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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1323071
審判番号 不服2016-4757  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-01 
確定日 2016-12-22 
事件の表示 特願2013-265059「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開、特開2014- 95912〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年1月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年1月6日、米国)を国際出願日とする出願である特願2006-549400号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成24年12月21日に新たな特許出願とした特願2012-279272号の一部を、平成25年12月24日に新たな特許出願としたものであって、平成26年1月21日付けで手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成27年5月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年7月23日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年12月25日付けで平成27年7月23日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、平成28年4月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、平成28年6月8日付けで前置報告がなされた。


第2 平成28年4月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年4月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の、平成26年12月24日付けの手続補正(なお、平成27年7月23日付けの手続補正は、上述のとおり、補正の却下の決定がなされている。)により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項14である、
「 【請求項1】
表示装置であって、
元の映像から予備歪曲映像を生成する予備歪曲系と、
前記予備歪曲映像の予備歪曲を実質的に相殺するように歪ませ、スクリーンに前記元の映像に対応する実質的に非歪曲映像を投影させる投影系と、
を備え、
前記予備歪曲系の光軸と、前記投影系の光軸とは、同軸であり、
前記投影系の光軸は前記スクリーンに略垂直であり、
前記投影系は、前記投影系からの光が前記投影系の光軸に対して一方の側に急角度で、前記非歪曲映像をスクリーンに投影されるように構成されていることを特徴とする表示装置。」
「 【請求項14】
前記投影系の画角が100°を超えることを特徴とする請求項1?13のいずれか一項に記載の表示装置。」
から、次のように補正されたものと認める。
「 【請求項1】
表示装置であって、
元の映像から予備歪曲映像を生成する予備歪曲系と、
前記予備歪曲映像を受け、前記予備歪曲映像の予備歪曲を実質的に相殺するように歪ませ、スクリーンに前記元の映像に対応する実質的に非歪曲映像を投影させる、画角が100°を超える投影系と、
を備え、
前記予備歪曲系の光軸と、前記投影系の光軸とは、同軸であり、
前記投影系の光軸は前記スクリーンに略垂直であり、
前記投影系は、前記投影系からの光が前記投影系の光軸に対して一方の側に急角度で、前記非歪曲映像をスクリーンに投影されるように構成されていることを特徴とする表示装置。」
(下線は、補正箇所で、当審が付したものである。)

なお、請求人は、審判請求書の【請求の理由】で、「請求項1については、旧請求項1に旧請求項14の特徴を加えました。」とのみ説明するが、上述のとおり、本件補正前の、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項14に「前記予備歪曲映像を受け、」を追加するものであることは明らかである。(ただし、請求人の「旧請求項」が、補正の却下の決定がなされた平成27年7月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項を意味するのであれば、本件補正後の請求項1は、「旧請求項1」を引用する「旧請求項14」である。)

2 補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を引用する請求項14に「前記予備歪曲映像を受け、」を追加するものであるから、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

3 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(上記「1」で、本件補正後の請求項1として記載した事項)により特定されるものと認められる。

4 引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平5-27345号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、投射型のプロジェクタ,テレビジョン等の投射型表示装置に関し、特に、投射距離を短くして高精細度な画質が得られる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の投射型プロジェクタは、一般に高精細度な画質を得る手法としてR(赤色),G(緑色)及びB(青色)信号それぞれに対応した液晶パネルを有している。そのため、前記液晶パネルからの光学画像は、3色合成光学系により合成されてスクリ-ン上に投射表示される構成となっており、この3色合成光学系を介在させるために、液晶パネルから投影レンズまでの距離が必要となり、投影レンズは長焦点のものが用いられていた。そのために、短距離投射で大画面を得るには困難性があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、まず、前記問題点を解決するために、短焦点距離でこの焦点距離より長いバックフォ-カスを得る方法が考えられる。例えば、これは図4に示されるレトロ・フォ-カスといわれるもので、負レンズ群1と焦点距離fの正レンズ群2とより成り、入来する画像光3を一旦負レンズ群1により光軸4の外方に屈折させ、その後、正レンズ群2に入射させる構成としている。こうすることにより焦点距離fより長いバックフォ-カスを得ている。しかしながら、この構成を採用した場合、投射距離を短くして大画面が得られるものの、各種収差を抑えられず、各々のレンズ群の性能を引き出せず、より一層の高精細度な画質を望むことができないという問題があった。そこで、本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決して投射距離を短くして高精細度な画質を得る装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記問題点を解決するために以下の構成を提供しようというものである。即ち、光源からの読み出し光により、赤色,緑色及び青色の各対応する画像形成部に形成された画像を読み出して3色合成光学系に入射して合成し、この合成された光学画像をレンズ系に入射して表示手段に結像させる投射型表示装置において、前記レンズ系は、前記3色合成光学系より入来する光学画像を結像する第1のレンズ群と、この第1のレンズ群より射出された光束を第3のレンズ群に収束するよう入射させる第2のレンズ群と、前記第1のレンズ群により結像された光学画像を前記表示手段上に結像させる前記第3のレンズ群とが順次配置されて構成され、前記第1乃至第3のレンズ群で構成されるレンズ系の焦点距離が、前記各画像形成部と前記第1のレンズ群との間で形成されるバックフォ-カスより短く形成されて成ることを特徴とする投射型表示装置。
【0005】
【作用】第1乃至第3のレンズ群で構成されるレンズ系の焦点距離を、各画像形成部と前記第1のレンズ群との間で形成されるバックフォ-カスより短く形成し、読み出し光により、前記各画像形成部に形成された画像を読み出して3色合成光学系に入射して合成し、この合成された光学画像を第1のレンズ群により結像し、この第1のレンズ群より射出された光束を第2のレンズ群により第3のレンズ群に収束するよう入射させ、この第3のレンズ群により第1のレンズ群により結像された光学画像を表示手段上に拡大画像として結像させる。
【0006】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の一実施例につき説明する。図1は本発明の投射型表示装置の基本構成を説明するための基本構成図である。同図において、10は赤色画像形成手段、11は緑色画像形成手段、12は青色画像形成手段、13は3色合成光学系、14は第1のレンズ群、15は第2のレンズ群、16は第3のレンズ群、そして、17はスクリ-ンである。
【0007】今、例えば、図示しない光源から読み出し光が図示しない反射鏡、ダイクロイックミラ-等を介して赤、緑、青の各単光色に分離されて、対応する各画像形成手段10,11,12に供給されたとする。これにより各画像形成部10,11,12に形成されている画像が3色合成光学系13に入射されて、ここで、各画像が合成される。この合成された光学画像は、第1のレンズ群14に入射されて、次段の第2のレンズ群15上に結像される。そして、この第2のレンズ群15に結像された画像は、第3のレンズ群16に入射されて、所定倍率の拡大画像としてスクリ-ン17(表示手段)上に投影されることになる。
【0008】ここで、例えば、3色合成光学系13より入射される光学画像を第1のレンズ群14を介して第2のレンズ群15上に等倍の画像として結像した場合を考えると、第1乃至第3のレンズ群全体の焦点距離は、第3のレンズ群16の焦点距離ということになる。また、第1のレンズ群14により第2のレンズ群15上に2倍の画像を結像した場合には、前記全体の焦点距離は第3のレンズ群16の1/2となる。即ち、第1のレンズ群14の結像倍率をm_(1)、第3のレンズ群16の焦点距離をf_(2)、第1乃至第3のレンズ群全体の焦点距離をfとすると、次式が成り立つことになる。
f=f_(2)/m_(1)
【0009】従って、本構成によれば、第1乃至第3のレンズ群全体の焦点距離fを各画像形成手段10,11,12から第1のレンズ群14間で形成されるバックフォ-カスb.f.より短くすることができることになる。この場合、第3のレンズ群16の焦点距離f_(2)を30mm以下とすることも可能であり、全体に短焦点距離のレンズ系とし得、第3のレンズ群16からスクリ-ン19までの距離を短くて拡大画像を得ることができる。」

イ 「【図1】



上記記載事項イの【図1】から、「第1のレンズ群14」、「第2のレンズ群15」及び「第3のレンズ群16」の光軸が同軸であり、「第3のレンズ群16」の光軸が「スクリーン17」に対して垂直である構成が読み取れる。

すると、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「赤色画像形成手段10、緑色画像形成手段11、青色画像形成手段12、3色合成光学系13、第1のレンズ群14、第2のレンズ群15、第3のレンズ群16、そして、スクリ-ン17を備える投射型表示装置であって、
各画像形成部10,11,12に形成されている画像が3色合成光学系13に入射されて、ここで、各画像が合成され、この合成された光学画像は、第1のレンズ群14に入射されて、次段の第2のレンズ群15上に結像され、そして、この第2のレンズ群15に結像された画像は、第3のレンズ群16に入射されて、所定倍率の拡大画像としてスクリ-ン17(表示手段)上に投影され、
第1のレンズ群14、第2のレンズ群15及び第3のレンズ群16の光軸が同軸であり、第3のレンズ群16の光軸がスクリーン17に対して垂直であり、
第3のレンズ群16からスクリ-ン17までの距離が短くて拡大画像を得ることができる投射型表示装置。」

(2)原査定に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第02/21851号(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(日本語訳は、ファミリー文献である特表2004-508779号公報を参考にして、当審が作成した。また、日本語訳における下線は、当審が付したものである。)

ア 「DETAILED DESCRIPTION
Three-dimensional volumetric displays that embody the invention include a projection system that has two fundamental parts: a front-end that supplies and relays the image, and a back-end that delivers the image to the viewer. The front-end is stationary, mounted below the viewing volume and out of sight from the viewer. It receives and processes data and instructions from a computer, and generates the image. The computer is also a user interface. The back-end is mounted on, or coupled to, a platform that sits above the front-end, and rotates with the platform during operation. The back-end delivers the image supplied by the front-end to a screen, which is mounted on and also rotates with the platform.
FIG. 1 shows an embodiment of a volumetric display 100. The volumetric display includes a base plate 110, on which is mounted a projection system 120, front-end projection optics (not shown), system electronics 130, and a frameless DC motor (not shown). Also mounted on base plate 110 is a casing 140, which encloses the abovementioned components mounted on base plate 110, protects them, and hides them from view. A computer connects to system electronics 130 through interface 150.
A circular platform 160 is positioned above projection system 120 and the front-end projection optics. Platform 160 is concentrically mounted on an annular shaft of the frameless DC motor. During operation the motor rotates the shaft and platform 160 about a rotation axis 170. Part of back-end projection optics 180 and a projection screen 190 are mounted on platform 160, and also rotate about axis 170 during operation. A transparent dome 195 encases projection screen 190 and back-end optics 180, slotting into a flange that is mounted on the periphery of platform 160. Dome 195 is also rotated during operation. A second dome (not shown) encases dome 195. The second dome is stationary during operation.
Volumetric display 100 works as follows: a host computer sends image data and commands to display 100 through interface 150. System electronics 130 processes this information into voxel data and stores the processed data in graphics memory until it is needed for display. When needed, system electronics 130 sends the image information to the projection engine, where projection engine 120 converts it to optical information by spatially modulating a beam of light. The light beam leaves the projection engine, and front-end projection optics directs the beam onto axis 170 and toward platform 160. Front-end projection optics include a series of lenses and mirrors that focus the light beam through a projection lens, which is mounted in the annular shaft of the frameless DC motor and a hole in platform 160. A series of mirrors mounted on platform 160 relay the light beam to projection screen 190, where it forms a two- dimensional image.
The motor rotates platform 160, back-end projection optics, and projection screen 190 at at least about 600 rpm. The motor rotates all of these components at the same angular velocity. System electronics and projection engine 120 refresh the two-dimensional image at least about 4,000 times per second. Each two-dimensional image forms an "image slice" of the three- dimensional volume image. At these projection and rotation rates the human visual system perceptually fuses the "image slices" into a volume-filling, three-dimensional image.
The projection system is designed to be highly compact so as to fit within a very limited space within casing 140 and dome 195, while at the same time providing the desired image magnification (i.e., about 20X) and resolution. The projection system is additionally designed to relay the light beam from a stationary source to a moving screen. An embodiment of such an optical projection system is described in detail below.
Referring to FIG. 2A and FIG. 2B, front-end optical components 200 are mounted on base 110 of display 100, underneath platform 160 (see FIG. 1). FIGs. 2A and 2B also show part of projection engine 120 (see FIG. 1). The projection engine includes a lightsource and homogenizing and collimating optics (not shown), which delivers a broadband light beam to a prism assembly 210. Prism assembly 210 splits the light beam into its three primary color components (i.e., red, green, and blue), and directs each component to a spatial light modulator (SLM) 220 (only one shown). The SLMs are micro-electromehcanical systems (MEMS) arrays of switchable micromirrors (e.g., Texas Instruments DMDTMs), capable of producing XGA- resolution (1024 x 768) imagery at a frequency of at least about 4 kHz. Each SLM spatially modulates its respective incident light beam to generate a red, green, or blue component image. These images are recombined inside prism assembly 210 to create a full color image (8 colors), which exits the projection engine at a surface 225.
Projection engine 120 directs the light beam to a telecentric relay lens system 230. Relay lens system includes three doublet lenses 235, 236, and 237. Relay lens system 230 images SLM 220 to an intermediate image about 600 millimeters away from the projection engine. The intermediate image, having 3.8X magnification is formed between two field lenses, 240 and 250, which are also doublet lenses. The function of the field lenses is discussed below.
Relay lens system 230 images the SLMs to an intermediate image to keep the optical path length and image magnification within the constraints provided by the display housing. Imaging the SLM directly to the projection screen would require a much longer optical path length than in the current embodiment. This is due to the large amount of glass in prism assembly 210 between SLM 220 and the optical projection system. Imaging to the projection screen from an intermediate image allows projection optics to be placed close to the intermediate image, and a much shorter optical path is achieved.
Included in front-end optics 200 are three fold mirrors, 260, 270, and 280. These mirrors fold the projection light path to maintain it within the volume provided by the display casing. Mirrors 260, 270, and 280 also direct the beam to mirror 290, which is located on axis 170 and directs the beam out of the plane of base 110 (see FIG. 1) and along rotation axis 170 and onto a projection lens. At the projection lens, rotation axis 170 is coincident with the optical axis of the projection system. Fold mirrors 260 and 270 are manually adjustable during operation, enabling a user to accurately center the image on the projection screen.
Referring to FIG. 3, a projection lens 310 focuses the light beam through an annular shaft 320 of frameless DC motor 330. Projection lens 310, along with mirrors 340, 350, and 360 make up the back-end of the optical projection system. Mirrors 340, 350, and 360 are mounted on platform 160 (see FIG. 1) and fold the path of the light beam, maintaining it within the confines of dome 195 (see FIG. 1). Projection lens 310 directs the light beam to mirror 340, mirror 350 directs the light beam to mirror 360, mirror 350 directs the light beam to mirror 360, and mirror 360 directs the light beam to projection screen 190, forming a magnified image of the SLM in area 370. Image area 370 spans a diameter of about 10 inches, corresponding to about 20X magnification of the image at the SLM. The SLM image is cropped to provide a resolution of 768 x 768 pixels. As mentioned above, during operation, motor 330 rotates the back-end optics (i.e., projection lens 310 and mirrors 340, 350, and 360) about axis 170.
Referring to FIG. 4, projection lens 310 includes a lens triplet assembly: lenses 410, 420, and 430. Lenses 410, 20, and 430 are aligned co-axially along lens axis 440. Lens axis 440 is tilted at an angle 450 of no more than about 10 degrees (e.g., at about 4.94 degrees) with respect to the projection system's optical axis, which is coincident with rotation axis 170 at this point. The light beam enters projection lens 310 through lens 410, and is focused to a waist near lens 420. At the first surface of lens 410, lens axis 440 is displaced from the optical axis by about 5.9 millimeters. Focusing the beam to a waist is necessary to fit the light beam through the aperture provided by motor 330 (see FIG. 3). The light beam exits projection lens 310 through lens 430. The purpose for this design of projection lens is apparent when one examines the unfolded optical path of the projection system.
Referring to FIG. 5, which shows the unfolded optical path, projection screen 190 is at a 45 degree angle with respect to the projection system's optical axis 510. It is for this reason that projection lens 310 is tilted with respect to the optical axis 510. Tilting the projection lens tilts the plane of the image by a predictable amount, given by the so-called Scheimflug condition. This reduces the distortion introduced by projecting an image onto a plane that is non- perpendicular with respect to the optical axis. Tilt angle 450 depends on the angle between the projection screen plane and the optical axis, and both angles are not limited to the values above.
Projection lens 310 introduces aberrations into the image, including negative field curvature, negative axial color, and lateral color. Prism assembly 210 (see FIG. 2) also introduces aberrations into the image. These aberrations are partially compensated for by relay lens 230 and field lenses 240 and 250. Three doublet lenses, 235, 236, and 237, are used in relay lens 230 to minimize the relay lens power to reduce aberrations. Doublets are used to minimize the dispersive effects of each component. A least one doublet is a higher index doublet, which adds axial color and field curvature to compensate for the aberrations introduced by projection lens 310. Field lenses, 240 and 250, also doublet lenses, maintain telecentricity at the intermediate image, which forms at plane 520. The first doublet, lens 240, is located about 30 millimeters in front of intermediate image plane 520, and corrects incident rays to be near- telecentric. Lens 240 also reduces axial color and field curvature. The second doublet, lens 250, is located about 30 millimeters beyond intermediate image plane 520, introduces positive field curvature and axial color, overcompensating for the correction of lens 240. The net contribution to field curvature, and to axial and lateral color introduced by lenses 235, 236, 237, 240, and 250, compensate for the opposite effects introduced by projection lens 310. At projection screen 190 the blue and green images are overlaid, but the red image is axially displaced. The system F- number is established to be slow at the projection screen, so there is a large depth of focus. By design, the field curvature is a tilted plane, rather than a curved surface, due to the compensatory contributions of the projection lens and other lenses to this aberration. The image also has low astigmatism and minimal lateral color. Distortion at the image is straight keystone, the residual pincushion being less than 2 percent. The image quality at the projection screen is sufficient to resolve the 40 pixels per millimeter resolution of the SLMs. This resolution is equivalent to about two pixels per millimeter at the projection screen.
The software predistorts the image to compensate for the keystoning at the image plane. The software also corrects for "image tumbling" by counter-rotating the image data. Image tumbling (i.e., image rotation in the projection screen plane) occurs because the front-end optics present a fixed image onto the rotating projection screen.
Projection screen 190, which is centered on rotation axis 170, is typically formed from a diffusely scattering material. This material scatters incident light substantially isotropically, both in a forward and backward direction. This ensures that a portion of the light corresponding to a pixel in a two-dimensional image slice will be received by a viewer standing in almost any viewing locale around the display, minimizing the dark bands in the three-dimensional image known as "visual dead zones." Designing the projection screen to be as thin as possible can also minimize the visual dead zones.
In the current embodiment, projection screen 190 is semi-circular in shape. In general, embodiments of the invention are not so limited. Projection screen 190 can be any size and shape sufficient on which to form the projected image, so long as they are positioned with minimal offset and eccentricity with respect to the rotation axis.
Also, platform 160 is not limited to the circular platform described above. In general, the platform can be any supporting structure, or combination of supporting structures, sufficient to mechanically couple the back-end optics and projection screen to the motor. In some embodiments, for example, the platform includes a series of radially extending arms for positioning the back-end optics' mirrors appropriately to relay the light beam from the projection lens to the projection screen.
In general, the motor is not limited to frameless DC motor 330. The motor can be any motor coupled to the back-end optics and projection screen, which rotates the back-end optics and projection screen at the desired rate. In some embodiments, for example, the platform is coupled to the motor by belts and/or gears, and the motor is positioned away from the rotation axis.
In some embodiments, an emissive pixelated device can replace the projection engine and lightsource. Examples of such devices include arrays of light emitting diodes, including organic light emitting diodes, or vertical cavity surface-emitting lasers (VCSELs).
A number of embodiments of the invention have been described. Nevertheless, it will be understood that various modifications may be made without departing from the spirit and scope of the invention. For example, the optical components used to relay the image from the projection engine to the projection screen are not limited to those described above. Any combination of lenses, mirrors, diffractive and holographic optical elements, or other light- controlling component may be used for this purpose. Additionally, the image volume, resolution, and gray scale are not limited to the above. Accordingly, other embodiments are within the scope of the following claims.」(第4頁第19行?第9第29行)

(日本語訳)
「詳細な説明
本発明の実施形態となる3次元立体表示装置は、画像を供給且つ中継するフロントエンドと、画像を観察者に表示するバックエンドとの2つの基本的部分を備えた投影システムを含む。フロントエンドは、表示立体の下方に、観察者から見えない位置に静止状態で設置されている。フロントエンドは、コンピュータからデータ及び命令を受け取り且つ処理して、画像を生成する。このコンピュータはユーザインターフェースでもある。バックエンドは、フロントエンドの上方に配置されたプラットフォーム上に取り付けられ(すなわち、連結され)ており、動作時にはプラットフォームと共に回転する。バックエンドは、フロントエンドが供給した画像を画面まで送出する。また、この画面は、プラットフォーム上に取り付けられて、プラットフォームと共に回転する。
図1は、立体表示装置100の実施形態を示す。この立体表示装置は、その上に投影システム120が設置されるベースプレート110と、フロントエンド投影光学素子(図示しない)と、システム電子機器130と、フレームレス直流モータ(図示しない)とを含む。更に、ベースプレート110上には、ベースプレート110上に設置された上述の構成要素を囲み、保護し、且つ視線から覆い隠すケーシング140も設置されている。コンピュータが、インターフェース150を介してシステム電子機器130に接続している。
円形プラットフォーム160が、投影システム120及びフロントエンド投影光学素子の上方に配置してある。プラットフォーム160は、フレームレス直流モータの環状シャフトに同軸で取り付けられている。動作時には、モータが、シャフト及びプラットフォーム160を回転軸170を中心として回転させる。バックエンド投影光学素子180の一部及び投影画面190は、プラットフォーム160上に取り付けられており、動作時には、これらも軸170を中心として回転する。透明なドーム195が、プラットフォーム160の外縁部に取り付けられたフランジ内に嵌合された状態で、投影画面190及びバックエンド光学素子180を覆っている。ドーム195も動作時には回転する。第2ドーム(図示しない)がドーム195を覆っている。動作時には第2ドームは静止している。
立体表示装置100は次のように作動する。ホストコンピュータが、画像データ及びコマンドをインターフェース150を介して表示装置100に送る。システム電子機器130が、この情報をボクセルに変換処理して、表示するため必要となるまでこの処理済みデータをグラフィックメモリに格納しておく。必要となれば、システム電子機器130が、この画像情報を投影エンジンに送り、投影エンジン120がそこで光線を空間的に変調することで、この情報を光学情報に変換する。光線が投影エンジンを出ると、フロントエンド投影光学素子が、その光線を軸170に沿ってプラットフォーム160に方向付ける。フロントエンド投影光学素子には、映写レンズを介してこの光線を集束する一連のレンズ及びミラーが含まれ、この映写レンズは、フレームレス直流モータの環状シャフト内でプラットフォーム160の開口部に取り付けられている。プラットフォーム160上に取り付けられた一連のミラーが、光線を投影画面190まで中継し、この光線が、投影画面上で2次元画像を形成する。
モータが、プラットフォーム160と、バックエンド投影光学素子と、投影画面190とを概ね毎分600回転の速度で回転させる。モータは、これら構成要素全てを同一の角速度で回転させる。システム電子機器及び投影エンジン120はこの2次元画像を、少なくとも概ね毎秒4,000回の割合でリフレッシュする。各2次元画像は、3次元立体画像の「画像スライス」を形成する。この投影及び回転率においては、ヒトの視覚系は、「画像スライス」を立体を充填する3次元立体画像へと知覚的に融合する。
この投影システムは、ケーシング140及びドーム195内の非常に限られたスペースに収容できるように極めてコンパクトに設計されている。これと同時に所望の画像倍率(例えば20倍)と解像度を有する。この投影システムは、上記の光線を静止光源から移動画面へ中継するようにも設計されている。こうした光学投影システムの一実施形態を以下で詳細に説明する。
図2A及び図2Bを参照すると、フロントエンド光学構成要素200が、プラットフォーム160(図1を参照)の下方に、表示装置100のベース110上に取り付けられている。図2A及び2Bには、投影エンジン120(図1を参照)の一部も示されている。投影エンジンは、光源と、広帯域光線をプリズム集成装置210に送出する均質化及びコリメーティング光学素子とを含む。プリズム集成装置210は、光線を3つの原色の成分(すなわち、赤、緑、及び青)に分離し、各成分を空間光変調器(SLM)220(1つのみ図示する)に向ける。これらSLMは、切替え可能なミクロミラー(例えば、テキサスインスツルメンツ社のDMDTM)の微小電気機械システム(MEMS)アレーであり、少なくとも約4kHzの周波数でXGA解像度(1024×786)の画像を生成する能力がある。各SLMは、それぞれの入射光線を空間的に変調して、赤、緑、又は青色成分画像を生成する。これらの画像は、プリズム集成装置210内部で再度組み合わされて、単一のフルカラー像(8色)となり、表面225において投影エンジンから出る。
投影エンジン120は、光線をテレセントリック・リレーレンズ系230に向ける。このリレーレンズ系は、3つのダブレットレンズ235、236、及び237を含む。リレーレンズ系230は、SLM220を投影エンジンから約600ミリメートル離れた位置で中間像に結像する。この中間像は3.8倍の倍率であり、同様にダブレットレンズである2つの視野レンズ240と250との間に形成される。これら視野レンズの機能は以下に説明する。
リレーレンズ系230は、SLMを中間像に結像して、光学距離及び像の倍率を表示装置ハウジングが課す制約内に収まるようにする。SLMを投影画面に直接結像してしまうと、本実施形態よりもかなり長い光学距離が必要となるはずである。これは、SLM220と光学投影システムとの間のプリズム集成装置210に大量のガラスが使用されているからである。中間像から投影画面に結像すると、投影光学素子を中間像に近づけて配置可能で、光学距離も相当短くできる。
フロントエンド光学素子200には、3つ折りミラー260、270、及び280が含まれている。これらミラーは、投影光路を折り曲げて、光路を表示装置ケーシングの立体内部に収容する。また、ミラー260、270、及び280は、光線をミラー290に向けるが、このミラー290は、軸170上に位置しており且つ、光線をベース110(図1を参照)の平面から外部へ、回転軸170に沿って投影レンズまで導く。投影レンズにおいて、回転軸170は、投影システムの光学軸に一致している。折り曲げミラー260及び270は、動作中に手動で調節可能であり、ユーザが画像を投影画面の中心に正確に位置合わせすることができる。
図3を参照すると、投影レンズ310は、フレームレス直流モータ330の環状シャフト320を通して光線を集束させる。投影レンズ310は、ミラー340、350、及び360と共に光学投影システムのバックエンドを構成する。ミラー340、350、及び360は、プラットフォーム160(図1を参照)上に取り付けられており、光線の光路を折り曲げ、光路をドーム195(図1を参照)の内部に収容する。投影レンズ310は光線をミラー340に向け、ミラー350は光線をミラー360に向け、ミラー350は光線をミラー360に向け、更に、ミラー360は光線を投影画面190に向けて、SLMの拡大像を領域370内に形成する。画像領域370は、直径約10インチに亘り、SLMにおける画像の20倍に相当する。SLM像は、768x768ピクセルの解像度となるようにトリミングされる。上述のように、動作時には、モータ330が、バックエンド投影光学素子(すなわち、投影レンズ310、ミラー340、350、及び360)を軸170を中心として回転させる。
図4を参照すると、投影レンズ310は、レンズ410、420、及び430からなるトリプレットレンズ集成装置を含む。レンズ410、420、及び430は、レンズ軸440に沿って同軸に位置合わせしてある。レンズ軸440は、投影システムの光学軸に対して約10度以下(例えば、約4.94度)の角度450で傾いており、この光学軸はこの地点では回転軸170に一致している。光線は、レンズ410を介して投影レンズ310に進入して、レンズ420付近のウエストに焦点を合わせてある。レンズ410の第1表面においては、レンズ軸440は光学軸から約5.9mm変位している。光線がモータ330(図3を参照)の開口部を通過するには、光線をウェストに集束させる必要がある。光線は、レンズ430を介して投影レンズ310から出る。投影レンズをこのように設計する目的は、投影システムの光学通路を展開してみれば明らかとなる。
展開した光学通路を示す図5を参照すると、投影画面190は、投影システムの光学軸510に対して45度の角度をなしている。投影レンズ310を光学軸510に対して傾けているのは、これが理由である。投影レンズを傾けると、画像の平面を予測可能な量(所謂シャインプルーフ条件によって与えられる)だけ傾けることになる。これにより、光学軸に対して直交していない平面への画像の投影が原因となる歪みが減少する。傾斜角450は、投影画面の平面と光学軸との間の角度により決まり、これら2つの角度は上述の角度に限定されない。
投影レンズ310は、画像に、負の像面湾曲、負の軸上色収差及び横色収差などの光学収差をもたらす。プリズム集成装置210(図2を参照)も、画像に収差をもたらす。これらの収差は、リレーレンズ230及び視野レンズ240及び250によって部分的に補償される。3つのダブレットレンズ235、236、及び237をリレーレンズ230に用いて、収差を減少させるためにリレーレンズの倍率を最小限にする。ダブレットを用いるのは、各成分の分散効果を最小限に抑えるためである。少なくとも1つのダブレットは、屈折率が高いダブレットであり、これが軸上色収差及び像面湾曲を増加させて、投影レンズ310がもたらす収差を補償する。視野レンズ240及び250もダブレットレンズであり、平面520に形成される中間像の位置でテレセントリック性を維持する。第1ダブレットレンズ240は、中間像平面520の正面の約30mmに位置していて、入射光線がほぼテレセントリックとなるよう補正する。又、レンズ240は、軸色及び像面湾曲も減少させる。第2ダブレットレンズ250は、中間像平面520を約30mm過ぎた地点に位置していて、正の像面湾曲及び軸上色収差をもたらし、レンズ240の補正を過補償する。レンズ235、236、237、240、及び250がもたらす像面湾曲並びに軸上色収差及び横色収差への正味寄与は、投影レンズ310がもたらす反対の効果を補償する。投影画面190において、青及び緑色の画像は重なるが、赤色の画像は軸方向に変位する。システムFナンバーは投影画面で低くなるように設定されているので、焦点深度は大きい。投影レンズ及び他のレンズの像面湾曲への補償寄与により、この収差は、湾曲表面でなく傾斜平面となるように設計されている。また、画像の非点収差は低く、横色収差も最小限である。画像の歪みは通常の台形歪みで、残余糸巻き型歪みは2パーセント未満である。投影画面での像質は、SLMの1ミリメートル解像度当たり40ピクセルを十分解像できる。この解像度は、投影画面において1ミリメートル当たり約2ピクセルに相当する。
ソフトウェアが、画像を予め歪ませて画像平面における台形像効果を補償する。又、ソフトウェアは、画像データを反対方向へ回転させることで画像の動軸回転表示を補正する。画像の動軸回転表示(すなわち、投影画面平面における像の回転)が起こる理由は、フロントエンド光学素子が、固定した画像を回転する投影画面上に表示するからである。
投影画面190は回転軸170にその中心が位置し、散漫散乱性材料から形成されている。この材料は、入射光を前及び後ろ方向に実質的に等方散乱させる。これにより、2次元画像スライスにおけるピクセルに対応した入射光の一部を、表示装置の周囲のどの観察位置からでも観察者が確実に感知できるようにし、「視覚不感帯」と呼ばれる3次元像の暗帯が最小限に抑えられる。投影画面を可能な限り薄く設計することでも、この視覚不感帯を最小限に抑えることができる。
本実施形態では、投影画面190は半円形状である。一般的には、本発明の実施形態はそれに限定されるわけではない。投影画像が、回転軸に対して最小のオフセット及び偏心率で位置決めされている限りは、投影画面190は、こうした像を形成するのに十分な大きさと形状があればよい。
又、プラットフォーム160は、上述した円形プラットフォームには限定されない。一般的に、このプラットフォームは、モータにバックエンド光学素子及び投影画面を機械的に連結するのに十分であれば、どのような支持構造体であっても、複数の支持構造体を組み合わせたものであってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、このプラットフォームは、光線を投影レンズから投影画面まで適切に中継するためのバックエンド光学素子のミラーを位置決めする半径方向に延伸した一連のアームを含む。
一般的に、モータは、フレームレス直流モータ330に限定されない。このモータは、バックエンド光学素子及び投影画面を所望の速度で回転させる、バックエンド光学素子及び投影画面に連結されたいかなるモータであってもよい。例えば、実施形態によっては、このプラットフォームをベルト及び/又はギヤでモータに連結し、モ?タは回転軸から離間して配置する。
実施形態によっては、放射ピクセル化(原語:emissive pixelated)装置を投影エンジン及び光源の替わりに使用できる。こうした装置の例としては、オーガニック発光ダイオードを含む発光ダイオードのアレイ又は垂直キャビティ面放射レーザー(原語:vertical cavity surface-emitting laser)すなわちVCSELなどがある。
本発明の複数の実施形態を説明してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの修正が可能なことは理解されるであろう。例えば、画像を投影エンジンから投影画面まで中継するのに用いる光学素子は、上述のものに限定されるわけではない。レンズ、ミラー、回折又はホログラフィック光学素子、若しくは、その他の光制御構成要素をこの目的で組み合わせてもよい。更に、画像立体、解像度、及びグレースケールは上述のものに限定されない。従って、これ以外の実施形態も次の請求項の範囲に入る。」

イ 「



すると、上記引用文献2の記載事項から、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されている。

「光源と空間光変調器(SLM)220とプリズム集成装置210を含む投影エンジン120、3つのダブレットレンズ235、236、及び237を含むテレセントリック・リレーレンズ系230、ダブレットレンズである2つの視野レンズ240と250、レンズ410、420、及び430からなるトリプレットレンズ集成装置を含む投影レンズ310及び投影画面190を含む立体表示装置100において、
投影エンジン120は、光線をテレセントリック・リレーレンズ系230に向け、リレーレンズ系230は、2つの視野レンズ240と250との間に、中間像を結像し、投影レンズ310は、SLMの拡大像を投影画面190に投影し、
視野レンズ240及び250は、平面520に形成される中間像の位置でテレセントリック性を維持し、
レンズ235、236、237、240、及び250がもたらす像面湾曲並びに軸上色収差及び横色収差への正味寄与は、投影レンズ310がもたらす反対の効果を補償する。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭63-52585公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

ア 「3.発明の詳細な説明
産業上の利用分野
本発明は画像を投影するビデオプロジェクターに関する。
従来の技術
従来より液晶表示パネルに光を透過させ、スクリーン上に液晶表示パネル上の画像を投影するビデオプロジェクター装置があった。
このような従来のビデオプロジェクター装置は、投写された画像の中心が、レンズの中心軸の延長線上に位置するよう液晶表示パネルや投写レンズを配置していた。
発明が解決しようとする問題点
以上の説明のような従来のビデオプロジェクター装置を用いて、像を投写させる場合スクリーンを投影レンズの中心軸の延長線に対して直角にしなければならないため、低い位置にビデオプロジェクターを置いて高い所にあるスクリーンに投影することができないという問題があった。特にビデオプロジェクターは一般の家庭で用いられることが多く、一般の家庭ではビデオプロジェクターとスクリーンとの距離が短かい状態で使用される場合があり、この場合特にスクリーンを投影レンズの中心軸の延長線に対して直角にしなければ投影された画像が大きく歪むという問題点があった。
問題点を解決するための手段
本発明は以上の問題を解決するため、投写レンズへの入射光の中心をレンズ中心軸とずらせたものである。
作用
本発明は以上の構成により、液晶パネル上の画像をスクリーンに対して、斜め方向に投影しても投写した画像の歪を少なくすることができる。
実施例
第1図は、本発明のビデオプロジェクター装置の一実施例を示す構成図である。
第1図において1はランプ等の光源、2は光を均一にし熱線を吸収するフィルターを有するコンデンサーレンズ群、3は液晶カラー表示パネル、4は投写レンズ、5はスクリーンである。光源1からの光をコンデンサーレンズ群2を通過させて、映像信号により制御され画像が表示された液晶カラー表示パネル3に後面より投光し、液晶カラー表示パネル3を通過した光が投写レンズ4の中心軸から下半分に入射され、投写レンズ4により、液晶カラー表示パネル3上の映像Aを投影する。すると液晶カラー表示パネル3上の映像Aの下端部の映像は投写レンズ4の焦点Bおよび光路Dを通ってスクリーン5に至り、液晶カラー表示パネル3上の映像Aの上端部の映像は投写レンズ4の焦点Bおよび光路Cを通ってスクリーン5に至る。よって、液晶カラー表示パネル3上の映像Aはスクリーン5に対して斜め方向に投写され、拡大された画像Eとなる。
ここで投写レンズ4の半径は液晶カラー表示パネル3の画像表示部分の長さより大きい。投写レンズ4の半径が液晶カラー表示パネル3より大きいため液晶カラー表示パネル3を通過した平行光線はすべて投写レンズ4に入射され明かるい画像がスクリーン5上に結像される。
又、投写レンズ4を入射光に対して上下に移動出来るようにすることにより、投写角度を変化させることができる。
第2図は、本発明のビデオプロジェクター装置の他の実施例を示す構成図である。
第2図において光源とコンデンサーレンズ群は、省略している。6は投写レンズで、破線部分を削除したものである。
この実施例では投写に不必要な部分を削除した投写レンズ6を使用することにより、より安価な投写レンズ6を得ることができ、さらに投写レンズの不要な部分が無い分よりコンパクトにすることができる。
発明の効果
以上述べてきたように本発明によれば、簡単な構成により、スクリーンに対して、斜め方向に投影しても投影された画像が歪むことの少ないビデオプロジェクターを実現できるものである。」

イ 「



上記記載事項イの第1、2図から、「投写レンズ4」の光軸が「スクリーン5」に対して垂直である構成が読み取れる。

すると、上記引用文献3の記載事項から、引用文献3には、以下の技術事項(以下「引用文献3の技術事項」という。)が記載されている。

「ビデオプロジェクターとスクリーンとの距離が短かい状態で使用される場合、スクリーンを投影レンズの中心軸の延長線に対して直角にしなければ投影された画像が大きく歪むという問題点があったところ、
光源1からの光をコンデンサーレンズ群2を通過させて、映像信号により制御され画像が表示された液晶カラー表示パネル3に後面より投光し、液晶カラー表示パネル3を通過した光が投写レンズ4の中心軸から下半分に入射され、投写レンズ4により、液晶カラー表示パネル3上の映像Aを投影すると、液晶カラー表示パネル3上の映像Aはスクリーン5に対して斜め方向に投写され、拡大された画像Eとなるように構成する、
すなわち、投写レンズ4の光軸がスクリーン5に対して垂直である構成であって、投写レンズへの入射光の中心をレンズ中心軸とずらせたものとすることにより、
スクリーンに対して、斜め方向に投影しても投影された画像が歪むことの少ないビデオプロジェクターを実現できる。
又、投写レンズ4を入射光に対して上下に移動出来るようにすることにより、投写角度を変化させることができる。」

5 対比
(1)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「投写型表示装置」、「この合成された光学画像」及び「スクリーン17」は、それぞれ、本願補正発明の「表示装置」、「元の映像」及び「スクリーン」に相当する。

イ 引用発明では、「第1のレンズ群14」が「この合成された光学画像」から中間像である「この第2のレンズ群15に結像された画像」を結像し、「第3のレンズ群16」が「この第2のレンズ群15に結像された画像」を「スクリ-ン17(表示手段)」上に投影するのであり、また、本願補正発明では、「予備歪曲系」が「元の映像」から中間像である「予備歪曲映像」を生成し、「投影系」が「予備歪曲映像」を「スクリーン」に投影するのであるから、引用発明の「第1のレンズ群14」及び「第3のレンズ群16」と、本願補正発明の「予備歪曲系」及び「投影系」は、それぞれ、元の画像を中間像に結像する予備レンズ系、中間像をスクリーンに投影する投影レンズ系である点で一致する。
また、引用発明でも、本願補正発明でも、スクリーンに投影される画像は、元の画像に対応する非歪曲画像であることは、当業者に自明のことである。
すると、引用発明の「第1のレンズ群14、第2のレンズ群15、第3のレンズ群16、そして、スクリ-ン17を備え、」「この合成された光学画像は、第1のレンズ群14に入射されて、次段の第2のレンズ群15上に結像され、そして、この第2のレンズ群15に結像された画像は、第3のレンズ群16に入射されて、所定倍率の拡大画像としてスクリ-ン17(表示手段)上に投影され」る構成と、本願補正発明の「元の映像から予備歪曲映像を生成する予備歪曲系と、前記予備歪曲映像を受け、前記予備歪曲映像の予備歪曲を実質的に相殺するように歪ませ、スクリーンに前記元の映像に対応する実質的に非歪曲映像を投影させる、」「投影系と、を備え」る構成とは、「元の画像を中間像に結像する予備レンズ系と、前記中間像を受け、スクリーンに前記元の画像に対応する実質的に非歪曲画像を投影させる、投影レンズ系と、を備え」る構成で一致する。

ウ 上記「イ」での対比も考慮すると、引用発明の「第1のレンズ群14、第2のレンズ群15及び第3のレンズ群16の光軸が同軸であり、第3のレンズ群16の光軸がスクリーン17に対して垂直であ」る構成と、本願補正発明の「前記予備歪曲系の光軸と、前記投影系の光軸とは、同軸であり、前記投影系の光軸は前記スクリーンに略垂直であ」る構成は、「前記予備レンズ系の光軸と、前記投影レンズ系の光軸とは、同軸であり、前記投影レンズ系の光軸は前記スクリーンに略垂直であ」る構成で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「表示装置であって、
元の画像を中間像に結像する予備レンズ系と、
前記中間像を受け、スクリーンに前記元の画像に対応する実質的に非歪曲画像を投影させる、投影レンズ系と、
を備え、
前記予備レンズ系の光軸と、前記投影レンズ系の光軸とは、同軸であり、
前記投影レンズ系の光軸は前記スクリーンに略垂直である表示装置。」
で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
ア 予備レンズ系及び投影レンズ系について、本願補正発明は、
「元の映像から予備歪曲映像を生成する予備歪曲系」、
「前記予備歪曲映像を受け、前記予備歪曲映像の予備歪曲を実質的に相殺するように歪ませ、スクリーンに前記元の映像に対応する実質的に非歪曲映像を投影させる」「投影系」であって、
「前記予備歪曲系の光軸と、前記投影系の光軸とは、同軸であり、
前記投影系の光軸は前記スクリーンに略垂直であ」るのに対して、引用発明は、
「この合成された光学画像は、第1のレンズ群14に入射されて、次段の第2のレンズ群15上に結像され、そして、この第2のレンズ群15に結像された画像は、第3のレンズ群16に入射されて、所定倍率の拡大画像としてスクリ-ン17(表示手段)上に投影され」るものであり、
「第1のレンズ群14、第2のレンズ群15及び第3のレンズ群16の光軸が同軸であり、第3のレンズ群16の光軸がスクリーン17に対して垂直であ」ると特定される点。

イ 本願補正発明では、「画角が100°を超える投影系」であるのに対して、引用発明では、「第3のレンズ群16からスクリ-ン17までの距離が短くて拡大画像を得ることができる」とのみ特定される点。

ウ 本願補正発明では、「前記投影系は、前記投影系からの光が前記投影系の光軸に対して一方の側に急角度で、前記非歪曲映像をスクリーンに投影されるように構成されている」のに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

6 判断
(1)相違点アについて
引用文献2の技術事項において、「2つの視野レンズ240と250との間に、」「結像」する「中間像」が収差を有するものであることは、当業者には自明である。
また、引用文献2の技術事項では、「レンズ235、236、237、240、及び250がもたらす像面湾曲並びに軸上色収差及び横色収差への正味寄与は、投影レンズ310がもたらす反対の効果を補償する」、すなわち、「テレセントリック・リレーレンズ系230」及び「2つの視野レンズ240と250」の収差と、「投影レンズ310」の収差が反対の効果を補償して、相殺するものであるところ、「視野レンズ240及び250は、平面520に形成される中間像の位置でテレセントリック性を維持」するものであり、かつ、結像光学系一般において、視野レンズ(フィールドレンズ)は結像に関与する度合いがきわめて低いことが技術常識であることを考慮すれば、引用文献2の技術事項において、「2つの視野レンズ240と250」の収差への寄与はきわめて低いものであると解される。
すると、引用文献2の技術事項では、「テレセントリック・リレーレンズ系230」による収差を有する「中間像」が、「投影レンズ310」に入射し、「中間像」の収差が「投影レンズ310」により実質的に相殺される構成であるといえる。
ここで、引用発明と引用文献2の技術事項の「立体表示装置100」は、ともに、中間像を形成するレンズ系と、中間像をスクリーンに投影する投影レンズ系を備える投影表示装置である点で共通するから、引用発明において、「第1のレンズ群14」による「この第2のレンズ群15に結像された画像」の収差が、「第3のレンズ群16」により実質的に相殺される構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。(引用発明の「第2のレンズ群15」が視野レンズであることは、技術常識からみて明らかである。)
なお、引用発明と引用文献2の技術事項の「立体表示装置100」は、中間像を形成するレンズ系の光軸と中間像をスクリーンに投影する投影レンズ系の光軸が同軸であるか否か、及び、中間像をスクリーンに投影する投影レンズ系の光軸がスクリーンに略垂直であるか否かで相違するが、これら2つのレンズ系の光軸の配置についての構成と、これら2つのレンズ系が収差を相殺しあう関係にあるという構成は、互いに異なる技術的意味を持つものであるから、引用発明の「第1のレンズ群14、第2のレンズ群15及び第3のレンズ群16の光軸が同軸であり、第3のレンズ群16の光軸がスクリーン17に対して垂直であ」る構成に、引用文献2の技術事項を適用する際の阻害要因となるものではない。
したがって、引用発明に引用文献2の技術事項を適用して、上記相違点アに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点イについて
引用発明における「第3のレンズ群16からスクリ-ン17までの距離が短くて拡大画像を得ることができる」ことは、「第3のレンズ群16」の画角を大きくすることにより達成できることは当業者には自明のことであり、その画角をどの程度にするかは適宜設計し得る事項である。
したがって、引用発明において、「第3のレンズ群16」の画角を100°を超えるものとして、上記相違点イに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が適宜なし得ることである。

(3)相違点ウについて
引用発明は、「第3のレンズ群16からスクリ-ン17までの距離が短くて拡大画像を得ることができ」るものであり、引用文献3の技術事項の「ビデオプロジェクター」とは、スクリーンまでの距離が短い状態で使用される投影表示装置である点で共通する。
すると、「第3のレンズ群16の光軸がスクリーン17に対して垂直であ」る引用発明において、引用文献3の技術事項のように、映像をスクリーンに対して斜め方向から投写するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、引用文献3の技術事項において、「投写レンズ4を入射光に対して上下に移動出来るようにすることにより、投写角度を変化させることができる」のであるから、該「投写角度」を適宜変化させて急角度とすることは、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない。
したがって、引用発明に引用文献3の技術事項を適用して、上記相違点ウに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

(4)効果について
本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(5)結論
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 小括
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年4月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年12月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項1の記載を参照。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された引用文献1?3、それらの記載内容及び引用発明は、上記「第2」「[理由]」「4」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」で検討した本願補正発明から、
「前記予備歪曲映像を受け、」及び「画角が100℃を超える」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明は、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様に、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-19 
結審通知日 2016-10-25 
審決日 2016-11-07 
出願番号 特願2013-265059(P2013-265059)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 表示装置  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 西田 圭介  
代理人 仲井 智至  

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