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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1322226 |
審判番号 | 不服2016-3 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-04 |
確定日 | 2016-12-20 |
事件の表示 | 特願2011-194194「電磁波シールドカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 55298、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年9月6日の出願であって、平成26年12月25日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成27年3月9日付けで手続補正がなされたが、同年9月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年1月4日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、当審の平成28年10月14日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年11月7日付けで手続補正がなされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年11月7日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 電子部品を収容する筐体の開口を閉鎖する電磁波シールドカバーであって、 厚み1?3mmのシールド用金属板に積層された樹脂組成物からなるカバー体と、 前記電子部品に接続される電極を内包する樹脂組成物からなり、前記シールド用金属板を貫通して前記カバー体から突き出たコネクター部と、を備え、 前記カバー体と前記コネクター部とは、一体的に形成されていることを特徴とする電磁波シールドカバー。 【請求項2】 前記コネクター部と前記カバー体とは、インサート成形によって一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電磁波シールドカバー。 【請求項3】 前記電磁波シールドカバーを、前記電子部品に対向する側を下方に向けて水平面上に載置した場合に、鉛直方向の一面および水平方向の四面方向から二次元的に見た場合、前記カバー体の投影面積の合計値を分母、前記シールド用金属板の投影面積の合計値を分子とした比率である遮蔽率が0.7以上であることを特徴とする請求項1または2記載の電磁波シールドカバー。 【請求項4】 前記シールド用金属板の重量をWmとし、前記カバー体、及び前記コネクター部の樹脂部分の重量をWrとしたときに、重量比であるWm/(Wm+Wr)が以下の式(1)となることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項記載の電磁波シールドカバー。 Wm/(Wm+Wr)≦0.8 (1) 【請求項5】 前記樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含む組成物であり、前記カバー体は、前記シールド用金属板に一体成形されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項記載の電磁波シールドカバー。 【請求項6】 前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、ふっ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらの共重合体の少なくとも1種類以上からなることを特徴とする請求項5記載の電磁波シールドカバー。 【請求項7】 前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、芳香族系ポリアミド、またはこれらの共重合体の少なくとも1種類以上からなることを特徴とする請求項6記載の電磁波シールドカバー。 【請求項8】 前記樹脂組成物における射出成形での溶融樹脂が充填される方向に対して、垂直方向の成形収縮率をAとし、流動方向の成形収縮率をBとしたとき、 1.0≧B/A≧0.3 であることを特徴とする請求項5?7のいずれか一項記載の電磁波シールドカバー。 【請求項9】 前記シールド用金属板は、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、錫、鉛、亜鉛、モリブデンから選ばれる少なくとも一種類以上の金属種からなり、塑性加工、鋳造加工、または切削加工にて成形されていることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項記載の電磁波シールドカバー。」 第3.当審の拒絶の理由について 1.当審拒絶理由の概要 当審において平成28年10月14日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 1.請求項1において、「前記電極は、前記コネクター部から剥き出しておらず、」とあり、また、審判請求書において「引用文献1では、シールドカバー(26)の内側で、樹脂部分(ハウジング凹部)から突き出たターミナル(4)の先端は、剥き出しの状態で基板(3)にハンダ付けされている。つまり、ターミナル(4)には、ハンダ付けを可能とする程度の先端部分の剥き出し状態は必須である。したがって、引用文献1には、電極が樹脂組成物に内包され、つまり、電極がコネクター部から剥き出していないという技術思想に想到するための動機付けは無く・・」と主張していることから、本願請求項1に係る発明にあっては、電極は、コネクター部の一端から他端までの全ての部分において剥き出していないことを意味するものと解されるが、このようなことは発明の詳細な説明(特に段落【0025】)に記載されておらず、また、図2や図4をみても、特にコネクター部における、電子部品側の受け部4aと接続される側の一端部分は図が簡略化され、電極が剥き出しているのか否か不明であり、かかる図面をもって電極が剥き出していないことが自明であるともいえない。 したがってこの点において、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。」 2.当審拒絶理由についての判断 これに対して、平成28年11月7日付け手続補正により特許請求の範囲が補正され、具体的には、 上記「1.」の指摘に対して、請求項1において、「前記電極は、前記コネクター部から剥き出しておらず、」なる記載は削除された。 したがってこれによれば、当審の拒絶理由で指摘した不備な点は解消され、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものと認められる。 第4.原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 1-1.理由1,2(特許法第29条第1項3号,第29条第2項) (理由1)本件出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由2)本件出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平7-151561号公報 1-2.理由2(特許法第29条第2項) 本件出願の請求項3,4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1,2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平7-151561号公報 2.特開昭60-129224号公報 1-3.理由2(特許法第29条第2項) 本件出願の請求項5?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平7-151561号公報 2.特開昭60-129224号公報 3.特開2005-175243号公報 1-4.理由2(特許法第29条第2項) 本件出願の請求項8,9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平7-151561号公報 2.特開昭60-129224号公報 3.特開2005-175243号公報 4.特開昭63-46205号公報 5.特開平6-179227号公報 6.特開2003-169762号公報 2.原査定の理由についての判断 2-1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-151561号公報(以下、「引用例」という。)には、「コネクタ一体型センサ」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 ア.「【請求項2】 センシング素子を収容する樹脂製のハウジングの一部に、前記センシング素子の電気的入力線、電気的出力線およびアース線から構成されたターミナルを有したコネクタ部が形成され、また空中伝搬してくる電磁ノイズを遮断するシールドカバーが前記センシング素子を被うように設けられ、さらに前記ターミナルにはラインノイズ防止用のコンデンサが固着されているコネクタ一体型センサにおいて、前記コンデンサが、前記ハウジング中にインサート成形によって収容されているとともに、前記シールドカバーに固着され、前記ターミナルの先端部が前記シールドカバーの内側に位置していることを特徴とするコネクタ一体型センサ。」 イ.「【0026】実施例2.図3はこの発明の他の実施例に係る圧力センサの断面図、図4はターミナルアセンブリの側面図である。 【0027】図において、26は感圧素子1やハイブリットIC2等を覆い、これらを外部の電波ノイズから保護するシールド部材としてのシールドカバーである。このシールドカバー26はコンデンサ6の外筒にハンダ付けされ、かつバイパス線(図示せず)を介して、ターミナル4のアース線に接続されている。27はターミナル4と、コンデンサ6と、シールドカバー26とを、前もってアセンブリしたターミナルアセンブリである。なお、圧力センサ25の他の構成は実施例1の圧力センサ25と同一である。 【0028】つぎに、この圧力センサ25の製作方法について説明する。ターミナルアセンブリ27を所定の型の中にインサートした状態で、この型の中に液晶ポリマーを流し込み、インサート成形法により、コネクタ部24を含めたハウジング23を形成する。つづいて、感圧素子1やハイブリットIC2等が実装された基板3をハウジング23の凹部23a内に挿入し、ターミナル4を基板3の所定位置にハンダ付けする。そして最後に、ハウジング23の凹部23aをハウジングキャップ9で覆う。 【0029】以上のように、この圧力センサ25においても、コネクタ部24を含めたハウジング23を、インサート成形法によりターミナルアセンブリ27と一体的に形成しているため、実施例1の圧力センサ25と同様の効果を得ることができる。また、実施例1では、ターミナル4の先端部をシールドカバー20の外側に位置させており、ターミナル4の先端部とシールドカバー20との間は短絡防止のため所定の距離を取らなければならなかったが、この実施例の場合、ターミナル4の先端部はシールドカバー26の内側に配設させたことにより、そのようなことを配慮する必要がなくなり、それだけより小型化が可能になる。なお、シールドカバー26で遮断された電波ノイズや、コンデンサ6で遮断され、シールドカバー26側に逃されたラインノズルは、ターミナル4のアース線を介して外部に逃される。」 ・上記引用例に記載の「コネクタ一体型センサ」は、上記「ア.」の記載事項、及び図3によれば、感圧素子1(センシング素子)を収容する樹脂製のハウジング23の一部に、感圧素子1(センシング素子)の電気的入力線、電気的出力線およびアース線から構成されたターミナル4を有したコネクタ部24が形成され、また空中伝搬してくる電磁ノイズを遮断するシールドカバー26が感圧素子1(センシング素子)を被うように設けられ、さらにターミナル4にはラインノイズ防止用のコンデンサ6が固着され、コンデンサ6はシールドカバー26に固着され、ターミナル4の先端部がシールドカバー26の内側に位置しているコネクタ一体型センサである。 ・上記「イ.」の記載事項、及び図3、図4によれば、ターミナル4、コンデンサ6、及びシールドカバー26を前もってアセンブリしたターミナルアセンブリ27をインサート成形することによってコネクタ部24を含めたハウジング23が一体的に形成され、図3から明らかなように、当該コネクタ部24を含めたハウジング23は、シールドカバー26がインサートされた樹脂(ポリマー)製のハウジング23と、ターミナル4の一部がインサートされた樹脂(ポリマー)製のコネクタ部とから構成されてなるものである。 なお、図3から明らかなように、コネクタ部24は、ハウジング23から突き出た形状である。 ・上記「イ.」の記載事項、及び図3によれば、ハウジング23の凹部23a内には感圧素子1やハイブリットIC2等を実装した基板3が挿入され、凹部23aをハウジングキャップ9で覆ってなるものである。 したがって、特に図3に示される実施例2にかかるものに着目するとともに、「コネクタ部24を含めたハウジング23」を発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「感圧素子やハイブリットIC等を実装した基板を凹部に収容し、これら感圧素子やハイブリットIC等を被うように空中伝搬してくる電磁ノイズを遮断するシールドカバーが設けられ、前記凹部をハウジングキャップで覆ってなる、コネクタ部を含めたハウジングであって、 前記ハウジングは、前記シールドカバーがインサートされた樹脂製のものであり、 前記コネクタ部は、前記ハウジングの一部に突き出るように設けられ、前記感圧素子の電気的入力線、電気的出力線およびアース線から構成されたターミナルの一部がインサートされた樹脂製のものであり、 前記ターミナルにはラインノイズ防止用のコンデンサが固着されるとともに、当該コンデンサは前記シールドカバーに固着され、前記ターミナルの先端部が前記シールドカバーの内側に位置してなり、 前記ハウジングと前記コネクタ部とはインサート成形により一体的に形成されている、コネクタ部を含めたハウジング。」 (2)対比・判断 そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比すると、 ア.引用発明における「感圧素子やハイブリットIC等を実装した基板を凹部に収容し、これら感圧素子やハイブリットIC等を被うように空中伝搬してくる電磁ノイズを遮断するシールドカバーが設けられ、前記凹部をハウジングキャップで覆ってなる、コネクタ部を含めたハウジングであって」によれば、 引用発明における「コネクタ部を含めたハウジング」は、感圧素子やハイブリットICといった電子部品に対して空中伝搬してくる電磁ノイズを遮断するシールドカバーを有するものであることから、本願発明1でいう「電磁波シールドカバー」に相当するといえるものであり、 本願発明1と引用発明とは、「電磁波シールドカバーであって」の点で共通する。 ただし、当該電磁波シールドカバーが、本願発明1では、電子部品を収容する筐体の「開口を閉鎖する」側のものである旨特定するのに対し、引用発明では、感圧素子やハイブリットICといった電子部品を収容するハウジング(筐体)側のものである点で相違している。 イ.引用発明における「前記ハウジングは、前記シールドカバーがインサートされた樹脂製のものであり」によれば、 引用発明における「シールドカバー」は、金属板からなることは自明といえることであるから、本願発明1でいう「シールド用金属板」に相当し、 また、引用発明における「ハウジング」は、シールドカバーをインサートしてなる樹脂製のものであることから、本願発明1でいう、シールド用金属板に積層された樹脂組成物からなる「カバー体」に相当するといえ、 本願発明1と引用発明とは、「シールド用金属板に積層された樹脂組成物からなるカバー体と」を備えるものである点で共通する。 ただし、シールド用金属板について、本願発明1では、「厚み1?3mm」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。 ウ.引用発明における「前記コネクタ部は、前記ハウジングの一部に突き出るように設けられ、前記感圧素子の電気的入力線、電気的出力線およびアース線から構成されたターミナルの一部がインサートされた樹脂製のものであり」によれば、 引用発明における「感圧素子」、感圧素子の電気的入力線、電気的出力線およびアース線から構成された「ターミナル」が、それぞれ本願発明1における「電子部品」、電子部品に接続される「電極」に相当し、 引用発明における「コネクタ部」は、ターミナルの一部をインサートしてなる樹脂製のものであって、ハウジングの一部に突き出るように設けられたものであることから、本願発明1でいう、電極を内包する樹脂組成物からなり、カバー体から突き出た「コネクター部」に相当するといえ、 本願発明1と引用発明とは、「電子部品に接続される電極を内包する樹脂組成物からなり、前記カバー体から突き出たコネクター部と」を備えるものである点で共通する。 ただし、電極を内包する樹脂組成物からなるコネクター部が、本願発明1では、「前記シールド用金属板を貫通」してなる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違しているといえる。 エ.引用発明における「前記ハウジングと前記コネクタ部とはインサート成形により一体的に形成されている」によれば、 本願発明1と引用発明とは、「前記カバー体と前記コネクター部とは、一体的に形成されている」点で一致する。 よって、本願発明1と引用発明とは、 「電磁波シールドカバーであって、 シールド用金属板に積層された樹脂組成物からなるカバー体と、 電子部品に接続される電極を内包する樹脂組成物からなり、前記カバー体から突き出たコネクター部と、を備え、 前記カバー体と前記コネクター部とは、一体的に形成されていることを特徴とする電磁波シールドカバー。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 当該電磁波シールドカバーが、本願発明1では、電子部品を収容する筐体の「開口を閉鎖する」側のものである旨特定するのに対し、引用発明では、感圧素子やハイブリットICといった電子部品を収容するハウジング(筐体)側のものである点。 [相違点2] シールド用金属板について、本願発明1では、「厚み1?3mm」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 [相違点3] 電極を内包する樹脂組成物からなるコネクター部が、本願発明1では、「前記シールド用金属板を貫通」してなる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 よって、本願発明1は、引用発明と同一ではなく、引用例に記載された発明であるとはいえない。 2-2.理由2(特許法第29条第2項)について (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「2-1.(1)」に記載したとおりである。 (2)対比 本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、上記「2-1.(2)」に記載したとおりである。 (3)判断 まず、上記[相違点1]について検討すると、 引用発明にあっては、ハウジング(本願発明1でいう「筐体」)の凹部内に感圧素子やハイブリットICといった電子部品を収容する構成を前提とするものであり、あえてこれに代えて、凹部を覆うハウジングキャップ側にシールドカバーをインサートしたり、ハウジングキャップ側にコネクタ部を一体的に形成するなどして相違点1に係る構成とすべき動機付けがなく、引用例からは相違点1に係る構成を導き出すことはできない。 次に、上記[相違点3]についても検討すると、 本願発明1において、「電極を内包する樹脂組成物からなるコネクター部」がシールド用金属板を貫通するということは、電極のみではなく、これを内包する樹脂の部分についてもシールド用金属板を貫通するものであると解されるところ、 引用発明では、「前記ターミナルにはラインノイズ防止用のコンデンサが固着されるとともに、当該コンデンサは前記シールドカバーに固着され、前記ターミナルの先端部が前記シールドカバーの内側に位置して」なるものであることから、「ターミナル」についてはシールドカバーを貫通しているものの、当該ターミナルはラインノイズ防止用のコンデンサを介してシールドカバーを貫通する構成を前提とするものであるといえ、ターミナルを内包する樹脂の部分についてもシールドカバーを貫通するようにするという、相違点3に係る構成については技術的にみて導き出すことができない。 なお、上記相違点1及び相違点3に係る構成については、原査定の拒絶の理由に引用された他の引用文献(特開昭60-129224号公報、特開2005-175243号公報、特開昭63-46205号公報、特開平6-179227号公報、特開2003-169762号公報)、さらには拒絶査定時に提示した引用文献(特開2001-214776号公報、特開昭63-162209号公報、特開平3-183516号公報)のいずれにも記載も示唆もない。 したがって、他の相違点(相違点2)について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2-3.本願の請求項2ないし9に係る発明について 請求項2ないし9に係る発明は、請求項1に従属する請求項であり、請求項2ないし9に係る発明は、本願発明1(請求項1に係る発明)の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定するものであるから、上記「2-1.(2)」及び上記「2-2.(3)」と同じ理由により、引用例に記載された発明であるとはいえず、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 3.原査定の理由についてのむすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、引用例に記載された発明であるとすることができず、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5.むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-05 |
出願番号 | 特願2011-194194(P2011-194194) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K) P 1 8・ 537- WY (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 邦喜 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 井上 信一 |
発明の名称 | 電磁波シールドカバー |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 西本 博之 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 清水 義憲 |