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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1324288
審判番号 不服2015-22700  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-25 
確定日 2017-02-15 
事件の表示 特願2013-514607号「空気排出スレッドを有する空気入り車両タイヤおよび空気排出スレッド用導電性コーティングを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日国際公開、WO2011/157473、平成25年 7月11日国内公表、特表2013-528525号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年5月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年6月18日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月5日付けで手続補正書が提出され、平成27年1月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年8月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。これに対し、平成27年12月25日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出され、平成28年1月19日付けで手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において同年12月5日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成28年12月13日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「カーカス(4)と前記カーカス(4)に隣接する部材(9、10)とを有するラジアル構成の空気入り車両タイヤ(1)であって、スレッド形状要素(11)が前記カーカス(4)の2つの表面の少なくとも1つに配置され、前記スレッド形状要素(11)は、前記タイヤの組み立て中に前記カーカス(4)と前記隣接部材(9、10)との間に閉じ込められた空気の空気排出のために使用される空気入り車両タイヤ(1)において、
少なくとも1つのスレッド形状要素(11)が、導電性のコーティング(13)を有し、導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)を形成することと、前記導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)が1×10^(7)オーム/cm未満の電気抵抗を有することとを特徴とする空気入り車両タイヤ(1)。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
[理由1]本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
[理由2]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由3]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



刊行物等
先願1: 特願2009-21773号(特開2010-173617号参照)
引用文献2: 特開平2-299903号公報
引用文献3: 特開昭52-2902号公報

[理由1について]
先願1の明細書の【0054】には、周方向コード20が金属からなる線など撚られていないコードによって形成されていてもよいことが、【0055】には、周方向コード20は、ベルト層18と、タイヤ骨格部14との間に配設され、タイヤ骨格部14のみに螺旋状に巻き付けられてもよいことが記載されている。
タイヤの技術分野において用いられる金属からなる線として、ゴムとの接着性を良くするために、黄銅コーティングを施したスチールコードは周知のものであるから、本願発明と、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明との差異は、課題解決のための具体化手段における微差である。

[理由2について]
引用文献2(特許請求の範囲参照)には、カーカス部材の片面又は両面に、ブリーダーコードを配置することが記載されている。引用文献3(特許請求の範囲参照)には、タイヤ胴部内に、タイヤ周方向に任意の間隔をおいて一方のリムフランジ嵌合部から、トレッド部を経て他方のリムフランジ嵌合部まで延び、その端末がリムフランジ嵌合部においてリムと接触している複数本の通電線材を埋設する技術が記載されている。
そして、引用文献2に記載された発明に、引用文献3に記載された技術を適用して線材を共通のものとすることは、当業者が適宜なし得たものである。

[理由3について]
請求項1-2、5-7、9、11-12には、「好ましくは」及び「特に好ましくは」との任意付加的記載があるが、発明がどのような場合に当該構成に限定されるのか、不明りょうである。

2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物等の記載事項
ア 先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【請求項1】
一対のビードに係止される円環状のカーカスを含むタイヤ骨格部と、
前記タイヤ骨格部のタイヤ径方向外側に設けられるトレッドゴムと
を備えるタイヤであって、
前記トレッドゴムよりもタイヤ径方向内側に設けられる周方向コードを備え、
前記周方向コードは、タイヤ周方向に沿って前記タイヤ骨格部に複数回巻き付けられ、
前記周方向コードは、少なくとも一方のショルダー部から他方のショルダー部にかけて螺旋状に配設されるタイヤ。」

(1b) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のタイヤの製造方法には、次のような問題があった。すなわち、トレッドゴムに複数の凸状部或いは複数の凹状部を形成しても、グリーンケースとトレッドゴムとの間に入ったエアが完全に抜けず、製造不良の原因となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、グリーンケースと、トレッドゴムとの間にエアが入り込むことによる製造不良をさらに抑制できるタイヤ及びタイヤの製造方法の提供を目的とする。」

(1c) 「【0021】
空気入りタイヤ1を構成する各部位について、説明する。具体的には、(1.1)ビード部、(1.2)タイヤ骨格部、(1.3)トレッドゴム、(1.4)サイドトレッドゴム、(1.5)ベルト層、及び(1.6)周方向コードについて、説明する。
【0022】
(1.1)ビード部
図1、2に示すように、空気入りタイヤ1は、少なくともビードコア10a及びビードフィラー10bを含む1対のビード部10を有している。具体的には、ビード部10を構成するビードコア10aには、スチールコードなどが用いられる。
【0023】
(1.2)タイヤ骨格部
空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向D及びトレッド幅方向Wに沿った幅方向断面において、一対のビード部10に係止される円環状のカーカス12を含むタイヤ骨格部14を備える。タイヤ骨格部14は、空気入りタイヤ1の骨格を形成する。カーカス12は、カーカスコードと、カーカスコードを覆うゴムからなる層とにより構成される。
【0024】
(1.3)トレッドゴム
空気入りタイヤ1は、タイヤ骨格部14のタイヤ径方向外側に設けられるトレッドゴム16を備える。トレッドゴム16は、タイヤ骨格部14上に複数のゴムシートが順次重ねられたることによって形成される。
【0025】
(1.4)サイドトレッドゴム
空気入りタイヤ1は、タイヤサイド部32に位置し、タイヤ骨格部14のトレッド幅方向外側に設けられるサイドトレッドゴム17を備える。サイドトレッドゴム17は、タイヤ骨格部14上に複数のゴムシートが順次重ねられたることによって形成される。

【0027】
(1.6)周方向コード
空気入りタイヤ1は、トレッドゴム16よりもタイヤ径方向内側に設けられる周方向コード20を備える。
【0028】
周方向コード20は、タイヤ周方向Rに沿ってタイヤ骨格部14に複数回直接巻き付けられる。より具体的には、周方向コード20は、ベルト層18よりもタイヤ径方向外側に配設され、ベルト層18及びタイヤ骨格部14に複数回巻き付けられる。
【0029】
周方向コード20は、少なくとも一方のショルダー部30から他方のショルダー部30にかけて螺旋状に配設される。本実施形態においては、周方向コード20は、一方のビード部10と一方のショルダー部30との間に位置する一方のタイヤサイド部32から他方のタイヤサイド部32まで螺旋状に配設される。」

(1d) 「【0045】
(4)作用・効果
本実施形態における空気入りタイヤ1によれば、周方向コード20は、トレッドゴム16よりもタイヤ径方向内側に設けられ、一方のショルダー部30から他方のショルダー部30にかけて螺旋状に配設される。また、周方向コード20は、タイヤ周方向Rに沿ってタイヤ骨格部14に複数回巻き付けられるため、タイヤ骨格部14、すなわち、タイヤ製造工程におけるグリーンケースと、トレッドゴム16との間に入ったエアは、トレッドゴム16と周方向コード20との隙間から抜ける。
【0046】
従って、空気入りタイヤ1は、グリーンケースと、トレッドゴム16との間にエアが入り込むことによる製造不良をさらに抑制できる。」

(1e) 「【0054】
上述した実施形態における周方向コード20は、複数のフィラメント22が撚られたフィラメント束によって構成される。これに限られず、周方向コード20は、金属からなる線など撚られていないコードによって形成されていてもよい。」

(1f) 先願1の図1及び図2には以下の図が記載されている。


イ 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a) 「2.特許請求の範囲
(1)カーカス部材及び又はベルト部材の片面又は両面に、太さ30?50S/1のポリエステル紡績糸のブリーダーコードを配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。」(第1ページ左下欄第4行?第8行)

(2b) 「[産業上の利用分野]
この発明は空気入りタイヤにおいて特にカーカス部材、ベルト部材の片面又は両面に一定間隔で配置するブリーダーコードの改良に関する。
[従来の技術]
従来より、タイヤの生産工程においてタイヤの内部にガス体が溜る不良いわゆるエアー入り不良が発生するため、カーカス部材、ベルト部材の片面又は両面に、綿糸のブリーダーコードを一定間隔ごとに配置する手段が採用されている。これは、タイヤの生産工程において包含される空気溜り(ガス体)を綿糸のブリーダーコードにより透過、吸収させてタイヤのエアー入り不良を軽減させるものである。」(第1ページ左下欄第10行?右下欄第3行)

(2c) 「この発明の目的はタイヤの生産工程で発生するエアー入り不良を低減して生産効率を向上し得るブリーダーコードが配置された空気入りタイヤを提供する点にある。」(第1ページ右下欄第11行?第14行)

(2d) 「[実施例]
第1表に示した所定の太さのポリエステル紡績糸のブリーダーコードをカーカス部材の片面に5cmの一定間隔で配置し、このカーカス部材を用いてブリーダーコードの配置面側がクラウン部においてタイヤ外側になるようにタイヤ成型し、タイヤサイズ195/70R14の空気入りタイヤを試作した。
比較のためブリーダーコードの材質を綿糸とし、他は同条件のタイヤについても試作した。
なおこの実施例ではカーカス部材の片面にのみブリーダーコードを一定間隔ごとに配置しているが、両面でも可能であり、またベルト部材とともに、またはベルト部材にのみ配置しても差支えなく、格別限定されるものではない。」(第2ページ右上欄第8行?左下欄第1行)

(2)刊行物等に記載された発明
ア 先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明
先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面には、
(ア) 空気入りタイヤ1は、タイヤ骨格部、トレッドゴム、サイドトレッドゴム、ベルト層及び周方向コードを有するものであること(摘示(1c)【0021】)、
(イ) タイヤ骨格部14は、円環状のカーカス12を含むものであること(摘示(1c)【0023】)、
(ウ)
a トレッドゴム16は、タイヤ骨格部14のタイヤ径方向外側に設けられること(摘示(1c)【0024】)、
b サイドトレッドゴム17は、タイヤ骨格部14のトレッド幅方向外側に設けられること(摘示(1c)【0025】)、
(エ)
a 周方向コード20は、タイヤ骨格部14に複数回直接巻き付けられること(摘示(1c)【0028】)、
b 周方向コード20は、一方のタイヤサイド部32から他方のタイヤサイド部32まで螺旋状に配設されること(摘示(1c)【0029】)、
(オ) タイヤ製造工程においてタイヤ骨格部14とトレッドゴム16との間に入ったエアが、トレッドゴム16と周方向コード20との隙間から抜けるものであること(摘示(1d)【0045】)、
(カ) 周方向コード20は、金属からなる線によって形成してもよいこと(摘示(1e)【0054】)、
が記載されており、また、
(キ) 上記「(ウ)」、摘示(1f)の図1及び図2より、ショルダー部30及びタイヤサイド部32付近においては、カーカス12とトレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17は隣接する部材であること、
(ク) 上記「(エ)」に関し、摘示(1f)の図1及び図2より、周方向コード20は、ショルダー部30及びタイヤサイド部32付近においてカーカス12に複数回巻き付けられていること、
(ケ) 上記「(オ)」に関し、摘示(1f)の図1及び図2からみて、タイヤ製造工程においてタイヤ骨格部14とサイドトレッドゴム17との間に入ったエアも、サイドトレッドゴム17と周方向コード20との隙間から抜けるといえること、
(コ) 空気入りタイヤ1は、摘示(1f)のベルト層18及びカーカス12の構造に照らして、ラジアル構成であること、
が明らかである。

これらのことから、先願1の明細書、特許請求の範囲及び図面には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「タイヤ骨格部、トレッドゴム、サイドトレッドゴム及び周方向コードを有するラジアル構成の空気入りタイヤ1であって、
タイヤ骨格部14はカーカス12を含むものであり、
トレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17が、カーカス12に隣接し、
金属からなる線によって形成された周方向コード20が、カーカス12に複数回巻き付けられ、
タイヤ製造工程においてタイヤ骨格部14とトレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17との間に入ったエアが、トレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17と周方向コード20との隙間から抜ける、
空気入りタイヤ1。」

イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、
(ア) カーカス部材の片面に、ポリエステル紡績糸のブリーダーコードを配置した空気入りタイヤ(摘示(2a))において、
(イ)
a 当該空気入りタイヤは、タイヤの生産工程で発生するエアー入り不良の低減を目的としたものであること(摘示(2c))、
b エアー入り不良は、タイヤの生産工程においてタイヤの内部にガス体が溜る不良であること(摘示(2b))、
c ガス体をブリーダーコードにより透過させてエアー入り不良を軽減させること(摘示(2b))、
(ウ) カーカス部材のブリーダーコードの配置面側がクラウン部においてタイヤ外側になるようにタイヤサイズ195/70R14の空気入りタイヤを成型すること(摘示2d)、
が記載されている。また、
(エ) 技術常識より、カーカス部材の外側には、トレッドゴム等が隣接して配置されてタイヤが成形されること、
(オ) 上記「(ア)、(ウ)、(エ)」より、カーカス部材の外側とトレッドゴムの間にポリエステル紡績糸のブリーダーコードが配置されているといえること、
(カ) 上記「(ウ)」において、タイヤサイズの「R」はラジアル構造を表すものであるから、当該空気入りタイヤはラジアル構造のものであること、
が明らかである。

これらのことから、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「カーカス部材の外側に、トレッドゴムが隣接して配置される、ラジアル構造の空気入りタイヤにおいて、
カーカス部材の外側とトレッドゴムの間に、ポリエステル紡績糸のブリーダーコードが配置され、
タイヤの生産工程においてタイヤの内部に溜るガス体を、ブリーダーコードにより透過させる、
空気入りタイヤ。」

(3)対比・判断
ア 理由1について
(ア) 本願発明と引用発明1を対比する。
a 引用発明1の「ラジアル構成の空気入りタイヤ1」は本願発明の「ラジアル構成の空気入り車両タイヤ(1)」に相当し、以下同様に、「カーカス12」は「カーカス(4)」に、「トレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17」は「カーカス(4)に隣接する部材(9、10)」に、「周方向コード20」は「スレッド形状要素(11)」にそれぞれ相当する。
b 引用発明1の「周方向コード20が、カーカス12に複数回巻き付けられ」ることは、本願発明の「スレッド形状要素(11)が前記カーカス(4)の2つの表面の少なくとも1つに配置され」ることに相当する。
c 引用発明1の「カーカス12に複数回巻き付けられ」る「周方向コード20」が「金属からなる線によって形成され」ることは、本願発明の「少なくとも1つのスレッド形状要素(11)が、導電性のコーティング(13)を有し、導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)を形成する」ことと、「少なくとも1つのスレッド形状要素(11)が、導電性を有する」限度で一致する。
d 引用発明1の「タイヤ製造工程においてタイヤ骨格部14とトレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17との間に入ったエアが、トレッドゴム16及びサイドトレッドゴム17と周方向コード20との隙間から抜ける」ことは本願発明の「前記スレッド形状要素(11)は、前記タイヤの組み立て中に前記カーカス(4)と前記隣接部材(9、10)との間に閉じ込められた空気の空気排出のために使用される」ことに相当する。

(イ) 以上によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「カーカスと前記カーカスに隣接する部材とを有するラジアル構成の空気入り車両タイヤであって、スレッド形状要素が前記カーカスの2つの表面の少なくとも1つに配置され、前記スレッド形状要素は、前記タイヤの組み立て中に前記カーカスと前記隣接部材との間に閉じ込められた空気の空気排出のために使用される空気入り車両タイヤにおいて、
少なくとも1つのスレッド形状要素が、導電性を有する、
空気入り車両タイヤ。」

[相違点1]
「導電性を有する」「少なくとも1つのスレッド形状要素」に関し、本願発明では、「導電性のコーティング(13)を有し、導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)を形成することと、前記導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)が1×10^(7)オーム/cm未満の電気抵抗を有する」のに対し、引用発明1の「周方向コード20」はそのような構成を有していない点。

(ウ) 判断
先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面には、「周方向コード20」を導電性コーティングすることは記載も示唆もされていない。また、タイヤの技術分野においては、ビードワイヤやベルトプライに用いるスチールコードに対して黄銅コーティングを行うことはあるものの、引用発明1の「周方向コード20」はそのようなコードとは異なる部分に用いるコードであるから、先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面に「周方向コード20」に黄銅コーティングがされていることが記載されているに等しい事項である、ということもできない。よって、相違点1に係る本願発明の構成が、引用発明1に実質的に記載されているとはいえない。
したがって、本願発明は、先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明ではない。

イ 理由2について
(ア) 本願発明と引用発明2を対比する。
a 引用発明2の「カーカス部材」は本願発明の「カーカス(4)」に相当し、以下同様に、「ラジアル構造の空気入りタイヤ」は「ラジアル構成の空気入り車両タイヤ(1)」に、「ポリエステル紡績糸のブリーダーコード」は「スレッド形状要素(11)」にそれぞれ相当する。また、引用発明2の「トレッドゴム」は「カーカス部材の外側に」「隣接して配置される」ものであるから、本願発明の「カーカス(4)に隣接する部材(9、10)」に相当する。
b 引用発明2の「カーカス部材の外側とトレッドゴムの間に、ポリエステル紡績糸のブリーダーコードが配置され」ることは、本願発明の「スレッド形状要素(11)が前記カーカス(4)の2つの表面の少なくとも1つに配置され」ることに相当する。
c 引用発明2の「タイヤの生産工程においてタイヤの内部に溜るガス体を、ブリーダーコードにより透過させる」ことは、本願発明の「スレッド形状要素(11)は、前記タイヤの組み立て中に前記カーカス(4)と前記隣接部材(9、10)との間に閉じ込められた空気の空気排出のために使用される」ことに相当する。

(イ) 以上によれば、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「カーカスと前記カーカスに隣接する部材とを有するラジアル構成の空気入り車両タイヤであって、スレッド形状要素が前記カーカスの2つの表面の少なくとも1つに配置され、前記スレッド形状要素は、前記タイヤの組み立て中に前記カーカスと前記隣接部材との間に閉じ込められた空気の空気排出のために使用される、
空気入り車両タイヤ。」

[相違点2]
本願発明では、「少なくとも1つのスレッド形状要素(11)が、導電性のコーティング(13)を有し、導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)を形成することと、前記導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)が1×10^(7)オーム/cm未満の電気抵抗を有する」のに対し、引用発明2では、そのような構成を有していない点。

(ウ) 判断
引用文献3には、導電性タイヤに通電線材を埋設することが記載されている(第1ページ左下欄の「特許請求の範囲」)ものの、当該通電線材は「銅、真鍮、スチールなどの撚線または混撚線で構成」(第2ページ右上欄第13行?第15行)されるものであるから、相違点2に係る本願発明の構成とは異なるものである。よって、仮に引用発明2の「ブリーダーコード」として引用文献3の通電線材を採用しても、本願発明に係る相違点2の構成に至らないことは明らかである。さらに、引用文献2及び引用文献3には、引用文献3の通電線材を引用発明2に採用する動機付けも見当たらない。
よって、引用発明2、引用文献2及び引用文献3の記載事項に基いて、本願発明の相違点2に係る事項に想到することは当業者が容易になし得るものとはいえない。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明2、引用文献2及び引用文献3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 小括
ア 本願の請求項2?12に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、先願1の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(引用発明1)ではないし、当業者が引用発明2、引用文献2及び引用文献3の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ また、理由3については、平成28年12月13日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12は、「好ましくは」及び「特に好ましくは」との記載が削除されているから、請求項1?12に係る発明は明確である。

ウ よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。



請求項1には、「少なくとも1つのスレッド形状要素(11)が、導電性のコーティング(13)を有し、導電性コーティングされたスレッド形状要素(12)を形成するすることと、」との記載がある。
よって、請求項1及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?12は、発明が明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年12月13日付け手続補正書において、本願の請求項1は、上記「第2」のとおり補正されたから、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-31 
出願番号 特願2013-514607(P2013-514607)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (B60C)
P 1 8・ 537- WY (B60C)
P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 和田 雄二
小原 一郎
発明の名称 空気排出スレッドを有する空気入り車両タイヤおよび空気排出スレッド用導電性コーティングを製造する方法  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 清田 栄章  
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