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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1321776
審判番号 不服2015-21290  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-01 
確定日 2016-11-17 
事件の表示 特願2011-218945「サセプター及びその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日出願公開、特開2012- 80103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
2011年(平成23年)10月3日(パリ条約による優先権主張外国受理2010年10月1日、米国)の出願であって、平成26年8月12日付けで審査請求がなされ、平成27年6月10日付けで拒絶理由が通知され、同年8月12日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年9月4日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成27年12月1日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成27年12月1日付けの手続補正についての却下の決定

[補正却下の結論]
平成27年12月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年12月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの内部に形成された熱電対収納スペースと、
前記熱電対収納スペースに収納され、互いに材料組成の異なる第1及び第2素線の先端同士が接合されて測温部を形成している熱電対と、
を備え、
前記熱電対は、前記第1素線及び前記第2素線のうち前記測温部の手前の部分がばね力をもつツイスト状又はジグザグ状となっており、前記測温部は、前記セラミックプレートに前記ばね力をもって接している、サセプター。」

(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る記載は次のとおりである。
「円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの内部に形成された熱電対収納スペースと、
前記熱電対収納スペースに収納され、互いに材料組成の異なる第1及び第2素線の先端同士が接合されて測温部を形成している熱電対と、
を備え、
前記測温部は、前記セラミックプレートにばね力をもって接する形状に形成されている、サセプター。」

2 補正の適否について
(1)補正の目的について
補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明に対応し、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明に次の補正がなされたものである。

(a)補正前の請求項1の「前記測温部は、前記セラミックプレートにばね力をもって接する形状に形成されている、」について、補正後の請求項1において「前記熱電対は、前記第1素線及び前記第2素線のうち前記測温部の手前の部分がばね力をもつツイスト状又はジグザグ状となっており、前記測温部は、前記セラミックプレートに前記ばね力をもって接している、」とする補正。

補正事項(a)について検討すると、補正事項(a)により補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項(a)は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項(a)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項(a)は、補正前の「熱電対」の「ばね力をもって接する形状」について、「前記第1素線及び前記第2素線のうち前記測温部の手前の部分がばね力をもつツイスト状又はジグザグ状」であるとの限定を加え、上記限定に伴い、補正前の「前記セラミックプレートにばね力をもって接する」ことを「前記セラミックプレートに前記ばね力をもって接している」としたものであるから、特許法第17条の2第5項に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項(a)は、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(b)小括
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、特許法第17条の2第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)進歩性について
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記[理由]1の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(a)各引用例について
(a-1)引用例1の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2006-49844号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(ア)「【0002】
半導体製造プロセスなどでは、基板加熱装置として、円盤状のセラミックス基材中に線状の抵抗発熱体を埋設したセラミックスヒータが広く使用されている。」

(イ)「【0017】
更に、セラミックスヒータ10は、セラミックス基材群20の基板載置面10aと反対の面の中央部に、直接的または間接的に接続された管状部材40を備えることができる。例えば、図1(a)に示すように、円筒形の管状部材40は、セラミックス基材群20の基板載置面10aと反対の面(裏面)に直接接続されることができる。セラミックス基材群20は、管状部材40によって裏面から支持される。」

(ウ)「【0043】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る基板加熱装置も、基材としてセラミックスを使用したセラミックスヒータ11である。図2(a)に、セラミックスヒータ11の断面図を、図2(b)には、セラミックス基材群21の平面図をそれぞれ示す。セラミックスヒータ11も、従来一体であった円盤状のセラミックス基材を中央部のセラミックス基材21Aとその外周部のセラミックス基材21Bとに分割し、ギャップGを介して両者を同一面上に配置したセラミックス基材群21を有する。セラミックスヒータ11では、中央部のセラミックス基材21A内にも抵抗発熱体31を埋設させている点と、セラミックス基材群21と管状部材41の間に板状の補助部材70を有している点が第1の実施の形態に係るセラミックスヒータ10と主に異なる。」

(エ)「【0048】
図2(a)に示すように、抵抗発熱体30の端子30T2に接続される給電線51や熱電対62は、セラミックス基材21Bに埋設されずに、セラミックス基材群と補助部材との間に配線されることが好ましい。例えば、給電線51と熱電対62は、セラミックス基材群21、具体的には、セラミックス基材21Bの基板載置面11aと反対の面(裏面)に沿って配線できる。また、給電線51と熱電対62は、セラミックス基材群21に代えて、補助部材70の表面に沿って配線してもよい。これによれば、給電線51として、抵抗発熱体とは異なる、より低抵抗な導体、例えばNiやアルミニウムなどの細線を使用することができる。したがって、給電線51自身の発熱を抑制できる。そのため、セラミックス基材21A,21Bごとの精度の高い温度制御とあいまって、より精度の高い温度制御が可能になる。
【0049】
更に、セラミックス基材群21の基板載置面11aと反対の面(裏面)上に補助部材70を配置することにより、補助部材70によって給電線51や熱電対62が覆われている。したがって、腐食性ガス中での使用でも、給電線51や熱電対62の腐食を防止できる。」

(オ)「【0051】
補助部材70の材質は限定されないが、絶縁性を有することが好ましい。補助部材70は、セラミックスヒータ11の使用温度範囲で十分な耐熱性を有することが好ましい。例えば、300℃以下の比較的低温で使用する場合は、補助部材70を、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアプラスティック材料で形成することが可能である。400℃以上の高温雰囲気で使用する場合は、補助部材70は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、ムライト、窒化ホウ素、サイアロン等のセラミックスを含むことが好ましい。さらに、セラミックス基材群21と補助部材70との接続部分において熱膨張係数の相違に基因する熱応力の発生を抑制するためには、補助部材70をセラミックス基材群21と同じ主成分を持つセラミックスで形成することが好ましい。
【0052】
なお、補助部材70は、セラミックス基材群21と接する面に、給電線51や熱電対62をガイドするガイド用溝を備えることが好ましい。また、セラミックス基材群21がガイド用溝を備えてもよい。
【0053】
補助部材70とセラミックス基材群21との接続は、ねじ止めで行うことが好ましい。接続作業が簡易化でき、分解修理も容易に可能となるからである。なお、セラミックスヒータ11を腐食性ガス中で使用する場合や、200℃以上の高温で使用する場合は、インコネル等のNi基合金のネジや、カーボンやセラミックスのネジを使用してネジ止めすることが好ましい。また、熱膨張係数の相違による熱応力の発生を防止するためには、セラミックス基材群21、補助部材70及びネジ止めに用いるネジを、同一のセラミックス、例えば窒化アルミニウムで形成することが好ましい。Ni基合金のネジを使用する場合はセラミックス基体のめねじ部にNi基合金のヘリサートを入れておくとよい。」

上記(ア)?(オ)の記載を参照すると、次のことがいえる。

(あ)上記(ア)の記載から、引用例1に記載された発明のセラミックスヒータ11は、半導体製造プロセスなどで、基板加熱装置として、円盤状のセラミックス基材中に線状の抵抗発熱体を埋設したものであることがわかる。

(い)上記(イ)の記載から、引用例1に記載された発明のセラミックヒータ11は、管状部材41を備えているとともに、上記(ウ)の記載から、円盤状のセラミックス基材を中央部のセラミックス基材21Aとその外周部のセラミックス基材21Bとに分割したセラミックス基材群21を有するとともに、セラミックス基材群21と管状部材41の間に板状の補助部材70を有していることがわかる。

(う)上記(エ)の記載から、引用例1に記載された発明の熱電対は、セラミックス基材群と補助部材との間に配線され、セラミックス基材群と補助部材とで覆われていることがわかる。

(え)上記(オ)の記載から、引用例1に記載された発明の補助部材は、セラミックス基材群21と同じ主成分を持つセラミックスで形成されていることがわかる。また、補助部材は、セラミックス基材群21と接する面に、給電線51や熱電対62をガイドするガイド用溝を備えているとともに、補助部材とセラミックス基材群とは、ねじ止めにより接続されていることがわかる。

上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体製造プロセスなどで、基板加熱装置として、円盤状のセラミックス基材中に線状の抵抗発熱体を埋設したものであるセラミックヒータ11において、
セラミックヒータ11は、管状部材41と、円盤状のセラミックス基材を中央部のセラミックス基材21Aとその外周部のセラミックス基材21Bとに分割したセラミックス基材群21と、セラミックス基材群21と管状部材41の間に板状の補助部材70を有し、
補助部材70は、セラミックス基材群21と同じ主成分を持つセラミックスで形成され、セラミックス基材群21と接する面に、熱電対62をガイドするガイド用溝を備えるとともに、セラミックス基材群21とは、ねじ止めにより接続されており、
熱電対62は、セラミックス基材群21と補助部材70との間に配線され、セラミックス基材群21と補助部材70とで覆われている、
セラミックヒータ11。」

(a-2)引用例2の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平4-331794号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のMBE法による結晶成長装置においては、基板ホールダと、熱電対と、移動機構とを有するMBE法による結晶成長装置であって、基板ホールダは、反応槽に設置され、表面側に成長用基板を取付けるものであり、熱電対は、ばね性を有し、成長用基板を取付けた基板ホールダの表面一部に接触させて基板温度を測定するものであり、移動機構に保持され、移動機構は、熱電対を支えて、基板ホールダの表面に先端が接触する位置と、反応槽のセルポート間を進退動させるものである。
【0008】
【作用】セルポート側から熱電対を基板ホールダに直接接触させる。熱電対は、ばね作用を有し、ばね力を作用させて熱電対の先端を基板ホールダの表面に強く接触させて基板の表面温度を正確に知ることができる。成長終了後は、熱電対をセルポート外に引き戻す。」

(イ)「【0010】本発明においては、セルポート4の1つを用いてシース熱電対5を反応槽1内に差し込み、これを基板ホールダ2の表面にその先端を接触させるものである。シース熱電対5は、図2のようにパイプ7内に収納支持され、配線途中をコイル上に巻回してその一部にばね6が形成されている。」

上記(ア)および(イ)の記載によれば、引用例2には、次の事項が記載されているといえる。

<引用例2の記載事項>
基板温度を測定する熱電対であって、熱電対の配線途中をコイル状に巻回してその一部にばねを形成し、ばね力を作用させて熱電対の先端を基板ホールダの表面に強く接触させることにより、基板の表面温度を正確に知る。

(a-3)引用例3の記載について
優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2009-53038号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)「【0004】
保護管2はその内部に複数の熱電対3を挿入してこれらの熱電対3を保護するための管である。保護管2は、その先端部が密封されて内部が空洞になっている。熱電対3は、温度を測定する素子である。熱電対3は、2本の異種の金属線の先端部を接合して形成した測温接点を備えている。」

上記(ア)の記載によれば、次の事項は周知技術と認められる。

<引用例3に記載された周知技術>
熱電対は、温度測定を行う素子であり、2本の異種の金属線の先端部分を接合した測温接点を有している。

(b)対比
(b-1)本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

(ア)引用例1発明の「熱電対62」は、本件補正発明の「熱電対」に相当する。
(イ)引用例1発明は、円盤状のセラミックス基材を中央部のセラミックス基材21Aとその外周部のセラミックス基材21Bとに分割したセラミックス基材群21は、セラミックス基材群21と同じ主成分を持つセラミックスで形成された補助部材41とねじ止めにより接続されており、一体であると言えるから、引用例1発明の「セラミックス基材群21」および「補助部材41」は、本件補正発明の「円盤状のセラミックプレート」に相当する。
(ウ)そして、引用例1発明は、補助部材のセラミックス基材群21と接する面に熱電対62をガイドするガイド用溝を備え、熱電対62は、セラミックス基材群21と補助部材41との間に配線され、セラミックス基材群21と補助部材41とで覆われているから、引用例1発明の「ガイド溝」は、本件補正発明の「前記セラミックプレートの内部に形成された熱電対収納スペース」に相当する。
そして、引用例1発明の熱電対62は、ガイド溝に収納されているから、引用例1発明と本件補正発明と、「前記熱電対収納スペースに収納され」た、「熱電対」を有している点で一致する。
(エ)引用例1発明の「セラミックヒータ11」は、本件補正発明の「円盤状のセラミックプレート」に相当する、「セラミックス基材群21」および「補助部材41」を有しているから、本件補正発明の「サセプター」に相当する。


(b-2)以上(ア)?(エ)のことから、本件補正発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの内部に形成された熱電対収納スペースと、
前記熱電対収納スペースに収納された熱電対と、
を備える、サセプター。」

[相違点1]
本件補正発明の「熱電対」は、「互いに材料組成の異なる第1及び第2素線の先端同士が接合されて測温部を形成している」のに対して、引用例1発明の「熱電対」の具体的な構成の明示がない点。

[相違点2]
本件補正発明の「熱電対」は、「前記第1素線及び前記第2素線のうち前記測温部の手前の部分がばね力をもつツイスト状又はジグザグ状となっており、前記測温部は、前記セラミックプレートに前記ばね力をもって接している」のに対して、引用例1発明は対応する構成を有していない点。

(c)当審の判断
上記各相違点について検討する。

(c-1)[相違点1]について
熱電対が、「互いに材料組成の異なる第1及び第2素線の先端同士が接合されて測温部を形成している」ことは、引用例3に記載されているように、周知の構成である。
そして、引用例1発明の「熱電対62」も、同様の構成を有していることは、当業者にとって明らかである。

(c-2)[相違点2]について
熱電対をもちいて、基板等の温度を測る際に、基板の温度を正確に測るために、熱電対の配線途中をコイル状に巻回してその一部にばねを形成し、ばね力を作用させて熱電対の先端を強く接触させることは、引用例2に記載されているように公知の技術である。
引用例1発明において、円盤状のセラミックス基材に乗せられた基板の温度を正確に測る必要があることは明らかであるから、引用例1発明の熱電対を上記公知技術と同様の構成とすることは、当業者が適宜為し得ることである。
その際、上記公知技術は、熱電対をコイル状に巻回してその一部にばねを形成していることから、本件補正発明の「ばね力をもつツイスト状」と同様の構成となっていることは明らかであり、また、該「ばね力をもつツイスト状」は、引用例1発明に上記公知技術を適用した際に、ばね力が熱電対の先端を強く接触させる方向に働くように、「測温部の手前の部分」に形成されることも明らかであると認められる。
そうすると、引用例1発明に上記公知技術を適用した際に、熱電対は、本件補正発明と同様に「前記第1素線及び前記第2素線のうち前記測温部の手前の部分がばね力をもつツイスト状又はジグザグ状となっており、前記測温部は、前記セラミックプレートに前記ばね力をもって接」することとなると認められる。

(c-3)小括
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は,引用例1発明及び引用例2,3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用例1発明及び引用例2,3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(d)進歩性についての結論
したがって、本件補正発明は、引用例1発明及び引用例2,3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
「2 補正の適否について」で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 補正却下の決定を踏まえた検討

(1)本願発明
平成27年12月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年8月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの内部に形成された熱電対収納スペースと、
前記熱電対収納スペースに収納され、互いに材料組成の異なる第1及び第2素線の先端同士が接合されて測温部を形成している熱電対と、
を備え、
前記測温部は、前記セラミックプレートにばね力をもって接する形状に形成されている、サセプター。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2および周知技術を示す文献である引用例3には、上記「第2 [理由]2(2)(a)」に記載したとおりの事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から、上記「第2 [理由]2(1)」に記載した補正事項(a)に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]2(2)」に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2,3記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-14 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-04 
出願番号 特願2011-218945(P2011-218945)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
鈴木 匡明
発明の名称 サセプター及びその製法  
代理人 特許業務法人アイテック国際特許事務所  

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