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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1324129
審判番号 不服2015-12736  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-03 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2013-558079「モバイル支援されたリバースリンク干渉管理のための装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/125508、平成26年 6月19日国内公表、特表2014-514803、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2012年(平成24年)3月9日(優先権主張 2011年(平成23年)3月11日 米国,2012年(平成24年)3月8日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年9月26日付けで拒絶理由が通知され,同年12月26日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,平成27年2月24日付けで拒絶査定され,同年7月3日に拒絶査定不服審判を請求するのと同時に手続補正し,同年8月10日付けで前置報告書が作成され,平成28年3月30日付けで拒絶理由を当審から通知し,同年7月4日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,同年8月10日付けで拒絶理由(最後)を当審から通知し,同年12月15日付けで意見書ともに手続補正書が提出されたものである。


第2 当審拒絶理由及び本願発明

1.当審拒絶理由の概要
平成28年8月10日付けで当審から通知した拒絶理由(最後)(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

この審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から3ヶ月以内に意見書を提出してください。

理 由

<< 最 後 >>
(明確性)本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



本件出願の特許請求の範囲の記載は,平成28年7月4日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

○ 請求項1,5,6,7について

本請求項には,「前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差および前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス差によって推定され」との記載がある。
当該記載のうち「前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差」及び「前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス差」における「パスロス差」の技術的に意味するところが不明である。
つまり,「パスロス差」とは,少なくとも2つの「パスロス」の「差」を意味すると解されるが,本請求項のような記載では,「第1のパスロス差」についても,「第2のパスロス差」についても,上記のような「少なくとも2つの「パスロス」の「差」」を意味していると解することはできない。

よって,請求項1,5,6,7に係る発明は明確でない。

<最後の拒絶理由通知とする理由>
平成28年3月30日付け拒絶理由通知(最初)に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。

<補正等の示唆>
「パスロス」とは,電波の空間伝搬の特性から、電波の強度は伝搬距離に応じて減衰し,このような伝搬距離による損失を技術的意味する用語であることが周知である。(例えば,特開2011-35683号公報【0003】等参照。)
「第1のパスロス差」及び「第2のパスロス差」に関して,この周知事項と,本件出願の明細書【0032】から【0038】における記載とを照らしてみると,それぞれは「前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス(PL_(f))」及び「前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス(PL_(m))」の誤記と解することができる。

そこで,請求項1を代表にして,補正案を提示する。
なお,請求項2から7についても,必要な補正を検討して下さい。

【請求項1】を例にした補正案
モバイル支援されたリバースリンク(RL)干渉管理を提供するための方法であって、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信することと、
前記要求に応答して、前記ユーザデバイスから、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信することと、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され、前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記データレート割り当てを受信することと、
前記少なくとも1つの非サービングセルでの前記RL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信されたデータレート割り当てに基づいて1つまたは複数のトラフィック電力レベルまたはデータレート送信を調整することと
を備える、方法。

2.本件補正
平成28年12月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,特許法第17条の2第1項第3号に規定する期間内(「拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において,最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内」)にしたものである。

そうすると,本件補正のうち,特許請求の範囲についてする補正は,特許補正第17条の2第5項に掲げる事項を目的とするものに限られるので,本件補正の目的について検討する。

3.本件補正の目的について
本願の特許請求の範囲の「本件補正前」と「本件補正後」の記載はそれぞれ次のとおりである。

[本件補正前]
【請求項1】
モバイル支援されたリバースリンク(RL)干渉管理を提供するための方法であって、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信することと、
前記要求に応答して、前記ユーザデバイスから、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信することと、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差および前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス差によって推定され、前記第2および第1のパスロス差はそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記データレート割り当てを受信することと、
前記少なくとも1つの非サービングセルでの前記RL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信されたデータレート割り当てに基づいて1つまたは複数のトラフィック電力レベルまたはデータレート送信を調整することと
を備える、方法。
【請求項2】
前記非サービングセルは、マクロセルであり、前記ソースセルは、フェムトセルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
しきい値の少なくとも一部に基づいた前記データレート割り当ては、ライズオーバサーマル(RoT)またはノイズライズ(NR)のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記要求は、セル外干渉またはしきい値を超えるRoTのうちの少なくとも1つを備えるトリガイベントに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モバイル支援リバースリンク(RL)干渉管理を提供するためのユーザデバイスであって、
前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信する受信機と、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信する送信機と、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値は、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差および前記ソースセルから前記非サービングセルへの第2のパスロス差によって推定され、前記第2および第1のパスロス差はそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
ソースセルから前記データレート割り当てを受信する前記受信機と、
前記非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節するハードウェア調整モジュールと
を備える、ユーザデバイス。
【請求項6】
モバイル支援リバースリンク(RL)干渉管理を提供するための装置であって、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信するための手段と、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ユーザデバイスから前記ソースセルに送信するための手段と、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差および前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス差によって推定され、前記第2および第1のパスロス差はそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、ソースセルから前記データレート割り当てを受信するための手段と、
少なくとも1つの非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節するための手段と
を備える、装置。
【請求項7】
少なくとも1つのコンピュータに、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信することと、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ユーザデバイスから前記ソースセルに送信することと、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが少なくとも1つの非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するように用いられる、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロス差および前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロス差によって推定され、前記第2および第1のパスロス差はそれぞれ、非サービングセルパイロット強度測定値と、フェムトセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、ソースセルから前記データレート割り当てを受信することと、
少なくとも1つの非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節することと
を行わせるためのコードを備える、
コンピュータプログラム。

[本件補正後](下線は請求人が付与。)
【請求項1】
モバイル支援されたリバースリンク(RL)干渉管理を提供するための方法であって、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信することと、
前記要求に応答して、前記ユーザデバイスから、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信することと、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され、前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記データレート割り当てを受信することと、
前記少なくとも1つの非サービングセルでの前記RL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信されたデータレート割り当てに基づいて1つまたは複数のトラフィック電力レベルまたはデータレート送信を調整することと
を備える、方法。
【請求項2】
前記非サービングセルは、マクロセルであり、前記ソースセルは、フェムトセルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
しきい値の少なくとも一部に基づいた前記データレート割り当ては、ライズオーバサーマル(RoT)またはノイズライズ(NR)のうちの少なくとも1つを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記要求は、セル外干渉またはしきい値を超えるRoTのうちの少なくとも1つを備えるトリガイベントに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モバイル支援リバースリンク(RL)干渉管理を提供するためのユーザデバイスであって、
前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信する受信機と、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信する送信機と、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値は、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ソースセルから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され、前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
ソースセルから前記データレート割り当てを受信する前記受信機と、
前記非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節するハードウェア調整モジュールと
を備える、ユーザデバイス。
【請求項6】
モバイル支援リバースリンク(RL)干渉管理を提供するための装置であって、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信するための手段と、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ユーザデバイスから前記ソースセルに送信するための手段と、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するために用いられ、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され、前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、ソースセルから前記データレート割り当てを受信するための手段と、
少なくとも1つの非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節するための手段と
を備える、装置。
【請求項7】
少なくとも1つのコンピュータに、
ユーザデバイスにおいて、前記ユーザデバイスによる少なくとも1つのパイロット強度測定値のためのソースセルからの要求を受信することと、
前記要求に応答して、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ユーザデバイスから前記ソースセルに送信することと、ここにおいて、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとは、前記ユーザデバイスが少なくとも1つの非サービングセルに対して生じるRL干渉を制御するよう、前記ソースセルにおいて、前記ユーザデバイスのためのデータレート割り当てを決定するように用いられる、前記データレート割り当ては、前記RL干渉に基づいて決定され、前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され、前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、非サービングセルパイロット強度測定値と、フェムトセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される、
前記ユーザデバイスが、ソースセルから前記データレート割り当てを受信することと、
少なくとも1つの非サービングセルでのRL干渉を制御するよう、前記ユーザデバイスが、前記ソースセルから前記受信したデータレート割り当てに基づいてトラフィック電力レベルまたはデータレート送信のうちの1つまたは複数を調節することと
を行わせるためのコードを備える、
コンピュータプログラム。

そして,当審拒絶理由に照らし,特許請求の範囲の記載に関し,本件補正前の記載と本件補正後の記載をみると,本件補正が,本件補正後の請求項1,5,6,7のように記載することにより,本件補正前の請求項1,5,6,7の記載の誤記を訂正することを目的としたものであることは明らかである。

したがって,本件補正の目的は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる事項(誤記の訂正)に該当する。
また,ほかに本件補正を却下すべき理由もない。

4.本願発明
以上のとおりであるから,本願の請求項1から7に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1から7に記載された事項(上記「2.」の[本件補正後]における記載を参照。)により特定されるとおりのものである。

なお,以下において,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明」から「本願第7発明」を併せて「本願発明」という。

5.当審拒絶理由に関する判断
本件補正によって,請求項1から7の記載は,上記「2.」における[本件補正前]であったのが,同[本件補正後]のようになった。
このことにより,本願発明は,明確になった。
よって,当審拒絶理由(36条6項2号)は解消したといえる。


第3 原査定の理由について

1.原査定の査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。

<理由1>
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1,2,5-7に対して,引用文献1,2
・請求項3,4に対して,引用文献1-3

引用文献等一覧
1.国際公開第2009/099811号
(対応日本語文献:特表2011-514718号公報)
2.特表2008-533871号公報
3.欧州特許出願公開第1231807号明細書

2.原査定の理由に関する当審判断
(1) 引用文献1及び記載事項
原査定の理由で「引用文献1」として引用された国際公開2009/099811号(2009年(平成21年)8月13日国際公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。(なお,当審訳として,引用文献1に対応する日本語特許公報の特表2011-514718号公報(平成23年5月6日公表)を参考する。)

ア 記載事項1
[0025] Wireless network 100 may be a homogeneous network that includes only macro eNBs. Wireless network 100 may also be a heterogeneous network that includes different types of eNBs, e.g., macro eNBs, pico eNBs, femto eNBs, etc. The techniques described herein may be used for homogeneous and heterogeneous networks.
(当審訳
[0025] ワイヤレスネットワーク100は、マクロeNBだけを含んでいる同種ネットワークであってもよい。ワイヤレスネットワーク100はまた、異なるタイプのeNB、例えば、マクロeNB、ピコeNB、フェムトeNB等を含んでいる異種ネットワークであってもよい。同種ネットワークまたは異種ネットワークに対して、ここで記述した技術が使用されてもよい。(【0016】))

イ 記載事項2
[0036] A UE may operate in a dominant interference scenario in which the UE may observe high interference from one or more neighbor eNBs and/or may cause high interference to the neighbor eNB(s). High interference may be quantified by the observed interference exceeding a threshold or based on some other criteria. A dominant interference scenario may occur due to the UE connecting to an eNB with lower pathloss and lower geometry among all eNBs detected by the UE. This may be desirable if the selected eNB has much lower transmit power as compared to the other eNBs. Less interference may then be caused on both the downlink and uplink to achieve a given data rate for the UE. A dominant interference scenario may also occur due to restricted association. The UE may be close to an eNB with high received power but may not be allowed to access this eNB due to restricted association. The UE may then connect to an unrestricted eNB with lower received power. The UE may then observe high interference from the restricted eNB and may also cause high interference to this eNB.
[0037] In an aspect, an eNB may make interference management decisions based on enhanced pilot measurement reports received from UEs. The enhanced pilot measurement reports may include various types of information and may be sent in various manners, as described below. The eNB may make various interference management decisions based on the enhanced pilot measurement reports, as also described below.
[0038] FIG. 4 shows a design of sending and using enhanced pilot measurement reports for interference management. A serving eNB and neighbor eNBs may periodically transmit pilots and eNB information on the downlink. The pilots may be low reuse pilots/preambles (LRPs) and/or other synchronization signals, reference signals, etc. An LRP is a pilot transmitted with low reuse and/or high power so that it can be detected even by distant UEs observing high interference on the downlink. Low reuse refers to different base stations using different resources (at least in part) for pilot transmission, thus improving pilot SNR by reducing interference and ensuring that even pilots of relatively weak base stations can be detected. The other synchronization signals may comprise a primary synchronization signal and a secondary synchronization signal in LTE. The eNB information may comprise various types of information for the eNBs, as described below. UEs within the coverage of the serving eNB and the neighbor eNBs may receive the pilots from these eNBs and make pilot measurements. A pilot measurement is a measurement based on a pilot and may comprise received signal strength (e.g., received pilot power), received signal quality (e.g., SNR), timing offset, etc. The UEs may generate enhanced pilot measurement reports containing pilot measurements, eNB information, UE information, etc. The serving eNB may receive the enhanced pilot measurement reports from the UEs and may make interference management decisions based on these reports. The serving eNB may also schedule its UEs based on the enhanced pilot measurement reports and other information. The neighbor eNBs may also receive the enhanced pilot measurement reports and may make interference management decisions based on these reports (not shown in FIG. 4 for simplicity).
[0039] The eNBs may periodically transmit pilots and eNB information. The transmissions from different eNBs may be time aligned (as shown in FIG. 4) or may be staggered across time. The UEs may send enhanced pilot measurement reports periodically (e.g., whenever pilots are received), when and as configured for pilot measurement reporting, whenever requested, etc. The enhanced pilot measurement reports from different UEs may be time aligned (as shown in FIG. 4) or may be staggered across time.
(当審訳
[0036] UEは、支配的な干渉シナリオで動作することがあり、このシナリオでは、UEは、1つ以上の隣接eNBからの高干渉を観測することがある、および/または、隣接eNBに対する高干渉を生じさせることがある。高干渉は、しきい値を超えている観測された干渉によって、または、他の何らかの基準に基づいて定量化されてもよい。UEが、UEによって検出されたすべてのeNBの中で低い方のパス損失および低い方のジオメトリを有するeNBに接続しているために、支配的な干渉シナリオが発生することがある。これは、選択されたeNBが、他のeNBと比較して非常に低い送信電力を有している場合には好ましいかもしれない。UEに対する所定のデータレートを達成するために、より少ない干渉が、ダウンリンクおよびアップリンクの双方上で生じるかもしれない。支配的な干渉シナリオはまた、制限のある関係が原因で発生することがある。UEは、高い受信電力を有するeNBに近いかもしれないが、制限のある関係が原因で、このeNBにアクセスすることが許容されないかもしれない。したがって、UEは、低い方の受信電力を有する制限のないeNBに接続する。したがって、UEは、制限のあるeNBからの高干渉を観測し、このeNBに対して高干渉を生じさせることがある。
[0037] ある観点では、eNBは、UEから受け取った拡張パイロット測定報告に基づいて、干渉管理決定を行ってもよい。以下で記述するように、拡張パイロット測定報告は、さまざまなタイプの情報を含んでいてもよく、さまざまな方法で送られてもよい。eNBは、さらに以下で記述するように、拡張パイロット測定報告に基づいて、さまざまな干渉管理決定を行ってもよい。
[0038] 図4は、干渉管理のために拡張パイロット測定報告を送るおよび使用する設計を示している。担当eNBおよび隣接eNBは、ダウンリンク上でパイロットおよびeNB情報を周期的に送信してもよい。パイロットは、低再使用パイロット/プリアンブル(LRP)および/または他の同期信号、基準信号等であってもよい。LRPは、低再使用および/または高電力により送信されるパイロットであり、これにより、ダウンリンク上で高干渉を観測している遠方のUEによってでさえも検出できる。低再使用は、パイロット送信に対して異なるリソースを(少なくとも部分的に)使用している異なる基地局に関連しており、これにより、干渉を減少させることによってパイロットSNRが向上し、比較的弱い基地局のパイロットでさえも確実に検出することができる。他の同期信号は、1次同期信号と2次同期信号とをLTE中に含んでいてもよい。eNB情報は、以下に記述するように、eNBに対するさまざまなタイプの情報を含んでいてもよい。担当eNBおよび隣接eNBのカバレージ内のUEは、これらのeNBからパイロットを受け取り、パイロット測定を行ってもよい。パイロット測定は、パイロットに基づいた測定であり、受信信号強度(例えば、受信パイロット電力)、受信信号品質(例えば、SNR)、タイミングオフセット等を含んでいてもよい。UEは、パイロット測定値、eNB情報、UE情報等を含む拡張パイロット測定報告を発生させてもよい。担当eNBは、拡張パイロット測定報告をUEから受け取り、これらの報告に基づいて干渉管理決定を行ってもよい。担当eNBはまた、拡張パイロット測定報告と他の情報とに基づいて、担当eNBのUEをスケジューリングもしてもよい。隣接eNBもまた、拡張パイロット測定報告を受け取り、これらの報告に基づいて干渉管理決定を行ってもよい(簡単にするために、図4では示していない)。
[0039] eNBは、パイロットおよびeNB情報を周期的に送信してもよい。異なるeNBからの送信は、(図4に示したように)時間整列してもよく、または、時間をずらして配列してもよい。UEは、(例えば、パイロットを受け取ったときいつでも、パイロット測定報告するように構成されているとき、要求されたときいつでも等)拡張パイロット測定報告を周期的に送ってもよい。異なるUEからの拡張パイロット測定報告は、(図4に示したように)時間整列してもよく、または、時間をずらして配列してもよい。(【0027】から【0030】)

(2) 引用文献2及び記載事項
原査定の理由で「引用文献2」として引用された特表2008-533871号公報(平成20年8月21日公表)には,図面とともに次の事項が記載されている,

ア 記載事項
【0081】
第7図は、アップリンクのトラヒックのセグメントのために無線端末で利用可能な典型的なデータレートの選択肢を説明する表700である。第1行702は表の各列に含まれている情報を記載する。第1列712は利用可能なデータレートの選択肢の一覧(0,1,2,3)を表す。第2行704はデータレート0の選択肢の情報を含み、第3行706はデータレート1の選択肢の情報を含み、第4行708はデータレート2の選択肢の情報を含み、第5行710はデータレート3の選択肢の情報を含む。第2列714はフレーム数の一覧(1,2,3,5)を表す。第3列716は情報ビット数の一覧(224,432,640,1056)を表す。第4列718は符号語長1344の一覧を表す。第6列720は概算の符号化レートの一覧(1/6,1/3,1/2,5/6)を表す。第7列722は使用される変調コンステレーションの一覧(QPSK,QPSK,QPSK,QPSK)を表す。第8列724は1トーン当たりの相対送信電力オフセット値の一覧(0dB,73/32dB,129/32dB,247/32dB)を表す。
【0082】
第7図の例では、使用されるデータレートが増加すると、無線端末によって利用される電力が増加し、よって、システム内の、例えば、同じトーンの組を使用する隣接セル及び/又はセクターにおいて、他のWTに関してWTによって生成される干渉レベルもまた増加する場合がある。基地局は、指示された最大のデータレートレベルを無線端末に指示し、これにより、WTによるアップリンクのレート選択肢の選択を制限することにより、システム全体の干渉レベルを制御することがある。無線端末は、基地局によって許可された許容最大値より低いデータレートを選択することにより自分のバッテリーリソースを浪費しないようにすることを決定することがある。

(3) 前置引用文献及び記載事項
平成27年8月10日付けで作成された前置報告書において引用された特表2008-532417号公報(平成20年8月14日公表。以下「前置引用文献」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 記載事項1
【請求項1】
第1のセルと第2のセルとを含むセルラ無線通信システムにおいて用いられる方法であって、移動体無線機(10)が前記第1のセルで第1の基地局(BS1)によって現在サービスを受けている状況において、
(a)前記移動体無線機(10)からのアップリンク信号送信に関する相対パス利得に関係する量を決定する工程と、
(b)前記相対パス利得に関係する量に基づいて、前記第1のセルにおけるアップリンク資源を管理する工程とを有し、
前記相対パス利得に関係する量は、前記移動体無線機(10)から第2の基地局(BS2)へのアップリンク信号送信に関する第1のパス利得に関係する量と前記移動体無線機から前記第1の基地局(BS1)へのアップリンク信号送信に関する第2のパス利得に関係する量との比較に基づくものであることを特徴とする方法。

イ 記載事項2
【請求項5】
アップリンク資源の管理は、前記アップリンク信号送信に関して前記移動体無線機(10)により用いられる送信電力或はデータレートを調整することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。

ウ 記載事項3
【0008】
分散型資源管理方式を実施、しかし同時に、アップリンク送信の隣接セルへの悪影響を少なくとも軽減することが望まれる。本願の発明者は、これらの目標が、分散型資源制御セルラシステムでアップリンク資源管理を改善するために、移動局により(直接ないし間接的に)行われる相対パス利得に関連した測定を用いて十分達成されることを認識した。ここでの目的のために、分散型資源制御システムは、その基地局が単独で、或は移動局と協働して、BSC、RNC、コアネットワークノードなどのような中央制御装置を関与させる必要なく、少なくともある資源管理を決定するものの1つである。これは、またアドホックネットワーキングにおける状況と同じであり、そこではアクセスポイントが分散型のようにその資源を管理している。しかし、その相対パス利得に関連した測定は、最も有益な測定値のみがその資源制御ノードにシグナリングされるという限定されたシグナリングがある集中型アップリンク資源制御に対しても価値があるものである。
【0009】
また、この説明の目的のため、パス利得は、減衰と無線信号に同じような効果を表現するその他の用語を含める(減衰は対数目盛では負の数として、そしてパス利得は正の数で表現される--リニア目盛では減衰は1より小さく、そしてパス利得は1より大きい)。以下の文章の大部分では、パス利得に関連した量を明確にするためにパス利得それ自身により表現されるであろう。その他のパス利得に関連した量もまた使用できよう。都合のよいことに、多くの商用のセルラシステムにおける移動局は、例えば、ハンドオーバの目的のために、隣接基地局から受信されるパイロット信号に関連するパス利得の値(或は、パス利得を計算できる値)を既に決定している。対数目盛を想定すると、パス利得は通常、移動局の電波で検出された検出基地局パイロット信号強度とその基地局がそのパイロット信号を送信したパイロット信号強度との差に基づいて決められる。
【0010】
本発明の技術は、都合のよいことに、在圏セルと非在圏セルとを含む分散型資源制御を用いるセルラ無線通信システムで使用できる。移動体無線機は現在は在圏セル内の在圏基地局によりサービスを受けている。在圏セルは、その移動体無線機にとって最も高いパス利得を有するセルに対応しており、そして非常に多くの場合、その移動体無線機が現在位置しているセルである。相対パス利得は、その移動体無線機からのアップリンク信号送信に対して決められる。その相対パス利得は、その移動体無線機から非在圏基地局へのアップリンク信号送信に対する第1のパス利得とその移動局からその在圏基地局へのアップリンク信号送信に対する第2のパス利得との比較に基づいている。相対パス利得は、そのパス利得がリニアの単位である場合は第2のパス利得の第1のパス利得に対する比として、或は、そのパス利得が対数単位である場合は第2のパス利得と第1のパス利得との差として表現できる。その相対パス利得は平均の相対パス利得であることが望ましい。

エ 記載事項4
【0036】
図4は、分散型或は非集中型アップリンク資源管理環境における相対パス利得を用いてアップリンク資源を管理するための第1の、非限定的な、実施例において使用される移動体の機能ブロック図である。移動体無線機10は、コントローラ14と結合された無線送信回路12と無線受信回路20とを含む。コントローラ14はまた、ユーザとの通信のために(スピーカ、マイクロホン、キーパッド、タッチパッド、或はディスプレイ等と結合された)ユーザインタフェース22と結合されている。個々の基地局は、パイロット信号、或はその基地局により信号が送信される送信電力を含む他のダウンリンク信号を送信する。
【0037】
無線受信回路20は、受信範囲内にある基地局パイロット信号を受信し、それらを相対パス利得算出器18に提供する。アップリンク相対パス利得は、ダウンリンクパス利得値を用い、アップリンクパス利得はそのダウンリンクパス利得とほぼ同じであると仮定して決められる。相対パス利得算出器18は、対数電力単位で、そのパイロット信号の実際の送信電力から、それ自身のパイロット信号の受信信号強度を減算することにより決められる、個々の基地局に対するアップリンクパス利得を決める。或は、個々の基地局に対するそのアップリンクパス利得を、リニア電力単位での受信パイロット信号強度を実際の送信電力で除算することにより決める。相対パス利得算出器18の実装例を、図5と併せて以下で説明する。

オ 記載事項5
【0040】
図5は移動体無線機10で使用される相対パス利得算出器18の一例の機能ブロック図である。パス利得算出器25は、セルA、B、C、……、Nからパイロット信号を受信する。リニア単位を仮定すると、パス利得算出器25は、パイロット信号の実際の送信電力から個々のパイロット信号の受信信号強度を減算する。最大値セレクタ26が非在圏セルのパス利得B、C、……、Nから最大パス利得を選択する。比較器27は、その最大非在圏パス利得と在圏セルに対するパス利得Aとを比較する。その比較はリニア単位では差分で、或は、対数単位では最大非在圏セルパス利得の在圏セルパス利得に対する比であり、その相対パス利得は、高速フェージングおよび他の短い期間での無線チャネル効果により引き起こされる急速で、長続きしない値を避けるために、平均器28で平均が取られることが望ましい。その平均パス利得が、それから資源マネージャ16に転送される。

(4) 対比
本願第1発明と引用文献1記載事項とを比較すると,少なくとも次の相違がある。

本願第1発明は,「前記ユーザデバイスから、非サービングセルパイロット強度測定値と、ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとを前記ソースセルに送信する」との特定事項(以下「本願発明特定事項1」という。)と,「前記RL干渉は、前記ユーザデバイスから前記ソースセルへの第1のパスロスおよび前記ユーザデバイスから前記非サービングセルへの第2のパスロスの差によって推定され」との特定事項(以下「本願発明特定事項2」という。)と,「前記第2および第1のパスロスはそれぞれ、前記非サービングセルパイロット強度測定値と、前記ソースセルパイロット強度測定値あるいはビーコン強度測定値のうちの1つとから計算される」との特定事項(以下「本願発明特定事項3」という。)とを備えている。

しかし,引用文献1には,本願発明特定事項2のようにして,「リバースリンク干渉(RL干渉)」の推定に,「第1のパスロス及び第2のパスロスの差」によっているとの明示的記載がない点で相違し,この相違により,本願発明特定事項3のようにして,第1のパスロス及び第2のパスロスを計算することについても明示的記載がない点での相違が少なくともある。

(5) 原査定の理由に関する当審の判断
ア 原査定の理由に関する検討
上記相違について検討するに,引用文献2には,リバースリンク干渉を推定することについても,また,パスロスを計算することについても記載はない。

したがって,原査定の理由のように,引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて,本願第1発明を,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

イ 前置報告書記載内容に関する検討
前置引用文献には,「パス利得」が,「移動局の電波で検出された検出基地局パイロット信号強度とその基地局がそのパイロット信号を送信したパイロット信号強度との差に基づいて決められる」ことが記載されている。
当該記載を技術常識に照らせば,該「パス利得」が,本願第1発明における「パスロス」を示唆しているということができる。
そうすると,前置引用文献に記載された「相対パス利得に関係する量」として,本願発明特定事項3と同様の事項が開示されているということができる。
しかし,上記「相対パス利得に関係する量」は,移動体無線機に含まれる「相対パス利得算出器18」によって計算されることは,前置引用文献の【0036】,【0037】及び【0040】等の記載から明らかである。
一方,本願第1発明においては,「第1のパスロスと第2のパスロスの差」を計算するのが,本願発明特定事項1から,「移動体無線機」ではないことは明らかである。
このことから,引用文献1記載の発明に対し,前置引用文献記載の発明を適用した場合,本願発明特定事項1のように構成することを,当業者が容易になし得たということはできない。

3.まとめ
以上のとおりであるから,本願第1発明は,引用文献1記載の発明,及び引用文献2記載の発明若しくは前置引用文献記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
そして,本願第2発明から本願第4発明は,本願第1発明を引用するものであるから,同様に,引用文献1記載の発明,及び引用文献2記載の発明若しくは前置引用文献記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
また,本願第5発明,本願第6発明及び本願第7発明についても,本願第1発明と同様に,引用文献1記載の発明,及び引用文献2記載の発明若しくは前置引用文献記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。


第4 むすび

以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶すべきものであるとすることはできない。
また,ほかに,本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2013-558079(P2013-558079)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古市 徹冨永 達朗  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
吉田 隆之
発明の名称 モバイル支援されたリバースリンク干渉管理のための装置および方法  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 奥村 元宏  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  

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