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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1325491
審判番号 不服2016-2149  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-12 
確定日 2017-02-22 
事件の表示 特願2011-550324号「空間照明用のLED電球」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日国際公開、WO2010/096498、平成24年 8月 9日国内公表、特表2012-518254号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)2月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年2月17日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年2月16日に手続補正書が提出され、同年12月18日付けで1回目の拒絶理由が通知され、平成26年6月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月28日付けで2回目の拒絶理由通知(最後)が通知され、平成27年5月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月30日付けで補正の却下の決定がされると共に拒絶査定がされ、平成28年2月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年3月16日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年2月12日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年2月12日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年2月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、上記第1で述べたように、平成27年5月1日にされた手続補正は却下されたため、本件補正に対する補正前の特許請求の範囲は、平成26年6月24日にされた手続補正により補正されたものである。
そして、補正前の請求項1と、補正後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(補正前の請求項1)
「照明装置であって、
フレームと、
前記フレームに位置する面部であって、平面領域を有するものである、前記面部と、
前記面部に連結されたパネルであって、前記平面領域と同じパネル領域を有するものである、前記パネルと、
前記パネルに取り付けられたLED光源と、
ヒートシンクであって、このヒートシンクは前記フレームから離間して配置されて、前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも1インチ(25.4ミリメートル)離間して配置されるものである、前記ヒートシンクと、
前記フレームに接続された近位端部と前記ヒートシンクに接続された遠位端部とを有する伝熱管と、
前記ヒートシンクに近接して配置され、外部電源に接続するように構成された電子駆動部と、
前記電子駆動部を前記複数のLED光源に接続する第1および第2の導電線と
を有する照明装置。」

(補正後の請求項1)
「照明装置であって、
フレームと、
前記フレームに位置する面部であって、平面領域を有するものである、前記面部と、
前記面部に連結されたパネルであって、前記平面領域と等しいパネル領域を有するものである、前記パネルと、
前記パネルに取り付けられたLED光源と、
ヒートシンクであって、このヒートシンクは前記フレームから離間して配置されたものであり、これにより前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも前記ヒートシンクとフレーム間の距離だけ離間して配置されるものである、前記ヒートシンクと、
前記フレームに接続された近位端部と前記ヒートシンクに接続された遠位端部とを有する伝熱管と、
前記ヒートシンクに近接して配置され、外部電源に接続するように構成された電子駆動部と、
前記電子駆動部を前記複数のLED光源に接続する第1および第2の導電線と
を有する照明装置。」

2 補正の適否
(1)補正の目的の適否について
本件補正により、補正前の請求項1の「前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも1インチ(25.4ミリメートル)離間して配置される」という事項を、補正後の請求項1においては「前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも前記ヒートシンクとフレーム間の距離だけ離間して配置される」という事項に補正している。(下線は当審で付加した。以下同様。)
そして、上記補正された審判請求書において、「旧請求項1では、本願発明のヒートシンクと複数のLED光源が少なくとも所定の距離だけ『離間』していることを説明するために、「このヒートシンクは前記フレームから離間して配置されて、前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも1インチ(25.4ミリメートル)離間して配置される」と記載していました。しかしながら、当該記載ではヒートシンクと複数のLED光源との間の距離関係を単に数値により示していたため、その技術的意義が不明確となっておりました。旧請求項1の当該記載は、旧請求項1の「少なくとも1インチ」という事項は、段落0013の記載から導かれる数値範囲の一部として記載したものでありますが、この事項は臨界的意義を示すものではなく、上述したように、単にこのヒートシンクと複数のLED光源が『離間』していることを説明するために記載したものであります。従いまして、上記本願発明の技術的意義を考慮すれば、新請求項1に係る発明の上記補正は、実質的に請求の範囲を拡張するものではなく、ヒートシンクの構成を適切により限定するものであり、すなわち限定的減縮に当たると思量致します。」と主張している。
しかしながら、単にヒートシンクと複数のLED光源が離間していることを特定したいのであればそのように記載すればよいことであり、国際出願日における特許請求の範囲の翻訳文の請求項1においても、「前記フレームに取り付けられた複数のLED光源と、前記フレームから離間して配置されたヒートシンクと」との記載により、すでにヒートシンクと複数のLED光源が離間していることが間接的に特定されているのであるが、本件補正前の請求項1において、実際には、さらに加えて、少なくとも離間する具体的な距離である「1インチ(25.4ミリメートル)」という事項を特定していたものである。そして、本件補正により当該事項を削除しているため、本件補正後の請求項1に係る発明においては、当該距離は1インチ未満も含む任意のものでよいことになり、本件補正の請求項1に係る補正は、実質的に特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、本件補正前の請求項1において、「1インチ(25.4ミリメートル)」という事項は不明確とはいえないので、同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。
さらに、同項第1号の請求項の削除を目的とするものとも、同項第3号の誤記の訂正を目的とするものともいえない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げられたいずれの事項も目的としない補正を含むものである。

(2)独立特許要件について
ア 上記(1)で述べたとおり、本件補正は適法になされたものではないが、念のため、仮に本件補正後の請求項1に係る本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項を追加するものでないとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

イ 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
(ア)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の優先日前に頒布された特開2004-296245号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 「【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1(a)は、本実施形態のLEDランプ100の斜視図である。図1(b)は、本実施形態のLEDランプ100の断面図である。」

b 「【0016】
LED素子1は、チップ型のもので、例えば青色LEDと蛍光体用いた白色LEDである。支持部材2は、たとえばアルミ等の材料で略円筒形状に形成されてなるもので、その基端部2aが、口金3に接続されている。口金3は、一般の電球の口金に用いられるもので、鉄等の材料により、ネジ溝が形成されてなるものである。そして、支持部材2の口金3近傍には、電源部4が設けられている。電源部4は、口金3に印加される商用電源からの交流電圧を、直流電圧に変換してLED素子1に印加するもので、支持部材2の外側に向かって広がる傾斜面を有する電源基板ボックス4a内に、支持部材2の軸に対して直交するように設置される電源基板4bを収納している。」

c 「【0018】
・・・ホルダー6は、LED素子1が複数実装された実装基板7を保持するもので、高熱伝導率の材料により、支持部材2が貫通する孔を有して、略六角柱形状に形成されるものである。そして、ホルダー6の支持部材2の軸に平行に位置する6つの各長方形面には、略長方形の実装基板7が配設されている。実装基板7は、略長方形であり、複数のLED素子1が各実装基板7につき5個、支持部材2の軸に沿って実装されている。また、電源部4から各LED素子1に電力を供給するため、実装基板7と口金3を接続する配線(図示はしない)が、支持部材2内に設けられている。」

d 「【0019】
バルブ8は、実装基板7を収納するもので、透光性の樹脂材料によりで略球形に形成され、バルブ壁に対向する一対の孔8aを有し、一対の孔8aには、支持部材2が貫通している。・・・」

e 「【0020】
次に本実施形態のLEDランプ100の放熱作用について説明する。LEDランプ100が、支持部材2の先端部2bを垂下させて照明器具のソケット(図示はしない)に装着されることにより、商用電源に電気的に接続されると、電源部4は、商用電源から受けた交流電圧を直流電圧に変換して、各LED素子1に電力を供給し、これにより、各LED素子1は発光する。ここで、LED素子1において光に変換されなかった電力は、熱損失となる。そして、この熱は、実装基板7及びホルダー6を介して支持部材2に流れる。ここで、支持部材2内に存在する空気は、支持部材2に流れた熱により、暖められることにより浮力が生じ、口金3方向に向かう空気の流れが発生する。そしてこの空気の流れは、ガイド2dに突き当たり、ガイド2dの凸部によって、支持部材2の軸方向に直交するように流れの方向を変える。そして、空気の流れは、放熱孔2cを通って、LEDランプ100の外部に放出される。また、支持部材2の先端部2bには、外部から新たな空気が流入する。この空気の流れにより、支持部材2内部の熱は、放熱孔2cから放出される。これにより、LED素子1が発生する熱は、LEDランプ100の外部に放出されることになり、LED素子1がバルブ8に覆われていても、LED素子1の温度上昇を抑制することができる。」

f 「【0021】
・・・
(第2の実施形態)
第2の実施形態を図2に基づいて説明する。図2(a)は、本実施形態のLEDランプ100の斜視図である。図2(b)は、本実施形態のLEDランプ100の断面図である。」

g 「【0022】
本実施形態は、支持部材2の表面に放熱フィン10を設けた点が第1の実施形態と異なり、他は同じである。すなわち、支持部材2に設けた放熱孔2cとLED素子1が実装されたのホルダー6の間に、アルミ等の金属からなり、支持部材2の表面から放射状に広がる複数枚の羽を有する放熱フィン10を設けているのである。この羽の形状は略四辺形であり、その面は支持部材2の軸に平行に位置するように配設されている。」

h 「【0025】
・・・
(第3の実施形態)
第3の実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、本実施形態のLEDランプ100の断面図である。」

i 「【0026】
本実施形態は、支持部材としてヒートパイプ30を用いた点が第2の実施形態と異なり、他は同じである。ヒートパイプ30は、両端を封じたパイプに、冷却液が封入されてなるものである。ここで、LEDランプ100は、口金3を下方向を向けて設置されている。」

j 「【0027】
第1の実施形態と同様に、LED素子1が発生した熱は、ホルダー6を介してヒートパイプ30に流れる。ホルダー6近傍に存在する冷却液は、LED素子1が発生する熱を受けて蒸発し、その蒸気はヒートパイプ30の先端部30bに移動する。先端部30bは、外部の空気により冷却された状態にあるため、先端部30bに移動した蒸気は、その熱を奪われて凝縮され冷却液に戻り、ホルダー6近傍に移動する。このサイクルを繰り返すことにより、LED素子1が発生する熱は、外部に放熱され、これによりLED素子1の温度上昇は抑制される。・・・」

(イ)刊行物に記載された発明
a 上記(ア)の記載事項に加え、【図3】に係る「第3の実施形態」とは、支持部材としてヒートパイプ30を用いた点以外は同じとされているところの「第2の実施形態」を説明する【図2】の記載より、「実装基板7」は「ホルダー6」の「各長方形面」よりも小さく形成されていることが看取できる。

b 同様に、【図3】の記載より、「放熱フィン10」は「ホルダー6」から離間して配置されていることも看取でき、「LED素子1」は「実装基板7」上に実装されるものであるから、当然、複数のLED素子1は放熱フィン10から少なくとも放熱フィン10とホルダー6間の距離だけ離間して配置されていることは明らかといえる。また、「ヒートパイプ30」は「ホルダー6」に接続された部分と「放熱フィン10」に接続された部分とを有することも看取でき、さらに、「電源部4」は「放熱フィン10」に近接して配置されていることも看取できる。

c 以上のことから、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「LEDランプ100であって、
略六角柱形状に形成されたホルダー6と、
前記ホルダー6の、ヒートパイプ30の軸に平行に位置する6つの各長方形面には、前記各長方形面よりも小さく形成された略長方形の実装基板7が配設され、
前記実装基板7に複数実装されたLED素子1と、
放熱フィン10であって、この放熱フィン10は前記ホルダー6から離間して配置されたものであり、これにより前記複数のLED素子1が前記放熱フィン10から少なくとも前記放熱フィン10とホルダー6間の距離だけ離間して配置されるものである、前記放熱フィン10と、
前記ホルダー6に接続された部分と前記放熱フィン10に接続された部分とを有し、実装基板7を収納するバルブ8のバルブ壁に対向する一対の孔8aを貫通するヒートパイプ30と、
前記放熱フィン10に近接して配置され、商用電源に接続するように構成された電源部4と、
前記電源部4から前記複数のLED素子1に電力を供給する配線と
を有するLEDランプ100。」

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「LEDランプ100」は本願補正発明の「照明装置」に相当し、以下同様に、「略六角柱形状に形成したホルダー6」及び「ホルダー6」は「フレーム」に、「LED素子1」は「LED光源」に、「放熱フィン10」は「ヒートシンク」に、「ヒートパイプ30」は「伝熱管」に、「商用電源」は「外部電源」に、「配線」は「導電線」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「前記ホルダー6の、ヒートパイプ30の軸に平行に位置する6つの各長方形面」は、本願補正発明の「前記フレームに位置する面部であって、平面領域を有するものである、前記面部」に相当するといえる。

(ウ)一般にパネルとは板状の部材を示す用語であり、引用発明の「実装基板7」も板状であることは明らかであるので、本願補正発明の「パネル」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「前記各長方形面よりも小さく形成された略長方形の実装基板7が配設され」と、本願補正発明の「前記面部に連結されたパネルであって、前記平面領域と等しいパネル領域を有するものである、前記パネルと」とは、「前記面部に連結されたパネルと」の限度で一致するといえる。

(エ)引用発明の「前記実装基板7に複数実装されたLED素子1と」は、本願補正発明の「前記パネルに取り付けられたLED光源と」を充足するといえる。

(オ)引用発明の「電源部4」は上記イ(ア)bに示されるように、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換してLED素子1に印加するものであり、そのための電源基板4bを有するものであるから、商用電源用のLEDランプ(照明装置)の技術常識を考慮すれば、本願補正発明の「電子駆動部」に相当することは明らかといえる。
してみれば、引用発明の「前記電源部4から前記複数のLED素子1に電力を供給する配線と」と、本願補正発明の「前記電子駆動部を前記複数のLED光源に接続する第1および第2の導電線と」とは、「前記電子駆動部を前記複数のLED光源に接続する導電線と」の限度で一致するといえる。

(カ)以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「照明装置であって、
フレームと、
前記フレームに位置する面部であって、平面領域を有するものである、前記面部と、
前記面部に連結されたパネルと、
前記パネルに取り付けられたLED光源と、
ヒートシンクであって、このヒートシンクは前記フレームから離間して配置されたものである、前記ヒートシンクと、
伝熱管と、
前記ヒートシンクに近接して配置され、外部電源に接続するように構成された電子駆動部と、
前記電子駆動部を前記複数のLED光源に接続する導電線と
を有する照明装置。」

[相違点1]
「パネル」に関し、本願補正発明は、「前記平面領域と等しいパネル領域を有するものである」のに対し、引用発明は、「各長方形面よりも小さく形成された略長方形」のものである点。

[相違点2]
「ヒートシンクは前記フレームから離間して配置された」ことに関し、本願補正発明は、「これにより前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも前記ヒートシンクとフレーム間の距離だけ離間して配置されるものである」のに対し、引用発明は、当該事項の特定がない点。

[相違点3]
「伝熱管」に関し、本願補正発明は、「前記フレームに接続された近位端部と前記ヒートシンクに接続された遠位端部とを有する」ものであるのに対し、引用発明は、「前記ホルダー6に接続された部分と前記放熱フィン10に接続された部分とを有し、実装基板7を収納するバルブ8のバルブ壁に対向する一対の孔8aを貫通する」ものである点。

[相違点4]
「導電線」に関し、本願補正発明は、「第1および第2の」というものであるのに対し、引用発明は、当該事項を有するのかどうか明らかでない点。

相違点の判断
[相違点1]について
(ア)引用発明の「実装基板7」(パネル)も、上記イ(ア)dに示されるように、「LED素子1」(LED光源)が発生する熱を、当該「実装基板7」(パネル)から「ホルダー6」(フレーム)に伝熱するものであり、その熱はさらに「ホルダー6」(フレーム)から「ヒートパイプ30」(伝熱管)に伝熱されるものである。
そして、引用発明においても「LED素子1」が発生する熱の放熱を課題としていることから、一層の放熱性向上を図った方が望ましいことは当業者にとり明らかである。そして、「実装基板7」と「ホルダー6」との接触面積を増やせば伝熱性が向上することは自明のことであるから、最大限に接触面積を増やすべく引用発明の「ホルダー6」の「長方形面」と「略長方形」の「実装基板7」とを等しい大きさとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。

(イ)したがって、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
(ア)本願補正発明の「少なくとも前記ヒートシンクとフレーム間の距離だけ離間して配置される」ということは、ヒートシンクとフレーム間の距離よりも離間したものも含んでいる。

(イ)してみると、引用発明の「LED素子1」(LED光源)も、「放熱フィン」(ヒートシンク)と「ホルダー6」(フレーム)間の距離よりも離間した位置に配置されているので、引用発明も実質的に相違点2に係る本願補正発明の事項を有しているといえる。

[相違点3]について
(ア)本願補正発明における「遠位端部」について検討するに、発明の詳細な説明や図面に具体的に開示されるのは、本願の【図2】に係る実施形態においては符号122で示される箇所であり、同様に【図4】に係る実施形態においては符号222で、【図6】に係る実施形態においては符号322で示される箇所である。そして、当該箇所はいずれも「伝熱管」が「ヒートシンク」に接続された部分であり、かつ、「伝熱管」の「LED光源」から遠い側の「端部」を示していると解される。
一方、引用発明における「放熱フィン10に接続された部分」について検討するに、「第3の実施形態」の断面図である刊行物1の【図3】では、「第1の実施形態」の断面図である【図1】や「第2の実施形態」の断面図である【図2】の記載とは異なり、「ヒートパイプ30」の「LED素子1」から遠い側の「端部」が「電源部4」まで及んでいるようには記載されていないものの、詳細は明らかではない。
しかしながら、【図3】の記載からでは、引用発明の「放熱フィン10に接続された部分」が「ヒートパイプ30」の「端部」であるとまではいえないとしても、「第3の実施形態」は、支持部材を「ヒートパイプ30」としたことにより、「ヒートパイプ30」(伝熱管)からの熱を「放熱フィン10」(ヒートシンク)に伝熱させるものであるから、両部材間の伝熱の観点からは、当該部分より先に延伸させる必要は必ずしもなく、当該部分を「ヒートパイプ30」の「LED素子1」(LED光源)から遠い側の「端部」すなわち「遠位端部」とすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た程度のことである。

(イ)また、本願補正発明における「近位端部」について検討するに、発明の詳細な説明や図面に具体的に開示されるのは、本願の【図2】に係る実施形態においては符号120で示される箇所であり、同様に【図6】に係る実施形態においては符号320で示される箇所である。なお、【図4】に係る実施形態においては、段落【0017】に「近位端部220」の記載があるものの、図面においては当該符号の記載がないが、【図2】及び【図6】に示されるものと同様位置の箇所と解するのが相当である。そして、当該箇所はいずれも「伝熱管」が「フレーム」に接続された部分であり、かつ、「伝熱管」の「LED光源」から近い側の「端部」を示していると解される。
一方、引用発明における「ホルダー6に接続された部分」は、「ヒートパイプ30」の「端部」ではなくいわば中間位置となる箇所であるが、「第3の実施形態」は、支持部材を「ヒートパイプ30」としたことにより、「ホルダー6」(フレーム)からの熱を「ヒートパイプ30」(伝熱管)に伝熱させるものであるから、両部材間の伝熱の観点からは、「ヒートパイプ30」を当該部分より先に延伸させる必要は必ずしもなく、当該部分を「ヒートパイプ30」の「LED素子1」(LED光源)から近い側の「端部」すなわち「近位端部」とすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た程度のことである。

(ウ)したがって、引用発明において、相違点3に係る本願補正発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点4]について
(ア)引用発明の「配線」(導電線)は、上記イ(ア)b、cで示したように、「商用電源」(外部電源)からの交流電圧を直流電圧に変換したものを「LED素子1」(LED光源)に送るものであるので、少なくともプラス側とマイナス側の2本が必要である。そして、複数の「LED素子1」に送る電流を、「電源部4」から「LED素子1」ごとに個々に配線を設けて分けて送るか、まとめて送るか、あるいはそれら手段を併用するかは、当業者であれば所望により適宜選択し得たことであって、そのうちまとめて送ることを選択して2本、すなわち「第1」と「第2」の「配線」を設けるようにすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た程度のことである。

(イ)したがって、引用発明において、相違点4に係る本願補正発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果について検討しても、引用発明から当業者が予測できる範囲のものといえる。

オ 独立特許要件についてのまとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)むすび
上記(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記(2)で検討したとおり、仮に本件補正が限定的減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項を追加するものではないとしても、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年6月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載されたとおりである。

第4 当審の判断
1 本願発明は、平成26年6月24日にされた手続補正により、「前記複数のLED光源が前記ヒートシンクから少なくとも1インチ(25.4ミリメートル)離間して配置されるものである」という事項を含むものとなっている。そして、同日提出の意見書において、補正の根拠箇所として、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の段落【0013】を挙げている。

2 そこで、当該段落を検討するに、「一実施形態において、前記伝熱管は、長さ約2?約3インチ、直径約1/4?約3/4インチの円筒状のロッドであり、銅で作製される。前記熱スラグ112を含む前記ヒートシンク108は、直径約1/2?約1インチで、厚さ約1/4?約1インチであり、アルミニウムで作製される。前記フレームはアルミニウム製シートで作製された6面からなる6角形状の中空フレームであり、平均直径約1/2?約1インチ、長さ約1/4?約1インチ、およびシートの厚さ約1/32?約1/4インチを有する。」との記載がある。
一方、照明装置の断面を示す【図2】を検討するに、図示上、「ヒートシンク108」の下端と「伝熱管105」の下端の位置は一致しておらず、「伝熱管105」は上方にずれて配置されていることが看取できる。また、【図4】における「ヒートシンク208」と「伝熱管205」や、【図6】における「ヒートシンク308」と「伝熱管305」も同様の配置となっていることが看取できる。
さらに、【図2】に係る例において、「LED103」の「フレーム124」に対しての長さ方向の具体的な配置位置に関する説明は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)のいずれにもない。また、【図4】に係る例の「LED203」と「フレーム224」や、【図6】に係る例の「LED303」と「フレーム324」においても同様である。

3 そして、段落【0013】に「伝熱管」、「ヒートシンク」、「フレーム」の長さ方向の個々の数値範囲が記載されているとしても、それらの数値範囲内における各部材の数値の相関関係の言及はないことから、もとより「LED光源」の「ヒートシンク」からの離間距離の下限値の具体的な数値を特定する技術思想が開示されているとはいえないものであり、各部材はそれらの数値範囲において任意の値をとり得るものと解するのが相当である。さらに、【図2】、【図4】、【図6】に示される「ヒートシンク」と「伝熱管」とのずれが、どの程度であるのかも言及がなく、同各図に示される「フレーム」の長さ方向における「LED光源」の配置位置についても言及がないのであるから、「LED光源」の「ヒートシンク」からの離間距離について、「少なくとも1インチ(25.4ミリメートル)」という具体的な下限値を特定することが、上記段落に記載されているとはいえないし、自明ということもできない。また、翻訳文等全体を参酌しても上記の事項が記載されている、あるいは、記載されているに等しいとする根拠も見当たらない。

4 したがって、平成26年6月24日にされた手続補正は、少なくとも上記の点で新たな技術的事項を導入するものといえ、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。

第5 むすび
以上のとおり、平成26年6月24日にされた手続補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内でなされたものではない請求項1に対する補正を含むものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-26 
結審通知日 2016-09-27 
審決日 2016-10-11 
出願番号 特願2011-550324(P2011-550324)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F21V)
P 1 8・ 55- Z (F21V)
P 1 8・ 575- Z (F21V)
P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三島木 英宏  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
和田 雄二
発明の名称 空間照明用のLED電球  
代理人 矢口 太郎  

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