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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1323335
審判番号 不服2016-1619  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-03 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2011-190869「クライアント/サーバソフトウェアインターラクションにおける動的機能の利用方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日出願公開、特開2012- 53877、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月1日(パリ条約による優先権主張2010年9月2日,米国)の出願であって、平成27年3月6日付けで拒絶理由が通知され、平成27年5月8日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、平成27年10月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、平成28年2月3日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がされ、平成28年4月4日付けで審査官により特許法第164条第3項に基づく報告がされ、平成28年5月2日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成28年2月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
(1)請求項1ないし請求項14、および、請求項17ないし請求項20について
本件補正により、補正前の請求項1ないし請求項14、および、請求項17ないし請求項20における「印刷機能」は、それぞれ「サービス機能」に補正された。

本件補正後の請求項1ないし請求項20に係る発明は次のとおりである。
【請求項1】
クライアントとサーバとの間で利用可能な印刷サービスを通信する方法であって、
前記クライアントが、前記サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示すサービス機能を、前記サーバから受信する段階と、
前記クライアントが、前記サーバから受信した前記サービス機能に基づいて、印刷ジョブを処理するサービス機能を要求するジョブチケットを生成する段階と、
前記クライアントから前記サーバに、前記ジョブチケットを送信して、前記サーバに要求されたサービス機能を示す段階とを有する方法。
【請求項2】
前記サーバから受信する前記サービス機能は、印刷データのレンダリング、印刷データのフォーマット、及び印刷データのレイアウトの調整よりなるグループから選択される少なくとも1つの機能を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成する段階は、さらに
前記クライアントが、前記サーバにより実行できるサービス機能から印刷ジョブ設定を選択する段階と、
前記選択した印刷ジョブ設定に基づき前記ジョブチケットを生成する段階とを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記受信する段階はさらに
前記クライアントが、事前に受信したサービス機能が有効か判断する段階と、
前記クライアントが、前記事前に受信したサービス機能が有効でないとの判断に応じて、前記サーバからサービス機能を受信する段階とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記判断する段階はさらに
前記クライアントが、前記サーバに問い合わせて、前記サービス機能の現在のバージョン識別子を判断する段階と、
前記現在のバージョン識別子と、前記事前に受信したサービス機能に関連する事前のバージョン識別子とを比較する段階と、
前記現在のバージョン識別子が前記事前のバージョン識別子と一致したら、前記事前に受信したサービス機能が有効であると判断する段階と、
前記現在のバージョン識別子が前記事前のバージョン識別子と一致しなかったら、前記事前に受信したサービス機能が有効でないと判断する段階とを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記クライアントが、前記クライアントのユーザからユーザ認証情報を受け取る段階と、
前記ユーザ認証情報を前記サーバに送信する段階と、を有し、
前記サーバから受信するサービス機能は前記送信するユーザ認証情報に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クライアントから前記サーバに、前記サーバから前記クライアントへサービス機能を返すことを要求する機能要求を送信する段階を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
クライアントとサーバとの間で利用可能な印刷サービスを通信する方法であって、
前記サーバから前記クライアントに、前記サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示すサービス機能を送信する段階と、
前記サーバが、前記クライアントから、前記サーバからのサービス機能の実行を要求する、前記サーバから受信した前記サービス機能に基づくジョブチケットを受信する段階と、
前記サーバが、前記ジョブチケットの受信に応じて、前記要求されたサービス機能を実行する段階とを有する、方法。
【請求項9】
前記サーバから受信する前記サービス機能は、印刷データのレンダリング、印刷データのフォーマット、及び印刷データのレイアウトの調整よりなるグループから選択される少なくとも1つの機能を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サーバが、前記クライアントから、サービス機能を要求する機能要求を受信する段階を有し、
前記送信する段階は、前記機能要求の受信に応じて行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
静的サービス機能と動的サービス機能とをマージして、前記クライアントに送信するサービス機能を生成する段階をさらに有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記サーバが、前記クライアントから、前記サーバの前記サービス機能に関連する現在のバージョン識別子を返すことを要求する機能バージョン要求を受信する段階をさらに有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記サーバが、前記クライアントから、前記クライアントのユーザを識別するユーザ認証情報を受信する段階を有し、
前記サービス機能を送信する段階は、前記受信したユーザ認証情報に基づいてサービス機能を送信する段階を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
クライアントデバイスで動作するクライアントと、
サーバデバイスで動作する、前記クライアントと通信可能に結合したサーバと、
前記サーバと結合し、前記サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示すサービス機能を記憶するメモリとを有し、
前記サーバは前記サービス機能を前記クライアントに送信するように構成され、前記クライアントは前記サーバから前記サービス機能を受信するように構成され、
前記クライアントは、前記サービス機能に基づき、ジョブチケットを生成するように構成され、前記ジョブチケットを前記サーバに送信するようにさらに構成され、前記ジョブチケットは、所望のサービス機能を前記クライアントの替わりに前記サーバにより実行することを要求し、
前記サーバはさらに、前記ジョブチケットを受信するように構成され、前記サービス機能を実行するように構成された、システム。
【請求項15】
前記サーバはプリントサーバを有し、
前記クライアントはプリントアプリケーションを有する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ジョブチケットは前記サーバに、特定した文書をレンダリングするように要求する情報を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ジョブチケットは、前記サービス機能に基づく印刷設定を含む、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記クライアントデバイスと結合したユーザ入力デバイスをさらに有し、
前記クライアントは、前記ユーザ入力デバイスによりユーザ入力を受け取り、前記サービス機能に示された印刷設定を選択する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記メモリに記憶されるサービス機能は、
前記サーバから得られるサービスに関する静的サービス機能と、
前記得られるサービスを修正する動的サービス機能とを含み、
前記サーバは、前記動的サービス機能を、前記静的サービス機能とマージして、前記クライアントに送信するサービス機能を生成するようにさらに構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記動的サービス機能は、
前記静的サービス機能中の利用可能なサービスの修正を示す情報と、
前記静的サービス機能中の利用可能なサービスが削除されることを示す情報と、
前記静的サービス機能中の利用可能なサービスに追加される新しいサービスを示す情報とを含む、請求項19に記載のシステム。」

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「印刷機能」について、印刷の前にサーバにより成されるところの「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示すサービス機能」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-32250号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は、参考のため当審が付与した。)
ア.1 「【0004】
さまざまな実施形態において、データを印刷するクライアント要求に自動的にサービスする方法、機械可読媒体および装置が提供される。ある実施形態では、印刷サーバー(print server)はクライアントから、該要求に含まれる印刷データに反映されている一つまたは複数の文書を印刷する要求を受け取る。印刷サーバーはクライアントから複数のパラメータを受領することがある。パラメータは、前記一つまたは複数の文書を印刷するために印刷装置が有するべきおよび/または有する必要がある種々の機能を指定しうる。印刷サーバーは、そうしたパラメータに基づいて、複数の印刷装置のうちから特定の印刷装置を決定する。この決定に基づいて、印刷サーバーは印刷データをその特定の印刷装置に送る。結果として、ユーザーは、ユーザーの要件を満たす特定の印刷装置についての詳細な情報を知ることは要求されない。ある実施形態では、ユーザーは、その特定の印刷装置のためのプリンタ・ドライバをユーザーのコンピュータにインストールすることを要求されない。」

ア.2 「【0058】
図3は、クライアント印刷要求にサービスする印刷サーバーを示すシーケンス図である。明確な例を例示する目的のため、図3はここでは図1に示された構造を参照して記述されるが、図3に表される広いアプローチは、図1のコンテキストに限定されるものではなく、図3のアプローチは他のネットワーク構成および他の物理的もしくは論理的構造とともに使用されてもよい。
…(中略)…
【0062】
ステップ3では、印刷サーバー104は「プリンタ機能取得」メッセージを印刷装置112Aに送る。そのようなメッセージは印刷装置112Bには送られなかったので、印刷サーバー104はすでに印刷装置112Bのためのプリンタ・ドライバをインストールしているのかもしれない。インストールされたドライバから、印刷サーバー104は印刷装置112Bの機能を「知る」。印刷装置112Aは、印刷装置112Aの機能を記述する応答メッセージを提供することによって、「プリンタ機能取得」メッセージに応答する。ウェブ・サービス・メッセージが使われてもよいし、あるいはHTTP GET-POSTシーケンスが使われてもよい。
【0063】
結果として、ステップ1ないし3を通じて、印刷サーバー104は、ネットワーク中で発見されるか、広告メッセージを通じて位置特定されるすべてのプリンタについての機能のリストを構築する。新しいプリンタが見出され、そのドライバがインストールされるとき、新しいプリンタの機能がリストに更新される。こうして、ステップ1ないし3は任意の時点で実行されてもよく、図3および図2の他のステップに関して非同期的に実行されてもよい。しかしながら、新しいプリンタが追加されるときに、新しいプリンタ・ドライバでクライアント102を継続的に更新する必要はない。
【0064】
ステップ4では、クライアント102は印刷サーバー104に「機能リスト取得」メッセージを送る。そのようなメッセージは、印刷サーバー104が通信できる各印刷装置の機能を要求する。ステップ5では、印刷サーバー104が印刷装置112Aおよび112Bの機能をクライアント102に送る。ステップ6では、クライアント102が電子文書を印刷サーバー104に、印刷チケットとともに送る。ウェブ・サービスを使うある実施形態では、印刷チケットは、特定の印刷ジョブの特性を記述する電子文書である。印刷チケットは、印刷チケット・エレメントを定義するスキーマに準拠するXML文書を含んでいてもよい。
【0065】
ステップ7では、印刷サーバー104は、印刷装置112Aの機能が印刷要求において示されたパラメータに最もよく一致することを判定する。したがって、印刷サーバー104は、電子文書の変換されたバージョンを、印刷装置112Aに送る。電子文書の変換されたバージョンは、印刷装置112Aのために印刷サーバー104中にインストールされているプリンタ・ドライバを使って用意される。ステップ8では、印刷ジョブが失敗した場合、印刷装置112Aは印刷失敗メッセージを印刷サーバー104に送る。
【0066】
ステップ9では、印刷サーバー104は、電子文書を印刷する次善の一致として、印刷装置112Bを選択する。したがって、印刷サーバー104は、印刷装置112Bに関連付けられたプリンタ・ドライバを使って、電子文書の変換されたバージョンを用意し、印刷装置112Bに送る。ステップ10では、印刷装置112Bは、電子文書の印刷が成功したことを印刷サーバー104に通知する。この通知に応答して、ステップ11において、印刷サーバー104はクライアント102に、印刷装置112Bが電子文書の印刷に成功したことを通知する。ステップ11の通知は、印刷装置112Bの名前および/または印刷装置112Bが物理的にどこに位置しているかを示す位置特定用情報を含んでいてもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を通じて数多くの恩恵が実現されうる。たとえば、ユーザーまたはクライアント・コンピュータは、新たに追加された印刷装置を追跡したり、各印刷装置がどんな機能を有するかを知ったり、および/または何らかのプリンタ・ドライバをインストールしたりすることを要求されなくてもよい。ユーザーまたはクライアントが知る必要があるのは、どのように印刷サーバーにアクセスするかだけである。その後、印刷サーバーは、実際の印刷以外のたいていの印刷活動を完遂し、結果をユーザーまたはクライアントに通知する。」

前記ア.1の「データを印刷するクライアント要求に自動的にサービスする方法」との記載、前記ア.2の「印刷サーバー104は、ネットワーク中で発見されるか、・・・位置特定されるすべてのプリンタについての機能のリストを構築する・・・クライアント102は印刷サーバー104に「機能リスト取得」メッセージを送る・・・各印刷装置の機能を要求する・・・印刷サーバー104が印刷装置112Aおよび112Bの機能をクライアント102に送る・・・クライアント102が電子文書を印刷サーバー104に、印刷チケットとともに送る・・・印刷チケットは、印刷チケット・エレメントを定義するスキーマに準拠するXML文書を含んでいてもよい・・・印刷サーバー104は、印刷装置112Aの機能が印刷要求において示されたパラメータに最もよく一致することを判定する・・・印刷サーバー104は、電子文書の変換されたバージョンを、印刷装置112Aに送る・・・電子文書の変換されたバージョンは、印刷装置112Aのために印刷サーバー104中にインストールされているプリンタ・ドライバを使って用意される」との記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「データを印刷するクライアント要求に自動的にサービスする方法であって、
印刷サーバーは、ネットワーク中で発見されるか位置特定されるすべてのプリンタについての機能のリストを構築し、
クライアントは印刷サーバーに「機能リスト取得」メッセージを送ることにより各印刷装置の機能を要求し、
前記印刷サーバーが印刷装置112Aおよび112Bの機能を前記クライアントに送り、
前記クライアントが電子文書を前記印刷サーバーに、印刷チケット・エレメントを定義するスキーマに準拠するXML文書を含む印刷チケットとともに送り、
前記印刷サーバーは、前記印刷装置112Aの機能が印刷要求において示されたパラメータに最もよく一致することを判定し、
前記印刷サーバーは、前記印刷装置のために印刷サーバー中にインストールされているプリンタ・ドライバを使って用意される電子文書の変換されたバージョンを、前記印刷装置に送る、
前記各段階を有する方法。」

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
(イ.1)引用発明の「データを印刷する・・・サービス」は補正発明1の「印刷サービス」に相当し、クライアントとサーバ間での「通信」は記載されているに等しい事項である。してみれば、引用発明の「データを印刷するクライアント要求に自動的にサービスする方法」および「印刷サーバー」と、補正発明1の「クライアントとサーバとの間で利用可能な印刷サービスを通信する方法」とに実質的な差異はない。

(イ.2)引用発明の「プリンタについての機能」ないし「各印刷装置の機能」は、前記ア.1の「印刷サーバーはクライアントから複数のパラメータを受領することがある。パラメータは、前記一つまたは複数の文書を印刷するために印刷装置が有するべきおよび/または有する必要がある種々の機能を指定しうる。印刷サーバーは、そうしたパラメータに基づいて、複数の印刷装置のうちから特定の印刷装置を決定する」との記載からみて「印刷装置」の備える「機能」であり、この機能は、補正発明1の「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能とまでは言えないまでもサーバによる「サービス機能」の点では共通し、また、引用発明の「前記印刷装置のために印刷サーバー中にインストールされているプリンタ・ドライバを使って用意される電子文書の変換されたバージョン」はプリンタ・ドライバを使った電子文書の変換に係る印刷サーバのサービス機能とみることができ、この機能は、補正発明1の「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能とまでは言えないまでも「サービス機能」の点では共通する。してみれば、引用発明の「印刷サーバーは、ネットワーク中で発見されるか位置特定されるすべてのプリンタについての機能のリストを構築し、・・・前記印刷サーバーが印刷装置112Aおよび112Bの機能を前記クライアントに送り」ないし「前記印刷サーバーは、前記印刷装置のために印刷サーバー中にインストールされているプリンタ・ドライバを使って用意される電子文書の変換されたバージョンを、前記印刷装置に送る」ことと、補正発明1の「前記クライアントが、前記サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示すサービス機能を、前記サーバから受信する段階」とは、下記の点で相違するものの「前記クライアントが、サービス機能を、前記サーバから受信する段階」の点で共通する。

(イ.3)引用発明の「前記印刷サーバーが印刷装置112Aおよび112Bの機能を前記クライアントに送り、
前記クライアントが電子文書を前記印刷サーバーに、印刷チケット・エレメントを定義するスキーマに準拠するXML文書を含む印刷チケットとともに送り」との事項は、前記クライアントが、前記印刷サーバーから送られた機能に基づいて「印刷チケット」を生成し、前記印刷サーバに送るものとみることができ、この点をふまえると、引用発明の前記の事項と補正発明1の「前記クライアントが、前記サーバから受信した前記サービス機能に基づいて、印刷ジョブを処理するサービス機能を要求するジョブチケットを生成する段階」とに実質的な差異はない。

(イ.4)前記(イ.3)での言及に係る、前記印刷サーバーに、送られた「印刷チケット」は、引用発明において「前記印刷サーバーは、前記印刷装置112Aの機能が印刷要求において示されたパラメータに最もよく一致することを判定し」ていることから、「印刷チケット」は「機能を要求」するものであり、送られた「印刷チケット」により送られた印刷サーバーに機能が示されているといえる。してみれば、引用発明の「前記クライアントが電子文書を前記印刷サーバーに、印刷チケット・エレメントを定義するスキーマに準拠するXML文書を含む印刷チケットとともに送り、
前記印刷サーバーは、前記印刷装置112Aの機能が印刷要求において示されたパラメータに最もよく一致することを判定し、」と補正発明1の「前記クライアントから前記サーバに、前記ジョブチケットを送信して、前記サーバに要求されたサービス機能を示す段階」とに実質的な差異はない。

前記(イ.1)-(イ.4)の対比によれば、補正発明1と引用発明は、次の点で一致し、そして相違する。
〈一致点〉
「クライアントとサーバとの間で利用可能な印刷サービスを通信する方法であって、
前記クライアントが、サービス機能を、前記サーバから受信する段階と、
前記クライアントが、前記サーバから受信した前記サービス機能に基づいて、印刷ジョブを処理するサービス機能を要求するジョブチケットを生成する段階と、
前記クライアントから前記サーバに、前記ジョブチケットを送信して、前記サーバに要求されたサービス機能を示す段階とを有する方法。」

〈相違点〉
サービス機能に関し、補正発明1には「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能を特定しているのに対し、引用発明は、そのように特定していない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点について、引用文献2.特開2005-216079号公報、引用文献3.特開2001-109693号公報、引用文献4.特開2006-345085号公報には、「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能を示す記載はなく、また、前置報告における特開平9-223096号公報の段落【0062】-【0075】、【0084】には、クライアントが、プリンティングサービスのサービス機能書式の書式データをサーバから受信し、当該書式データを解釈したサービス提供表示画面で用紙サイズなどを選択指定し、パラメータとしてサーバに送信することが記載されているが、前記サービス機能書式の書式データである例えば用紙サイズや枚数は「印刷装置の機能」といえるものの、「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能とはいえないから、これらを適用するとしても、引用発明において当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

したがって、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

そのため、刊行物1には、前記「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能を示す記載がないことから、補正発明1は刊行物1に記載された発明であるとはいえないことが明らかである。

また、本件補正後の請求項1を直接的、間接的に引用する請求項2-請求項7に係る発明についても同様のことが言える。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2
請求項8及び請求項8を引用する請求項9-請求項13に係る発明、請求項14及び請求項14を直接的、間接的に引用する請求項15-請求項20に係る発明に係る補正事項を、以下、「補正事項2」という。

請求項8、請求項14に係る発明は、いずれも「サーバにより印刷データに対して実行できる動作を示す」サービス機能を有しており、前記補正後請求項1に係る発明において言及したことと同様のことがいえる。
また、請求項8、請求項14に係る発明を引用する他の請求項についても同様のことが言える。

したがって、補正事項2についても補正事項1と同様に、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。


3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-20に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願請求項1-20に係る発明は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

また、本願請求項1、3、7-8、10、14-18に係る発明は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-11 
出願番号 特願2011-190869(P2011-190869)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 亮  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 高木 進
須田 勝巳
発明の名称 クライアント/サーバソフトウェアインターラクションにおける動的機能の利用方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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