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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1322964
審判番号 不服2015-22273  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-17 
確定日 2016-12-12 
事件の表示 特願2010-159814「ショットキバリアダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 23199〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年7月14日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 7月 1日 審査請求
平成26年 5月16日 拒絶理由通知
平成26年 7月15日 意見書・手続補正
平成26年12月 4日 拒絶理由通知(最後)
平成27年 2月 9日 意見書・手続補正
平成27年 9月11日 補正却下・拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成27年12月17日 審判請求・手続補正

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年12月17日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項2は本件補正後の請求項1へ補正された。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,特許請求の範囲の請求項2及び同請求項が引用する請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタルとを含む,ショットキバリアダイオード。
【請求項2】
前記メサ部が,0.2μm?1.0μmの幅を有している,請求項1に記載のショットキバリアダイオード。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。(当審注。補正個所に下線を付した。下記(3)も同じ。)
「【請求項1】
表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間に前記トレンチよりも幅の小さいメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタルとを含み,
前記メサ部が,0.2μm?1.0μmの幅を有している,ショットキバリアダイオード。」
(3)本件補正事項
本件補正は,補正前請求項2の「メサ部」について「前記トレンチよりも幅の小さい」という限定を付加して,補正後請求項1とする補正(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。
2 補正の適否
本願の願書に最初に添付した明細書の段落0042,0044及び図7B及び図7Dの記載からみて,本件補正事項は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,本件補正事項は前記1(3)のとおり,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,更に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間に前記トレンチよりも幅の小さいメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタルとを含み,
前記メサ部が,0.2μm?1.0μmの幅を有している,ショットキバリアダイオード。」
(2)引用文献1の記載と引用発明1
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-318956号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(当審注。下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明はショットキーダイオードを有する半導体装置に関し,より特定的には,逆方向のリーク電流を増加させることなく定常損失を低減できるショットキーダイオードを有する半導体装置に関する。」
(イ)「【0040】
(実施の形態3)
図5は,本発明の実施の形態3におけるショットキーダイオードを有する半導体装置の構成を示す図である。図5を参照して,実施の形態3にかかるショットキーダイオード20は,実施の形態1と比較して,第2の半導体層4が複数の離れた領域4aからなり,ショットキー金属層5が第2の半導体層4と第2の半導体層4が形成されていない第1の半導体層3との双方にショットキー接触されている点において異なる。
【0041】
具体的には,第1の半導体層3は,基板2の上に形成されている。第2の半導体層4は,第1の半導体層3の表面に領域4aを複数形成されている。領域4aは凸状である。領域4aはたとえば1μmの幅W1と,1μmの厚みT1とを有している。また凹部が形成された領域における第1の半導体層3の厚みT2は5.0μmであり,領域4aが形成された領域における第1の半導体層3の厚みT3は5.1μmである。また,第1の半導体層3は,たとえば不純物として窒素が5×10^(15)cm^(-3)の濃度で導入されたn^(-)炭化珪素よりなっている。第2の半導体層4は,たとえば不純物として窒素が1×10^(17)cm^(-3)の濃度で導入されたn炭化珪素よりなっている。ショットキー金属層5は,第2の半導体層4の領域4aおよび第2の半導体層4の領域4aが積層されていない第1の半導体層3との双方にショットキー接触されており,その材質にはたとえばTiが用いられている。オーミック金属層6は,基板2の裏面にオーミック接触されており,その材質にはたとえばTiあるいはNiが用いられている。
・・・
【0044】
本実施の形態によれば,順方向バイアス時には,電流が表面積と電流密度とに比例することを考慮すると,第1の半導体層3は表面に凸状の領域4aを設けて表面積を増加させているので,電流量が増加する。そのため,同じ電圧を印加する場合には,抵抗が小さくなるので,定常損失を低減することができる。一方,逆方向バイアス時には,第1の半導体層3の不純物濃度が低いため,ショットキー金属層5と第1の半導体層3との界面に生じる広い空乏層7の存在により,逆方向のリーク電流の発生が抑制される。
【0045】
このように,本実施の形態によれば,表面に凹凸を有する第2の半導体層4を設けて,ショットキー接触させる表面積を増加させることにより,逆方向バイアス時のリーク電流を増加させることなく,順方向バイアス時の定常損失を低減することができる。」
(ウ)「【0050】
(実施の形態5)
図7は,本発明の実施の形態5におけるショットキーダイオードを有する半導体装置の構成を示す断面図である。図7を参照して,実施の形態5にかかるショットキーダイオード40の構成は,実施の形態3と比較して,凹部底面に第2の半導体層4を有しており,ショットキー金属層5が,凸状の領域4aおよび凹部底面において第2の半導体層4とショットキー接触している点において異なる。
【0051】
また,図7を参照して,実施の形態5にかかるショットキーダイオード40の構成は,実施の形態1と比較して,第2の半導体層4の表面に領域4aを有しており,ショットキー金属層5が,凸状の領域4aおよび凹部底面において第2の半導体層4とショットキー接触している点において異なる。
【0052】
具体的には,実施の形態5にかかるショットキーダイオード40は,第2の半導体層4の表面に凹凸を有し,ショットキー金属層5が,第2の半導体層4内に形成された凹凸の凹部および凸部との双方にショットキー接触されている。第1の半導体層3の厚みT4は,たとえば4.9μmである。第2の半導体層4の厚みT5は,たとえば0.1μmである。第2の半導体層4の領域4aの厚みT6は,たとえば1μmである。
【0053】
次に,ショットキーダイオード40の動作方法について説明する。まず,ショットキーダイオード40に順方向バイアスを印加する際には,アノード電極となるショットキー金属層5に相対的に正の電圧が印加され,カソード電極となるオーミック金属層6に相対的に負の電圧が印加される。これにより,アノード電極からカソード電極に電流が流れる。【0054】
次に,ショットキーダイオード40に逆方向バイアスを印加する際には,アノード電極となるショットキー金属層5に相対的に負の電圧が印加され,カソード電極となるオーミック金属層6に相対的に正の電圧が印加される。この逆方向バイアス時には,図8に示すように,ショットキー金属層5と第2の半導体層4との界面で生じる空乏層7は,第1の半導体層3に達する。空乏層7は,第1の半導体層3に達すると,第1の半導体層3の厚み方向に容易に大きく延びる。よって,電流の流れが遮断される。
【0055】
本実施の形態によれば,順方向バイアス時には,第2の半導体層4は不純物濃度が高いのでショットキー金属層5と第2の半導体層4との界面を電流は流れやすい。また,第2の半導体層4の領域4aは表面積が大きいので,領域4aを設けていない場合に比べて電流が多く流れる。よって,順方向バイアス時における定常損失を下げることが可能となる。一方,逆方向バイアス時には,第2の半導体層4の厚みが薄いので,空乏層7が容易に第2の半導体層4を突き抜け,空乏層7は第1の半導体層3内を容易に広がる。よって,広い空乏層7の存在により,逆方向のリーク電流の発生が抑制される。
【0056】
このように,本実施の形態によれば,厚みが薄く,不純物濃度が高い第2の半導体層4を設けて,空乏層7の広がりを制御することにより,逆方向バイアス時のリーク電流を増加させることなく,第2の半導体層4の表面に凹凸を設けて,ショットキー金属層5と第2の半導体層4との接触面積を増加させることにより,順方向バイアス時の定常損失を低減することができる。」
(エ)図7には,第2の半導体層4の表面に複数の凹部が形成され,隣接する凹部の間に凸部が形成されること,ショットキー金属層5が凹部の内壁面を含む第2の半導体層の表面に接するように形成されること,が記載されていると認められる。
イ 引用発明1
前記アより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「半導体層の表面に複数の凹部が形成され,隣接する凹部の間に凸部が形成され,ショットキー金属層が凹部の内壁面を含む半導体層の表面に接するように形成された,ショットキーダイオード。」
(3)引用文献2の記載と引用発明2
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2000-022177号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:以下SBDと称す)に関し,詳しくは,同一面積でより大きな電流容量を得ることができるSBD素子を得るものである。」
(イ)「【0008】図1は本発明によるSBD素子を示す断面図である。N+型のシリコン半導体基板11の上に気相成長法によってN-型のエピタキシャル層12を形成し,エピタキシャル層12の表面を被覆するシリコン酸化膜13に開口部14を形成し,開口部14の周端近傍のエピタキシャル層12表面に環状のP+型ガードリング領域15を形成し,開口部14に露出したエピタキシャル層12の表面にバリア金属層16として例えばチタン(Ti)層を形成し,バリア層16を覆うようにアルミ電極17を形成したものである。
【0009】そして,開口部14に露出するエピタキシャル層12表面には,複数の段差18を設けている。この段差18は,選択酸化法で形成したLOCOS酸化膜を除去した後のシリコン段差であり,表面から0.5?1.0μ程度凹んでいる。他に異方性エッチングによってシリコン表面を削ることにより形成した段差でも良い。段差18は開口部14の内部に多数個設けており,島状,ストライプ状等のパターンで描画している。そして,バリア金属層16はエピタキシャル層12の平坦面のみならず,段差18の側壁及び底部にも被着してシリコンとのショットキー障壁を形成している。
【0010】係る構成であれば,段差18の側壁の分だけシリコンとバリア金属層16との接触面積を増大できるので,ショットキー障壁の面積を実質的に増大することができる。上記の例では,開口部14(ガードリング領域15の部分を含めない)の面積に対して,段差18によって接触面積を約20%増大することができた。従って,単位面積あたりの順方向電流IFの値を増大でき,素子の電流容量を増大できる。このことは,チップ面積を拡大する事に等しいので,ある順方向電流IFを流したときの順方向電圧VFを小さくできることを意味し,しかもチップ面積の増大がない。」
(ウ)「【0016】図3(A)を参照して,段差18を形成した開口部14にスパッタ堆積法により膜厚300?2000ÅのTi層を堆積し,堆積したTi層を周知のホトエッチング法によってパタニーングして,バリア金属層16を形成する。
【0017】図3(B)を参照して,再度スパッタ堆積法により膜厚1.0?3.0μのアルミニウム層を堆積し,ホトエッチングによってバリア金属層16を覆い且つ外部接続用のパッドを構成するアルミ層17を形成して図1の構成を得る。」
(エ)図1には,アルミ電極17が段差18内に埋め込まれていることが記載されている。
イ 引用発明2
前記アより,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ショットキーバリアダイオードにおいて,バリア金属層は段差の側壁及び底部にも被覆してショットキー障壁を形成し,バリア層を覆うようにアルミ電極を形成し,アルミ電極は段差内に埋め込まれていること。」
(4)本願補正発明と引用発明1との対比
引用発明1の「凹部」及び「凸部」は,それぞれ本願補正発明の「トレンチ」及び「メサ部」に相当すると認められる。
引用発明1の「半導体層」は,「表面に複数の凹部が形成され,隣接する凹部の間に凸部が形成され」るものであり,半導体層の表面の凹部は,エッチングや選択酸化等により表面から掘り下げて形成されることは技術常識である(前記(3)ア(イ)【0009】)から,下記相違点を除いて,本願補正発明の「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層」に相当すると認められる。
引用発明1の「ショットキー金属層」は,「凹部の内壁面を含む半導体層の表面に接するように形成され」ているから,本願補正発明の「前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタル」に相当すると認められる。
引用発明1の「ショットキーダイオード」は,下記相違点を除いて,本願補正発明の「ショットキバリアダイオード」に相当すると認められる。
すると,本願補正発明と引用発明1とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
を含む,ショットキバリアダイオード。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明の「メサ部」は「前記トレンチよりも幅の小さい」ものであるのに対し,引用発明1の「凸部」は凹部よりも幅が小さいか不明である点。
(イ)相違点2
本願補正発明は「各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタル」を含むのに対し,引用発明1は「コンタクトメタル」を含まない点。
(ウ)相違点3
本願補正発明は「前記メサ部が,0.2μm?1.0μmの幅を有している」のに対し,引用発明1においては「凸部」の幅について明示されていない点。
(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明1において半導体層の表面に凹部が形成され,ショットキー金属層が凹部の内壁面に接するように形成されていることから,これを具体的に形成するにあたり,まず凹部を形成し残った部分が凸部となり,その凹部に入り込むようにショットキー金属層を形成しなくてはならないことは当業者に自明であり,すると凹部の形成しやすさや金属層の入り込みやすさを考慮して凹部の幅を広くする方向の設計は当業者が容易に想到することである。そして,引用発明1においては半導体層の凹凸によりショットキー金属層と半導体層との接触面積を増加させるものである(前記(2)ア(ウ)【0056】)から,接触面積を確保するためには,凹部の幅を広くする一方で凸部の幅を狭めなくてはならないことも当業者に自明であり,してみると引用発明1において凸部を凹部よりも幅が小さいものとすることは,当業者が容易に設計できることである。
さらに,メサ部をトレンチよりも幅の小さいものとすること自体は,本願明細書【0042】に記載されているように,「トレンチのピッチが一定のままトレンチの幅だけを大きくし」「幅があまり大きいと,逆方向バイアスのリーク電流が多くなるおそれがある」ものも含むものであり,格別の効果がないものであるから,当業者が適宜なし得る設計変更というべきである。
イ 相違点2について
引用発明2において「ショットキーバリアダイオードにおいて,バリア層を覆うようにアルミ電極を形成し,アルミ電極は段差内に埋め込まれていること。」が開示されており,電極の電気抵抗を低減することは当業者に周知の課題であるから,引用発明1において前記課題を解決するために,引用発明2の「アルミ電極」を採用して,相違点2に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることである。
ウ 相違点3について
引用文献1には「実施の形態3に係るショットキーダイオード」において「凸状領域」を「1μmの幅」とすることが開示されている(前記(2)ア(イ))。そして,引用発明1のショットキーダイオードと「実施の形態3に係るショットキーダイオード」とは,「凹部底面に第2の半導体層4を有」しているか否かで異なる(前記(2)ア(ウ)【0050】)ので,その余の点である凸状領域の幅については特段異ならしめる理由はなく,引用発明1のショットキーダイオードにおいてもその凸部の幅を1μmの幅とすることは,引用文献1の前記記載を総合すれば当業者が読み取れるというべきである。
してみると,引用発明1は本願補正発明の「前記メサ部が,0.2μm?1.0μmの幅を有している」を満たすものであり,相違点3は実質的な相違点ではない。
(6)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果は,引用発明1及び2の構成から当業者が予測できる程度のもので,格別なものではない。
(7)まとめ
本願補正発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の特許性の有無について
1 本願発明について
平成27年12月17日にされた手続補正は前記第2のとおり却下された。
そして,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年7月15日付け手続補正による補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。
「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタルとを含む,ショットキバリアダイオード。」
2 引用発明1及び2
(1)引用発明1
引用発明1は前記第2の2(2)のとおりである。
(2)引用発明2
引用発明2は前記第2の2(3)のとおりである。
3 本願発明と引用発明1との対比
引用発明1の「凹部」及び「凸部」は,それぞれ本願発明の「トレンチ」及び「メサ部」に相当すると認められる。
引用発明1の「半導体層」は,「表面に複数の凹部が形成され,隣接する凹部の間に凸部が形成され」るものであり,半導体層の表面の凹部は,エッチングや選択酸化等により表面から掘り下げて形成されることは技術常識である(前記第2の2(3)ア(イ)【0009】)から,本願発明の「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層」に相当すると認められる。
引用発明1の「ショットキー金属層」は,「凹部の内壁面を含む半導体層の表面に接するように形成され」ているから,本願発明の「前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタル」に相当すると認められる。
引用発明1の「ショットキーダイオード」は,下記相違点を除いて,本願発明の「ショットキバリアダイオード」に相当すると認められる。
すると,本願発明と引用発明1とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「表面から掘り下げた複数のトレンチが形成され,隣接するトレンチの間にメサ部が形成された半導体層と,
前記トレンチの内壁面を含む前記半導体層の表面に接するように形成されたショットキメタルと,
を含む,ショットキバリアダイオード。」
イ 相違点
本願発明は「各トレンチの内壁面を覆っている前記ショットキメタルに接するように各トレンチに埋め込まれたコンタクトメタル」を含むのに対し,引用発明1は「コンタクトメタル」を含まない点。
4 相違点についての検討
引用発明2において「ショットキーバリアダイオードにおいて,バリア層を覆うようにアルミ電極を形成し,アルミ電極は段差内に埋め込まれていること。」が開示されており,電極の電気抵抗を低減することは当業者に周知の課題であるから,引用発明1において前記課題を解決するために,引用発明2の「アルミ電極」を採用して,相違点に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることである。
5 本願発明の効果について
本願発明の効果は,引用発明1及び2の構成から当業者が予測できる程度のもので,格別なものではない。
6 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 結言
したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-07 
結審通知日 2016-10-13 
審決日 2016-10-25 
出願番号 特願2010-159814(P2010-159814)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 ショットキバリアダイオード  
代理人 田村 太知  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 京村 順二  
代理人 川崎 実夫  

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