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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1322005
審判番号 不服2014-14780  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-29 
確定日 2016-11-25 
事件の表示 特願2011-548522「全体に継ぎ目がない構造の卓球ボール」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日国際公開、WO2010/111920、平成24年 8月 2日国内公表、特表2012-517248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2010年3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年3月31日、中国)の国際出願であって、平成25年10月7日付けで手続補正書が提出され、平成26年3月28日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年4月1日)、これに対し、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、さらに、当審において、平成27年4月7日付けで拒絶理由を通知したところ、同年7月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願の発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成27年7月8日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「卓球ボールの製造原料を卓球ボールの大きさと一致する球形型に加えて型を閉じ、この球形型を回転成形機に装着し、回転成形機の二つの回転軸の軸線もこの型の球形キャビティの球心を通り、且つ二つの回転軸の軸線が互いに垂直となるようにし、
球形型を同時に上述の二つの回転軸の周りを回転させ、回転速度の範囲を20rpm-3000rpmに制御することによって、型に流動可能な原料が遠心力と自身重力の作用で型のキャビティ内壁に付着され、球殻になり、
球形型が回転状態を維持する状態では、原料が固化してから球殻になり、型を開き、離型して球殻を取り出す工程を包含し、
前記卓球ボールは、一次成形の中空密封球殻であって、且つ連続的な内表面を有しており、
前記卓球ボールの球殻の殻体に如何なる再加工の接合継ぎ目も有しなく、球殻の内表面に見える接合継ぎ目がなく、
前記卓球ボールの球殻が基本的に統一的な肉厚を有し、且つ球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下であることを特徴とする卓球ボールの製造方法。」

第3.当審で指摘した拒絶理由1について
当審において平成27年4月7日付けで通知した拒絶の理由1の概要は、本願の請求項1?3に係る発明は,本願の優先権主張の日前の昭和64年2月16日に頒布された実願昭62-121706号(実開昭64-27210号)のマイクロフィルム (以下「引用例1」という。)、同じく平成21年2月26日に頒布された特表2009-507589号公報(以下「引用例2」という。)、同じく平成11年9月28日に頒布された特開平11-262923号公報(以下「引用例3」という。)、同じく昭和60年8月1日に頒布された特開昭60-145817号公報(以下「引用例4」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというもので、以下、この拒絶の理由1について検討する。

1.引用例の記載事項
(1)引用例1には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)
ア.「内周面を球面に形成した金型を第1の軸芯周りで駆動回転自在にホルダーに保持するとともに、前記ホルダーを前記第1の軸芯に直交する第2の軸芯周りで駆動回転自在に支持台に取り付けてあることを特徴とする球状体製造装置。」(第1頁第5?9行)
イ.「<産業上の利用分野>
本考案は、合成樹脂製のボールや装飾用として用いられる球体などを製造する球状体製造装置に関する。」(第1頁第11?14行)
ウ.「<作用>
上記構成によれば、ウレタン樹脂などの合成樹脂の液体を金型内に注入し、その状態で、互いに直交する第1の軸芯と第2の軸芯それぞれの周りで金型を駆動回転させ、遠心力により、合成樹脂液を金型の内周面全面にわたって所定の厚みで貼り付ける状態にし、駆動回転を継続しながら固化して球状体を得ることができる。」(第2頁第20行?第3頁第7行)
エ.「<実施例>
以下、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は、本考案の球状体製造装置に係る実施例の一部切欠全体側面図である。
この図において、1は支持台であり、この支持台1上に、電動モータ2と支持ブラケット3とが設置されている。
支持ブラケット3には、軸受部4を介して水平方向の軸芯P2周りで回転自在に回転軸5が軸架され、この回転軸5と電動モータ2の駆動軸6とが軸継手7を介して一体回転自在に連結されている。
回転軸5の先端は、第1ホルダー8と第2ホルダー9とに分岐され、第1ホルダー8は回転軸5に一体連接されており、一方、第2図のA-A線断面図に示すように、第2ホルダー9は、ピン10を介して、回転軸5に、それに直交する軸芯Q周りで揺動自在に連結されている。
回転軸5に、その軸芯方向に摺動自在に筒体11が取り付けられ、この筒体11を揺動軸芯Q部分に外嵌することによって第2ホルダー9の揺動を阻止するように構成されている。筒体11と回転軸5に取り付けられたバネ受け12との間に圧縮コイルスプリング13が介装され、通常時において、揺動軸芯Q部分を外嵌する位置に筒体11が摺動変位するように付勢し、回転状態で第1ホルダー8に対して第2ホルダー9にガタツキを生じないように構成されている。
第1ホルダー8の先端には電動モータ14が取り付けられ、内周面を球面に形成した金型15を構成する半割り部材15aが、前記水平方向の軸芯P2に直交する軸芯P1周りで回転するように電動モータ14に連動連結されている。
一方、第2ホルダー9の先端に、金型15を構成する他方の半割り部材15bに連接された支軸16が回転のみ自在に取り付けられている。
また、第2ホルダー9の先端に、前記電動モータ14と等しいまたはほぼ等しい重量のバランスウェイト17が取り付けられ、水平方向の軸芯P2周りでの駆動回転をバランス良く行うことができるように構成されている。
一方の半割り部材15aの外周端面の近くで周方向に所定間隔を隔てた3箇所それぞれに、蝶ナット18を付設したネジ軸19が揺動自在に設けられ、そして、他方の半割り部材15bの所定の3箇所それぞれに、前記ネジ軸19を係脱自在に係入する係止部20が設けられ、半割り部材15bの周端面を半割り部材15aの周端面に突き合わせ、その状態でネジ軸19を係止部20に係入して蝶ナット18を締め付け、シール状態で密封するように構成されている。」(第3頁第8行?第5頁第19行)
オ.「以上の構成により、半割り部材15aを下方に位置させた状態で他方の半割り部材15bを開き、そこに、固化後に弾性を発現する合成樹脂の液の所定量を注入し、半割り部材15bの周端面を半割り部材15aの周端面に突き合わせ、蝶ナット18を締め付けてシール状態で密封した後に両電動モータ2,14を駆動し、金型15を駆動回転しながら固化させることによって、ボールなどの中空状の球状体を製造できるのである。」(第6頁第6?14行)
カ.「<考案の効果>
本考案によれば、継ぎ目の無い状態で球状体を製造できるから、その外表面に凹凸ができることを回避でき、外表面が全体にわたって滑らかで商品価値の高い球状体を製造できるようになり、しかも、合成樹脂の液体を注入した金型を駆動回転することによって球状体を一挙に製造できるから、半球体どうしを一体化するための縫合や熱溶着といった工程を無くすことができ、球状体を手間少なくかつ容易にして製造でき、ボールや装飾用の球体といった球状体を安価に製造できるようになった。」(第7頁第15行?第8頁第6行)

また、上記の記載から、半割り部材15aを下方に位置させた状態で他方の半割り部材15bを開き、そこに、固化後に弾性を発現する合成樹脂の液の所定量を注入し、半割り部材15bの周端面を半割り部材15aの周端面に突き合わせ、蝶ナット18を締め付けてシール状態で密封した後に両電動モータ2,14を駆動し、金型15を駆動回転しながら固化させることによって、ボールなどの中空状の球状体を製造しているといえるから、「合成樹脂製のボールの製造方法」が示されているといえる。


上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「内周面を球面に形成した金型15を第1の軸芯P1周りで駆動回転自在にホルダー8,9に保持するとともに、前記ホルダーを前記第1の軸芯P1に直交する第2の軸芯P2周りで駆動回転自在に支持台1に取り付けてある球状体製造装置を用いる合成樹脂製のボールの製造方法であって、
金型15を構成する一方の半割り部材15aを下方に位置させた状態で他方の半割り部材15bを開き、そこに、固化後に弾性を発現する合成樹脂の液の所定量を注入し、半割り部材15bの周端面を半割り部材15aの周端面に突き合わせてシール状態で密封した後に、金型15を軸芯P2周りで駆動回転させる電動モータ2と、軸芯P1周りで駆動回転させる電動モータ14とを駆動し、金型15を駆動回転しながら、遠心力により、合成樹脂液を金型の内周面全面にわたって所定の厚みで貼り付ける状態にし、駆動回転を継続しながら固化させることによって、継ぎ目の無い状態で外表面が全体にわたって滑らかな合成樹脂製のボールの製造方法。」

(2)引用例2には、以下の事項が記載されている。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくは38.5mmから48mmの直径であり、2.0gから4.5gの重さであり、殻(シェル)の厚さが(約)0.20mmから1.30mmであり、その殻(シェル)が有機無架橋ポリマーを主成分とするプラスチックで構成され、その有機ポリマーは主鎖中に炭素原子のみならずヘテロ原子も有することを特徴とするセルロイドを含まない卓球ボール。
【請求項2】
有機ポリマーが熱可塑性プラスチックであることを特徴とする請求項1に記載のセルロイドを含まない卓球ボール。
【請求項18】
望ましくは回転成形により製造された一体の殻(シェル)で作られていることを特徴とする前記請求項1から請求項17のいずれか一つ以上に記載のセルロイドを含まない卓球ボール。」

また、上記の記載から、卓球ボールを回転成形により製造しているといえるから、「卓球ボールの製造方法」が示されているといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「一体の殻(シェル)で作られているセルロイドを含まない熱可塑性プラスチック卓球ボールを回転成形により製造された卓球ボールの製造方法。」

(3)引用例3には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の反応射出成形では、開口部を有しない中空製品や内部の中空部に対して開口部が小さい製品を成形することは困難であった。」
イ.「【0014】本発明方法は、薄肉の中空成形品の製造に優れており、肉厚が5mm程度以下のものの製造に特に適している。ただし、5mm以上の肉厚のものの成形も勿論可能である。本発明方法によりチューブ状の成形品を製造することもでき、この場合には、薄肉で内面がきれいな成形品を得ることができるので、流体を流通させるチューブなどの製造にも適している。」
ウ.「【0034】第1実施形態
本実施形態では、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液を反応させて重合させ、図1に示すような開口部の大きさが内部空間に比較して小さい成形体(中・小型浄化槽の槽体1)を製造する方法について説明する。この成形体を成形するために、本実施形態では、図2に示す成形装置を用いる。
【0035】同図において、2は金型であり、金型2は、割面3に沿って縦方向に2つに分割可能な割型4で構成され、この割型4が組み合わされた状態で、回転駆動装置の略コの字状に形成された支持部材5に回転自在に支持される。割型4は、たとえばアルミニウム製鋳物などで構成してある。
【0036】組み合わされた状態の金型2は支持部材5に支持された状態で、回転中心軸S1を中心として回転自在となっており、駆動モータを有する第1回転駆動装置6によって回転駆動される。また、支持部材5は駆動モータを有する第2回転駆動装置7によって回転中心軸S2を中心として回転駆動されるようになっており、これらの第1および第2回転駆動装置6,7によって、金型2が比較的にゆっくりとした速度で各軸S1,S2回りに回転駆動される。
【0037】金型2の内部には反応原液が注入される。金型2には、反応原液の注入口8が形成されている。この注入孔8は、浄化槽の槽体のマンホールに相当する部分を形成するための凸部に設けられている。この注入孔8には、先端にノズル9aを有するフレキシブルホース9を介して反応原液供給装置10が接続されており、この反応原液供給装置10から一時に、継続的に、あるいは断続的に反応原液が供給されることにより、金型2の内部に反応原液が注入される。
【0038】反応原液はこの実施形態では、組み立てられた金型2を回転駆動装置に支持した状態で注入孔8を介して内部に注入できるようになっているが、このような注入孔8を設けず、一方の割型のみを回転駆動装置に支持しておき、反応原液を割方の一方に入れた後に他方の割型を装着するようにでき、あるいは割型4に反応原液を入れ、金型2を組み立てた後に回転駆動装置に支持することもできる。」
エ.「【0048】成形を開始するには、反応原液供給装置10のミキサーを制御し、タンクからのA液およびB液を混合し、その混合液を反応原液として、ノズル9aを用いて、金型2の注入孔8から金型2の内部に供給する。金型2内に供給された反応原液の粘度は、30°Cにおいて、500?100000cpsであり、金型2を比較的にゆっくりした速度で直交2軸回りに回転することで、すなわち自転および公転させることで、反応原液は、重力および自らの粘性により金型2の内周面に一様に分布されつつ、反応重合が進行することにより、金型2の内周面に張り付くことになる。
【0049】金型2の回転速度は、反応原液が重力によって金型2の内周面に一様に分布する程度となるように設計され、たとえば90?200rpm程度である。なお、この回転は、連続的に行う必要は必ずしもなく、所定の角度回転した後に停止して所定時間の経過後、再度回転することを繰り返すようにできる。また、回転方向も一方向に限らず、一方向に所定角度回転した後に逆方向に所定角度回転するというように回転することができる。」

また、上記の記載から、金型2を直交2軸回りに回転させて、薄肉の中空成形品を製造しているといえるから、「薄肉の中空成形品の製造方法」が示されているといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「金型を90?200rpm程度の速度で直交2軸回りに回転させる薄肉の中空成形品の製造方法。」

(4)引用例4には、以下の事項が記載されている。
ア.「産業上の利用分野
本発明はピンポン球、水洗便器用浮子、漁業用浮子、玩具等に使用される中空半球体の製造法及びその装置に関するものである。
従来技術
従来樹脂による中空球体の製造としてはブロー成形法、シートホーミングによる半球製造後嵌合させる方法及び回転成形方法等がある。」(第1頁右下欄第1行?第8行)
イ.「第3の回転成形法によればこれは前記第1、2の方法より偏肉減少の発生がなく又球体として真円度のあるものがえられるが、回転成形に適する材質上の制限があり、又金型接合面におけるバリの発生や嵌合接着時の作業性については依然として問題点を残している。」(第1頁右下欄第19行?第2頁左上欄第5行)

上記の記載事項を総合すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「偏肉減少の発生がなく又球体として真円度のある中空球体がえられる回転成形方法によるピンポン球、水洗便器用浮子、漁業用浮子、玩具等に使用される中空球体の製造法。」

2.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「内周面を球面に形成した金型15」は、前者における「ボールの大きさと一致する球形型」に相当しており、以下同様に、「第1の軸芯P1と第1の軸芯P1に直交する第2の軸芯P2」は「軸線が互いに垂直となるようにした二つの回転軸」に、「球状体製造装置」は「回転成形機」に、「固化後に弾性を発現する合成樹脂の液」は「『ボールの製造原料』及び『流動可能な原料』」に、「半割り部材15bの周端面を半割り部材15aの周端面に突き合わせてシール状態で密封」は「型を閉じ」に、「金型15を軸芯P2周りで駆動回転させる電動モータ2と、軸芯P1周りで駆動回転させる電動モータ14とを駆動し、金型15を駆動回転しながら」は「球形型を同時に上述の二つの回転軸の周りを回転させ」に、「遠心力により、合成樹脂液を金型の内周面全面にわたって所定の厚みで貼り付ける状態にし、駆動回転を継続しながら固化させる」は「型に流動可能な原料が遠心力と自身重力の作用で型のキャビティ内壁に付着され、球殻になり、球形型が回転状態を維持する状態では、原料が固化してから球殻になり」に、それぞれ相当している。
また、後者は、金型15を軸芯P2周りで駆動回転させると共に、軸芯P1周りで駆動回転させながら、遠心力により、合成樹脂液を金型の内周面全面にわたって所定の厚みで貼り付ける状態にし、駆動回転を継続しながら固化させることによって、継ぎ目の無い状態で外表面が全体にわたって滑らかな合成樹脂製のボールを製造するのであるから、後者の軸芯P1及び軸芯P2も、前者の二つの回転軸と同様に、軸線が「型の球形キャビティの球心」を通るものといえる。
また、後者においても、前者と同様に「型を開き、離型して球殻を取り出す工程を包含」することは明らかである。
さらに、後者のボールについて、「継ぎ目の無い状態で外表面が全体にわたって滑らか」としているところから、前者と同様に「ボールは、一次成形の中空密封球殻であって、且つ連続的な内表面を有しており、前記ボールの球殻の殻体に如何なる再加工の接合継ぎ目も有しなく、球殻の内表面に見える接合継ぎ目がな」いものといえる。

したがって、両者は、
「ボールの製造原料をボールの大きさと一致する球形型に加えて型を閉じ、この球形型を回転成形機に装着し、回転成形機の二つの回転軸の軸線もこの型の球形キャビティの球心を通り、且つ二つの回転軸の軸線が互いに垂直となるようにし、
球形型を同時に上述の二つの回転軸の周りを回転させ、型に流動可能な原料が遠心力と自身重力の作用で型のキャビティ内壁に付着され、球殻になり、
球形型が回転状態を維持する状態では、原料が固化してから球殻になり、型を開き、離型して球殻を取り出す工程を包含し、
前記ボールは、一次成形の中空密封球殻であって、且つ連続的な内表面を有しており、
前記ボールの球殻の殻体に如何なる再加工の接合継ぎ目も有しなく、球殻の内表面に見える接合継ぎ目がない、
ボールの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「卓球ボール」の製造方法であるのに対し、引用発明1は、「ボール」の製造方法である点。
[相違点2]
本願発明では、(球形型の)「回転速度の範囲を20rpm-3000rpmに制御する」のに対し、引用発明1は回転速度について明らかでない点。
[相違点3]
本願発明は、「球殻が基本的に統一的な肉厚を有し、且つ球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下」とするのに対し、引用発明1は肉厚の態様と誤差について明確な言及をしていない点。

3.当審の判断
上記相違点について以下検討する。
(1)相違点1について
引用発明2は、上記1.(2)のとおりであって、回転成形により製造する卓球ボールの製造方法が示されているから、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、上記の引用発明2に示されているといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、ボールの製造方法という共通の技術分野に属するものであり、引用発明2の卓球ボールは、引用発明1のボールに包含されるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明1において、金型15の駆動回転の速度をどの程度とするかは、当業者が当該引用発明を実施する際にボールの継ぎ目の無い状態で外表面が全体にわたって滑らかになるように適宜定めるべき設計的事項であるところ、引用発明3は、上記1.(3)のとおりであって、金型を直交2軸回りに回転させる速度を「90?200rpm」程度とすること、つまり相違点2に係る本願発明の発明特定事項に包含される事項が示されており、また本願明細書をみても、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項である「回転速度の範囲を20rpm-3000rpmに制御する」とした点に格別の技術的意義や臨界的意義は示されておらず、また本願発明における「20rpm-3000rpm」という数値範囲の最小値と最大値との間に150倍もの開きがあることからみて、本願発明の当該数値範囲は、通常想定しうる回転数を網羅的に指摘したとも解される。
したがって、これらの事項に照らして、引用発明1において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について
引用発明4は、上記1.(4)のとおりであって、回転成形法によって、「偏肉減少の発生がなく又球体として真円度のある中空球体がえられる」とされているから、引用発明4と同様の回転成形法を採用している引用発明1においても、「球殻が基本的に統一的な肉厚を有」するものとなると推認されるものか、または「球殻が基本的に統一的な肉厚を有」するものとすることに格別の困難性はないものである。
そして、一般に卓球ボールにおいて、肉厚が均一であり、肉厚の誤差が可及的に小さい方が望ましいことは明らかであり、また引用発明1において、球殻の肉厚の誤差の範囲をどの程度とするかは、当業者が当該引用発明1を実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるところ、本願明細書をみても、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項である「球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下」とした点に格別の技術的意義や臨界的意義は示されていないから、引用発明1において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項である「球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明4を照らして、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1ないし4から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(4)小括
よって、本願発明は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.当審で指摘した拒絶理由3について
当審において平成27年4月7日付けで通知した拒絶の理由3の概要は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというもので、以下、この拒絶の理由3について検討する。

1.卓球ボールの材質について
(1)本願発明に係る卓球ボールの材質について、発明の詳細な説明に次の記載がある。
「本発明の卓球ボールの材質がポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS或いはPSなどの回転成形を実現することに有利な材料から選ばれる。これによって、生産中の安全性の向上に有利である。」(段落【0014】)
「本発明が提供する卓球ボールは、生産時に公知で、即存の回転成形法に適用する材料、例えばポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボーネート、ポリエステル、ABS或いはPSなどの材料から材質が安定で、エコの材料を選択すればよく、回転成形によって一次成形し、偏心、硬度、バウンドなどのいくつの方面で国際卓球連盟のT3規格の要求より高い卓球ボール製品を製造できる。・・・」(段落【0020】)
「・・・本発明の方法によって卓球ボールを含む直径が小さい中空球形製品を製造し、一般的には球形製品の直径が120mm以下の場合、加工実施が非常に経済的であり、回転成形に用いられる既存のプラスチック、例えばポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS或いはPSなどはいずれも本発明の二軸遠心力回転成形法により、中空で肉厚が均一な球形製品が製造される・・・。」(段落【0023】)

(2)上記の記載から、本願発明における卓球ボールの材質に関しては、ポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS或いはPSであって、回転成形を実現することに有利な材料や材質が安定で、エコの材料であることが示されている。
しかしながら、「回転成形を実現することに有利な材料」や「材質が安定で、エコの材料」が具体的にどのようなものであるかについては、ポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS或いはPSから選択されること以外に具体的に記載や示唆されていないし、また、上記のような材料であれば、いずれの材料であっても、本願発明にような球殻の殻体に如何なる再加工の接合継ぎ目も有しなく、球殻の内表面に見える接合継ぎ目がなく、前記卓球ボールの球殻が基本的に統一的な肉厚を有し、且つ球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下である卓球ボールを製造できることとなること、または上記に記載されているように国際卓球連盟のT3規格の要求より高い卓球ボールを製造できることとなることの根拠も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されていない。
そして、例えばポリオレフィンやナイロンといっても、これらはそれぞれオレフィン系高分子、ポリアミド系高分子の総称であって、上記の6つの材料のそれぞれのうちに、重合材料またはモノマーや分子構造の異なる多種類のものが含まれており、それらの多岐にわたる材料・材質のうちのいずれを使用しても、本願発明のような球殻の殻体に如何なる再加工の接合継ぎ目も有しなく、球殻の内表面に見える接合継ぎ目がなく、前記卓球ボールの球殻が基本的に統一的な肉厚を有し、且つ球殻の肉厚の誤差が0.04mm以下である卓球ボールを製造できること、または上記に記載されているように国際卓球連盟のT3規格の要求より高い卓球ボールを製造できることは、本願の優先日における技術常識を勘案しても想定し難く、自明な事項ともいえない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明における「卓球ボールの材質」に関する記載は、本願の優先日における技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

2.球形型の回転速度について
(1)本願発明に係る球形型の回転速度について、発明の詳細な説明に次の記載がある。
「【0015】また、本発明は上述卓球ボールの製造方法を提供し、この方法では、卓球ボールの製造原料を卓球ボールの大きさと一致する球形型に加えて型を閉じ、この球形型を回転成形機に装着し、回転成形機の二つの回転軸の軸線もこの型の球形キャビティの球心を通り、且つ二つの回転軸の軸線が互いに垂直となるようにし、球形型を同時に上述の二つの回転軸の周りを回転させ、回転速度を20rpm?3000rpmの範囲に制御し、型に流動可能な原料を遠心力と自身重力の作用で型のキャビティ内壁に付着させ、原料が固化して球殻になり、型を開き、離型して球殻を取り出す工程を備える。」
「【0028】この卓球ボールの製造過程は、以下のとおりである。卓球ボールの製造原料が卓球ボールの大きさと一致する球形型に加えられて型を閉じて、この球形型を回転成形機に設置し、回転成形機の二つの回転軸が互いに垂直となり、且つ二つの軸線がいずれもこの型の球形キャビティの球心を通る。材料の具体的な状況に応じてこの球形型を加熱し或いは原料を制御して化学変化により可流動態になり、球形型に同時に上述の二つの回転軸の周りを回転させ、回転速度の範囲を20rpm-3000rpmに制御する(具体的な回転速度が選択される材料の物性によって確定され、原料を内壁に均一に付着させることは制御基準である)。型内の流動可能な原料を遠心力とその自身重力の作用で型のキャビティ内壁に付着させ、球殻1になる。球殻の肉厚が要求を満足した後に、この球形型が回転状態を維持する状態では、原料は固化して球殻になり、型を開き、離型して球殻1を取り出す。」

(2)上記のとおり、球形型の回転速度に関しては、回転速度を20rpm?3000rpmの範囲に制御するものであって、具体的な回転速度は選択される材料の物性によって確定され、原料を内壁に均一に付着させることは制御基準であることが示されている。
しかしながら、「原料を内壁に均一に付着させる」といってもどの程度の均一状態が想定されているのかは明らかでなく、また上述したように、卓球ボールの材料や材質が多岐にわたる上に、本願発明における「20rpm-3000rpm」という数値範囲においては最小値と最大値との間には150倍もの開きがあって、それらの組合せの態様は膨大なものとなるし、「回転速度の範囲を20rpm-3000rpmに制御する」といっても、20rpmから3000rpmのうちから選んだいずれか一定の回転速度で回転させるのか、原料の固化の進行に伴って、20rpmから3000rpmの範囲で回転速度を変化させるというのかも、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また本願の優先日における技術常識を勘案しても想定し難く、自明な事項ともいえない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明における「球形型の回転速度」に関する記載は、本願の優先日における技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

(4)小括
よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願の優先日における技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願は、上記のとおり、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-03 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2011-548522(P2011-548522)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A63B)
P 1 8・ 121- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 全体に継ぎ目がない構造の卓球ボール  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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