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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 特29条の2  G03F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否  G03F
管理番号 1323478
異議申立番号 異議2016-700197  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-07 
確定日 2016-10-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5775479号発明「着色感放射線性組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、パターン形成方法、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、及び画像表示装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5775479号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし21〕について訂正することを認める。 特許第5775479号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5775479号(請求項の数21)に係る特許出願は,平成24年3月21日に出願され,平成27年7月10日に特許権の設定登録がされたものであるところ,平成28年3月7日に特許異議申立人大木健一により請求項1ないし21に係る特許について特許異議の申立てがされ,同年5月31日付けで特許権者に取消理由が通知され,特許権者により同年8月1日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされた。
なお,異議申立人に対して,同年8月9日付けで本件訂正請求があった旨を通知するとともに,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,異議申立人から応答はなかった。


第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし21について訂正することを求めるものであるところ,一群の請求項〔1ないし21〕ごとに請求するものであるから,特許法120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。
しかるに,本件訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
(A)色素多量体,(B)顔料,(C)重合性化合物,(D)光重合開始剤,及び(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた分散樹脂を含有する着色感放射線性組成物。
【請求項2】
前記(A)色素多量体が,ジピロメテン色素,アゾ色素,アントラキノン色素,トリフェニルメタン色素,キサンテン色素,シアニン色素,スクアリリウム色素,キノフタロン色素,フタロシアニン色素,及びサブフタロシアニン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項3】
前記(A)色素多量体が,ジピロメテン色素,トリフェニルメタン色素,及びキサンテン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1又は請求項2に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項4】
前記(A)色素多量体が,更に,アルカリ可溶性基を有する請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項5】
前記(A)色素多量体の酸価が,0.3mmol/g?2.0mmol/gである請求項1?請求項4のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項6】
前記(A)色素多量体の重量平均分子量が,2,000?20,000である請求項1?請求項5のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項7】
前記(A)色素多量体が,エチレン性不飽和結合を有する色素単量体を含んで構成されるラジカル重合体である請求項1?請求項6のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項8】
前記(A)色素多量体が,重合性基を有する請求項1?請求項7のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項9】
前記(A)色素多量体1gに対する前記重合性基の含有量が,0.1mmol?2.0mmolである請求項1?請求項8のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項10】
前記(B)顔料が,アントラキノン顔料,ジケトピロロピロール顔料,フタロシアニン顔料,キノフタロン顔料,イソインドリン顔料,アゾメチン顔料,及びジオキサジン顔料から選択される少なくとも一種である請求項1?請求項9のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項11】
前記(D)光重合開始剤が,オキシム化合物である請求項1?請求項10のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項12】
前記テトラカルボン酸二無水物が,芳香族テトラカルボン酸二無水物である請求項1?請求項11のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項13】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が,ピロメリット酸二無水物,3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物,エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル,3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物,3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物,2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物,及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項14】
カラーフィルタの着色層形成に用いる請求項1?請求項13のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項15】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
【請求項16】
請求項15に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
【請求項17】
前記着色硬化膜の膜厚が0.7μm以下である請求項16に記載のカラーフィルタ。
【請求項18】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と,該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と,未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と,を含むパターン形成方法。
【請求項19】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と,該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と,未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と,を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項20】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタ,或いは請求項19に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタを具備した固体撮像素子。
【請求項21】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタ,或いは請求項19に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタを具備した画像表示装置。」

イ 本件訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
(A)色素多量体(但し,アニオン性染料と,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物を除く。),(B)顔料,(C)重合性化合物,(D)光重合開始剤,及び(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた分散樹脂を含有する着色感放射線性組成物。
【化1】

[一般式(2)中,R_(5)は水素原子,又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は,それぞれ独立に,水素原子,置換されていてもよいアルキル基,置換されていてもよいアルケニル基,又は置換されていてもよいアリール基を表し,R_(6)?R_(8)のうち2つは互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基,アリーレン基,-CONHR_(9)-,又は-COO-R_(9)-を表し,R_(9)はアルキレン基を表す。Y^(-)は無機又は有機のアニオンを表す。]
【請求項2】
前記(A)色素多量体が,ジピロメテン色素,アゾ色素,アントラキノン色素,トリフェニルメタン色素,キサンテン色素,シアニン色素,スクアリリウム色素,キノフタロン色素,フタロシアニン色素,及びサブフタロシアニン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項3】
前記(A)色素多量体が,ジピロメテン色素,トリフェニルメタン色素,及びキサンテン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1又は請求項2に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項4】
前記(A)色素多量体が,更に,アルカリ可溶性基を有する請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項5】
前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ酸価が,0.3mmol/g?2.0mmol/gである請求項1?請求項4のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【化2】

[一般式(A)中,X_(1)は重合によって形成される連結基を表し,L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中,L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは,色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中,L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは,DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは,色素構造を表す。]
【請求項6】
前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ重量平均分子量が,2,000?20,000である請求項1?請求項5のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【化3】

[一般式(A)中,X_(1)は重合によって形成される連結基を表し,L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中,L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは,色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中,L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは,DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは,色素構造を表す。]
【請求項7】
前記(A)色素多量体が,エチレン性不飽和結合を有する色素単量体を含んで構成されるラジカル重合体である請求項1?請求項6のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項8】
前記(A)色素多量体が,重合性基を有する請求項1?請求項7のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項9】
前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ前記(A)色素多量体1gに対する前記重合性基の含有量が,0.1mmol?2.0mmolである請求項8に記載の着色感放射線性組成物。
【化4】

[一般式(A)中,X_(1)は重合によって形成される連結基を表し,L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中,L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは,色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中,L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは,DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは,色素構造を表す。]
【請求項10】
前記(B)顔料が,アントラキノン顔料,ジケトピロロピロール顔料,フタロシアニン顔料,キノフタロン顔料,イソインドリン顔料,アゾメチン顔料,及びジオキサジン顔料から選択される少なくとも一種である請求項1?請求項9のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項11】
前記(D)光重合開始剤が,オキシム化合物である請求項1?請求項10のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項12】
前記テトラカルボン酸二無水物が,芳香族テトラカルボン酸二無水物である請求項1?請求項11のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項13】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が,ピロメリット酸二無水物,3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物,エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル,3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物,3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物,2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物,及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項14】
カラーフィルタの着色層形成に用いる請求項1?請求項13のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項15】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
【請求項16】
請求項15に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
【請求項17】
前記着色硬化膜の膜厚が0.7μm以下である請求項16に記載のカラーフィルタ。
【請求項18】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と,該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と,未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と,を含むパターン形成方法。
【請求項19】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と,該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と,未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と,を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項20】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した固体撮像素子。
【請求項21】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した画像表示装置。」

(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
請求項1に「(A)色素多量体」とあるのを,「(A)色素多量体(但し,アニオン性染料と,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物を除く。)」に訂正するとともに,請求項1の末尾に一般式(2)の構造及びその定義を追加する訂正を行う。

イ 訂正事項2
請求項5に「前記(A)色素多量体の酸価が,0.3mmol/g?2.0mmol/gである」とあるのを,「前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ酸価が,0.3mmol/g?2.0mmol/gである」に訂正するとともに,請求項5の末尾に一般式(A),(C)及び(D)の構造及びその定義を追加する訂正を行う。

ウ 訂正事項3
請求項6に「前記(A)色素多量体の重量平均分子量が,2,000?20,000である」とあるのを,「前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ重量平均分子量が,2,000?20,000である」に訂正するとともに,請求項6の末尾に一般式(A),(C)及び(D)の構造及びその定義を追加する訂正を行う。

エ 訂正事項4
請求項9に「前記(A)色素多量体1gに対する前記重合性基の含有量が,0.1mmol?2.0mmolである」とあるのを,「前記(A)色素多量体が,下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体であり,かつ前記(A)色素多量体1gに対する前記重合性基の含有量が,0.1mmol?2.0mmolである」に訂正するとともに,請求項6の末尾に一般式(A),(C)及び(D)の構造及びその定義を追加する訂正を行う。

オ 訂正事項5
請求項9に「請求項1?請求項8のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。」とあるのを,「請求項8に記載の着色感放射線性組成物。」に訂正する。

カ 訂正事項6
請求項19に「着色感放着色感放射線性組成物層」とあるのを,「着色感放射線性組成物層」に訂正する。

キ 訂正事項7
請求項20に「請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタ,或いは請求項19に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタを具備した固体撮像素子。」とあるのを,「請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した固体撮像素子。」に訂正する。

ク 訂正事項8
請求項21に「請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタ,或いは請求項19に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタを具備した画像表示装置。」とあるのを,「請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した画像表示装置。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否について
訂正事項1は,「(A)色素多量体」から「アニオン性染料と,一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物」であるものを除く訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,訂正事項2ないし4は,いずれも,「(A)色素多量体」について,「一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体」に限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,訂正事項5は,請求項1ないし8のいずれに記載された発明特定事項を有するものであってもよかったものを,請求項8に記載された発明特定事項を有するもののみに限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,訂正事項6は,正しい記載が「着色感放射線性組成物層」であることが明らかな「着色感放着色感放射線性組成物層」という誤記を,正しい記載にする訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。
さらに,訂正事項7及び8は,どちらも,請求項16に記載されたカラーフィルタ,請求項17に記載されたカラーフィルタ及び請求項19に記載されたカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタのいずれを具備するものであってもよかったものを,請求項16に記載されたカラーフィルタ及び請求項17に記載されたカラーフィルタのどちらかを具備するものに限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書き1号及び2号に掲げる事項を目的とするものである。

3 新規事項の追加の有無について
「(A)色素多量体」から「アニオン性染料と,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物」であるものを除く訂正事項1は,当業者によって,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲又は明細書(特許された時点での特許請求の範囲又は明細書である。以下,単に「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないから,当該訂正事項1は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項2ないし4における限定事項である「(A)色素多量体が,一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか,又は一般式(D)で表される色素多量体である」点は,特許明細書等の発明の詳細な説明の【0242】ないし【0245】,【0247】,【0248】,【0276】ないし【0278】,【0286】ないし【0288】に記載されているから,当該訂正事項2ないし4は,いずれも,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項5は,八つの選択肢から七つを削除して一つの選択肢に限定する訂正であって,特許明細書等の記載のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかであるから,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項6は,誤記の訂正を目的とするものであるから,新規事項の有無を判断する際の基準となる特許請求の範囲又は明細書は,願書に最初に添付された特許請求の範囲又は明細書(以下,「本件当初明細書等」という。)であるところ,本件訂正前の「着色感放着色感放射線性組成物層」が誤記であり,正しくは「着色感放射線性組成物層」であることは明らかであって,本件当初明細書等の記載のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないから,本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに,訂正事項7及び8は,いずれも,三つの選択肢から一つを削除して二つの選択肢に限定する訂正であって,特許明細書等の記載のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかであるから,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1ないし8が,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

5 小括
前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書き1号及び2号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし21〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし21に係る発明
前記第2 6で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項1ないし21に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明21」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イにおいて,本件訂正後の特許請求の範囲として示した請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。

2 平成28年5月31日付けで通知された取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし21に係る特許に対して平成28年5月31日付けで通知された取消理由は,概略次のとおりである。なお,取消理由通知において採用されなかった特許異議申立理由はない。
(1)理由1(拡大先願同一)
請求項1ないし21に係る発明は,特願2012-20450号(特開2012-177912号)の願書に最初に添付した特許請求の範囲又は明細書(以下,「出願当初明細書等」という。)の記載から把握される発明と同一であるから,請求項1ないし21に係る特許は,特許法29条の2の規定に違反してされたものであって,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。

(2)理由2(実施可能要件違反,明確性要件違反)
請求項1ないし21に係る特許は,次のア及びイの点で,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
実施可能要件違反
特許明細書等の【0273】の記載から,単量体と色素構造のイオン結合を形成した後に,かかる塩をラジカル重合して,(A)色素多量体を得るものと解されるが,これを如何にして実施するかが特許明細書等に十分に説明されていないから,請求項1ないし21に係る特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
明確性要件違反
(ア) (A)色素多量体には色素構造と樹脂がイオン結合したものが含まれるが,このような色素構造と樹脂がイオン結合した(A)色素多量体の「酸価」が,いかなる条件の下で定義又は測定されるものなのか不明であるから,請求項5ないし21に係る特許は,同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(イ) 色素構造と樹脂がイオン結合した(A)色素多量体の「重量平均分子量」が,いかなる条件の下で定義又は測定されるものなのか不明であるから,請求項6ないし21に係る特許は,同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ウ) 請求項9の「前記重合性基」という記載が,当該請求項9が引用する請求項1ないし8の記載のうちの請求項1ないし7の記載との関係で不明であり,したがって(A)色素多量体の「重合性基の含有量」が,いかなる条件の下で定義又は測定されるものなのか不明であるから,請求項9ないし21に係る特許は,同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(エ) 請求項19の「着色感放着色感放射線性組成物層」なる記載が何を指すのか不明であるから,請求項19ないし21に係る特許は,同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(オ) 請求項20及び21はそれぞれ「固体撮像素子」及び「画像表示装置」という物の発明であるが,請求項20及び21のいずれにも,請求項19に記載されたカラーフィルタの製造方法が,発明特定事項として記載されているから,請求項20及び21に係る特許は,同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 理由1(拡大先願同一)についての判断
(1) 引用例
ア 特願2012-20450号の拡大先願該当性
理由1(拡大先願同一)で引用された特願2012-20450号(特開2012-177912号)は,本件特許に係る特許出願の出願前の平成24年2月2日(優先権主張平成23年2月4日)に出願され,本件特許に係る特許出願の出願後の平成24年9月13日に出願公開がされた特許出願である。
また,特願2012-20450号の発明者は本件特許に係る特許出願の発明者と同一でなく,かつ,本件特許に係る特許出願の出願時において,特願2012-20450号の出願人は本件特許に係る特許出願の出願人と同一でない。
したがって,特願2012-20450号は,特許法29条の2の規定にある「他の特許出願」としての形式的要件を満足する。(以下,特願2012-20450号を「拡大先願」という。)

イ 拡大先願の出願当初明細書等の記載
拡大先願の出願当初明細書等には,次の記載がある。(下線部は,後述する拡大先願発明の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】
着色剤(A),樹脂(B),および有機溶剤(C)を含むカラーフィルタ用着色組成物であって,
着色剤(A)が染料(A1)を含有し,
樹脂(B)が,
ポリオール(ba)の水酸基と,ポリカルボン酸無水物(bb)の酸無水物基とを反応させてなる,ポリオール部位(bas)とポリカルボン酸部位(bbs)とを交互に有するポリエステルにおいて,ポリオール部位(bas)の一部又は全部が,S原子を介して,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(bd)を有するポリエステル樹脂(B1)
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
染料(A1)が,アニオン性染料(a1)とカチオン性基を有する化合物(a2)とから形成された造塩化合物(a3)であることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項4】
カチオン性基を有する化合物(a2)が,四級アンモニウム塩化合物,アミン,及び側鎖にカチオン性基を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1?3いずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項6】
カチオン性基を有する化合物(a2)が,前記側鎖にカチオン性基を有する樹脂を含み,前記側鎖にカチオン性基を有する樹脂が,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂である請求項3または4に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
一般式(2):
【化2】

[一般式(2)中,R_(5)は水素原子,又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は,それぞれ独立に,水素原子,置換されていてもよいアルキル基,置換されていてもよいアルケニル基,又は置換されていてもよいアリール基を表し,R_(6)?R_(8)のうち2つは互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基,アリーレン基,-CONH-R_(9)-,又は-COO-R_(9)-を表し,R_(9)はアルキレン基を表す。Y^(-)は無機又は有機のアニオンを表す。]
・・・(中略)・・・
【請求項10】
着色剤(A)が,さらに顔料を含むことを特徴とする請求項1?9いずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項12】
さらに光重合性単量体(E)と,光重合開始剤(F)とを含むことを特徴とする請求項1?11いずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色組成物。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,カラー液晶表示装置,カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用着色組成物,及びこれを用いて形成されてなるフィルタセグメントを備えるカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は,近年その薄型であることゆえの省スペース性や軽量性,また省電力性などが評価され,最近ではテレビ用途への普及が急速に進んでいる。テレビ用途向けでは,輝度やコントラストなどの性能をより高めることが要求されており,カラー液晶表示装置を構成する部材であるカラーフィルタにおいても,さらなる透過度の向上,コントラストの高度化などが望まれている。
【0003】
カラーフィルタの作製方法としては,・・・(中略)・・・フォトレジスト材料に顔料等の着色剤を分散させたカラーレジスト剤を使用する顔料分散法,などが知られており,最近では,顔料分散法が主流になっている。しかし,顔料を着色剤として用いたカラーフィルタは,顔料粒子による光の散乱等により,液晶によって制御された偏光度合いを乱してしまい,その結果,カラー液晶表示装置の輝度やコントラストの低下を招きやすいという問題がある。
【0004】
この問題を解消する技術として,硬化性組成物の媒体中に溶解した状態で存在し得る染料を着色剤とした染料系の硬化性組成物の実用化が検討,提案されている(例えば,特許文献1参照)。しかし,着色剤に染料を用いたカラーフィルタには,以下の様な課題がある。すなわち,カラーレジスト材に用いる染料には,耐熱,耐光性と樹脂及び樹脂に使用される有機溶剤への溶解性が要求される。
【0005】
そこで,溶解性を増すと共に耐熱,耐光性を向上させるために,アニオン性染料とカチオン系界面活性剤との塩を着色剤として用いたカラーフィルタが提案されている(例えば,特許文献2,3参照)。・・・(中略)・・・しかしながら,これらの方法では,カラーフィルタ作製時に使用する溶剤に対し,十分な溶解性を得ることができず,カラーフィルタ用着色組成物の長期保存安定性が不十分であった。また,樹脂との相溶性も悪いため,塗膜とガラス等の透明基板との間で強固な密着性を与えることは困難であった。
・・・(中略)・・・
【0008】
また,カラーフィルタ用着色組成物に要求されるその他の物性としては,アルカリ現像液を用いた現像工程において,現像残渣が少ないことが挙げられる。すなわち,カラーフィルタ用着色組成物中での染料の溶解性を損なわず,現像残渣などのレジスト適正を保つことが求められている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は,有機溶剤に対する染料の溶解性を向上させることにより保存安定性に優れ,かつ塗膜への異物発生もないカラーフィルタ用着色組成物,並びにガラス等の透明基板との間での強固な密着性を有し,現像残渣の発生が少ないカラーフィルタ用着色組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは,前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,染料と特定の構造を有する樹脂を含有するカラーフィルタ用着色組成物が上記課題を解決できることを見出し,この知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0012】
すなわち本発明は,着色剤(A),樹脂(B),および有機溶剤(C)を含むカラーフィルタ用着色組成物であって,
着色剤(A)が染料(A1)を含有し,
樹脂(B)が,
ポリオール(ba)の水酸基と,ポリカルボン酸無水物(bb)の酸無水物基とを反応させてなる,ポリオール部位(bas)とポリカルボン酸部位(bbs)とを交互に有するポリエステルにおいて,ポリオール部位(bas)の一部又は全部が,S原子を介して,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(bd)を有するポリエステル樹脂(B1)
を含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物に関する。・・・(中略)・・・
【0013】
また,本発明は,染料(A1)が,アニオン性染料(a1)とカチオン性基を有する化合物(a2)とから形成された造塩化合物(a3)であることを特徴とする前記のカラーフィルタ用着色組成物に関する。
更に,カチオン性基を有する化合物(a2)が,四級アンモニウム塩化合物,アミン,及び側鎖にカチオン性基を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む前記のカラーフィルタ用着色組成物であることが好ましい。・・・(中略)・・・更に,カチオン性基を有する化合物(a2)が,前記側鎖にカチオン性基を有する樹脂を含み,前記側鎖にカチオン性基を有する樹脂が,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂である前記のカラーフィルタ用着色組成物であることが好ましい。
一般式(2):
【化2】

[一般式(2)中,R_(5)は水素原子,又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は,それぞれ独立に,水素原子,置換されていてもよいアルキル基,置換されていてもよいアルケニル基,又は置換されていてもよいアリール基を表し,R_(6)?R_(8)のうち2つは互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基,アリーレン基,-CONH-R_(9)-,又は-COO-R_(9)-を表し,R_(9)はアルキレン基を表す。Y^(-)は無機又は有機のアニオンを表す。]・・・(中略)・・・
【0014】
・・・(中略)・・・また,本発明は,着色剤(A)が,さらに顔料を含むことを特徴とする前記ののカラーフィルタ用着色組成物に関する。
・・・(中略)・・・
【0015】
また,本発明は,さらに光重合性単量体(E)と,光重合開始剤(F)とを含むことを特徴とする前記ののカラーフィルタ用着色組成物に関する。・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明においては,染料と,特定の構造を有するポリエステル樹脂を含むカラーフィルタ用着色組成物を用いることで,高い保存安定性を有し,かつ塗膜形成時の異物発生もなく,密着性に優れ,現像残渣の発生が少ないカラーフィルタを得ることができる。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は,染料(A1)を含む着色剤(A)と,特定の構造を有するポリエステル樹脂(B1)を含む樹脂(B)と有機溶剤(C)とを含む。
【0018】
ポリエステル樹脂(B1)は,染料(A1)の有機溶剤に対する溶解性を向上させる効果がある。理由は定かでないが,染料(A1)の芳香環とポリエステル樹脂(B1)の芳香環やカルボキシル基が相互作用していると予想される。ポリエステル樹脂(B1)の酸価が90?250mgKOH/gである場合には,染料(A1)の溶解性をより良好させることができるため好ましい。また,ポリエステル樹脂(B1)は,着色剤(A)に顔料を含む場合には,顔料を分散させる効果も有している。
【0019】
以下,本発明カラーフィルタ用着色組成物を構成する成分について詳細に説明するが,まず,ポリエステル樹脂(B1)を含む樹脂(B)について説明する。
<樹脂(B)>
ポリエステル樹脂(B1)は,ポリオール(ba)の水酸基と,ポリカルボン酸無水物(bb)の酸無水物基とを反応させてなる,ポリオール部位(bas)とポリカルボン酸部位(bbs)とを交互に有するポリエステルにおいて,ポリオール部位(bas)の一部又は全部が,S原子を介して,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(bd)を有する構造となっている。
【0020】
ポリエステル樹脂(B1)を得る1つの方法としては,分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(ba1)の存在下,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなる,片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(ba2)を少なくとも含むポリオール中の水酸基と,テトラカルボン酸二無水物(bb1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(bb)中の酸無水物基とを反応させる方法である。
【0021】
〔分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(ba1)〕
本発明に使用する分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(ba1)としては,例えば,・・・(中略)・・・3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(チオグリセリン)・・・(中略)・・・等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0023】
〔エチレン性不飽和単量体(bc)〕
エチレン性不飽和単量体(bc)としては,例えば,メチル(メタ)アクリレート,・・・(中略)・・・n-ブチル(メタ)アクリレート,・・・(中略)・・・及びこれらの混合物があげられる。
・・・(中略)・・・
【0027】
重合の際,エチレン性不飽和単量体(bc)100重量部に対して,任意に0.001?5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては,アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては,2,2’-アゾビスイソブチロニトリル・・・(中略)・・・等があげられる。・・・(中略)・・・
【0028】
溶液重合の場合には,重合溶媒として,・・・(中略)・・・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・(中略)・・・等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。・・・(中略)・・・
【0029】
〔ポリカルボン酸無水物(bb)〕
・・・(中略)・・・
【0034】
・・・(中略)・・・本発明に使用されるものは,染料および顔料に対する吸着性の観点から,ピロメリット酸二無水物が最も好ましい。
・・・(中略)・・・
【0046】
ポリエステル樹脂(B1)は,バインダー樹脂として用いる場合だけでなく,着色剤(A)がさらに顔料を含む場合には,該顔料を分散するときに分散剤の態様で用いるものであってもよい。染料の溶解性の観点からは,バインダーとして使用することが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0058】
<着色剤(A)>
本発明のカラーフィルタ用着色組成物に用いる着色剤(A)は,染料(A1)を含有する。また着色剤(A)は,さらに顔料を併用することもできる。
【0059】
染料(A1)は,油溶性染料,酸性染料,直接染料,塩基性染料,媒染染料,酸性媒染染料等の各種染料のいずれかの形態を有するものであることが好ましい。特に,油溶性染料,酸性染料,直接染料,塩基性染料を用いることが色相に優れるために好ましい。
・・・(中略)・・・
【0074】
上記の染料(A1)は,良好な分光特性を有し,発色性に優れるものの,耐光性,耐熱性に問題があり,高い信頼性が要求されるカラーフィルタを使用する画像表示装置に用いるには,その特性は十分なものではない場合がある。
そのため,これらの欠点を改善するために,・・・(中略)・・・酸性染料,直接染料を含むアニオン性染料の場合は,カチオン性基を有する化合物をカウンターイオンとして用いた造塩化合物として用いることが耐熱性,耐光性,耐溶剤性の面で好ましい。
また,アニオン性染料はスルホンアミド化してスルホン酸アミド化合物として用いることでも,耐性の面で好ましく使用できる。
【0075】
以下,本発明に用いる染料(A1)の好ましい形態について具体的に詳述する。
【0076】
(アニオン性染料(a1)とカチオン性基を有する化合物(a2)の造塩化合物)
カチオン性基を有する化合物(a2)としては,四級アンモニウム塩化合物,アミン,及び側鎖にカチオン性基を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいることがより好ましい。
・・・(中略)・・・
【0084】
・側鎖にカチオン性基を有する樹脂
側鎖にカチオン性基を有する樹脂は,下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル樹脂であることが好ましく,一般式(2)中のカチオン性基が,アニオン性染料のアニオン性基と塩形成することで,造塩化合物を得ることができる。(参考文献1参照)
(参考文献1)特願2011-261667
一般式(2):
【化8】

【0085】
(一般式(2)中,R_(5)は水素原子,または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は,それぞれ独立に,水素原子,置換されていてもよいアルキル基,置換されていてもよいアルケニル基,または置換されていてもよいアリール基を表し,R_(6)?R_(8)のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。Qはアルキレン基,アリーレン基,-CONH-R_(7)-,-COO-R_(7)-を表し,R_(7)はアルキレン基を表す(決定注:Qについての説明中の「R_(7)」は,いずれも誤記であって,正しくは「R_(9)」と解される。)。Y^(-)は無機または有機のアニオンを表す。)
・・・(中略)・・・
【0098】
一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂を得るには,・・・(中略)・・・アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体を単量体成分として共重合したアミノ基を有するアクリル系樹脂を得た後,オニウム塩化剤を反応させ,アンモニウム塩化する方法により得ても良い。
・・・(中略)・・・
【0101】
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては,例えば,ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・・・(中略)・・・が挙げられる。
【0102】
オニウム塩化剤としては,例えば,・・・(中略)・・・メチルクロライド・・・(中略)・・・等が挙げられる。
【0117】
側鎖にカチオン性基を有する樹脂を得る方法としては,・・・(中略)・・・フリーラジカル重合・・・(中略)・・・が好ましい。
【0118】
フリーラジカル重合法の場合は,重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤としては例えば,アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては,・・・(中略)・・・2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)・・・(中略)・・・等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0156】
<光重合性単量体(E)>
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は,光重合性単量体(E)を添加して使用する。
本発明に用いる光重合性単量体(E)には,紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ,これらを単独で,または2種以上混合して用いることができる。・・・(中略)・・・
【0158】
<光重合開始剤(F)>
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は,光重合開始剤(F)を添加して使用する。
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は,該組成物を紫外線照射により硬化させ,フォトリソグラフ法によりフィルタセグメントを形成する際に,光重合開始剤(F)を加えて溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調製するものである。」

(エ) 「【実施例】
【0205】
以下に,本発明を実施例に基づいて説明するが,本発明はこれによって限定されるものではない。なお,特にことわりがない限り,「部」とは「重量部」を意味する。
・・・(中略)・・・
【0211】
<ポリエステル樹脂溶液の製造>
(ポリエステル樹脂溶液B1-1)
ガス導入管,温度計,コンデンサー,攪拌機を備えた反応容器に,メチルメタクリレート80部,ブチルアクリレート20部を仕込み,窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して,3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部に,2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45.3部に溶解した溶液を添加して,10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。このとき,重量平均分子量が4000であった。次に,ピロメリット酸二無水物9.7部,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70.1部,触媒として1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン0.2部を追加し,120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。反応終了後,不揮発分を20重量%に調製し,酸価43mgKOH/g,重量平均分子量8,100のポリエステル樹脂B1-1のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
【0212】
(ポリエステル樹脂溶液B1-2?B1-8)
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外はポリエステル樹脂溶液B1-8と同様にして合成を行い,ポリエステル樹脂溶液B1-2?B1-8のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
・・・(中略)・・・
【0216】
ポリエステル樹脂の組成を表1に示す。
【表1】

表1中の略語を下記に示す。
〔エチレン性不飽和単量体(c)〕
MMA :メチルメタクリレート
BA :ブチルアクリレート
MAA :メタクリル酸
EMA :メタクリル酸エチル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
〔ラジカル重合開始剤〕
AIBN :2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル
〔有機溶剤〕
PGMAc :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
〔テトラカルボン酸二無水物(b1)〕
PMA :ピロメリット酸二無水物(ダイセル化学工業株式会社製)
BPDA :3,3‘,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学株式会社製)
〔エステル化反応触媒〕
DBU :1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン(サンアプロ株式会社製)
【0217】
<バインダー樹脂溶液の製造>
(樹脂溶液1)
セパラブル4口フラスコに温度計,冷却管,窒素ガス導入管,撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み,80℃に昇温し,反応容器内を窒素置換した後,滴下管よりメタクリル酸ジシクロペンタニル25部,メタクリル酸メチル10.0部,メタクリル酸12.0部,メタクリル酸2-ヒドロキシエチル15.0部,パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)38.0部,2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後,更に3時間反応を継続し,重量平均分子量(Mw)30000,酸価78KOH-mg/gのアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後,樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃,20分加熱乾燥して不揮発分を測定し,先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して樹脂溶液1を調製した。
【0218】
(樹脂溶液2)
セパラブル4口フラスコに温度計,冷却管,窒素ガス導入管,撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み,80℃に昇温し,反応容器内を窒素置換した後,滴下管よりアクリル酸n-ブチル25部,メタクリル酸メチル10.0部,メタクリル酸13.0部,メタクリル酸2-ヒドロキシエチル15.0部,パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)37.0部,2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後,更に3時間反応を継続し,重量平均分子量(Mw)11300,酸価88mgKOH/gのアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後,樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃,20分加熱乾燥して不揮発分を測定し,先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して樹脂溶液2を調製した。
・・・(中略)・・・
【0223】
<カチオン性樹脂の製造>
(カチオン性樹脂1)
温度計,攪拌機,蒸留管,冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに,メチルエチルケトン67.3部を仕込み窒素気流下で75℃に昇温した。別途,メタクリル酸メチル34.0部,アクリル酸n-ブチル28.0部,メタクリル酸2-エチルヘキシル28.0部,メタクリル酸ジメチルアミノエチル10.0部,2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を6.5部,およびメチルエチルケトン25.1部を均一にした後,滴下ロートに仕込み,4つ口セパラブルフラスコに取り付け,2時間かけて滴下した。滴下終了2時間後,固形分から重合収率が98%以上であり,重量平均分子量(Mw)が,6830である事を確認し,50℃へ冷却した。ここへ,塩化メチル3.2部,エタノール22.0部を追加し,50℃で2時間反応させた後,1時間かけて80℃まで加温し,更に,2時間反応させた。このようにして樹脂成分が47重量%のカチオン性樹脂1を得た。得られたカチオン性樹脂のアンモニウム塩価は34mgKOH/gであった。
・・・(中略)・・・
【0225】
<造塩化合物の製造>
(造塩化合物(A1-1))
下記の手順でC.I.アシッド レッド 289とカチオン性樹脂1とからなる造塩化合物(A1-1)を作製した。
水2000部に51部のカチオン性樹脂1を添加し,十分に攪拌混合を行った後,60℃に加熱する。一方,90部の水に10部のC.I.アシッド レッド 289を溶解させた水溶液を調製し,先ほどの樹脂溶液に少しずつ滴下していく。滴下後,60℃で120分攪拌し,十分に反応を行う。反応の終点確認としては濾紙に反応液を滴下して,にじみがなくなったところを終点として,造塩化合物が得られたものと判断した。攪拌しながら室温まで放冷した後,吸引濾過を行い,水洗後,濾紙上に残った造塩化合物を乾燥機にて水分を除去して乾燥し,32部のC.I.アシッド レッド 289とカチオン性樹脂1との造塩化合物(A1-1)を得た。このとき造塩化合物(A1-1)中のC.I.アシッド レッド 289に由来する有効色素成分の含有量は29重量%であった。
・・・(中略)・・・
【0240】
<顔料分散体の製造>
(顔料分散体(DP-1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて,アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後,5.0μmのフィルタで濾過し顔料分散体(DP-1)を作製した。
青色微細化顔料(P-1) :12.0部
(C.I.ピグメント ブルー15:6)
樹脂溶液1 :40.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC) :48.0部
・・・(中略)・・・
【0244】
<着色剤溶液の製造>
(着色剤溶液(DA-1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,5.0μmのフィルタで濾過し着色剤溶液(DA-1)を作製した。
造塩化合物(A1-1) : 5.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC) :95.0部
・・・(中略)・・・
【0250】
(実施例9;感光性着色組成物(レジスト材(R-9))の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,5.0μmのフィルタで濾過,混合し感光性着色組成物(レジスト材(R-9))を作製した。
着色剤溶液(DA-1) :13.0部
顔料分散体(DP-1) :19.6部
ポリエステル樹脂溶液B1-1:4.7部
樹脂溶液2 :14.1部
ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート : 4.9部
(東亞合成社製「アロニックスM-402」)
光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「イルガキュア-379」) : 1.8部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC) :41.9部
【0251】
(実施例10?32;レジスト材(R-10?32))
以下,表5に示すように,着色剤溶液,顔料分散体およびポリエステル樹脂溶液の種類を変えた以外はレジスト材(R-9)と同様にして感光性着色組成物(レジスト材(R-10?32))を得た。
・・・(中略)・・・
【表5】

・・・(中略)・・・
【0259】
得られたレジスト材(R-1?37,40?42)について,保存安定性,塗膜異物,ガラス密着性,および現像残渣に関する試験を・・・(中略)・・・行った。結果を表5に示す。」

ウ 拡大先願の出願当初明細書等の記載から把握される発明
拡大先願の出願当初明細書等の前記イ(ア)ないし(エ)の記載から,実施例10等によりサポートされた,ポリエステル樹脂(B1)を得る方法として【0020】に記載された方法を用いて得られたカラーフィルタ用着色組成物であって,請求項6の記載を引用する請求項10の記載を引用する請求項12に対応する発明を把握することができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。

「染料(A1)と顔料とを含有する着色剤(A),顔料を分散するときに分散剤の態様で用いるポリエステル樹脂(B1)を含有する樹脂(B),有機溶剤(C),光重合性単量体(E),及び光重合開始剤(F)を含むカラーフィルタ用着色組成物であって,
前記染料(A1)は,アニオン性染料(a1)とカチオン性基を有する化合物(a2)とから形成された造塩化合物(a3)であって,前記カチオン性基を有する化合物(a2)は,側鎖にカチオン性基を有する樹脂である下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂を含み,
前記ポリエステル樹脂(B1)は,ポリオール部位(bas)とポリカルボン酸部位(bbs)とを交互に有するポリエステルにおいて,ポリオール部位(bas)の一部又は全部が,S原子を介して,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなるビニル重合体部位(bd)を有するものであり,分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(ba1)の存在下,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなる,片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(ba2)を少なくとも含むポリオール中の水酸基と,テトラカルボン酸二無水物(bb1)を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(bb)中の酸無水物基とを反応させて得られるものであり,
紫外線照射により硬化するカラーフィルタ用着色組成物。

一般式(2):

[一般式(2)中,R_(5)は水素原子,又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は,それぞれ独立に,水素原子,置換されていてもよいアルキル基,置換されていてもよいアルケニル基,又は置換されていてもよいアリール基を表し,R_(6)?R_(8)のうち2つは互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基,アリーレン基,-CONH-R_(9)-,又は-COO-R_(9)-を表し,R_(9)はアルキレン基を表す。Y^(-)は無機又は有機のアニオンを表す。]」(以下,「拡大先願発明」という。)

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア) 拡大先願発明の「顔料」,「光重合性単量体(E)」及び「紫外線照射により硬化するカラーフィルタ用着色組成物」は,本件特許発明1の「(B)顔料」,「(C)重合性化合物」及び「着色感放射線性組成物」にそれぞれ相当する。

(イ) 拡大先願発明の「染料(A1)」と,本件特許発明1の「(A)色素多量体」は,「着色成分」である点で共通する。

(ウ) 拡大先願発明の「ポリエステル樹脂(B1)」は,分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(ba1)の存在下,エチレン性不飽和単量体(bc)をラジカル重合してなる,「片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(ba2)」を少なくとも含むポリオール中の水酸基と,「テトラカルボン酸二無水物(bb1)」を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(bb)中の酸無水物基とを反応させて得られるものであるところ,「片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(ba2)」が本件特許発明1の「片末端にヒドロキシル基を有するポリマー」に,「テトラカルボン酸二無水物(bb1)」が本件特許発明1の「テトラカルボン酸二無水物」にそれぞれ相当するから,拡大先願発明の「ポリエステル樹脂(B1)」は,本件特許発明1の「(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた分散樹脂」に相当する。

(エ) 前記(ア)ないし(ウ)によれば,本件特許発明1と拡大先願発明とは,
「着色成分,(B)顔料,(C)重合性化合物,(D)光重合開始剤,及び(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた分散樹脂を含有する着色感放射線性組成物。」
で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本件特許発明1では,着色成分として,「(A)色素多量体(但し,アニオン性染料と,一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物を除く。)」を用いているのに対して,
拡大先願発明では,着色成分として,「アニオン性染料(a1)とカチオン性基を有する化合物(a2)とから形成された造塩化合物(a3)であって,カチオン性基を有する化合物(a2)が,側鎖にカチオン性基を有する樹脂である一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂」,すなわち,本件特許発明1の「(A)色素多量体」から除かれている「一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と,から形成された造塩化合物」に相当する化合物を用いている点。

(オ) 前記(エ)で認定したとおり,本件特許発明1と拡大先願発明の間には相違点が存在するから,本件特許発明1は,拡大先願発明と同一ではない。

イ 本件特許発明2ないし21について
本件特許の請求項2ないし21は,いずれも,本件特許の請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであるから,本件特許発明2ないし21は,いずれも,本件特許発明1の発明特定事項を全て有しているところ,前記アで述べたとおり,本件特許発明1と拡大先願発明との間に相違点が存在する以上,本願特許発明1の発明特定事項を全て有している本件特許発明2ないし21のいずれについても,拡大先願発明との間に少なくとも同じ相違点が存在することとなる。
したがって,本件特許発明2ないし21は,いずれも,拡大先願発明と同一ではない。

(3)小括
以上のとおりであるから,理由1(拡大先願同一)について,本件特許の請求項1ないし21に係る特許が,特許法29条の2の規定に違反してされたものとはいえない。

4 理由2(実施可能要件違反,明確性要件違反)についての判断
(1)実施可能要件違反について
ア 特許権者が意見書に添付して提出した乙第1号証(特開2003-246935号公報。以下,「乙1」という。)は,本件特許に係る特許出願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,当該乙1には,次の記載がある。
「【0024】上記一般式<化1>で示されるアニオンの代表例として,下記の<化7>?<化12>に示す化合物No.1?6が挙げられる。ただし,本発明は下記の例示化合物により何ら限定されるものではない。
【0025】
【化7】

・・・(中略)・・・
【0026】上記一般式<化2>で示される色素単量体の代表例として,下記の<化13>?<化28>に示す化合物No.7?22が挙げられる。ただし,本発明は下記の例示化合物により何ら限定されるものではない。
【化13】

・・・(中略)・・・
【0068】<実施例5>
(重合例)アニオン成分である化合物No.1およびカチオン成分である化合物No.7を組み合わせて得られた青色色素単量体30g,2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸13g,2-ヒドロキシエチルメタクリレート46g,メタクリル酸11g,および28質量%アンモニア水4g,更に重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル5gを加え,メチルセロソルブを溶媒として,95℃で5時間反応させた。次いで,溶媒を留去し,共重合体(以下重合物Aと呼ぶ)を得て着色材料とした。」

イ 前記アで摘記した乙1の記載等からみて,単量体と色素構造とのイオン結合を形成した後に,かかる塩をラジカル重合して,色素多量体を得ることは,本件特許に係る特許出願の出願より前に既知であったと認められるから,特許明細書の【0273】等の記載に接した当業者は,当該既知の製造方法を参酌して,本件特許発明1ないし21を実施することができるといえる。

(2)明確性要件違反について
明確性要件違反として指摘した不備(前記第3 2(2)イ(ア)ないし(オ))については,いずれも,本件訂正によって解消した。

(3)小括
以上のとおりであるから,理由2(実施可能要件違反,明確性要件違反)について,請求項1ないし21に係る特許が,特許法36条4項1号及び同条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。


第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)色素多量体(但し、アニオン性染料と、下記一般式(2)で表される構造単位を含むアクリル系樹脂と、から形成された造塩化合物を除く。)、(B)顔料、(C)重合性化合物、(D)光重合開始剤、及び(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた分散樹脂を含有する着色感放射線性組成物。
【化1】

[一般式(2)中、R_(5)は水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R_(6)?R_(8)は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基を表し、R_(6)?R_(8)のうち2つは互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基、アリーレン基、-CONHR_(9)-、又は-COO-R_(9)-を表し、R_(9)はアルキレン基を表す。Y^(-)は無機又は有機のアニオンを表す。]
【請求項2】
前記(A)色素多量体が、ジピロメテン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、及びサブフタロシアニン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項3】
前記(A)色素多量体が、ジピロメテン色素、トリフェニルメタン色素、及びキサンテン色素から選ばれる色素に由来する部分構造を有する請求項1又は請求項2に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項4】
前記(A)色素多量体が、更に、アルカリ可溶性基を有する請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項5】
前記(A)色素多量体が、下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は一般式(D)で表される色素多量体であり、かつ酸価が、0.3mmol/g?2.0mmol/gである請求項1?請求項4のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【化2】

[一般式(A)中、X_(1)は重合によって形成される連結基を表し、L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中、L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは、色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中、L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは、DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは、色素構造を表す。]
【請求項6】
前記(A)色素多量体が、下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は一般式(D)で表される色素多量体であり、かつ重量平均分子量が、2,000?20,000である請求項1?請求項5のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【化3】

[一般式(A)中、X_(1)は重合によって形成される連結基を表し、L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中、L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは、色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中、L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは、DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは、色素構造を表す。]
【請求項7】
前記(A)色素多量体が、エチレン性不飽和結合を有する色素単量体を含んで構成されるラジカル重合体である請求項1?請求項6のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項8】
前記(A)色素多量体が、重合性基を有する請求項1?請求項7のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項9】
前記(A)色素多量体が、下記一般式(A)又は一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は一般式(D)で表される色素多量体であり、かつ前記(A)色素多量体1gに対する前記重合性基の含有量が、0.1mmol?2.0mmolである請求項8に記載の着色感放射線性組成物。
【化4】

[一般式(A)中、X_(1)は重合によって形成される連結基を表し、L_(1)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
一般式(C)中、L_(3)は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは、色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。
一般式(D)中、L_(4)はn価の連結基を表す。nは2?20の整数を表す。nが2以上のときは、DyeIVの構造は同じであっても異なっていてもよい。DyeIVは、色素構造を表す。]
【請求項10】
前記(B)顔料が、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、アゾメチン顔料、及びジオキサジン顔料から選択される少なくとも一種である請求項1?請求項9のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項11】
前記(D)光重合開始剤が、オキシム化合物である請求項1?請求項10のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項12】
前記テトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物である請求項1?請求項11のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項13】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項14】
カラーフィルタの着色層形成に用いる請求項1?請求項13のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項15】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
【請求項16】
請求項15に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
【請求項17】
前記着色硬化膜の膜厚が0.7μm以下である請求項16に記載のカラーフィルタ。
【請求項18】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と、該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と、未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項19】
請求項1?請求項14のいずれか一項に記載の着色感放射線性組成物を支持体上に付与して着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と、該着色感放射線性組成物層をパターン状に露光する露光工程と、未露光部を現像除去して着色パターンを形成するパターン形成工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項20】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した固体撮像素子。
【請求項21】
請求項16又は請求項17に記載のカラーフィルタを具備した画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-10-18 
出願番号 特願2012-64577(P2012-64577)
審決分類 P 1 651・ 831- YAA (G03F)
P 1 651・ 536- YAA (G03F)
P 1 651・ 16- YAA (G03F)
P 1 651・ 537- YAA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 博之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5775479号(P5775479)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 着色感放射線性組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、パターン形成方法、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、及び画像表示装置  
代理人 加藤 和詳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 中島 淳  
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