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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1321661
審判番号 不服2015-15004  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-10 
確定日 2016-11-10 
事件の表示 特願2012-288133「コンテンツデータ処理方法,コンテンツサーバ,クライアント端末,及びコンテンツ配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開,特開2014-131197〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成24年12月28日の出願であって,
平成25年11月18日付けで審査請求がなされ,平成26年12月15日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年2月23日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年4月27日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達:平成27年5月12日),これに対して平成27年8月10日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年10月6日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年8月10日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年8月10日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成27年2月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。
【請求項2】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
少なくとも1つのコンテンツに係るコンテンツデータを可変長圧縮符号化方式により圧縮符号化して前記コンテンツサーバに格納しておき,
前記クライアント端末が,前記コンテンツサーバに対して所望のコンテンツの配信を要求し,
前記コンテンツサーバが,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を暗号化し,
前記コンテンツサーバが,その一部が暗号化された一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末で動作するブラウザが,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元し,
前記クライアント端末が,復元した可変長圧縮コンテンツデータに対して,前記可変長圧縮符号化方式に対応した伸長処理を施して,前記ブラウザにより表示部に表示することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。
【請求項3】
前記復号化用プログラムには,前記一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータを復号化するための復号化アルゴリズムの情報及び鍵情報が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項4】
前記コンテンツサーバは,前記一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータを復号化するための復号化アルゴリズムの情報と鍵情報とを,それぞれ個別の復号化用プログラムとして送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項5】
前記コンテンツサーバは,前記可変長圧縮コンテンツデータの一部として,そのヘッダ部の少なくとも一部を暗号化することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項6】
前記コンテンツサーバは,前記復号化用プログラムを画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項7】
前記コンテンツデータは,電子書籍データであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項8】
格納したコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするためのコンテンツサーバであって,
通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的として,
少なくとも1つのコンテンツに係るコンテンツデータが可変長圧縮符号化方式により圧縮符号化されて格納される格納部と,
前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信する一部暗号化部と,
を備えたことを特徴とするコンテンツサーバ。
【請求項9】
前記一部暗号化部は,前記可変長圧縮コンテンツデータの一部として,そのヘッダ部の少なくとも一部を暗号化することを特徴とする請求項8に記載のコンテンツサーバ。
【請求項10】
前記一部復号化部は,前記復号化用プログラムを画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信することを特徴とする請求項8に記載のコンテンツサーバ。
【請求項11】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してダウンロードするクライアント端末であって,
通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的として,
前記コンテンツサーバに対して所望のコンテンツの配信を要求し,前記コンテンツサーバから,可変長圧縮符号化方式により圧縮された後にその一部であって,第三者により復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元するブラウザと,
復元した可変長圧縮コンテンツデータに対して伸長処理を施す伸長処理部と,
前記伸長処理部により伸長されたコンテンツデータが表示される表示部と,
を備えたことを特徴とするクライアント端末。
【請求項12】
請求項8に記載のコンテンツサーバと,請求項11に記載のクライアント端末とを備えたことを特徴とするコンテンツ配信システム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された,可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。
【請求項2】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
少なくとも1つのコンテンツに係るコンテンツデータを,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式により圧縮符号化して前記コンテンツサーバに格納しておき,
前記クライアント端末が,前記コンテンツサーバに対して所望のコンテンツの配信を要求し,
前記コンテンツサーバが,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化し,
前記コンテンツサーバが,その一部が暗号化された一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末で動作するブラウザが,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元し,
前記クライアント端末が,復元した可変長圧縮コンテンツデータに対して,前記可変長圧縮符号化方式に対応した伸長処理を施して,前記ブラウザにより表示部に表示することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。
【請求項3】
前記復号化用プログラムには,前記一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータを復号化するための復号化アルゴリズムの情報及び鍵情報が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項4】
前記コンテンツサーバは,前記一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータを復号化するための復号化アルゴリズムの情報と鍵情報とを,それぞれ個別の復号化用プログラムとして送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項5】
前記コンテンツサーバは,前記可変長圧縮コンテンツデータの一部として,そのヘッダ部の少なくとも一部であって,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた部分を暗号化することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項6】
前記コンテンツサーバは,前記復号化用プログラムを画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項7】
前記コンテンツデータは,電子書籍データであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツデータ処理方法。
【請求項8】
格納したコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードするためのコンテンツサーバであって,
通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的として,
少なくとも1つのコンテンツに係るコンテンツデータが,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式により圧縮符号化されて格納される格納部と,
前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信する一部暗号化部と,
を備えたことを特徴とするコンテンツサーバ。
【請求項9】
前記一部暗号化部は,前記可変長圧縮コンテンツデータの一部として,そのヘッダ部の少なくとも一部を暗号化することを特徴とする請求項8に記載のコンテンツサーバ。
【請求項10】
前記一部暗号化部は,前記復号化用プログラムを画像ファイルに偽装して前記クライアント端末に送信することを特徴とする請求項8に記載のコンテンツサーバ。
【請求項11】
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してダウンロードするクライアント端末であって,
通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的として,
前記コンテンツサーバに対して所望のコンテンツの配信を要求し,前記コンテンツサーバから,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式により圧縮された後に,その一部であって,第三者により復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部が,前記可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元するブラウザと,
復元した可変長圧縮コンテンツデータに対して伸長処理を施す伸長処理部と,
前記伸長処理部により伸長されたコンテンツデータが表示される表示部と,
を備えたことを特徴とするクライアント端末。
【請求項12】
請求項8に記載のコンテンツサーバと,請求項11に記載のクライアント端末とを備え
たことを特徴とするコンテンツ配信システム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
本件手続補正は,補正前の請求項1,請求項2,請求項8,及び,請求項11に記載の発明における発明特定事項である,
「可変長圧縮コンテンツデータ」に対して,
「圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された」,
という限定事項を付加すると共に,補正前の請求項1,請求項2,請求項8,及び,請求項11に記載の発明における発明特定事項である,
「第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部」に対して,
「前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態」,
という限定事項を付加して,補正後の請求項1,請求項2,請求項8,及び,請求項11とし,
補正前の請求項5に記載の発明における発明特定事項である,
「ヘッダの少なくとも一部」に対して,
「圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた部分」,
という限定事項を付加して,補正後の請求項5とするものであって,
本願の願書に添付された,明細書,特許請求の範囲,及び,図面(以下,これらを「当初明細書等」という)には,「圧縮符号化方式」という表現は存在しておらず,限定事項として付加された,
「圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された」,
と同等の記載,及び,
「圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式としての,可変長圧縮符号化方式による圧縮符号化に必要な情報が含まれた部分」,
と同等の記載は,存在していないが,当初明細書等の段落【0019】,及び,段落【0038】に,「可変長符号処理の特性」という記載が存在し,同段落【0026】に,
「圧縮符号化の手法としては,例えば,JPEG(Joint Photographic Experts Group),PNG(Portable Network Graphics)等がある」,
という記載が存在し,同段落【0030】に,
「圧縮コンテンツデータの一部としては,そのヘッダ部の少なくとも一部が含まれていることが好ましい。ヘッダ部には,ハフマンテーブル等の重要な情報が含まれているので,その部分を暗号化しさえすれば,全体の復元性は大きく低下するからである」,
という記載が存在していて,「ハフマンテーブル」を用いる,“データ圧縮法”である,「ハフマン符号化法」は,当業者には,極めて周知の技術事項であることを考慮すれば,
上記において引用した,本件手続補正により,付加された限定事項は,一応,当初明細書等の記載の範囲内のものであると解することができるので,
本件手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして,上記において指摘したとおり,本件手続補正は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的としたものであって,
補正後の請求項1,請求項2,請求項5,請求項8,及び,請求項11は,補正前の請求項1,請求項2,請求項5,請求項8,及び,請求項11と,特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであるから,
本件手続補正は,特許法第17条の2第4項,及び,第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(1)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,つぎのとおりのものである。

「コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された,可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。」

(2)引用刊行物に記載の事項
ア.原審の平成26年12月15日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2009-038810号公報(平成21年2月19日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0016】
図2はPC4がコンテントを受け取ったときの動作を示すフローチャートである。PC4はまず,ネットワーク9を介してサーバ2からコンテントをダウンロードする(S0)。このとき,そのコンテントをデコード(復号)またはデクリプト(復号)するプログラムもサーバからダウンロードする。このプログラムは,ダウンロードされたビュアまたはブラウザに含まれていてもよく,これが暗号化されていたコンテントを利用可能な形に戻す。PC4またはそのユーザにユニークなユーザID情報は,前記のビュアに埋め込まれている。IDは,このビュアでコンテントを復号するとき,コンテントに埋め込まれる(S2)。ID埋込後,このコンテントを画面に表示したり,コピーするなどの利用が許可される。」

B.「【0018】
PC4内に受けとられたビュア12は,受信したコンテントを復号し,表示するために利用される。図3のごとく,コンテントはビュア12に入力される。ビュア12は,PC4への送信の前にコンテント管理者によって圧縮され,または暗号化された画像を復号する画像復号部14と,IDを記憶しているID保持部16と,ID保持部16からIDを読み出し,これを復号化画像に埋め込むID埋込部18をもつ。画像復号部14は復号化アルゴリズムを内蔵している。コンテント管理者は,ビュア12を送信する際,コンテントを要求したユーザに固有のIDをID保持部16に格納して提供する。ビュア12は,例えばインターネットの既存のブラウザに対するプラグインタイプのデバイスとして提供できる。」

C.「【0022】
実動作において,まず,PC4のユーザがコンテント管理者のもつサーバ2に対し,あるコンテントの配信を要求する。コンテントはサーバ2の側で暗号化された後,ビュア12とともにネットワークを介してPC4に送付される。PC4の通信部10が送信されたコンテントを受信し,これが,これもネットワークから受信されたビュア12に渡される。ビュア12内では,画像復号部14がコンテントを復号し,これをID埋込部18に渡す。ID埋込部18のID読込部30は,IDをID保持部16から読み出し,これを合成部34に与える。復号化画像は復号化画像読込部32で読み込まれ,合成部34に渡される。IDと復号化画像を受け取った後,合成部34は前述の方法により,輝度のLSBを置き換えることで画像にIDを埋め込む。ID付の画像はディスプレイ24に表示される。また,記憶装置26に送られてもよい。以降,もし記憶装置26に格納されたID付の画像に対し,不正な改変や複製が行われるとすれば,それら改変後または複製後のコピーは,記憶装置26に格納されている画像に埋め込まれているID情報を含むことになる。」

イ.原審拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2005-072699号公報(平成17年3月17日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

D.「【0009】
デジタルカメラ1は,本実施の形態における撮像装置であり,ランダムアクセス可能な記録媒体であるメモリカード11と,使用者によって選択された画像ファイル(例えば,JPEGファイル)をメモリカード11から読み出すメモリインターフェース部12と,メモリインターフェース部12から供給された画像ファイルの所定の部分(画像ファイルのデコードに必要な情報(量子化テーブル,ハフマンテーブルなど)を含む部分。例えば,ヘッダ部(図4参照)。)を暗号鍵を用いて暗号化する暗号化部13と,暗号化部13で暗号化された画像ファイルをプリンタ2に無線でダイレクトに送信する無線通信部14とを有する装置である。無線通信部14は,IEEE std 802.11a,IEEE std 802.11b,Bluetooth(登録商標)又はそれ以外の無線通信方式に準拠するユニットである。
【0010】
プリンタ2は,本実施の形態における画像印刷装置であり,デジタルカメラ1からプリンタ2に無線でダイレクトに送信された画像ファイルを受信する無線通信部21と,無線通信部21から供給された画像ファイルの所定の部分を復号鍵(上記の暗号鍵に対応する鍵)を用いて復号化する復号化部22と,復号化部22で復号化された画像ファイルをデジタル画像にデコードするデコーダ23と,デコーダ23から供給されたデジタル画像を使用者又はプリンタ2によって選択されたプリントスタイル(縁なし,縁ありなど)及び用紙に従ってリサイズし,リサイズしたデジタル画像をその用紙に印刷する画像印刷部24とを有する装置である。無線通信部21は,無線通信部14と同様の機能を有するユニットである。」

ウ.原審拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2007-208931号公報(平成19年8月16日公開,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E.「【要約】
【課題】演算能力の低いシステムであっても短時間にデジタルデータを暗号化することができるようにする。
【解決手段】圧縮されたデータ本体と,このデータ本体の伸張に必要な符号化情報(ハフマンテーブルや量子化テーブル)を含むヘッダー情報とからなるJPEGデータを暗号化する際に,データ本体の圧縮に使用したハフマンテーブル及び量子化テーブルを予め登録された暗号化キーを用いて暗号化し,この暗号化したハフマンテーブル及び量子化テーブルをヘッダーに書き込むようにしている。ヘッダー情報は,データ本体に比べてデータ量が著しく少ないため,演算能力の低いシステムであっても短時間に暗号化することができる。
【選択図】 図7」

エ.原審拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開昭61-029232号公報(昭和61年2月10日公開,以下,これを「周知技術文献」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F.「送信側の解析装置1および圧縮テーブル装置2について,第2図によりさらに説明する。この図に示すように,解析装置1においては,一定間隔毎に伝送データ中の文字の出現回数を頻度測定装置11により測定し,その測定結果に従って頻度順変更装置12で各文字を頻度順に並べ換える。圧縮テーブル装置2は,圧縮テーブル記憶装置14と圧縮テーブル変更装置13からなる。本実施例においては,データ圧縮をハフマン符号化法によって行うようになっており,伝送開始前は,第4図に例示するようなハフマンコードに対応する未割当て状態の圧縮テーブルが圧縮テーブル記憶装置14に記憶されている。」(2頁右上欄11行?左下欄3行)

(3)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Cの「PC4のユーザがコンテント管理者のもつサーバ2に対し,あるコンテントの配信を要求する。コンテントはサーバ2の側で暗号化された後,ビュア12とともにネットワークを介してPC4に送付される」という記載から,引用刊行物1においては,
“ユーザのPCから,コンテント管理者のサーバに対し,所定のコンテントの配信要求があった場合,前記サーバ側で,前記コンテントを,暗号化し,前記サーバが,ビュアとともにネットワークを介して,前記ユーザのPCに送信する”ものであることが読み取れる。

イ.上記Aの「PC4はまず,ネットワーク9を介してサーバ2からコンテントをダウンロードする(S0)。このとき,そのコンテントをデコード(復号)またはデクリプト(復号)するプログラムもサーバからダウンロードする。このプログラムは,ダウンロードされたビュアまたはブラウザに含まれていてもよく,これが暗号化されていたコンテントを利用可能な形に戻す」という記載,上記Bの「PC4内に受けとられたビュア12は,受信したコンテントを復号し,表示するために利用される。図3のごとく,コンテントはビュア12に入力される。ビュア12は,PC4への送信の前にコンテント管理者によって圧縮され,または暗号化された画像を復号する画像復号部14」という記載から,引用刊行物1における「ビュア」は,「コンテントをデコード(復号)またはデクリプト(復号)するプログラム」であることが読み取れ,このことから,上記ア.において検討した事項は,
“ユーザのPCから,コンテント管理者のサーバに対し,所定のコンテントの配信要求があった場合,前記サーバ側で,前記コンテントを,暗号化し,前記サーバが,前記コンテントを復号するプログラムともに,ネットワークを介して,前記ユーザのPCに送信する”ものであると読み替えることができる。
そして,上記において引用した,上記Aの記載内容,上記Bの記載内容,及び,上記Cの「PC4の通信部10が送信されたコンテントを受信し,これが,これもネットワークから受信されたビュア12に渡される。ビュア12内では,画像復号部14がコンテントを復号し」という記載内容と,上記ア.において検討した事項から,引用刊行物1においては,
“ユーザのPCは,ネットワークを介して,サーバから,暗号化されたコンテントと,前記コンテントを復号するプログラムとを,受信し,前記コンテントを,前記プログラムに渡し,前記プログラムが,前記コンテントを復号する”ものであることが読み取れる。

ウ.以上,ア.,及び,イ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているもの認める。

「ユーザのPCから,コンテント管理者のサーバに対し,所定のコンテントの配信要求があった場合,前記サーバ側で,前記コンテントを,暗号化し,前記サーバが,前記コンテントを復号するプログラムともに,ネットワークを介して,前記ユーザのPCに送信し,
前記ユーザのPCは,前記ネットワークを介して,前記サーバから,暗号化されたコンテントと,前記コンテントを復号するプログラムとを,受信し,前記コンテントを,前記プログラムに渡し,前記プログラムが,前記コンテントを復号する,方法。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明における「コンテント」,「ユーザのPC」,及び,「サーバ」が,それぞれ,本件補正発明における「コンテンツデータ」,「クライアント端末」,及び,「コンテンツサーバ」に相当し,
引用発明においては,目的について,特に言及していないものの,引用発明において,「サーバ」において,「コンテント」を暗号化し,該「暗号化されたコンテント」を,「ネットワーク」を介して,「ユーザのPC」に送信するという態様を採用している以上,“ネットワーク上でのコンテントの漏洩防止を実現する”という目的を解決しているものであることは,明らかである。
よって,引用発明における「方法」と,
本件補正発明における「コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法」とは,
“コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止を目的としたコンテンツデータ処理方法”である点で共通する。

イ.引用発明における「所定のコンテント」が,本件補正発明における「所望のコンテンツ」に相当するので,
引用発明における「ユーザのPCから,コンテンツ管理者のサーバに対し,所定のコンテントの配信要求があった場合」が,
本件補正発明における「前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受ける」ことに相当する。

ウ.引用発明における「サーバ側で,前記コンテントを,暗号化し」と,
本件補正発明における「所望のコンテンツに係る,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された,可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化し」とは,
“所望のコンテンツデータを暗号化”する点で共通する。

エ.引用発明における「コンテントを復号するプログラム」と,
本件補正発明における「一部暗号化に対応した復号化用プログラム」とは,
“コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラム”である点で共通するので,
引用発明において,「サーバが,前記コンテントを復号するプログラムともに,ネットワークを介して,前記ユーザのPCに送信」することと,
本件補正発明において,「その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信」することとは,
“暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,ネットワークを介して,クライアント端末に送信する”点で共通する。

オ.引用発明において,「ユーザのPCは,前記ネットワークを介して,前記サーバから,暗号化されたコンテントと,前記コンテントを復号するプログラムとを,受信」することと,
本件補正発明において,「クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信する」こととは,
“クライアント端末は,コンテンツサーバから,暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,ネットワークを介して受信する”点で共通する。

カ.引用発明における「コンテントを,前記プログラムに渡し,前記プログラムが,前記コンテントを復号する」ことと,
本件補正発明における「受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元する」こととは,
“受信した暗号化されたコンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元のコンテンツデータを復元する”ことである点で共通する。

キ.以上,ア.?カ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,
前記所望のコンテンツデータを暗号化し,
暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して,前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末は,前記コンテンツサーバから,前記暗号化されたコンテンツデータと,前記コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して受信すると,
受信した前記暗号化されたコンテンツデータに対して,受信した前記復号化用プログラムを施すことにより,元のコンテンツデータを復元する,コンテンツデータ処理方法。

[相違点1]
“通信路上での漏洩防止を目的としたコンテンツデータ処理方法”に関して,
本件補正発明においては,「処理の高速化」も目的としているのに対して,
引用発明においては,「処理の高速化」については,特に,言及されていない点。

[相違点2]
“所望のコンテンツデータを暗号化”する点に関して,
本件補正発明においては,「所望のコンテンツに係る,圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された,可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を,前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態で暗号化」するものであるのに対して,
引用発明においては,「可変長圧縮コンテンツデータ」の「一部」を「暗号化」する点については,言及されていない点。

[相違点3]
“暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して,前記クライアント端末に送信”することに関して,
本件補正発明においては,「その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信」するものであるのに対して,
引用発明においては,送信される「暗号化されたコンテンツデータ」が,「その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータ」である点の言及がない点。

[相違点4]
“クライアント端末は,前記コンテンツサーバから,前記暗号化されたコンテンツデータと,前記コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して受信すると,受信した前記暗号化されたコンテンツデータに対して,受信した前記復号化用プログラムを施すことにより,元のコンテンツデータを復元する”点に関して,
本件補正発明においては,「クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「ブラウザ」が,「一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータ」を「復号」する点については,特に,言及されていない点。

(5)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1],及び,[相違点2]について
画像データといった,コンテンツを圧縮して,コンテンツサーバ側から,クライアント端末へ送信することは,例えば,上記Dに引用した引用刊行物2の記載内容,及び,上記Eに引用した引用刊行物3の記載内容にあるとおり,本願の出願前に,当業者には周知の技術事項である。
そして,上記Dに引用した,引用刊行物2に,「使用者によって選択された画像ファイル(例えば,JPEGファイル)をメモリカード11から読み出すメモリインターフェース部12と,メモリインターフェース部12から供給された画像ファイルの所定の部分(画像ファイルのデコードに必要な情報(量子化テーブル,ハフマンテーブルなど)を含む部分。例えば,ヘッダ部(図4参照)。)を暗号鍵を用いて暗号化する」と記載され,上記Eに引用した,引用刊行物3に,「圧縮されたデータ本体と,このデータ本体の伸張に必要な符号化情報(ハフマンテーブルや量子化テーブル)を含むヘッダー情報とからなるJPEGデータを暗号化する際に,データ本体の圧縮に使用したハフマンテーブル及び量子化テーブルを予め登録された暗号化キーを用いて暗号化し,この暗号化したハフマンテーブル及び量子化テーブルをヘッダーに書き込むようにしている」と記載されていて,上記Dの引用記載,及び,上記Eの引用記載から,
“圧縮画像ファイルである,JPEGファイルの一部である,ハフマンテーブルや量子化テーブルを含むヘッダ情報を暗号化して,サーバ側から,クライアント端末へ送信する”
ことは,本願の出願前に,当業者には周知の技術事項である。
そして,引用刊行物2に記載の発明,及び,引用刊行物3に記載の発明における,「JPEGファイル」は,「ハフマンテーブル」を含むことから,明らかなように,圧縮に際して,「ハフマン符号化法」を採用しており,当該,「ハフマン符号化法」が,「可変長符号化方式」であることは,当業者には周知の技術事項であるので,引用刊行物2に記載の発明,及び,引用刊行物3に記載の発明における「JPEGファイル」は,本件補正発明における「可変長圧縮コンテンツデータ」に相当するものであると言える。
そして,引用刊行物2に記載の発明における「ヘッダ部」,及び,引用刊行物3に記載の発明における「ヘッダ」は,上述したように,“圧縮画像ファイルである,JPEGファイルの一部”であるから,本件補正発明における「可変長圧縮コンテンツデータの一部」に相当するものである。
さらに,上記Eに引用した,引用刊行物3には,「ヘッダー情報は,データ本体に比べてデータ量が著しく少ないため,演算能力の低いシステムであっても短時間に暗号化することができる」と記載されていて,該引用記載の内容から,引用刊行物3に記載の発明においては,“暗号化における処理対象のデータ量が検討されている”こと,即ち,“処理の高速化”が検討されていることは明らかである。
そして,「JPEGファイル」の「ヘッダ部」を暗号化対象とすることから,引用刊行物2に記載の発明,及び,引用刊行物3に記載の発明において,「第三者による復元の困難性」が考慮されていることも明らかである。
ここで,引用発明においても,上記Bに引用した記載内容にあるとおり,“画像が,コンテント管理者によって圧縮される”態様にも言及されていることから,
引用発明において,引用刊行物2に記載の発明,或いは,引用刊行物3に記載の発明のような周知技術を用いて,“可変長符号化法を用いた圧縮画像の一部を,暗号化の処理量を考慮して,暗号化する”よう構成することは,当業者が,適宜なし得る事項である。
なお,上記検討においては,「JPEG」を,「可変長圧縮コンテンツデータ」として,扱ったが,本件補正発明における「可変長圧縮コンテンツデータ」が,純粋な意味での“可変長符号化方式により圧縮されたデータ”を意味するものであったとしても,上記Fに引用した,引用刊行物4に,「データ圧縮をハフマン符号化法によって行う」という記載が存在しているように,“データを可変長符号化方式により圧縮する”こと自体は,本願の出願前に,当業者においては,周知の技術事項に過ぎないので,引用発明において,当該方式による「データ圧縮」を採用することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1],及び,[相違点2]は,格別のものではない。

イ.[相違点3]について
上記ア.において検討したとおり,「一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータ」を生成することは,当業者が,適宜なし得る事項であるから,
引用発明においても,“一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,クライアント端末へ送信する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。

ウ.[相違点4]において
上記Dに引用した,引用刊行物2の「無線通信部21から供給された画像ファイルの所定の部分を復号鍵(上記の暗号鍵に対応する鍵)を用いて復号化する復号化部22」という記載からも明らかなように,“部分暗号化されて送信された,画像データの暗号化された部分を復号する”ことは,本願の出願前に,当業者には周知の技術事項である。
したがって,引用発明において,“ユーザのPCにおいて,画像データと共に受信したコンテントを復号するプログラムを用いて,一部が暗号化された圧縮コンテントデータの,暗号化された部分を復号する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
ここで,本件補正発明においては,当該「復号」を,「クライアント端末のブラウザ」が行っている点について検討する。
引用発明においても,上記Aに,「コンテントをデコード(復号)またはデクリプト(復号)するプログラムもサーバからダウンロードする。このプログラムは,ダウンロードされたビュアまたはブラウザに含まれていてもよく」という記載が存在するように,“復号用のプログラムをブラウザが有する”,即ち,“ブラウザにおいて復号を行う”点についても言及されている。
引用発明において,“ユーザのPCのブラウザが復号を行う”場合,該“復号用のプログラム”が,“元々,ユーザのPCが有していたものなのか,「サーバ」から,ダウンロードしたものなのか”,引用刊行物1の記載内容からは,明確にならないが,「ユーザのPC」が,「ブラウザ」を有している場合,「ビュア」に換えて,「ブラウザ」を所望の「ビュア」として機能させるための“プラグイン”等を,「サーバ」から提供することは,周知技術文献を提示するまでもなく,当業者には周知の技術事項である。
よって,引用発明においても,「ブラウザ」が,「コンテントを復号するプログラム」を実行するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点4]は,格別のものではない。

エ.以上,ア.?ウ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点4]は,格別のものではなく,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,及び,引用刊行物2乃至引用刊行物4に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年8月10日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年2月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止と処理の高速化を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,前記所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を暗号化し,その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元することを特徴とするコンテンツデータ処理方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
上記「第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物1として引用した,特開2009-038810号公報(平成21年2月19日公開)には,上記「第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)引用刊行物に記載の発明」において検討したとおりの,次の引用発明は記載されているものと認める。

「ユーザのPCから,コンテンツ管理者のサーバに対し,所定のコンテンツの配信要求があった場合,前記サーバ側で,前記コンテンツを,暗号化し,前記サーバが,前記コンテントを復号するプログラムともに,ネットワークを介して,前記ユーザのPCに送信し,
前記ユーザのPCは,前記ネットワークを介して,前記サーバから,暗号化されたコンテントと,前記コンテントを復号するプログラムとを,受信し,前記コンテントを,前記プログラムに渡し,前記プログラムが,前記コンテントを復号する,方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明から,
「可変長圧縮コンテンツデータ」に対する,「圧縮後のデータ全体を伸長させて圧縮前のデータを復元する際に前記圧縮後のデータ全体の情報が必要となる圧縮符号化方式によって圧縮符号化が施された」という限定事項取り除き,
「第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部」に対する,「前記圧縮符号化に必要な情報が含まれた状態」という限定事項を取り除いたものであるから,
本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
コンテンツサーバに格納されたコンテンツデータをネットワークを介してクライアント端末にダウンロードする際の通信路上での漏洩防止を目的としたコンテンツデータ処理方法であって,
前記コンテンツサーバは,前記クライアント端末から,所望のコンテンツの配信要求を受けると,
前記所望のコンテンツデータを暗号化し,
暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して,前記クライアント端末に送信し,
前記クライアント端末は,前記コンテンツサーバから,前記暗号化されたコンテンツデータと,前記コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して受信すると,
受信した前記暗号化されたコンテンツデータに対して,受信した前記復号化用プログラムを施すことにより,元のコンテンツデータを復元する,コンテンツデータ処理方法。

[相違点a]
“通信路上での漏洩防止を目的としたコンテンツデータ処理方法”に関して,
本願発明においては,「処理の高速化」も目的としているのに対して,
引用発明においては,「処理の高速化」については,特に,言及されていない点。

[相違点b]
“所望のコンテンツデータを暗号化”する点に関して,
本願発明においては,「所望のコンテンツに係る可変長圧縮コンテンツデータの一部であって,第三者による復元の困難性と処理速度とのトレードオフの観点から決められる量としての一部を暗号化」するものであるのに対して,
引用発明においては,「可変長圧縮コンテンツデータ」の「一部」を「暗号化」する点については,言及されていない点。

[相違点c]
“暗号化されたコンテンツデータと,コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して,前記クライアント端末に送信”することに関して,
本願発明においては,「その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して前記クライアント端末に送信」するものであるのに対して,
引用発明においては,送信される「暗号化されたコンテンツデータ」が,「その一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータ」である点の言及がない点。

[相違点d]
“クライアント端末は,前記コンテンツサーバから,前記暗号化されたコンテンツデータと,前記コンテンツデータの暗号化された部分に対応した復号化用プログラムを,前記ネットワークを介して受信すると,受信した前記暗号化されたコンテンツデータに対して,受信した前記復号化用プログラムを施すことにより,元のコンテンツデータを復元する”点に関して,
本願発明においては,「クライアント端末のブラウザは,前記コンテンツサーバから,一部が暗号化された可変長圧縮コンテンツデータと,その一部暗号化に対応した復号化用プログラムを前記ネットワークを介して受信すると,受信した一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータに対して,受信した復号化用プログラムを施すことにより,元の可変長圧縮コンテンツデータを復元する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「ブラウザ」が,「一部暗号化可変長圧縮コンテンツデータ」を「復号」する点については,特に,言及されていない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と引用発明との間の[相違点a]?[相違点d]は,本件補正発明と引用発明との間の[相違点1]?[相違点4]と,ほぼ,同等のものであるから,上記上記「第2.平成27年8月10日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-08 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2012-288133(P2012-288133)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 打出 義尚  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 辻本 泰隆
石井 茂和
発明の名称 コンテンツデータ処理方法、コンテンツサーバ、クライアント端末、及びコンテンツ配信システム  
代理人 石井 明夫  
代理人 佐野 弘  
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