• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1323361
審判番号 不服2014-5991  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-02 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2011-551256「送電網結合負荷の現地電力ソースについての電力伝送管理」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日国際公開、WO2010/096682、平成24年 8月16日国内公表、特表2012-518980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月19日、米国:2009年3月31日、米国:2009年11月20日、米国:2010年2月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月27日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年12月2日)、これに対し、平成26年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年2月4日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年2月9日)、これに対し、平成27年8月10日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成27年11月18日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年11月24日)、これに対し、平成28年5月24日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.平成28年5月24日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年5月24日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
電力変換器に、現地電力ソースからの直流電流(DC)電力を受け取る段階であって、前記現地電力ソースと前記電力変換器は、電気的には、公益事業者送電網への接続点の、前記送電網に結合されている現地負荷と同じ側に位置しており、前記現地負荷は前記送電網の消費者構内を含んでいる、電力変換器にDC電力を受け取る段階と、
前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータ装置の出力から検出する段階と、
前記インバータ装置を用いて出力電流波形を生成することを含む、前記電力変換器を用いて前記DC電力を前記現地負荷へ送達する交流電流(AC)電力に変換する段階と、
前記AC電力の力率を、生成された出力電流波形の位相を前記送電網のAC電圧の位相に関して制御することによって調整する段階であって、
該調整する段階が
前記出力電流波形をサンプリングする段階と、
前記送電網のAC電圧についての検出された位相に基づく目標周期電流波形の理想バージョンとしての基準出力波形を表している値の基準波形表からサンプリングポイントを読み取る段階であって、前記基準出力波形は前記送電網のAC電圧に関して所望の力率を有する前記出力電流波形を生成するために前記送電網のAC電圧に関して任意の所望の位相を有する、前記読み取る段階と、
サンプリングされた前記出力電流波形を、前記基準波形表のサンプリングポイントと比較する段階と、
サンプリングされた前記出力電流波形の前記基準波形表のサンプリングポイントとの比較に基づいてフィードバック信号を生成する段階と、
前記フィードバック信号に基づいて前記出力電流波形の位相が前記基準出力波形の位相に向けて収束されるように実行時に前記インバータ装置の動作を調節する段階と、を更に含んでいる、調整する段階と、
調整された前記AC電力を前記送電網の前記現地負荷側へ送達する段階と、
から成る方法。
【請求項2】
前記電力変換器に受け取る段階は、前記消費者構内に設置されているマイクロインバータに受け取る段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現地電力ソースからの電力を受け取る段階は、準安定電力ソースからの電力を受け取る段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記準安定現地電力ソースからの電力を受け取る段階は、
太陽光電力ソース、潮力電力ソース、風力電力ソース、又は熱的に連結されている熱ソースからの電力を受け取る段階を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記力率を調整する段階は、
日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて前記送電網の前記AC電圧についての前記基準出力波形の位相を設定することにより力率を調整する段階を、更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、
前記顧客構内からの日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つを測定する段階を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、
接続点の他方の側からの、力率調節を示す遠隔通信を受信する段階と、
前記遠隔通信の受信に応えて前記力率を調節する段階と、を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記遠隔通信を受信する段階は、
インターネット、セルラー、無線、又はWiFiインターフェースを介して通信を受信する段階を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、
前記接続点の同じ側のマスター制御装置からの、力率調節を示す通信を受信する段階と、
前記通信の受信に応えて前記力率を調節する段階と、を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記力率を調整する段階は、
前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに応じて、前記力率を1から遠くへと落としてゆく段階を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記力率を調整する段階は、
前記力率を大凡1に調節する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記力率を調整する段階は、
生成された前記AC電流の前記力率を、前記送電網の公益事業者によって設定されている電力料金表を考慮することを含む最適利益分析に基づいて、調整する段階、を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
調整された前記AC電力を送達する段階は、
調整されたAC電力を前記送電網へ送達する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
インバータ装置であって、
現地電力ソースからの直流電流(DC)電力を受け取るDC/DC変換器であって、前記現地電力ソースと前記インバータは、電気的には、公益事業者送電網への接続点の、前記送電網に結合されている現地負荷と同じ側に位置しており、前記現地負荷は前記送電網の消費者構内を含んでいる、現地電力ソースからDC電力を受け取るDC/DC変換器と、
目標周期波形の理想バージョンを表している基準出力波形に基づいて出力電流波形を生成することを含む、前記DC電力を前記現地負荷へ送達する交流電流(AC)電力に変換するDC/AC変換器と、
前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を検出し、並びに、前記出力電流波形をサンプリングすること、前記送電網のAC電圧に関して任意の所望の位相を有する前記基準出力波形を表している値の基準波形表からサンプリングポイントを読み取ること、サンプリングされた前記出力電流波形の前記基準波形表のサンプリングポイントとの比較に基づいてフィードバック信号を生成すること、及び前記フィードバック信号に基づいて前記出力電流波形が前記基準出力波形の位相に向けて収束されるように実行時に前記DC/AC変換器の動作を調節することを含む、生成された前記出力電流波形の位相を前記送電網のAC電圧の位相に関して制御することによって前記AC電力の力率を調整する、制御装置であって、前記送電網の前記AC電圧に関して所望の力率で前記出力電流波形を生成し、及び調整された前記AC電力を前記送電網の前記現地負荷側へ送達する制御装置と、を備えるインバータ装置。
【請求項15】
前記制御装置は、力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するソフトウェアアルゴリズムを更に実行する、請求項14に記載のインバータ装置。
【請求項16】
力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するための入力を提供する遠隔デバイスからのコマンドを受信する遠隔制御アルゴリズムを更に実行する、請求項14に記載のインバータ装置。」


(2)新規事項について
(2-1)本件補正後の請求項1には、「前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータ装置の出力から検出する段階」と記載されているから、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力から送電網のAC電圧の位相を検出することとなる。

そこで、当該補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、「翻訳文等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

翻訳文等には、
a「第1部では、生成AC電力の電圧の位相が、送電網の電圧の位相に固定される(302)。ソース電力が受け取られ(304)、AC電圧及び電流に変換される(306)。送電網の電圧が測定されて、生成AC電圧の位相が送電網の位相に固定される(308)。現地負荷を横断する公益事業者送電網側のAC電圧は、制御装置によって、例えば位相固定ループを用いて周期的に監視され、1つ又はそれ以上のパラメータが、インバータAC電圧が送電網電圧と同位相になるまで修正される。」(【0033】)

b「負荷モニター426は、ハードウェアかソフトウェアか又は組合せ(例えば、ファームウェア制御がインストールされたハードウェア)かを問わず、逆変換回路構成424の出力を電圧(V)、周波数(FREQ)、及び/又は位相について監視する1つ又はそれ以上の構成要素を表している。負荷モニター426は、検出されたもの及び/又は規則或いは外部入力に基づいて、逆変換回路構成424に構成を提供することができる。負荷モニター426がハードウェアに実施されている場合であっても、それの逆変換回路構成424への入力は、逆変換回路構成424のマイクロプロセッサへの入力であれば、「ソフトウェア制御」と見なされ得ることに留意されたい。負荷モニター426は、更に、例えば、逆変換回路構成424へ渡される構成パラメータを送る中央局への通信接続(図示せず)を含んでいてもよい。」(【0041】)

c「出力同期514と出力フィードバック516の両方を、フィードバックループとして考えてもよい。出力同期514と出力フィードバック516は、同一物ではなく、異なった目的に供されていることが理解されるであろう。出力同期514は、基準波形表532に記憶されるものとして理想基準信号がどの様に見えるべきかを表示する。出力フィードバック516は、実際の出力が基準信号とどれほど異なっているかを表示する。更新表534は、出力フィードバック516に応えて生成されたデータを表している。1つの実施形態では、出力同期514は、電力経路510の出力に関する電圧情報に基づき、一方、出力フィードバック516は、電力経路510の出力で生成された出力電流に基づいている。」(【0049】)

d「1つの実施形態での主電力流通経路は、以下の様に起こり、即ち、入力602はDC入力電力である。PWM生成器630は、更新された値の表(PWM表エントリ更新680)を使用してDC対AC変換器642を駆動する。1つの実施形態では、更新表680は、図5の表540に一致している。入力DC電力602は、インバータハードウェア640のDC対AC変換器642へ通され、出力AC電流波形650として出てゆく。電流波形検出器644は、出力650の電流波形を検出する。入力波形は、PWM生成器630では完全な正弦波として示されており、電流波形検出器644では歪んでいる。歪みの量は誇張されているかもしれないが、出力波形が初期においてさえ、理想的な所望の波形にあまり似て見えないことを示している。しかしながら、波形はフィードバックを通して収束する。インバータハードウェア640は、更に、図5の出力同期情報に対応している同期情報648を生成する電圧波形検出器646を含んでいる。」(【0062】)

と記載されるにすぎず、送電網のAC電圧の位相を検出すること、及び、インバータ装置の出力を検出することの記載はあっても、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力から送電網のAC電圧の位相を検出することは、記載も示唆もない。
したがって、「前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータ装置の出力から検出する段階」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、請求項14の「インバータ装置であって、・・・略・・・前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を検出し」も同様である。

(2-2)本件補正後の請求項5には、「前記力率を調整する段階は、日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて前記送電網の前記AC電圧についての前記基準出力波形の位相を設定することにより力率を調整する段階」と記載されているから、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量、日内時間と無効電力必要量、日内時間と有効電力必要量、無効電力必要量と有効電力必要量、日内時間と無効電力必要量と有効電力必要量のいずれか一つに基づいて力率を調整することとなる。

そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

翻訳文等には、
e「公益事業者は、従って、PV所有者が力率制御式PVシステムを建築することを奨励する料金表を創出することに意欲を持ち、一方でPV所有者は、それらを自分たちのPVシステムで使用することに意欲を持つ。電力をPV(又は他の現地ソース)システムから送電網へ送電網条件(例えば、日内時間、無効電力及び/又は有効電力必要量)に基づいて供給することは、公益事業者と消費者の双方に利益を生む。」(【0113】)

f「点B又は点Cの何れかの力率を監視すれば、ソフトウェアアルゴリズム2026(即ち、制御論理)が、実際の力率を所望の力率と比較し、ひいては点Aでのインバータ2020の出力電力を自律調節できるようになる。以上に示されている様に、点Aの出力を制御することによって、インバータ2020は、送電網結合接続部又は送電網を臨む接点の力率を、最適利益の値に近づけてゆく。最適利益は、常に力率1とは限らない。上述の様に、力率は、送電網条件並びに料金表条件に基づいて最適に或る値に設定される。(単数又は複数の)アルゴリズム2026は、現在適用可能な料金表に依存する「最適利益」計算を使用することができ、その様な料金表の中で公益事業者が要求し得るありとあらゆる因子を含んでいる。」(【0130】)

と記載されるにすぎず、送電網条件に基づいて現地ソースが電力を供給すること、送電網条件並びに料金表条件に基づいて力率を最適利益の値に近づけることの記載はあっても、日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて力率を調整することは、記載も示唆もない。
したがって、「前記力率を調整する段階は、日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて前記送電網の前記AC電圧についての前記基準出力波形の位相を設定することにより力率を調整する段階」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、請求項6、7、9、10も同様である。

(2-3)本件補正後の請求項6には、「前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、前記顧客構内からの日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つを測定する段階を更に含んでいる」と記載されているから、力率調整のために、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量の少なくとも1つを測定することとなる。

そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

翻訳文等には、e、fが記載されているにすぎず、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量の各々を測定すること、当該測定値を力率調整に用いることは、記載も示唆もない。
したがって、「前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、前記顧客構内からの日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つを測定する段階を更に含んでいる」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記特許請求の範囲に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第4項及び第6項について
(1-1)本件補正後の請求項1には、「前記現地負荷において見られる前記送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータ装置の出力から検出する段階」と記載されているが、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力でどの様にして検出するのか明細書に何ら開示が無く不明(この段階の次の段階で、インバータ装置はDC電力を現地負荷へ送達する交流電流(AC)電力に変換しているから、この段階ではインバータ装置の出力から送電網のAC電圧の位相をどの様に検出するのか不明。)である。請求項14も同様である。

(1-2)本件補正後の請求項5には、「前記力率を調整する段階は、日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて前記送電網の前記AC電圧についての前記基準出力波形の位相を設定することにより力率を調整する段階」と記載されているから、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量、日内時間と無効電力必要量、日内時間と有効電力必要量、無効電力必要量と有効電力必要量、日内時間と無効電力必要量と有効電力必要量のいずれか一つに基づいて力率を調整することとなるが、各々からどの様な演算を行って力率を調整するのか明細書に何ら開示が無く不明であり、しかも、日内時間とは電力分配のための時間(【0078】)であり、これをどの様にして力率調整に用いるのか明細書に何ら開示が無く不明であり、電力ソースが無効電力必要量、有効電力必要量を準備できない場合、どの様に力率を調整するのか明細書に何ら開示が無く不明であり、また、条件が2つ以上あるものは、これら条件に対して、優先順位を付けるか、重み付けをする等をしなければ力率調整の演算ができないが、どの様にして優先順位付、重み付け等を行って演算しているのか明細書に何ら開示が無く不明である。請求項6、7、9、10も同様である。

(1-3)本件補正後の請求項6には、「前記力率を前記日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つに基づいて調整する段階は、前記顧客構内からの日内時間、無効電力必要量、及び有効電力必要量の少なくとも1つを測定する段階を更に含んでいる」と記載されているから、力率調整のために、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量の少なくとも1つを測定することとなるが、日内時間とは電力分配のための時間(【0078】)であり、日内時間を測定するとはどの様に行うのか明細書に何ら開示が無く不明であり、仮に日内時間を測定できてもその後力率を調整したのでは、調整が必要な時期が過ぎてから力率を調整しようとすることとなり、何故この様な測定・調整を行うのか不明であり、又、無効電力ではなく無効電力必要量を測定するとはどの様に行うのか明細書に何ら開示が無く不明であり、同様に有効電力必要量も不明である。

(1-4)本件補正後の請求項15には、「前記制御装置は、力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するソフトウェアアルゴリズムを更に実行する」と記載されているが、現地で測定された測定値とはどの様な測定値であるのか明細書に何ら開示が無く不明のため、何故力率調整ができるのか明細書に何ら開示が無く不明であり、本件補正後の請求項15は本件補正後の請求項14を引用し、且つ「更に実行する」とあるから、本件補正後の請求項14は、現地で測定された測定値を用いないもの、ソフトウェアアルゴリズムを更に実行しないものが含まれるが、この場合本件補正後の請求項14の制御装置はどの様にして力率調整を行うのか明細書に何ら開示が無く不明である。請求項16も同様である。

(1-5)したがって、本件補正後の請求項1、5、6、7、9、10、14-16の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成27年8月10日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
電力変換器に、現地電力ソースからの直流電流(DC)電力を受け取る段階であって、前記現地電力ソースと前記電力変換器は、電気的には、公益事業者送電網への接続点の、前記送電網に結合されている現地負荷と同じ側に位置しており、前記現地負荷は前記送電網の消費者構内を含んでいる、電力変換器にDC電力を受け取る段階と、
送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階と、
前記インバータハードウェアを用いて出力電流波形を生成することを含む、前記電力変換器を用いて前記DC電力を前記現地負荷へ送達する交流電流(AC)電力に変換する段階と、
前記AC電力の力率を、生成された出力電流波形の位相を前記送電網のAC電圧の位相に関して制御することによって調整する段階であって、
該調整する段階が
前記出力電流波形をサンプリングする段階と、
前記送電網のAC電圧についての検出された位相に基づく目標周期電流波形の理想バージョンとしての基準出力波形を表している値の基準波形表からサンプリングポイントを読み取る段階であって、前記基準出力波形は前記送電網のAC電圧に関して所望の力率を有する前記出力電流波形を生成するために前記送電網のAC電圧に関して任意の所望の位相を有する、前記読み取る段階と、
サンプリングされた前記出力電流波形を、前記基準波形表のサンプリングポイントと比較する段階と、
サンプリングされた前記出力電流波形の前記基準波形表のサンプリングポイントとの比較に基づいてフィードバック信号を生成する段階と、
前記フィードバック信号に基づいて前記出力電流波形の位相が前記基準出力波形の位相に向けて収束されるように実行時に前記インバータハードウェアの動作を調節する段階と、を更に含んでいる、調整する段階と、
調整された前記AC電力を前記送電網の前記現地負荷側へ送達する段階と、
から成る方法。
【請求項2】
前記電力変換器に受け取る段階は、前記消費者構内に設置されているマイクロインバータに受け取る段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現地電力ソースからの電力を受け取る段階は、準安定電力ソースからの電力を受け取る段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記準安定現地電力ソースからの電力を受け取る段階は、
太陽光電力ソース、潮力電力ソース、風力電力ソース、又は熱的に連結されている熱ソースからの電力を受け取る段階を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記力率を調整する段階は、
送電網条件に基づいて前記送電網の前記AC電圧についての前記基準出力波形の位相を設定することにより力率を調整する段階を、更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記力率を前記送電網条件に基づいて調整する段階は、
前記顧客構内からの1つ又はそれ以上の前記送電網条件を測定する段階を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記力率を前記送電網条件に基づいて調整する段階は、
接続点の他方の側からの、力率調節を示す遠隔通信を受信する段階と、
前記遠隔通信の受信に応えて前記力率を調節する段階と、を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記遠隔通信を受信する段階は、
インターネット、セルラー、無線、又はWiFiインターフェースを介して通信を受信する段階を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記力率を前記送電網条件に基づいて調整する段階は、
前記接続点の同じ側のマスター制御装置からの、力率調節を示す通信を受信する段階と、
前記通信の受信に応えて前記力率を調節する段階と、を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記力率を調整する段階は、
前記送電網条件に応じて、前記力率を1から遠くへと落としてゆく段階を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記力率を調整する段階は、
前記力率を大凡1に調節する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記力率を調整する段階は、
生成された前記AC電流の前記力率を、前記送電網の公益事業者によって設定されている電力料金表を考慮することを含む最適利益分析に基づいて、調整する段階、を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
調整された前記AC電力を送達する段階は、
調整されたAC電力を前記送電網へ送達する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
インバータ装置であって、
現地電力ソースからの直流電流(DC)電力を受け取るDC/DC変換器であって、前記現地電力ソースと前記インバータは、電気的には、公益事業者送電網への接続点の、前記送電網に結合されている現地負荷と同じ側に位置しており、前記現地負荷は前記送電網の消費者構内を含んでいる、現地電力ソースからDC電力を受け取るDC/DC変換器と、
目標周期波形の理想バージョンを表している基準出力波形に基づいて出力電流波形を生成することを含む、前記DC電力を前記現地負荷へ送達する交流電流(AC)電力に変換するDC/AC変換器と、
前記送電網のAC電圧の位相を検出し、並びに、前記出力電流波形をサンプリングすること、前記送電網のAC電圧に関して任意の所望の位相を有する前記基準出力波形を表している値の基準波形表からサンプリングポイントを読み取ること、サンプリングされた前記出力電流波形の前記基準波形表のサンプリングポイントとの比較に基づいてフィードバック信号を生成すること、及び前記フィードバック信号に基づいて前記出力電流波形が前記基準出力波形の位相に向けて収束されるように実行時に前記DC/AC変換器の動作を調節することを含む、生成された前記出力電流波形の位相を前記送電網のAC電圧の位相に関して制御することによって前記AC電力の力率を調整する、制御装置であって、前記送電網の前記AC電圧に関して所望の力率で前記出力電流波形を生成し、及び調整された前記AC電力を前記送電網の前記現地負荷側へ送達する制御装置と、を備えるインバータ装置。
【請求項15】
前記制御装置は、力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するソフトウェアアルゴリズムを更に実行する、請求項14に記載のインバータ装置。
【請求項16】
力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するための入力を提供する遠隔デバイスからのコマンドを受信する遠隔制御アルゴリズムを更に実行する、請求項14に記載のインバータ装置。」



(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成27年11月18日付で通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I 平成27年8月10日付でした手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、翻訳文等という)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。


(1)本件補正後の請求項1には、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」と記載されているから、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータハードウェアの出力部分で送電網のAC電圧の位相を検出することとなる。
そこで、当該補正が、国際特許出願の請求の範囲の翻訳文、明細書の翻訳文又は図面及び図面の翻訳文(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
請求人が、平成27年8月10日付意見書で補正の根拠と主張する、【0034】、【0046】?【0051】、【0062】、【0146】には、送電網のAC電圧の位相を検出することは記載はあっても、インバータハードウェアの出力部分で送電網のAC電圧の位相を検出することは記載も示唆も無い。
したがって、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

本件補正後の請求項14には、「インバータ装置であって、・・・前記送電網のAC電圧の位相を検出し」と記載されているから、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力部分で送電網のAC電圧の位相を検出することとなる。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
請求人が、平成27年8月10日付意見書で補正の根拠と主張する、【0023】、【0051】、【0062】、【0146】には、送電網のAC電圧の位相を検出することは記載はあっても、インバータ装置の出力部分で送電網のAC電圧の位相を検出することは記載も示唆も無い。
したがって、「インバータ装置であって」、「前記送電網のAC電圧の位相を検出」することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


II この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項1には、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」との訳語があるが、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータハードウェアの出力部分でどの様にして検出するのか何ら開示が無く不明(インバータハードウェアの出力部分からはインバータによる交流電力が出力されている。当該交流電力の電圧の位相が検出されるか、当該交流電力の電圧に現地負荷を経た送電網の電圧が加わった電圧の位相が検出されるのではないか。)である。請求項14も同様である。
更に、請求項1の「インバータハードウェア」と、請求項14の「インバータ装置」は、何が構成として異なるのか不明である。
更に、請求項5において、「送電網条件」との訳語があるが、どの様な条件であるのか一般的な用語ではないため構成が特定できず不明(補正前は「送電網の条件」との訳語であったが、補正後の「送電網条件」との訳語と補正前の「送電網の条件」の訳語は実質的に同じであり、前回の拒絶理由に対する回答にはなっていない。)である。請求項6、7、9、10も同様である。
更に、請求項6において、「前記顧客構内からの1つ又はそれ以上の前記送電網条件を測定する段階」との訳語があり、送電網条件が複数存在するものを含むと解するがこの点不明であり、仮に複数あるとすれば、力率を調整する段階で、複数の送電網条件に対して、優先順位を付ける、重み付けする等をしなければ調整できないものと考えるが、どの様にして優先順位付、重み付け等を行っているのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項15において、「前記制御装置は、力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するソフトウェアアルゴリズムを更に実行する」との訳語があるが、測定値とは何を測定するのか不明であり、又、力率調整のための測定値は電圧・電流の位相が一般的であり、通常電圧・電流の位相は現地で測定されるが、請求項15が引用する請求項14は、制御装置が、現地で測定しないもの、ソフトウェアアルゴリズムを更に実行しないものも含んでおり、この場合、請求項14の制御装置は、どの様にして力率調整を行うのか不明である。請求項16も同様である。」


(2)当審の最後の拒絶の理由Iについての判断
(2-1)請求項1には、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」と記載されているから、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータハードウェアの出力から送電網のAC電圧の位相を検出することとなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等の「2.[理由I](2)(2-1)a?d」に加え、請求人が平成27年8月10日付意見書で補正の根拠と主張する【0034】、【0046】?【0051】、【0062】、【0146】を参照しても、送電網のAC電圧の位相を検出すること、及び、インバータ装置の出力を検出することの記載はあっても、現地負荷が接続されたインバータハードウェアの出力から送電網のAC電圧の位相を検出することは、記載も示唆もない。
したがって、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

(2-2)請求項14には、「インバータ装置であって、・・・略・・・前記送電網のAC電圧の位相を検出し」と記載されているから、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力から送電網のAC電圧の位相を検出することを含むこととなる。
そこで、当該補正が、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
翻訳文等の「2.[理由I](2)(2-1)a?d」に加え、請求人が平成27年8月10日付意見書で補正の根拠と主張する【0023】、【0051】、【0062】、【0146】を参照しても、送電網のAC電圧の位相を検出すること、及び、インバータ装置の出力を検出することの記載はあっても、現地負荷が接続されたインバータ装置の出力から送電網のAC電圧の位相を検出することは、記載も示唆もない。
したがって、「インバータ装置であって、・・・略・・・前記送電網のAC電圧の位相を検出し」との補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

(2-3)したがって、平成27年8月10日付でした手続補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


(3)当審の最後の拒絶の理由IIについての判断
(3-1)請求項1には、「送電網のAC電圧の位相を前記電力変換器が備えるインバータハードウェアの出力から検出する段階」と記載されているが、送電網のAC電圧の位相を送電網内で検出するのではなく、現地負荷が接続されたインバータハードウェアの出力でどの様にして検出するのか明細書に何ら開示が無く不明(この段階の次の段階で、インバータハードウェアは交流電流電力を出力しているから、この段階ではインバータハードウェアの出力から送電網のAC電圧の位相をどの様に検出するのか不明。)である。請求項14も同様である。

(3-2)請求項5には、「送電網条件」とあるが、どの様な条件であるのか一般的な用語ではないため構成が特定できず不明である。請求項6、7、9、10も同様である。
仮に、「送電網条件」が【0113】に記載された、日内時間、無効電力及び/又は有効電力必要量であるとすれば、日内時間、無効電力及び/又は有効電力必要量に基づいて力率を調整することとなるが、各々からどの様な演算を行って力率を調整するのか明細書に何ら開示が無く不明であり、しかも、日内時間とは電力分配のための時間(【0078】)であり、これをどの様にして力率調整に用いるのか明細書に何ら開示が無く不明であり、電力ソースが無効電力必要量、有効電力必要量を準備できない場合、どの様に力率を調整するのか明細書に何ら開示が無く不明であり、また、条件が2つ以上あるものは、これら条件に対して、優先順位を付けるか、重み付けをする等をしなければ力率調整のための演算ができないが、どの様にして優先順位付、重み付け等を行って演算しているのか明細書に何ら開示が無く不明である。

(3-3)請求項6には、「前記顧客構内からの1つ又はそれ以上の前記送電網条件を測定する段階」とあり、送電網条件が複数存在するものを含むと解するがこの点不明であり、仮に複数あるとすれば、力率を調整する段階で、複数の送電網条件に対して、優先順位を付ける、重み付けする等をしなければ力率調整のための演算ができないものと考えるが、どの様にして優先順位付、重み付け等を行っているのか何ら開示が無く不明である。
仮に、「送電網条件」が【0113】に記載された、日内時間、無効電力及び/又は有効電力必要量であるとすれば、日内時間、無効電力必要量、有効電力必要量を測定することとなるが、日内時間とは電力分配のための時間(【0078】)であり、日内時間を測定するとはどの様に行うのか明細書に何ら開示が無く不明であり、仮に日内時間を測定できてもその後力率を調整したのでは、調整が必要な時期が過ぎてから力率を調整しようとすることとなり、何故この様な測定・調整を行うのか不明であり、又、無効電力ではなく無効電力必要量を測定するとはどの様に行うのか明細書に何ら開示が無く不明であり、同様に有効電力必要量も不明である。

(3-4)請求項15には、「前記制御装置は、力率調整を現地で測定された測定値に基づいて補正することにより確定するソフトウェアアルゴリズムを更に実行する」とあるが、測定値とは何を測定するのか不明であり、又、力率調整のための測定値は電圧・電流の位相が一般的であり、通常電圧・電流の位相は現地で測定されるが、請求項15は請求項14を引用し、且つ「更に実行する」とあるから、請求項14は、制御装置が、現地で測定された測定値を用いないもの、ソフトウェアアルゴリズムを更に実行しないものも含んでおり、この場合、請求項14の制御装置は、どの様にして力率調整を行うのか明細書に何ら開示が無く不明である。請求項16も同様である。

(3-5)したがって、請求項1、5、6、7、9、10、14-16の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(4)むすび
したがって、平成27年8月10日付でした手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、請求項1、5、6、7、9、10、14-16の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-05 
結審通知日 2016-07-06 
審決日 2016-08-22 
出願番号 特願2011-551256(P2011-551256)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 55- WZ (H02J)
P 1 8・ 562- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 575- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 堀川 一郎
矢島 伸一
発明の名称 送電網結合負荷の現地電力ソースについての電力伝送管理  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ