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審決分類 審判 全部申し立て 特123条1項5号  F02C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F02C
審判 全部申し立て 2項進歩性  F02C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F02C
管理番号 1322286
異議申立番号 異議2015-700223  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-27 
確定日 2016-10-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5726066号発明「燃料ノズル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5726066号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正後の請求項〔1ないし22、27及び28〕並びに〔23ないし26及び29〕について訂正することを認める。 特許第5726066号の請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に係る特許を維持する。 特許第5726066号の請求項2、13、16及び29に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5726066号の請求項1ないし29に係る特許についての出願は、2009年4月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月27日 米国(US)、2008年4月11日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成27年4月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人目黒こと美外1名(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年2月1日付けの取消理由(以下、単に「取消理由」という。)が通知され、平成28年5月2日に意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、平成28年7月19日に特許異議申立人により意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成28年5月2日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)であって、
流体である燃料を流すことができる供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)と、
前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)と、
前記一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置するベンチュリ(500)であって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)が、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と、をさらに含み、付加製造法を使用して製造された
ことを特徴とする、
燃料ノズル(100)。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3ないし12、14、15、17ないし22、27及び28も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2、13及び16を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3及び4において、「前記単体供給導管(80)が、」という記載を、「前記供給導管(80)が、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5ないし7において、「前記単体ディストリビュータ」という記載を、「前記ディストリビュータ」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、「ディストリビュータリングと、」という記載を、「前記ディストリビュータリングと、」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12において、「スワーラ軸(11)」という記載を、「前記ディストリビュータ軸(11)」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項17、18及び20において、「前記単体ベンチュリが」という記載を、「前記ベンチュリが」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17を、
「前記単体ベンチュリが、環状のベンチュリ壁(502)と、該ベンチュリ壁から半径方向内向きに位置し前記ディストリビュータ軸(11)の周りで該ベンチュリ壁と同軸の環状スプリッタ(530)と、該ベンチュリ壁(502)及び該環状スプリッタ(530)の間に位置する複数のベーン(508)とをさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。」
に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項21において、「前記単体センタボディ(450)が、」という記載を、「前記センタボディ(450)が、」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項21において、「が、ディストリビュータ(300)の少なくとも一部を囲む環状壁(461)を有する、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。」という記載を、「が、環状壁(461)を有する、請求項1、3乃至12、14、15、17乃至20のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲において、訂正前の請求項2、13又は16を引用していた請求項について、請求項2、13及び16の削除に伴い、請求項2、13又は16を引用する部分を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項23を、
「ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)において、
流体である燃料を流すことができる単体供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有する単体ディストリビュータ(300)と、
前記単体ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置する単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための単体一次燃料スワーラ(603)と、
前記単体一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置する単体ベンチュリであって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成する単体ベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置する、単体センタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)は、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)とをさらに含み、
前記単体供給導管(80)、前記単体ディストリビュータ(300)、前記単体スワーラ(200)、前記単体一次燃料スワーラ(603)、前記単体ベンチュリ及び前記単体センタボディのそれぞれが、一体型として単体に形成されている
ことを特徴とする、燃料ノズル(100)。」
に訂正する。(請求項23の記載を引用する請求項24ないし26も同様に訂正する。)。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項29を削除する。

(14)訂正事項14
明細書の段落【0018】及び【0042】において、「迅速製造方法」という記載を、「ラピッドマニュファクチャリング法」に訂正する。
また、明細書の段落【0008】及び【0039】において、「迅速製造プロセス」という記載を、「ラピッドマニュファクチャリングプロセス」に訂正する。
また、明細書の段落【0042】において、「層ごとの構築または追加製作」という記載を、「積層造形法または付加製造法」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項ごとに訂正の請求をするときに、請求項のすべてについて行っているか否か、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正前の請求項1において「単体供給導管(80)、単体ディストリビュータ(300)、単体スワーラ、単体パイロットスワーラ、単体ベンチュリ及び単体センタボディ(450)からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含」むと記載されていたものを、訂正後の請求項1において「選択された少なくとも1つの単体構成部品」として選択肢を「単体スワーラ」に限定したものである。
また、新たな構成要素として「流体である燃料を流すことができる供給導管(80)」、「ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)」「前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)」「前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)」、「前記一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置するベンチュリ(500)であって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリ(500)」、及び「前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディ(450)」を加えた上で、「前記単体スワーラ(200)」について「前記単体スワーラ(200)が、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と、をさらに含」む構成に限定したものであり、これらは、請求項23、明細書の段落【0026】及び【0027】並びに図4、11及び12に基づくものである。これらの訂正は、いわゆる外的付加に該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正前の請求項1における「追加製造プロセス」という記載を「付加製造法」とした訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定された誤記又は誤訳の訂正および同項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aから明らかなように、訂正事項1は、択一形式で列挙された複数の構成要素から1つの構成要素を選択し、外的付加となる構成要素の追加を行い、誤訳の訂正を行って不明瞭な記載を明瞭とした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、以下のとおり、願書に添付した特許請求の範囲、明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出せる構成である。
「流体である燃料を流すことができる供給導管(80)」は、例えば段落【0016】における「単体構造を有する導管は、燃料ノズル100の燃料ノズル先端部アセンブリ68へ液体燃料を輸送するのに使用されてよい。」という記載、訂正前の請求項23における「流体を流すことができる単体供給導管(80)」という記載を根拠としている。
「ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)」は、例えば訂正前の請求項23における「ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有する単体ディストリビュータ(300)」という記載を根拠としている。
「前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)」は、例えば訂正前の請求項23における「前記単体ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置する単体スワーラ(200)」という記載、段落【0024】における「ベーン208は、スワーラ200に入る流入空気190に、動作の回転要素を与えるために、スワーラ軸11に対して半径方向および軸方向に傾斜させることができる。これらの傾斜したスワーラベーン208は、燃料ノズル先端部アセンブリ68内で概してらせん状に空気190を旋回させる。」という記載を根拠としている。
「前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)」は、例えば訂正前の請求項23における「前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置する単体パイロット燃料スワーラ」という記載、段落【0022】における「図4を参照すると、1次パイロット流路102からの燃料は、1次パイロット燃料噴射器163を介して燃料ノズルから出て、2次パイロット流路104からの燃料は、2次パイロット燃料噴射器167を介して燃料ノズルから出る。」という記載、段落【0046】における「ステップ852では、1次燃料スワーラ603が、図8に示すように1次オリフィス606に圧入される。」という記載、段落【0047】における「ステップ853では、1次燃料スワーラ603および1次オリフィス606が、図8に示すように、一緒にろう付けされ、1次パイロットアセンブリ607を形成する。ろう付けは知られている方法を使用して実施される。1840°Fと1960°Fの間のろう付け温度が使用できる。1950°Fの温度でのろう付けが望ましい。」という記載、段落【0053】における「図11および12に例示した、ステップ859では、内側スワーラ/アダプタ200がステップ858からのアセンブリの上に挿入され、そのため、1次パイロットアセンブリ607およびろう付けワイヤ615は内側スワーラ/アダプタ200の内側に適合する。図12はこのステップの後の組み立てた状態を示す。」という記載を根拠としている。
「前記一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置するベンチュリ(500)であって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリ(500)」は、例えば訂正前の請求項23における「前記単体パイロット燃料スワーラと同軸に位置する単体ベンチュリであって、前記燃料ノズル内で燃料と空気を混合するために環状の空洞を形成する単体ベンチュリ」という記載を根拠としている。
「前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディ(450)」は、例えば訂正前の請求項23における「前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置する、単体センタボディ」という記載を根拠としている。
「前記単体スワーラ(200)が、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と、をさらに含み」は、例えば段落【0024】における「例示的スワーラ200は、スワーラ軸11(あるいは、ノズル先端部軸11と呼ぶ)の周りに周方向で延在するハブ205を有する本体201を含む。ハブ205から延びる1列のベーン208は、スワーラ軸11の周りに、ハブ205上に円周方向に配列される。各ベーン208は、ハブ205近くに半径方向に位置する翼根部210と、ハブ205から外向きに半径方向に位置する翼端部220とを有する。」という記載、段落【0026】における「図4、11および18に示した例示的スワーラ200は、スワーラ軸11と同軸であり、ハブ205から外向きに半径方向に位置する、環状リム240を含む。図4、11、および18に見られるように、リム240は、燃料ノズル100の隣接する構成部品と係合し、スワーラ200内で空気190を流すために流路の一部を形成する。空気流190は、軸方向で前方方向に、スワーラ200の後部分に入り、ハブ205およびリム240によってベーン208に向かって導かれる。」という記載、段落【0027】における「図4を参照すると、壁260は、リム240の一部と、本体201のハブ205の一部との間に延在する。壁260は、リム240と、スワーラのハブ205の間の構造的支持部の少なくとも一部を提供する。壁260はまた、アダプタ250の通路254からスワーラの前方部分に行く空気190が、軸方向で逆方向には流れず、流れ190がベーン208に向かって軸方向前方に進ませ続けることを、確実にする。図4および12に示した例示的実施形態では、壁260の前方面262は、スワーラ軸11に垂直な面に関して、実質的に平面である。」という記載を根拠としている。

d 小括
訂正前の請求項1における「追加製造プロセス」という記載を「付加製造法」とした訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定された誤記又は誤訳の訂正および同項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「追加製造プロセス」を「付加製造法」と訂正したものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
明示されたこれらの明細書及び特許請求の範囲の記載並びに図面、特に図4、7-15、18から、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2、13及び16を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項2は、請求項2、13及び16を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3
a 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3及び4における「前記単体供給導管(80)が、」という記載を、訂正後の請求項3及び4における「前記供給導管(80)が、」として、形式的あるいは表現上は、訂正事項1で訂正された請求項1の構成要件の用語に合致させる訂正を行ったものである。これは、「単体供給導管(80)」を「供給導管(80)」に拡張したものではなく、実質的には、訂正事項1で請求項1に外的付加された「供給導管(80)」を減縮する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項1における「単体供給導管(80)、単体ディストリビュータ(300)、単体スワーラ、単体パイロットスワーラ、単体ベンチュリ及び単体センタボディ(450)からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含み」という記載を根拠としている。
訂正事項1において「少なくとも1つの単体構成部品」として「単体スワーラ」が選択され、訂正事項3は、訂正事項1で外的付加された発明特定事項である「供給導管(80)」を訂正前の請求項3及び4の記載に基づき訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4
a 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5ないし7における「前記単体ディストリビュータ」という記載を、訂正後の請求項5ないし7において「前記ディストリビュータ」として、形式的あるいは表現上は、訂正事項1で訂正された請求項1の発明特定事項の用語に合致させる訂正を行ったものである。これは、「単体ディストリビュータ」を「ディストリビュータ」に拡張したものではなく、実質的には、訂正事項1で請求項1に外的付加された「ディストリビュータ」を減縮する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項1における「単体供給導管(80)、単体ディストリビュータ(300)、単体スワーラ、単体パイロットスワーラ、単体ベンチュリ及び単体センタボディ(450)からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含み」という記載を根拠としている。
訂正事項1において「少なくとも1つの単体構成部品」として「単体スワーラ」が選択されており、訂正事項4は、訂正事項1で外的付加された発明特定事項である「ディストリビュータ」を訂正前の請求項5ないし7の記載に基づき訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5
a 訂正の目的について
訂正前の請求項5における「ディストリビュータリングと、」という記載を、訂正後の請求項5において「前記ディストリビュータリングと、」と訂正したものである。
これは、訂正事項1において請求項1に「ディストリビュータリング」が外的付加されたため、「ディストリビュータリング」に「前記」を付加してその内容を明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項5は、前記された構成要素に「前記」を付加して明瞭にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、訂正事項1の訂正の内容以外には実質的に内容を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(6)訂正事項6
a 訂正の目的について
訂正前の請求項12における「スワーラ軸(11)」という記載を、訂正後の請求項12において「前記ディストリビュータ軸(11)」として用語を変更する訂正を行ったものである。
これは、訂正事項1の結果、請求項1において「ディストリビュータ軸(11)」が特定されたため用語を統一するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
「ディストリビュータ軸(11)」は、願書に添付した明細書の段落【0023】、特許請求の範囲の請求項23及び図4に記載されているから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
上記aに記載した通り、訂正事項6は、前記された構成要素の用語を統一し「前記」を付加して明瞭にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、訂正事項1の訂正の内容以外には実質的に内容を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(7)訂正事項7
a 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項17、18及び20における「前記単体ベンチュリが」という記載を、訂正後の請求項17、18及び20において「前記ベンチュリが」として、形式的あるいは表現上は、訂正事項1において訂正された請求項1の発明特定事項の用語に合致させる訂正を行ったものである。
これは、「単体ベンチュリ」を「ベンチュリ」に拡張したものではなく、実質的には、訂正事項1において請求項1に外的付加された「ベンチュリ」を減縮する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項1における「単体供給導管(80)、単体ディストリビュータ(300)、単体スワーラ、単体パイロットスワーラ、単体ベンチュリ及び単体センタボディ(450)からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含み」という記載を根拠としている。
訂正事項1において「少なくとも1つの単体構成部品」として「単体スワーラ」が選択されており、訂正事項7は、訂正事項1で外的付加された発明特定事項である「ベンチュリ」を訂正前の請求項17、18及び20の記載に基づき訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項8
a 訂正の目的について
訂正前の請求項17における「前記単体ベンチュリが、壁と環状スプリッタの間に位置するスワーラをさらに含む」という記載を、訂正後の請求項17における「前記単体ベンチュリが、環状のベンチュリ壁(502)と、該ベンチュリ壁から半径方向内向きに位置し前記ディストリビュータ軸(11)の周りで該ベンチュリ壁と同軸の環状スプリッタ(530)と、該ベンチュリ壁(502)及び該環状スプリッタ(530)の間に位置する複数のベーン(508)とをさらに含む」という記載に訂正することにより、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項17における「壁と環状スプリッタの間に位置するスワーラ」を、訂正後の請求項17における「ベンチュリ壁(502)」と「環状スプリッタ(530)」との間に位置する「複数のベーン(508)」とした訂正は、明細書の段落【0032】における「スワーラ510は、ベンチュリ壁502と環状スプリッタ530の間に半径方向内向きに延びる複数のベーン508を含む。」との記載に合致させるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「環状のベンチュリ壁(502)」に関しては、段落【0030】における「図4は、本発明の例示的実施形態による例示的ベンチュリ500の軸方向断面図を示す。例示的ベンチュリ500は、空気の一部と燃料が混合される混合用空洞550を形成するスワーラ軸11の周りの環状ベンチュリ壁502を含む。」という記載を根拠とし、「該ベンチュリ壁から半径方向内向きに位置し前記ディストリビュータ軸(11)の周りで該ベンチュリ壁と同軸の環状スプリッタ(530)」に関しては、段落【0031】における「図4および16に示すように、ベンチュリ500の例示的実施形態は、環状のベンチュリ壁502から半径方向内向きに位置し、スワーラ軸11の周りでベンチュリ壁と同軸に位置する、環状のスプリッタ壁532を有する環状のスプリッタ530を含む。」という記載を根拠とし、「該ベンチュリ壁(502)及び該環状スプリッタ(530)の間に位置する複数のベーン(508)」に関しては上記aに記載した通りであるから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項9
a 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項21における「前記単体センタボディ(450)が、」という記載を、訂正後の請求項21における「前記センタボディ(450)が、」という記載に訂正することにより、形式的あるいは表現上は、訂正事項1で訂正された請求項1の構成要件の用語に合致させる訂正を行ったものである。
これは、「単体センタボディ(450)」を「センタボディ(450)」に拡張したものではなく、実質的には、訂正事項1で請求項1に外的付加された「センタボディ(450)」を減縮する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項1における「単体供給導管(80)、単体ディストリビュータ(300)、単体スワーラ、単体パイロットスワーラ、単体ベンチュリ及び単体センタボディ(450)からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含み」という記載を根拠とする。
訂正事項1において「少なくとも1つの単体構成部品」として「単体スワーラ」が選択され、訂正事項9は、訂正事項1で外的付加された構成要素である「センタボディ(450)」を訂正前の請求項21の記載に基づき訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(10)訂正事項10
a 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項21における「センタボディ(450)が、ディストリビュータ(300)の少なくとも一部を囲む環状壁(461)を有する」という記載を、訂正後の請求項21において「センタボディ(450)が、環状壁(461)を有する」と訂正するものである。
これは、訂正事項1により、請求項1に係る発明が「センタボディ(450)」が「前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み」む構成を有することとなったため、冗長な記載を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aに記載した通り、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項10は、明細書段落【0037】における「センタボディ450は、図2、3、4、および18で示したような燃料ノズル100の組み立て状態で、ディストリビュータ300の前方部分を囲み、空気流のための環状通路462を形成する、環状外壁461を含む。」という記載を根拠とし、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(11)訂正事項11
a 訂正の目的について
訂正前の請求項2、13及び16が訂正により削除されたため、これを引用していた請求項3ないし12、14、15、17ないし22、27及び28について、請求項2、13及び16の引用を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定された他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、形式的な訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである、且つ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(12)訂正事項12
a 訂正の目的について
訂正前の請求項23における「流体を流すことができる単体供給導管(80)」を、訂正後の請求項23における「流体である燃料を流すことができる単体供給導管(80)」とした訂正は、流体を燃料に減縮することを目的とするものである。また、「単体ベンチュリ」、「空気」、「単体センタボディ)」を「単体ベンチュリ(500)」、「空気(190)」、「単体センタボディ(450)」とした訂正は、単に図面の符号を括弧書きとして付加しただけであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正前の請求項23における「燃料」を、訂正後の請求項23における「前記燃料」とする訂正は、前述の「燃料」との関係を明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正前の請求項23における「単体パイロット燃料スワーラ」を、訂正後の請求項23における「パイロット燃料のための単体一次燃料スワーラ(603)」とする訂正は、明細書の段落【0046】及び【0047】における「1次燃料スワーラ603」の用語と整合させるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正後の請求項23において「前記単体スワーラ(200)は、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)とをさらに含み」とした訂正は、「単体スワーラ」の構成を減縮したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正前の請求項23における「一体成型として単体に形成されている」を訂正後の請求項23における「一体型として単体に形成されている」とした訂正は、訂正前の請求項23における「一体成型として」が、「一体成型された状態」と解釈されるべきものであるが、表現上、「状態」であることが不明瞭であったため、明瞭に訂正するものである。したがって、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aから明らかなように、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮し、不明瞭な記載を明瞭とするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正事項12は、訂正前の請求項23の記載を引用する訂正前の請求項24ないし26及び29の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項24ないし26及び29との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。

c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、以下のとおり、願書に添付した特許請求の範囲、明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出せる構成である。
「流体である燃料を流すことができる供給導管(80)」については、例えば段落【0016】における「単体構造を有する導管は、燃料ノズル100の燃料ノズル先端部アセンブリ68へ液体燃料を輸送するのに使用されてよい。」という記載、訂正前の請求項23における「流体を流すことができる単体供給導管(80)」という記載を根拠とする。
「前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)」とする訂正は、例えば訂正前の請求項23における「前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置する単体パイロット燃料スワーラ」という記載、段落【0022】における「図4を参照すると、1次パイロット流路102からの燃料は、1次パイロット燃料噴射器163を介して燃料ノズルから出て、2次パイロット流路104からの燃料は、2次パイロット燃料噴射器167を介して燃料ノズルから出る。」という記載、段落【0046】における「ステップ852では、1次燃料スワーラ603が、図8に示すように1次オリフィス606に圧入される。」という記載、段落【0047】における「ステップ853では、1次燃料スワーラ603および1次オリフィス606が、図8に示すように、一緒にろう付けされ、1次パイロットアセンブリ607を形成する。ろう付けは知られている方法を使用して実施される。1840°Fと1960°Fの間のろう付け温度が使用できる。1950°Fの温度でのろう付けが望ましい。」という記載、段落【0053】における「図11および12に例示した、ステップ859では、内側スワーラ/アダプタ200がステップ858からのアセンブリの上に挿入され、そのため、1次パイロットアセンブリ607およびろう付けワイヤ615は内側スワーラ/アダプタ200の内側に適合する。図12はこのステップの後の組み立てた状態を示す。」という記載を根拠とする。
「一体型として単体に形成されている」という記載は、例えば明細書段落【0021】において「用語「単体」は、たとえば、本明細書に記載のベンチュリ500などの関連構成部品が、製造中に一体成型として製造されることを意味するために、本出願では使用される。したがって、単体構成部品は、構成部品に一体式構造を有する。」との記載がされており、単なる単体物品ではなく、例えば溶接部を有しない単体物品の状態を明瞭にするものである。
したがって、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(13)訂正事項13
a 訂正の目的について
訂正事項13は、請求項29を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記aに記載した通り、訂正事項13は、請求項29を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(14)訂正事項14
a 訂正の目的について
訂正事項14の1つは、訂正前の明細書の段落【0018】及び【0042】における「迅速製造方法」という記載を、外国語特許出願の明細書の対応箇所の記載「rapid manufacturing methods」(WO2009/126483第9頁第7行、第21頁第26行)に基づき、「ラピッドマニュファクチャリング法」と誤訳の訂正をするものである。
訂正事項14の他の1つは、訂正前の明細書段落【0042】における「層ごとの構築」という記載を、外国語特許出願の明細書の対応箇所の記載「layer-by-layer construction」(WO2009/126483第21頁第25行)に基づき、「積層造形法」と誤訳の訂正をするものである。
訂正事項14のさらに他の1つは、訂正前の明細書段落【0042】における「追加製作」という記載を、外国語特許出願の明細書の対応箇所の記載「additive fabrication」(WO2009/126483第21頁第26行)に基づき、「付加製造法」と誤訳の訂正をするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定された誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。

b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14に関し、まず、本願発明に用いられている製造方法は、現在日本では「3Dプリンター」、「付加製造法」などと称されるものであることは、明細書の発明の詳細な説明、特に段落【0042】の「迅速製造方法」、「層ごとの構築」、「追加製作」を参照すれば、当業者であれば、或いは、ある程度技術に明るい者であっても明らかである。ここで、本願優先日から国内移行時には、日本のみならず世界的にも「3Dプリンター」或いは「付加製造法」に係る技術用語が定まっていなかった。この事実に関しては、参考資料1「みずほ情報総研レポート 2015年 vol.9 技術動向レポート 製品開発への活用が見えてきた? Additive Manufacturingの最新動向」(第1頁)、参考資料2「経済産業省 2013年10月 新ものづくり研究会(第2回)配布資料3「金属3Dプリンタ先進活用事例」(近畿大学次世代基盤技術研究所 京極秀樹)」(第1及び第4頁)を参照されたい。訂正事項14は、国内移行時に「迅速製造方法」、「層ごとの構築」、「追加製作」と翻訳され、事後的に或いは特許査定後に不明瞭となったものを、各々、現在より明瞭である「ラピッドマニュファクチャリング法」、「積層造形法」、「付加製造法」と誤訳の訂正を行うものであるから、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

c 明細書の訂正が、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われていること
訂正事項14は、願書に添付した明細書の訂正をするものであるが、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われているから、特許法第126条第4項の規定に適合するものである。

(15)訂正は一群の請求項ごとに請求されたものであること
これらの訂正は、請求項〔1ないし22、27及び28〕という一群、及び、請求項〔23ないし26及び29〕という一群について請求されており、一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項を満たしている。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし22、27及び28〕及び〔23ないし26及び29〕について、訂正を認める。


第3 本件発明について
本件訂正の請求により訂正された請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」のようにいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)であって、
流体である燃料を流すことができる供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)と、
前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)と、
前記一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置するベンチュリ(500)であって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)が、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と、をさらに含み、付加製造法を使用して製造された
ことを特徴とする、
燃料ノズル(100)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記供給導管(80)が、本体(87)内に位置する複数の通路(84、85)を含む、請求項1記載の燃料ノズル(100)。
【請求項4】
前記供給導管(80)が、複数のサブ通路(88、89)に枝分かれする、本体内に位置する通路(86)を含む、請求項1又は3に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項5】
前記ディストリビュータ(300)は、前記ディストリビュータリングと、前記ディストリビュータリング内に位置し、燃料を燃料ノズルの複数の位置に分配することができる少なくとも1つの通路とを有する、請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項6】
前記ディストリビュータが、燃料を前記単体ディストリビュータ内に流すことができる導管を含む、請求項1、3、4又は5のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項7】
前記ディストリビュータが、前記ディストリビュータリングに少なくとも部分的に位置する、主燃料流路およびパイロット燃料流路を含む、請求項5に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項8】
少なくとも2つのパイロット燃料流路を含む、請求項5記載の燃料ノズル(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの通路(102)の周りに絶縁用隙間(116)をさらに含む、請求項5記載の燃料ノズル(100)。
【請求項10】
前記単体スワーラが、前記単体スワーラを前記燃料ノズルの別の構成部品に連結するのを容易にするアダプタをさらに含む、請求項1、3乃至9のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項11】
前記アダプタが、ろう付け材料を受け取ることができるアーチ形の溝を含むアーチ形壁を備える、請求項10記載の燃料ノズル(100)。
【請求項12】
前記単体スワーラが、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに円周方向で配列された複数のベーンをさらに含む、請求項1、3乃至11のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
前記単体スワーラが絶縁用隙間(216)をさらに含む、請求項1、3乃至12のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項15】
前記単体スワーラが、前記単体スワーラの別のベーンとは異なる形状を有する少なくとも1つのベーンをさらに含む請求項1、3乃至12、14のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記ベンチュリが、環状のベンチュリ壁(502)と、該ベンチュリ壁から半径方向内向きに位置し前記ディストリビュータ軸(11)の周りで該ベンチュリ壁と同軸の環状スプリッタ(530)と、該ベンチュリ壁(502)及び該環状スプリッタ(530)の間に位置する複数のベーン(508)とをさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項18】
前記ベンチュリが後方端部近くに位置する熱シールドをさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15、17のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項19】
前記熱シールドが複数の冷却スロットをさらに含む、請求項18記載の燃料ノズル(100)。
【請求項20】
前記ベンチュリが、ろう付け材料を受け取ることができる少なくとも1つの溝をさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15、17乃至19のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項21】
前記センタボディ(450)が、環状壁(461)を有する、請求項1、3乃至12、14、15、17乃至20のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項22】
前記センタボディ(450)が、円周方向に配列された前記環状壁(461)の複数の冷却孔をさらに含む、請求項21に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項23】
ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)において、
流体である燃料を流すことができる単体供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有する単体ディストリビュータ(300)と、
前記単体ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置する単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための単体一次燃料スワーラ(603)と、
前記単体一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置する単体ベンチュリであって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成する単体ベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置する、単体センタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)は、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)とをさらに含み、
前記単体供給導管(80)、前記単体ディストリビュータ(300)、前記単体スワーラ(200)、前記単体一次燃料スワーラ(603)、前記単体ベンチュリ及び前記単体センタボディのそれぞれが、一体型として単体に形成されている
ことを特徴とする、燃料ノズル(100)。
【請求項24】
前記燃料ノズルの後方端部に位置する熱シールドをさらに含む、請求項23記載の燃料ノズル。
【請求項25】
前記熱シールドが前記単体ベンチュリの一部を形成する、請求項24記載の燃料ノズル。
【請求項26】
前記熱シールドが前記単体センタボディの一部を形成する、請求項24記載の燃料ノズル。
【請求項27】
前記環状壁(461)は該環状壁(461)に開口部(456)の周方向列を1つ以上有し、
前記開口部は前記環状壁で周方向に配置されている、請求項21に記載の燃料ノズル。
【請求項28】
前記開口部(456)は、前記環状壁(461)に、前記センタボディに対し軸方向、半径方向および正接方向の少なくとも1から選ばれた配向を有する、請求項27に記載の燃料ノズル。
【請求項29】
(削除)」


第4 取消理由の概要
取消理由の概要は以下のとおりである。

1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)
「特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、本件発明1ないし29の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



(1)請求項1において、「・・・、単体スワーラ、・・・からなる、ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)の構成部品群から選択された少なくとも1つの単体構成部品を含み」と記載される一方、「前記単体スワーラが、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができ」とも記載されており、「単体スワーラ」を備えることが必須であるのか否か、明確でない。

(2)請求項1において、「単体パイロットスワーラ」と記載されているが、「単体パイロットスワーラ」及び「パイロットスワーラ」は明細書に記載されておらず、どのようなものであるのか、明確に把握できない。

(3)請求項1において、「追加製造プロセス」と記載されているが、「追加製造プロセス」どのようなものであるのか、明確に把握できない。また、何に対して追加されているのか、明確でない。また、例えば「溶接」、「ろう付け」、「切削」のような製造プロセスも「追加製造プロセス」に含まれるのかどうか、明確でない。

(4)請求項2において、「前記少なくとも1つの単体構成部品が更に、迅速製造プロセスを使用して製造されている、」と記載されているが、請求項1に記載された追加製造プロセスに加えて、迅速製造プロセスを使用して(すなわち、2つ以上の製造プロセスを使用して)製造されているという意味なのか、それとも、「追加製造プロセスである迅速製造プロセス」を使用して製造されているという意味なのか、明確でない。

(5)本件発明1は、「燃料ノズル(100)」という物の発明であるが、「追加製造プロセスを使用して製造された」との特定があり、その物の製造方法が記載されているといえる。
また、本件発明2は、「燃料ノズル(100)」という物の発明であるが、「迅速製造プロセスを使用して製造されている」との特定があり、その物の製造方法が記載されているといえる。
また、本件発明23は、「燃料ノズル(100)」という物の発明であるが、「一体成型として単体に形成されている」との特定があり、その物の製造方法が記載されているといえる。
また、本件発明29は、「燃料ノズル」という物の発明であるが、「追加製造プロセスを使用して製造された」との特定があり、その物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造する方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(中略)
しかしながら、特許明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、本件発明1、2、23及び29並びに本件発明1、2、23及び29を引用する本件発明3ないし22及び24ないし29は明確でない。」


2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)
「特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、本件発明1ないし29の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



(1)請求項1において、「単体パイロットスワーラ」と記載されているが、「単体パイロットスワーラ」及び「パイロットスワーラ」は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2ないし22は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

(2)請求項1において、「追加製造プロセス」と記載されているが、「追加製造プロセス」は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2ないし22は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

(3)請求項23において、「単体パイロット燃料スワーラ」と記載されているが、「単体パイロット燃料スワーラ」は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明23及び本件発明23を引用する本件発明24ないし29は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

(4)請求項29において、「単体パイロット燃料スワーラ」及び「追加製造プロセス」と記載されているが、「単体パイロット燃料スワーラ」及び「追加製造プロセス」は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明29は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。」


3 取消理由3(特許法第36条第4項第1号)
「発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、本件発明1ないし29の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



(1)請求項1において、「単体パイロットスワーラ」と記載されているが、「単体パイロットスワーラ」及び「パイロットスワーラ」は発明の詳細な説明に記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2ないし22を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(2)請求項1において、「追加製造プロセス」と記載されているが、「追加製造プロセス」は発明の詳細な説明に記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2ないし22を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(3)請求項23において、「単体パイロット燃料スワーラ」と記載されているが、「単体パイロット燃料スワーラ」は発明の詳細な説明に記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明23及び本件発明23を引用する本件発明24ないし29を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(4)請求項29において、「単体パイロット燃料スワーラ」及び「追加製造プロセス」と記載されているが、「単体パイロット燃料スワーラ」及び「追加製造プロセス」は発明の詳細な説明に記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明29を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」


4 取消理由4(特許法第113条第5号)
「特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載した事項が、下記の点で外国語書面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第113条第5号に該当する。



特許請求の範囲の請求項1及び29には「追加製造プロセス」なる事項が記載されているが、この「追加製造プロセス」という事項は、本件特許に係る国際出願(PCT/US2009/039085)の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない。
したがって、特許請求の範囲の請求項1及び29並びに請求項1を引用する請求項2ないし22、27及び28に記載された事項は、本件特許に係る国際出願の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内にない。」


5 取消理由5(特許法第29条第2項)
「本件発明1ないし29は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし29の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



〔引用刊行物〕
甲第1号証:特開2004-325068号公報
甲第2号証:特表2006-524579号公報
甲第3号証:特開2002-340338号公報
甲第4号証:米国特許出願公開第2004/0083735号明細書

「甲第1号証」ないし「甲第4号証」は、特許異議申立書の証拠方法の甲第1号証ないし甲第4号証と同じものであり、以下、「甲1」ないし「甲4」という。
(以下、略。) 」


第5 取消理由についての判断
第5-1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)取消理由1の指摘事項(1)に関し、請求項1が訂正された結果、「単体スワーラ(200)」は、「前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)」となった。したがって、指摘事項(1)の取消理由はもはや存在しない。
(2)取消理由1の指摘事項(2)に関し、請求項1が訂正された結果、「単体パイロットスワーラ」は、「一次燃料スワーラ(603)」となった。この「一次燃料スワーラ(603)」は、例えば明細書の段落【0045】ないし【0047】に記載されている。したがって、指摘事項(2)の取消理由はもはや存在しない。
(3)取消理由1の指摘事項(3)に関し、請求項1が訂正された結果、「追加製造プロセス」は、「付加製造法」となった。したがって、指摘事項(3)の取消理由はもはや存在しない。
(4)取消理由1の指摘事項(4)に関し、請求項2が削除された。したがって、指摘事項(4)の取消理由はもはや存在しない。
(5)取消理由1の指摘事項(5)に関し、本件発明1は「燃料ノズル(100)」という物の発明であるが、「付加製造法を使用して製造された」との特定があり、その物の製造方法が記載されている。
しかしながら、本件発明1の物は、出願時においてその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという実情があったため、この取消理由は該当しない。参考資料1の「ものづくりの進化を促すインダストリアル・インターネット」(SCSK株式会社ウェブサイト「ものづくりTIMES」(http://www.mztimes-scsk.jp/20160228/))、参考資料2:「航空機分野における3Dプリンタの活用と課題」(金尚郁、平成27年6月、技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構シンポジウム講演集)を参照されたい。付加製造法で製造された本件発明1のノズル製品は、参考資料1及び2から理解できる通り、溶接や鋳造等で製造された従来製品の5倍の耐久性を有し、25%軽量である。本件発明と従来製品との差は、外形的な構造もさることながら、製造方法に起因する材質の違いによるものであり、これにより、上記耐久性及び軽量性を達成したものである。しかしながら、この違いに係る構造又は特性を文言により一概に特定することは困難である。一方、この差を特定するためには、原理的には可能であるかもしれないものの、様々な製造方法を用いて同形状のノズルを製作し且つ分析する必要が生じ、およそ実際的ではない。その一方で、付加製造法で製造された本件発明1の「燃料ノズル(100)」を当業者が調べれば付加製造法で製造されたことが容易に分かり、本件発明1はその物の製造方法が記載されているが、製造方法を遡って調べる必要が無いという点で、物の発明としては明確であると言える。したがって、本件発明1の「付加製造法を使用して製造された」との特定は、出願時においてその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか又はおよそ実際的でないという実情があったと言え、さらに言えば、最も合理的な特定方法であったとも言える。したがって、指摘事項(5)の取消理由は、本件発明1には該当しない。

第5-2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(1)取消理由2の指摘事項(1)に関し、請求項1が訂正された結果、「単体パイロットスワーラ」は、「一次燃料スワーラ(603)」となった。この「一次燃料スワーラ(603)」は、例えば明細書段落【0045】ないし【0047】に記載されている。したがって、指摘事項(1)の取消理由はもはや存在しない。
(2)取消理由2の指摘事項(2)に関し、請求項1が訂正された結果、「追加製造プロセス」は、「付加製造法」となった。この「付加製造法」は、例えば明細書段落【0042】に記載されている。したがって、指摘事項(2)の取消理由はもはや存在しない。
(3)取消理由2の指摘事項(3)に関し、請求項23が訂正された結果、「単体パイロットスワーラ」は、「一次燃料スワーラ(603)」となった。この「一次燃料スワーラ(603)」は、例えば明細書の段落【0045】ないし【0047】に記載されている。したがって、指摘事項(1)の取消理由はもはや存在しない。
(4)取消理由2の指摘事項(4)に関し、訂正によって請求項29は削除された。したがって、指摘事項(4)の取消理由はもはや存在しない。

第5-3 取消理由3(特許法第36条第4項第1号)について
(1)取消理由3の指摘事項(1)に関し、請求項1が訂正された結果、「単体パイロットスワーラ」は、「一次燃料スワーラ(603)」となった。この「一次燃料スワーラ(603)」は、例えば明細書段落【0045】ないし【0047】に記載されている。したがって、指摘事項(1)の取消理由はもはや存在しない。
(2)取消理由3の指摘事項(2)に関し、請求項1が訂正された結果、「追加製造プロセス」は、「付加製造法」となった。この「付加製造法」は、例えば明細書段落【0042】に記載されている。したがって、指摘事項(2)の取消理由はもはや存在しない。
(3)取消理由3の指摘事項(3)に関し、請求項23が訂正された結果、「単体パイロットスワーラ」は、「一次燃料スワーラ(603)」となった。この「一次燃料スワーラ(603)」は、例えば明細書段落【0045】ないし【0047】に記載されている。したがって、指摘事項(1)の取消理由はもはや存在しない。
(4)取消理由3の指摘事項(4)に関し、訂正によって請求項29は削除された。したがって、指摘事項(4)の取消理由はもはや存在しない。

第5-4 取消理由4(特許法第113条第5号)について
請求項1が訂正された結果、「追加製造プロセス」は、「付加製造法」となった。この「付加製造法」は、本件国際公報WO2009/126483の第21頁第26行「additive fabrication」に記載されている。したがって、各請求項に記載した事項は、外国語書面に記載した範囲内にあり、取消理由4には該当しない。

第5-5 取消理由5(特許法第29条第2項)について
1 刊行物及び刊行物の記載事項
1-1 特開2004-325068号公報(甲1)
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
ア 「本発明は、総括的には、ガスタービンエンジン燃焼器の燃料噴射装置に関し、より具体的には、多数の噴射オリフィスと燃料パージ装置とを備えた燃料噴射装置に関する。」(段落【0001】)
イ 「・・・ミキサ組立体40の各々は、それぞれパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59を含み、燃料と空気の混合気を燃焼域18に供給する。ミキサ組立体40の各々は、ノズル軸線52を有し、このノズル軸線の周りをパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59が囲む。」(段落【0016】)
ウ 「図1及び図2を参照すると、本発明による燃料噴射装置10の例示的な実施形態は、燃料ノズル先端組立体12(半径方向に間隔をおいて配置された1つ以上のノズル組立体を用いることができる)を有し、該燃料ノズル先端組立体12は、それぞれガスタービンエンジンの燃焼チャンバの燃焼域内に燃料を導くパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59を含む。・・・」(段落【0017】)
エ 「・・・ノズル先端組立体12は、それぞれパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59を含む。一般的には、パイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59は、定常状態及び最大出力状態時に用いられ、始動及び部分出力作動時には、パイロット燃料ノズルのみが用いられる。弁組立体42からノズル先端組立体12に燃料を供給するために、単一の細長い燃料供給ストリップ62の形態を有する例示的な可撓性の燃料噴射装置導管が使用される。燃料供給ストリップ62は、燃焼チャンバ内の燃焼温度に悪影響を受けることなく曝すことができる材料で形成された可撓性の燃料供給ストリップである。」(段落【0019】)
オ 「図9及び図10を参照すると、燃料供給ストリップ62は、長手方向に延びて互いに接合された単一対の第1のプレート76及び第2のプレート78を有する。第1及び第2のプレート76及び78の各々は、幅方向に間隔をおいて長手方向に延びる単一列80の平行溝84を有する。各々のプレート内の対向し合う溝84が整列して、燃料供給ストリップ62の入口端66から出口端69まで燃料供給ストリップ62を貫通した内部燃料流路90を形成するように、プレートは互いに接合される。パイロットノズル延長部54は、メイン燃料ノズル59から後方に延び、図2にさらに示すようにパイロット燃料供給管56によりパイロット燃料ノズル58の燃料噴射装置先端部57に流体的に接続される。図2、図3、図11及び図12に示すように、燃料供給ストリップ62は、メイン燃料ノズル59及びパイロット燃料ノズル58に燃料を供給する。・・・」(段落【0020】)
カ 「図2及び図11を参照すると、燃料供給ストリップ62の入口端66における入口63は、弁組立体42内のそれぞれ第1の燃料入口ポート46及び第2の燃料入口ポート47と流体流れ連通し、つまり流体的に接続されて、メインノズル燃料回路102及びパイロットノズル燃料回路288へ燃料を送る。入口ポートは、燃料供給ストリップ62内の複数の内部燃料流路90内の燃料をノズル先端組立体12内のパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59に供給すると共に、弁組立体を熱制御するための冷却回路を形成する。図11及び図12に示すように、ノズル先端組立体12のヘッダ104は、燃料供給ストリップ62から燃料を受け、メインノズル燃料回路102を通して、燃料をメイン燃料ノズル59とそこに組み込まれたパイロット燃料ノズル58とに運ぶ。」(段落【0022】)
キ 「燃料供給ストリップ62と、メイン燃料ノズル59と、これらの間のヘッダ104とは、長手方向に延びる第1のプレート76及び第2のプレート78から一体的に作られる。メイン燃料ノズル59とヘッダ104とは、燃料供給ストリップ62の構成要素であると考えることができる。メインノズル燃料回路102の燃料流路90は、燃料供給ストリップ62とヘッダ104とメイン燃料ノズル59とを貫通して延びる。メインノズル燃料回路102の燃料流路90は、図2、図3及び図12に示すように、噴霧オリフィス106へと導かれ、また、パイロット燃料供給管56に流体的に接続するように作動可能なパイロットノズル延長部54を通して、パイロット燃料ノズル58に燃料を供給する。・・・」(段落【0023】)
ク 「図10、図11及び図12を参照すると、メインノズル燃料回路102は、第1の燃料回路ブランチ280と第2の燃料回路ブランチ282とに接続された単一の幹線ライン287を含む。第1及び第2の燃料回路ブランチ280及び282の各々は、メイン燃料ノズル59内にそれぞれ時計方向及び反時計方向に延びるメイン環状脚部284及び286を含む。噴霧オリフィス106は、第1のプレート76及び第2のプレート78の一方又は両方を貫通して環状脚部284及び286から延びる。噴霧オリフィス106は、第1及び第2のプレート76及び78のうちの半径方向外側のプレートであるメイン燃料ノズル59の第1のプレート76を貫通して半径方向外向きに延びる。時計方向及び反時計方向に延びる環状脚部284及び286は、平行な第1の波形部290及び第2の波形部292をそれぞれ有する。噴霧オリフィス106は、円300に沿ってほぼ円形に整列するように、第1及び第2の波形部290及び292の交互する波形部内に配置される。メインノズル燃料回路102はまた、パイロットノズル延長部54に燃料を供給するループ状パイロットノズル燃料回路288を含む。このループ状パイロットノズル燃料回路288は、メイン燃料ノズル59内にそれぞれ時計方向及び反時計方向に延びる環状パイロット脚部294及び296を含む。」(段落【0024】)
ケ 「・・・図11及び図12を参照すると、燃料供給ストリップ62の長さに沿った下方の内部燃料流路90は、燃料をメインノズル燃料回路102に供給するために使用される。燃料供給ストリップ62内の各々の内部燃料流路90内に流入して、ヘッダ104からパイロット燃料ノズル58及びメイン燃料ノズル59内に入る燃料は、燃料弁45により制御される。ノズル先端組立体12のヘッダ104は、燃料供給ストリップ62から燃料を受け、その燃料をメイン燃料ノズル59に運ぶ。・・・」(段落【0025】)
コ 「図1、図2及び図3を参照すると、各々のミキサ組立体40は、パイロットミキサ142と、メインミキサ144と、これらの間で延びるセンタボデー143とを含む。センタボデー143は、パイロットミキサ142の下流側にあって該パイロットミキサと流れ連通したチャンバ150を形成する。パイロット燃料ノズル58は、センタボデー143によりチャンバ150内に支持される。パイロット燃料ノズル58は、燃料の小滴を下流方向にチャンバ150内に噴霧するように設計される。メインミキサ144は、ラジアル流入スワーラ182の上流側に配置されたメインアキシャルスワーラ180を含み、該ラジアル流入スワーラ182は、噴霧オリフィス106の上流側に配置される。パイロットミキサ142は、同心に取付けられた1対のパイロットスワーラ160を含む。パイロットスワーラ160は、アキシャルスワーラとして図示されており、内側パイロットスワーラ162と外側パイロットスワーラ164とを含む。内側パイロットスワーラ162は、環状であり、パイロット燃料ノズル58の周りで周方向に配置される。内側パイロットスワーラ162及び外側パイロットスワーラ164の各々は、それぞれパイロット燃料ノズル58の上流に配置された複数の内側パイロット旋回翼166と外側パイロット旋回翼168とを含む。」(段落【0026】)
サ 「特に図3を参照すると、環状のパイロットスプリッタ170が、半径方向において内側パイロットスワーラ162と外側パイロットスワーラ164との間に配置され、内側パイロットスワーラ162及び外側パイロットスワーラ164から下流方向に延びる。パイロットスプリッタ170は、内側パイロットスワーラ162を通って流れるパイロットミキサ空気流154を外側パイロットスワーラ164を通って流れる空気流から分離するように設計される。・・・内側パイロット旋回翼166は、それを通って流れる空気を、外側パイロット旋回翼168を通って流れる空気と同一方向に旋回させるか、又は、外側パイロット旋回翼168がそれを通って流れる空気を旋回させる第2の周方向とは逆方向である第1の周方向に旋回させるように構成することができる。」(段落【0027】)
シ 「特に図1を参照すると、メインミキサ144は、環状空洞192を形成する環状のノズルハウジング190を含む。メインミキサ144は、パイロットミキサ142と同心に整列されたラジアル流入ミキサ又はサイクロンであり、パイロットミキサ142の周りで周方向に延びる。メインミキサ144は、ノズルハウジング190に沿って旋回するメインミキサ空気流156を生成する。環状のメイン燃料ノズル59は、パイロットミキサ142とメインミキサ144との間で周方向に配置される。より具体的には、メイン燃料ノズル59は、パイロットミキサ142の周りで周方向に延び、センタボデー143の半径方向外側においてノズルハウジング190の環状空洞192内に配置される。」(段落【0028】)
ス 「傾斜流れ旋回要素404の別の実施形態では、旋回翼410は、図29に示すようにサイクロン軸線402の周りで旋回角度408が非対称に変化している。旋回角度408は、サイクロン軸線402に垂直な半径Rに対して測定する。傾斜流れ旋回要素404の別の実施形態では、旋回翼410は、図30に示すようにサイクロン軸線402の周りで翼厚さ418が非対称に変化している。傾斜流れ旋回要素404は、図28に示すようにサイクロン軸線402の周りで非対称に間隔をおいて配置された旋回スロット412とすることもできる。旋回スロット412は、サイクロン軸線402に対して非対称に傾斜させることもできるし、或いはサイクロン軸線402の周りでスロット厚さ414を非対称に変化させることもできる。」(段落【0034】)
セ 「・・・パイロットノズル燃料回路288の時計方向に延びる環状パイロット脚部294及び反時計方向に延びる環状パイロット脚部296(図4、図6及び図7には、反時計方向に延びる環状パイロット脚部296のみが示されている)内のパイロット燃料流でパージ空気を冷却するために、パージ空気冷却通路344が、メイン燃料ノズル59を貫いて又は該メイン燃料ノズル59に沿って延びる。」(段落【0045】)
ソ 「パージ空気冷却通路344は、環状パイロット脚部と熱伝導関係にあり、パージング中に該環状パイロット脚部を通って流れる燃料により冷却される。・・・」(段落【0046】)

(2)甲1発明A及びB
上記(1)及び図面の記載から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

「1a’.燃料噴射装置10であって、
1b’.流体である燃料を流すことができる燃料供給ストリップ62と、
1c’.ノズル軸線52の周りの少なくとも一部を囲うリング部X3を有するメイン燃料ノズル59と、
1d’.メイン燃料ノズル59から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料噴射装置10内で旋回させることができる内側パイロットスワーラ162と、
1e’.前記内側パイロットスワーラ162から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラX11と、
1f’.前記スワーラX11と同軸に位置するセンタボデー143であって、前記燃料噴射装置10内で前記燃料と空気を混合するために環状の空洞を形成するセンタボデー143と、
1g’.リング部X3の少なくとも一部を囲み、前記リング部X3と同軸に位置するノズルハウジング190とを含む燃料噴射装置10。」

また、上記(1)及び図面の記載から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。

「23a’.燃料噴射装置10において
23b’.流体である燃料を流すことができる燃料供給ストリップ62と、
23c’.ノズル軸線52の周りの少なくとも一部を囲うリング部X31を有するメイン燃料ノズル59と、
23d’.メイン燃料ノズル59から半径方向内側に同軸で位置する内側パイロットスワーラ162と、
23e’.前記内側パイロットスワーラ162から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラX11と、
23f’.前記一次燃料スワーラX11と同軸に位置するセンタボデー143であって、前記燃料噴射装置10で前記燃料と空気を混合するために環状のチャンバ150を形成するセンタボデー143と、
23g’.前記リング部X31の少なくとも一部を囲み、前記リング部X31と同軸に位置する、ノズルハウジング190とを含む
燃料噴射装置10。」

1-2 特表2006-524579号公報(甲2)
(1)甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
ア 「本発明は、請求項1の種概念の定義による、ガスタービンの構成部品を修理及び/又は修正するための方法に関する。例えば、航空機動力装置(パワープラント)のようなガスタービンは、大きな応力を受け、このために、動力装置に欠陥部位が、動作中に発生することがある。これに関連して、動力装置の欠陥部位が素早く、かつコスト効率よく修理されることが出来ることが重要である。本発明は、例えば、航空機動力装置の固定ステータブレードのような、ガスタービンの構成部品、特に、固定構成部品を修理するための方法に関する。しかしながら、本発明は、ガスタービンの構造的修正及び/又は局所材料の修正のためにも使用可能である。」(段落【0001】)
イ 「特に、損傷した部分と隣接した許容の可能性のある部分が、修理又は修正されるべき構成部品から切り出された後、及び製造されるべき交換部品の機械データ記録が生成された後、交換部品の製造が迅速な製造プロセスを用いて行なわれる。迅速な製造プロセスとして、本発明に従って、選択的レーザ焼結、略してSLS、選択的レーザ溶融、略してSLM、又はレーザビーム生成、略して、LGが使用される。」(段落【0017】)
ウ 「上記の迅速な製造プロセスに関して、選択的レーザ焼結(SLS)は、微粒子金属パウダーの一定の層が基板(サブストレート)に付着され、交換部品の輪郭がレーザビームによって走査される、周期的な二つのステッププロセスであることに留意するべきである。これに関連して、粒子は、基板と同様に一定の層に焼結される。引き続いて、基板が降ろされ、特定のパウダー層が再び付着され、そして、順々に、次の層の輪郭が下部層と現在の層の粒子で結合がおこるように走査される。焼結プロセスにおいて製造されるべき交換部品上に表れる孔は、パラメータの最適化及びできる限り適切な後処理によって最小にされる。製造されるべき交換部品の機械的特性は、主として、残存する孔によって決定される。」(段落【0018】)
エ 「本発明の方法を使用して、ガスタービンの構成部品、特に航空機動力装置のガスタービンの構成部品の迅速な修理が可能となる。交換部品は、高い精度と幾何学的形状の高度な複雑さを持って製造されることが出来る。・・・」(段落【0024】)

(2)甲2技術A及びB
上記(1)及び図面の記載から、甲2には、次の技術(以下、「甲2技術A」という。)が記載されているといえる。

「選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、レーザビーム生成(LG)などのラピッドマニュファクチャリングプロセスを用いてガスタービンの構成部品を製造する技術。」

また、上記(1)及び図面の記載から、甲2には、次の技術(以下、「甲2技術B」という。)が記載されているといえる。

「選択的レーザ焼結により、微粒子金属パウダーを一層ごとにレーザビームによって焼結して一層ごとに積層させる付加製造法の技術。」

1-3 特開2002-340338号公報(甲3)
(1)甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
ア 「本発明は、一般的にガスタービンエンジンに関し、より具体的には、ガスタービンエンジン用の燃焼器に関する。」(段落【0001】)
イ 「デフレクタ部分76はまた、半径方向外側の面270及び半径方向内側の面272を含む。半径方向外側の面270及び半径方向内側の面272は、デフレクタの前縁236から、デフレクタ本体234を通ってデフレクタの後縁242まで延びる。テープスロット274は、デフレクタの外側の面270からデフレクタ本体234内に深さ276だけ半径方向に延び、また、スロット274のそれぞれ前縁282と後縁284との間で測定された幅280だけ軸方向に延びる。」(段落【0029】)
ウ 「燃焼器16の組立てにおいて、ろう付け用テープがデフレクタのテープスロット内に予め装填され、ろう付け用ロープが空気スワール生成器の出口コーンのウィッシュボーン継手スロット168内に予め装填される。そして、デフレクタ・フレア状コーン組立体75が燃焼器のドームプレート220にスタック溶接され、燃焼器のドームプレート220と組立体75を、ろう付け中に適切な軸方向及び周方向位置に保持する。従って、ろう付け用テープとロープが予め装填されているので、単一のろう付け作業により、デフレクタ・フレア状コーン組立体75を、空気スワール生成器のフレア状コーン78及び燃焼器のドームプレート220に結合することができる。」(段落【0032】)

(2)甲3技術
上記(1)及び図3から、甲3には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されているといえる。

「ガスタービンエンジンの燃焼器用のデフレクタ部分76に、ろう付け材料を受け取ることができるアーチ形のテープスロット274を形成する技術。」

1-4 米国特許出願公開第2004/0083735号明細書(甲4)
(1)甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。
ア 「The present invention generally relates to gas turbine engine combustor systems and, more particularly, to combustor heat shields.」(段落[0001])
{訳文:「本発明は、概して、ガスタービンエンジン燃焼器システムに関するものであり、より詳細には、燃焼器熱シールドに関するものである。」}
イ 「In one embodiment, the present invention provides a heat shield for a combustor dome. The heat shield may be positioned downstream of the combustor dome. Air contacting the upstream surface of the heat shield may cool the heat shield. The air may be supplied through impingement openings in the combustor dome....」(段落[0035])
{訳文:「一実施形態において、本発明は、燃焼器ドーム用の熱シールドを提供する. この熱シールドは、燃焼器ドームの下流側に配置され得る。この熱シールドの上流側面に接触する空気は、熱シールドを冷却し得る。この空気は、燃焼器ドーム内の衝突開口を通じて供給され得る。・・・」}
ウ 「The heat shields 36 may have slots 47 therethrough, as seen in FIG.5....」(段落[0047])
{訳文:「図5に示されるように、熱シールド36は、熱シールド36を貫通するスロット47を有していてもよい。・・・」}

(2)甲4技術
上記(1)及び図5から、甲4には次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されているといえる。

「ガスタービン燃焼器の熱シールド36がスロット47を含んでいる技術。」

2 対比・判断
2-1 本件発明1について
本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aにおける「燃料噴射装置10」は、その技術的意義からみて、本件発明1における「ガスタービンエンジン燃料ノズル」に相当し、以下同様に、「燃料供給ストリップ62」は「供給導管」に、「メイン燃料ノズル59」は「ディストリビュータ」に、「内側パイロットスワーラ162」は「単体スワーラ」に、「一次燃料スワーラX11」は「一次燃料スワーラ」に、「センタボデー143」は「ベンチュリ」に、「ノズルハウジング190」は「センタボディ」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明Aとは、以下の点で一致する。

<一致点>
「1a.ガスタービンエンジン燃料ノズルであって、
1b.流体である燃料を流すことができる供給導管と、
1c.ディストリビュータ軸の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリングを有するディストリビュータと、
1d.前記ディストリビュータから半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができるスワーラと、
1e.前記スワーラから半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラと、
1f.前記一次燃料スワーラと同軸に位置するベンチュリであって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリと、
1g.前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディとを含む燃料ノズル」である点。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点>
1.本件発明1においては、「スワーラは、付加製造法を使用して製造され」ているのに対して、甲1発明Aにおいては、内側パイロットスワーラ162が付加製造法を使用して製造されたものか否か明らかでない点(以下、「相違点イ」という。)。

2.本件発明1においては、スワーラが「単体」であるのに対して、甲1発明Aにおいては、内側パイロットスワーラ162が単体であるか否か明らかでない点(以下、「相違点ロ」という。)。

3.本件発明1においては、「前記スワーラは、ディストリビュータ軸の周りに周方向で延在する本体と、前記ディストリビュータ軸と同軸であり且つ前記本体から半径方向外側に位置し、前記スワーラ内で空気を流すための流路の一部を形成するリムと、前記リムと前記本体との間で半径方向に延在する壁とをさらに含」んでいるのに対して、甲1発明Aにおいては、内側パイロットスワーラ162がそのような構造を有していない点(以下、「相違点ハ」という。)。

まず、相違点イについて検討する。
「付加製造法」に関し、甲第2号証には「選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、レーザビーム生成(LG)などのラピッドマニュファクチャリングプロセスを用いてガスタービンの構成部品を製造する技術」(甲2技術A)及び「選択的レーザ焼結は、微粒子金属パウダーを一層ごとにレーザビームによって焼結して一層ごとに積層させる付加製造法である技術」(甲2技術B)が記載されている。この甲第2号証は、ガスタービンの構成部品を製造するという技術分野で甲1発明Aと技術分野を同じくするものである(段落【0001】参照)。
そして、甲第2号証において上記のようなラピッドマニュファクチャリングプロセスを用いる理由は、ガスタービンの欠陥部位を迅速に修理すべく、その部位の交換部品を短時間で安価に製造するためである(段落【0024】参照)。
したがって、甲1発明Aの燃料噴射装置10を製造するにあたり、製造期間と製造コストを低減するために、甲2技術A及び甲2技術Bに教示されるように、付加製造法である選択的レーザ焼結を用いて燃料噴射装置10の内側パイロットスワーラ162を製造することは、本件特許の優先日時点における当業者であれば容易に想到し得たことである。

次に、相違点ロについて検討する。
相違点ロにおける「単体」は、上述したように、構成部品が一体成型として製造されることを意味していると解される(本件特許の段落【0021】参照)。
ここで、積層造形法又は付加製造法により構成部品を製造した場合、そのような構成部品は一体成型されるのが通常である。すなわち、上述したように、甲1発明Aの燃料噴射装置10を製造するにあたり、付加製造法である選択的レーザ焼結を用いて燃料噴射装置10の構成部品を製造した場合には、そのような構成部品は一体成型されるのが通常である。
したがって、甲1発明Aの燃料噴射装置10を製造するにあたり、製造時間と製造コストを低減するために、甲2記載事項A及び甲2記載事項Bに教示されるように、付加製造法である選択的レーザ焼結を用いて燃料噴射装置10の内側パイロットスワーラ162を一体成型として製造することは、本件特許の優先日時点における当業者であれば容易に想到し得たことである。

次に、相違点ハについて検討する。
この相違点ハに関して、「前記スワーラは、ディストリビュータ軸の周りに周方向で延在する本体と、前記ディストリビュータ軸と同軸であり且つ前記本体から半径方向外側に位置し、前記スワーラ内で空気を流すための流路の一部を形成するリムと、前記リムと前記本体との間で半径方向に延在する壁とをさらに含」む構造は、甲1ないし甲4のいずれの文献にも記載も示唆もされていない。

そして、本件発明1は、「単体スワーラ(200)」を「前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と」を含む構成とした上で、これを追加製造法で製造したものであり、これにより、優れた耐久性と軽量性を発揮するものである。

したがって、本件発明1は、甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-2 本件発明3ないし12、14、15、17ないし22、27及び28について
本件特許の訂正後の請求項1を引用する本件発明3ないし12、14、15、17ないし22、27及び28は、本件発明1の発明特定事項をすべて備え、さらに限定を加えたものであるから、本件発明1と同様に、甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-3 本件発明23について
本件発明23と甲1発明Bとを対比する。
甲1発明Bにおける「燃料噴射装置10」は、その技術的意義からみて、本件発明1における「ガスタービンエンジン燃料ノズル」に相当し、以下同様に、「燃料供給ストリップ62」は「供給導管」に、「メイン燃料ノズル59」は「ディストリビュータ」に、「内側パイロットスワーラ162」は「スワーラ」に、「一次燃料スワーラX11」は「一次燃料スワーラ」に、「センタボデー143」は「ベンチュリ」に、「ノズルハウジング190」は「センタボディ」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明23と甲1発明Bとは、以下の点で一致する。

<一致点>
「23a.ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)において、
23b.流体である燃料を流すことができる供給導管(80)と、
23c.ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)と、
23d.前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置するスワーラ(200)と、
23e.前記スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラと、
23f.前記一次燃料スワーラと同軸に位置するベンチュリであって、前記燃料ノズル内で燃料と前記空気を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリと、
23g.前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置する、センタボディとを含む燃料ノズル」である点。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点>
1.本件発明23においては、「前記単体供給導管(80)、前記単体ディストリビュータ(300)、前記単体スワーラ(200)、前記単体一次燃料スワーラ、前記単体ベンチュリ及び前記単体センタボディのそれぞれが、一体型として単体に形成されている」のに対して、甲1発明(b)においては、燃料噴射装置10の構成部品が一体型として単体に形成されているか明らかでない点(以下、「相違点ニ」という。)。

2.本件発明23においては、「前記スワーラは、ディストリビュータ軸の周りに周方向で延在する本体と、前記ディストリビュータ軸と同軸であり且つ前記本体から半径方向外側に位置し、前記スワーラ内で空気を流すための流路の一部を形成するリムと、前記リムと前記本体との間で半径方向に延在する壁とをさらに含」んでいるのに対して、甲1発明Bにおいては、内側パイロツトスワーラ162がそのような構造を有していない点(以下、「相違点ホ」という。)。

まず、相違点ニについて検討する。
この相違点ニに関して、甲第2号証には「選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、レーザビーム生成(LG)などのラピッドマニュファクチャリングプロセスを用いてガスタービンの構成部品を製造する技術。」(甲2技術A)及び「選択的レーザ焼結により、微粒子金属パウダーを一層ごとにレーザビームによって焼結して一層ごとに積層させる付加製造法の技術。」(甲2技術B)が記載されている。そして、甲第2号証において上記のような迅速な製造プロセスを用いる理由は、ガスタービンの欠陥部位を迅速に修理すべく、その部位の交換部品を短時間で安価に製造するためである(段落【0024】参照)。
したがって、甲1発明Bの燃料噴射装置10を製造するにあたり、製造期間と製造コストを低減するために、甲2技術A及び甲2技術Bに教示されるように、付加製造法である選択的レーザ焼結を用いて燃料噴射装置10の構成部品を製造することは、本件特許の優先日時点における当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、積層造形法又は付加製造法により構成部品を製造した場合、そのような構成部品は一体型となるのが通常であるから、甲1発明Bの燃料噴射装置10を製造するにあたり、甲2技術A及び甲2技術Bに教示されるような付加製造法である選択的レーザ焼結を用いて、燃料噴射装置10の構成部品を一体型として単体に形成することは、本件特許の優先日時点における当業者であれば容易に想到し得たことである。

次に、相違点ホについて検討する。
この相違点ホに関して、「前記スワーラは、ディストリビュータ軸の周りに周方向で延在する本体と、前記ディストリビュータ軸と同軸であり且つ前記本体から半径方向外側に位置し、前記スワーラ内で空気を流すための流路の一部を形成するリムと、前記リムと前記本体との間で半径方向に延在する壁とをさらに含」む構造は、甲1ないし甲4のいずれの文献にも記載も示唆もされていない。

そして、本件発明23は、「単体スワーラ(200)」を「前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と」を含む構成とした上で、これを追加製造法したものであり、これにより、優れた耐久性と軽量性を発揮するものである。

したがって、本件発明23は、甲1ないし甲4に記載された発明又は技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-4 本件発明24ないし26について
本件特許の訂正後の請求項23を引用する本件発明24ないし26は、本件発明23の発明特定事項をすべて備え、さらに限定を加えたものであるから、本件発明23と同様に、甲1ないし甲4に記載された発明又は技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 異議申立人の主張について
異議申立人は、平成28年7月19日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、
「・・・参考文献2(特開2007-155318号公報)には、次に示す参考文献記載事項(b)が記載されていると認められる。
「スワーラ136が、ノズル軸周りに周方向で延在する本体Y1と、ノズル軸と同軸であり且つ本体Y1から半径方向外側に位置し、スワーラ136内で空気を流すための流路の一部を形成するリムY2と、リムY2と本体Y1との間で半径方向に延在する壁Y3とを含むこと」(以下、「参考文献記載事項(b)」という。)」
と主張している。

しかしながら、上記参考文献2は、異議申立て期間内に提出されたものではなく、平成28年2月1日付け取消理由通知において引用した文献でもない。
なお、上記参考文献2を参照しても、「前記スワーラは、ディストリビュータ軸の周りに周方向で延在する本体と、前記ディストリビュータ軸と同軸であり且つ前記本体から半径方向外側に位置し、前記スワーラ内で空気を流すための流路の一部を形成するリムと、前記リムと前記本体との間で半径方向に延在する壁とをさらに含」む構造を開示するものではないから、仮に、甲1発明A又はBにおいて参考文献記載事項(b)を適用したとしても、本件発明1又は23に到達することはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、訂正後の請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではない。


第6 結語
上記第5のとおりであるから、取消理由1ないし5によっては、訂正後の請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3ないし12、14、15及び17ないし28に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、13、16及び29に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、13、16及び29に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
燃料ノズル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に燃料ノズルに関し、より詳細には、ガスタービンエンジンで使用するためにろう付けを使用して結合した単体構成部品を有する燃料ノズルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンは典型的には、燃料をエンジンの燃焼器に供給するための複数の燃料ノズルを含む。燃料は、バーナの前端部で燃料ノズルから非常に細かい噴霧の状態で導入される。圧縮空気は燃料ノズルの周りを流れ、燃料と混合され、混合気を生じ、この混合気がバーナにより点火される。使用可能な燃料圧力が限定されており、所要の燃料流の範囲が広いので、多くの燃料噴射器にはパイロットノズルおよび主ノズルが含まれ、パイロットノズルのみが始動中に使用され、高出力作動中には両方のノズルが使用される。主ノズルへの流れは、始動中および低出力作動中には減少するまたは停止する。このような噴射器は、特定の燃焼器要件に合わせて、燃料流をより正確に制御し、燃料噴霧をより正確に導くことができるので、シングルノズルの燃料噴射器より効率的かつ清浄に燃焼できる。パイロットノズルおよび主ノズルは、同じノズルアセンブリ内に収容することができ、または別のノズルアセンブリ内で支持することもできる。また、これらのデュアルノズル燃料噴射器は、デュアル燃焼器のために燃料をさらに制御することを可能にするように構成することができ、さらに高い燃料効率と有害な放出物の削減をもたらす。点火した混合気の温度は3500°F(1920℃)以上に達する可能性がある。したがって、燃料供給導管、流路および分配システムは、実質的に漏れがなく、炎および熱から保護されていることが重要である。
【0003】
長い間継続的にタービンエンジンの作動中の高温に暴露されると、導管および燃料ノズルの構成部品に温度勾配および熱応力が誘発される場合があり、これらは導管および燃料ノズルの構成部品を損傷するおそれがあり、かつ燃料ノズルの作動に悪影響を与えるおそれがある。たとえば、温度勾配は、導管内の燃料流の減少を引き起こす場合があり、タービンエンジン内の過剰燃料の不均等分配につながる場合がある。燃料ノズルの導管およびオリフィスを介して流れる燃料が高温に曝されると、燃料のコークス化につながる場合があり、閉塞および不均一な流れにつながる場合がある。低放出物を実現するために、最新の燃料ノズルは、複数の別々の火炎帯を創出するように、多数の複雑な内部空気および燃料回路を必要とする。燃料回路は、コークス化を防ぐために内部空気からの熱シールドを必要とする場合があり、特定の燃料ノズル構成部品が冷却され、燃焼ガスから遮蔽されなければならない場合がある。熱伝達および冷却を促進するために、追加の機構を燃料ノズル構成部品内に設けなければならない場合がある。さらに、長い間継続的に損傷した燃料ノズルで作動すると、タービンの効率が低下し、タービン構成部品が損傷し、および/またはエンジン排ガス温度マージンが減少することになるおそれがある。
【0004】
タービンエンジン内に設置した燃料ノズルのライフサイクルを改善すると、タービンエンジンの寿命を延長することができる。知られている燃料ノズルには、送達システム、混合システム、および支持システムが含まれる。流体を輸送するための導管を含む送達システムは、燃料をタービンエンジンに送達し、支持システムによってタービンエンジン内で支持され、遮蔽される。より詳細には、知られている支持システムは送達システムを囲み、したがって、燃料ノズルを介して流れる流体により冷却される送達システムより高い温度に曝され、高い作動温度を有する。外側および内側の輪郭および厚さを設定することで、導管および燃料ノズルの熱応力を減少することができる。いくつかの知られている従来の燃料ノズルは、22のろう接継手と3つの溶接継手を有する。
【0005】
燃料ノズルは、燃焼前に空気と燃料との混合を促進するために、ノズルを通過する空気を旋回させるスワーラアセンブリを有する。燃焼器で使用されるスワーラアセンブリは、軸方向、半径方向、もしくは円錐形のスワーラまたはそれらの組合せを有する、複雑な構造となることがある。過去には、従来の製造方法を使用し、別々のベンチュリおよびスワーラ構成部品を有する混合器を製作しており、これらの別々の構成部品は、知られている方法を使用して組み立てられまたは接合され、アセンブリを形成する。たとえば、複雑なベーンを備えたある混合器では、個々のベーンは先ず機械加工され、次にアセンブリにろう付けされる。過去には、インベストメント鋳造方法が、いくつかの燃焼スワーラを製造する際に使用されてきた。他のスワーラおよびベンチュリは原材料から機械加工されてきた。放電加工(EDM)が、従来の燃料ノズル構成部品のベーンを機械加工する手段として使用されてきた。
【0006】
たとえば、燃料ノズルならびにその関連したスワーラ、導管、分配システム、ベンチュリ、および混合システムなど従来のガスタービンエンジン構成部品は、一般的に、製作および/または修理するのは高価である。というのは、燃料を輸送し、分配し、空気と混合するための複雑なスワーラ、導管および分配回路、ならびにベンチュリを有する従来の燃料ノズル設計に、複雑なアセンブリ、および30点を超える構成部品の接合が含まれるからである。より詳細には、ろう接継手を使用すると、当該構成部品を製作するのに必要な時間が増加することがあり、また、ろう付け合金の配置を可能にする適正な領域の必要性、不要なろう付け合金が流れるのを最小化する必要性、ろう付け品質を検証するための許容される検査技術の必要性、前のろう接継手を再溶融することを防ぐために使用可能ないくつかのろう付け合金を有する必要性を含めて、いくつかの理由のいずれかのために製作プロセスが複雑になることがある。さらに、多数のろう接継手は、構成部品の母材を脆弱にし得る、いくつかのろう付けの流れ(braze run)をもたらす場合がある。ツインアニュラプリスワール(TAPS)ノズルのような最新の燃料ノズルは、狭い封体部に多数の構成部品およびろう接継手を有する。多数のろう接継手が存在することで、構成部品およびアセンブリの重量ならびに、製造および検査のコストを増加する場合があり、好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、燃料ノズル内で燃料と空気を混合するための複雑な形状を有する単体構成部品を有し、一方で、前記の熱暴露からの望ましくない作用を低減するために熱から構造を保護する、燃料ノズルを有することが望ましいであろう。コストを削減し、組み立てが容易になるようなアセンブリ特徴を有し、ならびに、悪熱環境からの保護を提供し、漏れの可能性を低減するための、燃料ノズルアセンブリを有することが望ましい。たとえば、ガスタービンエンジンの漏れの可能性を低減した燃料ノズルで使用するための熱シールドを備えたディストリビュータ、スワーラおよびベンチュリなどの、複雑な3次元形状を有する単体構成部品の組み立て方法を有することが望ましい。燃料ノズルで使用するために複雑な3次元形状を有する単体構成部品を製造する方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の必要性は、ラピッドマニュファクチャリング製造プロセスを使用して製造した少なくとも1つの単体構成部品を含む燃料ノズルを提供する、例示的実施形態によって満たすことができる。一態様では、ラピッドマニュファクチャリングプロセスはレーザ焼結プロセスである。別の態様では、燃料ノズルは単体導管を含む。別の態様では、燃料ノズルはアダプタを有する単体スワーラを含む。別の態様では、燃料ノズルは複数の通路を有する単体ディストリビュータを含む。別の態様では、燃料ノズルは単体ベンチュリを含む。別の態様では、燃料ノズルは単体センタボディを含む。
【0009】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結びの部分で特に指摘され、明確に特許請求されている。しかし、本発明は、添付図面と共に以下の記述を参照すれば最もよく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的実施形態による例示的燃料ノズルを含むハイバイパスターボファンのガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による例示的燃料ノズルの等角図である。
【図3】本発明の例示的実施形態による例示的燃料ノズルの部分的断面図である。
【図4】図2に示される例示的燃料ノズルの先端部領域の軸方向断面図である。
【図5】本発明の一態様による単体構成部品を製作する方法の例示的実施形態を示す流れ図である。
【図6】燃料ノズルを組み立てる方法の本発明の一態様の例示的実施形態を示す流れ図である。
【図7】一部断面を伴うろう付けワイヤを有する例示的燃料スワーラの平面図である。
【図8】例示的1次パイロットアセンブリの軸方向断面図である。
【図9】試験装置に設置した例示的1次パイロットアセンブリおよび例示的スワーラの軸方向断面図である。
【図10】1次パイロットアセンブリのX線検査の概略図である。
【図11】ディストリビュータ、1次パイロットアセンブリおよびスワーラのろう付けワイヤを組み立てる概略図である。
【図12】例示的燃料ノズルサブアセンブリの軸方向断面図である。
【図13】図12に示した例示的燃料ノズルサブアセンブリの等角図である。
【図14】ステムハウジングに挿入した図12に示したサブアセンブリの部分的軸方向断面図である。
【図15】図14に示したサブアセンブリに取り付けた外部ケーシングの部分的軸方向断面図である。
【図16】例示的ベンチュリの軸方向断面図である。
【図17】例示的燃料ノズルのステムハウジングおよびバルブハウジングの部分的断面図である。
【図18】組み立て後の図2に示した例示的燃料ノズルの先端部アセンブリ領域の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図を通して同じ番号が同じ要素を示す図面を詳細に参照すると、図1は、燃料ノズル100内で空気を燃料と混合するのを促進するために使用される単体構成部品(図面に示され、本明細書に記載の、導管80、スワーラ200、ディストリビュータ300、センタボディ450、およびベンチュリ500など)を有する例示的燃料ノズル100を内蔵する例示的ガスタービンエンジン10(ハイバイパスタイプ)を略図形式で示す。例示的ガスタービンエンジン10は、参照目的のためにそこを通る軸方向縦中心線軸12を有する。エンジン10には望ましくは、全体として数字14で識別されるコアガスタービンエンジンおよびそこから上流に配置されたファンセクション16が含まれる。コアエンジン14には典型的に、環状入口20を画定する全体としてチューブ状の外側ケーシング18が含まれる。外側ケーシング18はさらに、コアエンジン14に入る空気の圧力を第1の圧力レベルまで上昇させるために、ブースタ22を囲み、支持する。高圧の、多段式軸流圧縮器24は、ブースタ22から圧縮空気を受け、さらに空気の圧力を増加させる。圧縮空気は燃焼器26に流れ、そこで、燃料が圧縮空気の流れに注入され、点火し、圧縮空気の温度およびエネルギーレベルを上昇させる。高エネルギー燃焼生成物は、第1(高圧)ドライブシャフト30を介して高圧圧縮器24を駆動するために、燃焼器26から第1(高圧)タービン28に流れ、次に、第1ドライブシャフト30と同軸である第2(低圧)ドライブシャフト34を介してブースタ22およびファンセクション16を駆動するために第2(低圧)タービン32に流れる。タービン28および32のそれぞれを駆動した後、燃焼生成物は、排気ノズル36を介してコアエンジン14から離れ、エンジン10のジェット推進スラストの少なくとも一部を提供する。
【0012】
ファンセクション16には、環状ファンケーシング40に囲まれた回転可能な軸流ファンロータ38が含まれる。ファンケーシング40が、複数の、実質的に半径方向に延在し周方向で離間された出口ガイドベーン42によって、コアエンジン14から支持されていることが理解されるであろう。このようにして、ファンケーシング40は、ファンロータ38およびファンロータブレード44を囲む。ファンケーシング40の下流区分46は、コアエンジン14の外側部分の上に延在し、追加のジェット推進スラストを提供する2次的、またはバイパス空気流導管48を画定する。
【0013】
流動の観点から、矢印50により表される初期空気流は、入口52を介しファンケーシング40まで、ガスタービンエンジン10に入ることが理解されるであろう。空気流50はファンブレード44を通過し、導管48を介して移動する第1圧縮空気流(矢印54により表される)と、ブースタ22に入る第2圧縮空気流(矢印56により表される)とに2つに分かれる。
【0014】
第2圧縮空気流56の圧力は増加し、矢印58により表されるように、高圧圧縮器24に入る。燃料と混合され、燃焼器26で燃焼した後、燃焼生成物60は燃焼器26から出て、第1タービン28を介して流れる。次に、燃焼生成物60は、第2タービン32を介して流れ、排気ノズル36から出て、ガスタービンエンジン10のスラストの少なくとも一部を提供する。
【0015】
燃焼器26には、縦中心線軸12、ならびに入口64および出口66と同軸である環状燃焼室62が含まれる。上記のように、燃焼器26は圧縮空気の環状の流れを高圧圧縮器排出出口69から受ける。本明細書の図面に数字190で識別される、この圧縮器排出空気(「CDP」空気)の一部は、混合器(図示せず)内に流入する。燃料は燃料ノズル先端部アセンブリ68から注入され、空気と混合され、燃焼のために燃焼室62に提供される混合気を生じる。混合気の点火は、適正な点火装置により達成され、次に、結果として生じる燃焼ガス60は、環状の第1段タービンノズル72に向かい、その中へ軸方向に流れる。ノズル72は、ガスが角度をなして流れ、第1タービン28の第1段タービンブレードに作用するように、ガスを回転させる複数の、半径方向に延在し周方向で離間されたノズルベーン74を含む、環状流路により画定される。図1に示したように、第1タービン28は望ましくは、第1ドライブシャフト30を介して高圧圧縮器24を回転させる。低圧タービン32は望ましくは、第2ドライブシャフト34を介してブースタ22およびファンロータ38を駆動する。
【0016】
燃焼室62はエンジン外側ケーシング18内に収容される。燃料は、たとえば図2および3に示した例のように、燃料ノズル100により燃焼室に供給される。液体燃料は、たとえば図3に示したように、ステム83内の導管80を介して、燃料ノズル先端部アセンブリ68へ輸送される。単体構造を有する導管は、燃料ノズル100の燃料ノズル先端部アセンブリ68へ液体燃料を輸送するのに使用されてよい。燃料供給導管は、ステム83内に位置してよく、燃料ディストリビュータ先端部180と結合されてよい。パイロット燃料、および主燃料は、たとえば、図2、3、および4に示したように、燃料ノズル先端部アセンブリ68により燃焼器26内に噴霧される。タービンエンジンの作動中、当初、パイロット燃料は、始動およびアイドリング運転のような、所定のエンジン作動状態の間、たとえば、図3に品目82、84として示したような、パイロット燃料流路を介して供給される。パイロット燃料は、パイロット燃料出口162を介して、燃料ディストリビュータ先端部180から排出される。追加出力が要求されるとき、主燃料が主燃料流路85(図3参照)を介して供給され、主燃料は主燃料出口165を使用して噴霧される。
【0017】
図3は、燃料ノズル先端部68内の液体燃料を輸送するのに使用される単体導管85を有する例示的燃料ノズル100の部分的断面等角図である。例示的実施形態では、単体導管80には、燃料ノズルへの主燃料流路として、および導管本体87内に延びるパイロット燃料通路82、84として役割を果たす、導管本体87内に位置する流路86が含まれる。パイロット燃料通路からの燃料は、パイロット供給チューブ154(図4を参照)により燃料ノズル先端部68内に方向付けられ、パイロット燃料出口162を介して出る。いくつかの単体導管80では、たとえば図3に示したように、2つ以上のサブ通路88、89に枝分かれする流路86を有することは、有利である。図3に示したように、単体導管80を燃料ノズル100に適用するために、流路86は第1主通路88と第2主通路89に枝分かれする。液体燃料は主通路入口126を介してノズルに供給され、流路86に入る。次に、燃料流は2つの流れに枝分かれし、一方は第1主通路88を介し、他方は第2主通路89を介し、その後ディストリビュータ先端部180に入る。図3に示したように、主燃料流路86、サブ通路88、89、およびパイロット燃料流路82、84は、単体導管80の全体として縦方向に延びる。
【0018】
本明細書に記載のように単体導管80を有し、ガスタービンエンジン燃料ノズルで使用される、例示的燃料ディストリビュータ100が、図3に示してある。例示的実施形態では、単体導管80は、ガスタービンエンジン10に搭載するためのフランジ81を有する、ステム83内に位置する。単体導管80は、ステムの内面と、単体導管80の導管本体とに間に隙間77ができるように、ステム83内に位置する。隙間77は、熱、およびガスタービンエンジンの燃料ノズルを囲む他の悪環境条件から、単体導管80を絶縁する。単体導管80の追加冷却は、隙間77内の循環空気により達成される。単体導管80はろう付けのような従来の接続手段を使用してステム83に接続される。あるいは、単体導管80およびステム83は、たとえば、本明細書に記載の、直接レーザ金属焼結のように、ラピッドマニュファクチャリング法により製造されてよい。本明細書に示され、記載の燃料ノズル100の例示的実施形態では、燃料ディストリビュータ先端部68は、主燃料流路(第1主通路88および第2主通路89)ならびにパイロット燃料流路82、84が、たとえば図3に示したように、燃料ディストリビュータ300と流れ連通して結合するように、単体導管80およびステム83から延びる。詳細には、主燃料流路88、89は、燃料ディストリビュータ300内で画定された主燃料回路に、流れ連通して結合する。同様に、1次パイロット通路82および2次パイロット通路84は、燃料ノズル内に内向きに半径方向に配置された、対応するパイロット噴射器(たとえば、図4に示した品目163、164を参照)と流れ連通して結合する。導管80およびディストリビュータリング171は単体導管(すなわち、単体構造を有する)として本明細書に上記しているが、当該技術分野で知られている方法を使用して他の適切な製造構造物を有する導管80を使用することが可能であることは、当業者には明白であろう。単体ディストリビュータリング171は、ろう付けなどの従来の接続手段を使用してステム83に接続される。あるいは、単体ディストリビュータリング171およびステム83は、たとえば、本明細書に記載の、直接レーザ金属焼結などの、ラピッドマニュファクチャリング法により製造されてよい。
【0019】
図4は、図1、2および3に示した例示的燃料ノズル100の例示的燃料ノズル先端部アセンブリ68の軸方向断面図を示す。例示的ノズル先端部アセンブリ68は、前述のように、供給導管80から燃料流を受け取り、主燃料通路およびパイロット燃料通路などの燃料ノズル先端部68の様々な位置に燃料を分配する、ディストリビュータ300を含む。図3および4は、燃料を燃料ノズル先端部アセンブリ68に分配する、2つの主燃料通路304、305および2つのパイロット流路102、104を有する、本発明の例示的実施形態を示す。
【0020】
図4に示した例示的ディストリビュータ300は、本明細書に記載の主流路およびパイロット流路を含む、ディストリビュータリング本体171を含む。ディストリビュータ300の主流路304、305は、供給導管80の対応する主流路(たとえば、図3の品目88、89など)と流れ連通している。本明細書に示され、記載の例示的主燃料通路はそれぞれ、供給導管80から、ディストリビュータ軸11の周りに周方向で位置する2つのアーチ形部分304、305に燃料流を輸送する入口部分を含む。
【0021】
用語「単体」は、たとえば、本明細書に記載のベンチュリ500などの関連構成部品が、製造中に一体成型として製造されることを意味するために、本出願では使用される。したがって、単体構成部品は、構成部品に一体式構造を有する。
【0022】
図4は、燃料ノズルアセンブリ100の本発明の例示的実施形態の例示的燃料ノズル先端部68の軸方向断面図を示す。図4に示した例示的燃料ノズル先端部68は、本明細書で1次パイロット流路102および2次パイロット流路104と呼ぶ、2つのパイロット燃料流路を有する。図4を参照すると、1次パイロット流路102からの燃料は、1次パイロット燃料噴射器163を介して燃料ノズルから出て、2次パイロット流路104からの燃料は、2次パイロット燃料噴射器167を介して燃料ノズルから出る。ディストリビュータリング171の1次パイロット流路102は、ステム83(図3を参照)内に収容された供給導管80の対応するパイロット1次通路と流れ連通する。同様に、ディストリビュータリング171の2次パイロット流路104は、ステム83内に収容された供給導管80の対応するパイロット2次通路と流れ連通する。
【0023】
前記のように、ガスタービンエンジンで使用される燃料ノズルのように、燃料ノズルは高温に曝される。このような高温への暴露は、場合によっては、たとえば、出口通路164のように、燃料通路で燃料コークス化および閉塞をもたらす。ディストリビュータリング171内の燃料コークス化および/または閉塞を緩和する1つの方法は、図4に示した品目102、104、105などの通路を悪熱環境から保護するために、熱シールドを使用することである。図3に示した例示的実施形態では、燃料導管102、104、105は、隙間116と、これらの導管を少なくとも部分的に囲む熱シールドによって保護される。隙間116は、悪熱環境からの絶縁を提供することで、燃料通路に保護を提供する。示した例示的実施形態では、絶縁用隙間116は、約0.015インチと0.025インチの間の厚さを有する。本明細書に記載の熱シールドのような、熱シールドは、たとえば、一般にガスタービンエンジンで使用されるコバルト基合金およびニッケル基合金のような、高温に耐える能力を備えた任意の適正な材料で製造することができる。図4に示した例示的実施形態では、ディストリビュータリング171は、ディストリビュータリング171、流路102、104、105、燃料出口165、熱シールド、および隙間116が、本明細書に記載のようなDMSLプロセスを使用して製造された一体式構造を有するように形成される、単体構造を有する。
【0024】
図4は、本発明の例示的実施形態による例示的燃料ノズルアセンブリ100内で組み立てられた単体スワーラ200を示す。例示的スワーラ200は、スワーラ軸11(あるいは、ノズル先端部軸11と呼ぶ)の周りに周方向で延在するハブ205を有する本体201を含む。ハブ205から延びる1列のベーン208は、スワーラ軸11の周りに、ハブ205上に円周方向に配列される。各ベーン208は、ハブ205近くに半径方向に位置する翼根部210と、ハブ205から外向きに半径方向に位置する翼端部220とを有する。各ベーン208は、翼根部210と翼端部220の間に延在する、前縁212および後縁214を有する。ベーン208は、たとえば、前縁212と後縁214の間で、エーロフォイル形などの適正な形状を有する。隣接したベーンは、スワーラ200に入る、図4に品目190として示したCDP空気などの、通過空気のための流路を形成する。ベーン208は、スワーラ200に入る流入空気190に、動作の回転要素を与えるために、スワーラ軸11に対して半径方向および軸方向に傾斜させることができる。これらの傾斜したスワーラベーン208は、燃料ノズル先端部アセンブリ68内で概してらせん状に空気190を旋回させる。スワーラ200の一態様では、ベーン208は、スワーラハブ領域で空気の滑らかな流れを促進するために、翼根部210とハブ205の間に延在する隅肉を有する。本明細書の図4および18に示した例示的実施形態では、ベーン208はカンチレバータイプの支持部を有し、ベーンは、ベーン翼端部220が本質的に自由な状態で、翼根部210でハブ205上に構造的に支持される。いくつかの代替のスワーラ設計では、ベーン208の少なくともいくつかに対して、その先端部領域220で、追加の構造的支持を提供することも可能である。スワーラ200の別の態様では、陥凹部222がベーン228の翼端部220に設けられる。燃料ノズル100の組み立て中に、陥凹部222は、たとえば、図4および18に示すように、燃料ノズル100を軸方向に配向させるように、燃料ノズル100の隣接する構成部品と係合する。
【0025】
図4および18に示した例示的スワーラ200は、ベーン208の円周列から軸方向に後ろに位置するアダプタ250を含む。アダプタ250は、たとえば、ターボファンエンジン10(図1参照)の圧縮器排出から出てくるCDP空気流などの、空気流190を導くための流路254を形成する、アーチ形壁256(図4参照)を含む。流入空気190は、アダプタ250の通路254に入り、スワーラ200のベーン208の列に向けて軸方向に前方へ流れる。本発明の一態様では、スワーラ本体201の一部分203は、ハブ205から軸方向に後ろに延び、アダプタ250の一部分を形成する。図6に示した例示的実施形態では、軸方向に後ろに延びる本体201の部分203は、アダプタ250のアーチ形壁256の一部を形成する。アダプタ250もまた、図4に示したように、燃料ノズル先端部アセンブリ68のような、アセンブリにスワーラ200を搭載する手段としての役目をする。図4に示した例示的実施形態では、アダプタ250は、たとえば、図2に示した燃料ノズルステム83などの、アダプタ250を別の構造に接続するのに使用される、ろう付け材料253(図13参照)を受け取るために、アーチ形の溝252を含む。図4および13で明瞭に見ることができるように、アーチ形壁256の溝252は、従来の機械加工方法を使用して形成するのは困難である、複雑な3次元形状を有する。本発明の一態様では、図4および13に示したように、複雑な3次元形状を有するアーチ形壁256の溝252は、以降に本明細書に記載の製造方法を使用して、単体構造を有するように一体的に形成される。
【0026】
図4、11および18に示した例示的スワーラ200は、スワーラ軸11と同軸であり、ハブ205から外向きに半径方向に位置する、環状リム240を含む。図4、11、および18に見られるように、リム240は、燃料ノズル100の隣接する構成部品と係合し、スワーラ200内で空気190を流すために流路の一部を形成する。空気流190は、軸方向で前方方向に、スワーラ200の後部分に入り、ハブ205およびリム240によってベーン208に向かって導かれる。図4に示した例示的実施形態では、圧縮器排出からのような空気流190は、アダプタ250の通路254に入る。図4および11で最もよく分かるように、アダプタ250のアーチ形壁256の軸方向前方端部は、リム240および本体201に一体的に接続される。好ましい実施形態では、アダプタ250、リム240、本体201、ハブ205、およびベーン208は、本明細書に記載の製造方法を使用した単体構造を有する。あるいは、アダプタ250は、個別に製造され、従来の接続手段を使用して、リム240および本体201に接続されてもよい。
【0027】
図4を参照すると、壁260は、リム240の一部と、本体201のハブ205の一部との間に延在する。壁260は、リム240と、スワーラのハブ205の間の構造的支持部の少なくとも一部を提供する。壁260はまた、アダプタ250の通路254からスワーラの前方部分に行く空気190が、軸方向で逆方向には流れず、流れ190がベーン208に向かって軸方向前方に進ませ続けることを、確実にする。図4および12に示した例示的実施形態では、壁260の前方面262は、スワーラ軸11に垂直な面に関して、実質的に平面である。空気が滑らかに流れるのを促進するために、壁260の縁部は、鋭い縁部で突然流れが分離するのを避けるために、滑らかに成形される。
【0028】
圧縮器および燃料ノズル領域に入る圧縮器排出空気190(図3および4参照)は、800°Fを超える温度を有し、非常に熱いことは、燃焼器および燃料ノズルの用途では一般的である。このような高温は、たとえば、燃料流路102、104、スワーラ200、およびベンチュリ500などの燃料ノズル100の内部構成部品のいくつかに、コークス化、または他の熱により引き起こされる損傷を引き起こす場合がある。空気190の高温はまた、たとえば、燃料噴射器163とディストリビュータリング本体171(図4参照)の間の内部ろう接継手を脆弱にさせる場合がある。本発明の一態様では、絶縁用隙間216は、燃料ノズル100内および、1次燃料噴射器163または2次燃料噴射器167などの内部構成部品内で流れる空気からの熱の移動を低減するように、スワーラ200の本体201内に設けられる。図4の品目116および216などの絶縁用隙間は、エンジン作動中の燃料ノズルアセンブリのろう接継手での温度を下げる助けをする。絶縁用隙間216は、図4に示すように環状であってよい。知られている熱伝達分析に基づく他の適正な形態が使用されてもよい。図4に示した例示的実施形態では、絶縁用隙間は、スワーラ本体201内で少なくとも部分的に延びる環状であり、約0.015インチと0.025インチの間の半径方向の隙間幅を有する。本発明の一態様では、絶縁用隙間216は、以降に本明細書に記載の製造方法を使用して、単体構造を有するように、スワーラ本体201と一体的に形成されてよい。本明細書に記載したろう付け溝のように、一体的に形成したろう付け溝は、複雑な輪郭を有してよく、容易な組み立てを促進するために、図13に示す品目253、353のような予め形成したろう付けリングを、取り付けできるようにしてよい。
【0029】
図4を参照すれば、アダプタ通路254から入る空気流190は、ベーン208に入るとき、円周方向に均一ではないことは当業者には明白である。この不均一性は、壁260が存在することでさらに強くなる。従来のスワーラでは、流れのこのような不均一性は、燃料と空気の混合の不均一性を引き起こし、不均一な燃焼温度につながる場合がある。燃料ノズル100の本発明の一態様では、円周方向に不均一な流入の悪影響は、円周方向に隣接したベーンの形状とは異なる形状を備えたスワーラベーン208を有することで、最小化することができる。特別設計のスワーラベーン208の形状は、知られている流体流動分析技術に基づいて、ハブ205のそれぞれの円周位置に合わせて選択できる。様々な円周位置に位置するベーン208に合わせて様々な形状を有するスワーラが、単体構造を有することができ、本明細書に記載の製造方法を使用して製造することができる。
【0030】
図4は、本発明の例示的実施形態による例示的ベンチュリ500の軸方向断面図を示す。例示的ベンチュリ500は、空気の一部と燃料が混合される混合用空洞550を形成するスワーラ軸11の周りの環状ベンチュリ壁502を含む。環状ベンチュリ壁は、軸方向および円周方向に任意の適正な形を有することができる。軸方向に前方方向へ混合気が膨張する余裕を持たせる、たとえば図4に示したような円錐形が望ましい。図4および16に示した例示的ベンチュリ500は、軸方向前方端部501を有する軸方向前方部分509と、軸方向後方端部519を有する軸方向後方部分511とを有する。軸方向前方部分509は全体として円筒状の外形を有し、環状ベンチュリ壁502は全体としてスワーラ軸11の周りで環状である。ベンチュリ壁502は、ノズル先端部アセンブリ68の組み立て中にろう付け材料を受け取ることができる半径方向外側に位置する少なくとも1つの溝504を有する。図4および16に示した例示的実施形態では、軸方向前方端部501近くに1つの溝564と、軸方向前方端部501と軸方向後方端部519の間の中間位置近くに別の溝504の、2つの環状溝504、564が示してある。溝504は従来の機械加工方法を使用して形成してよい。あるいは、溝504は、たとえば、以降に本明細書に記載のように、単体ベンチュリ500を製造する方法を使用して、ベンチュリ壁502を形成するとき、一体的に形成してよい。本発明の別の態様では、ベンチュリ500は、ベンチュリ壁502の軸方向に後方端部519に位置するリップ518(あるいは本明細書ではドリップリップ518と呼ぶ)を含む。ドリップリップ518は、ベンチュリ壁502の内側表面503に沿って流れる液体燃料粒子が、壁502から離れ、軸方向に後方へ流れ続けるような形状(図16参照)を有する。したがって、ドリップリップ518は、出口でベンチュリ壁に沿って半径方向外側に燃料が流れるのを防ぐ役割をする。
【0031】
図4および16に示すように、ベンチュリ500の例示的実施形態は、環状のベンチュリ壁502から半径方向内向きに位置し、スワーラ軸11の周りでベンチュリ壁と同軸に位置する、環状のスプリッタ壁532を有する環状のスプリッタ530を含む。スプリッタ530の半径方向外側表面533およびベンチュリ壁502の半径方向内側表面503は、環状の旋回空気通路534を形成する。スプリッタ壁532の前方部分は、燃料ノズル先端部アセンブリ68を組み立て中に、たとえば、図4で品目208として示した隣接する構成部品とベンチュリ500を結びつける助けをする、陥凹部535(図16参照)を有する。スプリッタ530は、スプリッタ空洞560(図16参照)を有し、空気190の一部は、パイロット出口162、164(図4参照)から排出した燃料と混合する。
【0032】
図4および16に示したベンチュリ500の例示的実施形態は、スワーラ510を含む。スワーラ510はベンチュリ500の軸方向前方部分509に位置しているように図5で示してあるが、本発明の他の代替実施形態では、ベンチュリ500内の他の軸位置に位置してよい。スワーラ510は、ベンチュリ壁502と環状スプリッタ530の間に半径方向内向きに延びる複数のベーン508を含む。複数のベーン508は、スワーラ軸11の周りに円周方向に配列される。
【0033】
図4および16を参照すると、図に示したスワーラ510の例示的実施形態では、各ベーン508は、スプリッタ530近くに半径方向に位置する翼根部520と、ベンチュリ壁502近くに半径方向に位置する翼端部521とを有する。各ベーン508は、翼根部520と翼端部521の間に延在する、前縁512および後縁514を有する。ベーン508は、たとえば、前縁512と後縁514の間で、エーロフォイル形のような適正な形状を有する。円周上に隣接するベーン508は、スワーラ510に入る、図4に品目190として示したCDP空気のような、通過空気のための流路を形成する。ベーン508は、スワーラ510に入る流入空気190に、動作の回転要素を与えるために、スワーラ軸11に対して半径方向および軸方向に傾斜させることができる。これらの傾斜したベーン508は、ベンチュリ500内で概してらせん状に空気190を旋回させる。本発明の一態様では、ベーン508は、ベーン508の翼根部520とスプリッタ壁532の間に延在する隅肉526を有する。隅肉526は、スワーラ内、および旋回空気通路534で空気が滑らかに流れるのを助ける。隅肉526は、スワーラで空気が滑らかに流れるのを促進するように設計された、滑らかな輪郭形状527を有する。特定のベーン508の輪郭形状および方向は、流体流動分析の知られている方法を使用して設計される。適正な隅肉の輪郭を有する隅肉526に類似した隅肉が、ベーン508の翼端部521とベンチュリ壁502の間で使用されてもよい。図4および16に示したベンチュリ500の例示的実施形態では、ベーン508は、翼根部520および翼端部521の両方の近くで支持される。いくつかのベンチュリの代替設計では、カンチレバータイプの支持部を有するベーンを含むスワーラを有することも可能であり、ベーンは構造的に1端部のみで支持され、他端部は本質的に自由である。ベンチュリ500は、たとえばCoCr、HS188、N2、およびN5などの、ニッケルまたはコバルト基超合金などの、高温環境で作動できる、知られている材料で製造してよい。
【0034】
ベンチュリ500は、ベンチュリおよび燃料ノズル先端部アセンブリ68(図3参照)内の他の構成部品を、燃料ノズル100内の混合気の点火からの炎と熱から保護するために、熱シールド540を含む。図4および16に示した例示的熱シールド540は、スワーラ軸11の周りで環状形状を有し、ベンチュリ500の軸方向に後方端部519の近くで、スワーラ510から軸方向に後方に位置する。熱シールド540は、スワーラ軸11から半径方向外向きの方向に延びる環状壁542を有する。環状壁542は、ベンチュリ500および燃料ノズル100内の他の構成部品を、2500°Fから4000°Fの範囲の温度を有する、混合気の点火からの炎と熱から保護する。熱シールド540は、高温に耐えることができる適正な材料で製造される。たとえば、CoCr、HS188、N2、およびN5などの材料が使用できる。本明細書に示した例示的実施形態では、熱シールド540はCoCr材料で製造され、0.030インチと0.060インチの間の厚さを有する。本発明の他の実施形態では、熱シールド540が、ベンチュリ壁502またはスワーラ510などの、ベンチュリの他の部分と異なる材料で製造されることも可能である。
【0035】
図4および16に示した例示的ベンチュリ500は、その作動温度を下げるために熱シールド540の冷却を強化する特定の設計特徴を有する。例示的ベンチュリ500は、ベンチュリ壁502と熱シールド540の間に延在する少なくとも1つのスロット544を含む。図4および16に示した、ベンチュリ500の好ましい例示的実施形態は、ベンチュリ壁502と熱シールド540の間に延在する複数のスロット544を含み、スロット544は、スワーラ軸11の周りに周方向で配列される。スロット544は、燃料導管とベンチュリ壁502(図4参照)の間の空洞を通って流れる冷却用空気のための出口通路を提供する。各スロット544の軸方向に配向した部分に入る冷却用空気は、スロット544の半径方向に配向した部分で方向を変え、熱シールドの環状壁542の側へ全体的に半径方向にスロット544から出る。本発明の別の態様では、例示的ベンチュリ500は、熱シールド540上に位置し、スワーラ軸11の周りの熱シールド壁542の軸方向に前方側に周方向で配列された、複数の隆起部546を含む。これらの隆起部546は、追加の熱伝達領域を提供し、熱シールド540から、熱シールドに向けた冷却用空気への熱伝達を増加させ、それによって、熱シールド540の作動温度を下げる。図4に示した例示的実施形態では、隆起部546は、4つの円周列に配列され、各列は100から120個の間の隆起部を有する。
【0036】
図4および16を参照すれば、場合によっては、ベンチュリ500のスワーラ510に入る空気流190の一部は、ベーン508の間の通路に入るとき、円周方向に均一でない場合があることは、当業者には明白である。この不均一性は、たとえば壁260(図4参照)のような他の特徴が存在すると、さらに強化される。従来のベンチュリでは、流れのこのような不均一性は、ベンチュリ内で燃料と空気を混合する際の不均一性を引き起こし、不均一な燃焼温度につながる。本発明の一態様では、周方向で不均一に流入する悪影響は、周方向で隣接するベーンの形状と異なる形状を備えるいくつかのスワーラベーン508を含むスワーラ510を有することで、最小化することができる。特別設計のスワーラベーン508の形状は、知られている流体流動分析技術に基づき、各円周位置に対して選択することができる。様々な円周位置に位置するベーン508に合わせて様々な形状を備えたスワーラを有するベンチュリ500が、単体構造を有することができ、本明細書に記載の製造方法を使用して製造することができる。
【0037】
図1?4および図18に示した燃料ノズル100の例示的実施形態では、燃料ノズル100は環状センタボディ450を含む。センタボディ450は、図2、3、4、および18で示したような燃料ノズル100の組み立て状態で、ディストリビュータ300の前方部分を囲み、空気流のための環状通路462を形成する、環状外壁461を含む。燃料ノズル100を冷却する供給空気流は、センタボディ外壁461とディストリビュータ300の間の空気流通路412に入り、ディストリビュータ300、センタボディ450、ならびに燃料オリフィスおよび燃料ポスト165の冷却を助けて、燃料ポスト165を過ぎて流れる。外壁461は、燃料ポスト165の円周列のオリフィスに対応して、円周方向に配列した複数の開口部463を有する。燃料ポスト165から排出した燃料は、開口部463を介して燃料ノズル100から出る。例示的燃料ノズル100では、スカーフ452、454は、燃料パージ増加のために、図2に示すように、センタボディ450の壁461の外側の主燃料噴射位置の開口部463の近くに設けられる。主燃料流が遮断されるモード中に主回路が活発にパージするように、スカーフは上流側(454)または下流側(452)に存在する。図4および18に示すように、いくつかの実施形態では、外壁461の内径と燃料ポスト165の外側端部との間に小さい隙間464を有することは可能である。図4および18に示した例示的実施形態では、この隙間は約0.000インチから約0.010インチの間に及ぶ。
【0038】
図4および18に示した例示的実施形態では、センタボディ壁461は、開口部456の1つまたは複数の円周列を介して燃料ノズル100に入る供給空気流の一部が通過する、多数孔の冷却システムにより冷却される。センタボディの多数孔の冷却システムは、典型的には1から4列の開口部456を使用してよい。開口部456は実質的に一定の直径を有してよい。あるいは、開口部456は、様々な断面領域を有する拡散開口部であってもよい。図2、4、および18に示した例示的実施形態では、センタボディ450は、開口部456の3つの円周列を有し、各列は60から80個の開口を有し、各開口は約0.020インチと0.030インチの間の様々な直径を有する。図2、4、および8に示すように、開口部456は、センタボディ外壁461内で軸方向、半径方向および正接方向の複雑な配向を有することができる。センタボディ壁461の円周方向に配列した冷却孔457の追加列は、ベンチュリ500の熱シールド540のような、燃料ノズル100の他の部分に向けて、冷却空気流を方向付けるように設けられる。図2、4、および18に示す例示的実施形態では、燃料ノズル100はベンチュリ540の1端部に位置する環状熱シールド540を含む。熱シールド540は、燃料ノズル100の構成部品を、燃焼器内での燃焼中にもたらされる炎から遮蔽する。熱シールド540は、熱シールド540に影響を与えるように冷却空気を方向付ける、図4および18に示すような軸配向を有する1つまたは複数の円周列の孔部457により冷却される。本明細書に記載の例示的燃料ノズル100では、孔部457は典型的には、50から70個の間の孔を有する円周列に配列した少なくとも0.020インチの直径を有し、好ましい孔の寸法は、約0.026インチから約0.030インチの間である。センタボディ450は、たとえばCoCr、HS188、N2、およびN5などの、ニッケルまたはコバルト基超合金などの、高温環境で作動できる、知られている材料で製造してよい。センタボディ450の冷却孔456、457、開口部463、およびスカーフ452、454は、知られている製造方法を使用して製造してよい。あるいは、センタボディのこれらの特徴は、好ましくは図5に示し、本明細書に記載のDMLS方法などの、本明細書に記載の単体構成部品の製造方法を使用して一体的に製造できる。本発明の別の実施形態では、図4および18に示した品目540に類似した熱シールドは、DMLS方法を使用して、単体構造を有するようにセンタボディ450と一体的に製造してよい。本発明の別の実施形態では、センタボディ450、ベンチュリ500、および図4および18に示した品目540に類似した熱シールドは、DMLS方法を使用して、単体構造を有するように一体的に製造してよい。
【0039】
本明細書に記載の燃料ノズル100の例示的実施形態は、たとえば、単体導管80/ディストリビュータ300、単体スワーラ200、単体ベンチュリ500および単体センタボディ450などの、単体構成部品を含む。燃料ノズル100で使用するこのような単体構成部品は、直接金属レーザ焼結(DMLS)、レーザネットシェープ製造(LNSM)、電子ビーム焼結および他の製造で知られているプロセスなどの、ラピッドマニュファクチャリングプロセスを使用して製造できる。DMLSは、たとえば、本明細書に記載の、単体導管80/ディストリビュータ300、単体スワーラ200、単体ベンチュリ500および単体センタボディ450などの、燃料ノズル100で使用する単体構成部品を製造する好ましい方法である。
【0040】
図5は、たとえば、図2乃至18で品目80、200、300、450および500として示し、本明細書に記載のような、燃料ノズル100用の単体構成部品を製作する方法700の例示的実施形態を説明する流れ図である。製作方法700は、例として単体構成部品80、200、300、450および500を使用して以下に記載するが、同じ方法、ステップ、手順などは、これらの構成部品の代替の例示的実施形態に適用される。方法700には、直接金属レーザ焼結(DMLS)を使用して単体構成部品80、200、300、450、500を製作することが含まれる。DMLSは、構成部品の3次元情報、たとえば、3次元コンピュータモデルを使用して金属構成部品を製作する、知られている製造プロセスである。3次元情報は複数のスライスに転換され、各スライスはスライスの所定の高さの構成部品の断面を定義する。次に、構成部品は、完了するまで、スライスごとに、または層ごとに、「ビルドアップ」される。構成部品の各層は、レーザを使用して金属粉末を溶解することで形成される。
【0041】
したがって、方法700には、燃料ノズル100の特定の単体構成部品80、200、300、450、500の3次元情報を確定するステップ705と、各スライスが単体構成部品の断面層を画定する複数のスライスに3次元情報を転換するステップ710とが含まれる。次に、単体構成部品80、200、300、450、500は、DMLSを使用して製作され、またはより詳細には、各層が、レーザエネルギーを使用して金属粉末を溶解することによりステップ715で引き続き形成される。各層は約0.0005インチと約0.001インチの間の寸法を有する。単体構成部品80、200、300、450、500は、任意の適正なレーザ焼結機械を使用して製作してよい。適正なレーザ焼結機械の例には、限定はされないが、ミシガン州NoviのEOS of North America、Inc.から入手可能なEOSINT.RTM.M 270 DMLSマシン、PHENIX PM250マシン、および/またはEOSINT.RTM.M 250 Xtended DMLSマシンが含まれる。単体構成部品80、200、300、450、500を製作するのに使用する金属粉末は、好ましくはコバルトクロムを含む粉末であるが、限定はされないが、HS188およびINCO625などの、他の任意の適正な金属粉末であってよい。金属粉末は、約10ミクロンと74ミクロンの間の粒径を有することができるが、好ましくは約15ミクロンと約30ミクロンの間である。
【0042】
燃料ノズル100の単体構成部品80、200、300、450、500を製造する方法は、好ましい方法としてDMLSを使用すると本明細書には記載しているが、積層造形法または付加製造法を使用する任意の他の適正なラピッドマニュファクチャリング法も使用できることは、当業者には理解されよう。これら代替のラピッドマニュファクチャリング法には、限定はされないが、選択的レーザ焼結(SLS)、インクジェットおよびレーサジェットによるなどの3D印刷、ステレオリトグラフィ(SLS)、直接選択的レーザ焼結(DSLS)、電子ビーム焼結(EBS)、電子ビーム溶解(EBM)、レーザ技術ネットシェープ法(LENS)、レーザネットシェープ製造(LNSM)および直接金属蒸着(DMD)が含まれる。
【0043】
本発明の別の態様は、前に本明細書に記載のように複雑な幾何学的特徴を有する単体構成部品を有する燃料ノズル100の簡単な組み立て方法を含む。本明細書に記載のように燃料ノズル100の単体構成部品を使用することで、従来のノズルより、数の少ない構成部品および数の少ない継手を有する燃料ノズル100の組み立てが可能になった。たとえば、本明細書に示した燃料ノズル100の例示的実施形態では、燃料ノズル先端部68は、7つのろう接継手と1つの溶接継手のみを含むが、一方、ある知られている従来ノズルは、22のろう接継手と3つの溶接継手を有する。
【0044】
本発明による例示的組み立て方法800が図6に示され、ステップが以下詳細に記載される。図6に示した例示的組み立て方法800は、前に本明細書に記載した例示的燃料ノズル100を組み立てるのに使用できる。図6に示した例示的組み立て方法800では、組み立てプロセスは、より数の少ない構成部品および継手を使用し、従来の方法より簡単である。
【0045】
例示的燃料ノズル100を組み立てるために以下に記載の様々なステップのために図6を参照すれば、ステップ851では、予め形成したろう付けワイヤ602が、図7に示すように、1次燃料スワーラ603のろう付け溝601に挿入される。ろう付けワイヤ材料は、AMS4786(金ニッケル合金)などの、知られているろう付け材料であり得る。図7では、例示的ろう付けワイヤ602は、円形断面を有する。ろう付けワイヤ602のための他の適正な断面形状、およびろう付け溝601のための対応する形状が使用できる。
【0046】
ステップ852では、1次燃料スワーラ603が、図8に示すように1次オリフィス606に圧入される。
【0047】
ステップ853では、1次燃料スワーラ603および1次オリフィス606が、図8に示すように、一緒にろう付けされ、1次パイロットアセンブリ607を形成する。ろう付けは知られている方法を使用して実施される。1840°Fと1960°Fの間のろう付け温度が使用できる。1950°Fの温度でのろう付けが望ましい。
【0048】
ステップ854では、1次パイロットアセンブリ607が、図9に示すように、アダプタ250および内側スワーラ200に挿入される。
【0049】
ステップ855では、燃料流量確認が実施され、パイロット燃料流回路の燃料流量パターンを確認する。1次パイロット流回路608および2次パイロット流回路609を示す、例示的配列が図9に示してある。たとえば、図9に品目604として示したような、当該技術分野で知られている適正な試験装置が、流量確認ステップ855で使用されてよい。たとえば、図9に示したOリング616を使用するような、知られている封止方法が、随意の流量確認ステップ855で燃料漏れを防ぐために使用されてよい。流量確認が完了した後、1次パイロットアセンブリ607が、試験装置604ならびにアダプタ250および内側スワーラ200から取り外される。
【0050】
随意のステップ856では、たとえば図10に示すように、1次パイロットアセンブリ607のろう接継手の非破壊検査が実施される。知られている技術を使用するX線検査が、ろう接継手の検査には望ましい。知られているX線源611からのX線610が使用できる。
【0051】
ステップ857では、予め形成したろう付けワイヤが、ディストリビュータ300の燃料回路パイロット領域のろう付け溝に挿入される。図11は、1次パイロット流路102を囲む壁の周りのパイロット供給チューブ154の例示的ろう付け溝612を示す。図11に示した例示的ディストリビュータ300もまた、2次パイロット流路104と、2次パイロット流路104を囲む壁の周りに形成されるろう付け溝614とを含む。前に本明細書に記載したように、ろう付け溝612および614は、DMLSなどの製造技術を使用して単体ディストリビュータ300内に形成してよい。あるいは、これらろう付け溝は、機械加工または他の知られている技術を使用して形成してよい。ろう付けワイヤ613、615は、AMS4786(金ニッケル合金)などの、知られているろう付け材料で製造することができる。図11では、例示的ろう付けワイヤ613および615は、円形断面を有する。ろう付けワイヤ613、615のための他の適正な断面形状、およびろう付け溝612、614のための対応する形状が、代替として使用できる。例示的ステップ857では、図11に示したように、ろう付けワイヤ613はろう付け溝612に挿入され、ろう付けワイヤ615はろう付け溝614に挿入される。
【0052】
図11に例示したステップ858では、1次パイロットアセンブリ607が、ディストリビュータ300の1次パイロット供給チューブ154の1次燃料回路部分に挿入される。
【0053】
図11および12に例示した、ステップ859では、内側スワーラ/アダプタ200がステップ858からのアセンブリの上に挿入され、そのため、1次パイロットアセンブリ607およびろう付けワイヤ615は内側スワーラ/アダプタ200の内側に適合する。図12はこのステップの後の組み立てた状態を示す。
【0054】
ステップ860では、予め形成したろう付けワイヤ253が、図13に示したように、アダプタ/内側スワーラ200の壁256に位置する溝252に挿入される。予め形成されたろう付けワイヤ353は、図13に示したように、ディストリビュータ300の壁に位置する溝352に挿入される。前に本明細書に記載したように、アダプタのろう付け溝252は、単体アダプタ/スワーラ200内に形成されてよく、ろう付け溝352は、DMLSなどの製造技術を使用して単体ディストリビュータ300内に形成されてよい。あるいは、これらのろう付け溝は、機械加工または他の知られている技術を使用して形成してよい。ろう付けワイヤ253、353は、AMS4786(金ニッケル合金)などの、知られているろう付け材料で製造される。図13では、例示的ろう付けワイヤ253および353は円形断面を有する。ろう付けワイヤ253、353のための他の適正な断面形状、およびろう付け溝252、352のための対応する形状が、代替として使用できる。
【0055】
ステップ861では、1次パイロットアセンブリ607、アダプタ/スワーラ200、および上記のようにその対応する溝内にろう付けワイヤ613、615、253、353を有するディストリビュータ300のアセンブリは、ステム83に挿入され、図14に示したように配置される。
【0056】
ステップ862では、図14に示したステップ861からのアセンブリがろう付けされる。ろう付けは知られている方法を使用して実施される。1800°Fと1860°Fの間のろう付け温度が使用できる。1850°Fの温度でのろう付けが望ましい。
【0057】
随意のステップ863では、ステップ862(図14参照)で形成したろう接継手の非破壊試験が実施される。知られている技術を使用するX線検査が、ろう接継手の検査には望ましい。
【0058】
ステップ864では、センタボディ450(あるいは本明細書では外部ケーシングと呼ぶ)が、ろう付け後、ステップ862からのアセンブリの上に挿入される。センタボディ450は、センタボディ450のタブ451をディストリビュータの後方端部に位置する切欠き320と位置合わせさせることで、ディストリビュータ300に関して周方向で位置させる(図13参照)。外部ケーシングを周方向で位置させる他の知られている方法を、代替として使用してよい。
【0059】
ステップ865では、外部ケーシング450は、図15に示した、ステップ864から得たアセンブリに溶接される。知られている溶接方法が、この目的のために使用できる。望ましい溶接方法は、HS188溶接ワイヤを使用する、TIG溶接である。外部ケーシング450とステム83の間で得られる溶接部460が図15に示されている。
【0060】
図16を参照すると、ステップ866では、ベンチュリ500の、予め形成されたろう付けワイヤ505は溝504に挿入され、予め形成されたろう付けワイヤ565は、溝564に挿入される。本明細書に前に記載したように、ベンチュリの溝504、564は、DMLSなどの製造技術を使用して、単体ベンチュリ500内に形成してよい。あるいは、これらのろう付け溝は、機械加工または他の知られている技術を使用して形成してよい。ろう付けワイヤ505、565は、AMS4786(金ニッケル合金)などの、知られているろう付け材料で製造されてよい。図16では、例示的ろう付けワイヤ505および565は円形断面を有する。ろう付けワイヤ505、565のための他の適正な断面形状、およびろう付け溝504、564のための対応する形状が、代替として使用できる。
【0061】
図17を参照すると、随意のステップ867では、予め形成されたろう付けワイヤ91、93、95、97が、導管80の燃料回路入口またはバルブハウジング99の周りの対応する溝92、94、96、98に挿入される。ろう付けワイヤ91、93、95、97は、AMS4786(金ニッケル合金)などの、知られているろう付け材料で製造されてよい。円形断面形状が、ろう付けワイヤ91、93、95、97には望ましい。しかし、他の適正な断面形状を、代替として使用してよい。
【0062】
随意のステップ868では、ステップ867からのアセンブリが、図17に示したバルブハウジング99に挿入される。
【0063】
ステップ869では、図18に示したアセンブリがろう付けされる。もし随意のステップ868が選択されたら、図17に示したアセンブリもろう付けされる。ろう付けは知られている技術を使用して実施される。1800°Fと1860°Fの間のろう付け温度が使用できる。1850°Fの温度でのろう付けが望ましい。
【0064】
随意のステップ870では、ステップ869で形成されたろう接継手(図17および18参照)の非破壊試験が実施される。知られている技術を使用するX線検査が、ろう接継手の検査には望ましい。
【0065】
タービンエンジン(図1乃至4参照)の燃料ノズル100および組み立て方法800(図6参照)は、知られている燃料ノズルより少ない構成部品および継手を含む。詳細には、上記の燃料ノズル100は、たとえば、単体導管80/ディストリビュータ300、単体スワーラ200および単体ベンチュリ500などの一体型単体構成部品を使用するために、より少ない構成部品を必要とする。結果として、記載の燃料ノズル100は、知られている燃料ノズルに対する、より軽い、より安価な代替を提供する。さらに、燃料ノズル100の構成部品の少なくともいくつかと、組み立て方法800のための記載した単体構造は、知られている燃料ノズルと比較して、漏れまたは故障の機会は少なくなり、より容易に修理可能である。
本明細書で使用されるときは、数詞が付いていない要素またはステップは、複数を除外することが明確に説明されていない限り、複数の前記要素またはステップを除外しないと理解されるべきである。燃料ノズル100の要素/構成部品/ステップおよび本明細書に記載および/または例示したその構成部品を導入するとき、数詞が付いていない用語は、1つまたは複数の要素/構成部品/などがあることを意味することを意図する。用語含む」および「有する」は包括的であり、列挙した要素(1つまたは複数)/構成部品(1つまたは複数)/など以外に追加の要素(1つまたは複数)/構成部品(1つまたは複数)/などがあり得ることを意味することを意図する。さらに、本明細書の「一実施形態」に言及することは、列挙した特徴も組み込む追加の実施形態が存在することを除外すると解釈されることは意図していない。
【0066】
本明細書に記載の、製造方法700および組み立て方法800などの方法、ならびに、単体導管80/ディストリビュータ300、単体スワーラ200、単体ベンチュリ500および単体センタボディ450などの物品は、タービンエンジンの燃料ノズル内で液体燃料を空気と混合するために空気を旋回させることとの関連において記載し、本明細書に記載の、単体構成部品ならびにその製造方法およびその組み立て方法は、燃料ノズルまたはタービンエンジンに限定されるものではないことは理解されたい。図面に例示した、製造方法700、組み立て方法800、燃料ノズルおよびその構成部品は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、これらは本明細書に記載の他の構成部品とは独立しておよび分離して利用することができるものとする。
【0067】
本書は、最良の形態を含み、本発明を開示するために、また当業者が本発明を製造および使用できるようにするために、例示を使用するものである。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲により定義され、当業者が気が付く他の例示も含まれる場合がある。このような他の例示は、その例示が本特許請求の文言上の用語と異ならない構造要素を有する場合、またはその例示が本特許請求の範囲の文言上の用語とごくわずかな差異を伴う等価の構造要素を含む場合は、本特許請求の範囲内にあることを意図するものである。
【符号の説明】
【0068】
10 ガスタービンエンジン
11 ディストリビュータ軸
12 軸方向縦中心線軸
14 コアガスタービンエンジン
16 ファンセクション
18 外側ケーシング
20 入口
22 ブースタ
24 圧縮器
26 燃焼器
28 タービン
30 ドライブシャフト
32 タービン
34 ドライブシャフト
36 排気ノズル
38 ファンロータ
40 ファンケーシング
42 ガイドベーン
44 ファンロータブレード
46 下流区分
48 導管
50 空気流
52 入口
54、56、58 空気流
60 燃焼生成物/燃焼ガス
62 燃焼室
64 入口
66 出口
68 燃焼ノズル先端部
69 出口
72 ノズル
74 ノズルベーン
77 隙間
80 導管
81 フランジ
82、84 パイロット燃料流路
83 ステムハウジング
85、86 主燃料流路
87 導管本体
88、89 主燃料流路
91、93、95、97 ろう付けワイヤ
92、94、96、98 ろう付け溝
99 バルブハウジング
100 燃料ノズル
102、104、105 流路
116 隙間
126 主通路入口
154 パイロット供給チューブ
162、164 パイロット出口
163 噴射器
165 燃料出口/燃料ポスト
167 パイロット燃料噴射器
171 ディストリビュータリング本体
180 燃料ディストリビュータ先端部
190 CDP空気流
200 スワーラ
201 スワーラ本体
203 スワーラ本体の一部
205 ハブ
208 ベーン
210 ベーン翼根部
212 前縁
214 後縁
216 絶縁用隙間
220 ベーン翼端部
222 陥凹部
240 リム
250 アダプタ
252 アーチ形の溝
253 ろう付けワイヤ
254 アダプタ通路
256 アーチ形壁
260 壁
262 前方面
300 ディストリビュータ
304、305 主燃料通路
320 切欠き
352 ろう付け溝
353 ろう付けワイヤ
412 空気流通路
450 センタボディ/外部ケーシング
451 タブ
452、454 スカーフ
456 開口部
457 孔部
460 溶接
461 外壁
462 通路
463 開口部
464 隙間
500 ベンチュリ
501 軸方向前方端部
502 ベンチュリ壁
503 内側表面
504 ろう付け溝
505 ろう付けワイヤ
508 スワーラベーン
509 軸方向前方部分
510 スワーラ
511 軸方向後方部分
512 前縁
514 後縁
518 リップ/ドリップリップ
519 軸方向後方端部
520 翼根部
521 翼端部
526 隅肉
527 輪郭
530 スプリッタ
532 スプリッタ壁
533 外側表面
534 旋回空気通路
535 陥凹部
540 熱シールド
542 熱シールド壁
544 スロット
546 隆起部
550 混合用空洞
564 ろう付け溝
565 ろう付け材料/ろう付けワイヤ
601 ろう付け溝
602 ろう付けワイヤ
603 1次燃料スワーラ
604 試験装置
606 オリフィス
607 パイロットアセンブリ
608、609 パイロット流回路
610 X線
611 X線源
612、614 ろう付け溝
613 ろう付けワイヤ
615 ろう付けワイヤ
616 Oリング
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)であって、
流体である燃料を流すことができる供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有するディストリビュータ(300)と、
前記ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置し、空気流を前記燃料ノズル内で旋回させることができる単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための一次燃料スワーラ(603)と、
前記一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置するベンチュリ(500)であって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成するベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置するセンタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)が、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)と、をさらに含み、付加製造法を使用して製造された
ことを特徴とする、
燃料ノズル(100)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記供給導管(80)が、本体(87)内に位置する複数の通路(84、85)を含む、請求項1記載の燃料ノズル(100)。
【請求項4】
前記供給導管(80)が、複数のサブ通路(88、89)に枝分かれする、本体内に位置する通路(86)を含む、請求項1又は3に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項5】
前記ディストリビュータ(300)は、前記ディストリビュータリングと、前記ディストリビュータリング内に位置し、燃料を燃料ノズルの複数の位置に分配することができる少なくとも1つの通路とを有する、請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項6】
前記ディストリビュータが、燃料を前記単体ディストリビュータ内に流すことができる導管を含む、請求項1、3、4又は5のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項7】
前記ディストリビュータが、前記ディストリビュータリングに少なくとも部分的に位置する、主燃料流路およびパイロット燃料流路を含む、請求項5に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項8】
少なくとも2つのパイロット燃料流路を含む、請求項5記載の燃料ノズル(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの通路(102)の周りに絶縁用隙間(116)をさらに含む、請求項5記載の燃料ノズル(100)。
【請求項10】
前記単体スワーラが、前記単体スワーラを前記燃料ノズルの別の構成部品に連結するのを容易にするアダプタをさらに含む、請求項1、3乃至9のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項11】
前記アダプタが、ろう付け材料を受け取ることができるアーチ形の溝を含むアーチ形壁を備える、請求項10記載の燃料ノズル(100)。
【請求項12】
前記単体スワーラが、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに円周方向で配列された複数のベーンをさらに含む、請求項1、3乃至11のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
前記単体スワーラが絶縁用隙間(216)をさらに含む、請求項1、3乃至12のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項15】
前記単体スワーラが、前記単体スワーラの別のベーンとは異なる形状を有する少なくとも1つのベーンをさらに含む請求項1、3乃至12、14のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記ベンチュリが、環状のベンチュリ壁(502)と、該ベンチュリ壁から半径方向内向きに位置し前記ディストリビュータ軸(11)の周りで該ベンチュリ壁と同軸の環状スプリッタ(530)と、該ベンチュリ壁(502)及び該環状スプリッタ(530)の間に位置する複数のベーン(508)とをさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項18】
前記ベンチュリが後方端部近くに位置する熱シールドをさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15、17のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項19】
前記熱シールドが複数の冷却スロットをさらに含む、請求項18記載の燃料ノズル(100)。
【請求項20】
前記ベンチュリが、ろう付け材料を受け取ることができる少なくとも1つの溝をさらに含む、請求項1、3乃至12、14、15、17乃至19のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項21】
前記センタボディ(450)が、環状壁(461)を有する、請求項1、3乃至12、14、15、17乃至20のいずれか1項に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項22】
前記センタボディ(450)が、円周方向に配列された前記環状壁(461)の複数の冷却孔をさらに含む、請求項21に記載の燃料ノズル(100)。
【請求項23】
ガスタービンエンジン燃料ノズル(100)において、
流体である燃料を流すことができる単体供給導管(80)と、
ディストリビュータ軸(11)の周りの少なくとも一部を囲うディストリビュータリング(171)を有する単体ディストリビュータ(300)と、
前記単体ディストリビュータ(300)から半径方向内側に同軸で位置する単体スワーラ(200)と、
前記単体スワーラ(200)から半径方向内側に同軸で位置するパイロット燃料のための単体一次燃料スワーラ(603)と、
前記単体一次燃料スワーラ(603)と同軸に位置する単体ベンチュリであって、前記燃料ノズル内で前記燃料と空気(190)を混合するために環状の空洞を形成する単体ベンチュリ(500)と、
前記ディストリビュータリングの少なくとも一部を囲み、前記ディストリビュータリングと同軸に位置する、単体センタボディ(450)と
を含み、
前記単体スワーラ(200)は、前記ディストリビュータ軸(11)の周りに周方向で延在する本体(201)と、前記ディストリビュータ軸(11)と同軸であり且つ前記本体(201)から半径方向外側に位置し、前記単体スワーラ(200)内で前記空気(190)を流すための流路の一部を形成するリム(240)と、前記リム(240)と前記本体(201)との間で半径方向に延在する壁(260)とをさらに含み、
前記単体供給導管(80)、前記単体ディストリビュータ(300)、前記単体スワーラ(200)、前記単体一次燃料スワーラ(603)、前記単体ベンチュリ及び前記単体センタボディのそれぞれが、一体型として単体に形成されている
ことを特徴とする、燃料ノズル(100)。
【請求項24】
前記燃料ノズルの後方端部に位置する熱シールドをさらに含む、請求項23記載の燃料ノズル。
【請求項25】
前記熱シールドが前記単体ベンチュリの一部を形成する、請求項24記載の燃料ノズル。
【請求項26】
前記熱シールドが前記単体センタボディの一部を形成する、請求項24記載の燃料ノズル。
【請求項27】
前記環状壁(461)は該環状壁(461)に開口部(456)の周方向列を1つ以上有し、
前記開口部は前記環状壁で周方向に配置されている、請求項21に記載の燃料ノズル。
【請求項28】
前記開口部(456)は、前記環状壁(461)に、前記センタボディに対し軸方向、半径方向および正接方向の少なくとも1から選ばれた配向を有する、請求項27に記載の燃料ノズル。
【請求項29】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-27 
出願番号 特願2011-504059(P2011-504059)
審決分類 P 1 651・ 54- YAA (F02C)
P 1 651・ 121- YAA (F02C)
P 1 651・ 536- YAA (F02C)
P 1 651・ 537- YAA (F02C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 金澤 俊郎
松下 聡
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5726066号(P5726066)
権利者 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
発明の名称 燃料ノズル  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  

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