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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01F
管理番号 1322275
異議申立番号 異議2015-700353  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-24 
確定日 2016-09-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5740021号発明「全稈投入型コンバインの脱穀構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5740021号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11〕について訂正することを認める。 特許第5740021号の請求項1、2、4、5、6、7、8及び10に係る特許を維持する。 特許第5740021号の請求項3、9、11に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5740021号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成19年4月24日に出願した特願2007-114283号の一部を平成26年2月26日に新たな特許出願としたものであって、平成27年5月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人三菱マヒンドラ農機株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年3月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年5月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。)があり、これらに対して、申立人より平成28年6月30日に意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正内容
ア 訂正事項1
請求項1に「扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記扱胴の前端部における外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する補強部材を、前記支持部材の前側面と前記扱胴の外周面とに亘って取り付けてある全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、
前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する複数の補強部材を、前記扱胴の周方向に間隔を空けた状態で、前記支持部材の前側面と前記外周面とに亘って取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ、
前記複数の補強部材の前記外周面からの夫々の立ち上がり高さは、夫々の前記補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さよりも低く、かつ、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きい全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。(下線は訂正箇所。以下同様。)

イ 訂正事項2
請求項2に「前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記扱胴の径方向外側箇所のみ重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1記載の全稈投入型コンバインの脱穀
構造。」とあったものを、
「前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記径方向外側箇所のみと重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記支持部材に対して、前記螺旋羽根の内周部の位置に対応する位置よりも高く立ち上げられている請求項1記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
訂正前の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
請求項4に「前記螺旋羽根を、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1?3のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記螺旋羽根は、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けられており、
前記ボルトは、前記支持部材の前側から、前記支持部材を貫通した状態で前記螺旋羽根に直接螺合されている請求項1または2に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

オ 訂正事項5
請求項5に、「前記螺旋羽根を、前記扱胴の周方向の複数個所で締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1?4のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記螺旋羽根を、前記周方向の複数個所で締結具によって締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、隣り合う前記締結具の間に位置するように設けられている請求項1,2,4のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

カ 訂正事項6
請求項6に、「前記螺旋羽根を、前記扱胴の径方向の複数個所で締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1?5のいずれか一項に記載に全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記螺旋羽根を、前記径方向の複数個所で前記支持部材における外周側部分に締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1,2,4,5のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

キ 訂正事項7
請求項7に、「前記支持部材を螺旋状に形成してある請求項1?6のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記支持部材は、前記螺旋羽根の上手側部分から下手側部分に亘る螺旋状に形成してあり、かつ、上手側から下手側にむけて徐々に立ち上がり高さが低くなるように形成してある請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

ク 訂正事項8
請求項8に、「前記支持部材を、前記支持部材の後側面と前記扱胴の外周面に亘って溶接固定してある請求項1?7のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記支持部材の前側面と前記外周面とが溶接固定され、かつ、前記支持部材の後側面と前記外周面とが溶接固定されており、
前記補強部材は、前記支持部材の前側面と前記外周面とに溶接されている請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

ケ 訂正事項9
訂正前の請求項9を削除する。

コ 訂正事項10
請求項10に「前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、着脱可能に固定装備されている請求項1?9のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」とあったものを、
「前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、ボルトによって天板に着脱可能に固定装備され、
前記複数の送塵弁に、前記天板のうち前記掻込部の位置に対応する部位と前記天板のうち前記扱き処理部の位置に対応する部位とに亘る送塵弁が含まれている請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」と訂正する。

サ 訂正事項11
訂正前の請求項11を削除する。

シ 訂正事項12
明細書の段落【0001】に「本発明は、扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造に関する。」とあったものを、
「本発明は、扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造に関する。」と訂正する。

ス 訂正事項13
明細書の段落【0011】に「本発明の特徴は、
扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記扱胴の前端部における外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する補強部材を、前記支持部材の前側面と前記扱胴の外周面とに亘って取り付けてあることにある。」とあったものを、
「本発明の特徴は、
扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、
前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する複数の補強部材を、前記扱胴の周方向に間隔を空けた状態で、前記支持部材の前側面と前記外周面とに亘って取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ、
前記複数の補強部材の前記外周面からの夫々の立ち上がり高さは、夫々の前記補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さよりも低く、かつ、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きいことにある。」と訂正する。

セ 訂正事項14
明細書の段落【0013】に、「さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記扱胴の周方向の複数個所で締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記扱胴の径方向の複数個所で締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材を螺旋状に形成してあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材を、前記支持部材の後側面と前記扱胴の外周面に亘って溶接固定してあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材を、前記支持部材の前側面と前記扱胴の外周面に亘って溶接固定してあると好適である。
さらに、本発明において、
前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、着脱可能に固定装備されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記送塵弁を、ボルトを締結することによって天板に着脱自在に取り付けてあると好適である。」とあったものを、
「さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記径方向外側箇所のみと重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、前記複数の補強部材のうち搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記支持部材に対して、前記螺旋羽根の内周部の位置に対応する位置よりも高く立ち上げられている前記螺旋羽根を、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根は、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けられており、前記ボルトは、前記支持部材の前側から、前記支持部材を貫通した状態で前記螺旋羽根に直接螺合されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記周方向の複数個所で締結具によって締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、隣り合う前記締結具の間に位置するように設けられていると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記径方向の複数個所で前記支持部材における外周側部分に締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材は、前記螺旋羽根の上手側部分から下手側部分に亘る螺旋状に形成してあり、かつ、上手側から下手側にむけて徐々に立ち上がり高さが低くなるように形成してあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材の前側面と前記外周面とが溶接固定され、かつ、前記支持部材の後側面と前記外周面とが溶接固定されており、前記補強部材は、前記支持部材の前側面と前記外周面とに溶接されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、ボルトによって天板に着脱可能に固定装備され、前記複数の送塵弁に、前記天板のうち前記掻込部の位置に対応する部位と前記天板のうち前記扱き処理部の位置に対応する部位とに亘る送塵弁が含まれていると好適である。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
ア 訂正事項1
上記訂正事項1に関連する記載として、訂正前の【請求項3】の「前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に取り付けてある・・・」、段落【0037】の「・・・扱胴16は、その前端部を形成する円錐台状の掻込部41と、その掻込部41の後端に連接した扱き処理部42とを備えて構成されている。掻込部41の外周面には、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を、扱胴16の回転に伴って後方の扱き処理部42に向けて掻き込み搬送する2枚の螺旋羽根43が装備されている。」、段落【0063】の「・・・各支持プレート41Aは、それらの前面と掻込部41の外周面とにわたるように溶接された複数の補強リブ41Bによって補強されている。」との記載、及び【図3】と【図9】に図示された内容からみて、訂正事項1は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項1は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、扱胴及び補強部材を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2
上記訂正事項2に関連する記載として、段落【0063】の「・・・各支持プレート41Aは、それらの前面と掻込部41の外周面とにわたるように溶接された複数の補強リブ41Bによって補強されている。」との記載、及び【図4】の図示内容からみて、訂正事項2は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項2は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、補強部材を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3
上記訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4
上記訂正事項4に関連する記載として、段落【0061】の「・・・各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。」との記載、及び【図8】の図示内容からみて、訂正事項4は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項4は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、ボルトを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5
上記訂正事項5に関連する記載として、段落【0061】の「・・・各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。」との記載、及び【図4】の図示内容からみて、訂正事項5は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項5は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、締結具を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項6
上記訂正事項6に関連する記載として、段落【0061】の「・・・各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。」との記載、及び【図4】と【図8】の図示内容からみて、訂正事項6は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項6は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、螺旋羽根を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項7
上記訂正事項7に関連する記載として、段落【0061】の「・・・各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。」との記載、及び【図4】の図示内容からみて、訂正事項7は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項7は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、支持部材を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

ク 訂正事項8
上記訂正事項8に関連する記載として、訂正前の【請求項9】の「前記支持部材を、前記支持部材の後側面と前記扱胴の外周面に亘って溶接固定してある・・・」、段落【0063】の「なお、各支持プレート41Aは、それらの前面と掻込部41の外周面とにわたるように溶接された複数の補強リブ41Bによって補強されている。」との記載、及び【図8】の図示内容からみて、訂正事項8は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項8は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、支持部材を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

ケ 訂正事項9
上記訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

コ 訂正事項10
上記訂正事項10に関連する記載として、訂正前の【請求項11】の「前記送塵弁を、ボルトを締結することによって天板に着脱自在に取り付けてある・・・」、段落【0057】の「・・・湾曲部24Aの内面には、扱胴16の回転作動に伴って、扱室14の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁49が、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で着脱可能に固定装備されている。複数の送塵弁49のうち、最前の送塵弁49Aは、前側の縦壁部24Bから左側の側縁部24Cにわたる円弧状に形成され、他の送塵弁49Bは、左右の側縁部24Cにわたる円弧状に形成されている。」との記載、及び【図6】と【図12】の図示内容からみて、訂正事項10は、特許明細書に記載されているものと認められる。
上記訂正事項10は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、送塵弁を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

サ 訂正事項11
上記訂正事項11は、訂正前の請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

シ 訂正事項12?14
上記訂正事項12?14は、発明の詳細な説明の記載を、訂正後の請求項の記載と整合するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3)一群の請求項について
訂正事項2ないし11で訂正する訂正後の請求項2ないし11は、訂正後の請求項2,4,5,6,7,8及び10が、訂正後の請求項1を直接的または間接的に引用し、かつ訂正前の請求項3,9及び11を削除するものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとにするものである。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合する。

(4)本件特許の発明の詳細な説明の訂正について
訂正事項12で訂正する訂正後の段落【0001】は、訂正後の請求項1と関係する。
訂正事項13で訂正する訂正後の段落【0011】は、訂正後の請求項1と関係する。
訂正事項14で訂正する訂正後の段落【0013】は、訂正後の請求項2,4,5,6,7,8及び10と関係する。
そして、願書に添付した明細書の訂正である訂正事項12ないし14と関係する全ての請求項が請求の対象とされている。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に適合するものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1?11について訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1,2,4,5,6,7,8及び10に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1,2,4,5,6,7,8及び10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
(なお、本件訂正により、訂正前の請求項3,9及び11は削除された。)

請求項1「扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、
前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する複数の補強部材を、前記扱胴の周方向に間隔を空けた状態で、前記支持部材の前側面と前記外周面とに亘って取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ、
前記複数の補強部材の前記外周面からの夫々の立ち上がり高さは、夫々の前記補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さよりも低く、かつ、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きい全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項2「前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記径方向外側箇所のみと重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記支持部材に対して、前記螺旋羽根の内周部の位置に対応する位置よりも高く立ち上げられている請求項1記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項4「前記螺旋羽根は、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けられており、
前記ボルトは、前記支持部材の前側から、前記支持部材を貫通した状態で前記螺旋羽根に直接螺合されている請求項1または2に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項5「前記螺旋羽根を、前記周方向の複数個所で締結具によって締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、隣り合う前記締結具の間に位置するように設けられている請求項1,2,4のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項6「前記螺旋羽根を、前記径方向の複数個所で前記支持部材における外周側部分に締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1,2,4,5のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項7「前記支持部材は、前記螺旋羽根の上手側部分から下手側部分に亘る螺旋状に形成してあり、かつ、上手側から下手側にむけて徐々に立ち上がり高さが低くなるように形成してある請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項8「前記支持部材の前側面と前記外周面とが溶接固定され、かつ、前記支持部材の後側面と前記外周面とが溶接固定されており、
前記補強部材は、前記支持部材の前側面と前記外周面とに溶接されている請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」
請求項10「前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、ボルトによって天板に着脱可能に固定装備され、
前記複数の送塵弁に、前記天板のうち前記掻込部の位置に対応する部位と前記天板のうち前記扱き処理部の位置に対応する部位とに亘る送塵弁が含まれている請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし11に係る特許に対して、平成28年3月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「本件特許の請求項1?11に係る発明は、刊行物1ないし刊行物11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
〈 刊 行 物 一 覧 〉
刊行物1:特開2005-110672号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平7-115834号公報(甲第2号証の1)
刊行物3:実願昭59-98116号(実開昭61-12350号)のマイクロフィルム(甲第2号証の2)
刊行物4:実願平2-84476号(実開平4-41226号)のマイクロフィルム(甲第2号証の3)
刊行物5:実願昭63-101784号(実開平2-23428号)のマイクロフィルム(甲第3号証の1)
刊行物6:実願昭62-159067号(実開平1-63353号)のマイクロフィルム(甲第3号証の4)
刊行物7:特開平9-52号公報(甲第3号証の5)
刊行物8:特開平9-187150号公報(甲第4号証の1)
刊行物9:特開平7-67461号公報(甲第4号証の2)
刊行物10:特開平10-52154号公報(甲第4号証の3)
刊行物11:特開平8-242667号公報(甲第5号証)」

(3)刊行物の記載事項
ア 刊行物1には、「【0001】本発明は、圃場に植立状態で穀粒のついたままの状態の穀稈を根本部から刈り取って、そのままスクリューロータが回転する脱穀室に投入する汎用軸流型とも呼称される汎用形コンバインの脱穀装置・・・」、「【0023】・・・脱穀装置の内部に配置したスクリューロータ(扱胴)・・・」、「【0024】・・・該スクリューロータを構成するロータ1(胴)の先端部分はコーン状の前端ロータ部1aに構成されて、該前端ロータ部1aの部分には、更にオーガ(螺旋羽根)3とは異なる特殊な形状(三日月状)の前端オーガ4が固設されている。該前端オーガ4は、刈取部Kにより株元を刈り取られた穀稈と穀粒の一体状態の被選別材料が、扱室に取り込まれてスムーズに後方へ搬送出来る構成とされている。」と記載されている。また、【図5】を参照すると、「前端オーガ4は、支持部材と螺旋羽根からなり、前端ロータ部1aの外周面に、ロータ1(胴)の径方向外方へ向けて立設する状態で支持部材が固定してあり、螺旋羽根を、支持部材におけるロータ1(胴)の径方向外側箇所のみ重複する状態で、支持部材の後側面に取り付けたこと」が見てとれる。
以上の記載によれば、刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロータ1(胴)の先端部分の前端ロータ部1aに、刈取部Kにより株元を刈り取られた穀桿と穀粒の一体状態の被選別材料が、扱室に取り込まれてスムーズに後方へ搬送出来る構成とされた前端オーガ4を装備してある汎用型コンバインの脱穀装置であって、
前端オーガ4は、支持部材と螺旋羽根からなり、
前端ロータ部1aにおける外周面に、ロータ1(胴)の径方向外方へ向けて立設する状態で支持部材が固定してあり、螺旋羽根を、支持部材におけるロータ1(胴)の径方向外側箇所のみ重複する状態で、支持部材の後側面に取り付けてある、汎用型コンバインの脱穀装置。」

イ 刊行物2には、「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、コンバインの脱穀装置に関し、主として汎用型のコンバインに利用するものである。」、「【0005】【実施例】まず、その構成について述べる。・・・脱穀装置3は、扱胴4を内装軸架した扱室5を上部に位置させ、・・・」、「【0006】そして、脱穀装置3は、扱室5の穀稈供給口11を進行方向の前側にし、・・・。そして、刈取前処理装置13は、・・・刈取穀稈を収集する穀稈掻込オ-ガ17とからなり、圃場の穀稈の刈取と収集を行う構成としている。そして、無端コンベア装置18は、・・・その始端部を前記掻込オ-ガ17に臨ませ、終端部を前記扱室5の穀稈供給口11に連続させて構成している。」、「【0007】・・・扱胴4は、円錐形状の始端部4aとこれに連続する円筒状の本体4bとからなっており、スパイラル羽根19は、始端部4aには前部スパイラル羽根19aを設け、本体4bには脱粒用のスパイラル羽根19bを装着して構成し、このスパイラル羽根19bには適宜扱歯20を取り付けて構成している。」、「【0008】・・・補助羽根21は、前記前部スパイラル羽根19aに沿わせたスパイラル状に形成し、・・・ねじによって前記前部スパイラル羽根19aに取り付けて設けている。」、「【0013】・・・穀稈は、その全稈が無端帯18aの終端部分から穀稈供給口11に達すると、この部分で回転している扱胴4の始端部4aにある前部スパイラル羽根19aによって扱室5側に掻き込まれる。・・・」、「【0016】・・・スパイラル羽根の先端部分から後方に位置させて補強用の補助羽根を着脱自由に取り付けるものであるから、・・・」と記載されている。また、【図1】?【図4】を参照すると、「補助羽根21は、前部スパイラル羽根19aにおける扱胴4の径方向外側箇所のみ重複する状態で、前部スパイラル羽根19aに取り付けたこと」及び「ねじは、扱胴4の周方向に複数箇所に配置したこと」が見てとれる。
以上の記載によれば、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認める。
「扱胴4を内装軸架した扱室5を上部に位置させ、扱室5の穀稈供給口11を進行方向の前側にした脱穀装置4と、
その始端部を、圃場の穀稈の刈取と収集を行う刈取前処理装置13の穀稈掻込オ-ガ17に臨ませ、終端部を、前記扱室5の穀稈供給口11に連続させた無端コンベア装置18と、により構成した汎用型コンバインにおいて、 扱胴4は、円錐形状の始端部4aとこれに連続する円筒状の本体4bとからなっており、始端部4aには前部スパイラル羽根19aを設け、
補助羽根21は、前記前部スパイラル羽根19aに沿わせたスパイラル状に形成し、扱胴4の周方向に複数箇所に配置したねじによって前部スパイラル羽根19aに着脱自在に取り付けて設けてあり、
穀稈は、その全稈が穀稈供給口11に達すると、この部分で回転している扱胴4の始端部4aにある前部スパイラル羽根19aによって扱室5側に掻き込まれる、汎用型コンバインの脱穀装置。」

ウ 刊行物3には、「スクリュー型脱穀機の扱胴は、入口のコーン部に取込み羽根を具えこれに連結されたスクリューが扱胴全長に形成されている。」(明細書2頁6?8行)、「先ずスクリュー型脱穀機の全体から説明する。・・・刈り取られた作物は掻込みオーガ(3)からフィーダーハウス(4)のチェーンコンベア(5)で扱室(6)に運ばれ、スクリュー式扱胴(7)で脱穀される。」(明細書3頁下2行?4頁5行)、「スクリュー式扱胴(7)は入口部にコーン部(22)を具え、これに取込み羽根(23)がある。(24)は扱胴(7)の全長に形成されたスクリューである。」(明細書5頁1?4行)、「羽根(23)の端縁に別の部材(27)を取付けボルトナット(28)で固定しておけば摩耗した場合この部材(27)を新たな部材と交換することができる。」(明細書5頁下2行?6頁2行)と記載されている。また、第1図及び第3図を参照すると、「ボルトナット(28)は、スクリュー式扱胴(7)の周方向の複数箇所に配置したこと」が見てとれる。さらに、第10図をみると、スクリュー型脱穀機は、全桿投入型コンバインであることが明らかである。
以上の記載によれば、刊行物3には次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されているものと認める。
「刈り取られた作物がチェーンコンベア(5)で扱室(6)に運ばれ、スクリュー式扱胴(7)で脱穀されるスクリュー型脱穀機において、
スクリュー式扱胴(7)の入口部に具えたコーン部(22)に取込み羽根(23)があり、
羽根(23)の端縁に別の部材(27)を取付け、スクリュー式扱胴(7)の周方向の複数箇所に配置したボルトナット(28)で固定し、摩耗した場合この部材(27)を新たな部材と交換することができる、スクリュー型脱穀機。」

エ 刊行物4には、「本考案はスクリュー式ローターを具備した普通型コンバインの脱穀装置に関する。」(明細書2頁5?6行)、「引起し刈取した後の穀桿を、オーガーにより中央に集めた後にフィーダーボックス6内のフィーダーチェーン5により、ローターカバー7とスクリュー式ローターにより構成したスクリュー式ローター室に受継いでいる。スクリュー式ローターはローター1とロータースパイラル2と・・・により構成されており、穀桿と穀粒とを脱穀すべく構成している。」(明細書4頁16行?5頁5行)、「ローター1の前端はフィーダーチェーン5からの穀桿の受継部であるので、小径にしており、その後のローター1は同一径に構成されている。そして後方のロータースパイラル2の部分は同一径であるが、前端の部分の受継部を構成するインペラ2bは、ロータースパイラル2よりも小径または同径としている。そして通常は同径または小径のインペラ2bの上に、脱着式スパイラル3を取付ボルト4により固定した状態とするのである。そして非常に流量が多い場合等の特殊な条件下においては、脱着式スパイラル3を取り外して、・・・インペラ2bのみとすることも出来るのである。」(明細書5頁12行?6頁5行)と記載されている。また、第2図を参照すると、「取付けボルト4は、ローター1の径方向の複数箇所に配置したこと」が見てとれる。
以上の記載によれば、刊行物4には次の発明(以下「刊行物4発明」という。)が記載されているものと認める。
「引起し刈取した後の穀桿を、フィーダーチェーン5により、スクリュー式ローターにより構成したスクリュー式ローター室に引継ぎ、スクリュー式ローターが穀桿と穀粒を脱穀する、普通型コンバインの脱穀装置において、
スクリュー式ローターはローター1とロータースパイラル2により構成され、ローター1の前端はフィーダーチェーン5からの穀桿の受継部であるので、小径にしており、
前端の部分の受継部を構成するインペラ2bは、ロータースパイラル2よりも小径とし、小径のインペラ2bの上に、脱着式スパイラル3を、ローター1の径方向の複数箇所に配置した取付ボルト4により固定した状態とした、普通型コンバインの脱穀装置。」

オ 刊行物5には、「16は補強板であって、各螺旋扱歯14が、扱胴軸方向にかかる負荷に対して十分耐え得るように該螺旋扱歯の起立側面と扱胴周面との間に介在されて一体的に固着保持されている。」(明細書4頁下8?5行)と記載されている。

カ 刊行物6には、「又この扱胴(2)の外周面には、前記供給口(5)から供給された穀桿を後方へ移送する螺旋状突条帯(1)を設け、この螺旋状突条帯(1)に沿い適宜な間隔を有した位置の該扱胴(2)外周面には、この外周面と該螺旋状突条帯(1)とを結合して補強する一対の補強部材(3)(3)を各々設け、」(明細書3頁末行?4頁5行)と記載されている。

キ 刊行物7には、「【0018】・・・羽根(25)を補強する断面L形の補強板(60)を設ける。・・・羽根(25)前面でこの周方向に等間隔に設けられ、補強板(60)の一側面(60a)が胴部(24)の外周面と接合し、他側面(60b)が胴部(24)の外周面から半径方向に立上がり、投入口(28)と反対側に向く補強板(60)の一端面を羽根(25)に接合させる状態に補強板(60)を配置し、羽根(25)とこの羽根に接する補強板(60)の一端面とを溶接によって固着すると共に、胴部(24)とこの胴部(24)に接する補強板(60)の一側面(60a)とを溶接によって固着し・・・」と記載されている。

ク 刊行物8には、その【図3】をみると、ライニング部材5が、螺旋状扱歯3にボルト6を介して取り付けられていることがわかる。

ケ 刊行物9には、その【図9】をみると、螺旋型補強板67が、小幅羽根63にボルト69を介して取り付けられていることがわかる。

コ 刊行物10には、その【図3】をみると、ライニング部材13が、螺旋状扱歯11にボルト14を介して取り付けられていることがわかる。

サ 刊行物11には、「【0011】・・・扱胴5の回転に伴って扱胴周方向に流動する処理物を扱胴軸芯方向に案内するために、扱室2の天板に多数の送塵弁11を扱胴軸芯方向に並べた状態で取付け、扱胴5の駆動回転に伴って穀稈を脱穀処理するとともに扱胴軸芯方向に移送するように構成してある。・・・」と記載されている。

(4)対比・判断
ア 請求項1に係る発明と甲1発明を対比すると、甲1発明は、少なくとも、請求項1に係る発明の「前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ」た事項、及び「前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きい」事項を有してない。
また、当該事項は、刊行物2ないし刊行物11、並びに取消理由に用いていない甲第3号証の2(特開平1-202220号公報)及び甲第3号証の3(特開平6-245631号公報)にも記載されていない。
そして、当該事項により、刈取穀稈の密度が高くなる掻込部の後部側において、螺旋羽根の搬送面に作用する刈取穀稈からの圧力が高くなることを、補強部材によってしっかりと受け止められるという顕著な効果を奏するものであり、請求項1に係る発明は、甲1発明及びその他の証拠から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 申立人は、請求項1に係る発明の「複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられる」という技術事項は、刊行物5又は刊行物1に開示され、同じく「最も搬送方向下手側に位置する補強部材の外周面からの立ち上り高さは、最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きい」という技術事項は、刊行物1又は刊行物7に開示されていると主張するが(意見書5頁23行?6頁19行)、刊行物1,5,7に記載された補強部材は、掻込部の補強部材ではなく、さらにいえば、最も搬送方向下手側に位置する補強部材でもないから、甲1発明の掻込部の支持部材に当該補強部材を適用する動機付けは存在せず、申立人の主張は採用できない。

ウ 請求項2,4,5,6,7,8,10に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記ア,イに記載した請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)請求項3,9,11について
前記「2(1)ウ,ケ及びサ」のとおり、訂正により請求項3,9,11は削除された。
その結果、請求項3,9,11に係る発明についての特許異議の申立ては、その対象を欠くことになったので、不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、取消理由によって、本件請求項1,2,4,5,6,7,8及び10に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1,2,4,5,6,7,8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3,9,11に係る発明についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
全稈投入型コンバインの脱穀構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造に関する。
【背景技術】
【0002】
全稈投入型コンバインの脱穀構造としては、扱胴本体の前端側に形成した前細り周面に、被処理物を掻き込むための2枚の掻き込みスクリュー(螺旋羽根)を取り付け、扱胴本体の円筒状周面に、各掻き込みスクリューの後端に連なる2条のスクリューを取り付け、各スクリューに、多数の扱歯と、各扱歯より扱胴周方向の長さが大きい複数の部分螺旋状送り羽根とを、それらが交互に位置し、かつ、スクリューの外方に突出する状態で着脱可能にボルト連結したものがある。これにより、扱胴本体の駆動回転に伴って、被処理物を扱歯の作用で脱穀処理するとともに、スクリューなどの作用で被処理物を後方に向けて搬送する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07-107844号公報(段落番号0013?0014、図1?2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
全稈投入型のコンバインは、刈取穀稈の全体が被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送されることから、刈取穀稈の穂先側のみを被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送する自脱型のコンバインに比較して処理量が多くなる。また、刈取穀稈の全体を被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送する場合には、刈取穀稈の穂先側のみを扱胴の前端部に向けて供給搬送する場合に比較して、泥土などの異物が刈取穀稈とともに被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送される可能性が高くなる。
【0004】
そのため、全稈投入型のコンバインにおいては、自脱型のコンバインに比較して、扱胴の回転に伴って被処理物に対して作用する箇所が、被処理物との接触によって摩耗する不都合が生じ易くなっている。
【0005】
特に、扱胴の前端部に装備される螺旋羽根(掻き込みスクリュー)は、機体の走行に伴って扱胴の前端部に供給搬送されてくる全ての被処理物を、扱胴の回転に伴って、後方の脱穀処理領域に向けて掻き込み搬送するものであり、収穫作業時には大量の被処理物と激しく接触するようになることから、長期の使用においては著しく摩耗することがある。
【0006】
そして、このような摩耗が生じた場合には、螺旋羽根と、その螺旋羽根による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助するために螺旋羽根の下方に配備される搬送補助ガイドとの間に形成される隙間が大きくなり、搬送補助ガイドで受け止められた刈取穀稈に対して、螺旋羽根の掻き込み搬送作用が及び難くなる。
【0007】
つまり、全稈投入型のコンバインにおいては、長期の使用によって螺旋羽根が著しく摩耗した場合には、刈取穀稈に対する螺旋羽根の掻き込み搬送作用が低下することになり、結果、脱穀処理能力の低下を招くことになる。
【0008】
このような脱穀処理能力の低下を回避する方法としては、長期の使用によって摩耗した螺旋羽根などを取り換えることが考えられるが、前述したように、従来技術に基づく全稈投入型コンバインの脱穀構造は、扱胴本体の円筒状周面に取り付けた各スクリューに、多数の扱歯や複数の部分螺旋状送り羽根を着脱可能に取り付けるだけであって、扱胴本体の前端側に形成した前細り周面に、螺旋羽根を着脱可能に取り付けるものではないことから、長期の使用によって螺旋羽根が著しく摩耗した場合には、螺旋羽根とともに扱胴本体の全体を取り換える、といった大掛かりな処置を施す必要が生じることになる。
【0009】
つまり、従来技術に基づく全稈投入型のコンバインにおいては、螺旋羽根などの摩耗に対する適切な処置を施す場合に、かなりの手間やコストを要することから、螺旋羽根などの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避することが困難になっていた。
【0010】
本発明の目的は、螺旋羽根などの摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようにして、螺旋羽根などの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、
扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、
前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する複数の補強部材を、前記扱胴の周方向に間隔を空けた状態で、前記支持部材の前側面と前記外周面とに亘って取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ、
前記複数の補強部材の前記外周面からの夫々の立ち上がり高さは、夫々の前記補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さよりも低く、かつ、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きいことにある。
【0012】
この特徴構成によると、螺旋羽根が、長期にわたる刈取穀稈などとの激しい接触によって著しく摩耗した場合には、摩耗した螺旋羽根のみを取り換えることができる。これにより、螺旋羽根を、溶接などによって扱胴の前端部に着脱不能に装備する場合に比較して、螺旋羽根の取り換えに要する手間やコストを大幅に削減することができ、結果、摩耗した螺旋羽根の取り換えが行い易くなる。そして、摩耗した螺旋羽根の取り換えが行い易くなることにより、螺旋羽根の摩耗を放置した場合に招くことのある、刈取穀稈に対する螺旋羽根の掻き込み搬送作用が低下し、その低下に伴って脱穀処理能力が低下する、といった不都合を容易に回避することができる。
【0013】
従って、扱胴の前端部に対して螺旋羽根を着脱可能に取り付けるといった簡単な改良を施すことにより、螺旋羽根の摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようになり、結果、螺旋羽根の摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることができる。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記扱胴の径方向外側箇所のみ重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記径方向外側箇所のみと重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、前記複数の補強部材のうち搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記支持部材に対して、前記螺旋羽根の内周部の位置に対応する位置よりも高く立ち上げられている前記螺旋羽根を、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根は、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けられており、前記ボルトは、前記支持部材の前側から、前記支持部材を貫通した状態で前記螺旋羽根に直接螺合されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記周方向の複数個所で締結具によって締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、隣り合う前記締結具の間に位置するように設けられていると好適である。
さらに、本発明において、
前記螺旋羽根を、前記径方向の複数個所で前記支持部材における外周側部分に締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材は、前記螺旋羽根の上手側部分から下手側部分に亘る螺旋状に形成してあり、かつ、上手側から下手側にむけて徐々に立ち上がり高さが低くなるように形成してあると好適である。
さらに、本発明において、
前記支持部材の前側面と前記外周面とが溶接固定され、かつ、前記支持部材の後側面と前記外周面とが溶接固定されており、前記補強部材は、前記支持部材の前側面と前記外周部とに溶接されていると好適である。
さらに、本発明において、
前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、ボルトによって天板に着脱可能に固定装備され、前記複数の送塵弁に、前記天板のうち前記掻込部の位置に対応する部位と前記天板のうち前記扱き処理部の位置に対応する部位とに亘る送塵弁が含まれていると好適である。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】全稈投入型コンバインの全体側面図
【図2】全稈投入型コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀装置の前端部の構成を示す一部縦断正面図
【図5】脱穀装置の前後中間部の構成を示す一部縦断正面図
【図6】扱胴および搬送補助ガイドの構成を示す要部の平面図
【図7】扱胴の構成を示す要部の横断平面図
【図8】螺旋羽根の取り付け構造を示す要部の断面図
【図9】扱胴の構成を示す扱胴の縦断背面図
【図10】扱胴の別構成を示す要部の横断平面図
【図11】継目部材の構成を示す要部の縦断正面図
【図12】送塵弁の長さおよび配置を示す要部の横断平面図
【図13】搬送補助ガイドの構成を示す要部の平面図
【図14】搬送補助ガイドの構成を示す要部の縦断側面図
【図15】受網の構成を示す要部の斜視図
【図16】チャフシーブの構成を示す要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には稲や麦などを収穫対象とする全稈投入型コンバインの全体側面が示されている。図2にはその全体平面が示されている。これらの図に示すように、全稈投入型コンバインは、角パイプ鋼材などにより形成した機体フレーム1の右前部にエンジン2や変速装置(図示せず)などが搭載されている。機体フレーム1の下部には、変速装置などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される左右一対のクローラ式走行装置3が配備されている。機体フレーム1の前部には、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置4が昇降揺動可能に連結されている。機体フレーム1の左半部には、刈取搬送装置4からの刈取穀稈に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5が搭載されている。機体フレーム1の右半部には、脱穀装置5からの穀粒を貯留するとともに、その貯留した穀粒の袋詰めを可能にする袋詰装置6が搭載されている。機体フレーム1の右前部には搭乗運転部7が形成されている。
【0024】
左右のクローラ式走行装置3は、搭乗運転部7に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー8の左右方向への揺動操作に基づいて、操向系(図示せず)が作動することで、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回状態とが、切り換え現出されるように構成されている。
【0025】
刈取搬送装置4における前端の左右両側端部には、機体の走行に伴って、植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分けるデバイダ9が配備されている。刈取搬送装置4の前部上方には、左右のデバイダ9で梳き分けられた収穫対象の植立穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込む回転リール10が装備されている。刈取搬送装置4の底部には、収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する切断機構11が配備されている。切断機構11の後方には、切断機構11による切断後の植立穀稈(刈取穀稈)を左右方向の所定箇所に寄せ集めるとともに、その所定箇所から後方に向けて送り出すオーガ12が配備されている。オーガ12の所定箇所には、その所定箇所から送り出された刈取穀稈を脱穀装置5に向けて供給搬送する搬送コンベヤからなるフィーダ13が装備されている。
【0026】
刈取搬送装置4は、機体フレーム1とフィーダ13とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)の作動によって、機体フレーム1とフィーダ13との連結点を支点にして昇降揺動する。昇降シリンダの作動は、操縦レバー8の前後方向への揺動操作に基づいて、昇降シリンダに対する作動油の流れを制御する制御弁(図示せず)の作動状態が切り換えられることにより制御される。つまり、操縦レバー8を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置4を昇降させることができ、植立穀稈に対する切断機構11の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行えるように構成されている。
【0027】
図3?5に示すように、脱穀装置5の上部には扱室14が形成されている。扱室14には、刈取穀稈の搬送方向に沿って架設した前後向きの支軸15を支点にして回転する扱胴16が配備されている。扱胴16の下方には、扱胴16の下部側を下方から覆う正面視U字状に形成された受網17が装備されている。脱穀装置5において、その脱穀処理方向の下手側端部となる受網17の後方には、脱穀処理後の穀稈を機外に排出するための排稈口18が形成されている。受網17の下方には、受網17から漏下した処理物に対して篩い選別処理を施す揺動選別機構19が配備されている。揺動選別機構19の前下方には、受網17から漏下してくる処理物や篩い選別処理中の処理物に向けて選別風を供給して、それらの処理物に風力選別処理を施す唐箕20が配備されている。唐箕20の後方には、揺動選別機構19の前部側から漏下した処理物を回収する1番回収部21が形成されている。1番回収部21の後方には、揺動選別機構19の後部側から漏下した処理物を回収する2番回収部22が形成されている。揺動選別機構19の後方には、揺動選別機構19から漏下せずに揺動選別機構19の後端部まで搬送された処理物を機外に排出するための排出口23が形成されている。扱胴16の上方には、扱胴16の上部側を上方から覆う天板24が開閉可能に装備されている。
【0028】
扱室14は、扱胴16を覆う受網17や天板24などによって区画形成されている。扱室14の前端下方部位には、フィーダ13によって搬送された刈取穀稈の全体が処理物として供給される供給口25が形成されている。
【0029】
扱胴16は、その支軸15が脱穀装置5の前壁26と後壁27とにわたって回転可能に架設されている。そして、扱胴16は、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で、支軸15を支点にして正面視右回りに回転駆動され、この回転駆動により、扱室14に供給された刈取穀稈に対して脱穀処理を施し、穀粒の単粒化を促しながら、その刈取穀稈を脱穀処理方向の下手側となる機体後方に向けて搬送する。
【0030】
受網17は、格子状に形成されたコンケーブ受網であり、扱室14に供給された刈取穀稈を受け止めて、刈取穀稈に対する扱胴16の脱穀処理を補助する。具体的には、受網17は、扱胴16の回転作動に伴って脱穀処理される刈取穀稈を受け止めながら、その脱穀処理によって得られた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などの処理物を下方の揺動選別機構19に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構19への漏下を防止する。
【0031】
揺動選別機構19は、カム式の駆動機構28によって前後方向に揺動駆動される平面視枠状のシーブケース29を備えている。シーブケース29の上部には、粗選別用のグレンパン30とチャフシーブ31とストローラック32とが、その順にシーブケース29の前側から配備されている。シーブケース29の下部には、精選別用のグレンパン33とグレンシーブ34とが、その順にシーブケース29の前側から配備されている。揺動選別機構19の上部においては、単粒化穀粒や稈屑などが混在する状態で受網17から漏下した選別処理物を、上部のグレンパン30やチャフシーブ31あるいはストローラック32により受け止めて、篩い選別による粗選別処理を施す。揺動選別機構19の下部においては、単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが混在する状態でチャフシーブ31から漏下した選別処理物を、下部のグレンパン33やグレンシーブ34により受け止めて、篩い選別による精選別処理を施す。その結果、選別処理物を、1番物としての単粒化穀粒と、2番物としての枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物と、3番物としての稈屑などの塵埃とに選別する。
【0032】
唐箕20は、ベルト式の伝動機構35を介して伝達されるエンジン2からの動力で、その支軸20Aを支点にして回転駆動されることにより選別風を生起する。選別風は、3つの風路R1?R3を通って、受網17から漏下した選別処理物や、揺動選別機構19で選別される選別処理物などに向けて供給されることで、選別処理物から比重の小さい稈屑などを吹き分けて、脱穀処理方向下手側の排出口23に向けて搬送する。
【0033】
1番回収部21は、唐箕20からの選別風でワラ屑などの塵埃が除去された状態で、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下した単粒化穀粒を1番物として回収する。1番回収部21の底部には、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される1番スクリュー36が左右向きに配備されている。1番スクリュー36は、1番回収部21にて回収された1番物を、その右端に連設した揚送スクリュー37(図2参照)に向けて搬送する。
【0034】
2番回収部22は、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下せずにグレンシーブ34の後端から流下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物、および、揺動選別機構19のストローラック32から漏下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物を2番物として回収する。2番回収部22の底部には、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される2番スクリュー38が左右向きに配備されている。2番スクリュー38は、2番回収部22にて回収された2番物を、その右端に連設した2番還元機構39(図2参照)に向けて搬送する。
【0035】
揚送スクリュー37は、1番スクリュー36で搬送された1番物を揚送して、袋詰装置6の上部に備えた穀粒タンク40に供給する(図1および図2参照)。2番還元機構39は、2番スクリュー38で搬送された2番物に対して再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、その再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構19に還元する(図2参照)。
【0036】
排出口23は、受網17から漏下せずに排稈口18から流下する脱粒穀稈や、篩い選別処理や風力選別処理で揺動選別機構19の後方に選別搬送された稈屑などを機外に放出する。
【0037】
図3?9に示すように、扱胴16は、その前端部を形成する円錐台状の掻込部41と、その掻込部41の後端に連接した扱き処理部42とを備えて構成されている。掻込部41の外周面には、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を、扱胴16の回転に伴って後方の扱き処理部42に向けて掻き込み搬送する2枚の螺旋羽根43が装備されている。
【0038】
扱き処理部42は、支軸15の前部に一体装備した第1プレート44、支軸15の前後中間部に一体装備した第2プレート45、支軸15の後端部に一体装備した第3プレート46、それらのプレート44?46によって、支軸15に沿う前後向きの姿勢で、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てて並ぶように支持された丸パイプ鋼材などからなる6本の扱胴フレーム47、および、各扱胴フレーム47に、扱胴フレーム47から扱胴16の外方に向けて突出する姿勢で、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶように装備した複数の扱歯48、などにより構成されている。
【0039】
つまり、扱胴16には、その外方に向けて突出する複数の扱歯48が、扱き処理部42の周方向と前後方向とに所定間隔を隔てて並ぶように整列配備されている。また、扱胴16は、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通して、その内部空間Sへの処理物の入り込みを許容するように形成されている。その結果、扱胴16の回転作動時には、その周囲の処理物と内部空間Sに入り込んだ処理物とを攪拌しながら、それらの処理物に対して、扱胴フレーム47や扱歯48の打撃や梳き込みなどによる脱穀処理を施す。
【0040】
しかも、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通することにより、大量の刈取穀稈が処理物として扱室14に供給された場合であっても、扱き処理部42の内部空間Sを脱穀処理用の処理空間として有効利用することができる。これにより、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。その結果、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因した、十分な脱穀処理が行われないまま処理物がコンケーブ3から漏下する、あるいは、脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴16に対する伝動系が破損する、などの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0041】
そして、扱胴16の回転作動時には、複数の扱歯48だけでなく、扱胴16の扱き処理部42を形成する6本の扱胴フレーム47までもが、処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0042】
また、扱胴16の前部側での脱穀処理によって多くの穀粒が単粒化して受網17から漏下することで処理物量が減少する扱胴16の前後中間部においては、扱胴16の内部空間Sを前後に隔てる第2プレート45が、扱胴16の内部空間Sでの処理物の脱穀処理方向下手側への流動を阻止し、扱胴16の回転とともに処理物を扱胴16の周囲に導いて、処理物に対する扱歯48などの打撃や梳き込みなどによる脱穀、および、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促すようになる。これにより、処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱粒穀稈などが扱胴16の内部空間Sを素通りして、脱粒穀稈とともに脱穀処理方向の下手側端部に形成した排稈口18から排出されることによる3番ロスの発生を阻止することができる。
【0043】
さらに、扱胴16の回転作動時には、掻込部41の作用で掻き込み搬送される刈取穀稈とともに、螺旋羽根43の回転に伴って供給口25から吸引された外気が、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sにスムーズに流動するようになる。これにより、脱穀処理によって発生した稈屑などの供給口25からフィーダ13への流出を防止することができるとともに、処理物の脱穀処理方向下手側への搬送をより速やかに行える。
【0044】
その上、供給口25から吸引される外気は、供給口25に接続されたフィーダ13の内部を通るものであり、また、そのフィーダ13は、切断機構11やオーガ12などを装備した刈取搬送装置4の刈取回収部に形成した回収穀稈搬出用の搬出口(図示せず)と供給口25とを連通するものであることから、扱胴16の回転作動時には、螺旋羽根43の回転による吸引作用で、刈取回収部での刈取処理や回収処理で発生した稈屑などの塵埃も、外気とともに、刈取回収部の搬出口からフィーダ13の内部空間および供給口25を介して、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sに流入することになる。その結果、刈取回収部での稈屑などの付着堆積や舞い上がりを抑制することができ、その付着堆積に起因した刈取穀稈の搬送不良や、その舞い上がりに起因した作業環境および視界性の低下などを抑制することができる。
【0045】
各プレート44?46は、支軸15を中心とする円形で、その外周側における支軸15からの等距離の位置に扱胴フレーム47がボルト連結されている。つまり、各プレート44?46の外周側に、その周方向に一定間隔を隔てて並ぶ状態に6本の扱胴フレーム47を配備して、扱胴16の胴径が大きくなるようにしている。これにより、扱胴16に対する刈取穀稈の巻き付きを防止することができる。
【0046】
各扱胴フレーム47は、その前後方向を扱胴16の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴16の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に、かつ、隣り合う扱胴フレーム47との前後向きが逆になるように、各プレート44?46にボルト連結されている。
【0047】
各扱胴フレーム47には、扱歯48の取り付けを可能にする複数の取付孔47A,47Bが、その前後方向に一定ピッチPで並ぶ状態に、かつ、扱胴フレーム47の前端から最前の取付孔47Aの中心までの距離L1と、扱胴フレーム47の後端から最後の取付孔47Aの中心までの距離L2とを半ピッチ(=1/2P)だけ異ならせた状態で穿設されている。
【0048】
そして、各扱胴フレーム47は、隣り合うものとの前後向きが逆になる状態で各プレート44?46に連結支持されている。これにより、6本の扱胴フレーム47として同じ構成のものを採用しながら、それらの各扱胴フレーム47に装備される扱歯48を、隣り合う扱胴フレーム47の扱歯48と前後方向に半ピッチ分だけ位置ずれさせた状態で位置させることができる。その結果、隣り合う扱歯48の間隔を小さくすることなく、処理物に対する扱歯48の打撃間隔を小さくすることができる。
【0049】
つまり、各扱胴フレーム47を同じ構成とすることによるコストの削減を図りながら、また、隣り合う扱歯48の間隔を小さくするほど招き易くなる、扱歯48に対する処理物中の穀稈の絡み付きに起因した処理物の詰まりを効果的に防止しながら、処理物に対する扱歯48の打撃回数を多くすることによる脱穀性能の向上を図ることができる。
【0050】
また、各扱胴フレーム47を、通常姿勢と反転姿勢とに向き変更可能に装備したことで、処理物量が多いことで比較的に摩耗し易い脱穀処理方向上手側に位置する扱歯48の摩耗が長期の使用によって著しくなった場合には、各扱胴フレーム47の向きを変更することで、各扱胴フレーム47に備えた複数の扱歯48を、比較的に摩耗し易い脱穀処理方向上手側の扱歯48と摩耗し難い脱穀処理方向下手側の扱歯48とを交換した状態に、一挙に位置変更することができる。これにより、摩耗の少ない脱穀処理方向下手側の扱歯48を、処理物量の多い脱穀処理方向上手側の扱歯48として有効利用することができる。
【0051】
複数の取付孔47A,47Bのうち、各扱胴フレーム47の前後両端部に位置する4つ(前後2つずつ)の取付孔47Aは、中間部に位置する取付孔47Bよりも小径に形成されている。
【0052】
各扱歯48のうち、小径の取付孔47Aを利用して取り付けられる扱歯48Aは、取付孔47Aに挿通される小径部48aを備えた段付きの丸棒鋼材で構成され、その中心が、支軸15の中心と扱胴フレーム47の中心とを通る線上に位置するように、扱胴フレーム47に着脱可能にナット止めされている。
【0053】
中間部の取付孔47Bを利用して取り付けられる扱歯48Bは、段無しの丸棒鋼材で構成され、その中心が、支軸15の中心と扱胴フレーム47の中心とを通る線上に位置するように、扱胴フレーム47に着脱不能に溶接されている。
【0054】
つまり、扱き処理部42の前後両端部に位置する各扱歯48Aが着脱可能であることから、それらの扱歯48Aが、扱胴フレーム47の向き変更を含めた長期にわたる使用で著しく摩耗した場合には、新しい扱歯48Aに簡単に交換することができる。
【0055】
また、脱粒穀稈量が多くなる脱穀処理方向下手側においては、図10に示すように、扱胴16の後端部に位置する扱歯48Aを間引いた状態で配備すれば、扱胴後端部での扱歯48Aの間隔が大きくなって、扱胴後端部での扱歯48Aに対する引っ掛かりに起因した脱粒穀稈の滞留を効果的に抑制することができる。その結果、排稈口18からの脱粒穀稈の放出を促進させることができる。
【0056】
図3?5、図11および図12に示すように、天板24には、扱歯先端の回転軌跡Kに略沿って湾曲する湾曲部24A、その湾曲部24Aの前後両端に位置する半円状の縦壁部24B、および、湾曲部24Aの左右に位置する一直線状の側縁部24C、などが一体装備されている。天板24は、その左側の側縁部24Cに備えた複数のヒンジ24Dを支点にして、扱胴16の上部側を上方から覆う閉位置と、扱胴16の上部側を開放する開位置とにわたる開閉揺動操作が可能となるように構成されている。右側の側縁部24Cには、天板24を閉状態で固定する複数のボルト24Eが備えられている。
【0057】
湾曲部24Aは、扱胴16の回転作動に伴って扱胴16の上部に向けて搬送された処理物を、その内面によって下方の受網17に向けて円滑に案内するように湾曲形成されている。湾曲部24Aの内面には、扱胴16の回転作動に伴って、扱室14の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁49が、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で着脱可能に固定装備されている。複数の送塵弁49のうち、最前の送塵弁49Aは、前側の縦壁部24Bから左側の側縁部24Cにわたる円弧状に形成され、他の送塵弁49Bは、左右の側縁部24Cにわたる円弧状に形成されている。
【0058】
つまり、天板24に湾曲部24Aを備えたことで、扱胴16の回転に伴って複数の扱歯48などで扱室14の上部に掻き上げ搬送された処理物を、湾曲部24Aの内面や送塵弁49に沿わせながら、脱穀処理方向下手側下方の受網17に向けて滑らかに案内することができる。また、各送塵弁49を、左側の側縁部24Cまたは左右の側縁部24Cにわたる長尺の円弧状に形成したことで、扱胴16の回転に伴って扱室14の上部に搬送された処理物に対する各送塵弁49Aの案内作用を効果的に向上させることができる。これにより、各扱歯48を、処理物に対する搬送作用を備える形状ではなく、処理物に対する打撃や梳き込みを好適に行える脱穀専用の形状に形成しながらも、処理物を脱穀処理方向下手側に向けて良好に搬送案内することができ、結果、処理物に対する脱穀性能および搬送性能の向上を図ることができる。
【0059】
左右の側縁部24Cには、湾曲部24Aの内面と受網17の内面とを一連に繋ぐ案内面50aを有するように屈曲形成された鋼板製の継目部材50が着脱可能にボルト連結されている。このように、受網17と天板24との継ぎ目に位置することにより処理物との接触が激しくなる継目部材50を着脱可能に構成したことにより、この継目部材50が、処理物との接触によって著しく摩耗した場合には、継目部材50のみを簡単に取り換えることができる。つまり、例えば、この継目部材50を天板24に着脱不能に溶接した場合のように、摩耗した継目部材50とともに天板24の全体を交換する、といった手間や経済的な不利を招くことなく、継目部材50の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0060】
ちなみに、各扱歯48の先端と各送塵弁49の下縁との間には、送塵弁49による処理物の案内を良好にするために小さいクリアランスが設定されている。また、各扱歯48の先端と受網17の内面との間には、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促進させるために、各扱歯48の先端と各送塵弁49の下縁との間に設定したクリアランスよりも大きいクリアランスが設定されている。
【0061】
図3、図4、図6?8および図10に示すように、扱胴16において、その掻込部41の外周面には、2枚の支持プレート41Aが螺旋状に溶接されている。そして、それらの各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。
【0062】
つまり、この扱胴16においては、その回転に伴って、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を後方に向けて掻き込み搬送することにより、刈取穀稈と激しく接触し、その接触に起因した摩耗が生じ易くなる2枚の螺旋羽根43が、扱胴16の掻込部41に着脱可能に装備されており、これにより、長期の使用によって各螺旋羽根43が著しく摩耗した場合には、螺旋羽根43のみを簡単に取り換えることができる。その結果、例えば、螺旋羽根43を掻込部41に着脱不能に溶接した場合のように、摩耗した螺旋羽根43とともに掻込部41を取り換える、といった手間や経済的な不利を招くことなく、螺旋羽根43の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0063】
なお、各支持プレート41Aは、それらの前面と掻込部41の外周面とにわたるように溶接された複数の補強リブ41Bによって補強されている。
【0064】
図3、図4、図6、図13および図14に示すように、脱穀装置5において、その前壁26と受網17との間には、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を受け止めて、2枚の螺旋羽根43による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助する搬送補助ガイド51が配備されている。搬送補助ガイド51は、掻込部41の下部側を下方から覆う正面視略U字状にボルト連結される左右一対のガイド部材51A,51Bによって構成されている。左右のガイド部材51A,51Bは、脱穀装置5の前壁26、および、脱穀装置5の上部に前後向きに配備した左右一対の支持フレーム52に着脱可能にボルト連結されるステンレス製の第1プレート51aに、脱穀装置5の前壁26から受網17にわたるガイド面を形成するステンレス製の第2プレート51bを溶接して構成されている。
【0065】
つまり、この脱穀装置5においては、2枚の螺旋羽根43による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助することにより、刈取穀稈と激しく接触し、その接触に起因した摩耗が生じ易くなる搬送補助ガイド51を、着脱可能に装備するとともに、扱胴16の回転方向上手側に位置する左側のガイド部材51Aと、扱胴16の回転方向下手側に位置する右側のガイド部材51Bとに左右に分割可能な左右2分割構造に構成しているのであり、これにより、長期の使用によって搬送補助ガイド51の全体が著しく摩耗した場合には、搬送補助ガイド51のみを簡単に取り換えることができる。また、長期の使用によって、搬送補助ガイド51における左右いずれかのガイド部材51A,51Bが著しく摩耗した場合には、摩耗の著しいガイド部材51A,51Bのみを簡単に取り換えることができる。その結果、例えば、搬送補助ガイド51を受網17や左右の支持フレーム52などに着脱不能に溶接した場合のように、搬送補助ガイド51とともに受網17または左右の支持フレーム52を取り換える、あるいは、搬送補助ガイド51を分割不能に構成した場合のように、搬送補助ガイド51の左右いずれか一方側が著しく摩耗した場合であっても搬送補助ガイド51の全体を取り換える、といった手間や経済的な不利を招くことなく、搬送補助ガイド51の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0066】
しかも、搬送補助ガイド51は、腐蝕に強く強度の高いステンレス製であることから、摩耗による取り換えの頻度を低減することができる。
【0067】
図3、図5、図6および図15に示すように、受網17は、同一形状に形成された4つの受網部材53によって構成され、左右の支持フレーム52に着脱可能にボルト連結されている。各受網部材53には、矩形状に枠組みされた基枠53Aが備えられている。基枠53Aの枠内には、帯状鋼板からなる複数の縦桟53Bが、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てる状態で前後向きに整列配備されている。また、円弧状に湾曲形成された帯状鋼板からなる複数の第1横桟53Cが、扱胴16の支軸方向となる前後方向に所定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備されている。さらに、円弧状に湾曲形成されたピアノ線材からなる複数の第2横桟53Dが、隣接する第1横桟53Cの間において、前後方向に一定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備されている。そして、基枠53Aの枠内に形成される網目が、扱胴16の周方向に沿う方向の長さが前後方向に沿う方向の長さよりも長くなる横長の矩形状となるように、各桟53B?53Dの配置間隔が設定されている。
【0068】
つまり、扱胴16が回転駆動される脱穀処理時には、刈取穀稈に対する脱穀処理で得られた単粒化穀粒などが、扱胴16の回転に伴って、その回転方向に流動することを考慮して、受網17を、その網目が扱胴16の回転方向に長い横長の矩形状となるように構成してある。これにより、受網17を、その網目が扱胴16の脱穀処理方向(前後方向)に長い縦長の矩形状となるように構成する場合に比較して、単粒化穀粒などが受網17の前部側から漏下し易くなる。その結果、受網17の前部側からの単粒化穀粒の漏下が抑制されることに起因した脱ぷ粒の発生を効果的に抑制することができる。また、各受網部材53を同一形状に形成したことで、受網17の生産性や組み付け性を向上させることができる。
【0069】
図3および図16に示すように、粗選別用のチャフシーブ31は、その選別方向下手側ほど上方に位置する後上がりの傾斜姿勢でシーブケース29にボルト連結された単一の選別プレート54で構成されている。
【0070】
選別プレート54の前部側(選別プレート54の全体に対する前側の約1/3の領域)には、平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54Aが、前列の漏下孔54Aの間に後列の漏下孔54Aが位置する千鳥状に整列形成されている。選別プレート54の後部側(選別プレート54の全体に対する後側の約2/3の領域)には、選別片54a,54bを有する平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54B,54Cが、前列の漏下孔54B,54Cの間に後列の漏下孔54B,54Cが位置する千鳥状に整列形成されている。
【0071】
各選別片54a,54bのうち、選別プレート54の左右中央側に位置する選別片54aは、その選別方向下手側ほど幅狭で上方に位置する鱗状に打ち出し形成されている。選別プレート54の左右両端に位置する選別片54bは、左右中央側の選別片54aよりも短尺の矩形状で、その選別方向下手側ほど上方に位置するように打ち出し形成されている。
【0072】
つまり、粗選別用のチャフシーブ31を単一の選別プレート54で構成することから、例えば、チャフシーブ31を、帯鋼板からなる多数のチャフリップを前後方向に一定間隔を隔てるように整列配備して構成する場合などに比較して、構成の簡素化やコストの削減を図ることができる。
【0073】
そして、単粒化穀粒の含有率が高い選別処理物が供給されるチャフシーブ31の前部側に選別片54a,54bを備えていない漏下孔54Aを形成したことで、チャフシーブ31の前部側から下方のグレンパン33やグレンシーブ34に漏下する単粒化穀粒が多くなる。その結果、グレンパン33やグレンシーブ34の下方に位置する1番回収部21での単粒化穀粒の回収率を高めることができる。
【0074】
また、チャフシーブ31の後部側に、選別片54a,54bを備えた漏下孔54B,54Cを千鳥状で前後左右に整列形成したことにより、篩い選別処理においては、チャフシーブ31上の選別処理物が左右方向に片寄りなく均等に分配されることになる。これにより、単粒化穀粒の各漏下孔54B,54Cからの漏下を促進させることができる。
【0075】
さらに、チャフシーブ31を後上がりの傾斜姿勢で装備したことにより、チャフシーブ31を水平姿勢で装備する場合に比較して、篩い選別処理において、チャフシーブ31が選別処理物を選別処理方向上手側の上方に向けて押し出す力が大きくなる。そのため、篩い選別処理の際には、選別処理物の選別方向下手側への搬送が抑制されるとともに、選別処理物の上下動が激しくなって、選別処理物の比重差選別がより効果的に行われることになり、よって、比重の大きい穀粒の各漏下孔54B,54Cからの漏下が促進されるとともに、単粒化穀粒が排出口23から機外に放出される3番ロスの発生を効果的に抑制することができ、結果、穀粒回収効率の向上を図ることができる。
【0076】
その上、チャフシーブ31における左右両端の選別片54bを、左右中央側の選別片54aよりも短尺に形成したことで、チャフシーブ31における選別処理物が堆積し易い左右両端部の漏下孔54Cからの穀粒などの漏下を促進させることができる。その結果、チャフシーブ31の左右両端部での選別処理物の堆積に起因した選別効率の低下を回避することができる。
【0077】
ちなみに、チャフシーブ31に形成される選別片54a,54bを備えていない漏下孔54Aと、選別片54a,54bを備えた漏下孔54B,54Cとの割合は、選別する穀粒の種類などに応じて種々の変更が可能である。
【0078】
また、選別プレート54の前部側に、短尺で矩形状の選別片54bを有するように平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54Cを、前列の漏下孔54Cの間に後列の漏下孔54Cが位置する千鳥状に整列形成するようにしてもよい。
【0079】
図3に示すように、唐箕20からの選別風のうち、上段の風路R1を通る選別風は、シーブケース29に形成した風路R4を通って、扱胴16の第2プレート45に向けて流動するように設定されている。これにより、第2プレート45によって脱穀処理方向下手側への流動が阻止される処理物を、扱胴16の周囲に向けて風力搬送することができる。その結果、処理物が第2プレート45の直前箇所で堆積して、脱穀処理に支障を来す虞を未然に回避することができる。
【0080】
図3および図6に示すように、扱胴16は、その後端に位置する扱歯48Aが、受網17の後端よりも後方に位置して排稈口18に臨むようになっている。つまり、扱胴16の後端においては、受網17が存在しないことで、その周囲に比較的大きい空間が形成された状態となっている。これにより、扱胴後端の扱歯48Aに脱粒穀稈が絡み付いていたとしても、その脱粒穀稈は、扱胴16の回転に伴う遠心力で、その扱歯48Aの先端から抜け出るようになる。その結果、扱胴16の後端での扱歯48Aに対する引っ掛かりに起因した脱粒穀稈の滞留を効果的に抑制することができ、脱粒穀稈の排稈口18からの放出を促進させることができる。
【0081】
〔別実施形態〕
【0082】
〔1〕扱胴16としては、その扱き処理部42が、円筒状に形成された胴部、掻込部41に備えた2枚の螺旋羽根43と連なるように胴部の外周に装備した2枚のスクリュー、および、各スクリューの外周部に外方に向けて突出する状態で所定間隔を隔てて着脱可能に装備された多数の扱歯、などによってドラム式に構成したものであってもよい。
【0083】
〔2〕扱胴16としては、その前端部41の外周面に単一の螺旋羽根43を着脱可能に取り付けたものであってもよく、また、その前端部41の外周面に3枚以上の螺旋羽根43を着脱可能に取り付けたものであってもよい。
【0084】
〔3〕扱胴16としては、その前端部41の外周面に、螺旋羽根43が着脱可能に取り付けられる複数の支持金具を螺旋状に整列配備したものであってもよい。
【0085】
〔4〕螺旋羽根43としては、複数の羽根状部材を、扱胴前端部41の外周面に螺旋状に整列配備して構成したものであってもよい。
【0086】
〔5〕搬送補助ガイド51としては、左右に分割不能に構成したものであってもよく、また、3分割以上に分割可能に構成したものであってもよい。
【0087】
〔6〕搬送補助ガイド51としては、扱胴16の回転方向下手側に位置する部分51Bのみが着脱可能となるように構成したものであってもよい。
【0088】
〔7〕搬送補助ガイド51の素材として、ステンレス以外の炭素鋼などの鋼材を採用するようにしてもよい。
【0089】
〔8〕継目部材50としては、受網17に着脱可能に取り付けられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
16 扱胴
17 受網
24 天板
41 前端部(扱胴)
41A 支持プレート(支持部材)
41B 補強リブ(補強部材)
43 螺旋羽根
49 送塵弁
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴に、前記扱胴の前端部を形成する円錐台状の掻込部と、前記掻込部の後端に連接された扱き処理部とを備え、
前記掻込部の外周面に、前記掻込部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記外周面に、前記扱胴の径方向外方にむけて立設する状態で支持部材を固定してあり、
前記螺旋羽根を、前記支持部材の後側面に着脱自在に取り付け、
前記支持部材を支持する複数の補強部材を、前記扱胴の周方向に間隔を空けた状態で、前記支持部材の前側面と前記外周面とに亘って取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、前記支持部材の後端との間に、前記支持部材の前端と前記複数の補強部材のうち最も搬送方向上手側に位置する補強部材との離間距離よりも小さい距離を空けて設けられ、
前記複数の補強部材の前記外周面からの夫々の立ち上がり高さは、夫々の前記補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さよりも低く、かつ、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材の前記外周面からの立ち上り高さは、前記最も搬送方向下手側に位置する補強部材が設けられた箇所における前記支持部材の前記外周面からの立ち上がり高さの半分よりも大きい全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項2】
前記螺旋羽根を、前記支持部材における前記径方向外側箇所のみと重複する状態で、前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記支持部材に対して、前記螺旋羽根の内周部の位置に対応する位置よりも高く立ち上げられている請求項1記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記螺旋羽根は、ボルトを締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けられており、
前記ボルトは、前記支持部材の前側から、前記支持部材を貫通した状態で前記螺旋羽根に直接螺合されている請求項1または2に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項5】
前記螺旋羽根を、前記周方向の複数個所で締結具によって締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてあり、
前記複数の補強部材のうち最も搬送方向下手側に位置する補強部材は、前記周方向において、隣り合う前記締結具の間に位置するように設けられている請求項1,2,4のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項6】
前記螺旋羽根を、前記径方向の複数個所で前記支持部材における外周側部分に締結することによって前記支持部材に着脱自在に取り付けてある請求項1,2,4,5のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項7】
前記支持部材は、前記螺旋羽根の上手側部分から下手側部分に亘る螺旋状に形成してあり、かつ、上手側から下手側にむけて徐々に立ち上がり高さが低くなるように形成してある請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項8】
前記支持部材の前側面と前記外周面とが溶接固定され、かつ、前記支持部材の後側面と前記外周面とが溶接固定されており、
前記補強部材は、前記支持部材の前側面と前記外周部とに溶接されている請求項1,2,4,5,6,7のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記扱胴の回転作動に伴って、扱室の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁が、ボルトによって天板に着脱可能に固定装備され、
前記複数の送塵弁に、前記天板のうち前記掻込部の位置に対応する部位と前記天板のうち前記扱き処理部の位置に対応する部位とに亘る送塵弁が含まれている請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項11】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-20 
出願番号 特願2014-35539(P2014-35539)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5740021号(P5740021)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 全稈投入型コンバインの脱穀構造  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 特許業務法人R&C  

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