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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1323530
異議申立番号 異議2016-700928  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-28 
確定日 2017-01-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第5897604号発明「添加剤組成物およびそれを含む熱可塑性ポリマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5897604号の請求項1ないし36に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第5897604号(請求項の数は36。以下、「本件特許」という。)は、国際出願日である平成23年12月20日(パリ条約による優先権主張 2011年1月25日 アメリカ合衆国(US))にされたとみなされる特許出願である特願2013-551970号に係るものであって、平成28年3月11日に設定登録された。
特許異議申立人 株式会社ADEKA(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年9月28日、本件特許の請求項1ないし36に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし36に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明36」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし36に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤と;
(ii)着色剤と、
を含む添加剤組成物を準備する工程;ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと添加剤組成物とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法であって、
ここで、熱可塑性ポリマーおよび添加剤組成物が、別個に準備され;熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり;熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数1】

(式中、Δb^(*)は、ゼロではなく;Δa^(*)値およびΔb^(*)値は、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定し、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定して、熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値から、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値を差し引くことにより計算される)のそれぞれを満たすΔa^(*)値およびΔb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分であり;対照熱可塑性ポリマー組成物が、熱可塑性ポリマーおよび透明化剤を含有するが着色剤を含有しない方法。
【請求項2】
熱可塑性ポリマー組成物を用いて製造された1.27mm(50ミル)のプラークのL^(*)値が88以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーがポリオレフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
透明化剤が、式(I)の構造に従うアセタール化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
透明化剤が、(a)R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(b)R_(1)、R_(2)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(3)およびR_(8)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(c)R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、及び、(d)化合物(a)、(b)及び(c)の中の少なくとも2つの混合物、からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
透明化剤が、R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである式(I)で示される化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
透明化剤が1,000ppm?2,500ppmの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
着色剤がピグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化2】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される透明化剤を準備する工程;
(c)着色剤を準備する工程;ならびに
(d)熱可塑性ポリマーと透明化剤と着色剤とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法であって、
ここで、熱可塑性ポリマー、透明化剤、および着色剤が、それぞれ別個に準備され;熱可塑性ポリマー組成物中に存在する透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり;熱可塑性ポリマー組成物中の着色剤の量が、以下の不等式
【数2】

(式中、Δb^(*)は、ゼロではなく;Δa^(*)値およびΔb^(*)値は、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定し、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定して、熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値から、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値を差し引くことにより計算される)のそれぞれを満たすΔa^(*)値およびΔb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分であり;対照熱可塑性ポリマー組成物が、熱可塑性ポリマーおよび透明化剤を含有するが着色剤を含有しない方法。
【請求項11】
熱可塑性ポリマー組成物を用いて製造された1.27mm(50ミル)のプラークのL^(*)値が88以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
熱可塑性ポリマーがポリオレフィンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
透明化剤が、式(I)の構造に従うアセタール化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
透明化剤が、(a)R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(b)R_(1)、R_(2)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(3)およびR_(8)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(c)R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、及び、(d)化合物(a)、(b)及び(c)の中の少なくとも2つの混合物、からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
透明化剤が、R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである式(I)で示される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
透明化剤が1,000ppm?2,500ppmの量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
着色剤がピグメントである、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化3】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤と;
(ii)着色剤と、
を含む添加剤組成物を準備する工程;ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと添加剤組成物とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法であって、
ここで、熱可塑性ポリマーおよび添加剤組成物が、別個に準備され;熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として、100ppm?5,000ppmであり;熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数3】

(式中、a^(*)値およびb^(*)値は、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定することにより決定される)のそれぞれを満たすa^(*)値およびb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分である方法。
【請求項20】
熱可塑性ポリマー組成物を用いて製造された1.27mm(50ミル)のプラークのL^(*)値が88以上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
熱可塑性ポリマーがポリオレフィンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
透明化剤が、式(I)の構造に従うアセタール化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
透明化剤が、(a)R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(b)R_(1)、R_(2)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(3)およびR_(8)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(c)R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、及び、(d)化合物(a)、(b)及び(c)の中の少なくとも2つの混合物、からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
透明化剤が、R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである式(I)で示される化合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
透明化剤が1,000ppm?2,500ppmの量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
着色剤がピグメントである、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化4】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される透明化剤を準備する工程;
(c)着色剤を準備する工程;ならびに
(d)熱可塑性ポリマーと透明化剤と着色剤とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法であって、
ここで、熱可塑性ポリマー、透明化剤、および着色剤が、それぞれ別個に準備され;熱可塑性ポリマー組成物中に存在する透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり;熱可塑性ポリマー組成物中の着色剤の量が、以下の不等式
【数4】

(式中、a^(*)値およびb^(*)値は、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定することにより決定される)のそれぞれを満たすa^(*)値およびb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分である方法。
【請求項29】
熱可塑性ポリマー組成物を用いて製造された1.27mm(50ミル)のプラークのL^(*)値が88以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
熱可塑性ポリマーがポリオレフィンである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
透明化剤が、式(I)の構造に従うアセタール化合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
透明化剤が、(a)R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(b)R_(1)、R_(2)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(9)およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(3)およびR_(8)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、(c)R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである、式(I)で示される化合物、及び、(d)化合物(a)、(b)及び(c)の中の少なくとも2つの混合物、からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
透明化剤が、R_(1)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、およびR_(10)がそれぞれ水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(8)、およびR_(9)がそれぞれメチル基であり、R_(11)が-CHOHCH_(2)OHである式(I)で示される化合物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
透明化剤が1,000ppm?2,500ppmの量で存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
着色剤がピグメントである、請求項28に記載の方法。」

第3 申立理由の概要
異議申立人の主張は、概略、次のとおりである。

1 証拠として特表2009-526123号公報(以下、「甲1」という。)及び実験報告書(以下、「甲2」という。)を提出し、本件発明1ないし9は、甲2に照らせば甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(以下、「取消理由1」という。)。

2 主たる証拠として甲1及び甲2、従たる証拠として甲3ないし7を提出し、本件発明10ないし36は、甲1に記載された発明及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「取消理由2」という。)。

3 そして、上記取消理由1及び2にはいずれも理由があるから、本件特許の請求項1ないし36に係る発明についての特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

第4 当合議体の判断
当合議体は、以下述べるように、取消理由1及び2にはいずれも理由はないと解する。

1 甲1に基づく取消理由1(新規性)について
(1) 甲1の記載及び甲1に記載された発明
甲1の「特許法第17条の2の規定による補正の掲載」における特許請求の範囲の請求項1?4、11、段落【0009】、【0010】、【0011】、【0014】、【0028】、【0040】、【0041】、【0048】?【0055】の記載から、以下の甲1発明が記載されているといえる。

<甲1発明>
「(a)ミラッド(登録商標)3988又はNA-21の透明化剤を準備すること
(b)少なくとも1つの顔料を有する着色剤を準備すること
(c)第1のブレンドを形成するために100万部の前記透明化剤に対して、50?10000部の比で前記着色剤と混合すること
(d)配合された樹脂組成物を形成するために、前記第1のブレンドとポリマーを混合すること、
を含む高度に分散した着色剤を有する透明熱可塑性樹脂の製造方法。」

(2) 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ミラッド(登録商標)3988又はNA-211の透明化剤」は、甲1の段落【0040】【0041】の記載及び本件特許の明細書における実施例で透明化剤として利用されているものがMilliken & CompanyのMillad(登録商標)3988iであるから、本件発明1における「(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤」に相当する。
甲1発明の「第1のブレンド」は、本件発明1における「添加剤組成物」に相当しているから、甲1発明の「(c)第1のブレンドを形成するために100万部の前記透明化剤に対して、50?10000部の比で前記着色剤と混合する」は、本件発明1における「透明化剤と、(ii)着色剤と、を含む添加剤組成物を準備する工程」に相当する。
甲1発明の「ポリマー」は、段落【0036】、【0037】の記載から、本件発明1における「熱可塑性ポリマー」に相当する。
甲1発明の「(d)配合された樹脂組成物を形成するために、前記第1のブレンドとポリマーを混合する」は、本件発明1における「(c)熱可塑性ポリマーと添加剤組成物とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程」に相当する。
甲1発明においては、ポリマーを準備する工程について明記はないが、甲1発明において、ポリマーを準備する工程を有することは記載がなくとも当然有しているといえる。
また、甲1発明においては、ポリマー(熱可塑性ポリマー)と第1のブレンド(添加剤組成物)とを「別個に準備する」との記載はないが、甲1発明は、第1のブレンドを形成するための(c)工程とは別に、ポリマーと第1のブレンドとの混合を行う(d)工程を有しているから、ポリマーと第1のブレンドは実質的に、個別に準備されているといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、

「(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤と;
(ii)着色剤と、
を含む添加剤組成物を準備する工程;ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと添加剤組成物とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1は「熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

<相違点2>
本件発明1は「熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数1】

(式中、Δb^(*)は、ゼロではなく;Δa^(*)値およびΔb^(*)値は、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定し、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定して、熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値から、対照熱可塑性ポリマー組成物から生成されたプラークのa^(*)およびb^(*)値を差し引くことにより計算される)のそれぞれを満たすΔa^(*)値およびΔb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分であり;対照熱可塑性ポリマー組成物が、熱可塑性ポリマーおよび透明化剤を含有するが着色剤を含有しない」と特定するのに対して、甲1発明は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
甲1の段落【0014】、【0019】の記載から、樹脂組成物には500?5000ppmの透明化剤が配合されるといえ、具体的な実施例においても2000ppm(段落【0051】の表2)であることから、相違点1は、実質的な相違点ではない。

相違点2について
異議申立人の提出した甲2号証には、以下の事項が記載されている。
「5 使用材料・機器
・透明化剤: ミリケン・アンド・カンパニー製「ミラッド(Millad)3988」
・着色剤: Holliday Pigments SAS製「Blue Outremer 32」(青、カラーインデックス:pigment blue 29)
・着色剤:Holliday Pigments SAS製「Violet Outremer 11」(紫、カラーインデックス:pigment violet 15)
・ポリプロピレン: MFRが12.0g/10分のランダムコポリマー
・標準添加剤パッケージ:
・ADEKA製「アデカスタブ(ADK STAB) AO-60」
・・・
・ADEKA製「アデカスタブ(ADK STAB) 2112」
・・・
・加工助剤:日油製「カルシウムステアレートS」
・・・
・ZOJIRUSHI製ミキサー「BM-RE08」
・日本コークス工業製20L容ヘンシェルミキサー「FM20 C/I」
・・・
6 方法と結果
・・・各サンプルの透明化剤と着色剤との量比を調節することによって、甲第1号証に記載された「透明ポリプロピレン樹脂組成物」に相当する、表1に示す青色に着色された透明なポリプロピレン組成物b1,b2,b3,b4と表2に示す紫色に着色された透明なポリプロピレン組成物v1,v2,v3,v4を作成した。
・・・

6 結論
b1,b2,b3,b4及びv1,v2,v3,v4のテスト片の色調は本件請求項1,10に記載された不等式を成立させる。したがって、甲第1号証に記載された「透明ポリプロピレン樹脂組成物」の製造において使用された着色剤の量は、本件請求項1,10に記載された不等式で特定される色調を達成させる量であることが判明した。」

まず、甲2で具体的に色調が調べられているポリプロピレン樹脂組成物であるb1?4、v1?4は、甲1に具体的に記載されているポリプロピレン樹脂組成物を再現したものではない。
さらに、甲2で使用されているポリプロピレン樹脂組成物の材料について確認すると、着色剤として利用されているものは、甲1の発明の詳細な説明に具体的に記載されている実施例において使用されている着色剤ではなく、甲1に全く記載されていない着色剤である。また、甲2において使用されている標準添加剤パッケージに利用されているアデカスタブAO-60、アデカスタブ2112についても、甲1で実際に利用されているIrganox1010、Irgafos168とは異なる添加剤であって、主成分が同じであっても、これらと同等であるとはいえないし、その配合量も不明である。さらに、当該 Irganox1010、Irgafos168が、現在、入手不可能なものともいえない。
加えて、甲2で使用されているポリプロピレン樹脂組成物に配合されている着色剤の配合量についてみると、0.025ppmであるb1、v1は、甲1での想定されている範囲(甲1の特許請求の範囲の請求項13)外である。
また、甲2で使用されているポリプロピレン樹脂組成物に配合されている透明化剤の配合量についてみると、500ppmであるb1、b2、v1、v2は、甲1で許容されている下限値(甲1の特許請求の範囲の請求項4)であり、5000ppmであるb3、v3、v4は同じくその上限値(甲1の特許請求の範囲の請求項4)であって、甲1に具体的に記載されている実施例の数値である2000ppmとは大きくかけ離れた数値である。
それにもまして、表1に示されているのは「青色に着色された」ポリプロピレン樹脂組成物であり、表2に示されているものは「紫色に着色された」ポリプロピレン樹脂組成物であるから、甲1の高度に透明な外観のポリプロピレン樹脂組成物とはいえない。
そうすると、甲2において測定されているポリプロピレン樹脂組成物は、配合されている着色剤の種類や配合量の点で、甲1に記載されているポリプロピレン樹脂組成物を再現したものであると認めることはできない。
よって、甲2に基づいて、甲1に記載された「透明ポリプロピレン樹脂組成物」の製造において使用された着色剤の量は、本件発明1に記載された不等式で特定される色調を達成させる量であるとは認められない。
以上のことから、相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。

(3) 本件発明2ないし9と甲1発明との対比
本件発明2ないし9は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記(2)で検討した相違点2で実質的に相違しているから、甲1発明及び甲1に記載された発明ではない。

(4) まとめ
上記のとおりであって、異議申立人が主張する取消理由1には、理由がない。

2 甲1に基づく取消理由2(進歩性)について
(1) 甲1の記載及び甲1に記載された発明
上記1(1)のとおりの記載及び甲1発明が記載されているといえる。

(2) 本件発明10と甲1発明との対比
本件発明10と甲1発明とを対比する。
上記1(2)のとおりであるから、本件発明10と甲1発明とは、

「(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤を準備する工程;
(c)着色剤を準備する工程、ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点3>
本件発明10は、「熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

<相違点4>
本件発明10は、「熱可塑性ポリマー、透明化剤、および着色剤がそれぞれ別個に準備され、熱可塑性ポリマーと透明化剤と着色剤を混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造」と特定するのに対して、甲1発明においては、透明化剤と着色剤との第1のブレンドを形成した後、ポリマーと混合して組成物を製造している点。

<相違点5>
本件発明10は、「熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数3】

(式中、a^(*)値およびb^(*)値は、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定することにより決定される)のそれぞれを満たすa^(*)値およびb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分である」と特定するのに対して、甲1発明は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点3について
上記1(2)での検討のとおり、相違点3は、実質的な相違点ではない。

相違点4について
甲1には、下記の記載がある。
「【請求項19】
(a)透明化剤を準備すること
(b)少なくとも1つの顔料を有する着色剤を準備すること
(c)第1のブレンドを形成するために前記透明化剤を前記着色剤と混合すること
(d)配合された樹脂組成物を形成するために、前記第1のブレンドとポリマーを混合すること、
を含む高度に分散した着色剤を有する透明熱可塑性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項19)
「極端に低い添加剤濃度水準で、プラスチック或いはポリマー中に添加剤を適切に分散することは困難である。例えば、非常に低い添加剤の添加量水準で、ポリマー中に添加剤を分散することは、一般に、数工程を必要とする。例えば、添加剤を約10000ppmの範囲で取り入れるために、添加剤は「レットダウン(let-down)」方式でポリマーへ添加され得る。全ての比は、他に特定されなければ、ここでは重量比である。次いで、別の「レットダウン」工程が、数百ppmの範囲で添加剤を取り入れるために必要とされ得る。時々、第3のレットダウンが、約10ppm未満或いは5ppm未満の範囲で添加剤を取り入れるために必要とされ得る。このように、ほんの数ppmの範囲で添加剤を適用することは、別個の工程でなされねばならず、唯一の工程で一般製造装置を使用する従来の方法では通常容易に達成することはできない。ポリマー中での適切で均一な分散を達成することは困難である。非常に低い添加量の添加剤を使用するときには、分散を達成することは、非常に困難である。低い添加量で非常に高度の分散を達成することは困難であり、大部分のポリマー製造用途において、時間を浪費するものである。」(段落【0004】)
「当業者に示される最適な態様を含む本発明の完全な実施可能な開示が、明細書で明らかにされる。図2は、透明化剤と着色剤の第1のブレンドが作成される本発明の実施方法を示す。図3は、着色剤添加剤前駆体が使用される本発明の代替具体例を示す。図4は、低着色剤添加量のマスターバッチが使用される更に別の具体例を示す。」(段落【0008】)
「このような着色剤の低添加量は、多くの異なる方法を使用して、ポリマー中に分散され得る。しかしながら、高分散を達成することは意義のある挑戦である。図2に示されるように、このような製品で適切な分散の着色剤を達成する1つの方法は、まず、透明化剤/着色剤ブレンド即ち「第1のブレンド」を形成するために、透明化剤を着色剤と共に適用することにより達成される。第1のブレンドは、一般に粒子形状である。第1のブレンドは、場合によってはポリマー或いは添加剤「パーケージ」(即ち、抗酸化剤、酸除去剤、スリップ剤、光安定剤、光沢剤及び/又はUV光吸収剤)と配合され得る。第1のブレンドと任意の物質は、ミキサーで混合され得る。この混合工程が実施されるか否かにかかわらず、次工程は、着色剤を更に分散させる作用を有する随意のポリマーの添加である。次いで、混合物は、加熱適用を使用する1軸或いは2軸スクリュー混合工程で使用される。ペレットの生成が通常であり、このようなペレットは次いで暫時貯蔵されてもよいし、代替として、成形プロセスですぐに使用されてもよい。得られたものは、非常に低い添加量で製品中に高度に分散した着色剤を有する透明ポリマー製品である。
一般的に、図2のように、透明化剤と着色剤との第1のブレンドの使用は、実質的利点を有する。(少なくとも透明化剤と着色剤とを含む)第1のブレンドの使用は、非常に低い添加量でより大きい分散を達成する傾向にある。そのため、このような第1のブレンドを使用する技術は、有利であると考えられる。
本発明を実施する代わりの方法が、図3に示される。この方法は、着色剤添加剤前駆体を形成するための透明化剤と着色剤と随意の量のポリマー(そして随意の添加剤と共に)の混合物を示す。随意の添加剤は、1以上の抗酸化剤、酸除去剤、スリップ剤、光安定剤及び/又はUV光安定剤を含む一般の添加剤パーケージであり得る。前駆体は、ポリマーか随意の添加剤の何れかを含まなければならない。着色剤添加剤前駆体は、次いでポリマーと随意に混合され、次いで、配合される。成形プロセスは、非常に低い添加量水準で製品中に高度に分散した着色剤を有する透明ポリマー製品を製造するためにペレットを使用する。
本発明の更に別の具体例が、図4に示される。この図は、低着色剤添加量マスターバッチの製造に関する本発明の適用を示す。これは、そのような適用のための一般のマスターバッチと比べて低い量の着色剤を有するポリマーのマスターバッチである。このプロセスでは、透明化剤は、着色剤と(そして随意にポリマーのある量と)結合され、次いで混合される。混合して得られたものは、着色剤を更に分散するために、更に別の工程でポリマーと混合されてもよい。引き続き配合され、熱が適用され、低着色剤マスターバッチを生成する。次いで、マスターバッチは更なる使用のためのペレットに成形され得るし、或いは、すぐに成形プロセスに代わりに適用され得る。成形プロセスでは、ポリマーが、非常に低い濃度で製品中に高度に分散した着色剤を有する透明ポリマー製品を生成するために添加される。」(段落【0022】?【0025】)


」(図2、3、4)

甲1の特許請求の範囲には、甲1の特許請求の範囲に記載の透明製品製造のための樹脂組成物を製造する製造方法として、唯一、請求項19の製造方法が記載されていて、発明の詳細な説明には、5ppm以下の添加剤が配合されている樹脂組成物において、5ppm以下の添加剤を均一に組成物中に配合することの困難性が指摘され、甲1の特許請求の範囲に記載の透明製品製造のための樹脂組成物を製造する具体的な方法として、図2、図3、図4に示されている製造方法が説明されているが、いずれも、熱可塑性ポリマー、透明化剤、および着色剤を特定の順番で、特定の工程に従い配合するものであって、それぞれ別個に準備されたものを、単純に熱可塑性ポリマーと透明化剤と着色剤を混合するものではない。
してみれば、甲1の記載を十分理解した当業者は、甲1発明における混合方法を、甲1の詳細な説明に例示も示唆もされていない単純な混合方法とすることは困難といえる。

相違点5について
本件特許の明細書には、所定量の透明化剤を配合する熱可塑性ポリマーに微量な着色剤を添加する透明化熱可塑性ポリマーにおいて、熱可塑性ポリマー組成物が、相違点5に係るCIE L^(*)a^(*)b^(*)色空間におけるa^(*)及びb^(*)が所定の範囲となるような微量の着色剤の量を添加するものであると、着色剤を含有しない透明化熱可塑性ポリマー組成物よりも視覚的に魅力があると認知されることが確認されている。
一方、異議申立人が提示した甲3?甲7のいずれの文献においても、相違点5に係る特定の条件を満足するように微量の着色剤の配合量を決めることで、着色剤を含有しない透明化熱可塑性ポリマー組成物よりも視覚的に魅力があるものとなることは記載されておらず、示唆もされていない。
してみれば、相違点5は、当業者においても想到容易とはいえない。

以上のことから、本件発明10は、甲1及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3) 本件発明11ないし18と甲1発明との対比
本件発明11ないし18は、本件発明10を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記(2)で検討した相違点4及び5の点で当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、甲1発明及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をし得たものではない。

(4) 本件発明19と甲1発明との対比
本件発明19と甲1発明とを対比する。
上記1(2)のとおりであるから、本件発明19と甲1発明とは、

「(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤と;
(ii)着色剤と、
を含む添加剤組成物を準備する工程;ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと添加剤組成物とを混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点6>
本件発明19は、「熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

<相違点7>
本件発明19は、「熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数3】

(式中、a^(*)値およびb^(*)値は、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定することにより決定される)のそれぞれを満たすa^(*)値およびb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分である」と特定するのに対して、甲1発明は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点6について
上記1(2)での検討のとおり、相違点6は、実質的な相違点ではない。

相違点7について
上記2(2)の相違点5での検討のとおり、相違点7は、当業者においても想到容易とはいえない。

以上のことから、本件発明19は、甲1及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5) 本件発明20ないし27と甲1発明との対比
本件発明20ないし27は、本件発明19を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記(4)で検討した相違点7の点で当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、甲1発明及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をし得たものではない。

(6) 本件発明28と甲1発明との対比
本件発明28と甲1発明とを対比する。
上記2(2)のとおりであるから、本件発明28と甲1発明とは、

「(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程;
(b)(i)トリスアミド、2,2’-メチレンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸リチウム、モノカルボキシラート化合物、および式(I):
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)およびR_(10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、およびハロゲンからなる群より選択され;R_(11)は、-CH_(2)OHおよび-CHOHCH_(2)OHからなる群より選択されるヒドロキシアルキル基である)の構造に従うアセタール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の透明化剤を準備する工程;
(c)着色剤を準備する工程、ならびに
(c)熱可塑性ポリマーと混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造する工程、
を含む熱可塑性ポリマー組成物を製造するための方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点8>
本件発明28は、「熱可塑性ポリマー組成物中の透明化剤の量が、熱可塑性ポリマー組成物の総質量を基準として100ppm?5,000ppmであり」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

<相違点9>
本件発明28は、「熱可塑性ポリマー、透明化剤、および着色剤がそれぞれ別個に準備され、熱可塑性ポリマーと透明化剤と着色剤を混合して、熱可塑性ポリマー組成物を製造」と特定するのに対して、甲1発明においては、透明化剤と着色剤との第1のブレンドを形成した後、ポリマーと混合して組成物を製造している点。

<相違点10>
本件発明28は、「熱可塑性ポリマー組成物中に存在する着色剤の量が、以下の不等式
【数3】

(式中、a^(*)値およびb^(*)値は、熱可塑性ポリマー組成物から生成された1.27mm(50ミル)のプラークにより示されるa^(*)値およびb^(*)値を測定することにより決定される)のそれぞれを満たすa^(*)値およびb^(*)値を示す熱可塑性ポリマー組成物を製造するのに十分である」と特定するのに対して、甲1発明は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点8について
上記1(2)での検討のとおり、相違点8は、実質的な相違点ではない。

相違点9について
上記(2)の相違点4についての検討のとおり、甲1の記載を十分理解した当業者は、甲1発明における混合方法を、甲1の詳細な説明に例示も示唆もされていない単純な混合方法とすることは困難といえる。

相違点10について
上記(2)の相違点5についての検討のとおり、相違点10は、当業者においても想到容易とはいえない。

以上のことから、本件発明28は、甲1及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(7) 本件発明29ないし36と甲1発明との対比
本件発明29ないし26は、本件発明28を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記(6)で検討した相違点9及び10の点で当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、甲1発明及び甲3ないし7に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をし得たものではない。

(8) まとめ
上記のとおりであって、異議申立人が主張する取消理由2には、理由がない。

第5 むすび
したがって、異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠方法によっては、特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許が特許法113条各号のいずれかに該当すると認め得る理由もない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-04 
出願番号 特願2013-551970(P2013-551970)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08J)
P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深谷 陽子平井 裕彰  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大島 祥吾
渕野 留香
登録日 2016-03-11 
登録番号 特許第5897604号(P5897604)
権利者 ミリケン・アンド・カンパニー
発明の名称 添加剤組成物およびそれを含む熱可塑性ポリマー組成物  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 鵜飼 健  
代理人 峰 隆司  
代理人 飯野 茂  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 三谷 祥子  
代理人 井澤 幹  

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