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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1324615
審判番号 不服2015-17883  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-01 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 特願2014- 85563「音響信号を用いる無線通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日出願公開,特開2014-132797〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2009年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年10月31日 ロシア共和国,2009年10月16日 大韓民国)を国際出願日とする特願2011-534380号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成25年6月26日に新たな特許出願とした特願2013-134044号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成26年4月17日に新たな特許出願としたものであって,
平成26年5月19日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,平成26年12月19日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年4月6日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年5月25日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年6月1日),これに対して平成27年10月1日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年12月15日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年10月1日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年10月1日付けの手続補正(以下,これを「本件手続補正」という)により,平成27年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップと,
前記生成した接続初期化情報を音響信号に変換して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップとを含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記保安通信のためのキー情報は,前記第1のデバイスと接続する度にアップデートされる疑似ランダムキーであり,前記接続初期化情報は,前記第2のデバイスの識別情報を含み,
前記第1のデバイスから受信される前記確認信号は,前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報を用いて生成され,
前記第2のデバイスは,前記第1のデバイスから受信される確認信号が前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報を用いて生成されたことを確認することで,前記有効な確認信号が受信されたと判定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップは,
前記第2のデバイスで,初期インビジブル(invisible)モードで,ユーザの操作による前記第1のデバイスと接続のための接続手順を開始するステップと,
前記疑似ランダムキーと,前記第2のデバイスの識別情報及び同期化のための同期化シーケンスを含んで前記接続初期化情報を生成するステップとを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップは,
前記第2のデバイスで,初期に,前記第1のデバイスと接続のための接続手順を開始するステップと,
前記疑似ランダムキーと,前記第2のデバイスの識別情報及び同期化のための同期化シーケンスを含んで前記接続初期化情報を生成するステップとを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ラジオ無線チャンネルを通じて前記有効な確認信号が受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する音響信号のボリュームを徐々に増加させ,
前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項6】
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第1のデバイスで,前記第2のデバイスとの接続のために,音響通信チャンネルを通じて音響信号を受信して,受信した音響信号から同期化シーケンスが検出されたか否かを判定するステップと,
前記同期化シーケンスが検出された場合に,前記判定した音響信号から保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を抽出するステップと,
前記保安通信のためのキー情報を用いてラジオ無線信号の確認信号を生成し,保安通信を遂行して,ラジオ無線チャンネルを通じて前記確認信号を前記第2のデバイスに伝送するステップと,
前記第2のデバイスと,前記ラジオ無線チャンネルを通じて保安通信を遂行するステップとを含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
前記保安通信のためのキー情報は,疑似ランダムキーであり,前記接続初期化情報は,前記第2のデバイスの識別情報を含み,
前記確認信号は,前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報に対応する情報及び前記第1のデバイスの識別情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のデバイスで,前記第2のデバイスとの接続のために,音響通信チャンネルを通じて音響信号を受信して,受信した音響信号を判定するステップは,
前記受信音響信号に含まれた同期化シーケンスの検出により遂行され,
前記判定した音響信号から保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を抽出するステップは,前記受信した音響信号を復号化して前記受信した音響信号に含まれた前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報の抽出により遂行されることを特徴とする請求項7に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップと,
前記生成した接続初期化情報を音響信号に変換して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップとを含み,
前記ラジオ無線チャンネルを通じて前記有効な確認信号が受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する音響信号のボリュームを徐々に増加させ,
前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップを含む
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記保安通信のためのキー情報は,前記第1のデバイスと接続する度にアップデートされる疑似ランダムキーであり,前記接続初期化情報は,前記第2のデバイスの識別情報を含み,
前記第1のデバイスから受信される前記確認信号は,前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報を用いて生成され,
前記第2のデバイスは,前記第1のデバイスから受信される確認信号が前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報を用いて生成されたことを確認することで,前記有効な確認信号が受信されたと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップは,
前記第2のデバイスで,初期インビジブル(invisible)モードで,ユーザの操作による前記第1のデバイスと接続のための接続手順を開始するステップと,
前記疑似ランダムキーと,前記第2のデバイスの識別情報及び同期化のための同期化シーケンスを含んで前記接続初期化情報を生成するステップとを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップは,
前記第2のデバイスで,初期に,前記第1のデバイスと接続のための接続手順を開始するステップと,
前記疑似ランダムキーと,前記第2のデバイスの識別情報及び同期化のための同期化シーケンスを含んで前記接続初期化情報を生成するステップとを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第1のデバイスで,前記第2のデバイスとの接続のために,音響通信チャンネルを通じて音響信号を受信して,受信した音響信号から同期化シーケンスが検出されたか否かを判定するステップと,
前記同期化シーケンスが検出された場合に,前記判定した音響信号から保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を抽出するステップと,
前記保安通信のためのキー情報を用いてラジオ無線信号の確認信号を生成し,保安通信を遂行して,ラジオ無線チャンネルを通じて前記確認信号を前記第2のデバイスに伝送するステップと,
前記第2のデバイスと,前記ラジオ無線チャンネルを通じて保安通信を遂行するステップとを含み,
前記確認信号が前記第2のデバイスで受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する前記音響信号のボリュームを徐々に増加させ,
前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップを含む
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
前記保安通信のためのキー情報は,疑似ランダムキーであり,前記接続初期化情報は,
前記第2のデバイスの識別情報を含み,
前記確認信号は,前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報に対応する情報及び前記第1のデバイスの識別情報を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のデバイスで,前記第2のデバイスとの接続のために,音響通信チャンネルを通じて音響信号を受信して,受信した音響信号を判定するステップは,
前記受信音響信号に含まれた同期化シーケンスの検出により遂行され,
前記判定した音響信号から保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を抽出するステップは,前記受信した音響信号を復号化して前記受信した音響信号に含まれた前記疑似ランダムキー及び前記第2のデバイスの識別情報の抽出により遂行される
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
本件補正発明は,補正前の請求項1を,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,補正前の請求項5に記載された内容に基づいて,補正前の請求項5に記載された構成を付加する限定を行って減縮すると共に,補正前の請求項5を削除し,項番を整理するために,補正前の請求項6,請求項7,及び,請求項8を,補正後の請求項5,請求項6,及び,請求項7とし,補正前の請求項6については,項番の変更に加えて,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容に基づいて,補正前の請求項1に行ったことと同等の限定的減縮を行うものであって,補正前の請求項1,及び,請求項6に加えられた限定的減縮は,何れも,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲内のものであって,本件手続補正は,上述の如く,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),及び,請求項の削除を目的とするものである。
そして,補正前の請求項1?請求項8に係る発明と,補正後の請求項1?請求項7に係る発明とは,特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであることは明らかであるから,本件補正発明は,特許法第17条の2第3項?第5項に規定された要件を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(1)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップと,
前記生成した接続初期化情報を音響信号に変換して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップとを含み,
前記ラジオ無線チャンネルを通じて前記有効な確認信号が受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する音響信号のボリュームを徐々に増加させ,
前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップを含む
ことを特徴とする無線通信方法。」

(2)引用刊行物に記載の事項
ア.原審が,平成26年12月19日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用した,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2005-174327号公報(2005年6月30日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0004】
ペアになる前,要求者デバイスと検証デバイスとは,リンクキーを共有しない。
この場合,リンクキーを生成するためにコード(PINと呼ぶ)が使用される。
正しく機能するためには,両デバイスに同じPINを提供しなければならない。
要求者デバイスは,自身のデバイスアドレスとPINとを使用してリンクキーを生成する。
同様に,検証デバイスは,PINと要求者デバイスのアドレスとを使用してリンクキーの自身のコピーを生成する。
たとえば,要求者デバイスがPDAであり,検証デバイスが携帯電話である場合,PDAのタッチスクリーンと携帯電話のキーパッドとにより同じPINを入力することができる。」

B.「【0015】
ここで図1Bを参照すると,環境24は,検証デバイス26(電話ヘッドセット)と要求者デバイス28(電話親機)とを有する。
デバイス26および28は,リンク30によって相互接続されている。
リンク30は,赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続を表す。
ペアになると,親機とヘッドセットとは対話することができ,親機は,ヘッドセットが電話の会話をユーザが聞えるように可聴音声として発行するように要求することができる。
この例では,ヘッドセットが要求者デバイスであってもよく,親機が検証デバイスであってもよい。
ペアになると,ヘッドセットは,親機がユーザの音声を受信し電子的に再送信するように要求することができる。
・・・・・(中略)・・・・・
【0019】
検証デバイス40は,機能要素44と,ロジック46と,メモリ48と,接続インタフェース50と,を有する。
・・・・・(中略)・・・・・
【0022】
ロジック46は,プリント制御ロジック56と,他の制御ロジック58と,セキュリティロジック60と,を含む。
・・・・・(中略)・・・・・
【0025】
図3は,セキュリティロジック60の論理要素を示す例示的なブロック図である。
ここで,セキュリティロジック60は,PINモジュール76と,キーモジュール78と,認証モジュール80と,ユーザモジュール82と,接続モジュール84と,を含む。
PINモジュール76は,PINを生成することができる概して任意のプログラムを表す。(当該段落の以下の記載は省略)」

C.「【0029】
代替実施形態では,セキュリティロジック60と発行モジュール86とは,可聴音,たとえば音声を生成することができる検証デバイスの構成要素である(図1Aおよび図1Bの検証デバイス26および34を参照)。
そのため,発行モジュール86は,音の生成において検証デバイス26または34を案内するために使用されるロジックの一部であってもよい。
たとえば,発行モジュール86は,検証デバイス26または34に対し,PINモジュール76によって生成されるPINを含む可聴音声メッセージを生成するように指示することができるプログラムであってもよい。
この場合,検証デバイス26または34は,適当に押されると検証デバイス26または34に対し可聴音声メッセージを流すように指示する1つまたは複数のボタンを含む。
そうする場合,発行モジュール86は,セキュリティロジック60に対し,音声メッセージが要求されたことを通知する。
PINモジュール76は,PINを生成し発行モジュール86に提供する。
そして,発行モジュール86は,検証デバイス26または34に対し,PINを含む音声メッセージを流すように指示する。
音声の代りに,要求メッセージは,モールス符号等の可聴符号を含んでもよい。」

D.「【0045】
ローカルPIN要求を受け取ると(ステップ130),検証デバイスは,PINを生成して発行する(ステップ138)。
生成されたPINを,たとえば,満了データおよびアクセスデータと関連付けてもよい。
発行されたPINは,ユーザにより要求者デバイスに入力される。
要求者デバイスは,PINデータを生成しそのPINデータを含む接続要求を検証デバイスに向ける。
【0046】
検証デバイスは,PINデータを含む接続要求を受け取り(ステップ140),有効なリンクキーがすでに確立されたか否かを判断する(ステップ142)。
有効なリンクキーが確立されていなかった場合,検証デバイスは,PINデータが有効であるか否かを判断する(ステップ144)。
PINデータが有効である場合,検証デバイスは,リンクキーを確立し(ステップ146),アクセスを許可する(ステップ134)。
一方,PINデータが無効である場合,検証デバイスは,接続要求を拒絶する(ステップ148)。」

イ.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2004-363670号公報(2004年12月24日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E.「【0003】
コンピュータや,その周辺機器を無線I/Fによってデータの送受信を行う場合,送受信相手を特定及び認識を行うために,個別の認証コード(以後,「IDコード」と称す)が必要になる。このIDコードには,接続相手を特定する情報が含まれており,接続する機器間で夫々の機器が有している個別の認証コード(例えばBluetoothならばPINコード等)を相手機器に入力する必要がある。
【0004】
このIDコードは,通常,キーボード等の入力手段を利用して,コンピュータやその周辺機器などの無線情報通信機器に入力することにより,相互の接続機器の認識を行う。このIDコードを入力した後は,有線で接続した機器と同様に,情報の送受信を行うことが可能となる。」

F.「【0021】
以下,上述のように構成された無線通信機器の動作を説明する。図2は,無線通信機器10,20同士のIDコード交換時における,ID送出側の無線通信機器20のフローチャートであり,本プログラムはCPU23により実行される。図中Sはフローの各ステップを示す。
【0022】
ID認証ボタン27が押下されるかをステップS01で行われ,押下が確認されると,ステップS02でCPU23がメモリ21よりIDコードを読み込み,ステップS03でCPU23はD/A24にIDコードを送信する。ここでIDコードは暗号化されたものであっても良い。ステップS04でD/A24は受け取ったIDコードをアナログ化し,スピーカ25に受け渡す。ここでスピーカの出力を制御する為に図示されていないがアンプを経由することが可能である。ステップS05でスピーカ25からIDコードを発信し,ステップS06で,相手先無線通信機器10からの応答を待つ。相手無線通信機器10からの応答があればステップS07でCPU23に通知し終了する。
【0023】
図3は,無線通信機器10,20同士のIDコード交換時における,ID受信側の無線通信機器10のフローチャートであり,本プログラムはCPU13により実行される。
【0024】
ID認証ボタン17が押下されることにより,ステップS12でマイク15からの入力をA/D14に送り,ステップS13でA/D14によりデジタル化されたIDコードをCPU13に送る。ステップS14でCPU13は入力した音声データがIDコードであるか判断し,IDコードであることが判明すると,ステップS15でメモリ11にIDを書き込む。次にステップS16で受け取ったIDコードを用い通信コントロール部12がステップS17でIDコードを受け取った事を相手無線通信機器20に対して送信し,終了する。この作業により,2つの無線情報通信機器のIDコードが同一となり,相互に通信をすることが可能になる。」

ウ.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2000-295658号公報(2000年10月20日公開,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「【0022】本無線通信装置は,まず,相手側の無線通信装置に対して接続要求信号を送信する(ステップS1)。この接続要求信号の送信は制御部9により設定された最低限の送信電力で行われる。次に本無線通信装置は,相手側無線通信装置から接続要求に対する応答があったかどうかを判定する(ステップS2)。一定時間のうちに相手側無線通信装置から応答が返ってこなかった場合はステップS9に進み,以下の送信電力の制御が行われる。
【0023】すなわち,制御部9は送信電力制御部3に送信電力を上げるよう指示する。この指示を受けた送信電力制御部3は電力増幅器4の利得を,あらかじめ設定された値だけ上げて送信電力を上げる(ステップS9)。送信電力を上げた後,ステップS9で設定された電力増幅器4の利得があらかじめ設定された上限値以下であるかどうかを判定する(ステップS10)。この利得上限値は電波の到達範囲の過度の広がりによるセキュリティの低下抑止の観点から最適に設定されている。ステップS9で設定された利得が上限値を越えたらセキュリティが保てないと判断し,通信を終了する。送信電力が上限値以下ならステップS1に戻り,再び接続要求信号を送信する。そして前記と同様にステップS2にて相手側無線通信装置からの応答を監視し,一定時間内に応答が返ってこなかった場合はステップS9に進んで電力増幅器4の利得を再び設定値だけ上げ,ステップS10へ移行する。
【0024】これら一連の動作を,ステップS2で一定時間内に相手側無線通信装置から応答が返ってくるまで,またはステップS10で送信電力が上限値を越えるまで繰り返す。」

エ.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,米国特許出願公開第2008/0113621号明細書(2008年5月15日公開,以下,これを「引用刊行物4」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H.「[0026] Wireless transceiver operation begins in at START state 20. Medical device 10 communicates a reading to wireless transceiver 12 at step 21. At step 22, the wireless transceiver initiates to a lowest power mode, e.g. power level A, and transmits a signal to receiver 13. If receiver 13 successfully receives the signal, receiver 13 transmits a signal back to medical device 10/transceiver 12. Communication of a signal at the lowest power mode is then commenced after which the wireless transceiver 12 returns to the START state. If receiver 13 does not receive the signal from transceiver 12, then transceiver 12 reconfigures a communication parameter by a predetermined level. In this example, transceiver 12 increases the transmit power incrementally in pre-set steps at step 23 and retests whether communication is successful. If communication is successful, transceiver 12 returns to the START state. If receiver 13 is unable to communicate with transceiver 12, even after transceiver reconfigures to a highest transmit power at step 24, then it is determined at step 25 that communication is unavailable at that particular time.」
(【0021】
ワイヤレストランシーバーの動作は,スタート状態20から始まる。医療デバイス10は,ステップ21でワイヤレストランシーバー12に読みを伝える。ステップ22で,ワイヤレストランシーバーは,最低電力モード,例えば電力レベルAを開始し,信号を受信器13に送信する。受信器13が信号を首尾よく受信する場合には,受信器13は,医療デバイス10/トランシーバー12に信号を返す。次いで,最低電力モードでの信号の通信が開始され,その後にワイヤレストランシーバー12は,スタート状態に戻る。受信器13が信号をトランシーバー12から受信しない場合には,トランシーバー12は,通信パラメーターを予め決定されたレベルによって再構成する。この例において,トランシーバー12は,ステップ23において,予め設定された増分で送信電力を徐々に増加させ,通信が成功したかどうか再テストする。通信が成功した場合には,トランシーバー12は,スタート状態に戻る。受信器13がステップ24で最高の送信電力に再構成した後でも,受信器13がトランシーバー12と通信できない場合には,通信がその特定の時刻にできないことが,ステップ25で決定される。<引用刊行物4の日本語出願公開公報である,特表2010-509869号公報の当該箇所より引用>)

(3)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Aの「要求者デバイスは,自身のデバイスアドレスとPINとを使用してリンクキーを生成する。同様に,検証デバイスは,PINと要求者デバイスのアドレスとを使用してリンクキーの自身のコピーを生成する」という記載,上記Bの「環境24は,検証デバイス26(電話ヘッドセット)と要求者デバイス28(電話親機)とを有する。デバイス26および28は,リンク30によって相互接続されている。リンク30は,赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続を表す」という記載から,引用刊行物1には,“要求者デバイスと,検証デバイスとの,赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続であるリンクによる相互接続方法”が記載されていることが読み取れる。

イ.上記Bの「検証デバイス40は,機能要素44と,ロジック46と,メモリ48と,接続インタフェース50と,を有する」という記載,同じく,上記Bの「ロジック46は,プリント制御ロジック56と,他の制御ロジック58と,セキュリティロジック60と,を含む」という記載,同じく,上記Bの「セキュリティロジック60は,PINモジュール76と,キーモジュール78と,認証モジュール80と,ユーザモジュール82と,接続モジュール84と,を含む」という記載から,引用刊行物1においては,“検証デバイスが,PINモジュールを含む,セキュリティロジックを含む”ものであることが読み取れ,このことと,上記Cの「セキュリティロジック60と発行モジュール86とは,可聴音,たとえば音声を生成することができる検証デバイスの構成要素である」という記載,及び,同じく,上記Cの「PINモジュール76は,PINを生成し発行モジュール86に提供する。そして,発行モジュール86は,検証デバイス26または34に対し,PINを含む音声メッセージを流すように指示する」という記載から,引用刊行物1において,“検証デバイスは,PINモジュールと,発行モジュールとを含み,前記PINモジュールは,PINを生成し,発行モジュールに提供する”ものであることが読み取れる。

ウ.上記イ.において引用した上記Cの記載内容,上記Cの「発行モジュール86は,検証デバイス26または34に対し,PINモジュール76によって生成されるPINを含む可聴音声メッセージを生成するように指示することができるプログラム」という記載,同じく,上記Cの「検証デバイス26または34は,適当に押されると検証デバイス26または34に対し可聴音声メッセージを流すように指示する」という記載,及び,上記Dの「ローカルPIN要求を受け取ると(ステップ130),検証デバイスは,PINを生成して発行する」という記載と,上記イ.において検討した事項から,引用刊行物1においては,“検証デバイスが,発行モジュールにおいて,PINモジュールから提供されたPINを含む可聴音声メッセージを生成し,前記可聴音声メッセージを,発行する”ものであることが読み取れる。

エ.上記Dの「発行されたPINは,ユーザにより要求者デバイスに入力される。要求者デバイスは,PINデータを生成しそのPINデータを含む接続要求を検証デバイスに向ける」という記載と,上記ア.において引用した上記Bの“検証デバイスと,要求者デバイスとが無線接続されている”という記載内容,及び,上記ウ.において検討した事項から,引用刊行物1においては,“検証デバイスが発行した,PINを含む可聴音声メッセージから,要求者デバイスは,PINデータを生成し,前記PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,検証デバイスに送信する”ものであることが読み取れる。

オ.上記Dの「検証デバイスは,PINデータを含む接続要求を受け取り・・・・・(中略)・・・・・検証デバイスは,PINデータが有効であるか否かを判断する(ステップ144)。PINデータが有効である場合,検証デバイスは,リンクキーを確立し(ステップ146),アクセスを許可する(ステップ134)」という記載と,上記エ.において検討した事項から,引用刊行物1においては,“検証デバイスは,要求者デバイスから,無線接続を介して送信された,接続要求に含まれるPINデータが有効であるか否かを判断し,前記PINデータが有効である場合,リンクキーを確立し,前記要求者デバイスのアクセスを許可する”ものであることが読み取れる。

カ.以上,ア.?オ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されていると認める。

「要求者デバイスと,検証デバイスとの,赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続であるリンクによる相互接続方法であって,
前記検証デバイスは,PINモジュールと,発行モジュールとを含み,前記PINモジュールは,PINを生成し,発行モジュールに提供し,
前記検証デバイスが,前記発行モジュールにおいて,前記PINモジュールから提供された,前記PINを含む可聴音声メッセージを生成し,前記可聴音声メッセージを,発行し,
前記検証デバイスが発行した,前記PINを含む可聴音声メッセージから,前記要求者デバイスは,PINデータを生成し,前記PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,前記検証デバイスに送信し,
前記検証デバイスは,前記要求者デバイスから,前記無線接続を介して送信された,前記接続要求に含まれる前記PINデータが有効であるか否かを判断し,前記PINデータが有効である場合,リンクキーを確立し,前記要求者デバイスのアクセスを許可する,方法。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明における「検証デバイス」は,「要求者デバイス」に対して,「PIN」を生成して発行するものであり,当該「PIN」は,「リンクキー」を生成するために用いるものであるから,引用発明における「検証デバイス」,「要求者デバイス」が,本件補正発明における「第2のデバイス」,「第1のデバイス」に相当し,
引用発明における「赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続であるリンクによる相互接続方法」は,「検証デバイス」と,「要求者デバイス」との間の「無線通信」による「接続方法」を示すものであるから,引用発明における「相互接続方法」は,本件補正発明における「無線通信方法」に相当するものである。

イ.引用発明において,「PIN」,及び,「PINデータ」は,「リンクキーを確立」して,「検証デバイス」と,「要求者デバイス」のリンクを確立するために用いられるものであるから,
引用発明における「リンク」,及び,「PIN」が,
本件補正発明における「保安通信」,及び,「キー情報」に相当するので,
引用発明において,「検証デバイスは,PINモジュールと,発行モジュールとを含み,前記PINモジュールは,PINを生成」することと,
本件補正発明において,「第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップ」とは,
“第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を生成するステップ”である点で共通する。

ウ.引用発明における「可聴音声メッセージ」は,「PINを含む」ものとして生成され,「音響信号」であることは明らかである。
一方,本件補正発明において,「接続初期化情報」は,「キー情報を含む」ものであるから,引用発明における「可聴音声メッセージ」が,
本件補正発明における「保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を音響信号に変換」したもの,即ち,本件補正発明における「音響信号」に相当し,
当該「可聴音声メッセージ」が,「検証デバイス」から「発行」されるということは,当該「可聴音声メッセージ」が,「検証デバイス」から,「音響信号」として送信されることに他ならない。
そして,「音響信号」として送信された,当該「可聴音声メッセージ」が,“音波”として,「要求者デバイス」側に伝わるということは,当該「可聴音声メッセージ」が,“音波通信路”を介して,「要求者デバイス」側に伝わることに他ならず,該“音波通信路”は,本件補正発明における「音響信号チャネル」に相当するものであるから,
引用発明における「検証デバイスが,前記発行モジュールにおいて,前記PINモジュールから提供された,前記PINを含む可聴音声メッセージを生成し,前記可聴音声メッセージを,発行」することと,
本件補正発明における「生成した接続初期化情報を音響信号に変換して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップ」とは,
“生成した保安通信のためのキー情報を含む音響信号を生成して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップ”である点で共通する。
そして,引用発明においても,「音響信号」を用いて通信を行っているので,上記ア.において検討した事項と併せると,
引用発明における「赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続であるリンクによる相互接続方法」が,
本件補正発明における「第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法」に相当する。

エ.引用発明における「検証デバイスが発行した,前記PINを含む可聴音声メッセージから,前記要求者デバイスは,PINデータを生成し,前記PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,前記検証デバイスに送信」することにおいて,
「要求者デバイス」が「生成」し,「検証デバイス」に送信する「PINデータを含む接続要求」に含まれる「PINデータ」は,「検証デバイス」から発行された,「可聴音声メッセージ」に含まれる「PIN」を用いて生成されたものであるから,「要求者デバイス」によって送信される「PINデータを含む接続要求」は,「検証デバイス」より発行される「可聴音声メッセージ」に対する“応答信号”と言い得るものである。
そして,引用発明においては,前記“応答信号”を「無線接続を介して」,「検証デバイスに送信」していて,該「無線接続」は,引用発明においては,「赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続」であるから,
引用発明において,該“無線接続を介して,検証デバイスに送信される”ということは,“無線接続を介して,検証デバイスにおいて受信される”ことに他ならない。
したがって,引用発明における「PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,前記検証デバイスに送信し,前記検証デバイスは,前記要求者デバイスから,前記無線接続を介して送信」することと,
本件補正発明における「第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信される」こととは,
“第1のデバイスから生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信される”点で共通する。

オ.引用発明において,「検証デバイスは,前記要求者デバイスから,前記無線接続を介して送信された,前記接続要求に含まれる前記PINデータが有効であるか否かを判断」することは,「接続要求」に含まれる「PINデータ」が有効であるか否かを,「検証デバイス」において判断するものであって,このことは,該「PINデータ」の有効性を“確認”することに他ならないので,当該「PINデータが有効である場合」は,
引用発明における“応答信号”である「PINデータを含む接続要求」と,
本件補正発明における「第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号」とは,
“第1のデバイスから生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号”である点で共通し,上記エ.において検討した事項と併せると,
引用発明における「検証デバイスが発行した,前記PINを含む可聴音声メッセージから,前記要求者デバイスは,PINデータを生成し,前記PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,前記検証デバイスに送信し,前記検証デバイスは,前記要求者デバイスから,前記無線接続を介して送信された,前記接続要求に含まれる前記PINデータが有効であるか否かを判断」することと,
本件補正発明における「第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップ」とは,
“第1のデバイスから生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップ”である点で共通する。

カ.引用発明において,「PINデータが有効である場合,リンクキーを確立し,前記要求者デバイスのアクセスを許可する」ことは,「検証デバイス」と,「要求者デバイス」との間で,「無線接続」を介した「リンクキー」を用いた通信を行うことを「許可」することであって,
引用発明における“無線接続を介したリンクキーを用いた通信”が,
本件補正発明における「ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信」に相当するので,
引用発明における「PINデータが有効である場合,リンクキーを確立し,前記要求者デバイスのアクセスを許可する」ことと,
本件補正発明における「有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ」とは,
“有効な確認信号の受信時に,ラジオ無線チャンネルで第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ”である点で共通する。

キ.以上,ア.?カ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を生成するステップと,
前記生成した保安通信のためのキー情報を含む音響信号を生成して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから,前記生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップを含む,無線通信方法。

[相違点1]
“保安通信のためのキー情報を生成するステップ”に関して,
本件補正発明においては,「保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップ」であるのに対して,
引用発明においては,先ず,「PIN」を生成し,その後,「PINを含む可聴音声メッセージを生成」している点。

[相違点2]
“生成した保安通信のためのキー情報を含む音響信号を生成”することに関して,
本件補正発明においては,「生成した接続初期化情報を音響信号に変換」するものであるのに対して,
引用発明においては,「PINを含む可聴音声メッセージを生成」するものである点。

[相違点3]
“生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号”に関して,
本件補正発明においては,「接続初期化情報に対する有効な確認信号」であるのに対して,
引用発明においては,「PINデータを含む接続要求」である点。

[相違点4]
“有効な確認信号の受信時に,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ”に関して,
本件補正発明においては,「有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ」であるのに対して,
引用発明においては,「音響信号の伝送を中断」に対する言及がない点。

[相違点5]
本件補正発明においては,「ラジオ無線チャンネルを通じて前記有効な確認信号が受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する音響信号のボリュームを徐々に増加させ,前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップを含む」ものであるのに対して,
引用発明においては,「ボリューム」の操作についての言及がない点。

(5)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1]?[相違点3]について
引用発明においても,「PIN」生成時に,必要な情報を組み合わせて生成し,当該生成したデータを,「可聴音声メッセージ」に変換するよう構成すること,即ち,本件発明の同等の順序で,「音響信号」を生成するよう構成することは,他に事例を引用するまでもなく,当業者が適宜なし得る事項である。
また,引用発明においても,上記「(4)本件補正発明と引用発明との対比」のオ.において指摘したとおり,「PINデータ」が有効であれば,引用発明における「PINデータを含む接続要求」は,「有効な確認信号」と言い得るものである。
よって,[相違点1]?[相違点3]は,格別のものではない。

イ.[相違点4],及び,[相違点5]について
「音響信号」を用いて,「IDコード」等の送信を行うことは,上記Fに引用した,上記引用刊行物2の「CPU23はD/A24にIDコードを送信する。ここでIDコードは暗号化されたものであっても良い。ステップS04でD/A24は受け取ったIDコードをアナログ化し,スピーカ25に受け渡す。ここでスピーカの出力を制御する為に図示されていないがアンプを経由することが可能である。ステップS05でスピーカ25からIDコードを発信し,ステップS06で,相手先無線通信機器10からの応答を待つ。相手無線通信機器10からの応答があればステップS07でCPU23に通知し終了する」という記載内容にもあるとおり,本願の原出願の第1国出願前に,当業者には,周知の技術事項であり,「音響信号」を用いる場合に,「スピーカの出力を制御する為に図示されていないがアンプを経由することが可能である」とあるように,必要に応じて,「スピーカの出力を制御する」こと,即ち,“音量を調整するためにボリュームを制御する”ことも,当業者には周知の技術事項である。
そして,無線通信において,受信側に信号が受信されない場合に,信号強度を徐々に変化させていき,所定の値に到達した場合に,該変化を停止することも,上記Gに引用した,引用刊行物3の「一定時間のうちに相手側無線通信装置から応答が返ってこなかった場合はステップS9に進み,以下の送信電力の制御が行われる。・・・制御部9は送信電力制御部3に送信電力を上げるよう指示する。この指示を受けた送信電力制御部3は電力増幅器4の利得を,あらかじめ設定された値だけ上げて送信電力を上げる(ステップS9)。送信電力を上げた後,ステップS9で設定された電力増幅器4の利得があらかじめ設定された上限値以下であるかどうかを判定する(ステップS10)。この利得上限値は電波の到達範囲の過度の広がりによるセキュリティの低下抑止の観点から最適に設定されている。ステップS9で設定された利得が上限値を越えたらセキュリティが保てないと判断し,通信を終了する」という記載内容,及び,上記Hに引用した,引用刊行物4の「 If receiver 13 does not receive the signal from transceiver 12, then transceiver 12 reconfigures a communication parameter by a predetermined level. In this example, transceiver 12 increases the transmit power incrementally in pre-set steps at step 23 and retests whether communication is successful. If communication is successful, transceiver 12 returns to the START state. If receiver 13 is unable to communicate with transceiver 12, even after transceiver reconfigures to a highest transmit power at step 24, then it is determined at step 25 that communication is unavailable at that particular time(受信器13が信号をトランシーバー12から受信しない場合には,トランシーバー12は,通信パラメーターを予め決定されたレベルによって再構成する。この例において,トランシーバー12は,ステップ23において,予め設定された増分で送信電力を徐々に増加させ,通信が成功したかどうか再テストする。通信が成功した場合には,トランシーバー12は,スタート状態に戻る。受信器13がステップ24で最高の送信電力に再構成した後でも,受信器13がトランシーバー12と通信できない場合には,通信がその特定の時刻にできないことが,ステップ25で決定される)」という記載内容にもあるとおり,本願の原出願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,引用発明においても,無線通信方式として,「音響通信」を採用している以上,“スピーカの出力を制御して,徐々に音量を上げていき,上限設定値に到達したら停止する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
また,上記Gに引用した,引用刊行物3の「これら一連の動作を,ステップS2で一定時間内に相手側無線通信装置から応答が返ってくるまで,またはステップS10で送信電力が上限値を越えるまで繰り返す」という記載から,“応答が返ってくれば,当該処理は中断される”ことは明らかであるから,
引用発明においても,“返信が帰って来た場合は,音響信号の出力を中止する”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点4],及び,[相違点5]は,格別のものではない。

ウ.以上,ア.,及び,イ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点5]は,格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。
したがって,本願発明は,引用発明,及び,引用刊行物2?引用刊行物4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年10月1日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
前記第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップと,
前記生成した接続初期化情報を音響信号に変換して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから前記接続初期化情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップとを含むことを特徴とする無線通信方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物1として引用した,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2005-174327号公報(2005年6月30日公開)には,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の発明が記載されている。

「要求者デバイスと,検証デバイスとの,赤外線リンク,無線周波数リンクまたは無線通信の他の任意の手段を介する無線接続であるリンクによる相互接続方法であって,
前記検証デバイスは,PINモジュールと,発行モジュールとを含み,前記PINモジュールは,PINを生成し,発行モジュールに提供し,
前記検証デバイスが,前記発行モジュールにおいて,前記PINモジュールから提供された,前記PINを含む可聴音声メッセージを生成し,前記可聴音声メッセージを,発行し,
前記検証デバイスが発行した,前記PINを含む可聴音声メッセージから,前記要求者デバイスは,PINデータを生成し,前記PINデータを含む接続要求を,無線接続を介して,前記検証デバイスに送信し,
前記検証デバイスは,前記要求者デバイスから,前記無線接続を介して送信された,前記接続要求に含まれる前記PINデータが有効であるか否かを判断し,前記PINデータが有効である場合,リンクキーを確立し,前記要求者デバイスのアクセスを許可する,方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」において検討した,本件補正発明から,
「前記ラジオ無線チャンネルを通じて前記有効な確認信号が受信されない場合に,前記接続初期化情報に対する音響信号のボリュームを徐々に増加させ,
前記音響信号のボリュームが保安のために予め設定された許容最大ボリュームに到達すれば,前記音響信号の伝送を中断するステップ」,
を取り除いたものであるから,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
第1のデバイスと第2のデバイスとの間の音響信号を用いる無線通信方法であって,
第2のデバイスで,前記第1のデバイスと接続時に,保安通信のためのキー情報を生成するステップと,
前記生成した保安通信のためのキー情報を含む音響信号を生成して,音響通信チャンネルを通じて前記第1のデバイスに伝送するステップと,
前記第1のデバイスから,前記生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号が,前記保安通信のためのキー情報を用いて保安通信が遂行されるラジオ無線チャンネルを通じて,ラジオ無線信号で受信されるか否かを確認するステップと,
前記有効な確認信号の受信時に,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップを含む,無線通信方法。

[相違点a]
“保安通信のためのキー情報を生成するステップ”に関して,
本願発明においては,「保安通信のためのキー情報を含む接続初期化情報を生成するステップ」であるのに対して,
引用発明においては,先ず,「PIN」を生成し,その後,「PINを含む可聴音声メッセージを生成」している点。

[相違点b]
“生成した保安通信のためのキー情報を含む音響信号を生成”することに関して,
本願発明においては,「生成した接続初期化情報を音響信号に変換」するものであるのに対して,
引用発明においては,「PINを含む可聴音声メッセージを生成」するものである点。

[相違点c]
“生成した保安通信のためのキー情報に対する有効な確認信号”に関して,
本願発明においては,「接続初期化情報に対する有効な確認信号」であるのに対して,
引用発明においては,「PINデータを含む接続要求」である点。

[相違点d]
“有効な確認信号の受信時に,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ”に関して,
本願発明においては,「有効な確認信号の受信時に,前記音響信号の伝送を中断し,前記ラジオ無線チャンネルで前記第1のデバイスと保安通信を遂行するステップ」であるのに対して,
引用発明においては,「音響信号の伝送を中断」に対する言及がない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との間の[相違点a]?[相違点d]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]?[相違点4]と同じものであるから,上記「第2.平成27年10月1日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別なものではない。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-08 
結審通知日 2016-09-12 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2014-85563(P2014-85563)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 須田 勝巳
石井 茂和
発明の名称 音響信号を用いる無線通信方法  
代理人 崔 允辰  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
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