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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1324664
審判番号 不服2015-22660  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-24 
確定日 2017-02-08 
事件の表示 特願2012-140227「予約サイズを有する取引注文を中継する電子取引システムでトレーダーリストを用いるシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 1日出願公開、特開2012-212458〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年7月28日(優先権主張 2005年7月29日 米国、2006年7月27日 米国)を国際出願日とする出願である特願2008-524247号の一部を平成24年6月21日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月27日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成26年6月3日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年11月4日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、平成27年5月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月11日付け提出の手続補正書による補正が平成27年8月13日付けで却下され、同日付で拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年8月25日に請求人に送達された。これに対して、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、平成28年2月10日付けで前置報告書が作成されたものである。

第2 平成27年12月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成27年12月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。

「【請求項1】
第1トレーダーリストに関連するトレーダーリストであって、該トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、トレーダーリストを記憶し;
特定の取引注文を受信し;
前記受信した特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する;
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ;
を有する装置。

【請求項2】
前記トレーダーから第1取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない複数のトレーダーに前記第1取引注文を送信し;
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が、前記少なくとも1つのプロセッサにさらに指示する;
請求項1に記載の装置。

【請求項3】
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする前記動作が、前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーを外して前記取引注文を中継することを有する、請求項2に記載の装置。

【請求項4】
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする前記動作が、前記メモリにおいて前記トレーダーリストにより指定された前記一人又はそれ以上のトレーダーに関連する1つ又はそれ以上のキューから前記取引注文を削除することを有する、請求項2に記載の装置。

【請求項5】
取引相手のトレーダーについての1つ又はそれ以上の嗜好を前記第1トレーダーから受信し;
1つ又はそれ以上の基準を満たす少なくとも一人のトレーダーを決定し;
前記1つ又はそれ以上の基準を満たす前記少なくとも一人のトレーダーを決定する前記動作に基づいて、前記トレーダーリストを生成する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記1つのプロセッサを更に指示し、
前記1つ又はそれ以上の嗜好が、特定の取引商品、取引相手のトレーダーの特定の取引活動及び取引ボリューム閾値の少なくとも1つに関する1つ又はそれ以上の基準を有し;
前記トレーダーリストを生成する前記動作が、前記少なくとも一人のトレーダーを指定するよう前記トレーダーリストを生成することを有する;
請求項1に記載の装置。

【請求項6】
前記基準を複数のトレーダープロファイルと比べ;
前記比べる動作に基づいて、前記少なくとも一人のトレーダーが前記1つ又はそれ以上の基準を満たすことを決定する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
各々のトレーダープロファイルはトレーダーに関連する;
請求項5に記載の装置。

【請求項7】
前記第1トレーダーから受信された前記1つ又はそれ以上の嗜好の1つが取引ボリューム閾値を有する、装置であって:
第2トレーダーが前記取引ボリューム閾値を満たすことを判定し;
前記第2トレーダーが前記取引ボリューム閾値を満たすことを判定する前記動作に基づいて、前記トレーダーリストに前記第2トレーダーを記憶し;
第2取引注文が前記第2トレーダーから受信されていることを判定し;
前記第2取引注文が前記トレーダーリストにより指定された前記第2トレーダーにより提示されたことを判定する前記動作に応答して、前記第2取引注文についての情報を、前記第1トレーダーに関連する前記表示装置において前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示する;
請求項6に記載の装置。

【請求項8】
前記トレーダーリストにより指定された第2トレーダーから第2取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない第3トレーダーから第3取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない第4トレーダーから第4取引注文を受信し;
前記第2取引注文、前記第3取引注文及び前記第4取引注文を、前記第1トレーダーに対して表示されるようにする;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する装置であって:
前記第2取引注文の前記表示は、前記第3取引注文の前記表示及び前記第4取引注文の前記表示に関連して淡色化される又はハイライトされる;
請求項1に記載の装置。

【請求項9】
最近の取引活動に基づいて前記トレーダーリストを更新する;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する、請求項1に記載の装置。

【請求項10】
最近の取引活動に基づいて構成可能な期間に従って前記トレーダーリストを周期的に更新する;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する、請求項1に記載の装置。

【請求項11】
前記1つ又はそれ以上の指定されたトレーダーへの前記取引注文の前記送信を回避することを更に有する、請求項1に記載の装置。

【請求項12】
前記1つ又はそれ以上の指定されたトレーダーとの前記取引注文の取引を行うことを回避することを更に有する、請求項1に記載の装置。

【請求項13】
前記トレーダーリストは、前記第1トレーダーにより選択された注文価格入力に関連する1つ又はそれ以上のトレーダーを有する、請求項1に記載の装置。

【請求項14】
前記トレーダーリストは、前記メモリにおいて前記第1トレーダーにより選択された注文価格入力に関連しないすべてのトレーダーを有する、請求項1に記載の装置。

【請求項15】
前記特定の取引注文は第1取引商品の量についてのものであり;
前記トレーダーリストは、前記メモリにおいて前記第1取引商品に関連する第1トレーダーリストであり;
前記第1トレーダーは、第2取引商品に関連する第2トレーダーリストにさらに関連し、前記第2トレーダーリストは、前記第1トレーダーリストと異なる1つ又はそれ以上のトレーダーを指定する;
請求項1に記載の装置。

【請求項16】
前記第2取引商品についての第2取引注文を前記第1トレーダーから受信し;
第2の複数のトレーダーに前記第2取引注文を送信し;
前記第2トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーへの前記第2取引注文の前記送信を回避する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記第2の複数のトレーダーは、前記第2トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーの何れも有しない;
請求項15に記載の装置。

【請求項17】
前記第2トレーダーから第2取引注文を受信し;
前記第1トレーダーを有しない複数のトレーダーに前記第2取引注文を送信し;
前記第1トレーダーへの前記第2取引注文の前記送信を回避する
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記第2トレーダーは、前記メモリにおいて少なくとも前記第1トレーダーを指定する第2トレーダーリスト関連している;
請求項1に記載の装置。

【請求項18】
前記メモリにおいて前記第1トレーダーに関連する1つ又はそれ以上のトレーダー嗜好と、前記メモリにおいて少なくとも1つの指定されたトレーダーに関連する少なくとも1つのトレーダープロファイルとに少なくとも一部が基づいて、前記トレーダーリストを生成する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記1つ又はそれ以上のトレーダー嗜好の少なくとも1つが前記メモリにおいて特定の取引活動に関連し;
少なくとも一人のトレーダーが前記特定の取引活動に関与していることの判定に基づいて、前記トレーダーリストにより指定された前記少なくとも一人のトレーダーが前記トレーダーリストに記憶される;
請求項1に記載の装置。

【請求項19】
少なくとも1つのプロセッサにより、該少なくとも1つのプロセッサとの電子的通信において少なくとも1つの有形のコンピュータ可読媒体における第1トレーダーに関連するトレーダーリストを記憶する段階であって、前記トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、段階;
前記少なくとも1つのプロセッサにより、特定の取引注文を受信する段階;
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記受信した特定の取引注文が前記トレーダリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する段階;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記第1トレーダーに関連付けて前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する段階;
を有する方法。

【請求項20】
トレーダーの取引注文を管理するシステムであって:
プロセッサ;並びに
第1トレーダーに関するトレーダーリストに記憶し、1つ又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、前記プロセッサに通信可能に結合されたメモリであって:
ネットワークにおいて前記プロセッサに結合されたコンピュータから前記第1トレーダーからの取引注文を受信し;
前記第1トレーダーからの前記取引注文を受信した後に、複数のトレーダーに前記取引注文を送信し;
特定のトレーダーから特定の取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない対応する少なくとも二人のトレーダーから少なくとも2つの取引注文を受信し;
前記第1トレーダーに前記特定の取引注文及び前記少なくとも2つの取引注文を送信し;及び
前記特定のトレーダーが前記トレーダーリストにより指定されることを判定し;
前記特定のトレーダーが前記トレーダーリストにより指定されることの前記判定に基づいて、前記特定の取引注文の表示を淡色化又はハイライトする一方、前記少なくとも2つの取引注文の対応する表示をそのまま表示する;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する指令をさらに記憶している、メモリ;
を有する、システムであり:
前記複数のトレーダーは前記トレーダーリストから前記一人又はそれ以上の指定されたトレーダーの何れも有さず;
前記第1トレーダーからの前記取引注文を受信する前記動作、前記特定のトレーダーから前記特定の取引注文を受信する前記動作、及び前記対応する少なくとも二人のトレーダーからの前記少なくとも2つの取引注文を受信する前記動作の前に、前記一人又はそれ以上のトレーダーを指定する前記トレーダーリストは記憶される;
システム。」

(2)本件補正前の、平成26年6月3日付の手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1トレーダーリストに関連するトレーダーリストであって、該トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、トレーダーリストを記憶し;
特定の取引注文を受信し;
前記受信された特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記特定の取引注文についての情報を、前記第1トレーダーに関連する表示装置において前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする;
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ;
を有する装置。

【請求項2】
前記トレーダーから第1取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない複数のトレーダーに前記第1取引注文を送信し;
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が、前記少なくとも1つのプロセッサにさらに指示する;
請求項1に記載の装置。

【請求項3】
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする前記動作が、前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーを外して前記取引注文を中継することを有する、請求項2に記載の装置。

【請求項4】
前記取引注文を、前記トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーに通信されないようにする前記動作が、前記メモリにおいて前記トレーダーリストにより指定された前記一人又はそれ以上のトレーダーに関連する1つ又はそれ以上のキューから前記取引注文を削除することを有する、請求項2に記載の装置。

【請求項5】
取引相手のトレーダーについての1つ又はそれ以上の嗜好を前記第1トレーダーから受信し;
1つ又はそれ以上の基準を満たす少なくとも一人のトレーダーを決定し;
前記1つ又はそれ以上の基準を満たす前記少なくとも一人のトレーダーを決定する前記動作に基づいて、前記トレーダーリストを生成する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記1つのプロセッサを更に指示し、
前記1つ又はそれ以上の嗜好が、特定の取引商品、取引相手のトレーダーの特定の取引活動及び取引ボリューム閾値の少なくとも1つに関する1つ又はそれ以上の基準を有し;
前記トレーダーリストを生成する前記動作が、前記少なくとも一人のトレーダーを指定するよう前記トレーダーリストを生成することを有する;
請求項1に記載の装置。

【請求項6】
前記基準を複数のトレーダープロファイルと比べ;
前記比べる動作に基づいて、前記少なくとも一人のトレーダーが前記1つ又はそれ以上の基準を満たすことを決定する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
各々のトレーダープロファイルはトレーダーに関連する;
請求項5に記載の装置。

【請求項7】
前記第1トレーダーから受信された前記1つ又はそれ以上の嗜好の1つが取引ボリューム閾値を有する、装置であって:
第2トレーダーが前記取引ボリューム閾値を満たすことを判定し;
前記第2トレーダーが前記取引ボリューム閾値を満たすことを判定する前記動作に基づいて、前記トレーダーリストに前記第2トレーダーを記憶し;
第2取引注文が前記第2トレーダーから受信されていることを判定し;
前記第2取引注文が前記トレーダーリストにより指定された前記第2トレーダーにより提示されたことを判定する前記動作に応答して、前記第2取引注文についての情報を、前記第1トレーダーに関連する前記表示装置において前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示する;
請求項6に記載の装置。

【請求項8】
前記トレーダーリストにより指定された第2トレーダーから第2取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない第3トレーダーから第3取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない第4トレーダーから第4取引注文を受信し;
前記第2取引注文、前記第3取引注文及び前記第4取引注文を、前記第1トレーダーに対して表示されるようにする;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する装置であって:
前記第2取引注文の前記表示は、前記第3取引注文の前記表示及び前記第4取引注文の前記表示に関連して淡色化される又はハイライトされる;
請求項1に記載の装置。

【請求項9】
最近の取引活動に基づいて前記トレーダーリストを更新する;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する、請求項1に記載の装置。

【請求項10】
最近の取引活動に基づいて構成可能な期間に従って前記トレーダーリストを周期的に更新する;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する、請求項1に記載の装置。

【請求項11】
前記1つ又はそれ以上の指定されたトレーダーへの前記取引注文の前記送信を回避することを更に有する、請求項1に記載の装置。

【請求項12】
前記1つ又はそれ以上の指定されたトレーダーとの前記取引注文の取引を行うことを回避することを更に有する、請求項1に記載の装置。

【請求項13】
前記トレーダーリストは、前記第1トレーダーにより選択された注文価格入力に関連する1つ又はそれ以上のトレーダーを有する、請求項1に記載の装置。

【請求項14】
前記トレーダーリストは、前記メモリにおいて前記第1トレーダーにより選択された注文価格入力に関連しないすべてのトレーダーを有する、請求項1に記載の装置。

【請求項15】
前記特定の取引注文は第1取引商品の量についてのものであり;
前記トレーダーリストは、前記メモリにおいて前記第1取引商品に関連する第1トレーダーリストであり;
前記第1トレーダーは、第2取引商品に関連する第2トレーダーリストにさらに関連し、前記第2トレーダーリストは、前記第1トレーダーリストと異なる1つ又はそれ以上のトレーダーを指定する;
請求項1に記載の装置。

【請求項16】
前記第2取引商品についての第2取引注文を前記第1トレーダーから受信し;
第2の複数のトレーダーに前記第2取引注文を送信し;
前記第2トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーへの前記第2取引注文の前記送信を回避する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記第2の複数のトレーダーは、前記第2トレーダーリストにより指定された前記1つ又はそれ以上のトレーダーの何れも有しない;
請求項15に記載の装置。

【請求項17】
前記第2トレーダーから第2取引注文を受信し;
前記第1トレーダーを有しない複数のトレーダーに前記第2取引注文を送信し;
前記第1トレーダーへの前記第2取引注文の前記送信を回避する
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記第2トレーダーは、前記メモリにおいて少なくとも前記第1トレーダーを指定する第2トレーダーリスト関連している;
請求項1に記載の装置。

【請求項18】
前記メモリにおいて前記第1トレーダーに関連する1つ又はそれ以上のトレーダー嗜好と、前記メモリにおいて少なくとも1つの指定されたトレーダーに関連する少なくとも1つのトレーダープロファイルとに少なくとも一部が基づいて、前記トレーダーリストを生成する;
よう、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサを更に指示し、
前記1つ又はそれ以上のトレーダー嗜好の少なくとも1つが前記メモリにおいて特定の取引活動に関連し;
少なくとも一人のトレーダーが前記特定の取引活動に関与していることの判定に基づいて、前記トレーダーリストにより指定された前記少なくとも一人のトレーダーが前記トレーダーリストに記憶される;
請求項1に記載の装置。

【請求項19】
少なくとも1つのプロセッサにより、該少なくとも1つのプロセッサとの電子的通信において少なくとも1つの有形のコンピュータ可読媒体における第1トレーダーに関連するトレーダーリストを記憶する段階であって、前記トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、段階;
前記少なくとも1つのプロセッサにより、特定の取引注文を受信する段階;
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記受信された特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する段階;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記特定の取引注文についての情報が、前記第1トレーダーに関連する表示装置において前記トレーダーリストにより指定されない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする段階;
を有する方法。

【請求項20】
トレーダーの取引注文を管理するシステムであって:
プロセッサ;並びに
第1トレーダーに関するトレーダーリストに記憶し、1つ又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、前記プロセッサに通信可能に結合されたメモリであって:
ネットワークにおいて前記プロセッサに結合されたコンピュータから前記第1トレーダーからの取引注文を受信し;
前記第1トレーダーからの前記取引注文を受信した後に、複数のトレーダーに前記取引注文を送信し;
特定のトレーダーから特定の取引注文を受信し;
前記トレーダーリストにより指定されていない対応する少なくとも二人のトレーダーから少なくとも2つの取引注文を受信し;
前記第1トレーダーに前記特定の取引注文及び前記少なくとも2つの取引注文を送信し;及び
前記特定のトレーダーが前記トレーダーリストにより指定されることを判定し;
前記特定のトレーダーが前記トレーダーリストにより指定されることの前記判定に基づいて、表示装置における前記少なくとも2つの取引注文の表示に関連して、前記表示装置における前記特定の取引注文の表示を淡色化される又はハイライトされるようにする;
よう、前記プロセッサにより実行されるときに、前記指令が前記プロセッサを更に指示する指令をさらに記憶している、メモリ;
を有する、システムであり:
前記複数のトレーダーは前記トレーダーリストから前記一人又はそれ以上の指定されたトレーダーの何れも有さず;
前記第1トレーダーからの前記取引注文を受信する前記動作、前記特定のトレーダーから前記特定の取引注文を受信する前記動作、及び前記対応する少なくとも二人のトレーダーからの前記少なくとも2つの取引注文を受信する前記動作の前に、前記一人又はそれ以上のトレーダーを指定する前記トレーダーリストは記憶される;
システム。」

(3)上記補正は、請求項1,19および20について以下のように補正している。

ア 請求項1について

(ア)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記受信された特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し」について、「前記受信した特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し」として、誤記を訂正するものであって、平成18年法律第55号改正前の特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(イ)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の取引注文についての情報を、前記第1トレーダーに関連する表示装置において前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする」について、「前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする」として、平成26年11月4日付け最後の拒絶理由通知に係る拒絶の理由1(特許法第36条第6項第2号違反)に示す事項について、明りょうでない記載の釈明を行うものであって、同法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。さらに、上記事項に「一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する」との限定を付加するものであって、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 請求項19について

(ア) 上記ア(イ)と同様に、請求項の1のカテゴリ違いである請求項19について、請求項19に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の取引注文についての情報が、前記第1トレーダーに関連する表示装置において前記トレーダーリストにより指定されない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする段階」について、「前記第1トレーダーに関連付けて前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする」として、平成26年11月4日付け最後の拒絶理由通知に係る拒絶の理由1(特許法第36条第6項第2号違反)に示す事項について、明りょうでない記載の釈明を行うものであって、同法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。さらに、上記事項に「一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する」(段階)との限定を付加するものであって、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 請求項20について

(ア) 請求項20に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示装置における前記少なくとも2つの取引注文の表示に関連して、前記表示装置における前記特定の取引注文の表示を淡色化される又はハイライトされるようにする」について、「前記特定の取引注文の表示を淡色化又はハイライトする」として、誤記を訂正するものであって、同法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。さらに、上記事項に「一方、前記少なくとも2つの取引注文の対応する表示をそのまま表示する」との限定を付加するものであって、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、本件補正は、新規事項を追加するものではないから同法第17条の2第3項の要件を満たしているといえる。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 本件補正発明の独立特許要件についての検討

(1)本件補正発明の記載不備
本件補正後の前記請求項1には、以下のとおり記載されている。

「【請求項1】
第1トレーダーリストに関連するトレーダーリストであって、該トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、トレーダーリストを記憶し;
特定の取引注文を受信し;
前記受信した特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する;
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ;
を有する装置。」

ここで、「前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置」という記載について、「第1トレーダーリストに関連するトレーダーリスト」という記載はあるものの、「前記第1トレーダーに」に対応する「第1トレーダー」という記載がそれ以前の記載中に見当たらず、不明瞭となっている。
したがって、本件補正後の請求項1は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

さらに、本願の明細書の該当する記載を参照しても、「トレーダーリスト」は、特定のトレーダー(「第1トレーダー」に対応する。)が取引したいと思わない他のトレーダーを指定する旨記載されている(例えば、段落0033など)から、本件補正後の請求項1は、本願の明細書の記載とも相違しており、特許法第36条第6項第1号の要件も満たしていない。

請求項1のカテゴリ違いである請求項19の記載を参照すると、「第1トレーダーに関連するトレーダーリスト」という記載がある。また、平成24年6月21日付け提出の本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1でも「第1トレーダーに関連し、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリスト」と記載されている。

したがって、請求項1の「第1トレーダーリストに関連するトレーダーリスト」は、「第1トレーダーに関連するトレーダーリスト」の誤記であると認められる。

よって、本件補正後の前記請求項1(以下、「本件補正発明」という。)は、以下のとおりのものとして以降取り扱う。

「【請求項1】
第1トレーダーに関連するトレーダーリストであって、該トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、トレーダーリストを記憶し;
特定の取引注文を受信し;
前記受信した特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する;
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ;
を有する装置。」

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の最後の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2003-58733号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、株式、証券、商品等の取引市場において適切な約定締結を支援する取引支援システムおよびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
株式、証券、商品等の取引市場における発注者は、取引相手に対し、取引をするか、しないか、取引する場合には、最大取引額はいくらまでか、そして取引相手によって取引条件を変えたいという要求を持っている。
【0003】
従来は、この様な発注者からの要求を取引の仲介者が電話等の通信手段で聞き、その要求に見合った取引相手を探し、当該仲介者が適切と判断した取引相手に取引条件を伝え、当該取引条件が双方合致すれば両者を初めて紹介するという方法が採られていた。
【0004】
この人による仲介に対し、近年におけるコンピュータシステムの導入に伴い、発注者の注文の付け合せをコンピュータシステムにより行なう方法が知られている。いわゆる「電子市場」と呼ばれているが、この電子市場システムにおいては、原則として、相対する取引を希望する発注者の注文、言いかえれば、「売る」「買う」という注文を単純に付け合せを行ない、自動的に取引を成立させるものである。
【0005】
この様な「電子市場システム」においては、上記のように発注者の主観的な要求を採り入れて取引相手を選別したり、取引相手毎に取引条件を変更するようなものは存在しなかった。
【0006】
ところで、電子市場システムのように、自動化された取引システムにおいて、発注者の主観的な規準に基づき、許容しない取引相手との潜在的な取引を排除するものとして、特願平8-507171号(特表平10-504409号公報参照)に開示されたような交渉照合システムが知られている。
【0007】
このシステムは、例えば、取引相手に対する好感度、地理的な条件、取引相手の財務状況に関する格付情報に基づき、一方向的に、または双方向的に、潜在的な取引対象から外してしまうというものである。
【0008】
この従来のシステムにおいては、取引対象から外すために、発注者が用いる端末に表示される潜在的な取引相手に関する情報を、上記の各種情報を用いて、取引を許容しない取引相手については表示しないようにフィルタリングするというものである。
【0009】
つまり、従来技術によっては、特定の条件に基づく表示情報の単純なフィルタリング、言い換えれば、取引相手とするか、しないかという要求の解決までは可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、自動化されたコンピュータを用いて、予め設定した取引相手に対する条件に基づき、表示データのフィルタリングを行なう方法においては、単純なフィルタリングしか行なうことができず、例えば、複数の取引相手毎に、それぞれ異なった取引条件で取引をしたいという要求は実現できない。
【0011】
これを実現するためには、従来技術においては、仲介者による選別によるしかないが、当該仲介者の情報処理能力には限界があり、また経験等の人的な要因が影響するため、必ずしも、正確かつ速い処理は期待できない。
【0012】
本発明の目的は、前述したような従来の技術の問題点を解消しうるような取引市場において適切な約定締結を支援するための取引支援システムおよびその方法を提供することである。」

(イ)「【0025】システムの構成
図1に概略的に示すように、本発明の一実施例としての取引支援システムは、本取引支援システムの主要部をなす取引処理コンピュータ10を備えており、この取引処理コンピュータ10は、複数の発注者に設置された複数の端末30と、公衆回線、専用回線等のネットワーク1を介して接続可能に構成されている。
【0026】
この取引処理コンピュータ10は、図2に略示されるように、付け合せ手段11と、表示データ生成手段12と、取引情報調整手段13と、メモリ手段14と、通信手段15との機能を実現しうるものであり、また、データベース40と連携するものである。この実施例では、データベース40は、取引情報記憶手段41と、調整情報記憶手段42と、取引当事者マスタ43とを構成している。
【0027】
なお、この実施例では、通信手段15は、取引処理コンピュータ10の一つの機能にて実現しているものであるが、本発明は、これに限らない。例えば、通信手段15としては、一般的に知られているような通信モデムを別に使用してもよいし、インターネットのようなオープンネットワークに接続する場合には、モデム等の通信装置に加えて、ネットワーク接続用のサーバを経由し、よりセキュリティーを高めることも考えられる。図1では、有線による接続のように見えるが、無線方式による通信も可能であり、通信方式に応じて通信モデム等の通信機器を変更すれば良い。
【0028】
また、図2では、取引情報記憶手段41および調整情報記憶手段42をデータベース40として取引処理コンピュータ10とは分離しているが、これは取引処理コンピュータ10に内蔵される記憶装置であってもかまわない。これら記憶手段は、基本的には、取引処理コンピュータ10の主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスク等)、通信装置に対する取引情報調整プログラムによる制御によって実現されうるものである。なお、必要に応じて、取引情報のように複数の構成要素をもった定型的なデータが大量にリアルタイムで処理される場合には、既知の技術であるデータベースシステムを組み合わせてもよい。
【0029】システムの各部の構成、機能および動作並び全体操作および動作
以下に、前述したような構成を有する取引支援システムの各部の構成、機能および動作並びに全体操作および動作について順をおって説明する。
(1)取引(注文)情報記憶手段41
この取引情報記憶手段41は、複数の発注者に設置された複数の端末からネットワークを介して送信されてくる注文に関する情報(以下、注文データという)を記憶する手段である。通常は、ハードディスク装置により構成され、注文データの入出力は、ソフトウェアにより制御されている。好適には、データベースソフトウェア等により管理されており、容易に検索等が行えるように構成されていることが望ましい。
個々の注文データは、一つのレコードとして管理されており、識別情報により特定可能に構成されている。
(2)調整情報記憶手段42
この調整情報記憶手段42は、本取引支援システムを利用する発注者ごとに、取引相手に対する取引調整に関する情報を記憶する手段である。この取引調整に関する情報は、特定の取引相手に付随する情報と、不特定の取引相手に対する情報が含まれる。
識別情報により発注者と関連付けられており、発注者が取引支援システムを使用する際に、自己の端末から、当該取引調整に関する情報を設定可能に構成されている。
取引調整に関する情報は、例えば、取引相手指定情報、取引限度額情報、調整範囲情報が考えられるが、これらに限定されない。ただし、少なくとも、取引相手に対し、取引条件を変更するための情報である、調整範囲情報は含まれる。
(3)付け合せ手段11
この付け合せ手段11は、後述すようなセルデータの付け合せ機能を果たすもので、付け合せのルールは、後述の10-2項以降に記載の個々の付け合せ条件として記載されている。
(4)表示データ生成手段12
この表示データ生成手段12は、各端末に送信するためのデータを生成する機能を果たすもので、データ生成時に、取引調整情報および所定の条件により調整を行なう。
(5)取引情報調整手段13
この取引情報調整手段13は、取引情報記憶手段41の注文データおよび調整情報記憶手段42の調整情報に基づき、調整された注文データを生成する手段である。後述の実施例では、調整セルデータの生成のみに機能を限定しており、したがって、付け合せ時や、表示データ生成時の調整は、それぞれの手段で行なわれることを前提としている。
(6)メモリ手段14
本取引支援システムは、後述するように、注文データに基づき、セルデータを生成する。同様に、前記取引情報調整手段により調整された注文データもセルデータとして生成される。メモリ手段14は、これらのセルデータをメモリ空間上に生成するものであり、実際の付け合わせ処理や発注者の端末に送信する表示情報の生成は、これらのセルデータを用いて行なわれる。」

(ウ)「【0040】
(8)取引データの開示の方法
取引処理コンピュータ10は、表示データ生成手段12の機能により、端末30に表示させる取引データを生成する。生成された取引データは、通信回線を介して端末30に送信され、端末30の表示装置に表示される。図3は、金融コール取引を例にした場合の端末における画面表示例である。図3の画面には、注文データの種類に応じて、「売り」の注文データが「売り手」の部分に、「買い」の注文データが「買い手」の部分にそれぞれ表示されるように構成されている。
【0041】
取引処理コンピュータ10が端末30に送信する取引データを生成するにあたり、取引情報記憶手段41の注文データを参照することが考えられるが、本実施例においては、直接に注文データを参照するのではなく、注文データに基づき生成された「セルデータ」を参照するように構成されている。
【0042】
このセルデータは、注文データおよび調整情報に基づき、取引情報記憶手段41ではなく、取引処理コンピュータ10のメモリ手段14に生成される。一つの注文データに対し、一つまたは複数のセルデータが生成され、注文データと関連付けられて管理されている。
【0043】
端末30に送信される取引データは、このセルデータに基づき生成され、図3のように「板」と呼ばれる表状の形式で表示される。この「板」は複数のセルデータの集合である。
【0044】
図3の画面は、調整が行なわれていない標準的な「板」の例である。本発明においては、各発注者は、取引相手に対して取引可否の設定が可能であるばかりでなく、取引を行なう場合の取引相手に応じた条件設定が可能であるため、調整情報に基づき調整が行なわれた取引データの各発注者端末30での表示は異なることとなる。
【0045】
例えば、発注者Aが、取引相手B、C、Dに対してそれぞれ異なる取引条件となるよう調整を行なった場合には、取引相手B、C、Dの各端末30においては、それぞれ異なった内容の取引データが表示されることとなる。もっとも、調整内容が同じ場合は、同じ表示内容となる可能性はある。
【0046】
(9)調整情報の入力
発注者は、端末30から取引相手に関する調整情報を入力する。入力された調整情報は、ネットワーク1を介して取引処理コンピュータ10に伝達され、取引処理コンピュータ10は、端末30から送信されてきた当該調整情報を、当該送信してきた発注者に関連付けて、調整情報記憶手段42に記録する。この調整情報の入力は、取引を開始するときに行ってもよいし、取引途中に行ってもよい。
例えば、当日の取引を開始するときに入力することが望ましい。
【0047】
調整情報は、例えば次のような情報が含まれる。
9-1.取引相手指定情報
発注者が取引を行う相手を指定する情報である。例えば、信頼のおける取引相手とのみ取引を行いたい場合には、継続的に取引を行っている取引相手を指定することが有効である。取引相手の指定は、例えば、取引支援システムによる取引に参加する全ての発注者の一覧が表示され、当該一覧の中から、選択することで行うことができるようにすることが望ましい。
ここで選択された取引相手に関する情報は、調整情報記憶手段42には、取引支援システムにおいて当該取引相手を一義に識別可能に関連付けられている識別情報として記録することが望ましい。
9-2.取引限度枠情報
発注者は、取引相手となり得る参加者に対して、各種の取引限度枠を設定可能である。例えば、取引金額の総量であったり、単位期間あたりの取引金額であったり、1回あたりの取引金額などが考えられるが、これらに限られない。これらの取引限度枠は、それぞれ単独でも、複合的にも設定可能である。
9-3.取引相手排除情報
不特定の取引相手に対し、特定の条件を指定することで、取引相手から積極的に除外するための情報である。例えば、自己との過去の取引回数、市場における事故の有無や回数、自己との過去における取引金額実績などが考えられる。」

(エ)「【0071】
10-4.取引相手除去情報による調整
付け合せ段階:
付け合せ手段11は、調整情報記憶手段42における取引相手除去情報を読み込み、セルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較する。この際、付け合せ手段11は、セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行う。
【0072】
また、取引当事者マスタ43は、過去に取引を行った取引相手の識別情報を、その回数と金額とともに記憶可能に構成されており、付け合せ手段11は、必要に応じてそれらとの比較を行う。上記比較が行われ、取引相手除去情報による除去対称でないと判定された場合には、当該セルデータは、付け合せ対象として取り扱われる。図13は、このような付け合せ手段11の動作を図式的に略示している。
表示データ生成段階:
表示データ生成手段12は、調整情報記憶手段42における取引相手除去情報を読み込み、セルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較する。この際、表示データ生成手段12は、セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行う。また、調整情報記憶手段42は、過去に取引を行った取引相手の識別情報を、その回数と金額とともに記憶可能に構成されており、表示データ生成手段12は、必要に応じてそれらとの比較を行う。上記比較が行われ、取引相手除去情報による除去対称でないと判定された場合には、当該セルデータは、取引データとしての生成対象とする。
【0073】
図14は、こうして生成されたAの端末に対する表示情報を例示している。Gは、取引事故に関する調整により、取引相手から除去されているので、表示されないように制御されている。なお、別の例としては、「0.85 10(0) A」というように、セルデータの表示を行い、実際の取引可能額が「0」であることをAに知らしめても良い。」

(オ)「(11)より具体的な約定締結例
以下に、取引市場における約定締結のためのより具体的な動作例について説明する。
【0078】
A銀行:レート0.82、 OFFER9億円、B銀行:レート0.81、BID7億円、C銀行:レート0.81、BID10億円、D銀行:レート0.81、BID8億円の注文を出している状況とする。A銀行はB銀行を取引相手としない登録をし、そして、C銀行に対しては取引限度枠を6億円と登録しているとする。A銀行が見る板情報は、図16のようになる。なお、この例では、取引しない場合も取引可能額を(0)として表示するようにしている。
【0079】
7(0)は、A銀行がB銀行を取引相手としない登録をしたことによる表示である。7がもとの注文金額で、括弧内のゼロが実質注文金額である。10(6)は、取引限度枠からC銀行の10億円がA銀行にとって6億円しか意味を持たないことを意味する。次に、A銀行がD銀行に対しては調整スプレッドを0.02と登録したとする。その際、D銀行が見る板情報(D銀行の取引データ)は、図17のとおりとなる。」

(カ)図16には、レート「0.81」に対応するBID欄に、C銀行のBIDとして「10(6)」が表示され、B銀行のBIDとして「7(0)」が表示され、D銀行のBIDとして「8」が表示され、レート「0.80」に対応するBID欄に、「9、6」が表示され、レート「0.79」に対応するBID欄に、「13」が表示されている。

(キ)図17には、D銀行の端末表示例として「例えば色を変えて表示したり、表示しないことも考えられる」との記載がある。

以上の引用例1の記載(ア)?(キ)によれば、引用例1には以下の事項を含む発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「株式、証券、商品等の取引市場において適切な約定締結を支援する取引支援システムであって、
取引支援システムは、取引処理コンピュータ10を備えており、
取引処理コンピュータ10は、付け合せ手段11と、表示データ生成手段12と、取引情報調整手段13と、メモリ手段14と、通信手段15との機能を実現しうるものであり、データベース40と連携しており、
データベース40は、取引情報記憶手段41と、調整情報記憶手段42と、取引当事者マスタ43とを構成しており、
取引情報記憶手段41および調整情報記憶手段42をデータベース40として取引処理コンピュータ10とは分離しているが、これは取引処理コンピュータ10に内蔵される記憶装置であってもよく、
取引情報記憶手段41は、複数の発注者に設置された複数の端末からネットワークを介して送信されてくる注文に関する情報(以下、注文データという)を記憶する手段であり、通常は、ハードディスク装置により構成され、注文データの入出力は、ソフトウェアにより制御されており、
調整情報記憶手段42は、本取引支援システムを利用する発注者ごとに、取引相手に対する取引調整に関する情報を記憶する手段であり、この取引調整に関する情報は、特定の取引相手に付随する情報と、不特定の取引相手に対する情報が含まれており、識別情報により発注者と関連付けられており、取引調整に関する情報は、例えば、取引相手指定情報、取引限度額情報、調整範囲情報が考えられ、
表示データ生成手段12は、各端末に送信するためのデータを生成する機能を果たすもので、データ生成時に、取引調整情報および所定の条件により調整を行なっており、
取引情報調整手段13は、取引情報記憶手段41の注文データおよび調整情報記憶手段42の調整情報に基づき、調整された注文データを生成する手段であり、
取引情報調整手段により調整された注文データはセルデータとして生成され、メモリ手段14は、これらのセルデータをメモリ空間上に生成するものであり、端末に送信する表示情報の生成は、これらのセルデータを用いて行なわれ、
取引処理コンピュータ10は、表示データ生成手段12の機能により、端末30に表示させる取引データを生成し、生成された取引データは、通信回線を介して端末30に送信され、端末30の表示装置に表示され、
各発注者は、取引相手に対して取引可否の設定が可能であるばかりでなく、取引を行なう場合の取引相手に応じた条件設定が可能であるため、調整情報に基づき調整が行なわれた取引データの各発注者端末30での表示は異なることとなり、例えば、発注者Aが、取引相手B、C、Dに対してそれぞれ異なる取引条件となるよう調整を行なった場合には、取引相手B、C、Dの各端末30においては、それぞれ異なった内容の取引データが表示されることとなり、
発注者は、端末30から取引相手に関する調整情報を入力し、入力された調整情報は、ネットワーク1を介して取引処理コンピュータ10に伝達され、取引処理コンピュータ10は、端末30から送信されてきた当該調整情報を、当該送信してきた発注者に関連付けて、調整情報記憶手段42に記録しており、
調整情報は、例えば次のような情報が含まれ、
取引相手指定情報は、発注者が取引を行う相手を指定する情報であり、
取引相手排除情報は、不特定の取引相手に対し、特定の条件を指定することで、取引相手から積極的に除外するための情報であり、例えば、自己との過去の取引回数、市場における事故の有無や回数、自己との過去における取引金額実績などが考えられ、
取引相手除去情報による調整において、
表示データ生成手段12は、調整情報記憶手段42における取引相手除去情報を読み込み、セルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較し、この際、表示データ生成手段12は、セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行い、「0.85 10(0) A」というように、セルデータの表示を行い、実際の取引可能額が「0」であることをAに知らしめ、
具体的な動作例において、A銀行はB銀行を取引相手としない登録しているとすると、A銀行が見る板情報は、取引しない場合も取引可能額を(0)として表示するようにしており、
レート「0.81」に対応するBID欄に、B銀行のBIDとして「7(0)」が表示され、D銀行のBIDとして「8」が表示され、レート「0.80」に対応するBID欄に、「9」、「6」が表示され、レート「0.79」に対応するBID欄に、「13」が表示されており、
7(0)は、A銀行がB銀行を取引相手としない登録をしたことによる表示であり、7がもとの注文金額で、括弧内のゼロが実質注文金額である
取引支援システム」

イ 引用例2
原査定の最後の拒絶理由通知に周知技術記載文献2として例示された国際公開第2005/004015号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(ア)
「It is an object of the present invention to provide a method and a system wherein an anonymous market can be upheld, and where at the same time the parties can identify orders placed by counter parties that they do not want enter into a deal with.」(第3ページ、8?10行)
(仮訳:
本発明の目的は、匿名マーケットを是認することができ、同時に当事者が取引参加することを望まない取引相手により設定されたオーダーを認識することができる方法およびシステムを提供することである。)

(イ)
「All orders currently entered into the system in a particular instrument are displayed to all traders connected to the centrally located server hosting the matching unit and its associated order book so that the entire content of the orderbook is available to all traders making use of the trading system. In order for each trader to know which orders the trader is allowed to trade against each order is displayed indicating the credit rating status thereof. In this example the system makes use of three different colors to communicate this information to each trader. It is understood that an arbitrary number of levels can be used.

- RED - Forbidden: Which the trader is NOT allowed to trade against.
- YELLOW - Restricted: Which the trader is allowed against but the counter party is getting close to become forbidden.
- GREEN - No restrictions: The trader may trade freely.

The coloring is made in the system in response to the mutually established credit limits established for each respective trading party. In the example depicted in Fig. 2, a three color credit rating coding of orders is employed as described above. For example the orders on the lines denoted 221 are Red, the orders on the lines 223 are Yellow and the orders on the lines 225 are Green.」(第6ページ、13?31行)
(仮訳:
システムに現在入力されている特定の証券についての全てのオーダーは、中央に配置されたサーバに接続されたすべてのトレーダーに表示される。サーバは、マッチング・ユニットとその関連するオーダ・ブックを備えており、それにより、そのオーダ・ブックの全ての内容が取引システムを使用している全てのトレーダーに利用可能となっている。各トレーダーに対して、どのオーダーが反対取引が許されたトレーダーによるオーダーなのか知らせるために、各オーダーは、信用格付けのステータスを示すように表示される。この例において、システムは、3つの異なる色を使用して、この情報を各トレーダーに知らせている。レベルの数は任意を使用してもよいことが理解される。

-赤-禁止:そのトレーダーは、反対取引をすることが許されていない。
-黄-規制:そのトレーダーは、反対取引が許されているが、その取引相手は、禁止に近づきつつある。
-緑-規制なし:そのトレーダーは、自由に取引できる。

システムにおいて、それぞれの取引当事者の間で相互に確立された信用限度に応じて、色づけが実施される。図2に示す例では、上述したように、オーダーが3色のクレジット格付け規定が採用されている。例えば、221により表された線上のオーダーは、赤であり、線223上のオーダーは、黄であり、線225上のオーダーは、緑である。)

以上の引用例2の記載によれば、引用例2には以下の事項を含む周知技術(以下「引用例2例示周知技術」という。)が例示されていると認められる。

「当事者が取引参加することを望まない取引相手により設定されたオーダーを認識することができるシステムにおいて、
各トレーダーに対して、どのオーダーが反対取引が許されたトレーダーによるオーダーなのか知らせるために、各オーダーは、信用格付けのステータスを示すように表示され、
システムは、3つの異なる色を使用して、この情報を各トレーダーに知らせており、レベルの数は任意を使用してもよく、
赤は、禁止であり、そのトレーダーは、反対取引をすることが許されておらず、
黄は、規制であり、そのトレーダーは、反対取引が許されているが、その取引相手は、禁止に近づきつつあり、
緑は、規制なしであり、そのトレーダーは、自由に取引できる
ことを示している
オーダー表示技術」

(3)対比
そこで、本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

ア 引用例1発明は、「株式、証券、商品等の取引市場において適切な約定締結を支援する取引支援システム」であるから、本件補正発明と同様に、金融商品等を取引する取引システムであるといえる。

また、引用例1発明は、「セルデータに関連付けられている取引相手が」「取引相手から積極的に除外するための情報」である「取引相手排除情報に合致しているか否かを比較し、この際、表示データ生成手段12は、セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行い、「0.85 10(0) A」というように、セルデータの表示を行い、実際の取引可能額が「0」であることをAに知らしめ」ている。
ここで、引用例1発明の「セルデータ」、「取引相手から積極的に除外するための情報である取引相手排除情報に合致している取引相手」は、それぞれ、本件補正発明の「取引注文」、「取引することを好まないトレーダー」に相当している。
さらに、引用例1発明の「「0.85 10(0) A」というように、セルデータの表示を行い、実際の取引可能額が「0」であること」を知らしめることは、「取引相手から積極的に除外するための情報である取引相手排除情報に合致している取引相手」(取引することを好まないトレーダー)による「セルデータ」(取引データ)を識別可能に表示することに他ならない。
本件補正発明でも、「特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を淡色化又はハイライトする一方、前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示」しており、これも、取引することを好まないトレーダーによる取引注文を識別可能に表示しているといえる。

したがって、引用例1発明と本件補正発明とは、金融商品等を取引する取引システムという共通の技術分野に属し、取引することを好まないトレーダーによる取引注文を識別可能に表示するという点で、課題が共通しているといえる。

イ 引用例1発明では、「発注者は、端末30から取引相手に関する調整情報を入力し、入力された調整情報は、ネットワーク1を介して取引処理コンピュータ10に伝達され、取引処理コンピュータ10は、端末30から送信されてきた当該調整情報を、当該送信してきた発注者に関連付けて、調整情報記憶手段42に記録しており、」「調整情報は、例えば次のような情報が含まれ、」「取引相手排除情報は、不特定の取引相手に対し、特定の条件を指定することで、取引相手から積極的に除外するための情報」である。
ここで、引用例1発明の「発注者」、「取引相手」は、それぞれ、本件補正発明の「第1トレーダー」、「他のトレーダー」に相当している。また、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」は、本件補正発明の「装置」に対応している。
引用例1発明の「調整情報」の内の「取引相手排除情報」は、「発注者」(第1トレーダー)が取引することを好まない取引相手(他のトレーダー)を特定するための条件であるといえ、「発注者」(第1トレーダー)に関連する情報として記憶しているから、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」も、本件補正発明の「装置」と同様に、第1トレーダーに関連する情報であって、取引することを好まない他のトレーダーを特定するための情報を記憶している点で共通しているといえる。

しかし、本件補正発明は、取引することを好まないトレーダーを特定するために、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリストを用いているのに対して、引用例1発明は、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリストを用いていない点で相違している。

ウ 引用例1発明では、「複数の発注者に設置された複数の端末からネットワークを介して送信されてくる注文に関する情報(以下、注文データという)を記憶」しており、ここで、「注文データ」は証券等の取引注文のためのデータであるから、引用例1発明も、本件補正発明と同様に、取引注文を受信しているといえる。
さらに、引用例1発明では、「注文データはセルデータとして生成され、」、「端末に送信する表示情報の生成は、これらのセルデータを用いて行なわれ、」「セルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較し、」セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行い、「0.85 10(0) A」というように、セルデータの表示を行い、実際の取引可能額が「0」であることをAに知らしめ」ている。つまり、「取引相手が当該取引相手除去情報に合致している」と判定された場合の「注文データ」を識別可能に表示しているといえる。
ここで、引用例1発明の「取引相手が当該取引相手除去情報に合致していると判定された場合の注文データ」が本件補正発明の「特定の取引注文」に相当している。
したがって、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」と、本件補正発明の「装置」とは、特定の取引注文を受信している点で共通している。

エ 引用例1発明では、「注文データはセルデータとして生成され、」、「端末に送信する表示情報の生成は、これらのセルデータを用いて行なわれ、」「セルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較し、」セルデータ中の発注者識別情報を検出すると、当該発注者に関連付けられている、取引当事者マスタ43を検索して、例えば、市場における取引事故の回数と取引相手除去情報との比較を行」っている。
ここで、引用例1発明の「取引相手が当該取引相手除去情報に合致していると判定された場合の注文データ」が本件補正発明の「特定の取引注文」に相当している。
引用例1発明において、「端末からネットワークを介して送信されてくる注文データから生成されたセルデータに関連付けられている取引相手が当該取引相手除去情報に合致しているか否かを比較」することは、すなわち、受信した注文データ(取引注文)が取引することを好まない取引相手(トレーダー)により発注(提示)されたことを判定していることであるといえる。本件補正発明においても、トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示された取引注文であるか判定しているのは、受信した注文データ(取引注文)が取引することを好まない取引相手(トレーダー)により発注(提示)されたことを判定していることであるといえる。
したがって、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」と、本件補正発明の「装置」とは、受信した特定の取引注文が、取引することを好まないトレーダーにより提示されたことを判定している点で共通している。

しかし、本件補正発明では、取引注文が、取引することを好まないトレーダーにより提示されたことを判定する際に、トレーダーリストによって判定しているのに対し、引用例1発明では、トレーダーリストによって判定していない点で相違している。

オ 引用例1発明では、「A銀行がB銀行を取引相手としない登録をしたことによる表示」では、「A銀行」の端末において、「B銀行のBIDとして「7(0)」が表示され」、「7がもとの注文金額で、括弧内のゼロが実質注文金額である」一方、「D銀行のBIDとして「8」が表示されて」いる。さらに、どの発注者からの注文金額かは不明であるがレート「0.80」に対応するBID欄に、「9」、「6」が表示され、レート「0.79」に対応するBID欄に、「13」が表示されている。
つまり、B銀行を取引相手としない登録をしたA銀行の端末において、取引相手としない登録をしたB銀行から送信されてきた注文金額については、もとの注文金額に、「(0)」という表記を付加して表示し、取引相手としない登録をしていないD銀行から送信されてきた注文金額については、もとの注文金額をそのまま表示しているといえる。そして、レート「0.80」に対応するBID欄に表示された「9」や「6」、レート「0.79」に対応するBID欄に表示された「13」も「(0)」という表記が付加されていないから、取引相手としない登録をしていない発注者から送信されてきた注文金額であるといえる。
ここで、引用例1発明の「A銀行の端末」が本件補正発明の「第1トレーダーに関連付けられた表示装置」に相当している。また、引用例1発明の「B銀行から送信されてきた注文金額」、「D銀行から送信されてきた注文金額」および「レート「0.80」に対応するBID欄に表示された「9」や「6」、レート「0.79」に対応するBID欄に表示された「13」も「(0)」」が、それぞれ、本件補正発明の「特定の取引注文についての情報」、「指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報」に対応している。
特定の取引注文についての情報を表示する際に、引用例1発明においては、もとの注文金額に「(0)」を付加して表示し、本件補正発明においては、淡色化又はハイライトして表示しているが、これらの表示方法は、他の取引注文に対して識別可能に表示している点で共通しているといえる。
したがって、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」と、本件補正発明の「装置」とは、特定の取引注文が取引することを好まないトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を識別可能に表示する一方、取引することを好まないトレーダーでない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する点で共通している。

しかし、本件補正発明では、特定の取引注文についての情報を識別可能に表示する際に、淡色化又はハイライトしているのに対して、引用例1発明では、「(0)」を付加して表示している点で相違している。

カ コンピュータは、一般に、少なくとも1つのプロセッサを備え、少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリに記憶された、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令(プログラム)にしたがって、各種処理を実行するから、引用例1発明の「取引処理コンピュータ」と、本件補正発明の「装置」とは、各種処理が、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリを有している点で共通している。

キ 以上のア?カによると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

[一致点]
「第1トレーダーに関連する情報であって、取引することを好まない他のトレーダーを特定するための情報を記憶し、
特定の取引注文を受信し、
前記受信した特定の取引注文が、取引することを好まないトレーダーにより提示されたことを判定し、
前記特定の取引注文が取引することを好まないトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記第1トレーダーに関連付けられた前記表示装置において、前記特定の取引注文についての情報を識別可能に表示する一方、取引することを好まないトレーダーでない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての対応する情報の表示をそのまま表示する
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリを有する装置。」

[相違点1]
本件補正発明は、取引することを好まないトレーダーを判定するために、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリストを用いているのに対して、引用例1発明は、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリストを用いていない点。

[相違点2]
本件補正発明では、特定の取引注文についての情報を識別可能に表示する際に、淡色化又はハイライトしているのに対して、引用例1発明では、「(0)」を付加して表示している点。

(4)判断

[相違点1について]
引用例1発明では、「調整情報」として、「発注者が取引を行う相手を指定する情報」である「取引相手指定情報」と、「不特定の取引相手に対し、特定の条件を指定することで、取引相手から積極的に除外するための情報」である「取引相手排除情報」とを記録している。「特定の条件」としては、「市場における取引事故の回数」などが例示されている。
金融商品等取引の分野では、過去の取引実績等に基づいて、安全な取引が可能な者をリスト化した「ホワイトリスト」や、取引の安全が懸念される者をリスト化したものを「ブラックリスト」を用いて、取引の管理することが一般的に行われている。
引用例1発明の「発注者が取引を行う相手を指定する情報」である「取引相手指定情報」は、金融商品等取引の分野における「ホワイトリスト」に該当するものであるから、引用例1発明において、金融商品等取引の分野において一般的に用いられる「ブラックリスト」を採用して、「市場における取引事故の回数」等の条件により、取引の安全が懸念される発注者を事前にリスト化してブラックリストを作成しておき、取引することを好まないトレーダーを判定するために、当該ブラックリストを用いる構成を採用することは、本願の優先日前に、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、引用例1発明において、取引の安全が懸念される発注者等を事前にリスト化してブラックリスト、すなわち、トレーダーリストを作成しておき、取引することを好まないトレーダーを判定するために、当該トレーダーリストを用いる構成を採用して、本件補正発明と同様に、取引することを好まないトレーダーを判定するために、一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定するトレーダーリストを用いるようにすることは、当業者が容易に発明し得たものである。

[相違点2について]
上記(2)イで述べたように、証券等の取引システムの技術分野において、取引相手の信用格付けのステータスに応じて表示態様を変えて(例えば、信用格付けが低いトレーダーによるオーダーは赤色で、信用格付けが高いトレーダーによるオーダーは緑色で)オーダーを表示させる技術は、本願の優先日前に周知の技術(引用例2例示周知技術)であった。
そして、端末等の表示装置の技術分野において、ハイライト表示は、他の表示情報と区別する際に多用される周知の表示技術である。
また、端末等の表示装置の技術分野において、淡色化表示は、選択肢として提示されるが、実際には選択できない選択肢を提示する際に多用される周知の表示技術である。

したがって、引用例1発明において、特定の取引注文についての情報を識別可能に表示する際に、信用格付けが低いトレーダーによる取引注文であるため実際には取引できないことを示す「(0)」を付加して表示する構成に代えて、上記周知の表示技術を適用して、本件補正発明と同様に、(実際には取引できないことを示す)取引注文を淡色化表示したり、(信用格付けが低いトレーダーによる)取引注文をハイライト表示したりする構成とすることは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。

また、本件補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび

前記のとおり、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正前の特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成27年12月24日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1は、平成26年6月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2 1(2)に前述のとおりのものである。

平成26年6月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1においても、本件補正発明と同様に、請求項1の「第1トレーダーリストに関連するトレーダーリスト」は、「第1トレーダーに関連するトレーダーリスト」の誤記であると認められる。

よって、平成26年6月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)、以下のとおりのものとして以降取り扱う。

「【請求項1】
第1トレーダーに関連するトレーダーリストであって、該トレーダーリストは一人又はそれ以上の他のトレーダーを指定する、トレーダーリストを記憶し;
特定の取引注文を受信し;
前記受信された特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定し;及び
前記特定の取引注文が前記トレーダーリストにより指定されたトレーダーにより提示されたことを判定する動作に応答して、前記特定の取引注文についての情報を、前記第1トレーダーに関連する表示装置において前記トレーダーリストにより指定されていない対応する複数のトレーダーからの複数の他の取引注文についての情報に関連して淡色化される又はハイライトされるようにする;
よう、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるときに、該少なくとも1つのプロセッサに指示する指令を記憶している前記少なくとも1つのプロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つのメモリ;
を有する装置。」

2 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1および引用例2ならびにその記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記第2 1(3)に前述のとおり、本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに当該補正に係る限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2 2(4)に記載したとおり、引用例1に記載された発明および引用例2に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明および引用例2に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-12 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2012-140227(P2012-140227)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 野崎 大進
石川 正二
発明の名称 予約サイズを有する取引注文を中継する電子取引システムでトレーダーリストを用いるシステム及び方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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