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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B01D 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 B01D 審判 全部無効 2項進歩性 B01D |
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管理番号 | 1321474 |
審判番号 | 無効2014-800109 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-06-25 |
確定日 | 2016-08-29 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2904334号発明「濾過装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正明細書のとおりの訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求及び答弁の趣旨 審理の全趣旨から見て、請求人は、訂正を認めない、特許第2904334号の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、被請求人は、上記結論と同旨の審決を求めている。 第2.手続の経緯 主な手続の経緯を示す。 平成 7年 2月14日 本件特許出願 平成11年 3月26日 設定登録(特許第2904334号) 平成26年 6月23日付け 審判請求書(平成26年6月25日差出) 平成26年 7月 9日付け 審判請求書の手続補正書 平成26年 7月17日付け 答弁指令 平成26年 9月 9日付け 答弁書及び訂正請求書 平成26年10月 7日付け 訂正拒絶理由通知 平成26年10月17日付け 審理事項通知 平成26年10月27日付け 被請求人・口頭審理陳述要領書 平成26年11月 4日付け 請求人・口頭審理陳述要領書 平成26年11月18日付け 審理事項通知(2) 平成26年11月27日付け 被請求人・口頭審理陳述要領書(2)及び訂正請求書の手続補正書 平成26年12月 1日付け 請求人・口頭審理陳述要領書(2) 平成26年12月12日 口頭審理 第3.当事者の主張の要旨及び証拠方法 1.請求人の主張の要旨及び証拠方法 (1)請求人の主張の要旨 請求人は、平成26年11月27日付けで補正された訂正請求による訂正(以下「平成26年11月27日付けで補正された訂正請求書による訂正請求」を「本件訂正請求」と、前記補正された訂正請求書に添付された訂正明細書を「本件訂正明細書」と、「本件訂正請求」による訂正を「本件訂正」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、訂正は認められるべきでない、と主張している。(第1回口頭審理調書の請求人欄3) そして、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件に係る特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第12号証、甲第14号証、甲第16号証ないし甲第20号証に例示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 また、本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲には、「シール固定部材」について記載されているが、本件特許明細書中には、前記「シール固定部材」が記載されておらず、特許法第36条第4項の規定を満たさないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 請求人は、仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、以下に示す理由により、無効とすべきものであると主張している。(第1回口頭審理調書の両当事者欄1) ア.無効理由1 本件訂正後の本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件に係る特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第12号証、甲第14号証、甲第16号証ないし甲第20号証に例示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである イ.無効理由2-1 本件訂正後の本件特許の請求項1における「前記濾過ドラムの半完成品」は、その文言の前に「濾過ドラムの半完成品」が記載されていないから、日本語として成り立っていない。 したがって、本件訂正後の本件特許の請求項1の記載は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第36条第5項第2号の規定を満たさないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 ウ.無効理由2-2 本件訂正後の本件特許の請求項1における「濾過ドラムの半完成品を・・・交換可能に配置」は、どのような技術的手段によって「交換可能に配置」するのかが不明瞭である。 したがって、本件訂正後の本件特許の請求項1の記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号又は第4項の規定を満たさないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 エ.無効理由2-3 本件訂正後の本件特許の請求項1における「半完成品」は、方法的記載であり、物を特定することができない。 したがって、本件訂正後の本件特許の請求項1の記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号の規定を満たさないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)証拠 請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。 ここで、甲第1号証ないし甲第7号証は、審判請求時に、甲第8号証ないし甲第11号証、甲第14号証、甲第16号証ないし甲第20号証は、その後提出されたものである。 なお、甲第12号証、甲第13号証及び甲第15号証は、その後参考資料とされた。(請求人口頭審理陳述要領書(2)の5.(3)及び第1回口頭審理調書の請求人欄2) 甲第1号証:米国特許第5328611号明細書 甲第2号証:実願平4-74378号(実開平6-32840号)のCD-ROM 甲第3号証:米国特許第5167839号明細書 甲第4号証:特開平5-293312号公報 甲第5号証:実願平3-43313号(実開平5-22007号)のCD-ROM 甲第6号証:特開平6-205911号公報 甲第7号証:実願平1-31997号(実開平2-125711号)のマイクロフィルム 甲第8号証:実願平3-81752号(実開平5-39614号)のCD-ROM 甲第9号証:実願昭60-54647号(実開昭61-169136号)のマイクロフィルム 甲第10号証:特開平5-84407号公報 甲第11号証:実願平3-44183号(実開平5-22008号)のCD-ROM 甲第14号証:機械工学用語辞典(理工学社)404頁、405頁 甲第16号証:甲第1号証の和訳文 甲第17号証:特公平1-24524号公報 甲第18号証:特開平5-177106号公報 甲第19号証:特公平6-47049号公報 甲第20号証:実公平6-26326号公報 2.被請求人の主張の要旨 (1)被請求人の主張の要旨 被請求人は、本件訂正請求は適法であるから、本件訂正は認められるべきであり、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし8に係る発明には、無効理由はないと主張している。 なお、平成26年10月27日付け被請求人・口頭審理陳述要領書に添付して提出された乙第1号証ないし乙第3号証は、その後参考資料とされた。(第1回口頭審理調書の被請求人欄3) 第4.本件訂正請求 1.訂正事項 本件訂正請求による訂正事項は、次の訂正事項1ないし訂正事項5である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、 前記所定液体を貯蔵する液曹と、 前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、 前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、 前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、 前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記濾過ドラムが、前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と、 前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部を形成したドラム基部と、 前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から形成されたシール手段と、 前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定されるシール固定部材とからなり、 前記貯蔵曹に対して前記シール固定部材を固定することで、前記濾過ドラムを前記貯蔵曹内で交換可能に配設したことを特徴とする濾過装置。」とあるのを、 「産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、前記所定液体を貯蔵する液曹と、前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、 前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴とする濾過装置。」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項3に 「前記濾過ドラムは、側面が密閉状態にされ、かつ前記シール固定部材を前記側面開口部を形成した片側面に設け、前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において片支持状態で固定することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」とあるのを、 「前記濾過ドラムは、側面が密閉状態にされ、かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項4に 「前記濾過ドラムは、両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり、前記シール固定部材により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」とあるのを、 「前記濾過ドラムは、前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項5に 「前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け、また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり、かつ両側面部位において前記シール固定部材を夫々設けてなり、該シール固定部材により前記記貯蔵曹内において両支持状態で固定され、分別濾過することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」とあるのを、 「前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け、また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり、かつ両側面部位において前記濾過ドラムの半完成品を夫々設けてなり、該濾過ドラムの半完成品により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され、分別濾過することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項6に 「前記濾過ドラムは、前記シール固定部材と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の濾過装置。」とあるのを、 「前記濾過ドラムは、前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。」に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0009】、【0011】、【0012】、【0013】、【0014】を下記のように訂正する。 記 【0009】 【課題を解決するための手段】及び【作用】上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、前記所定液体を貯蔵する液曹と、前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴としている。 【0011】また、前記濾過ドラムは、側面が密閉状態にされ、かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴としている。 【0012】また、前記濾過ドラムは、前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴としている。 【0013】また、前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け、また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり、かつ両側面部位において前記濾過ドラムの半完成品を夫々設けてなり、該濾過ドラムの半完成品により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され、分別濾過することを特徴としている。 【0014】また、前記濾過ドラムは、前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間において介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴としている。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0042】に記載されている「以上のようにして濾過ドラムの半完成品を得る。・・・・フイルター交換等を簡単に行えるようにする」とあるのを、下記のように訂正する。 記 「以上のようにして濾過ドラムの半完成品を得る。すなわち、濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部と形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から形成されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とから構成されている。 この後に、図1、図2に示すように貯蔵曹(貯留曹7)内の半円形開口部6の近傍に穿設された貫通孔3aに対してボルト32をセットしてから、ゴムシート33に穿設された孔部33aに挿通してから、右円盤部51に形成されたネジ孔51kに対して夫々螺合固定することにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。この後、チェーンをセットし、カバー(不図示)を固定して完成する。また、濾過ドラムの交換の際には、逆の手順で外すようにしてフィルター交換等を簡単に行えるようにする」と訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0047】に記載されている「以上のように、本発明によれば・・・・大幅に向上することができる濾過装置を提供できる」とあるのを、下記のように訂正する。 記 「以上のように、本発明によれば貯蔵曹内において回転駆動される濾過ドラムを備えた濾過装置において、予め濾過ドラムの半完成品を得た後、貯蔵曹を構成する側板の内側に円盤部材を介して装置本体内に、濾過ドラムの半完成品を着脱可能に配置したものであるから、予め濾過ドラムの回転部分とシール部分とを組み立てることにより、貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保することが可能となるので、濾過精度が低下することなく、交換作業も容易となり、かつまた濾過装置の生産性を大幅に向上することができる濾過装置を提供できる」 (5)訂正事項5 明細書の段落【0023】を下記のように訂正する。 記 「また、この濾過ドラム30の内部には後述のように回転軸体を兼ねる噴出管45が設けられており、濾過フィルター44を内面側(浄化切削油の流出側)から逆洗浄するように設けられている。このために、クリーン曹1内に貯蔵された浄化切削油をポンプ47を介して濾過ドラム30の内側から勢い良く噴射することで、濾過フィルター44面に付着残留した切粉を吹き飛ばすようにして、濾過フィルターの目づまり防止を効果的に行えるようにしている。」 2.訂正の適否の判断 (1)一群の請求項について 訂正後の請求項2ないし8は、訂正後の請求項1の記載を引用しているから、請求項1ないし8は、特許法施行規則第46条の2第2号に規定する関係を有する。 したがって、訂正後の請求項1ないし8は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について ア.訂正事項1について (ア)請求項1の訂正について a.訂正の目的 請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1における「シール固定部材」が、明細書の発明の詳細な説明に記載されたどの部材に対応するのかが明確でなかったところ、前記「シール固定部材」は、明細書の段落【0038】、【0041】、【0042】に「右円盤部材51」ないし「左円盤部材52」として記載されている「円盤部材」であることを明確化するとともに、当該「円盤部材」が、「かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される」ものであることを付加するものである。 さらに、明細書の段落【0038】?【0041】における以下の《記載a》ないし《記載d》を受けて、段落【0042】には「以上のようにして濾過ドラム30の半完成品を得る。」と記載されていることを踏まえると、請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1における「前記濾過ドラム」を、「前記濾過ドラムの半完成品」と明確化するものである。 《記載a》 「【0038】・・・。・・・上述の右側板3の半円形開口部6の近傍には右円盤部材51に形成されたネジ孔51kに螺合させるためのボルト32を通過させるための貫通孔3aが穿設されており、弾性板部材であるゴムシート33に穿設された孔部33aにボルト32を夫々貫通させた状態で右側板3に対して着脱可能に固定できるようにしている。」 《記載b》 「【0039】・・・。・・・基体55・・・。また、この基体の内部において、リブ55h、55kを溶接して左右ベアリングホルダー56、57に対する固定部を一体形成する。」 《記載c》 「【0040】・・・左右ベアリングホルダー56、57内には液密状態で回転するシールベアリング70が夫々内蔵されており、ネジ29により上記の噴射管45に固定されている。これらのベアリングホルダー56、57はボルト32を用いて上記のリブ55h、55kに固定されている。」 《記載d》 「【0041】一方、上記の右円盤部材51には、俗称のVシール50であって・・・やや開いた状態でセットされるシール体が固定されている。また、この右円盤部材51の反対側には、Vシール50を・・・セットした左円盤部材52が準備される。以上の準備の後に、各円盤の挿通孔部51b、52bを噴射管45の両端部位から挿通してから、固定ネジ53を各円盤部材のネジ孔51d、52dに対して締め付けることにより、Vシール50のリップ部50bが上述したフランジ部材55x、55yのシール摺動面S1、S2に対して均一に当接する状態で完成することができる。」 よって、請求項1についての訂正は、特許法第134条の2第1項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」及び第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b.新規事項について 訂正事項1によって訂正された請求項1に記載された事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項(特に段落【0038】?【0042】、【図1】?【図3】)、若しくはそれら事項から自明な事項である。特に、「円盤部材」が「前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される」ことは、【図1】及び【図2】から、右円盤部材51が右側板3の内側に配置され、左円盤部材52が左側板2の内側に配置されることが看取され、この看取されること及び上記《記載a》から明らかである。 よって、請求項1についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 c.実質的拡張又は変更について 訂正事項1によって訂正された請求項1に記載された発明は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、請求項1についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (イ)請求項3、4、5、6の訂正について 請求項3、4、5、6の訂正は、請求項1において「前記貯蔵曹内に交換可能に配設」される「前記濾過ドラム」を、「前記貯蔵曹内に交換可能に配置」される「前記濾過ドラムの半完成品」であると訂正したこと、及び、「シール固定部材」を、「円盤部材」であって、「かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される」ものであると訂正したこととの整合を図るものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項(特に段落【0044】、【0045】、【図1】、【図4】(a)(b)(c))、若しくはそれら事項から自明な事項であることから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるとともに、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正ではない。 よって、請求項3、4、5、6についての訂正は、特許法第134条の2第1項第3号に規定する事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項ならびに同条第6項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項1についてのまとめ 以上のとおりであって、訂正事項1は適法であるから、訂正事項1の訂正を認める。 イ.訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項(特に段落【0038】?【0042】、【0044】、【0045】、【図1】?【図4】(a)(b)(c))、若しくはそれら事項から自明な事項であることから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるとともに、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正ではない。 よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項第3号に規定する事項を目的とし、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項ならびに同条第6項の規定に適合するものである。 したがって、訂正事項2は適法であるから、訂正事項2の訂正を認める。 ウ.訂正事項3について (ア)訂正の目的 訂正事項3における「すなわち、濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部と形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から形成されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とから構成されている。」との記載の追記は、訂正前の段落【0042】における「濾過ドラムの半完成品」の構成を、より明瞭に理解し得るようにするものである。 また、訂正事項3において、訂正前の同段落における「図1」、「貯留曹7」を、「図1、図2」、「貯蔵曹(貯留曹7)」とする訂正は、図1に加え図2も参照することで、貯留槽7の構造をより明瞭に理解させるものであり、貯留曹7は、請求項1における「貯蔵曹」に対応するものであることを明確化するものである。 さらに、訂正事項3において、訂正前の同段落における「・・・夫々螺合固定する。」を、「・・・夫々螺合固定することにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。」とする訂正は、「螺合固定」される対象が「右円盤部材51」と「貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3」であることを明確化するとともに、「右円盤部材51」は、「側板3の内側に固定」されるものであることを、段落【0038】、【図1】及び【図2】の記載に基づき明確化するものである。 よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ)新規事項について 訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項(特に段落【0038】?【0042】、【図1】?【図3】)、若しくはそれら事項から自明な事項である。特に、上記「・・・夫々螺合固定することにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。」ことは、上記第4.2.(1)ア.(イ)で述べたことと同様に、【図1】及び【図2】から、右円盤部材51が右側板3の内側に配置され、左円盤部材52が左側板2の内側に配置されることが看取され、この看取されること及び上記《記載a》から明らかである。 よって、請求項1についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)実質的拡張又は変更について 訂正事項3は、特許請求の範囲に記載された各発明特定事項を何ら変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (エ)訂正事項3についてのまとめ 以上のとおりであって、訂正事項3は適法であるから、訂正事項3の訂正を認める。 エ.訂正事項4について (ア)訂正の目的 訂正事項4における「予め濾過ドラムの半完成品を得た後、貯蔵曹を構成する側板の内側に円盤部材を介して装置本体内に、濾過ドラムの半完成品を着脱可能に配置したものであるから、」との記載の追記は、訂正前の段落【0047】における「予め濾過ドラムの回転部分とシール部分を組み立てること」がどのようにして可能となるかについて、段落【0038】?【0042】の記載に基づき、より明瞭に理解し得るようにするものである。 よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ)新規事項について 訂正事項4は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項(特に段落【0038】?【0042】、【図1】?【図3】)、若しくはそれら事項から自明な事項である。 よって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)実質的拡張又は変更について 訂正事項4は、特許請求の範囲に記載された各発明特定事項を何ら変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (エ)訂正事項4についてのまとめ 以上のとおりであって、訂正事項4は適法であるから、訂正事項4の訂正を認める。 オ.訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の段落【0023】における「・・・ポンプ47を介してを濾過ドラム30・・・」なる記載を、「・・・ポンプ47を介して濾過ドラム30・・・」に訂正するものである。そして、前記「・・・ポンプ47を介してを濾過ドラム30・・・」は誤記であって、正しくは「・・・ポンプ47を介して濾過ドラム30・・・」であることは明らかであるから、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。 また、訂正事項5が、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合することは明らかである。 よって、訂正事項5の訂正を認める。 (3)請求人の主張について 第3の1(1)で述べたように、請求人は、「訂正事項3の「・・・ことにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。」の追加は、新規事項である。」と主張している。(第1回口頭審理調書の請求人欄3) しかしながら、上記第4.2.(2)ウ.(イ)で述べたように、上記「・・・ことにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。」ことは、【図1】及び【図2】から看取されること及び上記《記載a》から明かであり、当業者によって願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から導かれる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、上記請求人の主張は失当である。 (4)まとめ 以上のとおり、訂正事項1ないし5の訂正は、いずれも適法であるから、本件訂正明細書のとおりの訂正を認める。 第5.本件特許発明 1.本件発明1ないし本件発明8 本件特許の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、本件特許の請求項1ないし請求項8に係る発明を、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、本件発明1は以下のように分説できる。 なお、本件発明1及びその分説について当事者間に争いはない。(第1回口頭審理調書の両当事者欄2) 《本件発明1》 A.産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、 B.前記所定液体を貯蔵する液曹と、 C.前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、 D.前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、 E.濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、 F.前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、 G.前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 HA.前記濾過ドラムの半完成品は、 H1.前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と、 H2.前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、 H3.前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、 H4.前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、 LA.前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配設したこと M.を特徴とする濾過装置。 第6.特許法第36条に係る無効理由についての判断 1.無効理由2-1 について 本件発明1において、「前記濾過ドラムの半完成品」(上記第5.1.の《本件発明1》の分説HA.を参照)という文言よりも前に、「濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラム」(上記第5.1.の《本件発明1》の分説E.を参照)いう文言が存在する。 そして、上記「前記濾過ドラムの半完成品」という文言において、「前記」は「濾過ドラム」に係る語句であると解されることを踏まえると、上記「前記濾過ドラムの半完成品」は、上記「濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラム」の「半完成品」であると解すべきであり、日本語としても成り立っている。 本件の特許請求の範囲の記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号の規定(特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した項に区分してあること。)に適合している。 したがって、無効理由2-1には、理由がない。 なお、請求人に対し、平成26年11月18日付け審理事項通知書の第6.1.(2)で、上記と同趣旨の暫定的見解を示し意見を求めたが、請求人は、平成26年12月1日付け口頭審理陳述要領書(2)及び第1回口頭審理において特に意見を述べていない。 2.無効理由2-2について (1)請求人の主な主張 無効理由2-2について、請求人は概ね以下の点を主張している。 ア.「「濾過ドラム30内の噴射管45と管体46の接続方法(どのように噴射管45と管体46を着脱可能とするのか)」は、本件発明1が「濾過ドラムを・・・交換可能に配置した」点が新規であるがゆえに特許になったというのであれば、最も重要な技術事項であるが、本件明細書と本件図面には明確にされておらず、どのように「濾過ドラムの半完成品を・・・交換可能に配置」するのかが不明瞭で、発明が不明確であり、「濾過ドラムの半完成品を・・・交換可能に配置」することについて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。(請求人・口頭審理陳述要領書第2頁第12行ないし第20行、請求人・口頭審理陳述要領書(2)第4頁第19行ないし第25行、同第10頁第21行ないし第27行) イ.「濾過ドラム30内の噴射管45と管体46の接続方法(どのように噴射管45と管体46を着脱可能とするのか)の記載なしでは「濾過ドラムの半完成品を・・・交換可能」にすることについて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。」(請求人・口頭審理陳述要領書第3頁下から第4行ないし第4頁第2行) ウ.「「ニップル」を含む各種管継手や、管継手を用いず管同士を直接接続するために切られたネジ等様々な手段が本願出願前に周知の技術的事項だとしても、濾過装置という技術分野において、特に濾過ドラムを交換する際に管同士を回転することなく交換可能に着脱する技術(本件明細書上では交換可能に着脱する管同士(噴射管45、管体46)は回転できない状態であると想定する)として、「ニップル」を含む各種管継手や、管継手を用いず管同士を直接接続するために切られたネジ等の手段が使用されることが、本願出願前に周知の技術的事項であったとは考え難い。」(請求人・口頭審理陳述要領書(2)第4頁第1行ないし第8行、同第10頁第14行ないし第18行) エ.「本件発明1のろ過ドラムの半完成品を貯蔵曹内に交換可能に配置する場合、「ニップル」やネジ等の手段だけでは交換不可能であり、特殊な管継手や、複数の継手を組み合わせで実現する特徴的な技術手段である。」(請求人・口頭審理陳述要領書(2)第4頁第13行ないし第15行、同第10頁第18行ないし第20行) オ.「濾過ドラムの半完成品を貯蔵曹内に交換可能に配置する場合、複雑な接続手段が必要であるが、本件の特許請求の範囲や明細書には、これが記載されていない。」 (第1回口頭審理調書の請求人欄6) カ.「円盤部材を軸体に固定した状態で、貯蔵曹内に挿入するのは困難である。」(第1回口頭審理調書の請求人欄6) (2)当審の判断 本件発明における「濾過ドラムの半完成品を・・・交換可能に配置」について、本件訂正後の明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載からからみて、本件発明の実施例における濾過ドラム30内の噴射管45と管体46とは、接続状態と非接続状態の双方が実現可能な何らかの手段を使って接続されるべきであることは自明である。 一方、2つの管同士を接続する手段として、例えば、ゴムホース等のゴム管による管継手は、管同士を回転することなく接続できる手段として、当業者でなくとも直ちに想定し得る他、上記「ニップル」を含む各種管継手や、管継手を用いず管同士を直接接続するために切られたネジ等様々な手段が周知かつ汎用の技術的事項である。 さらに、濾過装置という技術分野においても、2つの管同士を接続する手段として各種管継手やニップル等を使用することが、例えば、実願平1-76076号(実開平3-15610号)のマイクロフィルム(継手管4aやエルボ5a等を参照)、実願平2-15253号(実開平3-105905号)のマイクロフィルム(継手管50等を参照)、特開平4-250884号公報(ニップル29等を参照)、特開平4-18901号公報(ニップル9、20、23、30等を参照)にも記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。 以上を踏まえると、本件明細書に接した当業者は、上記周知の技術的事項を適宜選択することで、本件特許発明を実施し得ることが明らかである。 上記請求人の主張ア.ないしオ.はいずれも失当であり、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものであり、また、本件の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載した項に区分されている。 すなわち、本件の明細書及び特許請求の範囲の記載は、平成6年改正前特許法第36条第4項及び第5項第2号の規定に適合している。 したがって、無効理由2-2には、理由がない。 なお、請求人は、上記カ.に示すように「円盤部材を軸体に固定した状態で、貯蔵曹内に挿入するのは困難である。」と主張している。 しかしながら、本件特許の願書に添付された【図4】の(a)に示される実施例のように、濾過ドラム30が貯留曹7を構成する右側板3に対して片支持状態で固定されるものの場合は、濾過ドラム30と左側板2との間の空間を確保することにより、円盤部材(右円盤部材51)を軸体に固定した状態で、容易に貯留曹7(貯蔵曹)内に挿入することが可能である。 また、具体的な機械の設計時には、各部材の材質、弾性率、熱膨張率等を考慮して寸法公差を設定して設計を行うことが技術常識であるから、当業者であれば、交換可能に配置されるべき濾過ドラム30と左右側板2、3との間に、少なくとも交換時にはある程度の隙間を確保できるように設計することが当然である。 さらに、本件明細書の段落【0038】及び【図1】、【図2】にも記載されているように、濾過ドラム30は右側板3に対して、弾性板部材であるラバーシート33を介して着脱可能に固定されており、前記ラバーシート33が、前記ある程度の隙間を埋めかつ水密性を担保するという機能を有することは当業者に自明である。 したがって、本件特許の願書に添付された【図1】、【図2】及び【図4】の(b)、(c)に示される実施例のように、濾過ドラム30が貯留曹7を構成する左右側板2、3に対して両支持状態で固定されるものの場合であっても、円盤部材(右円盤部材51)を軸体に固定した状態で、貯留曹7(貯蔵曹)内に挿入することが不可能になるとはいえない。 以上のとおりであるから、上記主張カ.も失当というべきである。 3.無効理由2-3について (1)請求人の主な主張 無効理由2-3について、請求人は概ね以下の点を主張している。 ア.「訂正の請求した訂正事項1の本件の特許請求の範囲の請求項1には、「半完成品」と記載されているが、拒絶理由通知書(発送日 平成10年01月27日、起案日 平成10年01月20日)の[理由1]に「「濾過装置」という物の発明において、「前記濾過ドラムを・・・とから組み立てられる半完成品としてから、・・・に配設することを特徴とする」と記載され、技術的手段が方法的に表現されており、物を特定することができない。よって本件請求項1は特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない。」として拒絶され、・・・。その後の補正書では、<補正等の示唆>とほぼ同様の内容で、方法的に表現された「半完成品」という記載を削除したのにもかかわらず、今回の訂正で再度「半完成品」という記載を追加するのは、前記拒絶理由通知書(発送日 平成10年01月27日、起案日 平成10年01月20日)に反する(出願経過参酌の原則に反する)ものであり」(請求人・口頭審理陳述要領書第4頁第10行ないし第31行) イ.「まず、審査経過では、方法的な記載であるとの拒絶理由が発せられていることと、「半完成品」の語が不明確であるとして、これを削除して特許になったことは前述した。・・・次に、本件発明1において、構成要件Kでは「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定されるシール固定部材と」と記載され、前記シール固定部材は、(丸1)(審決注:丸数字は、(丸1)等と表記する。)軸体に挿通したのち、(丸2)軸体に固定される、という(丸1)、(丸2)の順序で記載され、技術的手段が方法的に表現されている。また、本件発明1において、(丸3)「前記濾過ドラムが、・・・シール固定部材とからなり」、「(丸4)前記シール固定部材を固定することで、(丸5)前記濾過ドラムを前記貯蔵曹内に交換可能に配設した」との記載は、(丸3)を構成する濾過ドラムに対して、(丸4)にて濾過ドラムの一部材であるシール固定部材を貯蔵曹内に固定し、(丸5)にて濾過ドラムを貯蔵曹内に交換する、という、(丸3)、(丸4)、(丸5)の順序で記載され、技術的手段が方法的に表現されている。」(請求人・口頭審理陳述要領書第9頁下から第6行ないし第10頁第8行) ウ.「「貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹に交換可能に配設した」は、「円盤部材」の具備する機能であると記載されているが、円盤部材を固定することだけで濾過ドラムの半完成品を交換可能に配置することはできない。円盤部材を固定し、軸体を管体46に特徴的な技術手段によって固定することで交換可能に配置できるものである。」(請求人・口頭審理陳述要領書(2)第11頁第1行ないし第5行) エ.「そして、特許請求の範囲の記載も、明細書においても、本件特許の特徴である濾過ドラムの貯蔵槽への取り付け方の記載の誤記や矛盾が解消されていない。誤字脱字や日本語としての不成立が解消していないことはここでは省略するが(取り付け方に影響するボルトの符号等の誤りも解消されていないが、ここでは省略する。)、例えば、本件特許が濾過ドラムの貯蔵槽への取り付け方に特徴があるのであれば、濾過ドラムを横方向から貯蔵槽に取り付けるのか、或いは、濾過ドラムを上方から下方に向かって取り付けるのかも明らかではなく、また、片持ちの場合と(請求項3)、両持ちの場合(請求項4)と、左右両端持ちの場合(請求項5)とで、各々取り付け方に相違があるはずであるが(特徴があるはずであり、同じとは考えられない。)、本件特許が濾過ドラムの貯蔵槽への取り付け方に特徴があるのであれば、それを明確にする必要があるにもかかわらず、例えば明細書では片持ちの場合の説明のように思われるが、図1?図3は両持ちになっている。また、図1?図3の軸体の先端側には、ニップルではない部材が使用されている。よって、新規性のない物クレームとしての構成要件のままになっている。」(下線は当審にて付与。)(請求人・口頭審理陳述要領書(2)第11頁第6行ないし第20行) (2)当審の判断 まず、本件特許に至る経緯に関する主張(上記第6.3.(1)での請求人の主張ア.及びイ.)について検討する。 審査段階の拒絶理由(平成10年1月20日付け)によれば、「前記濾過ドラムを、・・・軸体と、・・・ドラム基部と、・・・シール手段と、・・・シール固定部材とから組み立てられる半完成品としてから、・・・配設することを特徴とする」(下線は当審にて付与。)との記載が、「技術的手段が方法的に表現されており、物を特定することができない」から36条5項2号及び6項違反と判断されたのであって、「半完成品」という語句自体が問題となったのではないと解される。 一方、本件発明1における「前記濾過ドラムの半完成品は、・・・軸体と、・・・ドラム基部と、・・・シール手段と、・・・かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり」との記載は、「濾過ドラムの半完成品」が、「軸体」、「ドラム基部」、「シール手段」、「円盤部材」といった部材から構成されることを特定するものである。 また、本件発明1における「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材」との記載は、「円盤部材」が「シール手段を固定する」という機能と「側板の内側に着脱可能に配置される」という機能とを有し、また、このような機能を有する「円盤部材」と「シール手段」、「軸体」及び「貯蔵曹を構成する側板」との接続状態を特定する記載であると解されるから、前記記載は「濾過装置」という物の発明の構成を不明確にする記載ではない。 さらに、本件発明1における「前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配設した」との記載についても、「濾過ドラムの半完成品」の具備する機能及び「濾過ドラムの半完成品」と「貯蔵曹」との接続状態を特定する記載であり、「濾過装置」という物の発明の構成を不明確にする記載ではない。 以上を踏まえると、「前記濾過ドラムの半完成品は、・・・軸体と、・・・ドラム基部と、・・・シール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配設した」という記載は、技術的手段を手順で方法的に特定しようとする記載ではなく、また、「濾過装置」という物の発明の構成を不明確にする記載でもない。 したがって、上記第6.3.(1)での請求人の主張ア.及びイ.は、失当である。 次に、特徴的な技術手段に関する主張(上記第6.3.(1)での請求人の主張ウ.)について検討する。 「円盤部材を固定することだけで濾過ドラムの半完成品を交換可能に配置することはできない。円盤部材を固定し、軸体を管体46に特徴的な技術手段によって固定することで交換可能に配置できるものである。」との主張は、本件発明1が方法的に記載されており、物を特定することができないとの主張とは別種の主張であるが、上記第6.2.(2)で述べたとおり、上記「特徴的な技術手段」とされていることは、適宜選択可能な周知の技術的事項にすぎず、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものである。 したがって、上記第6.3.(1)での請求人の主張ウ.も、失当である。 次に、取り付け方に関する主張(上記第6.3.(1)での請求人の主張エ.)について検討する。 請求人の主張は、下線箇所から明らかなように、本件特許が濾過ドラムの貯蔵槽への取り付け方に特徴があるということを前提になされている。 しかしながら、本願は、審査段階で指摘された「技術的手段が方法的に表現されており、物を特定することができない」との拒絶理由(平成10年1月20日付け)を、その後の補正により解消することで特許されたものであり、濾過ドラムの貯蔵槽への取り付け方に特徴があるという理由で特許されたものではない。 また、仮に、本件特許の特許請求の範囲や明細書に誤記等が存在するとしても、それらが誤記等であると当業者が判断できるのであるから、前記誤記等の存在が、特許法第36条第4項及び第5項各号に規定する要件を満たさないことの理由にはならない。 したがって、上記第6.3.(1)での請求人の主張エ.は、その前提を欠く主張であり、失当である。 そして、本件の特許請求の範囲の記載は、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号の規定に適合している。 以上のとおりであるから、無効理由2-3には、理由がない。 第7.特許法第29条に係る無効理由(無効理由1)についての判断 1.甲第1号証の記載事項及び甲1記載発明 本願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下が記載されている。 なお、原文摘記箇所に続く()内の文章は、甲第16号証(甲第1号証の和訳文)から、前記原文摘記箇所に対応する記載を摘記し、当審にて作成した和訳である。 (1)「For purposes of illustration, the invention has been shown as embodied in apparatus 10 for filtering dirty liquid and for producing a flow of clean liquid. The liquid may, for example, be machine tool coolant which is contaminated with metallic chips and particles.」《第2欄第4行ないし第8行》 (この発明は、汚濁液を濾過し、クリーンな液体の流れを形成するための装置10として具現化されている。前記液は、例えば、金属性チップや粒子で汚染された工作機械クーラントであってもよい。) (2)「The filtering apparatus 10 includes a dirty coolant reservoir 12 defined in part by a bottom wall 13 (FIG. 3) and by a pair of laterally spaced side walls 14 and 15 and containing a pool 16 of dirty coolant, the latter entering the reservoir by way of an inlet 17 (FIGS. 1 and 2). A filter drum 20 is located between the side walls 14 and 15 and is partially immersed in the pool 16 of dirty coolant. The drum includes a pair of generally cylindrical and laterally spaced end walls 21 and 22 disposed in spaced opposing relation with the reservoir walls 14 and 15, respectively, and further includes a tubular filter element 25 extending between the end walls 21 and 22 adjacent the outer peripheries thereof. Herein, the filter element is a fine screen mesh belt.」《第2欄第9行ないし第22行》 (濾過装置10は汚濁液貯蔵槽12を備え、汚濁液貯蔵槽12は底壁13(図3)、左右に離間した一対の側壁14、15で形成され、汚濁液のプール16を含み、注入口17経由で汚濁液貯蔵槽に投入される(図1、図2)。濾過ドラム20は、側壁14、15の間に位置し、汚濁液のプール16に一部浸されている。前記ドラムは、一般的には円筒形で左右に離間した端壁21、22を含み、前記端壁21、22は貯蔵槽の側壁14、15に対して各々離間対面配置され、さらに管状の濾過部材25(端壁21、22の間に伸長し、その外周に隣接している)を含む。ここで、前記濾過部材は微細目スクリーンベルトである。) (3)「The drum 20 is adapted to be rotated within the reservoir 12 and, in this particular instance, the rotation is effected by a pair of laterally spaced chains 28 operably engaged with the outside of the drum and with a pair of drive sprockets 30. A shaft 31 supports the sprockets and is adapted to be rotated by a motor 32 acting through a speed reducer 33.」《第2欄第23行ないし第29行》 (濾過ドラム20は、汚濁液貯蔵槽12内で回転し、具体的にはこの場合、その回転は左右に離間した1対のチェーン28の作用により行われ、当該チェーン28は濾過ドラムの外側と1対のドライブスプロケット30に作動可能に係合されている。軸31は前記スプロケットを支持し、減速機33を介して駆動するモータ32によって回転するように構成されている。) (4)「Heavy chips in dirty coolant entering the inlet 17 settle to the bottom 13 of the reservoir 12 and are carried upwardly by drag bars 34 (FIGS. 1 and 2) which span the chains 28. Such chips are discharged through an opening 35 (FIG. 2) and are dumped into a hand cart 36 which may be periodically dumped. Lighter chips and fine particles in the dirty pool 16 are filtered by the belt 25 as the coolant passes upwardly through the belt and into the interior of the drum 20. Clean coolant which is filtered by the belt 25 flows axially out of one end of the drum and collects as a pool 38 in a clean coolant tank 40. A pump 41 (FIG. 2) in the tank 40 delivers the clean coolant to machine tools or other utilization devices by way of a pipe 42.」《第2欄第30行ないし第43行》 (注入口17に投入された汚濁液中の重い屑は貯蔵槽12の底13に沈み、チェーン28に架かるドラッグバー34(図1、図2)によって、上方へ運ばれる。前記屑は、開口部35を通って排出され、おそらく定期的に破棄されるハンドカート36へ投棄される。前記汚濁液のプール16内のより軽い屑や細かい粒子は、クーラントが前記濾過ベルトを介して上方に移動し、前記濾過ドラム20の内部へ流入することにより、濾過ベルト25によって濾過される。前記濾過ベルト25によって濾過されたクリーンなクーラントは、ドラムの片端から軸方向に流出し、クリーンクーラントタンク40内のプール38として集められる。クーラントタンク40内のポンプ41(図2)は、クリーンなクーラントを、パイプ42を経由して工作機械、もしくは他の利用装置に供給する。) (5)「Part of the clean coolant is pumped to spray nozzles 45 located inside of the drum 20 and directed toward the inner face of the filter belt 25. As the drum rotates, the clean coolant from the nozzles 45 continuously backwashes the belt to flush filtered out particles therefrom. Such particles accumulate on the bottom wall 13 of the reservoir 12 and are carried away by the drag bars 34 in the form of sludge.」《第2欄第44行ないし第51行》 (クリーンなクーラントの一部は、スプレーノズル45(ドラム20の内部に設けられ、濾過ベルト25の内側へ向けられている)へ汲み上げられる。前記ドラムが回転している間、前記ノズル45からのクリーンなクーラントは、濾過された粒子をその箇所から洗い流すため、連続的に前記ベルトを逆洗浄する。そのような粒子は前記汚濁液貯蔵槽12の前記底壁13に溜まり、前記ドラッグバー34によって泥形状で搬出される。) (6)「According to the present invention, the drum 20 is supported in the reservoir 12 in a simpler and more reliable manner than has been the case with prior filter apparatus of the same general type. Moreover, the drum 20 is supported in such a fashion that clean coolant for backwashing the filter belt 25 may be supplied to the spray nozzles 45 without need of a pipe dedicated solely for that purpose.」《第2欄第52行ないし第59行》 (本発明によれば、同じ汎用タイプの従来の濾過装置の場合よりも、簡易的かつ確実な方法で、前記濾過ドラム20は前記汚濁液貯蔵槽12内に支持される。さらに、前記濾過ドラム20は、前記濾過ベルト25を逆洗浄するためのクリーンクーラントをそのための専用の管を設けずに前記スプレーノズル45へ供給するやり方によって支持される。) (7)「More specifically, the foregoing is achieved by journaling the drum 20 for rotation on an elongated shaft-like member which preferably is in the form of a hollow pipe 50. As shown most clearly in FIG. 3, the pipe 50 extends laterally between the side walls 14 and 15 of the reservoir 12. One end portion of the pipe is supported solidly and non-rotationally by a reinforcing collar 51 welded to the inner face of the side wall 14. The other end portion of the pipe is similarly supported by a reinforcing collar 52 on the inner face of a plate 15A detachably secured to the side wall 15 and covering a relatively large opening therein. A locking screw 53 extends through the collar 52 and engages the pipe to insure against endwise movement of the pipe.」《第2欄第60行ないし第3欄第5行》 (具体的には、細長い軸状部材(好ましくは中空の管50の形状)によってドラム20を回転のために軸支することで、上述の構造は達成できる。図3に明確に示すように、管50(軸体)は汚濁液貯蔵槽12の側壁14、15間を側方にのびる。前記管(軸体)の一端部は側壁14の内面に溶接された補強用カラー51によって強固に非回転状態(不動状態)で支えられている。管(軸体)の他端部は同様に、側板15A(側壁15に着脱可能に固定され、そして比較的大きな開口をカバーしている)の内面に補強用カラー52によって支えられている。ロッキングスクリュー53は前記カラー52内に伸長しており、前記管(軸体)の縦方向の動きを防ぐため、管(軸体)と係合している。) (8)「In carrying out the invention, the drum 20 is journaled on the rotationally stationary pipe 50 by bearings 55 and 56 (FIG. 3). The bearing 55 is located between the pipe and a hub 57 on the inboard face of the end wall 21 of the drum, that end wall being a non-perforated member except for the opening to accommodate the pipe. The opposite end wall 22, however, is in the form of a spider and includes a central hub 58 (FIG. 1), four angularly spaced spokes 59 radiating outwardly from the hub, and an outer rim 60 extending circumferentially around the outer end portions of the spokes. The bearing 56 is located between the pipe 50 and the hub 58 so as to journal the end wall 22 on the pipe.」《第3欄第6行ないし第3欄第18行》 (本発明の実施の形態において、ドラム20は、固定された管50(軸体)にベアリング55、56によって回転状態で軸支される。前記ベアリング55は前記管(軸体)と前記濾過ドラムの端壁21の内面に取り付けられたハブ57の間に設けられ、前記端壁は前記管(軸体)を収容するための開口を除き、孔のない部材である。しかし、他端壁22は放射軸状の形状であり、中心部のハブ58(図1)、角度方向に間隔が設けられ前記ハブから外方に向かって放射状に延びる4つのスポーク59、前記スポークの外端部の全周に延在する外側リム60を有する。前記ベアリング56は前記管(軸体)によって前記端壁22を軸支するために、前記管50(軸体)と前記ハブ58の間に設けられる。) (9)「By virtue of the spokes 59, four angularly spaced outlet openings 62 (FIGS. 1 and 2) are formed in the end wall 22. Such openings permit filtered coolant in the drum 20 to be discharged axially out of the drum through the end wall 22. The outlet openings 62 communicate with an outlet opening 63 (FIG. 3) in the plate 15A of the side wall 15 of the reservoir 12 and located just above the clean coolant tank 40. As a result, filtered coolant spills out of the drum and into the tank 40 via the outlet openings 62 and 63.」《第3欄第19行ないし第3欄第28行》 (スポーク59によって、角度方向に間隔を空けた4つの出口開口62(図1、図2)が端壁22に形成される。前記開口はドラム内の濾過されたクーラントが前記端壁22を通ってドラムから軸方向に排出されることを可能とする。前記出口開口62は、貯蔵槽12の側壁15の側板15Aに設けられた出口開口63に通じており、クーラントタンク40の真上に位置する。その結果、濾過されたクーラントは出口開口62、63を経由してドラムからタンク40に吐出される。) (10)「Means are provided for sealing the end wall 22 of the drum 20 to the removable side plate 15A of the reservoir 12 radially outwardly of the outlet openings 62 in order to prevent dirty coolant in the pool 16 from entering the drum via the outlet openings and to prevent filtered coolant discharged through the outlet openings from spilling into the dirty pool. Herein, these means comprise a relatively large circular sleeve 65 (FIG. 3) fixed to and projecting inwardly from the inboard face of the side plate 15A of the reservoir 12. An annular sealing gasket 66 is fixed to the outer periphery of the sleeve 65 radially outwardly of the outlet openings 62 and presses resiliently against the rim 60 of the end wall 22 so as to establish a seal which prevents coolant from flowing between the dirty pool 16 and the outlet openings 62.」《第3欄第29行ないし第3欄第44行》 (ドラム20の端壁22をシールするための手段は、プール16の汚濁液が出口開口を介してドラム内に入り込むこと、そして出口開口を経由して排出された濾過されたクーラントが汚濁プール内に漏れ出すことを防ぐために、出口開口62の半径方向外方で、貯蔵槽12の着脱可能な側板15Aに設けられる。ここで、それらの手段は貯蔵槽12の側板15Aの内面に固着され、かつ内面から内向きに突出している比較的大きな円形のスリーブ65(図3)を含む。環状のシーリングガスケット66は、出口開口62の半径方向外方で前記スリーブ65の外周に固着され、そして、前記端壁22のリム60に対して弾性的に圧接し、そのように構成することで、汚濁プール16と前記出口開口62の間のクーラントの流入出を防ぐシール構造を確立できる。) (11)「Advantageously, the pipe 50 which supports the drum 20 communicates with the clean coolant pipe 42 from the pump 41 by way of pipes 70 and 71. As a result, part of the clean coolant from the tank 40 is pumped into the pipe 50. The spray nozzles 45 are connected to and communicate with the pipe 50 by means of pipes 73. Thus, coolant which is pumped into the pipe 50 is discharged out of the spray nozzles 45 and serves to backwash the filter belt 25.」《第3欄第45行ないし第3欄第53行》 (さらに前記濾過ドラム20を支持する前記管50(軸体)は、管70、71を経由しポンプ41からクリーンクーラント管42と連通している。その結果、前記クーラントタンク40からのクリーンなクーラントの一部は管50(軸体)内に汲み上げられる。スプレーノズル45はパイプ73経由で管50(軸体)と接続、連通されている。従って、管50(軸体)内に汲み上げられたクーラントはスプレーノズル45から排出され、濾過ベルト25を逆洗浄するのに役に立つ。) 上記の記載事項(1)ないし(11)を、FIG.1ないしFIG.3を参照しつつ、本件発明1に照らして整理すると、甲第1号証及には次の発明(以下、「甲1記載発明」という。)が記載されている。 《甲1記載発明》 a.金属チップや粒子で汚染された汚濁液から前記粒子等を濾過したクリーンな液体を工作機械、もしくは他の利用装置に供給する濾過装置10において、 b.クリーンな液体を貯蔵するクリーンクーラントタンク40と、 c.汚濁液を貯蔵する汚濁液貯蔵槽12と、 d.前記汚濁液貯蔵槽12内で回転されるとともに外周面に濾過部材25を備え、 e.濾過後の前記クリーンな液体を前記クリーンクーラントタンク40中に端壁22の出口開口62を介して流出する濾過ドラム20と、 f.前記濾過部材25を洗浄するスプレーノズル45と、 g.前記汚濁液の注入口17から下流側にかけて汚濁液中の重い屑を連続的に搬送して、開口部35から落下させるドラッグバー34と、を具備した回転式濾過ドラム付き濾過装置であって、 ha.前記濾過ドラム20は、 h1.前記汚濁液貯蔵槽12内において非回転状態で強固に固定される管50と、 h2.回転可能に軸支されるとともに前記濾過部材25を備えた外周面と前記端壁22の出口開口62とを備え、 l1.前記端壁22の出口開口62の周囲縁部に弾性的に圧接する環状のシーリングガスケット66と、 l2.前記環状のシーリングガスケット66を比較的大きな円形のスリーブ65を介して固定するとともに、前記管50に挿通した後に前記管50に補強用カラー52及びロッキングスクリュー53を用いて固定される、取り外し可能な側板15Aとを備え、 l3.前記側板15Aを、汚濁液貯蔵槽12の側板15の外側に取り付けた、 m.回転式濾過ドラム付き濾過装置。 なお、甲1記載発明の認定について当事者間に争いはない。(第1回口頭審理調書の両当事者欄3) 2.甲第2号証ないし甲第11号証及び甲第17号証ないし甲第20号証の記載事項 本願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証ないし甲第11号証及び甲第17号証ないし甲第20号証には、以下の事項が記載されている。 (1)甲第2号証 回転ドラム型固液分離装置において、シールプレート22(シール手段)を固定する第2の環状取付板27(円盤部材)を予め中空軸3(軸体)に挿通していて、回転ドラム1を濾過槽2(貯蔵曹)に組立てた後に、前記濾過槽2を構成する側板の内側に着脱可能に配置する技術(段落【0015】、【0020】、【0029】、【0032】、【0034】、【図1】及び【図2】を参照) (2)甲第3号証 ア.固形物を含む液体が開口部(opening 42)を通じて排出される濾過ドラム(drum 24)の側面に、環状のシール手段(annular seal 55)を設ける技術(第9欄第6行ないし第10行及びFig.5.を参照) イ.濾過ドラムの外周面に、液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上固形物沈降手段(wiper 47)を設ける技術(第7欄第62行ないし第8欄第20行及びFig.4.を参照) (3)甲第4号証 ア.クーラント濾過装置において、ベアリング54、56からの油漏れを防ぐオイルシール69を固定する外周円筒部材53のフランジ48を、処理槽18(貯蔵曹)を構成する第2側壁44(側壁)の内側に配置する技術(段落【0012】及び【図2】を参照) イ.ドラムフィルタ22(濾過ドラム)を処理槽18(貯蔵曹)内において片支持状態で固定する技術(【請求項1】、段落【0011】、【0016】、【図2】を参照) (4)甲第5号証 クリーンクーラント液C_(2)が流通口10(開口部)を通じて排出される濾過ドラムDの側面に、平リング状のシール材21(シール手段)を設ける技術(段落【0008】、【0009】、【図2】及び【図3】を参照) (5)甲第6号証 回転ドラム3(濾過ドラム)の外表面に、濾過能力の異なるネット60(濾過手段)を設ける技術(段落【0034】及び【図3】を参照) (6)甲第7号証 回転ドラム3(濾過ドラム)の外周面に、液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上切粉掬上板5(浮上固形物沈降手段)を設ける技術(明細書の実用新案登録請求の範囲、第3頁第10行ないし第20行、第7頁第4行ないし第12行、第12頁第1行ないし第8行、第1図ないし第3図を参照) (7)甲第8号証 側板21、大口径環状側板である側板22、太めの丸形棒25a・・・nを頂面に固定した掛け渡し棒24a・・・n、及び、太めの丸形棒27a・・・nを頂面に固定した環状リブ26a・・・nから形成される骨核体29に濾布28を帳設することで構成される回転濾過ドラム30を、投入槽8の一方の側板に前記回転濾過ドラム30の流出口23をのぞませて配置すること、すなわち、外周面と側面開口部とを形成した骨核体29(ドラム基部)と濾布28(濾過手段)とからなる回転濾過ドラム30(濾過ドラム)を一体のものとして扱い、投入槽8(貯蔵曹)内に配置する技術(段落【0014】ないし【0019】、【図1】、【図4】を参照) (8)甲第9号証 軸パイプ7(軸体)、スクリーンドラム6(ドラム基部)、軸受フレーム3、3aを一体のものとして扱い、前記軸受フレーム3、3aを側壁2、2a内に固定することで交換可能に配置する技術(明細書第4頁第2行?第5頁第17行、第7頁第9行?第13行、第8頁4行?14行、第1図、第2図を参照) (9)甲第10号証 ろ過ドラム装置Dを構成しているドラム軸24(軸体)、ドラム本体29及びろ材31からなるドラム25、前記ドラム25の一方の側面を閉塞する盲板26、前記ドラム25の他方の側面に取り付けられる外リング体27、スポーク部材28、内リング体32、軸受ユニット33、前記外リング体27に取り付けられるリング状のシール材34(シール手段)を一体のものとして扱い、ダーティータンクT_(1)内に交換可能に配置する技術(【請求項1】、段落【0008】、【0010】、【図3】を参照) (10)甲第11号証 固定軸16(軸体)、ろ過ドラムDを構成する円筒状に形成された多孔板6、閉塞板8及びリング板11、前記リング板11に取り付けられるリング状のシール材22(シール手段)、軸受け9a及び9bを一体のものとして扱い、ダーティータンクT_(1)内に交換可能に配置する技術(【請求項1】、段落【0003】、【0007】、【0008】、【0012】、【図2】を参照) (11)甲第17号証 濾過ドラム2の背面周縁(側面開口部の環状縁部)に密接して水密にするためのシール部材13(シール手段)が取り付けられた枠体12(シール手段の固定手段)を、槽1の背面側内壁(貯蔵曹を構成する側板の内側)に配置する技術(第4欄第11行ないし第26行、第1図を参照) (12)甲第18号証 ろ過ドラムを備えたろ過装置の技術分野において、ろ過装置そのものを小型化するという要請があったこと(段落【0013】) (13)甲第19号証 回転ドラム式濾過装置において、回転ドラム(3)(濾過ドラム)の両端部の開口端部と、液槽(1)(貯蔵曹)との間における原水Wのシールをシールリング(10)と協働して果たす筒状シール受け(11)を前記液槽(1)(貯蔵曹)を構成する側壁の外側に配置する技術(第9欄第15行ないし第18行、第11欄第30行ないし第37行、第2図を参照) (14)甲第20号証 回転ドラム式濾過装置において、回転ドラム(1)(濾過ドラム)の両端部の開口端部と、給水堰(4)(5)(貯蔵曹)との間における原水Wのシールをシールリング(11)と協働して果たす筒状シール受け(12)(13)を前記給水堰(4)(5)(貯蔵曹)を構成する側壁の内側に配置する技術(第6欄第35行ないし第44行、第7欄第47行ないし第8欄第6行、第1図、第3図を参照) 3.本件発明1と甲1記載発明との対比 甲1記載発明における「金属チップや粒子」、「クリーンな液体」、「工作機械、もしくは他の利用装置に供給する」は、各々、本件発明1における「所定固形物」、「所定液体」、「再利用する」に相当する。 ここで、甲1記載発明における「金属チップや粒子で汚染された汚濁液」は「金属チップや粒子」と「クリーンな液体」とが混在する状態になったものであることが明らかであり、また、第7.1.(1)の記載事項から、前記「金属チップや粒子で汚染された汚濁液」は「工作機械のクーラントであってもよい」とされていることを踏まえると、甲1記載発明における「金属チップや粒子で汚染された汚濁液から前記粒子等を濾過したクリーンな液体を工作機械、もしくは他の利用装置に供給する濾過装置10において」は、本件発明1における「産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において」に相当する。 また、甲1記載発明における「クリーンな液体を貯蔵するクリーンクーラントタンク40」は、本件発明1における「前記所定液体を貯蔵する液曹」に相当する。 甲1記載発明における「汚濁液貯蔵槽12」、「濾過部材25」、「端壁22の出口開口62」、「濾過ドラム20」、「スプレーノズル45」は、各々、本件発明1における「貯蔵曹」、「濾過手段」、「側面開口部」、「濾過ドラム」、「噴射手段」に相当する。 ここで、甲1記載発明における「汚濁液貯蔵槽12」に貯蔵される「汚濁液」は、随時入れ替わっていくことが明らかであることを踏まえると、甲1記載発明における「汚濁液を貯蔵する汚濁液貯蔵槽12」は、本件発明1における「前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹」に相当する。 また、甲1記載発明における「前記汚濁液貯蔵槽12内で回転されるとともに外周面に濾過部材25を備え」、「濾過後の前記クリーンな液体を前記クリーンクーラントタンク40中に端壁22の出口開口62を介して流出する濾過ドラム20」、「前記濾過部材25を洗浄するスプレーノズル45」は、各々、本件発明1における「前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え」、「濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラム」、「前記濾過手段を洗浄する噴射手段」に相当する。 甲1記載発明における「注入口17」、「開口部35」、「ドラッグバー34」は、各々、本件発明1における「投入口」、「排出口」、「掬上手段」に相当する。 ここで、第7.1.(1)及び(4)の記載事項から、甲1記載発明における「汚濁液中の重い屑」は、「金属チップや粒子」に含まれるものであることが明らかであるから、甲1記載発明における「前記汚濁液の注入口17から下流側にかけて汚濁液中の重い屑を連続的に搬送して、開口部35から落下させるドラッグバー34と、を具備した回転式濾過ドラム付き濾過装置」は、本件発明1における「前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置」に相当する。 甲1記載発明における「非回転状態で強固に固定される」、「管50」は、本件発明1における「不動状態で固定される」、「軸体」に各々相当するから、甲1記載発明における「前記汚濁液貯蔵槽12内において非回転状態で強固に固定される管50」は、本件発明1における「前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体」に相当する。 甲1記載発明における「回転可能に軸支されるとともに前記濾過部材25を備えた外周面と前記端壁22の出口開口62とを備え」は、本件発明1における「前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成した」に相当し、本件発明1における「ドラム基部」は、前記「前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成した」ものの名称であると解されることを踏まえると、甲1記載発明における「回転可能に軸支されるとともに前記濾過部材25を備えた外周面と前記端壁22の出口開口62とを備え」は、本件発明1における「前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部」に相当する。 甲1記載発明における「前記端壁22の出口開口62の周囲縁部」は、第7.1.(9)の記載事項及びFIG.1並びにFIG.2から環状であると解され、また、甲1記載発明における「弾性的に圧接するシーリングガスケット66」は、第7.1.(10)の記載事項から、「シーリングガスケット66」が弾性部材から形成され得るものであり、その機能として「汚濁プール16と前記出口開口62の間のクーラントの流入出を防ぐシール構造を確立すること」、すなわち、液密状態でシールすることが求められていることが明らかである。 ゆえに、甲1記載発明における「前記端壁22の出口開口62の周囲縁部に弾性的に圧接する環状のシーリングガスケット66」は、本件発明1における「前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段」に相当する。 甲1記載発明における「側板15A」は、前記シール手段を固定する「固定手段」である限りにおいて、本件発明1の「円盤部材」に相当する。 したがって、甲1記載発明における「前記環状のシーリングガスケット66を比較的大きな円形のスリーブ65を介して固定するとともに、前記管50に挿通した後に前記管50に補強用カラー52及びロッキングスクリュー53を用いて固定される、取り外し可能な側板15Aとを備え」は、 「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能に配置される固定部材とを備え、前記貯蔵曹に前記固定部材を固定する」という限りにおいて、 本件発明における「前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定する」に相当する。 一方、甲第1号証には、「濾過ドラム20、シーリングガスケット66及び側板15A」を一体のものとして取り扱うことや、「側板15A」を「汚濁液貯蔵槽12の側板15の外側」に取り付けることにより、「濾過ドラム20、シーリングガスケット66及び側板15A」を一体のものとして交換可能に配設したとの記載はない。 以上を踏まえると、本件発明1と甲1記載発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 《一致点》 産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、 前記所定液体を貯蔵する液曹と、 前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、 前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、 濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、 前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、 前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記貯蔵曹内において不動状態で固定される軸体と、 前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、 前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、 前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能に配置される固定部材とを備え、 前記貯蔵曹に前記固定部材を固定する 濾過装置。 《相違点》 (1)相違点1 本件発明1は、貯蔵曹に対して「円盤部材」(固定手段)を固定することで、「濾過ドラムの半完成品」を前記貯蔵曹内に交換可能に配設したものであるのに対し、 甲1記載発明は、汚濁液貯蔵槽12に対して「側板15A」(固定手段)を固定するものの、「濾過ドラム20、シーリングガスケット66及び側板15A」を一体のものとして前記汚濁液貯蔵槽12内に交換可能に配設したとは特定されていない点 (2)相違点2 「固定手段」が、本件発明1では、貯蔵曹の側板の「内側に配置される」「円盤部材」であるのに対し、甲1記載発明では、汚濁液貯蔵槽12の側板の「外側に配置され」、その形状の特定がなされていない「側板15A」である点 なお、本件発明1と甲1記載発明との対比について当事者間に争いはない。(第1回口頭審理調書の両当事者欄4) 4.本件発明1と甲1記載発明との相違点の検討 (1)相違点1について 本件発明1における「濾過ドラムの半完成品」とは、「軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに外周面と側面開口部とを形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能な円盤部材」(下線は当審にて付与)とを「一体としたもの」であるといえる。 一方、甲第8号証ないし甲第11号証に記載された事項からみて、濾過ドラムを構成する複数の部材を一体としたものとして、貯蔵曹内に交換可能に配置することは、本願の出願前の周知技術であったと解される。 しかしながら、「軸体」と「ドラム基部」とからなる「濾過ドラム」のみならず、さらに、「シール手段」と「シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能な円盤部材」とを「一体としたもの」すなわち「濾過ドラムの半完成品」とすることは、甲第8号証ないし甲第11号証やその余の各甲号証に記載も示唆もされていない。 これに関し、請求人も、「ドラムの側面を、貯蔵曹の側壁の一部となる側板との間でシールした半完成品の状態で、貯蔵曹の側壁に着脱可能に配置することは、甲第8号証ないし甲第11号証には記載されていない。」と述べている。(第1回口頭審理調書の請求人欄4を参照) さらに、前記「一体としたもの」を構成する部材として、「シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板に着脱可能に配置される円盤部材」を選択することは、当業者であれば容易に想到し得るとすべき事由もない。 したがって、甲1記載発明において、「濾過ドラム20、シーリングガスケット66及び側板15A」を一体のものとした「半完成品」を前記汚濁液貯蔵槽12内に交換可能に配設することで、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。 (2)相違点2について 甲第1号証には、側板15A(固定手段)の配置を汚濁液貯蔵槽12の側板の内側に変更し得ることや、内側への変更を示唆することは、全く記載されていない。 一方、甲第2号証、甲第17号証、甲第19号証及び甲第20号証に記載された事項からみて、シール手段を固定する固定手段を、貯蔵曹の側板に対して内側に配置することと、外側に配置することとは、ともに、本願の出願前の周知技術であったと解される。 しかしながら、貯蔵曹の側板に対して外側配置したものを内側配置に変更することや、その逆に、内側配置したものを外側配置に変更することは、甲第2号証、甲第17号証、甲第19号証及び甲第20号証やその余の各甲号証に記載も示唆もされていないし、甲1記載発明における側板15A(固定手段)の配置を汚濁液貯蔵槽12の側板の内側に変更する動機付けもない。 請求人は、「甲1記載発明において、「側壁15」の開口を外側からカバーする「側板15A」の配置を、内側配置に変更することは、例えば、側壁 15を外せば可能である。」と主張している。(第1回口頭審理調書の請求人欄5を参照) しかしながら、内側配置に変更することが技術的に不可能でないとしても、変更するための動機付けがない以上、そのような変更を想到しないといえる。 さらに、「側板15A」の形状を円盤状にする動機付けも見当たらない。 したがって、甲1記載発明において、「側板15A」の配置を汚濁液貯蔵槽12の側板の内側に変更することも、その形状を円盤状とすることも、当業者にとって容易であるとはいえない。 (3)本件発明1の作用効果について 本件発明1は、特に、上記相違点1に掲げた「貯蔵曹に対して「円盤部材」を固定することにより、「濾過ドラムの半完成品」を前記貯蔵曹内に交換可能に配設した」ものであり、その結果、明細書に記載された「貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保して、濾過精度を低下させず、かつ生産性を大幅に向上することができる濾過装置の提供」という課題(段落【0008】を参照)を解決し、「貯留曹7内において回転駆動される濾過ドアムの側面から汚濁液が進入することが効果的に防止できるので、長期に渡る使用の場合であっても濾過精度を低下させず、かつ組み付け作業等に要する時間が短縮でき生産性を向上できる。」という格別な作用効果(段落【0043】、【0047】を参照)を奏するものであると認められる。 そして、このような作用効果は、甲各号証に記載された事項から当業者が容易に予測し得るものではない。 5.本件発明1の容易想到性についてのまとめ したがって、本件発明1は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6.本件発明2ないし本件発明8の容易想到性の検討 本件発明2ないし本件発明8は、本件発明1の構成要件を全て備え、さらに他の構成要件を備える発明である。 そして、上記5.のとおり本件発明1は甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の構成要件を全て備える本件発明2ないし本件発明8も、本件発明1について検討したのと同様な理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 7.無効理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1ないし本件発明8のいずれについても無効理由1には、理由がない。 第8.むすび 以上のとおりであって、本件訂正請求は適法であるから、本件訂正明細書のとおりの訂正を認める。そして、本件発明1ないし本件発明8について請求人が主張する無効理由には、いずれも理由がない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 濾過装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、前記所定液体を貯蔵する液曹と、前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、 前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴とする濾過装置。 【請求項2】前記軸体は中空管体から構成されてなり、前記噴射手段の所定液体を前記中空管体において案内し、前記濾過ドラムの内側から逆洗浄するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項3】前記濾過ドラムは、側面が密閉状態にされ、かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項4】前記濾過ドラムは、前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項5】前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け、また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり、かつ両側面部位において前記濾過ドラムの半完成品を夫々設けてなり、該濾過ドラムの半完成品により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され、分別濾過することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項6】前記濾過ドラムは、前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間に介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項7】前記濾過ドラムは、前記液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上固形物沈降手段を外周面に固設したことを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【請求項8】前記産業機械は工作機械であり、前記所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液は切削または研削により発生する固形物と液剤の混在する状態になった汚濁液であり、固形物を外形または粒度に応じて前記液剤を再利用することを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は濾過装置に係り、各種の産業機械において使用されて後に、液体と異なる粒度の固形物の混濁液を濾過して得るものであって、例えば、金属切削加工において使用されて切粉を含んだ状態になった切削油を、濾過工程を経て切粉と切削油に分離して切削油を得て再使用可能にする濾過装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、金属切削加工の使用後に切粉を含んだ状態になった切削油を、切粉と切削油に分離して再使用可能にする切削油(以下、浄化切削油と言う)を得るための濾過装置が多く提案されている。 【0003】本願出願人は、このような濾過装置において、濾過後の切削油または所定液剤を貯蔵する液曹と、切削粉を含んだ汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、この貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面において所定の番手のフィルターの濾過手段を備えており、濾過後の切削油を液曹中に流出する濾過ドラムと、濾過手段を洗浄する噴射手段と、汚濁液の投入口から下流側にかけて切削粉を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とから構成される濾過装置を製造している。 【0004】一方、特公平2-44564号公報の「濾過装置」は、このような濾過装置を改良した装置例であって、濾過ドラムの一端を切削油中において浮かせる状態にすることにより濾過ドラムの軸受にかかる加重を軽減するなどして、濾過ドラムを軽く回転駆動させるものである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の各提案になる濾過装置によれば、長時間に渡り濾過ドラムを貯蔵曹内に於いて回転駆動させる際に、汚濁液が濾過ドラム内に進入しないようにするシール手段が十分に機能せず汚濁液の一部が濾過ドラム内に進入することによる濾過精度の低下があることが判明した。 【0006】この原因として、貯蔵曹内においてフローティング状態で回転させる場合において、濾過ドラム側面と貯蔵曹の壁面の間をシールするために使用されるシール手段の取付け精度が十分に確保できないことに起因することが判明した。特に、大型の濾過装置においてこのような不具合発生が見られることから、シール手段の取付け面精度と濾過ドラム側のシール摺動面の間において十分な精度が確保できないことに起因することが判明した。 【0007】そこで、貯蔵曹内におけるシール手段の取付け精度と濾過ドラムの摺動面の仕上げ面精度に注意を払い完成するようにして対処していた結果、生産性を著しく低下させることになっていた。 【0008】したがって、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯蔵曹内において回転駆動される濾過ドラムを備えた濾過装置において、予め濾過ドラムの回転部分とシール部分を組み立てることにより、貯蔵曹に固定されるシール手段のシール面の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保して、濾過精度を低下させず、かつ生産性を大幅に向上することができる濾過装置の提供にある。 【0009】 【課題を解決するための手段】及び【作用】上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、産業機械において使用された後に、所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液から前記所定固形物を濾過して前記所定液体を再利用するために使用される濾過装置において、前記所定液体を貯蔵する液曹と、前記汚濁液を一時的に貯蔵する貯蔵曹と、前記貯蔵曹内で回転駆動されるとともに外周面に濾過手段を備え、濾過後の前記所定液体を前記液曹中に側面開口部を介して流出する濾過ドラムと、前記濾過手段を洗浄する噴射手段と、前記汚濁液の投入口から下流側にかけて前記所定固形物を連続的に搬送して、排出口から落下させる掬上手段とを具備した濾過装置であって、 前記濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部とを形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から成形されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とからなり、前記貯蔵曹内に前記円盤部材を固定することで、前記濾過ドラムの半完成品を前記貯蔵曹内に交換可能に配置したことを特徴としている。 【0010】また、前記軸体は中空管体から構成されてなり、前記噴射手段の所定液体を前記中空管体に案内し、前記濾過ドラムの内側から逆洗浄するように構成されることを特徴としている。 【0011】また、前記濾過ドラムは、側面が密閉状態にされ、かつ前記濾過ドラムの半完成品が前記貯蔵曹内において片支持状態で固定されることを特徴としている。 【0012】また、前記濾過ドラムは、前記半完成品の濾過ドラムが前記貯蔵曹内において両支持状態で固定されることを特徴としている。 【0013】また、前記濾過ドラムは長手方向に区分けする隔壁を設け、また濾過能力の異なる濾過手段を外周面に設けてなり、かつ両側面部位において前記濾過ドラムの半完成品を夫々設けてなり、該濾過ドラムの半完成品により前記貯蔵曹内において両支持状態で固定され、分別濾過することを特徴としている。 【0014】また、前記濾過ドラムは、前記濾過ドラムの半完成品と前記貯蔵曹の側壁との間において介在される弾性板部材を介して前記貯蔵曹内に固定されることを特徴としている。 【0015】また、前記濾過ドラムは、前記液面上を浮遊した切粉を沈降させる浮上固形物沈降手段を外周面に固設したことを特徴としている。 【0016】そして、前記産業機械は工作機械であり、前記所定固形物と所定液体の混在する状態になった汚濁液は切削または研削により発生する固形物と液剤の混在する状態になった汚濁液であり、固形物を外形または粒度に応じて前記液剤を再利用することを特徴としている。 【0017】尚、本発明は後述する実施例に限定されず、特許請求の範囲に規定される範囲において種々の構成が可能であることは勿論である。 【0018】 【実施例】以下に本発明の好適な各実施例につき図面を参照して説明する。先ず、図1は本発明の第1実施例に係る分別濾過装置の要部を示した外観斜視図である。 【0019】本図において、濾過装置は工作機械において、切削加工後に発生した粒度のことなる切粉と切削油の混在した被濾過切削油から切粉を濾過して浄化切削油を分別して得るための概略構成が示されている。この概略構成は工作機械に限定されず、油脂類を固形物から分離する食品機械や、土木機械であって土石の混在した汚濁液から粒度に応じた土砂を濾過して得る場合にも適用可能である。 【0020】さて、図1において、濾過装置には浄化切削油を貯留する複数のクリーン曹1であって、装置全体の基部をも兼ねる曹1が図示のように上流側の破線図示の投入口8から下流側の破線図示の切粉排出口4にかけて連続形成されている。 【0021】一方、切粉と切削油の混在した汚濁状態になっている被濾過切削油を一時的に貯蔵する貯蔵曹7内には、被濾過切削油の液面を、上流と下流側に2分割する濾過ドラム30が上流の投入口8から下流の切粉排出口4の略中間に設けられており、濾過ドラム30の開口部から流出される濾過された後の浄化切削油をクリーン曹1内に流出できるように構成されている。 【0022】一方、図示のように濾過ドラム30は予め完成したものを複数のボルト32を使用して固定するものであって、濾過ドラム30の外周面において所望の濾過能力を持つ番手の濾過過フィルター44が交換自在に固定されている。 【0023】また、この濾過ドラム30の内部には後述のように回転軸体を兼ねる噴出管45が設けられており、濾過フィルター44を内面側(浄化切削油の流出側)から逆洗浄するように設けられている。このために、クリーン曹1内に貯蔵された浄化切削油をポンプ47を介して濾過ドラム30の内側から勢い良く噴射することで、濾過フィルター44面に付着残留した切粉を吹き飛ばすようにして、濾過フィルターの目づまり防止を効果的に行えるようにしている。 【0024】また、投入口8の上流側から切粉排出口4の下流側にかけて切粉を連続的に搬送するために、図中の一点鎖線で図示されたエンドレスの左右チェーン10、11には固定金具を用いて所定間隔で多数の掬上板12が設けられている。これらの左右チェーン10、11はモータ15の駆動力を得て、図中の矢印D2方向に移動するとともに、左右チェーン10、11の途中部位において、濾過ドラム30の外周面の一部に設けられたドラムスプロケット34に対して歯合するように構成されており、このためにドラムチェーンガイド22により夫々図示のように案内されるように構成されている。そして各チェーンは、その後、装置の上流側に配設されたスプロケット18を介して180度方向転換されて、図中の矢印D1方向に向かうように構成されている。以上の構成により、被濾過切削油中で沈降した切粉が下流側に向けて搬送され、やがて図示の傾斜部を、図中の矢印D2方向に上昇して切粉排出口4において外部に排出するように構成されている。 【0025】以上の一連の動作により、クリーン曹1内には、濾過フィルター44の濾過能力に応じて浄化された浄化切削油が貯蔵されることになる。そこで、このようにして得られた浄化切削油を、精密切削加工などに必要に応じて使い分けるようにしている。 【0026】さらに、図1において、装置全体の基部となるクリーン曹1は左右に別れるように形成されており、設置用脚部が4隅に固定されており、工場内の床面上に水平に調整して設置固定するようにしている。 【0027】このように構成されるクリーン曹1間には、被濾過切削油を貯蔵しておくためにクリーン曹の底面と底面を一部共通にした被濾過切削の貯蔵曹7が構成されるが、このためにクリーン曹1の底面と前方壁面に連続して左側板2と、右側板3(一部を二点鎖線で示した)とが液密状態で溶接固定されており、以下に説明する各構成要素は概、これらの左右側板2、3を取り付け部としている。 【0028】先ず、左右側板2、3は図示のように装置の奥側を下流にして、また図面手前側を上流として設けられており、下流側は図示のように斜め上方に延びる形状を有しておりその最上部において、破線図示の切粉排出口4を両側板の間に形成しており、この切粉排出口4の下方に移動される切粉回収箱9内に切粉を落下させるように構成されている。 【0029】また、左右側板2、3の最上流側はクリーン曹1の側壁と共有するとともに、左右側板2、3間において後述するように回動可能に保持される濾過ドラム30の上流側(装置の手前側)において、上方に開口した上記の投入口8を形成しており、この投入口8から被濾過切削油を被濾過切削油の貯蔵曹7内に適宜投入できるように構成されている。 【0030】次に、左右側板2、3の下流側となる斜め上方部位には、不図示の軸受が配設されており、左右一対の上方スプロケット18を固定したスプロケット軸17を回転可能に軸支している。また、このスプロケット軸17には、左側板2に固定されるとともに減速装置を一体的に設けた上記の駆動モータ15の出力軸16が連結されており、駆動モータ15の駆動に伴い、上方スプロケット18を時計回転方向に連続駆動可能にしている。 【0031】一方、左右側板2、3の最上流側である図面手前側にも、同様に不図示の軸受が配設されており、左右一対の下方スプロケット28を固定したスプロケット軸29を回転可能に軸支している。 【0032】以上のように設けられる上方スプロケット18と、下方スプロケット28の間には、図中において一部を一点鎖線で省略して示したエンドレスの左チェーン10と、右チェーン11とが夫々歯合した状態で組みつけられている。これらの左チェーン10と右チェーン11は、図示のように左右側板2、3に略沿うように案内される一方、途中において濾過ドラム30に対する回転駆動力を与えるようにするために、チェーンの方向転換部位において上方チェーンガイド20と下方チェーンガイド21とが、また、濾過ドラム30の上流と下流側においてドラムチェーンガイド22が左右側板2、3の対向面上に夫々固定されている。 【0033】一方、左チェーン10と右チェーン11の間には所定間隔をおいて、被濾過切削油中の沈下した切粉を上流に向けて送り出すための掬上板12が所定枚数分固定されており、切粉を上流に向けて搬送排出して、被濾過切削油中の切粉が上記の切粉排出口4の上流に向けて十分な距離を運ばれる途中で、切粉中から切削油が十分に除去されるようにしている。 【0034】また、濾過ドラム30の外周面には上記のドラムスプロケット34の歯部が固定されており、このドラムスプロケット34に対して歯合する左チェーン10から回動力を得ることで、時計回転方向に常時回動するように構成されている。また、この濾過ドラム30の外周面にはステンレス金網、化学繊維メッシュ、ウエッジワイヤ、パンチングメタル等からなり、例えば濾過能力が50ミクロンの濾過フィルター44が捲回状態にされて、交換可能に固定されており、被濾過切削油をこの濾過フィルター44を通過させて濾過して浄化切削油を得てから、クリーン曹1内に対して右側板3に穿設された半円形開口部6を介してクリーン曹1内に流出するように構成されている。 【0035】続いて、図1に図2の濾過ドラムの中心軸に沿う断面図をさらに参照して、濾過ドラム30内にはクリーン曹1の浄化切削油を濾過フィルター44に向けて噴出するためにポンプ47に配管された管体46に接続される噴射管45が設けられており、この噴射管45の端部45eを保持板60(図1に図示)において軽く支持し、蓋部材61により蓋をするように構成している。また、この噴射管45にはノズル45aが所定間隔で複数本配設されており、所謂逆洗浄を濾過フィルター44に対して行うことで、濾過フィルター44の目づまりを解消して連続濾過動作を可能にしている。 【0036】さらに、濾過ドラム30の外周面には被濾過切削油中で浮力を得て油面で浮遊した状態になっている浮上切粉を、被濾過切削油中に沈降させるための浮上切粉掬上板31が固定されており、濾過ドラム30の時計回転方向の回動に伴い浮上切粉を被濾過切削油中に沈降させるようにして、浮上切粉が成長拡大することを防止して濾過フィルター44が損傷するなどの虞を防止するようにしている。 【0037】尚、上述した分別濾過装置によれば、共通の駆動源である1機の駆動モータ15から駆動力を得て、左右チェーン10、11間において所定間隔をおいて設けられた掬上板12と濾過ドラム30の両方を駆動できるので安価に構成できる。また、被濾過切削油の投入口8は、低い位置に設定できることから投入作業が楽になり、比較的に高さ寸法を有する回収箱9の上方から、切粉排出口4を介して切粉を落下させるように構成できるので合理的レイアウトを実現可能にできる。 【0038】次に、図2と図3の濾過ドラムを分解した様子を示した平面図を参照して本発明の最大の特徴である濾過ドラムの構成とその組立て手順に付いて述べる。ここで、図3において、図1、図2で既に説明済の構成には同様の符号を付して説明を割愛して、濾過ドラム30の構成について主に述べると、上述の右側板3の半円形開口部6の近傍には右円盤部材51に形成されたネジ孔51kに螺合させるためのボルト32を通過させるための貫通孔3aが穿設されており、弾性板部材であるゴムシート33に穿設された孔部33aにボルト32を夫々貫通させた状態で右側板3に対して着脱可能に固定できるようにしている。 【0039】一方、図3を参照して、濾過ドラム30の構成は、所定直径のガス管用の鋼管を、例えば旋盤にセットしてその各側面がドラム回転中心に対して直交する面で構成されるようにして所望の全長に切断した基体55を得る。この後に、基体55の各切断面においてフランジ部材55x、55yを溶接してシール摺動面S1、S2を構成する。また、この基体の内部において、リブ55h、55kを溶接して左右ベアリングホルダー56、57に対する固定部を一体形成する。リブ55kには濾過ドラム内部において浄化された濾過液を外部に流出させるための開口部が設けられる一方、リブ55hは密閉状態に構成される。また、基体55には上記のフィルター44を設けるための開口部55aとフィルター固定用のネジ孔55bがさらに機械加工される。 【0040】また、図2において、左右ベアリングホルダー56、57内には液密状態で回転するシールベアリング70が夫々内蔵されており、ネジ29により上記の噴射管45に固定されている。これらのベアリングホルダー56、57はボルト32を用いて上記のリブ55h、55kに固定されている。 【0041】一方、上記の右円盤部材51には、俗称のVシール50であって、基部50aとリップ部50bからなり、環状部51aに対してやや開いた状態でセットされるシール体が固定されている。また、この右円盤部材51の反対側には、Vシール50を環状部52aに対してやや開いた状態でセットした左円盤部材52が準備される。以上の準備の後に、各円盤の挿通孔部51b、52bを噴射管45の両端部位から挿通してから、固定ネジ53を各円盤部材のネジ孔51d、52dに対して締め付けることにより、Vシール50のリップ部50bが上述したフランジ部材55x、55yのシール摺動面S1、S2に対して均一に当接する状態で完成することができる。このために左右円盤部材51、52も濾過ドラムの基体55と同様に旋盤加工により構成すると良い。また、この組立ての際に、各要素の相互位置決めのために噴射管45に谷部45aを加工形成しておき、ネジ53の先端が組み付けの際に潜入するようにしてもよく、さらには上下方向に噴射管45を置き、各部品を順次挿入する際に、Vシール50と摺動面の間にシールの変形分に該当する所定厚さのスペーサを介在させてからネジ締めして完成し、最後にスペーサを外すようにして完成しても良い。 【0042】以上のようにして濾過ドラムの半完成品を得る。すなわち、濾過ドラムの半完成品は、前記貯蔵曹内に収容され不動状態で固定される軸体と、前記軸体により回転自在に軸支されるとともに前記外周面と前記側面開口部と形成したドラム基部と、前記側面開口部の環状縁部を液密状態でシールするために弾性部材から形成されるシール手段と、前記シール手段を固定するとともに前記軸体に挿通した後に前記軸体に固定され、かつ前記貯蔵曹を構成する側板の内側に着脱可能に配置される円盤部材とから構成されている。この後に、図1、図2に示すように貯蔵曹(貯留曹7)内の半円形開口部6の近傍に穿設された貫通孔3aに対してボルト32をセットしてから、ゴムシート33に穿設された孔部33aに挿通してから、右円盤部材51に形成されたネジ孔51kに対して夫々螺合固定することにより、右円盤部材51を貯蔵曹(貯留曹7)を構成する側板3の内側に固定する。この後に、チェーン等をセットし、カバー(不図示)を固定して完成する。また、濾過ドラムの交換の際には、逆の手順で外すようにしてフィルター交換等を簡単に行えるようにする。 【0043】以上のように濾過ドラムを構成及び固定することにより、貯留曹7内において回転駆動される濾過ドアムの側面から汚濁液が進入することが効果的に防止できるので、長期に渡る使用の場合であっても濾過精度を低下させず、かつ組み付け作業等に要する時間が短縮でき生産性を向上できる。また、被濾過切削油の液面の上昇にともない浮上した切粉は浮上切粉掬上板31の作用により被濾過切削油中に沈降できるようにして、浮上切粉が成長拡大することを防止して濾過フィルター44を損傷することを効果的に防止する。 【0044】最後に、図4は上記濾過ドラムの構成例を示した模式図である。先ず、図4(a)において、濾過ドラム30は貯留曹7を構成する右側板3に対して片支持状態で固定されており、開口部6を介して浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。 【0045】次に、図4(b)において、濾過ドラム30は左右側板2、3において両支持状態で固定されており、左右の開口部5、6から浄化液が矢印W方向に流出されてクリーン曹1に流れ出るように構成されている。そして、図4(c)において、濾過ドラム30は隔壁25を設ける一方、濾過性能の異なる番手のフィルター44A、44Bを図示のように隔壁25により区分けするように設けており、左右側板2、3において両支持状態で固定されている。以上の構成において、左右の開口部5、6から異なる濾過を行われた浄化液が矢印W1、2方向に流出されて各クリーン曹1A、1Bに流れ出るように構成されている。したがって、この構成によれば、1個の共通濾過ドラムにより異なる分別濾過ができる。 【0046】尚、本発明は上述した構成に限定されるものでなく、各構成は適宜設計変形可能であり、例えば、比較的に広い面積を占める左右側板2、3やクリーン曹1等は外形骨格部を構成しておき、所定厚さの鉄板を適宜溶接して形成したり、また、濾過ドラム30はパイプ材を溶接して構成しても良い。さらにまた、各噴射管の噴射方向は図2に図示される方向に限定されず適宜変更可能であって、濾過ドラムの外側から噴射するようにしても良い。また、切粉が鉄に限定される場合には、被濾過切削油の貯蔵室の底面に永久磁石を配設することで、切粉の沈下を促進できるようになる。。尚、本発明は上述した実施例に限定されず、例えは、複数の駆動モータを設けて、各濾過ドラムを個別駆動する一方、左右チェーン10、11の駆動用の専用モータを設けるように構成しても良いことは言うまでもない。 【0047】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、貯蔵曹内において回転駆動される濾過ドラムを備えた濾過装置において、予め濾過ドラムの半完成品を得た後、貯蔵曹を構成する側板の内側に円盤部材を介して装置本体内に、濾過ドラムの半完成品を着脱可能に配置したものであるから、予め濾過ドラムの回転部分とシール部分とを組み立てることにより、貯蔵曹内に固定されているシール手段の全面と濾過ドラム側の摺動面の全面の精度を確保することが可能となるので、濾過精度が低下することなく、交換作業も容易となり、かつまた濾過装置の生産性を大幅に向上することができる濾過装置を提供できる。 【0048】 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例に係る濾過装置の要部構成を示した分解斜視図である。 【図2】濾過ドラムの中心断面図である。 【図3】図2の濾過ドラムの組立て状態図である。 【図4】濾過装置の構成例を示した模式図である。 【符号の説明】 1 クリーン曹(液曹) 2 左側板(貯液曹の構成部品) 3 右側板(貯液曹の構成部品) 4 排出口 5、6 半円形開口部 8 投入口 9 回収箱 10 左チェーン(掬上手段の構成部品) 11 右チェーン(掬上手段の構成部品) 12 掬上板(掬上手段の構成部品) 15 駆動モータ 17 スプロケット軸 18 上方スプロケット 28 下方スプロケット 30 濾過ドラム 31 浮上切粉掬上板 33 ラバーシート 34 ドラムスプロケット 44 濾過フィルター(濾過手段) 45 噴射管(噴射手段、軸体の構成部品) 47 ポンプ(噴射手段の構成部品) 50 Vシール(シール手段) 51 右円盤部材 52 左円盤部材 55 基体(濾過ドラム) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2015-02-23 |
結審通知日 | 2015-02-25 |
審決日 | 2015-03-16 |
出願番号 | 特願平7-24878 |
審決分類 |
P
1
113・
536-
YAA
(B01D)
P 1 113・ 121- YAA (B01D) P 1 113・ 537- YAA (B01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 良夫、森 健一、中村 敬子、村守 宏文 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 渡邊 豊英 |
登録日 | 1999-03-26 |
登録番号 | 特許第2904334号(P2904334) |
発明の名称 | 濾過装置 |
代理人 | 和田 成則 |
代理人 | 和田 成則 |
代理人 | 木森 有平 |
代理人 | 小松 秀彦 |
代理人 | 小松 秀彦 |