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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 F03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F03G
管理番号 1321993
審判番号 不服2015-21029  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2016-11-21 
事件の表示 特願2015-87「振動波による推進力発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月19日出願公開、特開2016-84799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月5日(優先権主張 平成26年10月28日)の出願であって、平成27年4月14日付けで拒絶理由が通知され、平成27年5月20日に図面を補正する手続補正書が提出され、平成27年5月28日、平成27年6月14日及び平成27年6月18日にそれぞれ意見書が提出されたが、平成27年9月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の理由
原査定の特許法第29条第1項柱書、及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとする理由の概要は、平成27年4月14日付けの拒絶理由通知書及び平成27年9月1日付けの拒絶査定からみて、次のとおりである。

(1)理由1(特許法第29条第1項柱書)
請求項1ないし3に係る発明は、「推進力発生装置」に関するものであり、振動発生体、垂直軸、振動伝播台、モーター、小歯車及び中央大歯車からなる系に対して外部から力を加えることなく、当該系の運動量の総和を変化させようとするものであるから、運動量保存の法則に反しているものと認められる。
そうすると、請求項1ないし3に係る発明は自然法則に反するものであるから、特許法第2条第1項でいうところの「自然法則を利用した技術的創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」に該当しない。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号)
明細書の段落【0015】によれば、垂直軸15に固定された振動伝播台6の端部が加重体2の遠心力により上昇方向に振動すると、小歯車13からの上昇成分の振動力が中央大歯車12を押し上げるが、下降方向に振動する場合は、下降成分の振動力は中央大歯車12には伝播しないため、上昇成分の振動力が垂直軸15を押し上げる作用力となり、総じて機体重量を軽減する力になるとのことであるが、下降方向に振動する場合は、振動伝播台6を介して垂直軸15に下降成分の力が加わるため、総じて機体重量を軽減するということにはならないと考えられる。
そうすると、どのようにして推進力を発生し得るのかを理解することができない。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

第3 当審の判断
(1)本願発明
本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲並びに平成27年5月20日提出の手続補正書により補正された図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる次のとおりのものである。

「【請求項1】
水平回転軸を回転軸とする回転板の外側又は外縁に加重体を取付けた単独回転体一式を振動発生体とし、回転可能な垂直軸に固定した振動伝播台の端に該振動発生体を複数個配置し、同期回転する振動発生体と連結する複数のモーター回転軸に小歯車を固定し、垂直軸を回転する中央大歯車を下向きに取付け、中央大歯車を上方側とし、複数の小歯車を下方側から噛合わせ、振動伝播台の振動力を作用力とする、振動波による推進力発生装置。
【請求項2】
垂直軸を非回転とする請求項1記載の振動波による推進力発生装置。
【請求項3】
小歯車の固定位置を水平回転軸上又は水平回転軸と連動する回転軸上とする請求項1記載の振動波による推進力発生装置。」

(2)本願明細書の記載
a)「【0005】
特許文献1において、複数の加重体(単独回転体)及びモーターを回転同期させる方法として、コントローラを用いてその目的を達成する意図が示されている。しかし、回転板から離れた距離にある加重体を回転させると、遠心力が不均衡なためターンテーブル(振動伝播台)が振動して加重体の回転軸に回転負荷が掛かるため、通常の回転より回転抵抗が大きく回転速度は大幅に遅くなるものであった。そのため、コントローラ制御が的確に機能せず、複数のモーターをコントローラで回転同期させることは技術的に困難であった。
又、回転同期した場合でも、遠心力により装置の重量変化を伴う上下振動が発生するのみで、推進力は発生しないことを本装置の実験過程で確認した。
機体に上昇推進力を発生させるには、上昇側にのみ作用力を発生させる仕組みでなければならない。」(段落【0005】)(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)

b)「【0006】
回転板の外側(又は、外縁)に取付けた複数の加重体(単独回転体)を回転同期させる手段として、複数の両軸モーターの片軸に小歯車を固定し、1個の中央大歯車に前記小歯車を集中連動させることにより、確実に回転同期が得られる形態を考案した。
この形態により、多くのモーターを脱調することなく容易に回転同期できる。
また、中央大歯車は各モーター軸の小歯車からの回転力及び上昇振動力を受けるため、装置の外部に作用力を及ぼすことなく推進力を発生させるための重要な機能を有する。」(段落【0006】)

c)「【0015】
垂直軸は回転可能な状態で機体に固定してあり、垂直軸を持ち上げるためには機体の全重量分の力が必要になる。そのため、通常は振動伝播台の振動力より大きい静止摩擦力が作用している。
この垂直軸に同軸を回転する中央大歯車の歯先を下向きに取付け、各モーター軸に固定した小歯車の上方を中央大歯車と噛合せて配置する。これにより複数の単独回転体は回転同期が可能となり、各単独回転体による遠心力の周期も一致することになる。
加重体の遠心力により振動伝播台の端が上昇方向にたわむと、モーター軸に固定した小歯車にも上昇方向の振動力が伝播する。小歯車から上昇成分の振動力は外部側にある中央大歯車を押し上げ、下降成分の振動力は噛合わないため中央大歯車には伝播しない。この上昇成分の振動力が、垂直軸を押し上げる作用力となり、総じて機体重量を軽減する力になる。
モーター1個当りの小歯車の上昇成分力は限定的であるが、数個が同時に作用するため数倍の力になる。
【0016】
実験装置1の、中央大歯車は基準円直径が32mmと小さく、垂直軸に近いため振動力は減衰する位置にあるが、機体重量を軽減させる作用力が発生することが確認できた。」(段落【0015】及び【0016】)

d)「【0028】・・・・(中略)・・・・
垂直軸に固定された振動伝播台の端部が、加重体の遠心力により上昇方向に振動すると、振動伝播台上のモーター回転軸上の小歯車も振動力により上昇する。噛合っている外部側の中央大歯車は上向きの振動力により押し上げられ、下向きの振動力は噛合わないため中央大歯車には伝播しない。従って、小歯車の上昇作用力は中央大歯車を回転させながら垂直軸を押し上げることになり、装置全体の荷重を減少させることになる。」(段落【0028】)

e)「【0033】
本装置は、加重体の遠心力による振動伝播台のたわみを応用して、振動波を発生させて推進力とする推進機関である。
機体外部に作用力を及ぼすことなく推進力を発生し、全く無公害で環境に適した推進機関である。産業上の利用可能性として、地上や宇宙空間等あらゆる環境の中で推進力を発生することが可能である。多方面での利用が期待でき経済効果を生むものと考える。」(段落【0033】)

(3)理由1(特許法第29条第1項柱書)についての検討
まず、運動量の保存の法則とは、「ある質点系において、その質点系が互いの質点間に働く内力のみを受ける場合、その系の全ベクトル運動量は一定である。」(マグローヒル 科学技術用語辞典 改訂第3版第2刷 日刊工業新聞社 2001年5月31日 139ページ)というものである。
そして、上記(2)a)、b)、c)及びd)によれば、「加重体の遠心力により振動伝播台の端が上昇方向にたわむと、モーター軸に固定した小歯車にも上昇方向の振動力が伝播」するものであって、「小歯車から上昇成分の振動力は外部側にある中央大歯車を押し上げ、下降成分の振動力は噛合わないため中央大歯車には伝播しない」ことにより、推進力は、加重体の遠心力による小歯車の上昇作用力のみが中央大歯車と垂直軸を押し上げることにより得られると説明されているところ、中央大歯車は小歯車から推進力を受けると同時に、小歯車は、推進力に見合った大きさであり、かつ、逆方向の反力を中央大歯車から受け、その反力は、振動伝播台と垂直軸を通じて中央大歯車に伝達されることは、装置の構造から見れば明らかである。
そうすると、上記推進力と反力とは装置の内部で互いに打ち消しあうこととなり、それらは装置の外部に対して作用力を及ぼすものではなく、「推進力発生装置」を構成する「水平回転軸」、「回転板」及び「加重体」からなる「振動発生体」並びに「振動伝播台」、「垂直軸」、「モータ」、「小歯車」及び「中央大歯車」の各質点からなる装置全体は1つの質点系とみなすことができるから、上記推進力は、「小歯車」と「中央大歯車」とからなる質点間に働く内力であるということができる。
以上によれば、「推進力発生装置」を構成する質点系は、装置の外部に対して作用力を及ぼすものではなく、質点系が互いの質点間に働く内力のみを受ける場合に相当するから、上記運動量保存の法則によれば質点系の全ベクトル運動量は一定となる。
しかしながら、上記(2)b)及びe)によれば、請求項1ないし3に係る発明の「推進力発生装置」が推進力を発生すると説明されており、装置が静止している状態から推進力を得て0ではない速度を得る、ひいては、質点系のベクトル運動量を変化させることになるから、請求項1ないし3に係る発明の「推進力発生装置」は、運動量保存の法則に反するものといわざるを得ない。

よって、請求項1ないし3に係る発明は自然法則に反するものであるから、特許法第2条第1項でいうところの「自然法則を利用した技術的創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」に該当しない。

(4)理由2(特許法第36条第4項第1号)についての検討
上記(3)において検討したとおり、推進力は、「小歯車」と「中央大歯車」とからなる質点間に働く内力であって、「推進力発生装置」を構成する質点系は、装置の外部に対して作用力を及ぼすものではない。
また、上記(2)b)及びe)によると、請求項1ないし3に係る発明の推進力発生装置は、装置の外部に作用力を及ぼすものではないとしている。
そうすると、一般に、質量が変化しない物体が推進力を発生するためには、物体が地面や周囲の空気又は水などの周囲の環境に対して力を印加して反力を受ける必要があると理解されるところ、請求項1ないし3に係る発明の推進力発生装置は、装置の外部に作用力を及ぼすものではなく、しかも、装置全体の質量が変化するものではないから、請求項1ないし3に係る発明の推進力発生装置によって、どのようにして同じ方向であって、かつ連続した推進力を生成するのか、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面並びに出願時の技術水準を考慮しても理解することができない。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
したがって、本件出願は、上記理由1及び理由2によって、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-07 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2015-87(P2015-87)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (F03G)
P 1 8・ 1- Z (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 康平  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
松下 聡
発明の名称 振動波による推進力発生装置  
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