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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1324733
審判番号 不服2015-11366  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-17 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2013-214397「エンコーダ,デコーダおよびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 87058〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)10月15日(パリ条約による優先権主張2012年10月22日、英国、2013年8月2日、欧州特許庁)の出願であって、平成26年6月25日及び平成26年7月3日付けで手続補正がなされ、平成26年9月2日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成26年12月5日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月25日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年6月17日に拒絶査定不服審判が請求されるととともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成27年6月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、補正前の平成26年12月5日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1ないし19を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし19に補正するものであるところ、本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
データ(20,D1)を符号化して対応する符号化データ(70,E2)を生成するエンコーダ(10)であって、
前記エンコーダ(10)は解析ユニット(100)を備え、前記解析ユニット(100)は、前記符号化されるデータ(20,D1)の一つ以上の部分(40)における複数の異なる値と空間周波数情報を解析し、前記解析ユニット(100)が実行する、前記一つ以上の部分(40)のデータ値に関する解析に応じて、前記一つ以上の部分(40)を一つ以上の符号化ユニット(110)に導き、前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化して前記符号化データ(70,E2)を生成でき;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化する際に互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しうるように構成され;
出力符号化ユニット(60)は、前記一つ以上の符号化ユニット(110)から符号化出力データを受信し、前記エンコーダ(10)から符号化データ(70,E2)を生成するために前記符号化出力データを更に符号化するように構成され;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)のうち少なくとも一つの符号化ユニット(110(i))は、
・ 受信した前記一つ以上の部分(40)のうち少なくとも1つに存在する複数のデータ値を、前記複数のデータ値に基づき少なくとも二つのセットに分類し、
・ 前記分類した前記データ値の前記セットの少なくとも1つにつき、該セットに含まれる前記データ値に基づいて、少なくとも一つの要約値を計算し、
・ 前記セットの各々につき、該セットに分類された前記データ値の空間配置を示す空間マスク(320)を作成する、
ように構成され、ここで前記空間マスク(320)および前記要約値は前記符号化データ(70,E2)に含まれる;
エンコーダ(10)。」
とあるのを、

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
データ(20,D1)を符号化して対応する符号化データ(70,E2)を生成するエンコーダ(10)であって、
前記エンコーダ(10)は解析ユニット(100)を備え、前記解析ユニット(100)は、前記符号化されるデータ(20,D1)の一つ以上の部分(40)における複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析し、前記解析ユニット(100)が実行する、前記一つ以上の部分(40)のデータ値に関する解析に応じて、前記一つ以上の部分(40)を一つ以上の符号化ユニット(110)に導き、前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化して前記符号化データ(70,E2)を生成でき;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化する際に互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しうるように構成され;
出力符号化ユニット(60)は、前記一つ以上の符号化ユニット(110)から符号化出力データを受信し、前記エンコーダ(10)から符号化データ(70,E2)を生成するために前記符号化出力データを更に符号化するように構成され;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)のうち少なくとも一つの符号化ユニット(110(i))は、
・ 受信した前記一つ以上の部分(40)のうち少なくとも1つに存在する複数のデータ値を、前記複数のデータ値に基づき少なくとも二つのセットに分類し、
・ 前記分類した前記データ値の前記セットの少なくとも1つにつき、該セットに含まれる前記データ値に基づいて、少なくとも一つの要約値を計算し、
・ 前記セットの各々につき、該セットに分類された前記データ値の空間配置を示す空間マスク(320)を作成する、
ように構成され、ここで前記空間マスク(320)および前記要約値は前記符号化データ(70,E2)に含まれ、前記符号化データ(70,E2)に含まれる前記要約値は、レート歪最適化を利用して選択される;
エンコーダ(10)。」
と補正する。

本件補正の請求項1に係る補正は、以下に示す補正事項を有している。
(1)補正事項1
「前記符号化されるデータ(20,D1)の一つ以上の部分(40)における複数の異なる値と空間周波数情報を解析し」を、「前記符号化されるデータ(20,D1)の一つ以上の部分(40)における複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析し」に変更する補正。

(2)補正事項2
「前記符号化データ(70,E2)に含まれる前記要約値は、レート歪最適化を利用して選択され」という事項を追加する補正。

2.補正の適合性
(1)補正の目的
補正事項1は、拒絶の理由において明りょうでない記載であると示された事項についての釈明を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項第4号の規定に該当するものである。

補正事項2は、発明特定事項である「要約値を計算」することについて、要約値がレート歪最適化を利用して選択されるものであることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえるから、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当するものである。

(2)補正の範囲及び単一性について
補正事項1は、願書に最初に添付した明細書の段落0051の記載に基づくものであり、補正事項2は、願書に最初に添付した明細書の段落0062の記載に基づくものである。
よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

また、各補正事項は、上記のような、明りょうでない記載の釈明、又は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明とは発明の単一性の要件を満たすものといえ、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

(3)独立特許要件
以上のように、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるので、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(3-1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、本願補正発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願補正発明)
(A)データ(20,D1)を符号化して対応する符号化データ(70,E2)を生成するエンコーダ(10)であって、
(B)前記エンコーダ(10)は解析ユニット(100)を備え、前記解析ユニット(100)は、前記符号化されるデータ(20,D1)の一つ以上の部分(40)における複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析し、(C)前記解析ユニット(100)が実行する、前記一つ以上の部分(40)のデータ値に関する解析に応じて、前記一つ以上の部分(40)を一つ以上の符号化ユニット(110)に導き、前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化して前記符号化データ(70,E2)を生成でき;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化する際に互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しうるように構成され;
(D)出力符号化ユニット(60)は、前記一つ以上の符号化ユニット(110)から符号化出力データを受信し、前記エンコーダ(10)から符号化データ(70,E2)を生成するために前記符号化出力データを更に符号化するように構成され;
(E)前記一つ以上の符号化ユニット(110)のうち少なくとも一つの符号化ユニット(110(i))は、
・ 受信した前記一つ以上の部分(40)のうち少なくとも1つに存在する複数のデータ値を、前記複数のデータ値に基づき少なくとも二つのセットに分類し、
・ 前記分類した前記データ値の前記セットの少なくとも1つにつき、該セットに含まれる前記データ値に基づいて、少なくとも一つの要約値を計算し、
・ 前記セットの各々につき、該セットに分類された前記データ値の空間配置を示す空間マスク(320)を作成する、
ように構成され、ここで前記空間マスク(320)および前記要約値は前記符号化データ(70,E2)に含まれ、
(F)前記符号化データ(70,E2)に含まれる前記要約値は、レート歪最適化を利用して選択される;
(G)エンコーダ(10)。

(3-2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2008-72336号公報には、「画像処理装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0024】本発明は、以上のような問題点を解決すべくなされたものであり、異なる画像特性を持つ小領域が混在する画像データに対して、領域毎に最適な圧縮処理を選択し、伸長画像の画質劣化を最小限に押さえるとともに、画像データ全体の画像構成を解析し、その解析結果を領域毎の圧縮処理方式の選択に反映させることにより、画像全体の目標圧縮率を確実に達成できる画像処理装置を提供することを目的とする。

【0035】(実施形態1)図1は、第一の実施形態の画像処理装置の符号化回路の構成例を示すブロック図である。以下の説明において、画素ブロックサイズを4×4として説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。入力手段としての画像入力装置1から入力された画像データは、一旦解析手段としての画像解析回路2の画像解析バッファ3へ送られる。画像構造解析回路4は、画像解析バッファ3のデータを参照して、画像中に含まれる構造を解析する。
【0036】最適圧縮パラメータ算出回路5は、画像構造解析回路4からの解析結果を参照して、ブロック毎にどの圧縮方式を選定するかを決定するロジック(後述)において使用される、しきい値を決定する。この最適圧縮パラメータ算出回路5では、画像全体の圧縮率が目標とする圧縮率以下におさまるように、パラメータ(しきい値)を決定する。

【0038】以上の画像解析処理が終了後、画像圧縮処理を開始する。入力画像はラスターブロック変換回路6において4×4画素のブロック単位に分割され、圧縮モード切替え回路7に送られる。圧縮モード切替え回路7は、最適圧縮パラメータ算出回路5から得られるしきい値情報を元に、各々のブロックに対してどの圧縮方式を適用するのかを、複数の圧縮方式の中から選択する。本実施形態において、圧縮モード切替え回路7は、選択可能な圧縮方式として、ブロック1色近似圧縮モード、ブロックランレングス圧縮モード、ブロック内2色近似圧縮モード、ブロック内4色近似圧縮モードの4つのモードを持つ。
【0039】符号データ合成回路8は、1ブロック当たりの符号データを1つの単位とし、その符号データの前に、選択された圧縮回路を示すタグ信号を付加する。そして、4つの圧縮回路から出力された符号データを1つのビットストリームに並べて符号データとして出力する。

【0042】画像構造解析回路4は、画像解析バッファ3内のデータを参照し、画像中に含まれる構造を解析する。すなわち、画像中に含まれる、異なる画像特性を持つ領域、例えば、文字/線画領域、CG領域、読み取り画像領域を識別し、その領域の占める座標、領域中の最大階調数、複雑度等を判定し、さらに各領域ごとに占める面積比を算出する。

【0051】第3に、ブロック内2色近似圧縮モードは、ブロック全体を2色で近似表現する圧縮方式である。該当ブロック内の色数をカウントし、その色数が2以下の場合には、その2色がブロックの代表色となる。ブロック内の色数が3以上の場合には、ブロック内の画素値を2色に近似して表現を行なう。
【0052】ブロック内の画素値を2色で近似して表現する方法は、既存の限定色手法、例えばメディアンカット法等を適応することが可能である。ブロック内2色近似圧縮モードの符号データ量は、ブロックの代表値×2と、各画素がどちらの代表値になるかを示す画素フラグからなる。

【0060】符号データ合成回路8は、1ブロック当たりの符号データを1つの単位とし、その符号の前に選択された圧縮回路を示すタグ信号を付加する。そして、4つの圧縮回路から出力された符号データを1つのビットストリームに並べて符号データとして出力する。

(3-3)引用発明
引用文献1に記載された発明を以下に認定する。

a.符号化回路
引用文献1には、段落0024,0035,0036,0038,0039に記載されるように、異なる画像特性を持つ小領域が混在する画像データに対して、領域毎に最適な圧縮処理を選択する画像処理装置の符号化回路が記載されており、符号化回路は、画像解析回路、ラスターブロック変換回路、圧縮モード切替え回路、4つの圧縮回路、及び符号データ合成回路を備え、入力された画像データを圧縮した符号データを出力する。
すなわち、引用文献1には、『画像データを圧縮して符号データを出力する符号化回路』に関する発明が記載されている。

b.画像解析回路
引用文献1の段落0035,0042の記載によれば、符号化回路が備える画像解析回路は、画像データの画像中に含まれる構造を解析する。具体的には、異なる画像特性を持つ領域を識別し、その領域の占める座標、領域中の最大階調数、複雑度等を判定する。
すなわち、引用文献1には、『符号化回路は画像解析回路を備え、画像解析回路は、画像データの画像中に含まれる異なる画像特性を持つ領域について最大階調数、複雑度等を解析』することが記載されている。

c.圧縮回路の選択
引用文献1の段落0035,0036,0038,0039の記載によれば、入力された画像データは、ラスターブロック変換回路によりブロックに分割される。圧縮モード切替え回路は、画像解析回路からのしきい値情報を元に、各々のブロックに対して、ブロック1色近似圧縮モード、ブロックランレングス圧縮モード、ブロック内2色近似圧縮モード、ブロック内4色近似圧縮モードの4つのモードのどの圧縮方式を適用するのかを選択する。そして、符号データ合成回路は、それぞれのモードの圧縮回路から出力された符号データをビットストリームに並べて出力する。
すなわち、引用文献1には、『画像解析回路が実行する画像データに関する解析に応じて、画像データのブロックを、4つの圧縮回路のいずれかに導いて符号データに圧縮』すること、及び『4つの圧縮回路は、それぞれ、ブロック1色近似圧縮モード、ブロックランレングス圧縮モード、ブロック内2色近似圧縮モード、ブロック内4色近似圧縮モードの圧縮方式を実行するように構成され』ていることが記載されている。

d.ブロック内2色近似圧縮回路
引用文献1の段落0051,0060の記載によれば、4つの圧縮回路のうちのブロック内2色近似圧縮回路は、メディアンカット法等の既存の限定色手法により、ブロック内の画素値を2色で近似して2色の代表色により表現するものである。
そして、圧縮により生成される符号データは、選択された圧縮回路を示すタグ信号、ブロックの代表値×2、及び各画素がどちらの代表値になるかを示す画素フラグからなる。
すなわち、引用文献1には、『4つの圧縮回路のうちのブロック内2色近似圧縮回路は、メディアンカット法等の既存の限定色手法により、ブロック内の画素値を2色で近似し、2色の代表値を求め、各画素がどちらの代表値になるかを示す画素フラグを生成し、圧縮により生成される符号データは、2色の代表値と画素フラグを含む』ことが記載されている。

e.まとめ
以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)画像データを圧縮して符号データを出力する符号化回路であって、
(b)符号化回路は画像解析回路を備え、画像解析回路は、画像データの画像中に含まれる異なる画像特性を持つ領域について最大階調数、複雑度等を解析し、
(c)画像解析回路が実行する画像データに関する解析に応じて、画像データのブロックを、4つの圧縮回路のいずれかに導いて符号データに圧縮し、
4つの圧縮回路は、それぞれ、ブロック1色近似圧縮モード、ブロックランレングス圧縮モード、ブロック内2色近似圧縮モード、ブロック内4色近似圧縮モードの圧縮方式を実行するように構成され、
(d)4つの圧縮回路のうちのブロック内2色近似圧縮回路は、メディアンカット法等の既存の限定色手法により、
・ブロック内の画素値を2色で近似し、
・2色の代表値を求め、
・各画素がどちらの代表値になるかを示す画素フラグを生成し、
圧縮により生成される符号データは、2色の代表値と画素フラグを含む
(e)符号化回路。

(3-4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.本願補正発明の構成(A)及び(G)と引用発明の構成(a)及び(e)との対比
引用発明の「画像データ」、「圧縮」、「符号データ」及び「符号化回路」は、それぞれ本願補正発明の「データ」、「符号化」、「符号化データ」及び「エンコーダ」に相当するものであり、引用発明の構成(a)及び(e)は、本願補正発明の構成(A)及び(G)と一致する。

b.本願補正発明の構成(B)と引用発明の構成(b)との対比
引用発明の「画像解析回路」は、符号化されるデータを解析するものであるから本願補正発明の「解析ユニット」に相当する。
そして、引用発明の画像解析回路の画像データの最大階調数を解析することは、画像データの画素のデータ値を解析することであり、また、画像データの複雑度が空間周波数により表現されることは周知の事項であるから、画像データの複雑度を解析することは、画像データの空間周波数情報を解析することといえる。
よって、引用発明の構成(b)は、本願補正発明の構成(B)と『前記エンコーダ(10)は解析ユニット(100)を備え、前記解析ユニット(100)は、前記符号化されるデータ(20,D1)における複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析し』というものである点で一致する。
ただし、解析ユニットの複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析する動作に関し、本願補正発明は、符号化されるデータの「一つ以上の部分(40)」における解析であるのに対し、引用発明は、画像データにおける解析である点で、両者は相違する。

c.本願補正発明の構成(C)と引用発明の構成(c)との対比
引用発明の「画像データのブロック」は、符号化されるデータの多数の部分であり、本願補正発明の「符号化されるデータの一つ以上の部分」に相当する。また、引用発明の「圧縮回路」は、本願補正発明の「符号化ユニット」に相当する。
引用発明の4つの圧縮回路は、それぞれ、ブロック1色近似圧縮モード、ブロックランレングス圧縮モード、ブロック内2色近似圧縮モード、ブロック内4色近似圧縮モードの圧縮方式を実行するように構成されているから、互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しているものである。
よって、引用発明の構成(c)は、本願補正発明の構成(C)と『前記解析ユニット(100)が実行する解析に応じて、前記一つ以上の部分(40)を一つ以上の符号化ユニット(110)に導き、前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化して前記符号化データ(70,E2)を生成でき;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化する際に互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しうるように構成され;』というものである点で一致する。
ただし、解析ユニットの解析対象が、本願補正発明と引用発明とでは異なることは、上記bにおいて述べたとおりである。

d.本願補正発明の構成(D)について
引用発明は、圧縮回路が出力する符号データを更に符号化する構成を有しておらず、本願補正発明の構成(D)を備えていないものである。

e.本願補正発明の構成(E)と引用発明の構成(d)との対比
引用発明の4つの圧縮回路のうちのブロック内2色近似圧縮回路は、本願補正発明の「前記一つ以上の符号化ユニット(110)のうち少なくとも一つの符号化ユニット(110(i))」に相当する。
引用発明のブロック内2色近似圧縮回路の「ブロック内の画素値を2色で近似」することは、一つ以上の部分に存在する複数のデータ値を、データ値に基づき二つのセットに分類することといえ、本願補正発明の「受信した前記一つ以上の部分(40)のうち少なくとも1つに存在する複数のデータ値を、前記複数のデータ値に基づき少なくとも二つのセットに分類し」という構成に相当する。
同じく「2色の代表値を求め」ることは、2色のそれぞれに近似される複数の画素値を代表する代表値を求めることであり、その代表値は本願補正発明の「要約値」に相当するものであるから、本願補正発明の「前記分類した前記データ値の前記セットの少なくとも1つにつき、該セットに含まれる前記データ値に基づいて、少なくとも一つの要約値を計算し」という構成に相当する。
さらに、「各画素がどちらの代表値になるかを示す画素フラグを生成」することは、2色に近似される複数の画素値のブロック内の空間配置を示すものであり、本願補正発明の「空間マスク」に相当するものであるから、本願補正発明の「前記セットの各々につき、該セットに分類された前記データ値の空間配置を示す空間マスク(320)を作成する」という構成に相当する。
そして、引用発明は、要約値及び空間マスクに相当する代表値及び画素フラグが、圧縮により生成される符号データに含まれているから、本願補正発明の「前記空間マスク(320)および前記要約値は前記符号化データ(70,E2)に含まれ」という構成に相当する。
したがって、引用発明の構成(d)は、本願補正発明の構成(E)と一致するものである。

f.本願補正発明の構成(F)について
引用発明は、代表値を求める際にレート歪み最適化を利用するとは特定されていないので、本願補正発明の構成(F)を備えていないものである。

g.まとめ
上記aないしfの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
データ(20,D1)を符号化して対応する符号化データ(70,E2)を生成するエンコーダ(10)であって、
前記エンコーダ(10)は解析ユニット(100)を備え、前記解析ユニット(100)は、前記符号化されるデータ(20,D1)における複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析し、前記解析ユニット(100)が実行する解析に応じて、前記一つ以上の部分(40)を一つ以上の符号化ユニット(110)に導き、前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化して前記符号化データ(70,E2)を生成でき;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)は前記一つ以上の部分(40)を符号化する際に互いに異なる符号化アルゴリズムを利用しうるように構成され;
前記一つ以上の符号化ユニット(110)のうち少なくとも一つの符号化ユニット(110(i))は、
・ 受信した前記一つ以上の部分(40)のうち少なくとも1つに存在する複数のデータ値を、前記複数のデータ値に基づき少なくとも二つのセットに分類し、
・ 前記分類した前記データ値の前記セットの少なくとも1つにつき、該セットに含まれる前記データ値に基づいて、少なくとも一つの要約値を計算し、
・ 前記セットの各々につき、該セットに分類された前記データ値の空間配置を示す空間マスク(320)を作成する、
ように構成され、ここで前記空間マスク(320)および前記要約値は前記符号化データ(70,E2)に含まれる;
エンコーダ(10)。」

[相違点1]
解析ユニットの複数の異なるデータ値と空間周波数情報を解析する動作に関し、本願補正発明は、符号化されるデータの「一つ以上の部分(40)」における解析であるのに対し、引用発明は、画像データにおける解析である点。

[相違点2]
引用発明は、本願補正発明の「出力符号化ユニット(60)は、前記一つ以上の符号化ユニット(110)から符号化出力データを受信し、前記エンコーダ(10)から符号化データ(70,E2)を生成するために前記符号化出力データを更に符号化するように構成され;」という構成を備えていない点。

[相違点3]
引用発明は、本願補正発明の「前記符号化データ(70,E2)に含まれる前記要約値は、レート歪最適化を利用して選択される;」という構成を備えていない点。

(3-5)相違点の判断
a.相違点1について
引用発明において、画像解析回路は画像データ全体を対象に解析を行うものであり、画像データのブロックごとに解析を行うものではないが、その画像解析回路の画像解析の結果に応じて行なわれる画像データに対する圧縮方式の選択は、画像データのブロック単位で行なわれるものである。
そして、このような画像データのブロック単位で必要とされる画像の解析を、画像全体を対象に解析を行うものに代えて画像データのブロックごと、すなわち「一つ以上の部分」について解析を行うものに変更することは、当業者が適宜なし得ることであり、そうすることで、相違点1に係る、符号化されるデータの「一つ以上の部分(40)」における解析を行うという構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

b.相違点2について
画像データに対し画像の特性を利用した画像圧縮を行った後に、圧縮されたデータに対して更に算術符号等の2次圧縮を行う技術は、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である特開平11-164150号公報の段落0012等に開示されるように周知の技術であり、引用発明において、圧縮された符号データに対し2次圧縮、すなわち更なる符号化を行う処理手段を出力段に追加し、相違点2に係る「出力符号化ユニット(60)は、前記一つ以上の符号化ユニット(110)から符号化出力データを受信し、前記エンコーダ(10)から符号化データ(70,E2)を生成するために前記符号化出力データを更に符号化するように構成され;」という構成を設けることは、当業者が容易になし得ることである。

c.相違点3について
引用発明は、ブロック内2色近似圧縮を、メディアンカット法等の既存の限定色手法で行うものであり、上記(3-2)に摘示した引用文献1の段落0052には、「ブロック内の画素値を2色で近似して表現する方法は、既存の限定色手法、例えばメディアンカット法等を適応することが可能である。」と記載されていることから、引用発明の既存の限定色手法には種々の手法が存在するものといえる。

そして、前置報告書において提示された「EDWARD J. DELP, et al., “Image Compression Using Block Truncation Coding”, IEEE TRANSACTIONS ON COMMUNICATIONS, SEP. 1979, Vol.COM-27, NO.9, pp.1335-1342」(以下「引用文献3」という)には、次に掲げる事項が記載されている。
なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。

「II. BASIC BTC ALGORITHM
For the study presented here the image will be divided into 4 X 4 pixel blocks, and the quantizer will have 2 levels. If one uses the classical quantization design of Max [9] which minimizes the mean square error, one must know, a priori, the probability density function of the pixels in each block. This same knowledge is also required for the absolute error fidelity criteria of Kassam [10]. Since in general it is not possible to find adequate density function models for typical imagery, we have used nonparametric quantizers for our coding schemes. Nonparametric quantizer design that minimizes either mean square error (denoted MSE) or mean absolute error (denoted MAE) will be presented in Section III. In this section we present the design of a nonparametric quantizer that preserves sample moments (denoted MP); the design of a parametric MP quantizer is presented in [11].」(1336頁左欄6?21行)
(II.基本BTCアルゴリズム
ここで提示する研究においては、画像は4×4ピクセルのブロックに分割され、量子化器は、2つのレベルを持つことになります。平均二乗誤差を最小にするMax[9]の古典的な量子化設計を使用している場合は、演繹的に各ブロック内の画素の確率密度関数を知っている必要があります。この同じ情報は、Kassam[10]の絶対値誤差の忠実な基準のためにも必要とされます。一般的に、典型的なイメージにおいて十分な密度関数モデルを見つけることはできないので、我々は符号化方式にノンパラメトリック量子化器を使用しています。平均二乗誤差(MSEと記す)または平均絶対値誤差(MAEと記す)のいずれかを最小化するノンパラメトリック量子化器の設計は、セクションIIIに提示されます。このセクションでは、サンプルのモーメントを保存する(MPと記す)ノンパラメトリック量子化器の設計を提示します。パラメトリックMP量子化器の設計は、[11]に提示されています。)

「III. OTHER NONPARAMETRIC QUANTIZER SCHEMES
As mentioned in Section II, other techniques can be used to design a one bit quantizer. Use of rate-distortion theory seems theoretically attractive but somewhat impractical for real images [14]-[15]. In this section we will discuss the use of the minimum mean square error (MSE) and minimum mean absolute error (MAE) fidelity criteria for one-bit nonparametric quantizers.」(1337頁左欄1?8行)
(III.その他のノンパラメトリック量子化方式
セクションIIで述べたように、他の技術が、1ビット量子化器の設計に使用することができます。レート歪み理論の使用は、理論上魅力的であるが、実際の画像には、やや非現実的と思われます[14]-[15]。このセクションでは、1ビット量子化器のノンパラメトリックのための最小平均二乗誤差(MSE)と最小平均絶対値誤差(MAE)の忠実な基準の使用について説明します。)

これらの記載によれば、引用文献3には、画像の4×4ピクセルのブロックのサンプルを2つのレベルに量子化するノンパラメトリックの1ビット量子化の方式として、少なくともMP、最小平均二乗誤差(MSE)、最小平均絶対値誤差(MAE)の3つの方式が示されており、さらに、1ビット量子化器の設計にレート歪み理論を使用することは、実際の画像への適用はやや非現実的であるが、理論上は可能であることが示されている。
そして、引用文献3に記載される画像の4×4ピクセルのブロックのサンプルを2つのレベルに量子化する1ビット量子化は、引用発明のブロック内2色近似圧縮と同じ技術であり、この2つのレベルは、本願補正発明の「要約値」に相当するものである。
ここで、レート歪み理論の使用について検討すると、引用文献3の公開時である1979年当時においては計算負荷の高いレート歪み理論の使用は困難なものであったが、本件出願の優先日の2012年10月22日には、計算機の能力向上により、レート歪み理論の使用は普通に実施され得るものといえる。

そうすると、引用発明において、引用文献3に記載される1ビット量子化器の設計にレート歪み理論を使用する技術を適用し、既存の限定色手法としてレート歪み理論を使用した手法を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、それにより、相違点3に係る「前記符号化データ(70,E2)に含まれる前記要約値は、レート歪最適化を利用して選択される;」という構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

(3-6)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(3-7)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、引用文献3に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成27年6月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成26年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(補正前の請求項1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、並びに、その記載事項は、上記第2の2(3)(3-2)に記載したとおりであり、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2の2(3)(3-3)に認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2の1及び2(1)で摘示した本願補正発明に追加された限定事項(補正事項2)を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の2(3)(3-4)に摘示した相違点1及び相違点2が存在することとなり、相違点1及び相違点2は上記第2の2(3)(3-5)a及びbに記載したとおり、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載される技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-08 
結審通知日 2016-09-09 
審決日 2016-09-29 
出願番号 特願2013-214397(P2013-214397)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
戸次 一夫
発明の名称 エンコーダ,デコーダおよびその方法  
代理人 川守田 光紀  
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