13232  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-10 
確定日 2016-10-27 
事件の表示 特願2011- 39059「表示制御プログラム,表示制御装置,表示制御システム,及び表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開,特開2012-174237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年2月24日の出願であって,その手続の経緯は,以下のとおりである。
平成26年11月 6日付け:拒絶理由の通知
平成27年 1月 6日 :手続補正
平成27年 4月10日付け:拒絶査定
平成27年 4月15日 :拒絶査定の謄本の送達
平成27年 7月10日 :拒絶査定不服審判の請求
平成28年 3月28日付け:拒絶理由の通知(当審)
平成28年 5月23日 :手続補正
平成28年 6月10日付け:拒絶理由の通知(最後)(当審)
平成28年 8月 5日 :手続補正

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年8月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後発明
上記手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正前の平成28年5月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項19に記載された,

「【請求項19】
所定の2次元オブジェクトを表示装置に立体視表示させる表示制御装置であって,
仮想ステレオカメラによって撮像される仮想3次元空間に所定の3次元オブジェクトを配置する配置手段と,
前記仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段と,
前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段と,
前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,立体視画像を生成する生成手段と,
前記生成手段によって生成された立体視画像を前記表示装置に立体視表示させる表示制御手段と,
前記表示装置の画面上における前記3次元オブジェクトの表示位置に基づいて,前記2次元オブジェクトの表示位置を設定する表示位置設定手段と,
前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段とを備える表示制御装置。」

という発明(以下「本願発明」という。)を,平成28年8月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項16に記載された,

「【請求項16】
所定の2次元オブジェクトを表示装置に立体視表示させる表示制御装置であって,
仮想ステレオカメラによって撮像される仮想3次元空間に所定の3次元オブジェクトを配置する配置手段と,
前記仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段と,
前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段と,
前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,立体視画像を生成する生成手段と,
前記生成手段によって生成された立体視画像を前記表示装置に立体視表示させる表示制御手段と,
前記表示装置の画面上における前記3次元オブジェクトの表示位置に基づいて,前記2次元オブジェクトの表示位置を設定する表示位置設定手段と,
前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段とを備え,
前記2次元オブジェクトは,前記3次元オブジェクトを操作するユーザを撮像可能な外部装置の撮像部によって撮像されて当該外部装置から繰り返し取得されることで更新される撮像画像であり,
前記取得手段は,前記奥行き値を繰り返し取得し,
前記ずらし量設定手段は,前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定し,
前記生成手段は,前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記更新された2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成し,
前記表示制御手段は,前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する表示制御装置。」

という発明(以下「補正後発明」という。)に補正することを含むものである(下線は,審判請求人が示した補正箇所である。)。

2 新規事項の有無,補正の目的要件等について
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,以下の点で限定することにより,特許請求の範囲を減縮するものであり,かつ,本願発明と補正後発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

・「2次元オブジェクト」が,「3次元オブジェクトを操作するユーザを撮像可能な外部装置の撮像部によって撮像されて当該外部装置から繰り返し取得されることで更新される撮像画像」であることを特定した点
・「仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段」が,「前記奥行き値を繰り返し取得」するものであることを特定した点
・「前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段」が,「前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定」するものであることを特定した点
・「立体視画像を生成する生成手段」が,「前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記更新された2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成」するものであることを特定した点
・「前記生成手段によって生成された立体視画像を表示装置に立体視表示させる表示制御手段」が,「前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する」ものであることを特定した点

また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するところもない。

3 独立特許要件について
本件補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるから,補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について,以下に検討する。

(1)補正後発明
上記「1 本願発明と補正後発明」において,「補正後発明」として認定したとおりである。 なお,下記のとおり,当審において,(A)から(J)までの記号を説明のために付与した。以下,構成要件A,構成要件Bなどと称することとする。

(A)所定の2次元オブジェクトを表示装置に立体視表示させる表示制御装置であって,
(B)仮想ステレオカメラによって撮像される仮想3次元空間に所定の3次元オブジェクトを配置する配置手段と,
(C-1)前記仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段と,
(D-1)前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段と,
(E-1)前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,立体視画像を生成する生成手段と,
(F-1)前記生成手段によって生成された立体視画像を前記表示装置に立体視表示させる表示制御手段と,
(G)前記表示装置の画面上における前記3次元オブジェクトの表示位置に基づいて,前記2次元オブジェクトの表示位置を設定する表示位置設定手段と,
(H)前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段とを備え,
(I)前記2次元オブジェクトは,前記3次元オブジェクトを操作するユーザを撮像可能な外部装置の撮像部によって撮像されて当該外部装置から繰り返し取得されることで更新される撮像画像であり,
(C-2)前記取得手段は,前記奥行き値を繰り返し取得し,
(D-2)前記ずらし量設定手段は,前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定し,
(E-2)前記生成手段は,前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記更新された2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成し,
(F-2)前記表示制御手段は,前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する
(J)表示制御装置。

(2)引用発明等
(2-1)引用例1の記載及び引用発明
(2-1-1)引用例1の記載
当審の平成28年6月10日付けの拒絶理由に引用された,特開平11-259686号公報(同拒絶理由における引用文献1。以下「引用例1」という。)には,「画像生成装置及び情報記憶媒体」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,オブジェクト空間内の標的オブジェクトをシューティングするための画像を生成する画像生成装置及び情報記憶媒体に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】従来より,仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に複数のオブジェクトを配置し,オブジェクト空間内の所与の視点から見える画像を生成する画像生成装置が開発,実用化されており,いわゆる仮想現実を体験できるものとして人気が高い。そしてシューティングゲームを楽しむことができる画像生成装置では,プレーヤは,マシンガン,銃,戦車の大砲などを模して作られたシューティングデバイスを操作し,標的オブジェクトに狙いを定めてシューティングを行うことでゲームを楽しむ。
【0003】さて,このようなシューティングゲームにおいては,標的オブジェクトに狙いを定めるための照準が必要になる。そして,これまでのシューティングゲームにおいては,照準は,得点や順位などを表示するための2次元レイヤー上に配置されていた。そして,透視変換によりスクリーン(投影面)に投影された画像と照準等が配置された2次元レイヤーの画像とを重ね合わせた画像がプレーヤに対して表示されていた。
【0004】しかしながら,このように2次元レイヤー上に配置された照準では,ショットのヒット位置を,プレーヤが正確に把握できないという問題があることが判明した。特に,視点とヒット位置との距離が離れている場合に,照準位置とヒット位置との誤差が大きくなってしまう。また2次元レイヤー上に配置された照準では,シューティングデバイスの操作と照準の移動との間の連動感を,今一つ高めることができない。
【0005】本発明は,以上のような課題に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,正確なシューティングを可能とする照準を表示できる画像生成装置及び情報記憶媒体を提供することにある。」

イ 「【0013】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお以下では,本発明を対戦型のマシンガンゲームに適用した場合を例にとり説明するが,本発明が適用されるものはこれに限られるものではない。
【0014】図1に本実施形態の画像生成装置を業務用のゲーム装置に適用した場合の外観図の一例を示す。
【0015】図1に示すように,本実施形態では,各プレーヤに対応して擬似的なマシンガン14-1?14-4(シューティングデバイス)が設けられており,最大で4人のプレーヤがゲームを楽しむことができるようになっている。表示部12-1?12-4には,自キャラクタ(プレーヤ自身が操作するキャラクタ。仮想プレーヤ ),敵キャラクタ,味方キャラクタ,マップ,背景などが映し出される。プレーヤが,マシンガン14-1?14-4を前後左右に動かすと,自キャラクタがオブジェクト空間内で前後左右に移動する。一方,マシンガン14-1?14-4を回転させると,照準オブジェクトがオブジェクト空間内で左右に移動する。そして,プレーヤは,マシンガン14-1?14-4に設けられた引き金15-1?15-4を引いて擬似的な弾(ショット)を発射し,敵キャラクタとの銃撃戦を楽しむ。
【0016】なお本実施形態では,CCDカメラなどから成る撮影部16-1?16-4により,各プレーヤの顔などの画像を撮影できるようになっている。そして撮影された画像は各プレーヤの識別画像として利用される。
【0017】図2に,本実施形態の画像生成装置の機能ブロック図の一例を示す。
【0018】ここで操作部10は,プレーヤが,図1のマシンガンなどを操作することで操作データを入力するためのものであり,操作部10にて得られた操作データは処理部100に入力される。(略)
【0021】処理部100は,ゲーム演算部110と画像生成部150を含む。
【0022】ここでゲーム演算部110は,ゲームモードの設定処理,ゲームの進行処理,移動体の位置や方向を決める処理,視点位置や視線方向を決める処理,オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理等を行う。
【0023】画像生成部150は,ゲーム演算部110により設定されたオブジェクト空間での所与の視点での画像を生成する処理を行う。画像生成部150により生成された画像は表示部12において表示される。
【0024】ゲーム演算部110は,オブジェクト空間設定部111,ヒットチェック部114を含む。
【0025】ここでオブジェクト空間設定部111は,自キャラクタオブジェクト,標的オブジェクト(敵キャラクタオブジェクト等),マップオブジェクト,背景オブジェクトなどの種々のオブジェクトを,オブジェクト空間内に配置するための処理を行う。より具体的には,ゲームステージに応じてマップオブジェクトや背景オブジェクトの配置を決めたり,移動体(自キャラクタオブジェクト,標的オブジェクト等)をオブジェクト空間内で移動させるための演算等を行う。
【0026】そして本実施形態では,このオブジェクト空間設定部111が,シューティングの狙いを定めるための照準オブジェクトをオブジェクト空間内に配置する処理を行うことになる。」

ウ 「【0030】図3(A),(B),図4(A),(B),図5(A),(B)に,本実施形態により生成される画像の例を示す。図3(A)において,プレーヤは自キャラクタ20(兵士)を図1のマシンガンを前後左右に動かすことで操作する。図3(A)では,プレーヤはマシンガンの引き金を引き敵キャラクタ22を攻撃している。敵キャラクタ22のマーカオブジェクト23には,敵キャラクタ22を操作するプレーヤの識別画像(撮影部16により撮影された画像)がマッピングされている。また敵キャラクタ24のマーカオブジェクト25には敵キャラクタ24を操作するプレーヤの識別画像がマッピングされている。このように,マーカオブジェクトにプレーヤ識別画像をマッピングすることで,プレーヤは,他のどのプレーヤがどのキャラクタを操作しているのかを一目瞭然で把握できるようになる。また,実際にそのプレーヤと対戦しているという感覚を得ることができ,プレーヤの仮想現実感を向上できる。(略)
【0032】なお,敵キャラクタ22は一度倒されても所与の期間後に復活し,再度ゲームに参加できるようになっている。また放出された勲章26,27,28を,他のキャラクタ,例えば味方キャラクタ30が奪取することも可能である。そしてこの味方キャラクタ30にも,プレーヤ識別画像がマッピングされたマーカオブジェクト31が追従しており,これにより,プレーヤは,それが味方であることを容易に識別できるようになる。
【0033】図4(A)に示すように,本実施形態では,シューティングの狙いを定めるための照準オブジェクト40がオブジェクト空間内に配置される。この場合,本実施形態では,図1のマシンガンの向く方向(シューティングの狙い方向)により特定される位置に照準オブジェクトが配置される。より具体的には,プレーヤがマシンガンの引き金を引いていなくてもマシンガンの向く方向にショットがシューティングされていると想定して,マシンガンの向く方向により特定される線分とオブジェクトとのヒットチェックを行う。そして,照準オブジェクト40は,このヒットチェックにより特定されるヒット位置付近に配置される。図4(A)では,このヒット位置はオブジェクト42の面43上の位置であり,このヒット位置付近に照準オブジェクト40が配置される。
【0034】一方,図4(B)では,プレーヤが図1のマシンガンを回転させ,照準オブジェクト40が右側に移動している。そして,この場合のヒット位置は,オブジェクト44の面45上の位置となり,このヒット位置に照準オブジェクト40が配置される。そして,オブジェクト44はオブジェクト42に比べて遠い位置にあため,透視変換による遠近効果で,図4(B)の照準オブジェクト40は図4(A)に比べて小さく見えるようになる。」

(2-1-2)引用発明
上記(2-1-1)の摘記事項アないしウ及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用例1の記載を検討する。

(ア) 上記アには,引用例1記載の発明が提供する画像生成装置について,仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に複数のオブジェクトを配置し,オブジェクト空間内の所与の視点から見える画像を生成して,シューティングゲームを楽しむことができるものに関し,課題を解決したものであることについて記載されている。
上記イには,画像生成装置の表示部に,自キャラクタ,敵キャラクタ等が映し出されることについて記載されている。
上記イには,画像生成装置のゲーム演算部において,敵キャラクタオブジェクト等の移動体の位置や方向を決め,オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理を行うことについて記載されている。
上記イ及びウには,仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に,自キャラクタオブジェクトのほか,敵キャラクタオブジェクト,マーカオブジェクト,及び照準オブジェクトを配置することについて記載されている。
上記ウには,マーカオブジェクトに,敵キャラクタを操作するプレーヤを撮影した画像がマッピングされていることについて記載されている。
さらに,図3ないし5には,敵キャラクタオブジェクトが奥行きをもった3次元オブジェクトとして表示されるのに対し,マーカオブジェクトが2次元オブジェクトとして表示される態様が開示されている。
以上の記載及び開示をふまえると,引用例1には,『仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に,2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトを配置し,表示部に映し出す画像生成装置』が記載されているといえる。

(イ) 上記イには,上記(ア)で示したように,画像生成装置のゲーム演算部において,敵キャラクタオブジェクト等の移動体の位置や方向を決め,オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理を行うことについて記載されている。
上記ウには,マーカオブジェクトが,敵キャラクタや味方キャラクタに追従することについて記載されている。
上記ウには,オブジェクト空間内に配置される照準オブジェクトが,シューティングされた場合にヒットするオブジェクトの面の位置であるヒット位置オブジェクト付近に配置されること,及び照準オブジェクトが遠い位置にあれば,透視変換による遠近効果で小さく見えるようになることについて記載されている。
さらに,図3ないし5には,照準オブジェクトと同様に,マーカオブジェクトを,遠近効果をもたせて配置し,表示する態様が開示されている。
以上の記載及び開示を踏まえると,引用例1には,画像生成装置が,『前記オブジェクト空間に,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトを配置し,また,前記マーカオブジェクトを,前記敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置する,ゲーム演算部』を備えることについて記載されているといえる。

(ウ) 上記イには,画像生成装置の画像生成部が,ゲーム演算部により設定されたオブジェクト空間での所与の視点での画像を生成する処理を行い,生成された画像が表示部において表示されることについて記載されている。
当該記載を踏まえると,引用例1には,画像生成装置が,『前記オブジェクト空間での所与の視点での画像を生成する画像生成部』を備えること,及び『前記画像生成部によって生成された画像が,前記表示部に表示され』ることについて記載されているといえる。

(エ) 上記イには,CCDカメラ等からなる撮影部により,各プレーヤの顔の画像を撮影し,撮影された画像を各プレーヤの識別画像として利用することについて記載されている。
上記ウには,上記(ア)で示したように,マーカオブジェクトに,敵キャラクタを操作するプレーヤを撮影した画像がマッピングされていることについて記載されている。
以上の記載を踏まえると,引用例1には,『前記マーカオブジェクトが,前記敵キャラクタオブジェクトを操作するプレーヤを,撮影部で撮影した画像である』ことについて記載されているといえる。

(オ) まとめ
以上によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されている。なお,引用発明に対し,下記のとおり,当審において,(a)から(f)までの記号を説明のために付与した。以下,構成要件a,構成要件bなどと称することとする。

(引用発明)
(a)仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に,2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトを配置し,表示部に映し出す画像生成装置であって,
(b)前記オブジェクト空間に,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトを配置し,また,前記マーカオブジェクトを,前記敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置する,ゲーム演算部と,
(c)前記オブジェクト空間での所与の視点での画像を生成する画像生成部とを備え,
(d)前記画像生成部によって生成された画像が,前記表示部に表示され,
(e)前記マーカオブジェクトが,前記敵キャラクタオブジェクトを操作するプレーヤを,撮影部で撮影した画像である,
(f)画像生成装置。

(2-2)引用例2及び3の記載並びに周知技術
(2-2-1)引用例2の記載
当審の平成28年6月10日付け拒絶理由において,周知技術を示す文献として引用された,国際公開第2007/116549号(同拒絶理由における引用文献3。以下「引用例2」という。)には,「画像処理装置」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「背景技術
[0002] 従来,立体画像を表示する様々な方法が提案されてきた。その中でも一般的に用いられているのは,両眼視差を利用する「2眼式」と呼ばれるものである。両眼視差を持った左眼用の画像と右眼用の画像 (以下,それぞれ「左眼用画像」,「右眼用画像」という)を用意し,観察者が左眼用画像を左眼で,右眼用画像を右眼で見ることにより,被写体を直接見ているかのような立体感を得ることが出来る。
[0003] このような立体視における立体画像の作成方法として,平行法,交差法という2つの方式が知られている。立体画像を作成するための左・右眼用画像は,左右の視点に対応する位置にカメラを置いて撮影する。あるいはソフトウェア上での擬似的なカメラを視点位置におき,画像を作成する。この時,撮影した該左・右眼用画像を用い,平行法においては左眼用画像を向かって左に,右眼用画像を向かって右に配置し,交差法では左眼用画像を向かって右に,右眼用画像を向かって左に配置して作成する。
[0004] 近年では,左眼用画像,右眼用画像からなる立体視用の電子画像を裸眼,あるいは特殊な眼鏡などを使用して立体視することが可能な表示装置も提案されており,2眼式の代表的な方式として,例えば,時分割方式,パララクスバリア方式又は偏光フィルタ方式などがある。このうち,例としてパララクスバリア方式に関して説明する。
[0005] 図14は,パララクスバリア方式を説明するための概念図である。図14(a)は,視差が生じる原理を示す図である。一方,図14(b)は,パララクスバリア方式で表示される画面を示す図である。
[0006] 図14(a)では,図14(b)に示すような左眼用画像と右眼用画像が水平方向 1画素おきに交互にならんだ形に配置された画像を,画像表示パネル50に表示し,同一視点の画素の間隔よりも狭い間隔でスリットを持つパララクスバリア51を画像表示パネル50の前面に配置することにより,観察者は左眼用画像は左眼52だけで,右眼用画像は右眼53だけで観察することになり,立体視を行うことができる。」

イ 「発明が解決しようとする課題
[0013] しかし,このような合成を行う際に立体画像の視差を考慮せずに合成すると,見づらく観察者に疲労を与えることがある。例えば,立体視した際に飛び出して見える画像に,視差をつけず,表示画面上の位置に見える画像を合成すると,合成した画像領域だけが周囲に対して奥の方向に見えることとなり,違和感が強く,また疲労を招く可能性もある。
[0014] 本発明は,以上のような問題点を解決するためになされたものであって,立体画像データ内に画像などのオブジェクトを合成する際に,視差を考慮しつつ画質への影響を抑えて合成する画像処理装置を提供することを目的とする。(略)
発明の効果
[0024] 本発明の画像処理装置によれば,前記立体画像データにオブジェクトを合成する画像合成手段と,前記オブジェクトの透明度を設定する透明度決定手段を備え,前記透明度決定手段は,前記複数視点に対応した複数の画像間の視差情報に基づき前記オブジェクトの透明度を決定することを特徴とすることにより,立体画像にオブジェクトを合成する際に,該オブジェクトが立体視の妨げになったり,違和感を生じさせてしまうのを防ぐことが可能となる。(略)
[0028] また,前記画像合成手段を用いて,前記画像における前記オブジェクトを合成する領域の視差情報に基づき,前記オブジェクトの視差が前記視差情報からの視差に最も近くなるよう,前記オブジェクトを前記画像それぞれに合成することにより,合成後の画像であっても合成前と同じような視差を保つことが可能となる。」

ウ 「発明を実施するための最良の形態
[0035](実施形態1)
本発明の実施形態について,図面を参照しながら説明する。以下では,3次元または立体を意味する語として「3D」を,2次元を意味する語として「2D」をそれぞれ用い,3次元または立体画像を「3D画像」,通常の2次元画像を「2D画像」として説明を行なう。
[0036] 図1は,本発明の実施形態1の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
画像処理装置1は,左眼に対応する視点から得られた左眼用画像,および右眼からの右眼用画像を入力とし,視差情報を検出する視差検出手段2と,前記視差情報を元に,前記左眼用画像と前記右眼用画像からなる画像に合成するオブジェクトの透明度を決定する透明度決定手段3と,左眼用画像および右眼用画像と,オブジェクトの合成を行う画像合成手段4と,オブジェクトの合成位置を決定する位置決定手段5と,合成した画像を符号化する符号化手段6と,図示しない記録媒体や通信回線にアクセスする手段とを備えて構成される。
本実施形態では,例えば,本画像処理装置によって作成された画像は,バララクスバリア方式での3D表示装置で表示するものとして説明する。
[0037] まず,左眼用画像と右眼用画像力からなる画像信号が,画像処理装置1に入力されると,視差検出手段2は,該左眼用および該右眼用画像から,視差情報を検出する。視差は,例えば,ステレオマッチングにより検出する。ステレオマッチングとは,左眼用画像が右眼用画像のどの部分に対応するかを面積相関の計算により算出し,対応する点のずれを視差とするものである。(略)
[0046] ここでは,例えばオブジェクトを無地で白色,矩形の画像とする。(略)
[0055] まず,左眼用画像と右眼用画像のそれぞれに対してオブジェクトを合成する方法を図面を用いて説明する。
図5は,オブジェクトをそれぞれ左・右眼用画像に合成したときの図を示している。19Lは左眼用画像に合成したオブジェクト,19Rは右眼用画像に合成したオブジェクトを示しており,各画像における左上からのオブジェクトの位置は同じであり,オブジェクトに視差はないものとする。(略)
[0068] また,上記の例では,オブジェクトの視差を0として合成を行ったが,オブジェクトに視差をつけてもよい。視差をつけた場合であっても同様にして合成を行うことができる。」

エ 「[0072](実施形態2)
図9は,本発明の実施形態2の画像処理装置の構成を示すブロック図である。なお,上述の実施形態と同様の機能を示すものについては,同一の参照番号を付与している。
[0073] 画像処理装置30は,立体画像であることを示す識別情報,立体画像の作成方法 に関する情報及び視差情報等の3D情報を入力として,立体画像であることが視覚的に認知可能な3Dマークをオブジェクトとして作成する3D情報作成手段31と,前記3Dマークを合成する際の位置情報を出力する位置決定手段5と,前記3D情報作成手段31から3Dマークと視差情報を,位置決定手段5から位置情報を受け取り,これらを元に3Dマークの合成位置等を調整する調整手段32と,調整手段32から入力される3Dマーク及び位置情報,図示しない入力手段から入力される左眼の視点に対応する左眼用画像及び右眼の視点に対応する右眼用画像からなる3D画像より画像の合成を行う画像合成手段33と,合成した画像を符号化する符号化手段6と,画像データと3D情報を多重化して出力する多重化手段34と,図示しない記録媒体や通信回線にアクセスする手段とを備えて構成される。(略)
[0075] 図10に示す画像内の「3D Parallel」と表示されている領域35が3Dマークを示す。「3D」により,立体画像であることを,「Parallel」によりこの画像が平行法によって作成されたことを示している。(略)
[0077] 3D情報作成手段31は,3Dマークと視差情報を調整手段32へと送る。位置決定 手段5は,3Dマークの合成位置に関する情報を位置情報として調整手段32へ送る。調整手段32は,位置情報と視差情報を元に,合成位置を決定する。(略)
[0080] 図11(a)の画像を見ると,3Dマークは視差をつけて配置するように位置決定手段5により決められており,左眼用画像の3Dマーク40は左眼用画像の左端から2ブロック以上右側にあるのに対し,右眼用画像の3Dマーク41は右眼用画像の左端である中央の太線38から見て2ブロックに満たない距離しか離れていない。図11(a)の画像に示す位置に配置した場合,左右どちらの3Dマーク40,41も符号化ブロックをまたぐように配置されているため,画質の劣化が大きくなる。そのため,調整手段32は3Dマーク40,41の上側,あるいは下側のブロックの境界のどちらか一方のうち,元画像のブロック境界と近い方のブロック境界と一致するように移動する。左右方向についても同様に,一番移動距離が短くなるようなブロック境界にマークの境界が一致するように3Dマークを移動する。これにより,図11(b)の図に示す42,43のように配置される。図11中の点線および矢印はその方向に3Dマークが移動したことを示す為に記載している。これにより,画像合成時の画質劣化を抑えることが可能となる。
[0081] 上記の例では,3Dマークの移動距離が位置決定手段5により決められた位置から 最も少なくなるように移動したが,位置決定手段5の位置情報が3Dマークを元画像の重畳領域の視差に合わせて配置するようにしていた場合で,かつ元画像が表示画面に対して手前に見える画像であるときに最短で移動すると,3Dマークの視差が重畳領域の元画像の視差よりも少なくなり,やや沈んで見えてしまうことがある。前述のように周囲に対して奥側に沈んで見えると違和感があるため,このような場合には,3Dマークを視差が大きくなるような方向に移動する。」

(2-2-2)引用例3の記載
当審の平成28年6月10日付け拒絶理由において,周知技術を示す文献として引用された,特開2011-24638号公報(同拒絶理由における引用文献4。以下「引用例3」という。)には,「ビデオゲーム装置,ゲーム画像表示方法及びゲーム画像表示プログラム」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ゲーム画像を3次元(立体視)で表示するビデオゲーム装置,ゲーム画像表示技術に関する。(略)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,2台の仮想カメラを用いて3D立体視表示のゲーム画像を表示し,かつこのゲーム画像中に予め作成されているパネル画像を3D立体視表示することで,3D処理負担を抑制しつつ,迫力及び演出性に優れたゲーム画像をプレイヤに提供することができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は,本発明に係るビデオゲーム装置が適用される対戦ゲームシステムの一実施形態を示す構成図である。対戦ゲームシステムは,それぞれ識別情報が対応付けされたクライアント端末装置(ゲーム端末)1と,複数の(ここでは8台の)ゲーム端末1と通信可能に接続され,これらの間の中継・接続及び各ゲーム端末1とネットワーク(インターネット)を介して他の店舗のゲーム端末1との間での接続を行う通信機器であるルーター2と,各ルーター2を介して通信可能に接続され,複数のプレイヤがゲーム端末1を用いて行うためのプレイヤ認証,プレイヤ選択及びゲーム履歴に関する情報を管理するサーバ3とを備えている。
【0021】
ゲーム端末1は,プレイヤがモニタに表示されるゲーム画面に基づいて所定の操作を行うことによって,ゲームを進行するものである。なお,ゲーム端末1に対応付けされる識別情報は,ゲーム端末1が接続されているルーター2毎の識別情報(又はゲーム端末1が配設されている店舗の識別情報)とゲーム端末1が配設されている店舗内でのゲーム端末1毎の識別情報(端末番号という)とを含んでいる。例えば,店舗Aの識別情報がAであって,店舗A内でのゲーム端末1の識別情報が4である場合には,当該ゲーム端末1の識別情報はA4である。
【0022】
ルーター2は,それぞれ複数のゲーム端末1及びサーバ3と通信可能に接続され,ゲーム端末1とサーバ3との間でデータの送受信を行うものである。
【0023】
サーバ3は,各ルーター2と通信可能に接続され,プレイヤ個人を特定するためのユーザIDに対応付けて前記プレイヤ情報を格納すると共に,ルーター2を介してゲーム端末1とデータの送受信を行うことによってプレイヤと同一ゲーム空間上でゲームを行うプレイヤ(対戦者という)を選択するものである。
【0024】
図2は,ゲーム端末1の一実施形態の外観を示す斜視図である。なお,ゲーム端末1を用いて行われる対戦ゲームとして,本実施形態では対戦ゲームのうち,射撃ゲームを想定している。射撃ゲームは,1人対1人の対戦モードやグループ対戦モードが設定されている。グループ対戦モードは,所定人数,例えば2名ずつとか,あるいは4名ずつの敵,味方プレイヤが対戦するものである。対戦モード,グループ対戦モードでは,後述するネットワーク通信部18,ルーター2を介してお互いの操作データの送受信が行われる。(略)
【0051】
図9は,ゲーム画像の3D立体視表示モードの原理を説明する図で,図9(a)は2台の仮想カメラと被写体との関係を示す模擬図であり,図9(b)は2台の仮想カメラで撮影された画像とモニタ画像との関係を示す模擬図である。図10は,ゲーム画像を3D立体視表示モードで表示するための構成図である。
【0052】
仮想ゲーム空間には,左目用に相当する仮想カメラ60Lと右目用に相当する仮想カメラ60Rの2台が準備されている。両仮想カメラ60L,60Rは所定の位置関係を有しており,視線方向は奥行き方向の所定位置,代表的には,仮想ゲーム空間内の被写体としての,キャラクタやオブジェクトの位置で交叉している。画像記憶部162Lは,RAM162内の一部のメモリ領域を示しており,仮想カメラ60Lで撮影された仮想ゲーム空間内の1シーンの画像データが書き込まれる。画像記憶部162Rは,RAM162内の一部のメモリ領域を示しており,仮想カメラ60Rで撮影された仮想ゲーム空間内の1シーンの画像データが書き込まれる。(略)
【0053】
画像記憶部162L,162Rの各画像は,合成されて,モニタ11で表示されている。(略)」

ウ 「【0062】
ゲーム関連画像表示指示部161kは,ゲームに関連する情報を画像として,モニタ11に表示する指示及び処理を行うものである。表示対象としては,例えば吹き出し画像及び各種の文字情報や,プレイヤの取得対象である各種のアイテム画像であり,本実施形態では,パネル状の画像である。
【0063】
図11は,対戦ゲーム画面の一例を示す画面図で,銃を構えた状態の自己キャラクタP11をTPS視点位置で示し,かつ味方キャラクタP12が表示されており,さらに敵キャラクタP21が出現している。アイテム画像Q1,及び吹き出し付き台詞画像Q2が併記表示されている。
【0064】
ROM163は,ゲーム関連情報記憶部163aを備える。ゲーム関連情報記憶部163aは,上述の吹き出し画像及び各種の文字情報(台詞)や,プレイヤの取得対象である各種のアイテム画像をそれぞれ記憶するものである。ゲーム関連画像は,パネル画像であり,オブジェクトとテクスチャとから構成されている。吹き出しの種類は1種類でもよいし,所要の複数種類でもよい。文字情報は,ゲーム状況が予め設定された状態になった場合,主には,味方キャラクタにゲームの状況の進捗を教えたり,尋ねたり,あるいは注意を喚起したりする場合の台詞である。例えば,敵キャラクタP21がモニタ11に出現した場合に「気を付けろ,敵がいるぞ。」等である(図11参照)。各台詞は,ゲーム関連画像表示指示部161kによってゲーム状況に応じて自動的に選出されて,吹き出し画像に差し込まれてモニタ11に表示される。各台詞と吹き出しとは予め一体化されたものであってもよい。また,アイテムとしては,ライフル銃やハンドガン,その他にナイフや手榴弾等がある。(略)
【0067】
画像表示制御部161cは,画像メモリ162L,162Rから画像データが書き込まれた状態のビデオRAM162Cに上書きすることで,指示されたパネル画像を書き込むようにしている。上書き処理によって最優先の陰面処理が施され,常に見える状態で表示される。吹き出し画像及び文字の表示の大きさは,対応するキャラクタと仮想カメラとの距離によって投影的なサイズとして設定されればよい。なお,画像メモリ162L,162Rにそれぞれ右目用画像,左目用画像として書き込む態様でもよい。」

(2-2-3)周知技術
上記(2-2-1)及び(2-2-2)の摘記事項及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,引用例2,3には,それぞれ,以下の技術事項が記載されているといえる。

(引用例2記載の技術事項)
2台の擬似的なカメラによって作成される,左目用画像及び右目用画像を用いて立体画像を表示させること,及びオブジェクト19ないし3Dマーク35を左目用画像及び右目用画像に合成して前記立体画像中に表示させること。

(引用例3記載の技術事項)
左目用の仮想カメラで撮影された画像と,右目用の仮想カメラで撮影された画像とを用い,3D立体視表示のゲーム画像を表示させること,及びパネル画像を左目用画像及び右目用画像に書き込んで,前記ゲーム画像中に表示させること。

ここで,引用例2における,左目用画像及び右目用画像を作成する「2台の擬似的なカメラ」,引用例3における,「左目用の仮想カメラ」及び「右目用の仮想カメラ」の2台の仮想カメラは,いずれも,「仮想ステレオカメラ」といえる。また,引用例2において,擬似的なカメラにより,左目用画像及び右目用画像を「作成」することは,擬似的なカメラにより,それらの画像を,擬似的に「撮影」することといえる。
引用例2における,左目用画像及び右目用画像を用いて表示される「立体画像」,引用例3における,「3D立体視表示のゲーム画像」は,いずれも,「立体視画像」といえる。また,引用例2における,前記立体画像の「表示」,引用例3における,前記3D立体視表示のゲーム画像の「表示」は,いずれも「立体視表示」といえる。
引用例2における,「オブジェクト19」及び「3Dマーク35」は,引用例2の図5,10,11から2次元形状であることを読み取ることができるから,「2次元オブジェクトの画像」ということができる。また,引用例3における,「パネル画像」についても,引用例3の図11から2次元形状であることを読み取ることができるから,「2次元オブジェクトの画像」ということができる。
引用例3における,パネル画像を左目用画像及び右目用画像に「書き込」むことは,パネル画像を,3次元画像の左目用画像及び右目用画像に「合成する」ことといえる。

そうすると,引用例2,3には,以下の周知技術が開示されているといえる。

(周知技術)
仮想ステレオカメラで撮影される左目用画像及び右目用画像を用いて立体視画像を立体視表示させること,及び2次元オブジェクトの画像を左目用画像及び右目用画像に合成し,前記立体視画像中に表示させること。

(2-3)引用例4の記載及び技術事項
(2-3-1)引用例4の記載
当審の平成28年6月10日付け拒絶理由に引用された,特開2007-260157号公報(同拒絶理由における引用文献7。以下「引用例4」という。)には,「ゲーム装置,ゲーム装置の制御方法及びプログラム」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【背景技術】
【0002】
ゲーム画面に表示されたキャラクタオブジェクトをユーザが操作することにより,ゲーム画面に表示されたボールオブジェクトを,該キャラクタオブジェクトに敵対するキャラクタオブジェクトに関連付けられた所定位置まで移動させることを競う,例えばサッカーゲーム等の球技スポーツゲームが知られている。こうしたゲームにおいては,ゲーム画面に表示されているキャラクタオブジェクトを指示するマーカ画像を,ゲーム画面に表示することが一般的である。下記特許文献には,上記のようなゲーム(サッカーゲーム)を実現するゲームシステムが開示されている。
【特許文献1】特開平11-342262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,上記特許文献1に記載のゲームシステムでは,ゲーム画面に表示されないキャラクタオブジェクト(画面外キャラクタオブジェクト)については,上記マーカ画像をゲーム画面に表示しない。そのため,ユーザが,画面外キャラクタオブジェクトの位置を把握することは困難であった。
【0004】
これを受けて,従来の球技スポーツゲームの中には,画面外キャラクタオブジェクトを指示するマーカ画像をゲーム画面に表示することにより,該画面外キャラクタオブジェクトが位置する方向を表現するようにしたものもある。例えば,マーカ画像の位置と姿勢により,該マーカ画像が指示する方向に画面外キャラクタオブジェクトが位置していることを表現していた。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明の一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。(略)
【0031】
以下,上述のハードウェア構成を有する家庭用ゲーム機11により,仮想3次元空間で行われるサッカーをシミュレートするサッカーゲームにおいて,ゲーム画面に表示されていないキャラクタオブジェクトに関連付けられたマーカ画像のゲーム画面における表示位置を決定する技術について説明する。上記サッカーゲームでは,主記憶26に図7に示すゲーム空間1000が設定され,各ユーザが該ゲーム空間1000に配置されたユーザキャラクタオブジェクト54を操作することにより,複数のユーザが同時にゲームをプレイすることができるようになっている。ここでは,ユーザ1がユーザキャラクタオブジェクト54Aに関連付けられ(ユーザキャラクタオブジェクト54Aを操作し),ユーザ2がユーザキャラクタオブジェクト54Bに関連付けられ,ユーザ3がユーザキャラクタオブジェクト54Cに関連付けられ,そして,ユーザ4がユーザキャラクタオブジェクト54Dに関連付けられた例を取り上げる。また,ユーザキャラクタオブジェクト54A及びユーザキャラクタオブジェクト54CがチームAに関連付けられ,ユーザキャラクタオブジェクト54B及びユーザキャラクタオブジェクト54DがチームAに敵対するチームBに関連付けられているものとする。なお,以下でユーザキャラクタオブジェクト54A乃至ユーザキャラクタオブジェクト54Dを特に区別しない場合は,単にユーザキャラクタオブジェクト54と表記し,ユーザ1乃至ユーザ4を区別しない場合は,単にユーザと表記する。
【0032】
図3は,家庭用ゲーム機11のモニタ18に表示されるゲーム画面の一例である。このゲーム画面は,画像処理部16によってVRAM上に形成されたゲーム画像が,モニタ18に表示されたものである。このゲーム画像は,図4(a)に示す空間投影画像に,図5に示すマーカ配置画像を重ねることによって生成されるものである。ここで,上記空間投影画像とマーカ配置画像は,同じサイズである。また,上記空間投影画像にはユーザキャラクタオブジェクト54Aとボールオブジェクト58が配置されていて,上記マーカ配置画像には,その透明領域の各所にマーカ画像74A乃至マーカ画像74Dが配置されている。なお,図4(b)に示すように,上記空間投影画像を,その内縁部分に同一色で構成された空白領域80(斜線部)を含んで構成することにより,ゲーム画像を図6に示すように構成してもよい。
【0033】
以下,マーカ画像74A乃至マーカ画像74Dを区別しない場合は,単にマーカ画像74と表記する。
【0034】
図3に示すように,ゲーム画面には,画面中央のボールオブジェクト58とユーザキャラクタオブジェクト54Aが表示されている。また,ユーザキャラクタオブジェクト54Aに関連付けられたマーカ画像74Aが,ユーザキャラクタオブジェクト54Aの頭上に表示されている。すなわち,ゲーム画面に表示されるユーザキャラクタオブジェクト54(画面内ユーザキャラクタオブジェクト)の頭上に,該ユーザキャラクタオブジェクト54に関連付けられたマーカ画像74が表示されている。
【0035】
また,図3に示すように,ゲーム画面に表示されないユーザキャラクタオブジェクト54B,54C,54Dの各々に関連付けられたマーカ画像74B,74C,74Dが,ゲーム画面の縁E1の内側に表示されている。ここで,マーカ画像74B,74C,74Dはそれぞれ,その姿勢により,ユーザキャラクタオブジェクト54B,54C,54Dが位置する方向を指し示すようになっている。つまり,ゲーム画面に表示されないユーザキャラクタオブジェクト54(画面外ユーザキャラクタオブジェクト)に係るマーカ画像74が,該ユーザキャラクタオブジェクト54が位置する方向を指し示すように,ゲーム画面の縁E1の内側に表示されている。
【0036】
特に,画面外ユーザキャラクタオブジェクトたるユーザキャラクタオブジェクト54C,54Dの各々に係るマーカ画像74C,74Dは,ゲーム画面の縁E1の内側に並べて表示されている。具体的には,ユーザキャラクタオブジェクト54Dに係るマーカ画像74Dが,ユーザキャラクタオブジェクト74Cに係るマーカ画像74Cよりも画面中央側に表示されている。こうすることにより,ユーザキャラクタオブジェクト54Dが,マーカ画像74Dの指し示す方向に位置していること表現するとともに,ユーザキャラクタオブジェクト54Cよりも画面中央の近くに位置していることを示している。つまり,複数のマーカ画像74を並べて表示することにより,複数の画面外ユーザキャラクタオブジェクトが位置する方向を示すとともに,各画面外ユーザキャラクタオブジェクトの位置関係を示している。」

ウ 「【0046】
各ユーザキャラクタオブジェクト54の投影位置が特定されると,特定された投影位置に基づいてマーカ画像74の表示位置が決定される。すなわち,投影位置に基づいて,マーカ画像74の表示位置を特定するスクリーン座標が算出される。
【0047】
図9は,図8においてスクリーン領域70の周辺を拡大して表示した図である。同図に示すように,画面内ユーザキャラクタオブジェクトたるキャラクタオブジェクト54Aに係るマーカ画像74Aについては,投影位置PAから所定距離だけ上方に移動した位置がその表示位置MAとして決定される。
【0048】
画面外ユーザキャラクタオブジェクトに係るマーカ画像74については,まず原点Obから該画面外ユーザキャラクタオブジェクトの投影位置に向かって直線を延伸するとともに,その直線とスクリーン領域70の縁E2との交点(マーカ表示位置基準点)を特定し,該マーカ表示位置基準点から該直線上を原点Obに向かって所定距離(その大きさをrとする)だけ移動した位置が,その表示位置として仮決定される。そして,各画面外ユーザキャラクタオブジェクトについて,そのマーカ画像74の一部又は全部が他の画面外ユーザキャラクタオブジェクトに係るマーカ画像74と重なるか否かが判断され,画面外ユーザキャラクタオブジェクトの組み合わせが決定される。すなわち,重なり合う複数のマーカ画像74のそれぞれに係る画面外ユーザキャラクタオブジェクトが特定される。ここで,上記組み合わせに含まれる画面外ユーザキャラクタオブジェクトの数は少なくとも2であり,いずれの組み合わせにも含まれない画面外ユーザキャラクタオブジェクトについては,仮決定された位置がマーカ画像74の表示位置として決定される。例えば,図3に示すマーカ画像74Bは,他の画面外ユーザキャラクタオブジェクトに係るマーカ画像74と重なり合わないため,その表示位置MBは,直線LBと上記縁E2との交点たるマーカ表示位置基準点CBから直線LB上を原点Obに向かって上記所定距離(大きさr)だけ移動した位置となっている。」

エ 「【0079】
以上のように,家庭用ゲーム機11によれば,原則として,画面外ユーザキャラクタオブジェクトに係るマーカ画像74が,該画面外ユーザキャラクタオブジェクトの位置する方向を指し示すような姿勢で,ゲーム画面の縁E1の内側に表示される。(略)
【0081】
なお,本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば,以上の説明では本発明をサッカーゲームに適用する場合について取り上げたが,本発明は,他のスポーツゲームやアクションゲームにも適用可能である。すなわち,本発明は,ゲーム画面外にある複数のオブジェクトの位置をマーカ画像によって示すゲームであれば適用可能である。」

(2-3-2)引用例4記載の技術事項
上記(2-3-1)の摘記事項及び関連する図面,並びにこの分野の技術常識を考慮すると,引用例4には,以下の技術事項が開示されているといえる。

(引用例4記載の技術事項)
仮想3次元空間で行われるゲームのゲーム画面において,ユーザキャラクタオブジェクトがゲーム画面に表示されている場合には,当該ユーザキャラクタオブジェクトに関連付けられたマーカ画像を,ユーザキャラクタオブジェクトの頭上に表示し,前記キャラクタオブジェクトがゲーム画面に表示されない場合には,当該マーカ画像の表示位置をゲーム画面の縁の内側として,マーカ画像がゲーム画面に表示されるようにすること。

(3)対比
補正後発明と引用発明とを対比する。

(3-1)構成要件Aと構成要件aとの対比
引用発明の「2次元オブジェクトであるマーカオブジェクト」,「表示部」は,それぞれ,補正後発明の「所定の2次元オブジェクト」,「表示装置」に相当する。
前記マーカオブジェクトを,「仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に」,「配置し」,「映し出す」ことは,前記マーカオブジェクトが,仮想的な3次元空間内にあるように「立体視表示」させることといえる。そして,引用発明の「画像生成装置」は,そのように立体的に表示させる制御をしているといえるから,「表示制御装置」ということができる。

よって,引用発明の構成要件a「仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に,2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトを配置し,表示部に映し出す画像生成装置であって,」は,補正後発明の構成要件A「所定の2次元オブジェクトを表示装置に立体視表示させる表示制御装置であって,」に相当するといえる。

(3-2)構成要件Bと構成要件bとの対比
引用発明の「3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクト」は,補正後発明の「所定の3次元オブジェクト」に相当する。また,引用発明の「前記オブジェクト空間」は,構成要件aに示されるように,仮想的な3次元空間であるから,「仮想3次元空間」といえる。
引用発明の画像生成装置における「ゲーム演算部」は,前記オブジェクト空間に,前記敵キャラクタオブジェクトを配置することができるのであるから,「配置手段」を備えているということができる。

よって,引用発明の構成要件bにおける「前記オブジェクト空間に,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトを配置」する「ゲーム演算部」と,補正後発明の構成要件Bとは,「仮想3次元空間に所定の3次元オブジェクトを配置する配置手段」という点で共通する。
しかしながら,引用発明の構成要件bと,補正後発明の構成要件Bとは,仮想3次元空間が,補正後発明では,「仮想ステレオカメラによって撮像される」ものであるのに対し,引用発明では,そのようなものではない点で相違する。

(3-3)構成要件C-1,C-2,D-1及びD-2について
2次元オブジェクトを立体的に表示するために,補正後発明では,「前記仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段」(構成要件C-1)及び「前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段」(構成要件D-1)という構成を備えるのに対し,引用発明では,2次元オブジェクトに相当するマーカオブジェクトを,敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置するものではあるが,立体視表示をどのように行うかは具体的に特定されておらず,補正後発明のような,奥行き値を取得し,奥行き値に応じたずらし量を設定する構成を備えていない。
また,かかる構成を前提として,補正後発明では,「前記取得手段は,前記奥行き値を繰り返し取得し,」(構成要件C-2),「前記前記ずらし量設定手段は,前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定し,」(構成要件D-2)という構成を備えているものの,引用発明では,そのような構成を備えていない。

(3-4)構成要件E-1及びE-2と,構成要件cとの対比
引用発明における,仮想的な3次元空間である「前記オブジェクト空間での所与の視点での画像」は,プレーヤにとって,立体的に見えることになるから,「立体視画像」ということができる。また,引用発明における,「画像生成部」は,画像を生成する手段といえるから,「生成手段」ということができる。

よって,引用発明の構成要件cと,補正後発明の構成要件E-1とは,「立体視画像を生成する生成手段」を備える点で共通する。
しかしながら,引用発明の構成要件cと,補正後発明の構成要件E-1とは,2次元オブジェクトを立体的に表示するために,補正後発明では,「前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画する」のに対し,引用発明では,そのような左目用画像及び右目用画像を用いて合成描画する構成を備えてはいない点で相違する。
また,かかる構成を前提として,補正後発明では,「前記生成手段は,前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記更新された2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成し,」(構成要件E-2)という構成を備えているものの,引用発明では,そのような構成を備えていない。

(3-5)構成要件F-1及びF-2と,構成要件dとの対比
上記(3-1)及び(3-4)の検討を踏まえると,引用発明における「前記画像生成部」,「前記表示部」は,それぞれ,補正後発明の「前記生成手段」,「前記表示装置」に相当する。
また,上記(3-1)及び(3-4)の検討を踏まえると,引用発明において,前記画像生成部で生成された「画像」は,「立体視画像」であり,当該画像の前記表示部における「表示」は,「立体視表示」といえる。
さらに,そのような表示をさせることができるのであるから,引用発明の画像生成装置は,「表示制御手段」を備えているということができる。

よって,引用発明の構成要件d「前記画像生成部によって生成された画像が,前記表示部に表示され,」は,補正後発明の構成要件F-1「前記生成手段によって生成された立体視画像を前記表示装置に立体視表示させる表示制御手段と,」に相当するといえる。
しかしながら,補正後発明では,さらに,「前記表示制御手段は,前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する」(構成要件F-2)という構成を備えているものの,引用発明では,立体視画像を更新する,そのような具体的な構成を備えていない。

(3-6)構成要件Gと構成要件bとの対比
上記(3-1)の検討を踏まえると,引用発明の「前記マーカオブジェクト」は,補正後発明の「前記2次元オブジェクト」に相当するといえる。また,上記(3-2)の検討を踏まえると,引用発明の「前記敵キャラクタオブジェクト」は,補正後発明の「前記3次元オブジェクト」に相当するといえる。
また,引用発明において,前記マーカオブジェクトを,前記敵キャラクタオブジェクト「の位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置する」ことは,表示部の画面上における前記敵キャラクタオブジェクトの表示位置に基づいて,前記マーカオブジェクトの表示位置が設定されるということであるから,補正後発明の「前記表示装置の画面上における」前記3次元オブジェクト「の表示位置に基づいて」,前記2次元オブジェクト「の表示位置を設定する」ことに相当する。
そして,引用発明における画像生成装置の「ゲーム演算部」は,そのような表示位置の設定を行うことができるのであるから,「表示位置設定手段」を備えているということができる。

よって,引用発明の構成要件bにおける「また,前記マーカオブジェクトを,前記敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置する,ゲーム演算部と,」は,補正後発明の構成要件G「前記表示装置の画面上における前記3次元オブジェクトの表示位置に基づいて,前記2次元オブジェクトの表示位置を設定する表示位置設定手段と,」に相当するといえる。

(3-7)構成要件Hについて
補正後発明では,構成要件Hにおいて,表示制御装置が,「前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段」を備えることについて特定されているが,引用発明では,そのような構成を備えていない。

(3-8)構成要件Iと構成要件eとの対比
上記(3-1)及び(3-2)の検討を踏まえると,引用発明の「前記マーカオブジェクト」,「前記敵キャラクタオブジェクト」は,それぞれ,補正後発明の「前記2次元オブジェクト」,「前記3次元オブジェクト」に相当するといえる。
また,引用発明の「プレーヤ」,「撮影部」が,それぞれ「ユーザ」,「撮像可能」な「撮像部」といえることは,明らかである。さらに,引用発明の「撮影した画像」が,「撮像され」る「撮像画像」といえることも明らかである。

よって,引用発明の構成要件eと,補正後発明の構成要件Iとは,「前記2次元オブジェクトは,前記3次元オブジェクトを操作するユーザを撮像可能な撮像部によって撮像される撮像画像であ」る点で共通し,以下の点で相違する。
・撮像画像が,補正後発明では,「外部装置」において撮像され,当該外部装置から「取得される」ものであるのに対し,引用発明では,そのように外部装置において撮像され,当該外部装置から取得されるものであることについて特定されていない点
・撮像画像が,補正後発明では,「繰り返し」取得されることで「更新される」ものであるのに対し,引用発明では,そのように繰り返し取得されることで更新されるものであることが特定されていない点

(3-9)構成要件Jと構成要件fとの対比
上記(3-1)の検討を踏まえると,引用発明の構成要件f「画像生成装置」は,上記(3-2)ないし(3-5),(3-7)及び(3-8)に示した相違を除き,補正後発明の構成要件J「表示制御装置」に相当する。

(3-10)まとめ
上記(3-1)から(3-9)までに示した対比の結果に基づき,補正後発明と,引用発明との間の一致点と相違点とをまとめると,以下のとおりである。

(一致点)
「所定の2次元オブジェクトを表示装置に立体視表示させる表示制御装置であって,
仮想3次元空間に所定の3次元オブジェクトを配置する配置手段と,
立体視画像を生成する生成手段と,
前記生成手段によって生成された立体視画像を前記表示装置に立体視表示させる表示制御手段と,
前記表示装置の画面上における前記3次元オブジェクトの表示位置に基づいて,前記2次元オブジェクトの表示位置を設定する表示位置設定手段と,
前記2次元オブジェクトは,前記3次元オブジェクトを操作するユーザを撮像可能な撮像部によって撮像される撮像画像である,
表示制御装置。」

(相違点1)
仮想3次元空間が,補正後発明では,「仮想ステレオカメラによって撮像される」ものであるのに対し,引用発明では,そのようなものではない点

(相違点2)
2次元オブジェクトを立体視表示するために,相違点1に係る構成を前提として,補正後発明では,「前記仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段」と,「前記2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設定するずらし量設定手段」とを備え,「前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画する」のに対し,引用発明では,2次元オブジェクトに相当するマーカオブジェクトを,敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置するものではあるが,そのような,奥行き値を取得し,奥行き値に応じたずらし量を設定し,左目用画像及び右目用画像を用いて合成描画する構成を備えてはいない点

(相違点3)
相違点2に係る構成を前提として,補正後発明では,奥行き値を取得し,奥行き値に応じたずらし量を設定し,左目用画像及び右目用画像を合成描画する処理に関し,「前記取得手段は,前記奥行き値を繰り返し取得し」,「前記前記ずらし量設定手段は,前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定し」,「前記生成手段は,前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記更新された2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成し」,「前記表示制御手段は,前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する」という構成を備えているのに対し,引用発明では,立体視画像を更新する,そのような構成を備えていない点

(相違点4)
補正後発明では,表示制御装置が,「前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段」を備えることについて特定されているが,引用発明では,そのような構成を備えていない点

(相違点5)
撮像画像が,補正後発明では,「外部装置」において撮像され,当該外部装置から「取得される」ものであるのに対し,引用発明では,そのように外部装置において撮像され,当該外部装置から取得されるものであることについて特定されていない点

(相違点6)
撮像画像が,補正後発明では,「繰り返し」取得されることで「更新される」ものであるのに対し,引用発明では,そのように繰り返し取得されることで更新されるものであることが特定されていない点

(4)当審の判断
ア 上記(相違点1)ないし(相違点3)について
(相違点2)に係る構成は,(相違点1)に係る構成を前提としている。また,(相違点3)に係る構成は,(相違点2)に係る構成を前提としている。したがって,立体視表示の手法についての相違点である,(相違点1)ないし(相違点3)について,まとめて検討する。

引用発明は,仮想的な3次元空間を表示し,2次元オブジェクトに相当するマーカオブジェクトを,敵キャラクタオブジェクトの位置に追従させ,遠近効果をもたせて配置するものではあるが,仮想3次元空間として,仮想ステレオカメラで撮像される空間が用いられておらず,奥行き値を取得し,奥行き値に応じたずらし量を設定し,左目用画像及び右目用画像を用いて合成描画して,繰り返し立体視画像を生成し表示するような構成を備えてはいない。

しかしながら,上記(2-2-3)に示したように,仮想ステレオカメラで撮影される左目用画像及び右目用画像を用いて立体視画像を立体視表示させること,及び2次元オブジェクトの画像を左目用画像及び右目用画像に合成し,前記立体視画像中に表示させることは,本願出願前における周知技術であると認められる。
そして,引用発明と,上記周知技術とは,仮想の3次元空間に2次元オブジェクトを配置して表示させる点で共通する。
また,仮想の3次元空間を表示させる技術として,立体視画像を用いた立体視表示という,新たな手法が周知となれば,それを従前の手法に置き換えようとすることは,技術の進展に伴う改良という観点で,当業者は当然に試みようとするといえ,他方で,そのように置き換えた際に,2次元オブジェクトを適切な位置に表示できなくなる等の阻害要因があるともいえない。

したがって,引用発明に上記周知技術を適用し,(i)仮想的な3次元空間を,「仮想ステレオカメラによって撮像される」もの(上記(相違点1)に係る構成)として,立体視画像を立体視表示させ,(ii)2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトについて,左目用画像及び右目用画像を生成し,この「2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を」,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトの配置された左目用画像及び右目用画像,すなわち,「所定の3次元オブジェクトを前記仮想ステレオカメラで撮像して得られた左目用画像及び右目用画像」と「それぞれ合成描画する」構成(上記(相違点2)に係る構成の一部)とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,出願時の技術常識を踏まえると,上記周知技術の,仮想ステレオカメラで撮影される左目用画像及び右目用画像を用いて立体視画像を立体視表示させる手法において,奥行き値と,視差を生じさせるための左目用画像と右目用画像との間のずらし量とが対応することは明らかである。したがって,上記周知技術の適用に当たり,オブジェクト空間の状況に応じマーカオブジェクトを表示すべき奥行き値を取得し,左目用画像及び右目用画像のずらし量を設定することは,当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎない。
そして,上記(2-1-1)イで摘記した引用例1の段落【0013】には,引用発明の画像生成装置が,例えば,対戦型のマシンガンゲームに適用されることについて記載されており,図3ないし5に示されているように,ゲーム進行の状況に応じて,敵キャラクタオブジェクトや,マーカオブジェクトが変化することを踏まえると,マーカオブジェクトを表示すべき奥行き値は,ゲーム進行の状況に応じて変化することになるから,上記周知技術の適用に伴い,前記奥行き値を繰り返し取得し,前記ずらし量を再設定し,立体視画像を再生成して更新することも,当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎないといえる。
そうすると,以下の(ア)及び(イ)は,いずれも,引用発明に上記周知技術を適用する際の設計的事項であって,当業者が容易に想到し得たことといえる。
(ア)「仮想3次元空間の状況に応じた奥行き値を取得する取得手段」と,「2次元オブジェクトに視差を生じさせるために前記取得手段によって取得された奥行き値に応じたずらし量を設けるずらし量設定手段」とを備え,2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像について,「前記ずらし量設定手段によって設定されたずらし量だけ」ずらしたものとすること(上記(相違点2)に係る構成の残りの部分)。
(イ)「前記取得手段は,前記奥行き値を繰り返し取得し」,「前記前記ずらし量設定手段は,前記取得手段によって前記奥行き値が取得される毎に前記ずらし量を再設定し」,「前記生成手段は,前記ずらし量設定手段によって再設定されたずらし量だけ前記2次元オブジェクトをずらした左目用画像及び右目用画像を,前記3次元オブジェクトの左目用画像及び右目用画像とそれぞれ合成描画することによって,前記立体視画像を再生成し」,「前記表示制御手段は,前記表示装置に立体視表示させる立体視画像を,前記生成手段によって再生成された立体視画像に更新する」こと(上記(相違点3)に係る構成。ただし,2次元オブジェクトが「更新された」たものである点を除く。この点は,(相違点6)に係る構成であり,下記エにおいて検討する。)。

以上によれば,引用発明の上記(相違点1)ないし(相違点3)に係る構成は,下記エで検討する,2次元オブジェクトが「更新された」たものである点を,ひとまずおくと,当業者が容易に想到し得たものといえる。

イ 上記(相違点4)について
引用発明は,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトの表示位置が画面内となるように補正するような構成を有していない。
一方,上記(2-3-2)に示したように,引用例4には,仮想3次元空間で行われるゲームのゲーム画面において,ユーザキャラクタオブジェクトがゲーム画面に表示されている場合には,当該ユーザキャラクタオブジェクトに関連付けられたマーカ画像を,ユーザキャラクタオブジェクトの頭上に表示し,前記キャラクタオブジェクトがゲーム画面に表示されない場合には,当該マーカ画像の表示位置をゲーム画面の画面の縁の内側として,マーカ画像がゲーム画面に表示されるようにする,という技術事項が記載されている。そうすると,引用例4には,キャラクタオブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,キャラクタオブジェクトに追従させるマーカオブジェクトの表示位置を画面内とする技術思想が開示されているといえる。

ここで,引用発明は,構成要件bに示されているように,マーカオブジェクトを,敵キャラクタオブジェクトに追従させるものであるところ,上記(2-1-1)イで摘記した引用例1の段落【0013】には,引用発明の画像生成装置が,例えば,対戦型のマシンガンゲームに適用されることについて記載されている。したがって,引用発明と,引用例4記載の技術思想とは,仮想的な3次元空間を表示するゲームの画面において,当該画面内に表示される移動体に関連付けられたオブジェクトを表示する点で共通している。
また,そのような対戦型のゲームに適用されることを踏まえると,引用発明において,敵キャラクタオブジェクトの位置が画面内から画面外に移動していくこと,及び,画面外から画面内に移動していくことは,当然に想定されることであり,そのようなことが生じた場合に,追従させているマーカオブジェクトの表示をどのようにするのかは,引用発明に内在された課題であるといえる。そして当該課題は,引用例4の技術思想に係る課題とも共通する。

したがって,引用発明におけるマーカオブジェクトの表示に関し,引用例4記載の技術思想を適用し,3次元オブジェクトである敵キャラクタオブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,2次元オブジェクトであるマーカオブジェクトの表示位置が画面内となるように補正することとし,補正後発明の上記(相違点4)に係る構成「前記3次元オブジェクトの表示位置が画面外となる場合に,前記表示位置設定手段によって設定された前記2次元オブジェクトの表示位置が画面内となるように,当該2次元オブジェクトの表示位置を補正可能な表示位置補正手段」を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 上記(相違点5)について
引用発明では,マーカオブジェクトに係る撮像画像が,外部装置において撮像され,当該外部装置から取得されることについて,特定されていない。

このことに関し,上記(2-1-1)イで摘記した引用例1の段落【0013】及び【0014】には,引用発明の画像生成装置の具体例として,対戦型のマシンガンゲームを行える,業務用のゲーム装置が記載されている。また,引用例1の図1をみると,操作部,撮影部及び表示部をひとつずつ備えたゲーム機が四台示されており,四名のプレーヤでこの対戦型のゲームを行えることについて読み取ることができる。そして,引用発明における,敵キャラクタオブジェクトに追従するマーカオブジェクトに係る撮像画像は,上記(2-1-1)ウで摘記した引用例1の段落【0030】に記載されているように,敵キャラクタを操作するプレーヤの画像であるから,自らが操作しているゲーム機以外の他のゲーム機の撮影部で撮影されたものであることは明らかである。
ここで,引用発明の画像生成装置の機能ブロックが示されている図2をみると,操作部,撮影部,処理部,情報記憶媒体及び表示部が,ひとつずつ記載されている。そうすると,(i)上記四台のゲーム機のそれぞれが,当該画像生成装置として構成され,自らが操作しているゲーム機以外のゲーム機を外部装置ということができるのか,それとも,(ii)上記四台のゲーム機が一体となって,ひとつの画像生成装置を構成している(すなわち,処理部は一つであり,操作部,撮影部及び表示部がそれぞれ四つある)のかは,必ずしも明らかでない。
しかしながら,上記(i)ということであれば,自らが操作しているゲーム機が一の「画像生成装置」であって,それに対し,当該ゲーム機以外の他のゲーム機は「外部装置」ということになるから,敵キャラクタに追従するマーカオブジェクトに係る撮像画像は,「外部装置」において撮像され,当該外部装置から「取得される」ものであるといえる。
他方,上記(ii)であったとしても,外部装置から相手の動画像を取得することは,本願出願前における周知技術であり(例えば,特開2005-253871号公報の段落【0063】には,「リアルタイム画像送受信タイプのシステムの場合,(中略)図15に示す,相手プレイヤの動画像を含むゲーム画面が表示できる。このとき,画面上には相手プレイヤの動画像だけでなく,顔画像39も表示されるので,自分プレイヤはそのときの相手プレイヤの顔,たとえば相手プレイヤが打ち損じたときの顔や,うまく返球できたときの顔などをリアルタイムで見ることができ,ゲームのリアリティや興趣が一層向上する。」と記載されており,図15には,相手プレイヤの顔画像39が表示される態様について開示されている。),撮像画像を,引用例1の図1に示されている四台のゲーム機以外の,「外部装置」から「取得される」ものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

したがって,引用発明において,撮像画像を,「外部装置」において撮像され,当該外部装置から「取得される」ものとし,上記(相違点5)に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことといえる。

エ 上記(相違点6)について
引用発明では,撮像画像が繰り返し取得されることで更新されるものであることについては,特定されていない。

しかしながら,撮影画像を静止画として更新されないものとするか,動画のように更新されるものとするかは,静止画,動画が,ともに撮影画像として一般的なものであることからすれば,当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎないといえる。また,上記ウで示したように,外部装置から相手の動画像を取得することは,本願出願前における周知技術でもあり,その周知例として示した特開2005-253871号公報の段落【0063】に記載されているように,相手の顔の表情をリアルタイムで見ることができ,「ゲームのリアリティや興趣が一層向上する」ことは,引用発明においても同様であるから,当該周知の技術に鑑みて,撮像画像を繰り返し取得して更新するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,上記ウで検討したように,引用発明の撮像画像は,引用例1に開示された例示によれば,対戦型のマシンガンゲームにおける,敵キャラクタを操作するプレーヤの画像である。そして,引用例1の図2には,各ゲーム機にそれぞれ撮像部が備えられた態様が開示されている。そうすると,引用発明において,撮像画像を静止画としなければならないという要請はなく,撮像画像を繰り返し取得して更新するように構成することに阻害要因があるということもできない。

したがって,引用発明において,撮像画像を「繰り返し」取得されることで「更新される」ものとし,上記(相違点6)に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことといえる。

オ さらに,補正後発明の作用,効果も,引用発明,周知技術及び引用例4記載の技術思想から当業者が予測できる範囲のものである。

カ よって,補正後発明は,引用発明,周知技術及び引用例4記載の技術思想に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 結語
以上のとおり,本件補正は,補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
したがって,本件補正は,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の「1 本願発明と補正後発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2 引用発明
引用発明及び周知技術は,上記「第2 補正却下の決定」の「3 独立特許要件について」における「(2)引用発明等」の項で認定したとおりである。

3 対比及び判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の「1 本願発明と補正後発明」において認定した「補正後発明」から本件補正の補正箇所に係る限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に本件補正の補正箇所に係る限定事項を付加した「補正後発明」が,上記「第2 補正却下の決定」の「3 独立特許要件について」において検討したとおり,引用発明,周知技術及び引用例4記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正後発明から本件補正の補正箇所に係る限定事項を省いた本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,周知技術及び引用例4記載の技術思想に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-31 
結審通知日 2016-09-01 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2011-39059(P2011-39059)
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (G06T)
P 1 8・ 121- WZ (G06T)
P 1 8・ 575- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 真木 健彦  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 小池 正彦
戸次 一夫
発明の名称 表示制御プログラム、表示制御装置、表示制御システム、及び表示制御方法  
代理人 石原 盛規  
代理人 小沢 昌弘  
代理人 寺本 亮  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ