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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
管理番号 1323460
異議申立番号 異議2015-700149  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-06 
確定日 2016-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5714499号発明「ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法およびそれを含むフォトクロミック組成物」の請求項1ないし4及び9ないし12に係る特許に対する特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5714499号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4及び9ないし12〕並びに〔5ないし8〕について訂正することを認める。 特許第5714499号の請求項11及び12に係る特許を維持する。 特許第5714499号の請求項1ないし4、9及び10に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5714499号(設定登録時の請求項の数は12。以下、「本件特許」という。)は、国際出願日である平成22年11月16日にされたとみなされる特願2011-540586号(優先権主張 平成21年11月16日)の出願に係るものであって、平成27年3月20日に設定登録された。
特許異議申立人 森岡道朗(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成27年11月6日、本件特許の請求項1ないし4及び9ないし12に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当合議体において、平成28年1月20日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年3月22日付けで、訂正請求書及び意見書を、同年同月25日付けで訂正請求書の手続補正書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、平成28年5月25日付けで意見書を、同年6月22日付けで上申書を提出した。
当合議体において、平成28年7月26日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者は、同年9月21日付けで、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書を提出した。



第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項(1)ないし(9)のとおりである。

訂正事項(1)
請求項1ないし4を削除する。

訂正事項(2)
明細書の段落【0001】の「およびその製造方法」を「の製造方法」に訂正する。

訂正事項(3)
明細書の段落【0006】の「ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを提供すること、および該ウレタン(メタ)アクリレートを」を「ウレタン(メタ)アクリレートを」に訂正する。

訂正事項(4)
請求項9及び10を削除する。

訂正事項(5)
明細書の段落【0087】の「限定されるものではない。」とある次に、「ただし、実施例17および18はいずれも参考例である。」を加入する。

訂正事項(6)
請求項11の「請求項9のモノマー組成物」を「水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり且つフェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物」に訂正する。

訂正事項(7)
明細書の段落【0001】の「製造方法」とある次に、「およびそれを含むフォトクロミック組成物」を加入する。

訂正事項(8)
明細書の段落【0007】の「即ち、本発明によれば、第1に、水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり、酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーが提供される。」を「即ち、本発明によれば、第1に、水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物に、さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物が提供される。」に訂正する。

訂正事項(9)
明細書の「発明の名称」の「ウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびその製造方法」を「ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法およびそれを含むフォトクロミック組成物」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項毎に訂正の請求をする場合に、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行っているか否か、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)の訂正は請求項1ないし4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(2)及び(3)の訂正は、上記訂正事項(1)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(4)の訂正は請求項9及び10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(5)の訂正は、上記訂正事項(4)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(6)の訂正は、請求項11において、請求項9の記載を引用し、さらに請求項9が請求項1の記載を引用する記載を他の請求項の記載を引用しないものとしつつ、「酸価」を「フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(7)及び(8)の訂正は、上記訂正事項(6)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項(9)の訂正は、上記訂正事項(1)、(4)及び(6)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の名称との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、上記訂正事項(1)?(9)の訂正は、一群の請求項に対して適法に請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の明細書(以下、「訂正明細書」という。)の発明の詳細な説明の「発明の名称」、段落【0001】、【0006】、【0007】及び【0087】、並びに、訂正後の請求項〔1ないし4及び9ないし12〕について訂正を認める。



第3 本件特許発明について

本件訂正により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」?「本件特許発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】
(1)酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーと有機溶媒からなる第一溶液と、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤とを接触させて酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える量の水を含む第二溶液を得る工程、
(2)前記第二溶液と脱水剤とを接触させて、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下の水を含む第三溶液を得る工程、及び
(3)前記第三溶液から有機溶媒を除去する工程
とを含むことを特徴とするウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項6】
有機溶媒として活性水素を含まない有機溶媒を使用することを特徴とする請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項7】
含水吸着剤が、結晶水または付着水を有する無機吸着剤である請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項8】
第一溶液に含まれる有機溶媒の量が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、100質量部?500質量部である請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項9】 (削除)
【請求項10】 (削除)
【請求項11】
水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり且つフェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物に、さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物。
【請求項12】
請求項11のフォトクロミック組成物を硬化させてなるフォトクロミック硬化体。」



第4 取消理由(決定の予告)の概要

平成28年7月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)は、本件特許の請求項1ないし4、9及び10に係る発明は、いずれも下記刊行物に記載されているか、下記刊行物に記載の発明に基いてこの発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4、9及び10に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきである、というものである。

刊行物:特開2007-31674号公報(異議申立人の証拠方法である甲第1号証)



第5 当審の判断

1.取消理由(決定の予告)について
上記第2で述べたとおり、請求項1ないし4、9及び10は、本件訂正により削除されたことにより、異議申立人が特許異議の申立てをした本件特許発明1ないし4、9及び10に係る特許については特許異議の申立ての対象が存在しないこととなった。
したがって、取消理由(決定の予告)において取り消すべきであると通知した本件特許発明1ないし4、9及び10に係る特許については特許異議の申立ての対象が存在しないこととなったため、取消理由(決定の予告)は解消している。
以下においては、取消理由(決定の予告)において取消理由はないとされた本件特許発明11及び12に係る特許について、念のため検討する。

2.取消理由の検討
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
ア 本件特許発明11に係る特許についての検討
(ア)刊行物
刊行物:特開2007-31674号公報(異議申立人の証拠方法である甲第1号証)
(イ)刊行物の記載事項
本件特許に係る優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特開2007-31674号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 「【請求項1】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)環状構造を有するN-ビニル化合物、(C)(A)及び(B)以外のエチレン性不飽和基含有化合物、並びに(D)光重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物であって、組成物の酸価が、0.05mgKOH/g以下であり、かつ、組成物のアミン価が、0.01mgKOH/g以下である液状硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
b 「【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高n値の光ファイバ素線が得られるとともに、高速硬化性に優れ、保存安定性も高い液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この様な状況に鑑みて鋭意研究した結果、液状硬化性樹脂組成物中の強酸成分の含有量及び塩基性成分の含有量を低く抑えることにより、高n値の光ファイバ素線が得られ、ジエチルアミン等の光増感剤を添加しなくても、高速硬化が可能で、保存安定性も高い液状硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0005】?【0007】)
c 「本発明の液状硬化性樹脂組成物に用いられる(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えば、(a)ポリオール化合物、(b)ポリイソシアネート化合物、(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および(d)イソシアネート基と反応しうる官能基を有するシラン化合物を反応させて得られる。」(【0010】)
d 「(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(b)ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体的化合物として、好ましい例としては、芳香族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、より好ましくは、2,4-トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で用いても、2種以上併用しても良い。」(【0015】)
e 「本発明の液状硬化性樹脂組成物の酸価は、0.05mgKOH/g以下であることが必要である。ここで、酸価とは組成物100gを中和する水酸化カリウムのmg数をいう。
組成物中の酸成分は、(C)成分標品中に不純物として含まれることのある(メタ)アクリル酸にも由来するが、強酸成分としてはp-トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。これらの有機スルホン酸の由来は、主に(C)成分の製造時にエステル化触媒として使用されたp-トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸等の残存物であると考えられ、多くの市販の(C)成分標品を用いた場合には、本発明の組成物に配合した場合、0.05mgKOH/gとすることが困難である。このような強酸成分の含有量が高いと、液状硬化性樹脂組成物の粘度が経時的に上昇して保存安定性が低下するほか、組成物を硬化して得られる硬化膜の耐湿熱性が低下する。
このため、本発明の液状硬化性樹脂組成物に含まれる、有機スルホン酸の濃度は、組成物全量に対して、100ppm以下、特に30ppm以下、更に20ppm以下であるのが好ましい。」(【0044】?【0045】)
f 「合成例1(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール50.7部、トルエンジイソシアネート6.739部、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.014部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.044部を添加した後、攪拌しながら液温度を1時間かけて40℃まで徐々に上げた。その後、液温度を45℃に上げて反応させた。残留イソシアネート基濃度が1.49重量%(仕込量に対する割合)以下となった後、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ コーニング社製 SH6062)0.3部を添加し、液温度約50℃で2時間攪拌した。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.01部を添加し、液温度約55℃にて1時間撹拌し反応させた。さらにメタノール0.251部を添加し液温度約60℃で1時間攪拌した。その後、残留イソシアネート基濃度が0.05重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを「オリゴマーA」とする。」(【0052】)
g 「試験例
(1)組成物の酸価:
実施例及び比較例で得られた組成物5gを、2-プロパノール(40mL)と超純粋(10mL)に溶解させる。その溶液の酸価を、電位差滴定装置(平沼製作所製COM-2000)を用いて0.1N水酸化カリウム水溶液で滴定し、算出した。」(【0058】)
h 「【表1】

」(【0068】)
i 「表1中、
アロニックスM-113:ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、東亞合成株式会社(酸価は、0.06mgKOH/gである。)
M-113-low:製造例1で得られた、酸価を低減させたノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート標品。」(【0069】)

(ウ)引用文献に記載された発明
上記(イ)a及びfの摘示によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)環状構造を有するN-ビニル化合物、(C)(A)及び(B)以外のエチレン性不飽和基含有化合物、並びに(D)光重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物であって、組成物の酸価が、0.05mgKOH/g以下であり、かつ、組成物のアミン価が、0.01mgKOH/g以下であり、当該ウレタン(メタ)アクリレートが、数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール50.7部、トルエンジイソシアネート6.739部、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.014部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却し、ジブチル錫ジラウレート0.044部を添加した後、攪拌しながら液温度を1時間かけて40℃まで徐々に上げた後、液温度を45℃に上げて反応させ、残留イソシアネート基濃度が1.49重量%(仕込量に対する割合)以下となった後、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ コーニング社製 SH6062)0.3部を添加し、液温度50℃で2時間攪拌した後、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.01部を添加し、液温度55℃にて1時間撹拌し反応させ、さらにメタノール0.251部を添加し液温度60℃で1時間攪拌した後、残留イソシアネート基濃度が0.05重量%以下になった時を反応終了として得られたウレタン(メタ)アクリレートである、液状硬化性樹脂組成物。」(以下、引用発明に係るウレタン(メタ)アクリレートを「オリゴマーA」という。)

(エ)本件特許発明11と引用発明との対比・判断
まず、引用発明におけるオリゴマーAが、本件特許発明11におけるウレタン(メタ)アクリレートの要件(水分含有量及び酸価)を満たすかどうか以下に検討する。
a 水分含有量について
まず、水分含有量について検討すると、ポリプロピレングリコールとトルエンジイソシアネートとの反応の際、系中の水分は消費されるものと認められ、当該ウレタン化反応後において系中に特に水を添加するとの記載もない。そして、本件訂正明細書においても、通常のウレタン(メタ)アクリレートの水分含有量は2000ppm(質量)以下を満足すると記載されている(段落【0052】)ことからみても、オリゴマーAの水分含有量は本件特許発明11で特定する2000ppm(質量)以下を満足する蓋然性が高いといえる。
b 酸価について
(a)次に、酸価について検討すると、引用文献の表1とその説明(摘示(イ)h?i)によれば、実施例1及び2では、オリゴマーAを60質量部、N-ビニルカプロラクタム6質量部、製造例1あるいは製造例2で得られた酸価を低減させたノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート標品30質量部、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1.3質量部、Sumilizer GA-80 0.6質量部及びγ-メタアクロリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部の組成物の酸価が≦0.01であることが記載されており、同じく比較例2では、製造例1あるいは製造例2で得られた酸価を低減させたノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート標品に代えてアロニックスM-113(酸価0.06mgKOH/g)を用いた場合の組成物の酸価が0.06であることが記載されている。そして、これらの組成物において酸価を低減させる成分は含んでいないものと認められる。そうすると、組成物の酸価と(B)及び(C)成分からみて、(A)成分であるオリゴマーA自体の酸価は、ほとんど0であるということができるから、本件特許発明11で特定する0.2mgKOH/g以下を満足する蓋然性が高いといえる。
(b)ここで、酸価について、引用文献では、「電位差滴定装置による酸価」(摘示(イ)g)であるのに対して、本件特許発明11では、「フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価」であることから、両者はその定義を異にするものであるが、両者共に同じ「酸価」を測定するものである点で共通するものであり、その際の測定方法が相違するにすぎないものであって、両測定方法の違いによって測定される酸価の値に大きな差があるものとは認められない。
この点は、例えば、異議申立人が平成28年6月22日に提出した上申書に添付の参考資料2の3頁の表2における市販のDBTDL(ジブチル錫ジラウレート)2種類と2HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)4種類との、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法と電位差滴定法による酸価の測定結果によっても、DBTDL(ジブチル錫ジラウレート)については、(株)ADEKA製アデカスタブBT-11(Lot.No.101Z9)では152.7と151.8、和光純薬工業(株)製ジラウリン酸ジブチルすず(IV)(Lot.No.ECE6160)では152.5と151.9、2HEA(2-ヒドロキシエチルアクリレート)については、(株)日本触媒製BHEA(Lot.No.6E12KB)では1.0と0.9、東亞合成(株)製アクリックスHEA(Lot.No.350604A8)では1.3と1.3、大阪有機化学工業(株)製HEA(Lot.No.1086562)では1.3と1.3、東亞合成(株)製アクリル酸2-ヒドロキシエチル(Lot.No.SAM5644)では1.1と1.0となっており、これら全てに亘って両測定方法による酸価の測定値の差はごく僅かなものであると認められる。
c 特許権者の主張についての検討
(a)特許権者は、実験成績証明書(乙第1号証)を提出して甲1文献(引用文献)における酸価は電位差滴定法による酸価であり本件特許発明1の酸価とは相違する、そして、市販品の2-ヒドロキシエチルアクリレート(和光純薬工業(株)製Lot.No.SAM5643)の酸価が中和滴定法では105.9であり、電位差滴定法では0.8であり、両者は大きく異なるものであると主張する。
しかしながら、上記b(b)で述べたとおり、市販の2-ヒドロキシエチルアクリレートに関し、(株)日本触媒、東亞合成(株)、大阪有機化学工業(株)及び東亞合成(株)の4社による各試料の測定結果(上申書に添付の参考資料2)を参酌すれば、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法と電位差滴定法による酸価とは大きく異なるものであるとは認められない。そして、2-ヒドロキシエチルアクリレートの酸価が測定法により大きく異なるという乙第1号証の結果が仮に正しいとしても、それはあくまでも和光純薬工業(株)製Lot.No.SAM5643に特有の事情に限られるものというべきものである(同じ和光純薬工業(株)製であってLot.No.が1つしか違わないSAM5644では、上申書の参考資料2のとおり、中和滴定法では1.1であり、電位差滴定法では1.0であり、両者はほとんど差がないものであって、その酸価の値も1程度の小さな値である。)。そして、引用文献において使用された2-ヒドロキシエチルアクリレートが、和光純薬工業(株)製Lot.No.SAM5643であるとする特段の理由もない。したがって、特許権者の主張は採用することはできない。
(b)また、特許権者は、上記(a)のとおり、市販品の2-ヒドロキシエチルアクリレート(和光純薬工業(株)製Lot.No.SAM5643)の酸価が中和滴定法では105.9であり、この値から算出されるオリゴマーAの酸価は3.65であるから、本件発明1で特定する「フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下」を満足しないとも主張する。
しかしながら、上記b(b)で述べたとおり、和光純薬工業(株)製Lot.No.SAM5643を除く他の市販の4種の2-ヒドロキシエチルアクリレートは、中和滴定法でも電位差滴定法でも共に1程度の酸価を有するものであるといえ、仮に酸価1の2-ヒドロキシエチルアクリレートを引用文献の合成例でのオリゴマーAの製造に使用したとすれば、オリゴマーAの酸価は0.15程度になると算出され、この値は本件特許発明11で特定する「フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下」を満足している。したがって、2-ヒドロキシエチルアクリレートの特定の市販品に基づく特許権者の主張は採用することはできない。
d 対比
以上のとおり、引用発明におけるオリゴマーAは、本件特許発明11におけるウレタン(メタ)アクリレートの要件(水分含有量及び酸価)を満たすものと認められるから、本件特許発明11と引用発明とは、「水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり且つフェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物に、さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物。」である点で一致し、以下の相違点1で相違するものといえる。

相違点1:本件特許発明11では「さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物」であるのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。
e 判断
引用文献には、オリゴマーAを含む液状硬化性樹脂組成物を「高n値の光ファイバ素線」(摘示(イ)b)に用いることまでは記載されているものの、フォトクロミック組成物に用いることに関し記載も示唆もない。そして、本件特許に係る優先日当時において、光ファイバ素線用に用いられる液状硬化性樹脂組成物であればフォトクロミック組成物に使用することが自明であるとの技術常識があったものともいえない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点である。
f まとめ
したがって、本件特許発明11と引用発明とは一致するとはいえないから、本件特許発明11は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものとはいえない。

イ 本件特許発明12に係る特許についての検討
本件特許発明12は、「請求項11のフォトクロミック組成物を硬化させてなるフォトクロミック硬化体」に係るものであるから、本件特許発明11で検討したのと同じ理由によって、本件特許発明12と引用文献に記載された発明とは一致するとはいえないから、本件特許発明12は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものとはいえない。

(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 本件特許発明11に係る特許についての検討
(ア) 引用文献、引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明、本件特許発明11と引用発明との対比
引用文献、引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明、本件特許発明11と引用発明との対比については、上記(1)ア(ア)?(エ)dのとおりである。

(イ) 本件特許発明11と引用発明との対比についての判断
上記(1)ア(エ)eで述べたとおり、引用文献には、オリゴマーAを含む液状硬化性樹脂組成物をフォトクロミック組成物ないしフォトクロミック硬化体に使用することに関し記載も示唆もない。また、光ファイバ素線用に用いられる液状硬化性樹脂組成物をフォトクロミック組成物に使用することが当業者にとり本件特許に係る優先日当時における技術常識であるともいえない。
なお、異議申立人は、オリゴマーAを含む液状硬化性フォトクロミック組成物ないしフォトクロミック硬化体に使用することについて、「通常の用途で使用した」ものとのみ主張し、引用発明に係る光ファイバ素線用に用いられる液状硬化性樹脂組成物をフォトクロミック組成物に使用することの動機付けとなる証拠を示すものではない。
そうすると、本件特許発明11は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ) まとめ
したがって、本件特許発明11は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものとはいえない。

イ 本件特許発明12に係る特許についての検討
本件特許発明12は、「請求項11のフォトクロミック組成物を硬化させてなるフォトクロミック硬化体」に係るものであるから、本件特許発明11で検討したのと同じ理由によって、本件特許発明12は、引用文献に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものとはいえない。



第6 むすび

以上のとおりであるから、異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許発明11及び12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明11及び12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許発明1ないし4、9及び10に係る特許に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が本件訂正により削除されたため、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法およびそれを含むフォトクロミック組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法およびそれを含むフォトクロミック組成物に関する。本発明において、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーとは、ウレタンアクリレートモノマー、およびウレタンメタアクリレートモノマーの両者を包含する意味で用いられる。
【背景技術】
【0002】
熱や活性エネルギー線により硬化して塗料などの用途に使用されるモノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの、分子中に(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基またはメタアクリロイル基)を有するモノマーがある。この中でも、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、イソシアネート基を含有する化合物と、ヒドロキシル基又はカルボキシル基とを含有する化合物から合成できるため、これら化合物を組み合わせることにより幅広い分子設計が可能である。このため、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、各種コーティング剤、接着剤、塗料、プラスチック製品の材料として、広く使用されている。
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、前述したようにイソシアネート基を含有する化合物と、ヒドロキシル基又はカルボキシル基とを含有する化合物から合成されるので、得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマー中には、酸性成分や副生する高分子量不純物が残存する場合がある。この酸性成分は、使用する用途により問題になったり、ならなかったりする。例えば、感光樹脂の用途にウレタン(メタ)アクリレートモノマーを使用する場合は、何ら問題とならない。感光樹脂の用途においては、酸価が5mgKOH/g以上であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーが好適に使用されている(特許文献1および特許文献2参照)。そのため、酸価の高いウレタン(メタ)アクリレートモノマーが数多く市販されている。
【0003】
しかしながら、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー中に含まれる酸性成分は、他のモノマー成分や添加剤成分と反応することがあり、感光樹脂以外の用途においては、得られるポリマーが着色し、或いは変色する原因となる場合があった。また、酸性成分を多く含み、酸価が高いウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、保存安定性が低下する場合があり、この点でも改善の余地があった。
例えば、レンズなどの光学材料の用途においては硬化体の要求特性として機械強度が高いことや収縮率が小さいことが挙げられる。これらの要求を満たすために、硬化体組成物の成分としてウレタン(メタ)アクリレートモノマーを用いることが有効であるが、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー中に含まれる酸性成分は、耐候性の低下を引き起こす点で問題である。また、光学材料がフォトクロミックレンズ材料であるときには、酸性成分はフォトクロミック色素の劣化を引き起こす要因となりうるため、この点においても改善の余地があった。
一方、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー中に含まれる高分子量不純物は、該モノマーの粘度を増加させるため、製造時の濾過操作を煩雑にする場合があった。さらに、この高分子量不純物は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーをプライマー用途に使用する場合には、析出物の原因となり、その性能を低下させる場合があった。
これらの対策として、高分子量不純物を含むウレタン(メタ)アクリレートモノマーを水溶性有機溶媒に溶解させ、得られた溶液と活性炭、合成樹脂吸着剤、活性アルミナ等の吸着剤とを接触させることにより、該高分子量不純物を低減する方法が知られている(特許文献3参照)。この方法において、特に活性アルミナを使用した場合には、効率よく酸性成分をも除去できると考えられる。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によると、活性アルミナを使用した場合、酸性成分を除去できても高分子量不純物を十分に低減できない場合があることが判明した。特許文献3の実施例には、0.6%の高分子量不純物を含有するウレタン(メタ)アクリレートモノマーをエタノールに溶解させ、得られた溶液と活性アルミナとを接触させることにより、高分子量不純物が0.3%になることが示されている。この方法に従い、高分子量不純物を含んでいないウレタン(メタ)アクリレートモノマーを溶解した溶液と、活性アルミナとを接触させ、次いで、活性アルミナをろ過した後、ろ液を濃縮して、酸価の低減されたウレタン(メタ)アクリレートを製造したところ、やはり0.3%程度の高分子量不純物が含まれることが分かった。このことは特許文献3の方法により、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを吸着剤である活性アルミナと接触処理すると、高分子量不純物が新たに生成することを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2005-331932号公報
【特許文献2】 特開2006-201546号公報
【特許文献3】 特開2007-63189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、酸価が低く、高分子量不純物が少なく、さらに、保存安定性にも優れるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを効率よく製造できる方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。先ず、酸性成分及び高分子量不純物の低減を目的として、吸着剤を、高分子量不純物を含まないウレタン(メタ)アクリレートモノマーと接触させた場合に、接触後に高分子量不純物が増加する原因について検討した。そして、吸着剤の違いによる効果の差を確認したところ、活性アルミナを使用した場合には、蒸気の如く、酸性成分を除去できるが、高分子量不純物を十分に除去できず、一方活性炭を使用した場合には、酸性成分を吸着することはできないが、高分子量不純物を低減できることが分かった。これら活性炭と活性アルミナとの作用の違いを考えると、活性アルミナは、結晶水を含んでいるため酸性成分に対し優れた吸着能力を発揮するが、他方この結晶水が高分子量不純物の副成にも与っているものと考えられる。一方、本発明者らが行った研究の結果、吸着剤処理後の溶液に含まれる水分量と高分子量不純物の生成量との間に関連性があり、水分量を特定の量以下にすることにより、高分子量不純物の生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明によれば、第1に、水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物に、さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物が提供される。このウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくは1質量%テトラヒドロフラン溶液としたときの不溶成分の質量がウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して0.1質量%以下であり、かつ、平均分子量がウレタン(メタ)アクリレートモノマーの3倍以上である高分子量成分の含有量が0.3質量%未満である。
【0008】
また、本発明によれば、第2に、上記ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを製造する方法として、
(1)酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーと有機溶媒からなる第一溶液と、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤とを接触させて、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える量の水を含む第二溶液を得る工程、
(2)前記第二溶液と脱水剤とを接触させて、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下の水を含む第三溶液を得る工程、及び
(3)前記第三溶液から有機溶媒を除去する工程
とを含むことを特徴とするウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法が提供される。
上記方法において、前記有機溶媒として活性水素を含まない有機溶媒を使用することが好ましい。
さらに、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤は、結晶水または付着水を含有している無機吸着剤である。
本発明において、高分子量成分の含有量は、下記に詳述するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定により求めたピーク面積%である。本発明においては、前記高分子量成分を高分子量不純物という場合もある。また、前記水分量は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの質量に対する割合である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸価が低く、しかも、高分子量不純物が少ないウレタン(メタ)アクリレートモノマーを容易に製造することができる。得られたウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、酸性成分が極めて低いため、劣化反応が抑制されている。このため、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの保存安定性はよいものとなる。また、該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを使用して得られる硬化体は、含まれる不純物が非常に少ないため、変色や着色が少なく品質の高いものとなる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーとフォトクロミック化合物を併せて使用する場合においても、本発明の方法を適用することにより、フォトクロミック化合物の耐候性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法によれば、酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを原料として酸価のより低いウレタン(メタ)アクリレートモノマーを得ることができる。以下、順を追って説明する。
<水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり、酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマー>
本発明において好適なるウレタン(メタ)アクリレートモノマーは下記式(1)で表すことができる。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
aは、互に独立に、1?3の整数であり、
b、cおよびdはそれぞれ独立に0?100の整数である。
R^(1)は水素またはメチル基であり、
R^(2)は置換基を有していてもよい2?4価の脂肪族炭化水素基であり、
R^(3)は芳香環を有する2価の基、脂肪族環を有する2価の基およびアルキレン基から選ばれる2価の有機残基であり、
R^(4)はポリエーテル構造を有する2価の基、ポリカーボネート構造を有する2価の基およびポリエステル構造を有する2価の基から選ばれる2価の有機残基であり、
R^(5)はウレア結合を有する2価の基またはウレタン結合を有する2価の基である。)
【0013】
前記式(1)において、R^(2)は置換基を有していてもよい2?4価の脂肪族炭化水素基である。ここで、脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1?10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。また、該脂肪族炭化水素基に置換する置換基としては、例えば炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のアルコキシ基、フェノキシ基が挙げられる。該置換基としては、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基が好適である。
2?4価の脂肪族炭化水素基としては、原料の入手のしやすさという観点から、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基および下記式
【0014】
【化2】

【0015】
で示される脂肪族炭化水素基が好適である。
前記式(1)において、R^(3)は芳香環を有する2価の基、脂肪族環を有する2価の基またはアルキレン基から選ばれる2価の有機残基である。以下にR^(3)で示される2価の基について説明する。
【0016】
・芳香環を有する2価の基
芳香環としては、例えばベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、ナフタレンが挙げられる。2価の基の結合手は、芳香環に直接結合していても、メチレン基を介して結合していてもよい。また、芳香環は置換基を有していても、有していなくてもよい。このような芳香環を有する2価の基の好ましいものは、下記式で表すことができる。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R_(a)は炭素数1?4のアルキル基または炭素数1?4のアルコキシ基であり、
mは置換基R_(a)の数を表す0?3の整数であり、nは0または1の整数である。)
上記の式で表される芳香環を有する2価の基の中でも、下記式で示されるものが好適である。
【0019】
【化4】

【0020】
・脂肪族環を有する2価の基
脂肪族環としては、例えばシクロヘキサン、水素化ビフェニル、水素化ジフェニルメタン、ビシクロ環等が挙げられる。なお、2価の基の結合手は脂肪族環に直接結合していても、メチレン基を介して結合していてもよい。また、脂肪族環は置換基を有していても、有していなくてもよい。このような脂肪族環を有する2価の基の好ましいものは、下記式で表すことができる。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R_(b)は炭素数1?4のアルキル基または炭素数1?4のアルコキシ基であり、
sは置換基R_(b)の数を表す0?3の整数であり、tは0または1である。)
上記の式で表される脂肪族環を有する2価の基の中でも、下記式で示されるものが好適である。
【0023】
【化6】

【0024】
・アルキレン基
炭素数1?10の直鎖状または分枝状のアルキレン基が好ましく、1つまたは2つ以上のメチル基を有していても良い。炭素数1?6の直鎖状または分枝状アルキレン基がより好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基および下記基を好適なものとして挙げることができる。
【0025】
【化7】

【0026】
前記式(1)において、R^(4)はポリエーテル構造を有する2価の基、ポリカーボネート構造を有する2価の基およびポリエステル構造を有する2価の基から選ばれる2価の有機残基である。以下にR^(4)で示される2価の基について説明する。
【0027】
・ポリエーテル構造を有する2価の基
ポリエーテルポリオール化合物またはポリアルキレンポリオール化合物から誘導される基であり、好ましくは、下記式
【0028】
【化8】

【0029】
で示される2価の基である。ここで、R^(7)およびR^(8)はそれぞれ独立に炭素数1?10のアルキレン基であり、eおよびfはそれぞれ独立に0?50の整数であり、同時に0となることはない。R^(7)およびR^(8)は、炭素数1?6のアルキレン基が好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが好適な基として挙げられる。また、eおよびfはそれぞれ0?20の整数であることが好ましく、それぞれ0?10の整数であることが特に好ましい。
【0030】
・ポリカーボネート構造を有する2価の基
ポリカーボネートポリオール化合物から誘導される基であり、好ましくは下記式
【0031】
【化9】

【0032】
で示される2価の基である。ここで、R^(9)およびR^(10)はそれぞれ独立に炭素数1?20の2価の炭化水素基であり、gは1?50の整数であり、hは0?50の整数である。R^(9)およびR^(10)としては、炭素数1?6のアルキレン基または炭素数13?20のビスフェノールから誘導される2価の基が好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基および下記式
【0033】
【化10】

【0034】
で示される基が好適である。また、gは1?20の整数が好ましく、1?10の整数が特に好ましい。hは0?20の整数が好ましく、0?10の整数が特に好ましい。
【0035】
・ポリエステル構造を有する2価の基
ポリエステルポリオール化合物から誘導される基であり、好ましくは下記式
【0036】
【化11】

【0037】
で示される2価の基である。ここで、R^(11)およびR^(12)はそれぞれ独立に炭素数1?10のアルキレン基であり、iは0または1の整数であり、jは1?50の整数である。)
で示される2価の基である。R^(11)およびR^(12)としては、炭素数1?6のアルキレン基が好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが好適である。また、jは1?20の整数であることが好ましく、1?10の整数であることが特に好ましい。
前記式(1)において、R^(5)はウレア結合を有する2価の基もしくはウレタン結合を有する2価の基である。以下にR^(5)で示される2価の基について説明する。
【0038】
・ウレア結合を有する2価の基
分子中にウレア結合(-NH-C(=O)-NH-)を有する基であり、好ましくは下記式
【0039】
【化12】

【0040】
(式中、R^(13)は2価の炭化水素基である。)
で示される基である。上記式においてR^(13)で示される基は炭素数1?20の2価の炭化水素基であり、R^(3)で説明した前記基と同様の基を好適な基として挙げられる。これらの中でも、脂肪族環を有する2価の基または炭素数1?10のアルキレン基が好ましい。
【0041】
・ウレタン結合を有する2価の基
分子中にウレタン結合(-NH-C(=O)O-)を有する基であり、好ましくは下記式
【0042】
【化13】

【0043】
(式中、R^(14)は2価の炭化水素基である。)
で示される基である。上記式においてR^(14)で示される基は炭素数1?20の2価の炭化水素基であり、R^(3)で説明した前記基と同様の基を好適な基として挙げられる。これらの中でも、脂肪族環を有する2価の基または炭素数1?10のアルキレン基が好ましい。また、本発明で好適に得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーは前記式(1)で示されるが、分子中に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格や2,6-ジ-tert-ブチルフェノール骨格を含んでいてもよい。
【0044】
<酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマー>
本発明方法において、原料として使用されるウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、酸価が0.2mgKOH/gを超えるものであり、市販のものも使用できる。このようなウレタン(メタ)アクリレートモノマーは公知の方法により製造できる。以下、酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを単に、原料ウレタンモノマーという場合もある。
本発明方法によれば、酸価が0.2mgKOH/gを超えるようなウレタン(メタ)アクリレートモノマーの酸価を0.2mgKOH/g以下とすることができる。原料ウレタンモノマーの酸価の上限は、0.2mgKOH/gを超える値であれば特に制限されるものではないが、通常のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造及び入手の容易さを考慮すると、約30mgKOH/gである。この中でも、本発明方法で好適に適用できる原料ウレタンモノマーの酸価は、好ましくは0.2mgKOH/gを超え25mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.2mgKOH/gを超え20mgKOH/g以下である。特に、工程(1)において、下記で説明する結晶水または付着水を含有する無機吸着剤を使用する場合には、原料ウレタンモノマーの酸価があまり高いと酸価低減できない場合があるために、この場合に使用する原料ウレタンモノマーは、酸価が0.2mgKOH/gを超え10mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0045】
ウレタン製造用原料化合物から、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを製造するには、一般的には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;スルホン酸、オキシ酸、カルボン酸等の有機酸;ジラウリル酸-n-ブチルスズ、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、塩化トリn-ブチルスズなどの有機酸の金属塩などの酸またはその塩が触媒として用いられる。そのため、合成されるウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、これらの触媒由来の酸性成分が残存して酸価が高くなる。また、ウレタン製造用原料化合物のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物由来の(メタ)アクリル酸も、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー中に残存し、酸価を高くする原因となる。このような触媒由来の酸性成分および(メタ)アクリル酸等の酸性成分を不純物として含むため、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(原料ウレタンモノマー)の酸価は、0.2mgKOH/gを超えるものとなる。感光樹脂の原料として使用する場合には、酸価の高いウレタン(メタ)アクリレートモノマーが使用されるため、酸価が10mgKOH/g?50mgKOH/gのものも市販されている。
【0046】
また、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる硬化体には、長期間の使用でも着色しないことが要求されることが多いが、このような要求を満たすために原料ウレタンモノマーは脂環式イソシアネートまたは脂肪族イソシアネートを原料として合成されたものが好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートモノマーは一般的に無黄色タイプと呼ばれている。本発明の方法は、酸価が0.2mgKOH/gを超える原料ウレタンモノマーを対象とすれば特に制限されるものではないが、上記のように脂環式イソシアネートまたは脂肪族イソシアネートを原料として合成されたウレタン(メタ)アクリレートモノマーを用いた場合に好適に適用できる。
さらに、この原料ウレタンモノマーの中でも、アクリロイル基を有する原料ウレタンモノマーは、マイケル付加反応を起こし易く、高分子量不純物を生成し易い。そのため、本発明においては、ヒドロキシアルキルアクリレートを使用して合成されたもの、特に、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートまたは2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートを使用して合成された原料ウレタンモノマーを対象とすることが好ましい。
また、本発明の方法は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を複数有する原料ウレタンモノマーを対象とする場合に好適に適用できる。具体的には、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個?6個有する原料ウレタンモノマーを対象とする場合である。先述したように、(メタ)アクリロイル基を複数有する原料ウレタンモノマーは、マイケル付加反応を起こし易く、高分子量不純物を生成し易いと考えられる。そのため、本発明の方法は、上記のような原料ウレタンモノマーを対象とする場合に優れた効果を発揮する。
【0047】
さらに、本発明の方法は、分子量が300?10万、好ましくは分子量が300?5万、さらに好ましくは300?5,000である原料ウレタンモノマーを対象とする場合に、好適に適用できる。なお、この原料ウレタンモノマーの分子量は、構成する原子の種類から計算される値である。上記分子量の原料ウレタンモノマーは、粘度が高い。本発明者らの推定によると、有機溶媒を除去する際に分子間でマイケル付加反応が起こり、高次元に架橋した高分子量不純物が生成される可能性が高い。そのため、溶媒が徐々に除去され、さらに、元々、粘度が高い該原料ウレタンモノマーから高分子量不純物が生成すると、急激に粘度が高くなるものと考えられ、その結果、後処理がより煩雑となるものと考えられる。本発明の方法は、高分子量不純物の生成を抑制できるため、上記分子量の原料ウレタンモノマーを対象とする場合に、優れた効果を発揮できる。
【0048】
本発明において、原料ウレタンモノマーは、分子中に、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有しており、ポリイソシアネート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び必要に応じてポリオール化合物、ポリアミン化合物等の組み合わせから合成されるものであり、市販のものを使用することもできる。市販されている原料ウレタンモノマーを具体的に挙げると、下記のようなものが挙げられる。
【0049】
(1)新中村化学工業(株)製のウレタン(メタ)アクリレートモノマーとして、NKオリゴU-4HA(無黄変タイプ、アクリロイル基数4、分子量約600)、NKオリゴU-4H(無黄変タイプ、メタアクリロイル基数4、分子量約600)、NKオリゴU-6HA(無黄変タイプ、アクリロイル基数6、分子量約1,000)、NKオリゴU-6H(無黄変タイプ、メタアクリロイル基数6、分子量約1,000)、NKオリゴU-108A(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,600)、NKオリゴU-122A(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,100)、NKオリゴU-2PPA(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約500)、NKオリゴUA-5201(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,000)、NKオリゴUA-1101H(アクリロイル基数6、分子量約1,800)、NKオリゴUA-6LPA(アクリロイル基数6、分子量約800)、NKオリゴUA-412A(アクリロイル基数2、分子量約4,700)、NKオリゴUA-4200(アクリロイル基数2、分子量約1,300)、NKオリゴUA-4400(アクリロイル基数2、分子量約1,300)、
【0050】
(2)共栄社化学(株)製のウレタン(メタ)アクリレートモノマーとして、AH-600(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約600)、AI-600(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約600)、UA-101H(無黄変タイプ、メタアクリロイル基数4、分子量約600)、UA-101I(無黄変タイプ、メタアクリロイル基数4、分子量約700)、UA-306H(無黄変タイプ、アクリロイル基数6、分子量約700)、UA-306I(無黄変タイプ、アクリロイル基数6、分子量約800)、
【0051】
(3)ダイセル・サイテック(株)製のウレタン(メタ)アクリレートモノマーとして、Ebecryl270(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,500)、Ebecryl210(アクリロイル基数2、分子量約1,500)、Ebecryl1290K(無黄変タイプ、アクリロイル基数6、分子量約1,000)、Ebecryl5129(無黄変タイプ、アクリロイル基数6、分子量約800)、Ebecryl4858(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約600)、Ebecryl8210(無黄変タイプ、アクリロイル基数4、分子量約600)、Ebecryl8402(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,000)、Ebecryl9270(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,000)、Ebecryl230(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約5,000)、Ebecryl8201(無黄変タイプ、アクリロイル基数3、分子量約2,100)、Ebecryl8804(無黄変タイプ、アクリロイル基数2、分子量約1,300)、などが挙げられる。
【0052】
また、該原料ウレタンモノマーは、高分子量不純物の含有量が0.3質量%以下であることが好ましく、0.0質量%(下記のGPC測定の検出限界)であることがより好ましい。高分子量不純物が少ないものを使用することにより、最終的に得られるものの純度を容易に高くすることができる。
さらに、原料ウレタンモノマーは、水分量が2,000ppm(質量)以下のものであることが好ましい。なお、水分量の下限は、0ppm(質量)(下記に示す水分量の測定の検出限界)である。通常の市販品であれば、水分量は前記範囲を満足する。
【0053】
本発明は、酸価が0.2mgKOH/gを超える原料ウレタンモノマーの酸価を低減し、さらに、その際、高分子量不純物の生成を抑制するものである。そして、この目的を達成するために、
(1)酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーと有機溶媒からなる第一溶液と、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤とを接触させて酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える量の水を含む第二溶液を得る工程、
(2)前記第二溶液と脱水剤とを接触させて、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下の水を含む第三溶液を得る工程、及び
(3)前記第三溶液から有機溶媒を除去する工程
の各工程を有する。
以下、各工程について説明する。
【0054】
<工程(1) 原料ウレタンモノマーの酸価を0.2mg/KOHg以下にする工程>
本工程においては、前記原料ウレタンモノマーの酸価を0.2mg/KOHg以下にする。この酸価の低減には、先ず、該原料ウレタンモノマーを有機溶媒に溶解させ、得られた第一溶液を、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤と接触させる。含水吸着剤との接触後の酸価は低ければ低いほどよい。つまり、下記の実施例で示す方法により測定した酸価が0mgKOH/gになることが最も好ましい。ただし、工業的なウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造を考慮すると、含水吸着剤との接触後の酸価は、0.01mgKOH/g以上であることが多い。
【0055】
第一溶液に使用する有機溶媒
本発明において、原料ウレタンモノマーを溶解させる有機溶媒は、該原料ウレタンモノマーが溶解し、該モノマーと反応しない溶媒であれば、特に制限されるものではない。具体的には、炭素数1?4のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール溶剤などが挙げられる。
本発明においては、後述する(2)の工程において水分量を低減する工程を含むため、有機溶媒に対する水の溶解度は低い方が好ましい。さらに、活性化水素を含まない有機溶媒を使用することが好ましい。具体的には、活性化水素を含まず、有機溶媒に対する水の溶解度が20℃において20容量%以下であることが好ましく、10容量%以下である非水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。このような有機溶媒を使用することにより、水の除去が容易となり、最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーに含まれる高分子量不純物の生成を抑制し易くなる。
【0056】
本発明において特に好適に用いられる有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルムを挙げることができる。なお、これらの有機溶媒は単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、該有機溶媒の使用量は、原料ウレタンモノマーが溶解する量であれば特に制限はないが、必要以上に大量に使用すると、単位操作あたりの収率が低下するだけでなく、該有機溶媒の除去にも時間がかかるため、分散可能な最少量にとどめることが好ましい。具体的な使用量は、原料ウレタンモノマーの種類、有機溶媒の種類等に応じて適宜決定すればよいが、より操作性を向上させ、高分子量不純物の生成を抑制するためには、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、100質量部?1,000質量部であることが好ましく、さらに、100質量部?500質量部であることが好ましい。
工程(1)においては、原料ウレタンモノマーを前記有機溶媒に溶解させ、得られた第一溶液と酸性成分を吸着しうる含水吸着剤と接触させることにより、該溶液に含まれるウレタン(メタ)アクリレートモノマーの酸価を低減する。この方法によれば、下記に説明する第二溶液中の水分量を容易に低減でき、最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーに含まれる高分子量不純物の生成を容易に抑制できる。
次に、含水吸着剤により酸価を低減する方法について説明する。
【0057】
含水吸着剤
前記方法において使用される含水吸着剤は、酸性成分を吸着する能力を有し、且つ水分を含有するものであれば公知の吸着剤を何ら制限なく用いることができる。水分は付着水として含まれていてもよく、また、結晶水として含まれていてもよい。含水吸着剤としては、具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物若しくは水酸化物;アルミニウム、ホウ素等のアルミニウム族金属の酸化物若しくは水酸化物;又は珪素酸化物を主成分とする含水無機吸着剤を挙げることができる。特に、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムを主成分とする、結晶水含有の無機吸着剤を好適に用いることができ、特に、酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムを主成分とする結晶水含有の無機吸着剤が、酸性成分の吸着力が高いことから好適に使用できる。
【0058】
これら含水吸着剤は、市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば協和化学工業(株)製の『キョーワード』(登録商標)シリーズや、富田製薬(株)製の『トミックスAD』シリーズなどが挙げられる。酸化アルミニウムを主成分とする結晶水含有無機吸着剤としては、例えばキョーワード300(組成:2.5MgO・Al_(2)O_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3))(協和化学工業(株)製)、トミックス-AD200(組成:Al_(2)O_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3))、トミックス-AD300(組成:MgO・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・nH_(2)O(n=0.5?3))、トミックス-AD700(組成:Al_(2)O_(3)・10SiO_(2)・nH_(2)O(n=0.1?2))(富田製薬(株)製)が挙げられる。水酸化アルミニウムを主成分とする結晶水含有無機吸着剤としては、例えばキョーワード200(組成:Al(OH)_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3))(協和化学工業(株)製)、トミックス-AD400(組成:Al(OH)_(3)・NaHCO_(3)・nH_(2)O(n=0.1?2))(富田製薬(株)製)が挙げられる。水酸化マグネシウムを主成分とする結晶水含有無機吸着剤としては、例えばキョーワード500(組成:Mg_(6)Al_(2)(OH)_(16)CO_(3)・nH_(2)O(n=1?5))(協和化学工業(株)製)が挙げられる。酸化マグネシウムを主成分とする結晶水含有無機吸着剤としては、例えばキョーワード2000(組成:Mg_(0.7)Al_(0.3)O_(1.15)・nH_(2)O(n=0.1?2))(協和化学工業(株)製)が挙げられる。
【0059】
酸性成分をより効率よく低減できる含水吸着剤は、該吸着剤中に結晶水を含むものである。この結晶水を含む吸着剤は、結晶水を含むため、効率よく酸性成分を低減できるが、その反面、系内(第二溶液中)に水が残存するようになる。そのため、次の工程において、この水を低減する必要がある。上記無機吸着剤を使用する場合には、第一溶液に使用する有機溶剤は、活性水素を有する水溶性有機溶媒であってもよい。ただし、この無機吸着剤より生じる水を低減し易くするためにも、該有機溶媒は、活性水素を含まない溶媒であることが好ましく、特に、前記非水溶性有機溶媒であることが好ましい。
【0060】
含水吸着剤により酸価を低減する方法
本発明において、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤による酸性成分の吸着除去は、特に制限されるものではなく、公知の方法で、第一溶液と前記含水吸着剤とを接触させることにより実施できる。
含水吸着剤の使用量は、特に制限されるものではなく、使用する含水吸着剤の種類、原料ウレタンモノマーの酸価等に応じて適宜決定すればよい。具体的には、酸性成分の除去効果、含水吸着剤の除去、特に、結晶水を含む無機吸着剤を使用した場合の水の除去、および得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーの収率を考慮すると以下の範囲であることが好ましい。具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、0.1質量部?50質量部であることが好ましく、さらに、1質量部?30質量部であることがより好ましい。
含水吸着剤を使用した場合の具体的な処理方法としては、第一溶液と含水吸着剤とを公知の方法で接触させることができる。具体的には、攪拌混合しながら両者を接触させるのが好ましい。第一溶液と含水吸着剤との接触において混合する場合の手順は、特に限定されないが、通常は、第一溶液中に含水吸着剤を添加すればよい。
また、第一溶液と含水吸着剤とを接触させる際の温度は、特に制限されないが、好ましくは0?70℃であり、より好ましくは5?30℃である。接触時の温度が、前記範囲を満足することにより、酸性成分を十分に低減することができ、しかも、高分子量不純物の量も低減することができる。
接触処理する時間も、特に制限されるものではなく、酸性成分が十分に低減できる時間であればよい。例えば30分?10時間である。この処理時間は、処理した液を一部取り出し、含まれるウレタン(メタ)アクリレートモノマーの酸価が0.2mgKOH/g以下になったことを確認して決定することができる。
このような接触処理をした後、公知の方法、具体的には、濾過、遠心分離などによって含水吸着剤を除去することができる。
【0061】
本発明においては、前記第一溶液を前記含水吸着剤と接触させることにより、第二溶液を形成する。本発明者らの検討によれば、この処理において、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの酸価を0.2mgKOH/g以下とするには、得られる第二溶液は、一定量以上の水を含まなければならないことが確認された。そして、この水分が最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーの純度に影響を与え、この水分量を低減した後、有機溶媒を除去しなければならないことが分かった。
得られた第二溶液が水を含むのは、第一溶液と含水吸着剤との接触処理において、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの酸価を0.2mgKOH/g以下と極度に低減させることに起因している。その結果、この第二溶液には、前記有機溶媒の他、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える水が含まれることとなることが分かった。この第二溶液に含まれる水の量の上限は、原料ウレタンモノマーの酸価および酸性成分を低減する方法によって影響されるが、通常、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの質量に対して、約30,000ppm(質量)である。そして、本発明が最も効率よく純度の高いウレタン(メタ)アクリレートモノマーを製造するためには、第二溶液に含まれる水分量は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超え20,000ppm以下(質量)であることが好ましく、さらに、5,000ppm(質量)を超え15,000ppm以下(質量)であることがより好ましい。例えば、効率のよい生産をするために、結晶水を含む無機吸着剤を使用した場合にも、水分量は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超え15,000ppm(質量)とすることができる。
次に、工程(1)で得られた第二溶液と脱水剤とを接触させて、水を低減する工程(2)について説明する。
【0062】
<工程(2) 第二溶液の水分量を低減する工程>
前記工程(1)で得られた第二溶液は、有機溶媒、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、およびウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える量の水を含む。
(メタ)アクリロイル基を付加したモノマーの精製において、該モノマーに水が含まれていたとしても、通常、減圧蒸留等の方法により水を除去することができる。特に、トルエンのような水と共沸し易い溶媒を使用して精製した場合には、有機溶媒を減圧蒸留する際に、同時に水も除去することが可能である。しかしながら、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの場合、水分が残った状態で有機溶媒を除去すると、高分子量不純物が生成することが分かった。
【0063】
この高分子量不純物が生成される原因は、明らかではないが、高分子量不純物が増加したウレタン(メタ)アクリレートモノマーをFT-IR等により解析した結果、以下のことが原因であると考えられる。つまり、第二溶液に5,000ppm(質量)を超える水が含まれる場合、有機溶媒を留去しようとすると、仮に、有機溶媒が水と共沸する有機溶媒であったとしても、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーと水が接触する確率は高くなるものと思われる。そして、残存する酸性成分も影響しているものと考えられるものの、この水がウレタン(メタ)アクリレートモノマーのウレタン部位を加水分解してアミンを生成し、その結果、該アミンと(メタ)アクリロイル基とがマイケル付加反応により架橋して高分子量不純物を生成するものと考えられる。特にこの傾向は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーが、アクリロイル基を有するウレタンアクリレートモノマーのときにより顕著となる。
この結果から、特開2007-63189号公報の活性アルミナを使用してウレタン(メタ)アクリレートを精製した場合も、当初から含まれる高分子量不純物は活性アルミナにより低減できたが、この処理により生じた水が新たに高分子量不純物を生成させたため、高分子量不純物が0.3質量%含まれるようになったものと考えられる。
【0064】
以上のことから、本発明においては、第二溶液から有機溶媒を除去する前に、必ず、水分量をウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下としなければならない。これは、第二溶液と脱水剤とを接触させることにより達成できる(以下、第二溶液と脱水剤とを接触させる処理を単に脱水処理という場合もある)。この脱水処理は、高分子量不純物の生成をより効率よく抑制するために、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して、好ましくは水が3,000ppm(質量)以下、さらに好ましくは2,000ppm以下(質量)となるまで実施することが好ましい。なお、水の下限値は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して0ppm(質量、下記に示す水分量測定の検出限界)となることが最も好ましいが、工業的な生産を考慮すると100ppm(質量)である。
【0065】
この脱水処理は、第二溶液から有機溶媒を除去する前に行わなければならない。第二溶液は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、有機溶媒を100質量部?1,000質量部含むことが好ましく、さらに100質量部?500質量部含むことがより好ましい。この範囲で有機溶媒を含む場合には、工程を簡略化でき、高分子量不純物の生成をより抑制できる。第二溶液中の好適な有機溶媒の前記範囲の量は、原料ウレタンモノマーを基準にした第一溶液中の好適な範囲の量と変わらない。これは、酸価の低減処理、ろ過処理等によって、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対する有機溶媒の量が大きく変わらないためである。
上記の通り、脱水処理は、第二溶液から有機溶媒を除去する前に行う必要がある。次に、脱水剤について説明する。
【0066】
脱水剤
本発明において、脱水剤としては、例えば、無機塩、無機酸化物、それらの無水物、部分脱水物、無機水酸化物などが挙げられる。具体的には、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、塩化カルシウム等の無機塩、好ましくはこれらの無水物;水酸化カルシウム等の水酸化物;モレキュラシーブ等の結晶性ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。これらの脱水剤の中では、無機塩の無水物、結晶性ゼオライトが好ましく、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、モレキュラシーブが特に好ましい。なお、脱水剤は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
脱水剤の使用量は、水が前記範囲となる量を満足するように使用すればよく、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの100質量部に対して、0.1質量部?50質量部であることが好ましく、さらに1質量部?30質量部であることがより好ましい。
【0067】
該脱水剤と第二溶液との接触は、公知の方法で実施することができる。好ましくは、両者を混合し、攪拌することが好ましい。脱水処理の温度は、特に制限されるものではないが、高分子量不純物の生成をより抑制するためには、0?50℃であることが好ましい。処理時間も、特に制限されるものではなく、処理した溶液(第三溶液)を一部取り出し、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して、水の量が5,000ppm(質量)以下になったことを確認して決定すればよい。通常は、1?24時間である。
処理後に脱水剤を除去する方法としては、公知方法を採用することができ、濾過、遠心分離などにより、溶液から脱水剤を除去することができる。
本発明においては、前記方法により、第二溶液に含まれる水分量をウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下とすることができる。このようにして得られた溶液(第三溶液)から有機溶媒を除去することにより、高純度のウレタン(メタ)アクリレートモノマーを製造することができる。
次に、この第三溶液から有機溶媒を除去する工程(3)について説明する。
【0068】
<工程(3) 有機溶媒を除去する工程>
前記工程(2)で得られた第三溶液は、上記のとおり、有機溶媒、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して水を5,000ppm(質量)以下含む。この第三溶液において、有機溶媒の量は、第一溶液、および第二溶液に含まれる有機溶媒の量と同じ範囲にあることが好ましい。つまり、第三溶液は、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、有機溶媒を100質量部?1,000質量部含むことが好ましく、さらに、100質量部?500質量部含むことがより好ましい。水分量が5,000ppm(質量)以下であり、有機溶媒の量が上記範囲を満足する第三溶液から有機溶媒を除去することにより、酸価が低減され、かつ高次元に架橋した難溶性の高分子量不純物が少なく、さらには水分量までが少ない、純度の高いウレタン(メタ)アクリレートモノマーをより効率よく製造できる。
この第三溶液から有機溶媒を除去する方法は、特に制限されるものではなく、蒸留により除去すればよい。ただし、高い温度で処理すると高分子量不純物が増加するおそれがあるため、温度は30?70℃の範囲内が好ましい。そのため、前記範囲を満足するように、減圧蒸留することが好ましい。
前記方法によれば、高純度のウレタン(メタ)アクリレートモノマーを製造することができる。
【0069】
<高純度ウレタン(メタ)アクリレートモノマー>
前記方法によれば、水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり、酸価が0.2mgKOH/g以下であり、好ましくはさらに数平均分子量が5,000以上である高次元に架橋した難溶性の高分子量成分の含有量が0.3質量%未満であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを得ることができる。製造条件を調整すれば、得られるウレタン(メタ)アクリレートモノマーにおける高分子量成分の含有量は、0.0質量%(下記方法で測定される検出限界)とすることもできる。また、水分量の下限は、工業的な生産を考慮すると、その下限は100ppm(質量)である。
本発明の方法により得られるウレタン(メタ)アクリレートは分子中に、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有しており、ポリイソシアネート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び必要に応じてポリオール化合物等の組み合わせから合成されるものである。
【0070】
<硬化体、その製法、重合開始剤>
本発明により得られる高純度ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを用いて硬化体を得ることができる。その場合、該高純度ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを単独成分として使用することもできるが、その他の重合性モノマーと混合し、モノマー組成物として使用してもよい。該モノマー組成物を構成する重合性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーを何ら制限なく用いうるが、一価または多価のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物、多価アリル化合物、多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物等を好適に用いることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーと、これと共重合可能なモノマーの混合割合は目的に応じて決定すればよいが、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、共重合可能なモノマーを、好ましくは20?20,000質量部、さらに好ましくは50?15,000質量部、特に好ましくは100?10,000質量部の範囲で用いることができる。
【0071】
このような共重合可能なモノマーは、使用目的に応じて適宜決定すればよいが、具体的に例示すると、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4ーメタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2-ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2-アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4-ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β-メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA-モノグリシジルエーテル-メタクリレート、4-グリシジルオキシメタクリレート、3-(グリシジル-2-オキシエトキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-(グリシジルオキシ-1-イソプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-グリシジルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物;ジビニルベンゼン等のモノマーを挙げることができる。
【0072】
上記の硬化体をフォトクロミックプラスチックレンズの用途に使用する場合には、ポリエチレングリコールジアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の共重合可能なモノマーを使用することが好ましい。
これら共重合可能なモノマーと本発明の高純度ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを組み合わせることにより、機械強度、低収縮率性、保存安定性、耐候性に優れた光学材料を得ることができる。また、該モノマー組成物にフォトクロミック化合物を混合してフォトクロミック組成物とすることもできる。
上記フォトクロミック組成物において、高純度ウレタン(メタ)アクリレートモノマーとこれと共重合可能なモノマーの重合性モノマー成分とフォトクロミック化合物との割合は、特に制限されるものではないが、重合性モノマー成分100質量部に対して、フォトクロミック化合物が、好ましくは0.01?30質量部、さらに好ましくは0.01?10質量部で用いられる。
また、本発明のフォトクロミック組成物を硬化させる方法も特に限定されず、熱及び/又は光により硬化することができ、必要に応じて重合開始剤を使用することもできる。
【0073】
熱による硬化に用いられる重合開始剤については特に制限されないが、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カーボニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0074】
また、光による硬化に用いられる重合開始剤についても特に制限されないが、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-イソプロピルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0075】
<フォトクロミック化合物>
使用されるフォトクロミック化合物としては、例えばクロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物、ビスイミダゾール化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
【0076】
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られており、このようなクロメン化合物はB成分として好適に使用できる。このようなクロメン化合物としては、特開2001-031670号、特開2001-011067号、特開2001-011066号、特開2000-344761号、特開2000-327675号、特開2000-256347号、特開2000-229976号、特開2000-229975号、特開2000-229974号、特開2000-229973号、特開2000-229972号、特開2000-219678号、特開2000-219686号、特開平11-322739号、特開平11-286484号、特開平11-279171号、特開平09-218301号、特開平09-124645号、特開平08-295690号、特開平08-176139号、特開平08-157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開2009-120536号、特開2009-67754号、特開2009-67680号、特開2009-57300号、日本国特許第4195615号公報、日本国特許第4158881号公報、日本国特許第4157245号公報、日本国特許第4157239号公報、日本国特許第4157227号公報、日本国特許第4118458号公報、特開2008-74832号、日本国特許第3982770号公報、日本国特許第3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005-289812号、特開2005-289807号、特開2005-112772号、日本国特許第3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003-277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット等に開示されている。
【0077】
これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらに本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度および退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。
本発明で使用されるフォトクロミック化合物のうち、少なくとも1つはクロメン系化合物であることが好ましく、クロメン系化合物の中でも下記式で表されるインデノナフトピラン化合物であることが特に好ましい。
【0078】
【化14】

【0079】
(式中、
R^(15)?R^(24)はそれぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アラルコシ基、アリール基、アルキル基またはアリール基を置換基として有する置換アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基、チオアルキル基またはチオアリール基であり、
R^(15)とR^(16)は一緒になって環を形成してもよい。)
【0080】
アルキル基としては、特に限定はされないが、炭素数1?9のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
シクロアルキル基としては、特に限定はされないが、炭素数3?12のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、特に限定はされないが、炭素数1?5のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
アラルキル基としては、特に限定はされないが、炭素数7?11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を具体的に例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。
アラルコシ基としては、特に限定はされないが、炭素数6?10のアラルコシ基が好ましい。好適なアラルコシ基を具体的に例示すると、フェノキシ基、ナフトキシ基等を挙げることができる。
【0081】
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6?10の芳香族炭化水素基、もしくは環を形成する原子数が4?12の芳香族複素環基が好ましい。好適なアリール基を例示すると、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。また、該アリール基の1もしくは2以上の水素原子が、上述と同様のアルキル基、アルコキシ基、もしくは下記に説明するアルキル基またはアリール基を有する置換アミノ基または窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基等の置換基で置換された置換アリール基も好適に用いることができる。
アルキル基またはアリール基を置換基として有する置換アミノ基としては、例えばアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基またはジアリールアミノ基が好ましく、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることができる。
また、複素環基は、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合するものであり、このような複素環基としては、例えばモルホリノ基、チオモルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。
【0082】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子をあげることができる。
ハロゲノアルキル基としては、上述のアルキル基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子あるいは臭素原子で置換されたものが挙げられる。これらの中でもフッ素原子で置換されたものが好適である。ハロゲノアルキル基として好適なものとしては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
ハロゲノアルコキシ基としては、例えば上述のアルコキシ基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子または臭素原子で置換されたものが挙げられる。これらの中でもフッ素原子で置換されたものが好適である。ハロゲノアルコキシ基として特に好適なものを例示すると、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。
【0083】
チオアルキル基としては、上述のアルコキシ基の酸素原子が硫黄原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、チオメチル基、チオエチル基、チオプロポキシ基等を好適な例として挙げることができる。
チオアリール基としては、上述のアラルコシ基の酸素原子が硫黄原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、チオフェニル基、チオナフチル基等を好適な例として挙げることができる。
R^(15)とR^(16)は一緒になって環を形成するものとしては、環を形成する炭素数が4?10である脂肪族炭化水素環が好ましい。さらに該脂肪族炭化水素環にはベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素環が縮環していてもよい。また、該脂肪族炭化水素環は炭素数1?5のアルキル基やアルコキシ基を置換基として有していてもよい。特に好適なものとして、下記のような環が挙げられる。なお、下記に示す環において、最も下位に位置する2つの結合手を有する炭素原子(スピロ炭素原子)が、R^(15)とR^(16)が結合している5員環中の炭素原子に相当する。
【0084】
【化15】

【0085】
本発明で使用されるインデノナフトピラン化合物として、好適に使用される化合物を具体的に例示すると下記構造で示される化合物が挙げられる。
【0086】
【化16】

【実施例】
【0087】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ただし、実施例17および18は参考例である。
【0088】
酸性成分の定量方法:
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに含まれる酸性成分は次に記す滴定を行うことで酸価を定量して評価した。
2mlミクロビューレットにN/10水酸化カリウムアルコール溶液(エタノール性)溶液(以下、測定液)をセットし、スターラーを準備した。メスシリンダーを用い、エタノールとトルエンを50mlずつ精秤し、200mlビーカーに入れ、スターラーにて撹拌混合した。フェノールフタレイン溶液3滴を加え、滴定液にて空滴定を行った。空滴定後の溶液に試料20gを入れ、スターラーにて撹拌混合した。さらに、フェノールフタレイン溶液3滴を加え、滴定液にて試料滴定を行って滴定量を得た。酸価の計算方法は以下の式に基づいて計算した。
酸価(mgKOH/g)=滴定量(ml)×滴定液f×5.6÷試料量(g)
ここで、fは標準塩酸溶液を用いて求めた滴定液のファクターを示す。上記方法で使用したN/10水酸化カリウムアルコール溶液のfは0.094であった。また、試料量は試料中に含まれるウレタン(メタ)アクリレートモノマーの重量である。
【0089】
溶媒濃縮時の安定性評価:
溶媒濃縮時の安定性評価は、固体析出および粘度上昇の有無を確認した。固体析出の有無は、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマー中および、溶媒濃縮に用いた容器壁面に固体の析出の有無を目視評価により確認を行った。また、粘度上昇の有無は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて粘度の測定を行い、精製処理前と精製処理後の粘度変化量を比較して評価した。
【0090】
高分子量不純物の評価:
高分子量不純物の評価はテトラヒドロフランに難溶である固体の重量測定と、テトラヒドロフラン溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することにより評価した。測定条件は下記の通りである。
・固体の重量測定
精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として調整し、ADVANTEC社製定量濾紙(PTFE、0.5μm)を用いて濾過したときに濾別される不溶分の重量を測定し、精製ウレタン(メタ)アクリレートに対する重量比を算出した。
・ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
固定相:昭和電工(株)製KF8025(排除限界2万)など
カラムオーブン温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:Waters社製RI検出器2414
検量線:標準ポリスチレン
以上のような装置を使用して、上述のテトラヒドロフラン溶液の濾液を上記条件で測定した。本発明において、高分子量成分(高分子量不純物)は、上記方法により測定した平均分子量がウレタン(メタ)アクリレートモノマーの3倍以上である高分子量成分の総和を意味し、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの面積%に対する高分子量成分の面積%を含有量(質量)とした。
【0091】
水分量の測定:
モノマー中に含まれる水分量は、京都電子(株)製カールフィッシャー水分計(製品名MKA-210)を用いてカールフィッシャー法により測定した。滴定剤には三菱化学(株)製アクアミクロンを用い、溶媒には脱水メタノールを使用した。
【0092】
収縮率の測定:
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの収縮率は、モノマーの比重ρ_(M)(g/cm^(3))と該モノマーの硬化体の比重ρ_(P)(g/cm^(3))を求め、次式から算出した。
収縮率(%)=(1-ρ_(M)/ρ_(P))×100
なお、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの硬化体は後述する方法で作成し、モノマーおよび硬化体の比重は、浮きばかりまたは比重瓶を用いる方法(JIS K2249)で測定した。
【0093】
硬化体とその製法:
ラジカル重合開始剤を含む重合性モノマー組成物をガラス板とエチレン-酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行うことで硬化体を作製した。重合は空気炉を用い、30℃?90℃で18時間かけ徐々に温度を上げ、90℃で2時間保持した。重合終了後、重合体を鋳型のガラス型から取り外して硬化体を得た。
【0094】
光重合積層体とその製法:
光重合開始剤を含む重合性モノマー組成物を基材表面上に塗布し、不活性ガス雰囲気下で光重合開始剤が反応しうる光を照射することで、基材表面上に硬化膜を有する硬化体を得た。基材としてはアリル樹脂プラスチックレンズであるCR39(屈折率1.50)を用い、重合性モノマー組成物はMIKASA社製スピンコーター1H-DX2を用いてスピンコートした。光照射の光源には150mW/cm^(2)のメタルハライドランプを用い、窒素ガス雰囲気下で2分間照射して硬化体を得た。
【0095】
フォトクロミック特性および耐候性の評価:
フォトクロミック硬化体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm^(2)、245nm=24μW/cm^(2)で120秒間照射して発色させ、積層体のフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD3000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)-ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)劣化度(%)=〔(1-A200/A0)×100〕:光照射によるフォトクロミック硬化体の耐候性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られたフォトクロミック硬化体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および劣化促進試験後の発色濃度(A200)を測定し、〔(1-A200)/A0〕×100〕の値を劣化度(%)とし、フォトクロミック硬化体の耐候性の指標とした。劣化度の値が低いほどフォトクロミック硬化体の耐候性が高い。
4)着色度(ΔYI):スガ試験機(株)製の色差計(SM-4)を用いて着色度を測定した。劣化促進試験によるYIの変化量をΔYIとし、劣化に伴う着色度の指標とした。ΔYIの値が小さいほど硬化体の耐候性が高いと言える。
【0096】
実施例1
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
下記式
【0097】
【化17】

【0098】
で示される構造を有する市販の脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価5.90mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.1質量%、アクリロイル官能基数2、水分量1,500ppm(質量))1,000gをトルエン3,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(Al(OH)_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3)、協和化学工業(株)製)を300g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.10mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーに対して水を9,000ppm(質量)で含有していた。
【0099】
(2)工程(2)脱水処理工程
上記のウレタンアクリレートモノマーのトルエン溶液(第二溶液)に、脱水剤として結晶性ゼオライト(モレキュラシーブ4A(直径1.6mm、和光純薬工業(株)製))を100g加え、25℃で6時間撹拌し、ADVANTEC社製PTFE濾紙(0.5μm)を用いて濾過した。得られた第三溶液は、ウレタンメタアクリレートモノマーに対して水を1,300ppm(質量)含んでいた。
【0100】
(3)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第三溶液からトルエンを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。トルエン残量は、0.2質量%であった。精製ウレタンアクリレートモノマー中、および溶媒留去に用いた反応器壁面に固体析出はなく、粘度上昇も見られなかった。また、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、高分子量不純物は認められなかった。水の量は600ppm(質量)であり、酸価は0.08mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は6.2%であった。
【0101】
実施例2
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
下記式
【0102】
【化18】

【0103】
で示される構造を有する市販の脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価0.95mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0質量%、アクリロイル官能基数2、水分量900ppm(質量))1,000gをトルエン2,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を250g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.03mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーに対して水を8,000ppm(質量)含有していた。
(2)工程(2)脱水処理工程
上記のウレタンアクリレートモノマーのトルエン溶液(第二溶液)に、脱水剤として結晶性ゼオライト(モレキュラシーブ4A(直径1.6mm、和光純薬工業(株)製))を100g加え、25℃で6時間撹拌し、ADVANTEC社製PTFE濾紙(0.5μm)を用いて濾過した。得られた第三溶液は、ウレタンメタアクリレートモノマーに対して水を1,200ppm(質量)含んでいた。
(3)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第三溶液からトルエンを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。トルエン残量は、0.4質量%であった。精製ウレタンアクリレートモノマー中、および溶媒留去に用いた反応器壁面に固体析出はなく、粘度上昇も見られなかった。また、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、高分子量不純物は認められなかった。水の量は400ppm(質量)であり、酸価は0.03mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は8.4%であった。
【0104】
実施例3
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートと2-ヒドロキシプロピルアクリレートを反応させて得られる下記構造式
【0105】
【化19】

【0106】
で示される構造を有する脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価0.91mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0質量%、アクリロイル官能基数2、水分量1,200ppm(質量))1,000gを酢酸エチル3,000gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を200g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.04mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーの質量に対して、水を9,000ppm含有していた。
(2)工程(2)脱水処理工程
上記のウレタンアクリレートモノマーの酢酸エチル溶液(第二溶液)に、脱水剤として結晶性ゼオライト(モレキュラシーブ4A(直径1.6mm、和光純薬工業(株)製))を100g加え、25℃で6時間撹拌し、ADVANTEC社製PTFE濾紙(0.5μm)を用いて濾過した。得られた第三溶液は、ウレタンメタアクリレートモノマーの質量に対して、水を1,900ppm含んでいた。
(3)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第三溶液から酢酸エチルを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。酢酸エチル残量は0.1質量%であった。精製ウレタンアクリレートモノマー中、および溶媒留去に用いた反応器壁面に固体析出はなく、粘度上昇も見られなかった。また、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、高分子量不純物は認められなかった。水の量は700ppm(質量)であり、酸価は0.03mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は8.2%であった。
【0107】
比較例1
比較のため、実施例1と同様に酸性成分の低減工程を行った後に、脱水処理工程を行わずにウレタンアクリレートモノマーを得た。
実施例1で用いたと同じ脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価5.90mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.1質量%、アクリロイル官能基数2、水分量1,500ppm(質量))1,000gをトルエン3,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を500g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.09mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーに対して水を11,000ppm(質量)含有していた。
【0108】
実施例4
比較例1で得られた上記第二溶液からトルエンを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。トルエン残量は0.4質量%であった。溶媒留去に用いた反応器壁面に少量の白色固体(不溶物)の析出が認められ、50℃における粘度は30%増加していた。精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、不溶成分が1.2質量%生成しており、GPC測定からは分子量が3倍以上である高分子量不純物が0.4質量%確認された。水の量は1,200ppm(質量)であり、酸価は0.09mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は6.2%であった。
【0109】
比較例2
比較のため、酸性成分の低減工程において、無機吸着剤の代わりに市販の活性炭を使用した。
実施例1で用いたと同じ脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価5.90mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.1質量%、アクリロイル官能基数2、水分量1,500ppm(質量))1,000gをトルエン3,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製、商品名「精製白鷺」を50g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)で活性炭を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で5.41mgKOH/gであり、酸価の低減効果は極めて低かった。酸価が十分に低減できなかったので、以下の工程は実施しなかった。
【0110】
比較例3
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
実施例2で用いたと同じ脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価0.95mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0質量%、アクリロイル官能基数2、水分量900ppm(質量))1,000gをエタノール3,000gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を250g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.03mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーに対して水を31,000ppm(質量)含有していた。
(2)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第二溶液からエタノールを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。エタノール残量は0.1質量%であった。溶媒留去に用いた反応器壁面に少量の白色固体(不溶物)の析出が認められ、50℃における粘度は20%増加していた。精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、不溶成分が0.8質量%生成しており、GPC測定からは分子量が3倍以上である高分子量不純物が0.4質量%確認された。水の量は2,900ppm(質量)であり、酸価は0.03mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は8.4%であった。
【0111】
実施例5(保存安定性の比較実験)
実施例2で用いたと同じ脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価0.95mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、水分量900ppm(質量))を、窒素雰囲気下50℃で加熱、撹拌操作を行ったところ、24時間後に釜壁に少量の固体が析出しており、粘度は20%増加していた。
一方、実施例2で得られた精製ウレタンアクリレートモノマーを用いて同様に行ったところ、96時間後にも固体の析出は確認されず、粘度上昇は確認されなかった。この結果より本発明の方法により精製したウレタンアクリレートの保存安定性が高いことが分かった。
【0112】
実施例6
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた下記構造式
【0113】
【化20】

【0114】
で示される脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価1.21mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、分子量454、水分量900ppm(質量))1,000gをトルエン3,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を100g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.02mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーの質量に対して、水を6,000ppm含有していた。
(2)工程(2)脱水処理工程
上記のウレタンアクリレートモノマーのトルエン溶液(第二溶液)に、脱水剤として結晶性ゼオライト(モレキュラシーブ4A(直径1.6mm、和光純薬工業(株)製))を100g加え、25℃で6時間撹拌し、ADVANTEC社製PTFE濾紙(0.5μm)を用いて濾過した。得られた第三溶液は、ウレタンメタアクリレートモノマーの質量に対して、水を1,200ppm含んでいた。
(3)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第三溶液からトルエンを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。トルエン残量は0.6質量%であった。精製ウレタンアクリレートモノマー中、および溶媒留去に用いた反応器壁面に固体析出はなく、粘度上昇も見られなかった。また、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、高分子量不純物は認められなかった。水の量は400ppm(質量)であり、酸価は0.02mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は8.5%であった。
【0115】
実施例7
(1)工程(1) 酸性成分の低減工程
2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた下記構造式
【0116】
【化21】

【0117】
で示される脂肪族ウレタンアクリレートモノマー(酸価1.59mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、分子量442、水分量1,100ppm(質量))1,000gをトルエン2,500gに溶解させ、十分に撹拌分散させた(第一溶液)。得られた第一溶液に、キョーワード200(協和化学工業(株)製)を200g加え、25℃で8時間撹拌した。撹拌終了後、ヌッチェを用いてADVANTEC社製定量濾紙(No.2)でキョーワード200を濾過した。得られた第二溶液に含まれるウレタンアクリレートモノマーの酸価は、モノマー換算で0.05mgKOH/gであった。この第二溶液は、該ウレタンアクリレートモノマーの質量に対して、水を7,500ppm含有していた。
(2)工程(2)脱水処理工程
上記のウレタンアクリレートモノマーのトルエン溶液(第二溶液)に、脱水剤として結晶性ゼオライト(モレキュラシーブ4A(直径1.6mm、和光純薬工業(株)製))を100g加え、25℃で6時間撹拌し、ADVANTEC社製PTFE濾紙(0.5μm)を用いて濾過した。得られた第三溶液は、ウレタンメタアクリレートモノマーの質量に対して、水を1,100ppm含んでいた。
(3)工程(3) 有機溶媒除去工程
次に、第三溶液からトルエンを留去するために、50℃、10mmHgの減圧条件下で8時間溶媒留去を行い、精製ウレタンアクリレートモノマーを得た。トルエン残量は0.2質量%であった。精製ウレタンアクリレートモノマー中、および溶媒留去に用いた反応器壁面に固体析出はなく、粘度上昇も見られなかった。また、精製ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを1質量%テトラヒドロフラン溶液として、不溶成分の重量測定とGPC測定を行ったところ、高分子量不純物は認められなかった。水の量は400ppm(質量)であり、酸価は0.05mgKOH/gであった。また、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は9.1%であった。
【0118】
実施例8
無機吸着剤として、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムを主成分とする結晶水含有のキョーワード300(2.5MgO・Al_(2)O_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3)、協和化学工業(株)製)を使用した以外は実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表1に示す。
【0119】
実施例9
無機吸着剤として、酸化マグネシウムを主成分とする結晶水含有のキョーワード2000(Mg_(0.7)Al_(0.3)O_(1.15)・nH_(2)O(n=0.1?2)、協和化学工業(株)製)を使用した以外は実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表1に示す。
【0120】
実施例10
無機吸着剤として、酸化アルミニウムを主成分とする結晶水含有のトミックスAD-200(Al_(2)O_(3)・nH_(2)O(n=0.5?3)、富田製薬(株)製)を使用した以外は実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表1に示す。
【0121】
実施例11
無機吸着剤として、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素を主成分とする結晶水含有のトミックスAD-300(MgO・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・nH_(2)O(n=0.5?3)、富田製薬(株)製)を使用した以外は実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
実施例12
イソホロンジイソシアネート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサメチレンジオールを反応させて得られた下記構造式
【0124】
【化22】

【0125】
(式中、
R^(2’)で示した基は-C_(2)H_(4)-であり、
R^(3’)で示した基は
【0126】
【化23】

【0127】
であり、
R^(4’)で示した基は-OCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)O-である。)
で示されるウレタンアクリレートモノマー(酸価2.4mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、分子量795、水分量1,200ppm(質量))を用い、該ウレタンアクリレートモノマー100質量部に対してトルエンを300質量部用いた以外は、実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表2に示す。なお、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は6.1%であった。
【0128】
実施例13
2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエステルポリオールを反応させて得られた下記構造式
【0129】
【化24】

【0130】
{式中、
R^(2’)で示した基は-C_(3)H_(6)-であり、
R^(3’)で示した基は
【0131】
【化25】

【0132】
であり、
R^(4’)で示した基は
【0133】
【化26】

【0134】
(式中、g’の平均値=5である。)}
で示されるウレタンアクリレートモノマー(酸価1.9mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、分子量約1,100、水分量800ppm(質量))を用い、該ウレタンアクリレートモノマー100質量部に対してトルエンを250質量部用いた以外は、実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表2に示す。なお、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は5.0%であった。
【0135】
実施例14
イソホロンジイソシアネート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ポリカーボネートポリオールを反応させて得られた下記構造式
【0136】
【化27】

【0137】
{式中、
R^(2’)で示した基は-C_(2)H_(4)-であり、
R^(3’)で示した基は
【0138】
【化28】

であり、
R^(4’)で示した基は
【化29】

【0139】
(式中、i’の平均値=5である。)
である。}
で示されるウレタンアクリレートモノマー(酸価4.1mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0%、アクリロイル官能基数2、分子量約1,100、水分量1,000ppm(質量))を用い、該ウレタンアクリレートモノマー100質量部に対してトルエンを350質量部用いた以外は、実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表2に示す。なお、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は4.8%であった。
【0140】
実施例15
イソホロンジイソシアネートとポリカーボネートポリオールを反応させ、次いでイソホロンジアミンと2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた下記構造式
【0141】
【化30】

【0142】
{式中、
R^(2’)で示した基は-C_(2)H_(4)-であり、
R^(3’)で示した基は
【0143】
【化31】

【0144】
であり、
R^(4’)で示した基は
【0145】
【化32】

【0146】
(式中、i’の平均値=5である。)
であり、
R^(5’)で示した基は
【0147】
【化33】

【0148】
である。}
で示されるウレタンアクリレートモノマー(酸価3.6mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0質量%、アクリロイル官能基数2、分子量約1,700、水分量1,300ppm(質量))を用い、該ウレタンアクリレートモノマー100質量部に対してトルエンを500質量部用いた以外は、実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表2に示す。なお、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は2.9%であった。
【0149】
実施例16
イソホロンジイソシアネートとポリカーボネートポリオールを反応させ、次いで1,4-ブタンジオールと2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた下記構造式
【0150】
【化34】

【0151】
{式中、R^(2’)、R^(3’)、R^(4’)で示した基は、実施例15で説明した基と同様であり、
R^(5’)で示した基は
【0152】
【化35】

【0153】
である。}
で示されるウレタンアクリレートモノマー(酸価3.2mgKOH/g、高分子量不純物含有量0.0質量%、アクリロイル官能基数2、分子量約1,600、水分量1,400ppm(質量))を用い、該ウレタンアクリレートモノマー100質量部に対してトルエンを500質量部用いた以外は、実施例7と同様にして工程(1)?工程(3)を行った。その結果を表2に示す。なお、精製ウレタンアクリレートモノマーの収縮率は3.2%であった。
【0154】
【表2】

【0155】
実施例17(モノマー組成物)
モノマー組成物の成分として、
・実施例14で得られた精製ウレタンアクリレートモノマー 17質量部
・グリシジルメタクリレート 1質量部
・トリメチロールプロパントリメタクリレート 6質量部
・テトラエチレングリコールジアクリレート 6質量部
・テトラエチレングリコールジメタクリレート 31質量部
・テトラプロピレングリコールジメタクリレート 38質量部
・αメチルスチレンダイマー 1質量部
を用い、これらを十分に撹拌混合することでモノマー組成物を得た。
比較として、上記のモノマー組成物の成分として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価4.1mgKOH/g)を用いた以外は上記と同じ成分を含むモノマー組成物を作製した。
これらのモノマー組成物を25℃で6ヶ月間保存して、モノマーの色調を比較したところ、実施例17の精製ウレタンアクリレートモノマーを用いたモノマー組成物には変化が見られなかったが、未精製のウレタンアクリレートモノマーを用いたモノマー組成物は黄色く着色していることが確認された。
【0156】
実施例18(モノマー組成物)
モノマー組成物の成分として、
・実施例7で得られた精製ウレタンアクリレートモノマー 25質量部
・グリシジルメタクリレート 1質量部
・トリメチロールプロパントリメタクリレート 10質量部
・トリプロピレングリコールジメタクリレート 41質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均分子量400) 16質量部
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均分子量400) 5質量部
・αメチルスチレンダイマー 2質量部
を用い、これらを十分に撹拌混合することでモノマー組成物を得た。
比較として、上記のモノマー組成物の成分として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価1.59mgKOH/g)を用いた以外は上記と同じ成分を含むモノマー組成物を作製した。
これらのモノマー組成物を25℃で6ヶ月間保存して、モノマーの色調を比較したところ、実施例18の精製ウレタンアクリレートモノマーを用いたモノマー組成物には変化が見られなかったが、未精製のウレタンアクリレートモノマーを用いたモノマー組成物は黄色く着色していることが確認された。
【0157】
実施例19(フォトクロミック組成物、硬化体)
実施例17のモノマー組成物100質量部に下記構造式(A)
【0158】
【化36】

【0159】
で示されるフォトクロミック化合物を0.04質量部加え、十分に撹拌混合してフォトクロミック組成物を得た。このフォトクロミック組成物に、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカネート(商品名:パーブチルND、日本油脂(株)製)を1部添加し、注型重合することでフォトクロミック硬化体を得た。このフォトクロミック硬化体(厚さ2mm)を試料として、フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0160】
比較例4
実施例19の比較として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価4.1mgKOH/g)を用いた以外は実施例19と同様にフォトクロミック組成物およびフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
実施例20
実施例18のモノマー組成物100質量部に下記構造式(A)
【0163】
【化37】

【0164】
で示されるフォトクロミック化合物を0.03質量部、
下記構造式(B)
【0165】
【化38】

【0166】
で示されるフォトクロミック化合物を0.01質量部、
および下記構造式(C)
【0167】
【化39】

【0168】
で示されるフォトクロミック化合物を0.015質量部を用いた以外は実施例19と同様にしてフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表4に示す。
【0169】
比較例5
実施例20の比較として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価1.59mgKOH/g)を用いた以外は実施例20と同様にフォトクロミック組成物およびフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表4に示す。
【0170】
【表4】

【0171】
実施例21
実施例18のモノマー組成物100質量部に下記構造式(D)
【0172】
【化40】

【0173】
で示されるフォトクロミック化合物を0.05質量部、および下記構造式(B)
【0174】
【化41】

【0175】
で示されるフォトクロミック化合物を0.02質量部を用いた以外は実施例19と同様にしてフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表5に示す。
【0176】
比較例6
実施例21の比較として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価1.59mgKOH/g)を用いた以外は実施例21と同様にフォトクロミック組成物およびフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表5に示す。
【0177】
【表5】

【0178】
実施例22
モノマー組成物の成分として、
・実施例14で得られた精製ウレタンアクリレートモノマー 10質量部
・グリシジルメタクリレート 10質量部
・トリメチロールプロパントリメタクリレート 10質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール鎖の平均分子量400) 10質量部
・2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン 60質量部
を用い、これらを十分に撹拌混合することでモノマー組成物を得た。このモノマー組成物100質量部に対して、下記構造式(A)
【0179】
【化42】

【0180】
で示されるフォトクロミック化合物を2質量部加え、光重合開始剤であるCGI1850{1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比1:1)}を0.5質量部加えた。その他の成分として、
・ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(安定剤) 5質量部
・γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(密着成分) 7質量部
・N-メチルジエタノールアミン(密着成分) 3質量部
を添加し、十分に混合してフォトクロミック組成物を得た。このフォトクロミック組成物をアリル樹脂プラスチックレンズであるCR39上に塗布し、光重合することで膜厚40μmの硬化膜を有するフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った。なお、劣化促進時間は100時間である。測定結果を表6に示す。
【0181】
比較例7
実施例22の比較として、未精製のウレタンアクリレートモノマー(酸価1.59mgKOH/g)を用いた以外は実施例22と同様にフォトクロミック組成物およびフォトクロミック硬化体を得た。フォトクロミック特性および耐候性の評価を行った結果を表6に示す。
【0182】
【表6】

【0183】
実施例18?22の結果と比較例4?7の結果の比較より、本発明のウレタンアクリレートモノマーを用いたフォトクロミック硬化体は、未精製のウレタンアクリレートモノマーを用いたものよりも劣化度および着色度が低く、耐候性が優れているといえる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】
(1)酸価が0.2mgKOH/gを超えるウレタン(メタ)アクリレートモノマーと有機溶媒からなる第一溶液と、酸性成分を吸着しうる含水吸着剤とを接触させて酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)を超える量の水を含む第二溶液を得る工程、
(2)前記第二溶液と脱水剤とを接触させて、酸価が0.2mgKOH/g以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー、該有機溶媒、及び該ウレタン(メタ)アクリレートモノマーに対して5,000ppm(質量)以下の水を含む第三溶液を得る工程、及び
(3)前記第三溶液から有機溶媒を除去する工程
とを含むことを特徴とするウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項6】
有機溶媒として活性水素を含まない有機溶媒を使用することを特徴とする請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項7】
含水吸着剤が、結晶水または付着水を有する無機吸着剤である請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項8】
第一溶液に含まれる有機溶媒の量が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、100質量部?500質量部である請求項5に記載のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法。
【請求項9】 (削除)
【請求項10】 (削除)
【請求項11】
水分含有量が2,000ppm(質量)以下であり且つフェノールフタレインを指示薬とする中和滴定による酸価が0.2mgKOH/g以下であるウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含んでなるモノマー組成物に、さらに少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物。
【請求項12】
請求項11のフォトクロミック組成物を硬化させてなるフォトクロミック硬化体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-10-18 
出願番号 特願2011-540586(P2011-540586)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (C08G)
P 1 652・ 121- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 守安 智
特許庁審判官 小野寺 務
前田 寛之
登録日 2015-03-20 
登録番号 特許第5714499号(P5714499)
権利者 株式会社トクヤマ
発明の名称 ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの製造方法およびそれを含むフォトクロミック組成物  
代理人 大島 正孝  
代理人 白石 泰三  
代理人 白石 泰三  
代理人 大島 正孝  

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