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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K |
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管理番号 | 1322024 |
審判番号 | 不服2016-1511 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-02 |
確定日 | 2016-12-13 |
事件の表示 | 特願2011-148394「RFID用インレットアンテナ及びそれを用いたRFID」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 16029、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年7月4日を出願日とする特許出願であって,平成27年8月11日付けで拒絶の理由が通知され,これに対し,平成27年10月15日付けで意見書が提出され,平成27年10月28日付けで拒絶査定がされ(謄本送達日同年11月4日),これに対し,平成28年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同時に手続補正がされたものである。 そして,平成28年4月20日付けで審査官により作成された前置報告書について,審判請求人は平成28年6月21日付けで上申書を提出した。 第2 平成28年2月2日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否 1.本件補正について (1)本件補正により,特許請求の範囲は,次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。 「【請求項1】 樹脂製ベースフィルムの表面に接着剤層を介して金属回路が形成されており,前記金属回路を被覆するように設けられる粘着材によって被着対象物に接着されるRFID用インレットアンテナであって, 前記樹脂製ベースフィルムと前記接着剤層との界面の一部に剥離コート層を有し, (1)前記剥離コート層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度は,前記接着剤層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度よりも小さく, (2)前記剥離コート層は,前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記RFID用インレットアンテナの外周の少なくとも一部と前記金属回路の一部とに跨るように形成されている, ことを特徴とするRFID用インレットアンテナ。 【請求項2】 前記金属回路は,アルミニウム又は銅から形成されている,請求項1に記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項3】 前記剥離コート層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度が1N/15mm以下である,請求項1又は2に記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項4】 前記接着剤層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度が3N/15mm以上である,請求項1?3のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項5】 前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記剥離コート層との跨りを有する金属回路自体の線幅及び厚さは,線幅1.2mm以下及び/又は厚み30μm以下である,請求項1?4のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナを用いたRFID。」 (2)本件補正前の,出願当初の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 樹脂製ベースフィルムの表面に接着剤層を介して金属回路が形成されており,前記金属回路を被覆するように設けられる粘着材によって被着対象物に接着されるRFID用インレットアンテナであって, 前記樹脂製ベースフィルムと前記接着剤層との界面の一部に剥離コート層を有し, (1)前記剥離コート層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度は,前記接着剤層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度よりも小さく, (2)前記剥離コート層は,前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記RFID用インレットアンテナの外周の少なくとも一部と前記金属回路の一部とに跨るように形成されている, ことを特徴とするRFID用インレットアンテナ。 【請求項2】 前記金属回路は,アルミニウム又は銅から形成されている,請求項1に記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項3】 前記剥離コート層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度が1N/15mm以下である,請求項1又は2に記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項4】 前記接着剤層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度が3N/15mm以上である,請求項1?3のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項5】 前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記剥離コート層の端部と重なる金属回路部分は,線幅1.2mm以下及び/又は厚み30μm以下である,請求項1?4のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナ。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のRFID用インレットアンテナを用いたRFID。」 (3)本件補正の内容 本件補正は,請求項5について以下のように補正している。 本件補正前の請求項5の「前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記剥離コート層の端部と重なる金属回路部分は,線幅1.2mm以下及び/又は厚み30μm以下である」という記載を,「前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記剥離コート層との跨りを有する金属回路自体の線幅及び厚さは,線幅1.2mm以下及び/又は厚み30μm以下である」と補正している。 この補正は,上記拒絶理由の理由3(実施可能要件・明確性)に対応するものであり,特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また,本件補正は,新規事項を追加するものではないから同法第17条の2第3項の要件を満たしているといえる。 さらに,本件補正は,シフト補正するものではないから同法第17条の2第4項の要件を満たしているといえる。 2.まとめ したがって,本件補正は,同法第17条の2第3項ないし第5項の要件をいずれも満たしており,適法な補正であるといえる。 第3 本願発明 上述したように,本件補正は適法であるから,本願の請求項1ないし6に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される,上記第2 1.(1)に記載のとおりのものである(以下,本願の請求項1に係る発明を「本願第1発明」といい,同様に,本願の請求項2ないし6に係る発明を「本願第2発明」ないし「本願第6発明」という)。 第4 原査定の理由の概要 理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3.(実施可能要件・明確性)この出願は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由1(新規性)について ・請求項 1,2,6 ・引用文献 1 ●理由2(進歩性)について ・請求項 3,4 ・引用文献 1 ●理由3(実施可能要件・明確性)について ・請求項 5 ・引用文献等 2 ・備考 請求項5には,「前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記剥離コート層の端部と重なる金属回路部分は,線幅1.2mm以下及び/又は厚み30μm以下である」と記載されている。 しかしながら,発明の詳細な説明の欄にある記載を参酌しても,当該数値限定がどの箇所の数値に関するものなのか把握できない。 (剥離コート層の端部は,本願【図2】右図における剥離性部分の短辺であるから線分である。そうすると,当該線分と重なる金属回路部分が,本願【図2】右図におけるパターン部と当該線分とが重なっている箇所(すなわち,当該短辺のある箇所)なのか,当該線分の下にあるパターン部全体なのか,それ以外なのか把握できない。) なお,当該数値限定が当該線分の下にあるパターン部全体を指すとすると,引用文献2(特に,段落【0019】の記載を参照)にあるように,本願の請求項5で規定された数値限定は一般的なものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2003-331248号公報 2.特開2004-213614号公報 第5 当審の判断 1.本願第1発明について (1)刊行物の記載事項 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-331248号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 (ア) 「【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は,物品に貼付後に剥がした場合,内蔵している電子回路を破損することができるICタグに関する。 【0002】 【従来の技術】近年,商品,貯蔵物,荷物などの物品にICタグを貼り付けて,物品を管理することが行われている。例えば,商品に製造条件,仕入れ状況,価格情報,使用状況などの情報が記録されたICタグを貼付し,必要に応じてインテロゲーター(質問器)などにより,記録情報を確認して,管理することが行われている。しかし,物品に貼られたICタグに使用されている粘着剤の粘着力が十分でない場合などに,過誤,不注意などの何らかの原因で別の物品に貼り替わることがある。また,故意に別の物品に貼りかえる場合などもある。このような事態になると,もはや物品管理を正確に行うことができなくなる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記問題点を解決する方法として,別の物品に貼りかえると,ICタグの機能が損なわれるようにして,物品の管理を正確に行うことが求められている。」 (イ) 「【0005】 【発明の実施の形態】本発明のICタグを図面に基づいて説明する。図1には,本発明のICタグの一例の概略断面図が示されている。基材シート1は,好ましくは熱可塑性樹脂からなるシートである。熱可塑性樹脂のシートとしては,例えば,高密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂,ポリメチル-1-ペンテン/エチレン/環状オレフィン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,フッ素系樹脂,またはこれらのいずれかを含む共重合体,ポリマーブレンド,ポリマーアロイなどの各種合成樹脂からなるシートが使用できるが,特に,ポリエステル系樹脂から成るシートが好ましく用いられる。」 (ウ) 「【0009】本発明のICタグにおいては,基材シート1と第1の接着剤層2の界面には,電子回路3の両端部に相当する位置に剥離剤層6が設けられている。剥離剤層6は,電子回路3の両端部に相当する位置に設けられており,電子回路3の中央部に相当する位置に設けない。すなわち,電子回路3の中央部に相当する位置には,基材シート1の表面には第1の接着剤層2が直接積層されている。このようにすることにより,ICタグを物品に貼付後に剥がす際には,電子回路3の中央部は第1の接着剤層2に接着されたまま,基材シート1と共に剥がされ,電子回路3が切断される。剥離剤層6は,第1の接着剤層2を介して電子回路3の外周で囲まれる面積の20?90%を覆うように設けられることが好ましく,40?80%を覆うように設けられることが特に好ましい。剥離剤層6は,電子回路3の外周を超えて外側にはみ出すように,設けられることが好ましく,はみ出し巾は,特に制限ないが,1mm以上が好ましい。」 (エ) 「【0011】本発明のICタグにおいては,第1の接着剤層2の表面に電子回路3が設けられている。電子回路3は,導電性物質で形成された回路である。導電性物質としては,例えば,金属箔,蒸着膜,スパッタリングによる薄膜等の金属単体等が挙げられる。金属単体としては金,銀,ニッケル,銅,アルミニウムなどが使用できる。」 (オ) 「【0012】電子回路3の形状は,例えば,図2及び図3に示された形状のものが挙げられる。図2及び図3には,一本の導電性物質の線が長方形状の基材シート1の外周から内側に向けて四重の環状に所定間隔を空けて配置されてアンテナとしての電子回路3を形成している。」 (カ) 「【0017】 【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明する。ただし,本発明は,これらの例によって,何ら限定されるものではない。 【0018】(実施例1)基材シート1としての,ポリエチレンテレフタレートフィルム(横28mm,縦12mm,厚さ50μm)の片側の表面に,図2に示すような形状(台形の斜線の角度:45度,未塗布部分の巾:3mm,2つの台形で被覆されている電子回路の外周で囲まれる面積:電子回路の外周で囲まれる面積の約75%,台形の端部と基材シート1の外縁との長さ:1mm)にシリコーン樹脂系剥離剤をグラビアコーターで乾燥して厚さ0.05μmになるように塗布し,130℃で1分間硬化させて剥離剤層6を形成した。次に,この剥離剤層6及び基材シート1の表面にポリエステル系の熱溶融型接着剤(東洋紡績(株)製,商品名「バイロン30SS」)をグラビアコーターで乾燥して厚さ5μmになるように塗布して第1の接着剤層2を積層した。さらに,この第1の接着剤層2の表面に35μm厚の電解銅箔を100℃のヒートシールロールにて加熱圧着した。次に,電解銅箔の表面に,図2のように,長辺25mm,短辺6mmの四重の環状回路(アンテナ)状に,スクリーン印刷法により,エッチングレジストインクを印刷(線幅:0.3mm)した。これを塩化第二鉄溶液にてエッチクング処理を行い,回路以外の部分を除去した。この後,アルカリ水溶液にてエッチングレジストインクを除去し,電子回路3を形成した。 【0019】最内輪の電子回路(アンテナ)3の末端と,その最外輪の電子回路3の末端を導通させるために,それらの間を紫外線硬化型インクをスクリーン印刷法により線状に印刷後,紫外線を照射して硬化させ,その紫外線硬化型インクの硬化線の表面に銀ペースト(銀粒子の平均粒径:5μm,バインダー:ポリエステル樹脂)をスクリーン印刷法により線状(長さ10mm)に印刷し,乾燥させ,ジャンパ回路を形成した。次いで,ICチップ(フィリップス社製,商品名「I/CODE」)5の電極部に金線を用いてワイヤバンプを設け,このICチップ5を異方性導電フィルム(ソニーケミカル社製,商品名「FP2322D」)を介して,回路の両末端に,フリップチップボンディング法を用いて,連結した。一方,厚さ70μmのグラシン紙の片側全面にシリコーン樹脂により剥離処理した剥離紙の剥離処理面に,ロールナイフコーターを用いて,アクリル系低接着性感圧型接着剤(リンテック(株)製,商品名「PA-T1」)を塗布,乾燥して厚さ20μmの第2の接着剤層4を形成した第2の接着剤層4付き剥離紙を用意した。次に,電子回路3及びICチップ5が設けられた基材シート1の表面の全体に,第2の接着剤層4付き剥離紙7の第2の接着剤層4を貼り合わせ,第1の接着剤層2,電子回路3及びICチップ5を第2の接着剤層4で被覆し,ICタグを作成した。 【0020】得られたICタグについて,非接触送受信試験を行ったところ,正常に送受信を行うことができた。このICタグの全面処理剥離紙を剥がし,ポリプロピレン樹脂板に貼付した。24時間後,このICタグをポリプロピレン樹脂板から剥離させたところ,剥離剤層6で覆われた電子回路3の部分がポリプロピレン樹脂板に残留し,それ以外の非剥離剤層部分は基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートと共に,ポリプロピレン樹脂板から剥離された。その剥離に伴い電子回路3が切断され,非接触送受信試験を行ったところ,送受信を行うことができなかった。」 (キ)以下の図1?図3を参照すると,剥離剤層6は,電子回路3の外周の一部には達しているものの,ICタグの外周には達していないことが認められる。 (ク)上記(ア)?(キ)によれば,引用例1には,以下の事項を含む発明(以下,「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。 「ICタグにおいて, 基材シート1は,好ましくは熱可塑性樹脂からなるシートであり,熱可塑性樹脂のシートとしては,ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂から成るシートが好ましく用いられ, 基材シート1と第1の接着剤層2の界面には,電子回路3の両端部に相当する位置に剥離剤層6が設けられており,ICタグを物品に貼付後に剥がす際には,電子回路3の中央部は第1の接着剤層2に接着されたまま,基材シート1と共に剥がされ,電子回路3が切断され, 第1の接着剤層2の表面に電子回路3が設けられており,電子回路3は,導電性物質で形成された回路であり,導電性物質としては,例えば,金属箔,蒸着膜,スパッタリングによる薄膜等の金属単体等が挙げられ,導電性物質の線が長方形状の基材シート1の外周から内側に向けて四重の環状に所定間隔を空けて配置されてアンテナとしての電子回路3を形成している ICタグであって, 基材シート1としての,ポリエチレンテレフタレートフィルムの片側の表面に,剥離剤を塗布し,剥離剤層6を形成し, 剥離剤層6及び基材シート1の表面に接着剤を塗布して第1の接着剤層2を積層し, 第1の接着剤層2の表面に銅箔を圧着し, 銅箔の表面に,四重の環状回路(アンテナ)状に,エッチングレジストインクを印刷し,これをエッチクング処理を行い,回路以外の部分を除去し,アルカリ水溶液にてエッチングレジストインクを除去し,電子回路3を形成し, 電子回路3及びICチップ5が設けられた基材シート1の表面の全体に,第2の接着剤層4付き剥離紙7の第2の接着剤層4を貼り合わせ,第1の接着剤層2,電子回路3及びICチップ5を第2の接着剤層4で被覆して作成したICタグにおいて, 非接触送受信試験を行ったところ,正常に送受信を行うことができ, 剥離紙を剥がし,ポリプロピレン樹脂板に貼付し,ICタグをポリプロピレン樹脂板から剥離させたところ,剥離剤層6で覆われた電子回路3の部分がポリプロピレン樹脂板に残留し,それ以外の非剥離剤層部分は基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートと共に,ポリプロピレン樹脂板から剥離され,剥離に伴い電子回路3が切断され,非接触送受信試験を行ったところ,送受信を行うことができず, 剥離剤層6は,電子回路3の外周の一部には達しているものの,ICタグの外周には達していないICタグ」 イ 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-213614号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 (ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,物品に貼付後に剥がした場合,内蔵している電子回路を破損するICタグに関する。 【背景技術】 【0002】 近年,商品,貯蔵物,荷物などの物品にICタグを貼り付けて,物品を管理することが行われている。例えば,商品に製造条件,仕入れ状況,価格情報,使用状況などの情報が記録されたICタグを貼付し,必要に応じてインテロゲーター(質問器)などにより,記録情報を確認して,管理することが行われている。 しかし,物品に貼られたICタグに使用されている粘着剤の粘着力が十分でない場合などに,過誤,不注意などの何らかの原因で別の物品に貼り替わることがある。また,故意に別の物品に貼りかえる場合などもある。 このような事態になると,もはや物品管理を正確に行うことができなくなる。 従来のICタグとしては,タグ表面に貼り合わせた基材が,改ざんを行う際,表面基材が層内破壊を起こし偽造防止効果を高める技術が記載されている(特許文献1参照)。 しかし,物品に貼付されたICタグの接着剤層と物品の界面にカッターなどで切り込みを入れ,その切り込みに指などを差し込んでICタグの端を摘み,ICタグを剥がすと,電子回路面を破壊することなく,電子回路面と表面基材とを簡単に剥がすことができてしまうという問題点がある。 【特許文献1】特開平10-171962号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 上記問題点を解決する方法として,別の物品に貼りかえると,ICタグの機能が損なわれるようにして,物品の管理を正確に行うことが求められている。」 (イ) 「【0010】 本発明のICタグを図面に基づいて説明する。図1及び図7には,本発明のICタグの一例の概略断面図が示されている。 基材シート1は,好ましくは熱可塑性樹脂からなるシートである。熱可塑性樹脂のシートとしては,例えば,高密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂,ポリメチル-1-ペンテン/エチレン/環状オレフィン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,フッ素系樹脂,またはこれらのいずれかを含む共重合体,ポリマーブレンド,ポリマーアロイなどの各種合成樹脂からなるシートが使用できるが,特に,ポリエステル系樹脂から成るシートが好ましく用いられる。」 (ウ) 「【0015】 本発明のICタグにおいては,基材シート1と第1の接着剤層2の界面には,電子回路3とICチップ6で形成される回路面13に相当する位置に部分的に剥離剤層7が設けられている。剥離剤層7は,それぞれ間隔を設けて2以上の複数設けられている。剥離剤層7の形状及び大きさや,各剥離剤層7の間隔は,特に制限なく,種々の形状,大きさ及び間隔にすることができる。 例えば,図2,図8及び図9に示すように,剥離剤層7は,回路面13の両端部に相当する位置の全面を覆うように設けてもよいし,また,図3に示すように,回路面13の中間部に相当する位置に,さらに剥離剤層7を設けてもよいが,剥離剤層7で覆わない部分を残すようにする。また,図6に示すように,回路面13の両端部に相当する位置の全面を覆わないで,一部覆わない部分があってもよい。また,回路面13の両端部に相当する位置に設けないで,回路面13の中間部に相当する位置に,剥離剤層7を設けてもよい 【0016】 このような構造にすることにより,剥離剤層7がない位置には,基材シート1の表面には第1の接着剤層2が直接積層されており,剥離剤層7がある位置には,第1の接着剤層2は剥離剤層7に直接積層されている。ICタグを物品12に貼付後に剥がす際には,例えば,剥離剤層7がある位置では,第1の接着剤層2が剥離剤層7との界面で剥がされ,剥離剤層7がない位置では,物品12と第2の接着剤層5との界面又は第2の接着剤層5の内部で引き千切られ,電子回路3は第1の接着剤層2に接着されたまま,基材シート1と共に剥がされ,電子回路3が切断される。 剥離剤層7は,第1の接着剤層2を介して回路面13の外周で囲まれる面積の20?90%を覆うように設けられることが好ましく,40?80%を覆うように設けられることが特に好ましい。 【0017】 剥離剤層7は,回路面13の外周を超えて外側にはみ出すように,設けられることが好ましく,はみ出し巾は,特に制限ないが,1mm以上が好ましい。」 (エ) 「【0018】 本発明のICタグにおいては,第1の接着剤層2の表面に電子回路3が設けられている。 電子回路3は,導電性物質で形成された回路線4で構成されている。導電性物質としては,例えば,金属箔,蒸着膜,スパッタリングによる薄膜等の金属単体等が挙げられる。金属単体としては金,銀,ニッケル,銅,アルミニウムなどが使用できる。また,導電性物質としては,金,銀,ニッケル,銅等の金属の粒子をバインダーに分散させた導電性ペーストが使用できる。 金属粒子の平均粒径は,1?15μmが好ましく,2?10μmが特に好ましい。バインダーとしては,例えば,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂などが挙げられる。 【0019】 電子回路を構成する回路線4の厚みは,特に制限されないが,金属箔の場合は5?50μm,蒸着膜やスパッタリングによる金属膜の場合は0.01?1μm,導電ペーストの場合は5?30μmであることが好ましい。 回路線4の幅は,特に制限ないが,0.01?10mmが好ましく,0.1?3mmが特に好ましい。 第1の接着剤層2上に電子回路3を形成するには,例えば,金属箔を接着剤で基材シート1に貼り合わせ,金属箔をエッチング処理して回路以外の部分を除去することにより,電子回路3を形成する方法等が挙げられる。エッチング処理は,通常のエッチング処理と同様な処理により行うことができる。また,第1の接着剤層2の表面への電子回路3の形成は,導電性ペーストを,印刷,塗布などの手段により電子回路3の形状に付着させることによっても行うことができる。 【0020】 電子回路3の形状は,例えば,図2及び図3に示された形状のものが挙げられる。図2及び図3には,一本の導電性物質の線から成る回路線4が長方形状の基材シート1の外周から内側に向けて十重の環状に所定間隔を空けて配置されてアンテナとしての電子回路3を形成している。」 (オ) 「【0031】 本発明のICタグにおいては,電子回路3が設けられていない第1の接着剤層2の表面,電子回路3及びICチップ6を覆うように,第2の接着剤層5が積層される。」 (カ) 「【0035】 (実施例1) 基材シート1としての,ポリエチレンテレフタレートフィルム(横100mm,縦50mm,厚さ50μm)の片側の表面に,図2に示すような形状(台形の斜線の角度:45度,未塗布部分の巾:3mm,2つの台形で被覆されている電子回路の外周で囲まれる面積:電子回路の外周で囲まれる面積の約75%,台形の端部と基材シート1の外縁との長さ:1mm)にシリコーン樹脂系剥離剤をグラビアコーターで乾燥して厚さ0.05μmになるように塗布し,130℃で1分間乾燥硬化させて剥離剤層7を形成した。次に,この剥離剤層7及び基材シート1の表面にポリエステル系の熱溶融型接着剤(東洋紡績(株)製,商品名「バイロン30SS」)をグラビアコーターで乾燥して厚さ5μmになるように塗布して第1の接着剤層2を積層した。 【0036】 さらに,この第1の接着剤層2の表面に35μm厚の電解銅箔を100℃のヒートシールロールにて加熱圧着した。次に,前記電解銅箔の表面に,図2のように,長辺45mm,短辺15mmの十重の環状回路線4(アンテナ)状及びその最内輪の回路線4に迂回路8状に,スクリーン印刷法により,エッチングレジストインクを印刷(線幅:0.15mm)した。これを塩化第二鉄溶液にてエッチング処理を行い,環状回路線4,迂回路8以外の部分を除去した。この後,アルカリ水溶液にてエッチングレジストインクを除去し,図2と同じ迂回路8が設けられている電子回路3を形成した。なお,迂回路8の大きさ及び接線の角度θは,長方形の外周線の長辺一辺を欠いた形状の迂回路8が縦が5mm,横が7mm,角度θが90度であり,正三角形の外周線の一辺を欠いた形状の迂回路8が一辺が7mm,角度θが60度であり,半円形の円周線形状の迂回路8が半径3mm,角度θが85度であり,台形の外周線の上底を欠いた形状の迂回路8が下底が10mm,上底が3mm,高さ5mm,角度θが145度であった。 【0037】 最内輪の電子回路(アンテナ)3の末端と,その最外輪の電子回路3の末端を導通させるために,それらの間を紫外線硬化型インクをスクリーン印刷法により線状に印刷後,紫外線を照射して硬化させ,その紫外線硬化型インクの硬化線の表面に銀ペースト(銀粒子の平均粒径:5μm,バインダー:ポリエステル樹脂)をスクリーン印刷法により線状(長さ10mm)に印刷し,乾燥させ,ジャンパ回路を形成した。 次いで,ICチップ(フィリップス社製,商品名「I/CODE」)6の電極部に金線を用いてワイヤバンプを設け,このICチップ6を異方性導電フィルム(ソニーケミカル社製,商品名「FP2322D」)を介して,回路の両末端に,フリップチップボンディング法を用いて,連結した。 【0038】 一方,厚さ70μmのグラシン紙の片側全面にシリコーン樹脂により剥離処理した剥離シート11の剥離処理面に,ロールナイフコーターを用いて,アクリル系低接着性感圧型接着剤(リンテック(株)製,商品名「PA-T1」)を塗布,乾燥して厚さ20μmの第2の接着剤層5を形成した第2の接着剤層5付き剥離シート11を用意した。 次に,電子回路3及びICチップ6が設けられた基材シート1の表面の全体に,第2の接着剤層5付き剥離シート11の第2の接着剤層5を貼り合わせ,第1の接着剤層2,電子回路3及びICチップ6を第2の接着剤層5で被覆し,ICタグを作成した。 得られたICタグについて,非接触送受信試験を行ったところ,正常に送受信を行うことができた。 【0039】 このICタグの剥離シート11を剥がし,ICタグをポリプロピレン樹脂板に貼付した。24時間後,このICタグの一端から5mmカッターナイフで第2の接着剤層に切り込み17を入れ,この部分を指で摘んでポリプロピレン樹脂板から剥離させたところ,剥離 剤層7で覆われた電子回路3の部分がポリプロピレン樹脂板に残留し,それ以外の非剥離剤層部分は基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートと共に,ポリプロピレン樹脂板から剥離された。その剥離に伴い電子回路3が切断され,非接触送受信試験を行ったところ,送受信を行うことができなかった(剥離切断試験)。 この剥離切断試験は,ICタグ30個について行ったところ,30個が切断された。」 (キ)図1?4および図6?10を参照すると,剥離剤層7は,電子回路3の外周の一部には達しているものの,ICタグの外周に達していないと認められる。 (ク)上記(ア)?(キ)によれば,引用例2には,以下の事項を含む発明(以下,「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。 「ICタグであって, 基材シート1は,好ましくは熱可塑性樹脂からなるシートであり,熱可塑性樹脂のシートとしては,ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂から成るシートが好ましく用いられ, ICタグにおいては,基材シート1と第1の接着剤層2の界面には,電子回路3とICチップ6で形成される回路面13に相当する位置に部分的に剥離剤層7が設けられており,図2,図8及び図9に示すように,剥離剤層7は,回路面13の両端部に相当する位置の全面を覆うように設けてもよいし,また,図3に示すように,回路面13の中間部に相当する位置に,さらに剥離剤層7を設けてもよいが,剥離剤層7で覆わない部分を残すようにし,図6に示すように,回路面13の両端部に相当する位置の全面を覆わないで,一部覆わない部分があってもよく,回路面13の両端部に相当する位置に設けないで,回路面13の中間部に相当する位置に,剥離剤層7を設けてもよく,このような構造にすることにより,ICタグを物品12に貼付後に剥がす際には,剥離剤層7がある位置では,第1の接着剤層2が剥離剤層7との界面で剥がされ,剥離剤層7がない位置では,物品12と第2の接着剤層5との界面又は第2の接着剤層5の内部で引き千切られ,電子回路3は第1の接着剤層2に接着されたまま,基材シート1と共に剥がされ,電子回路3が切断され, ICタグにおいては,第1の接着剤層2の表面に電子回路3が設けられており,電子回路3は,導電性物質で形成された回路線4で構成されており,導電性物質としては,金属箔,蒸着膜,スパッタリングによる薄膜等の金属単体等が挙げられ,金属単体としては金,銀,ニッケル,銅,アルミニウムなどが使用でき,一本の導電性物質の線から成る回路線4が長方形状の基材シート1の外周から内側に向けて十重の環状に所定間隔を空けて配置されてアンテナとしての電子回路3を形成しており, ICタグにおいては,電子回路3が設けられていない第1の接着剤層2の表面,電子回路3及びICチップ6を覆うように,第2の接着剤層5が積層される ICタグであって, 基材シート1としての,ポリエチレンテレフタレートフィルムの片側の表面に,剥離剤を塗布し,剥離剤層7を形成し,剥離剤層7及び基材シート1の表面に接着剤を塗布して第1の接着剤層2を積層し, 第1の接着剤層2の表面に圧着し,銅箔の表面に,十重の環状回路線4(アンテナ)状及びその最内輪の回路線4に迂回路8状に,エッチングレジストインクを印刷し,エッチング処理を行い,環状回路線4,迂回路8以外の部分を除去し,エッチングレジストインクを除去し,電子回路3を形成し, 電子回路3及びICチップ6が設けられた基材シート1の表面の全体に,第2の接着剤層5付き剥離シート11の第2の接着剤層5を貼り合わせ,第1の接着剤層2,電子回路3及びICチップ6を第2の接着剤層5で被覆して作成したICタグにおいて, 剥離剤層7は,電子回路3の外周の一部には達しているものの,ICタグの外周に達していないICタグ」 (2)対比・判断 ア 対比 本願第1発明と引用例1発明とを対比する。 (ア)本願第1発明は,樹脂製ベースフィルムの表面に接着剤層を介して金属回路が形成されているRFID用インレットアンテナ及びそれを用いたRFIDの技術分野に属し,ここで,RFIDは,「Radio Frequency IDentification」の略称であり,電波を利用して非接触で個体識別を行うICタグを意味しており,金属回路を被覆するように設けられる粘着材によって被着対象物に接着された後に,不正剥離により金属回路を取り出すことが防止されている,RFID用インレットアンテナを提供することを課題としている(段落0001,0010)。 引用例1発明は,物品を管理するために,商品,貯蔵物,荷物などの物品に貼付されるICタグの技術分野に属し,別の物品に貼りかえると,ICタグの機能が損なわれるICタグを提供することを課題としている(段落0001,0003)。 したがって,引用例1発明と本願第1発明とは,ICタグという共通の技術分野に属し,また,被着対象物に接着された後に,不正剥離による不正利用を防止するという共通の課題を有しているといえる。 (イ)引用例1発明では,「基材シート1は,好ましくは熱可塑性樹脂からなるシートであり,熱可塑性樹脂のシートとしては,ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂から成るシートが好ましく用いられ」るとされ,「基材シート1として」「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を採用している。 したがって,引用例1発明の「基材シート1として」の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は,本願第1発明の「樹脂製ベースフィルム」に相当する。 (ウ)引用例1発明は,「基材シート1の表面に接着剤を塗布して第1の接着剤層2を積層し,第1の接着剤層2の表面に銅箔を圧着し,銅箔の表面に,四重の環状回路(アンテナ)状に,エッチングレジストインクを印刷し,これをエッチクング処理を行い,回路以外の部分を除去し,アルカリ水溶液にてエッチングレジストインクを除去し,電子回路3を形成し」ており,「電子回路3及びICチップ5を第2の接着剤層4で被覆して作成したICタグ」であり,「剥離紙を剥がし,ポリプロピレン樹脂板に貼付し」ている。 ここで,引用例1発明の「基材シート1」,「第1の接着剤層2」,「銅箔」で「形成」された「電子回路3」,「第2の接着剤層4」,「ポリプロピレン樹脂板に貼付」は,それぞれ,本願第1発明の「樹脂製ベースフィルム」,「接着剤層」,「金属回路」,「粘着材」,「被着対象物に接着」に相当している。 また,引用例1発明は,「銅箔の表面に,四重の環状回路(アンテナ)状に,エッチングレジストインクを印刷し,これをエッチクング処理を行い,回路以外の部分を除去し,アルカリ水溶液にてエッチングレジストインクを除去し,電子回路3を形成し」,「電子回路3及びICチップ5を第2の接着剤層4で被覆して作成したICタグ」であり,「非接触送受信試験を行ったところ,正常に送受信を行うことができ」る。 ここで,引用例1発明の「ICタグ」,「基材シート1の表面に接着剤を塗布して第1の接着剤層2を積層し,第1の接着剤層2の表面に」「四重の環状回路(アンテナ)状に」「電子回路3を形成し」「第2の接着剤層4で被覆し」たものは,それぞれ,本願第1発明の「RFID」,「インレットアンテナ」に対応する。 したがって,引用例1発明と本願第1発明とは,樹脂製ベースフィルムの表面に接着剤層を介して金属回路が形成されており,前記金属回路を被覆するように設けられる粘着材によって被着対象物に接着されるRFID用インレットアンテナである点で共通している。 (エ)引用例1発明では,「基材シート1と第1の接着剤層2の界面には,電子回路3の両端部に相当する位置に剥離剤層6が設けられて」いる。 ここで,引用例1発明の「基材シート1」,「第1の接着剤層2」,「剥離剤層6」は,それぞれ,本願第1発明の「樹脂製ベースフィルム」,「接着剤層」,「剥離コート層」に相当する。 したがって,引用例1発明と本願第1発明とは,樹脂製ベースフィルムと接着剤層との界面の一部に剥離コート層を有している点で共通している。 (オ)引用例1発明では,「基材シート1の表面の全体に,第2の接着剤層4付き剥離紙7の第2の接着剤層4を貼り合わせ,第1の接着剤層2,電子回路3及びICチップ5を第2の接着剤層4で被覆して作成したICタグにおいて,」「ポリプロピレン樹脂板に貼付し,ICタグをポリプロピレン樹脂板から剥離させたところ,剥離剤層6で覆われた電子回路3の部分がポリプロピレン樹脂板に残留し,それ以外の非剥離剤層部分は基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートと共に,ポリプロピレン樹脂板から剥離され」る。つまり,引用例1発明では,剥離剤層6と基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートの接着強度は,第1の接着剤層2と基材シート1のポリエチレンテレフタレートシートとの接着強度よりも小さいといえる。 ここで,引用例1発明の「剥離剤層6」,「基材シート1のポリエチレンテレフタレートシート」,「第1の接着剤層2」は,それぞれ,本願第1発明の「剥離コート層」,「樹脂製ベースフィルム」,「接着剤層」に相当する。 したがって,引用例1発明と本願第1発明とは,剥離コート層と樹脂製ベースフィルムとの接着強度は,接着剤層と樹脂製ベースフィルムとの接着強度よりも小さい点で共通している。 (カ)引用例1発明では,「電子回路3の両端部に相当する位置に剥離剤層6が設けられて」いる。 ここで,引用例1発明の「電子回路3」,「剥離剤層6」は,それぞれ,本願第1発明の「金属回路」,「剥離コート層」に相当する。 したがって,引用例1発明と本願第1発明とは,剥離コート層が,RFID用インレットアンテナを上面から見た際に金属回路の一部に跨るように形成されている点で共通している。 しかし,本願第1発明では,剥離コート層が,RFID用インレットアンテナを上面から見た際にRFID用インレットアンテナの外周の少なくとも一部にも跨るように形成されているのに対し,引用例1発明では,剥離コート層が,そのように形成されていない点で相違している。 (キ)上記(ア)?(カ)によれば,両者は,以下の点で一致し,また相違する。 [一致点] 「樹脂製ベースフィルムの表面に接着剤層を介して金属回路が形成されており,前記金属回路を被覆するように設けられる粘着材によって被着対象物に接着されるRFID用インレットアンテナであって, 前記樹脂製ベースフィルムと前記接着剤層との界面の一部に剥離コート層を有し, (1)前記剥離コート層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度は,前記接着剤層と前記樹脂製ベースフィルムとの接着強度よりも小さく, (2)前記剥離コート層は,前記RFID用インレットアンテナを上面から見た際に前記金属回路の一部に跨るように形成されている, ことを特徴とするRFID用インレットアンテナ。」 [相違点] 本願第1発明では,剥離コート層が,RFID用インレットアンテナを上面から見た際にRFID用インレットアンテナの外周の少なくとも一部にも跨るように形成されているのに対し,引用例1発明では,剥離コート層が,そのように形成されていない点。 イ 判断 本願第1発明では,剥離コート層が,RFID用インレットアンテナを上面から見た際にRFID用インレットアンテナの外周の少なくとも一部にも跨るように形成されているのに対し,この点について,引用例1には記載がない。 したがって,本願第1発明は,引用例1に記載されたものとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。 また,この点について,引用例1に示唆はないから,引用例1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 さらに,この点について,引用例2にも,記載も示唆もなく,当該構成は,引用例1発明に,引用例2発明を適用しても,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって,本願第1発明は,引用例1発明および引用例2発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 2.本願第2発明乃至本願第4発明および本願第6発明について 本願第2発明乃至本願第4発明は,いずれも,本願第1発明に技術的限定を付加したものであり,本願第6発明は,本願第1発明のRFID用インレットアンテナを用いたRFIDである。 したがって,上記第5 1.(2)イにおける本願第1発明についての判断と同様に,本願第2発明および本願第6発明は,引用例1に記載されたものとはいえず,また,本願第3発明および本願第4発明は,引用例1発明(および引用例2発明)に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 3.本願第5発明について 本願第5発明は,本件補正により,金属回路の線幅および厚みの数値限定がどの箇所に関するものなのか明確になっているから,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしている。 また,本願第5発明は,本願第1発明に技術的限定を付加したものであり,上記第5 1.(2)イにおける本願第1発明についての判断と同様に,引用例1発明および引用例2発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 4.まとめ 本願の請求項1,2および6に係る発明は,引用例1に記載された発明ではなく(理由1),本願の請求項3および4に係る発明は,引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない(理由2)。また,請求項5に係る発明は,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしており(理由3),引用例1および引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 したがって,本願については,原査定の拒絶理由(理由1ないし3)を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-28 |
出願番号 | 特願2011-148394(P2011-148394) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G06K)
P 1 8・ 537- WY (G06K) P 1 8・ 536- WY (G06K) P 1 8・ 121- WY (G06K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 和田 財太 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
貝塚 涼 野崎 大進 |
発明の名称 | RFID用インレットアンテナ及びそれを用いたRFID |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |