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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1325558
審判番号 不服2016-6134  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-25 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2011-255190「撮像装置、輝度制御方法、及び輝度制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-110644、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯、原査定の概要、当審拒絶理由の概要
1 手続の経緯
本件出願は、平成23年11月22日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成26年 6月25日:手続補正
平成26年12月18日:拒絶理由の通知
平成27年 2月17日:手続補正
平成27年 7月13日:拒絶理由の通知
平成27年 9月 3日:手続補正
平成28年 1月26日:拒絶査定
平成28年 2月 2日:拒絶査定の謄本の送達
平成28年 4月25日:拒絶査定不服審判の請求
平成28年 4月25日:手続補正
平成28年12月 5日:拒絶理由の通知(当審、最後)
平成29年 1月16日:手続補正

2 原査定の理由の概要
本願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2002-142151号公報
引用文献2:特開2011-109576号公報

請求項1について
引用文献1には、信号処理手段から出力される映像信号の平均レベルと信号処理手段における信号の増幅度から撮影環境の明るさを検出し、前記明るさに応じて混合読み出しと独立読み出しのうちのいずれか一方の読み出し方法により読み出しを行う撮像装置が記載されている。
引用文献2に記載されているように、注目画素近傍の画素値を加算することにより画面の明るさを制御する技術は撮像装置の技術分野において周知である。
してみれば、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された周知の技術を適用することにより、「前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段」は、当業者が容易に想到することができた事項である。
(請求項2?7は略)

3 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1における「前記制御手段はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算手段の加算処理、の何れかを択一的に選択し輝度制御を行う」、
請求項5における「前記制御処理はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算処理、の何れかを択一的に選択する」、
請求項6における「前記制御手段はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算手段の加算処理、の何れかを択一的に選択する」
ことが、制御手段がどのような制御を行うことを意味しているのか明確でない。
したがって、請求項1、5、6に係る発明は明確でない。
また、請求項2?4は、請求項1を引用するから、請求項2?4に係る発明は、請求項1に係る発明と同じ理由で明確でない。

第2 平成29年1月16日付けの手続補正の適否
1 補正の内容
平成29年1月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正及びそれに伴う明細書段落【0008】?【0011】についての補正であり、そのうち、特許請求の範囲についてする補正の詳細は以下のとおりである。

特許請求の範囲
「 【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段と、
前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段と、
前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算手段の加算処理、の何れかを択一的に選択し輝度制御を行う
撮像装置。
【請求項2】
前記係数は、小数点以下の単位まで制御可能なことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段から出力された映像信号を所定の走査方式の撮像信号として出力する信号処理手段とを備え、
前記注目画素と、前記複数の周辺画素とは、前記信号処理手段から出力された前記撮像信号をフィールド単位、フレーム単位、ライン単位、またはピクセル単位のうち少なくとも1つで遅延させて得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記係数をテーブルとして記憶し、前記画面の明るさに基づいて前記係数を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算処理、
前記演算処理により係数が掛けられた各画素値を加算する加算処理、
前記加算処理で加算された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御処理とを含み、
前記制御処理はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算処理、の何れかを択一的に選択する
輝度制御方法。
【請求項6】
映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段と、
前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段と、
前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段はさらに、前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御、前記加算手段の加算処理、の何れかを択一的に選択する
輝度制御装置。」

を、特許請求の範囲

「 【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段と、
前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段と、
前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段と、
前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段とを備え、
前記制御手段はさらに、前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行うことにより、輝度制御を行う
撮像装置。
【請求項2】
前記係数は、小数点以下の単位まで制御可能なことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段から出力された映像信号を所定の走査方式の撮像信号として出力する信号処理手段とを備え、
前記注目画素と、前記複数の周辺画素とは、前記信号処理手段から出力された前記撮像信号をフィールド単位、フレーム単位、ライン単位、またはピクセル単位のうち少なくとも1つで遅延させて得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記係数をテーブルとして記憶し、前記画面の明るさに基づいて前記係数を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算処理、
前記演算処理により係数が掛けられた各画素値を加算する加算処理、
前記加算処理で加算された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御処理、
前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御処理とを含み、
前記制御処理はさらに、前記利得制御処理による感度アップが上限に達した場合に、前記加算処理を行う
輝度制御方法。
【請求項6】
映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段と、
前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段と、
前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段と、
前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段とを備え、
前記制御手段はさらに、前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行う
輝度制御装置。」(下線は、補正箇所である。)

に補正するものである。

2 補正の適否
本件補正は、請求項1、請求項6において、「前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段」を備え、さらに、加算手段の加算処理が、「前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に」行うように限定し、請求項5において、「前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御処理とを含み」、加算処理を「前記利得制御処理による感度アップが上限に達した場合に」行うように限定したものであって、願書に最初に添付した明細書の段落【0017】等に記載されており、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、特許法第17条の2第3項に違反しない。
また、特許法第17条の2第4項に違反しない。
さらに、本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成28年12月5日付け拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものであり、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本願発明を認定するにあたり、当審拒絶理由の理由(上記第1の3)について検討する。
本件補正により、「制御手段」は、「前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行う」ことが明記され、明確になった。
したがって、請求項1、5、6に係る発明は、明確であり、上記理由は解消した。

本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれの発明を項番を用いて「本願発明1」等という。)は、平成26年6月25日付け、平成27年2月17日付け、平成27年9月3日付け、平成28年4月25日付け、平成29年1月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載した事項により特定されるとおりのものである(上記第2の1)ところ、その請求項1の記載は次のとおりのものである。

(本願発明1)
(A)撮像手段と、
(B)前記撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段と、
(C)前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段と、
(D)前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段と、
(E)前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段とを備え、
(F)前記制御手段はさらに、前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行うことにより、輝度制御を行う
(G)撮像装置。

((A)?(G)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第4 原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づく容易想到性について
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-142151号公報(上記引用文献1)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は撮像装置に係り、特に高解像度化と高感度化に好適な撮像装置に関する。」

「【0011】
【発明の実施の形態】本発明による撮像装置の一実施形態について説明する。図1は本発明による撮像装置の構成を示すブロック図である。同図において10はレンズ、11は順次読み出し方式の撮像素子である。本実施形態において撮像素子11は、順次読み出し方式のCCDを用いる。12はCCDを駆動する駆動回路、13はA/D変換回路である。14は信号処理回路、16はマイコン等の制御回路である。また、17は撮像装置が撮像する周辺環境における明るさ、あるいは照度を検出する照度検出回路である。
【0012】次に本実施形態の動作について説明する。レンズ1に入射した光は撮像素子11の撮像面上に結像する。撮像素子11は、その撮像面上に2次元状に配列された複数の画素を備えており、各画素において撮像面上に結像した光信号を電気信号に変換する。
【0013】 本実施形態において、撮像素子11は順次読み出し方式のCCDを用いる。この撮像素子は、全ての画素に蓄積した信号を画素毎に順次、独立に読み出し可能である。また、この撮像素子は垂直方向に隣接する画素同士の信号を撮像素子の内部で混合して出力することも可能である。この撮像素子11の構成とその動作については後述する。
【0014】撮像素子11から出力された映像信号は、A/D変換回路13によって画素毎にデジタル信号に変換される。このA/D変換の前に、アナログ信号の増幅度の調整や、公知の低雑音化処理であるCDS(Correlated Double Sampling)処理を行っても良い。信号処理回路14は、A/D変換回路13の出力するデジタル映像信号から、所定のフォーマットの映像信変換して出力する。信号処理回路14が出力する信号のフォーマットは任意であるが、例えばNTSC方式のアナログテレビジョン信号や、輝度信号Yと2種の色差信号Cb,Crから構成されるデジタルビデオである。信号処理回路14の詳細な動作については後述する。
【0015】制御回路16は、照度検出手段17の検出結果に基づき、一定照度以上の場合には撮像素子の駆動を順次読み出しとし、一定照度以下になったときには画素混合読み出しを行なう。この制御の他に、撮像装置において従来から一般に行なわれている露光制御や、信号処理における画質調整用のパラメータ等の制御を行なっても良い。」

「【0030】以上のような動作により輝度信号処理回路、色信号処理回路で生成された画像信号を、速度変換回路52で速度変換し、エンコーダ回路53でNTSC等、所定の信号フォーマットにエンコードして出力する。速度変換は、前記したようにCCDから出力された倍速信号を1/2の速度に変換し、NTSC等の標準のフレームレートに変換するための処理を行う。図6は、本発明において独立読み出しと混合読み出しを制御する方法を示すグラフ図である。横軸は照度、縦軸は信号レベルを表している。明るいとき、すなわち高照度時には解像度の高い映像信号を生成できる独立読み出しを行い、低い照度時には高感度が得られる混合読み出しを行う。図6では、照度Lbより高いときには独立読み出し、Lb以下の照度では混合読み出しを行う。
【0031】図6において、実線で示した60は絞りや露光時間(シャッタ速度)を考慮したCCDの出力信号レベルを示している。点線61はCCDの出力信号に対し、信号処理回路における増幅度を考慮した出力信号レベルを示し、撮像素子の動作モードは独立読み出しである。太い実線62は、画素混合時の出力レベルを示している。このとき、信号処理における増幅は、自動で行なうAGC(Automatic Gain Control)である。
【0032】CCDの信号出力レベルは、照度が低下すると、それに比例して低下する。照度がLbまで低下したとき、独立読み出しを継続して行なった場合、実線60で示した直線を延長した直線で示すように、CCDの出力信号レベルはさらに低下する。これに対し、照度Lbで画素混合を行なったときには、実線60で示すように照度LbCCD出力信号レベルが2倍となる。このとき、出力信号のレベルがほぼ一定となるよう、AGCでゲインの補正を行なう。また、このとき露光時間を変えて映像信号出力レベルの補正を行なっても良い。これにより、独立読み出しでは照度Lbから映像信号の出力レベルが低下し始めるのに対し、混合読み出しにより照度Laまで一定の出力レベルを保つことができ、感度を向上できる。」

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された「撮像装置」は、「撮像素子」(段落【0011】)、「一定照度以上の場合には撮像素子の駆動を順次読み出しとし、一定照度以下になったときには画素混合読み出しを行なう」「制御回路」(段落【0015】)、「信号処理における増幅」を「自動で行なうAGC」(段落【0031】)を備えている。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)撮像素子と、
(b)一定照度以上の場合には撮像素子の駆動を順次読み出しとし、一定照度以下になったときには画素混合読み出しを行なう制御回路と、
(c)信号処理における増幅を自動で行なうAGCとを備える
(d)撮像装置。

なお、(a)?(d)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-109576号公報(上記引用文献2)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0001】
本発明は、低照度の撮像環境において、より高感度な撮像画像が得られる撮像装置に関する。」

「【0044】
本実施の形態の制御回路13は、画素加算回路7への上記加算制御信号CSWを有意に設定して、5画素を加算した信号を出力するように制御する。
図3のとおり注目画素の最も近傍に位置する5画素を加算することにより、5倍の感度向上を実現でき、極めて暗い環境での撮像でも大幅に視認性を改善することができる。また、水平解像度の劣化はなく、垂直解像度および動解像度の劣化も最小に抑えることができる。
【0045】
制御回路13は、上記加算制御信号CSWを無意から有意へ切換え画素加算回路7が5画素加算するように制御した時、出力端子14から出力される出力信号の明るさが急変して、画面を見ている人が違和感を受けたり、見づらくなったりしないように他の信号振幅調整手段を使って総合的感度が大幅に変化しないように制御する。
【0046】
以下、周辺照度が変化したときの感度調整のための手順の一例を説明する。
周辺照度が徐々に暗くなり、信号振幅の平均レベルの検出値ASAが下がってくると、レンズ1の絞りを開放方向に制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。ここで、「信号振幅の平均レベルを維持する」とは、デジタル信号処理回路6の出力の信号振幅の平均レベル、又は画素加算回路7の出力の信号振幅の平均レベルを維持することを意味する。画素加算回路7において加算される画素の数が変わらない限り、デジタル信号処理回路6の出力の信号振幅の平均レベルを一定値に維持すれば、画素加算回路7の出力の信号振幅の平均レベルも一定値に維持される。
【0047】
レンズ1の絞りが開放(全開)になった後は、プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を増やすように制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得が5倍よりも大きくなり、増幅利得の所定の上限値UGLよりも大きくなった後は、画素加算回路7が5画素加算するように制御し、同時にプログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を直前の設定利得の1/5に減らすよう制御して信号振幅の平均レベル(画素加算回路7の出力POの信号振幅の平均レベル)を維持する。さらに周辺照度が暗くなると、プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を増やすように制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。
【0048】
周辺照度が徐々に明るくなり、信号振幅の平均レベルの検出値ASAが上がってくると、プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を減らすように制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得が減少し、所定の下限値LGLよりも小さくなった後は、画素加算回路7が5画素加算を行なわないように制御し、同時にプログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を直前の設定利得の5倍に増やすよう制御して信号振幅の平均レベル(画素加算回路7の出力POの信号振幅の平均レベル)を維持する。周辺照度がさらに明るくなると、プログラマブル利得増幅回路4の増幅利得を減らすように制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。周辺照度がさらに明るくなると、レンズ1の絞りを遮光方向に制御して、信号振幅の平均レベルを維持する。」

イ 引用文献2に記載された発明
段落【0047】によると、引用文献2には、『プログラマブル利得増幅回路の増幅利得が所定の上限値よりも大きくなった後は、画素加算するように制御する』技術が記載されている。

2 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)構成要件Aと構成aとを対比する。
引用発明の「撮像素子」は、「撮像手段」といえるから、本願発明と引用発明とは「撮像手段」を備える点で一致する。

(2)構成要件B?D、Fと構成bとを対比する。
引用発明(構成b)は、混合読み出しを行う点で、画素値を加算する本願発明(構成要件C、F)と類似しているが、具体的構成として、構成要件B?D、Fを備えていない点で、本願発明と相違する。

(3)構成要件Eと構成cとを対比する。
引用発明の「信号処理における増幅を自動で行なうAGC」(構成c)は、「映像信号の増幅利得を調整する利得制御手段」といえるから、本願発明と引用発明とは、「前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段」を備える点で一致する。

(4)構成要件Gと構成dとを対比すると、「撮像装置」として一致する。

(5)以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
撮像手段と、
前記映像信号の増幅利得を調節する利得制御手段とを備える
撮像装置。

(相違点)
本願発明が、
「前記撮像手段が撮像した映像信号中の注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素の各画素値に係数を掛ける演算手段」と、
「前記演算手段で係数が掛けられた各画素値を加算する加算手段」と、
「前記加算手段から出力された信号より画面の明るさを算出し、前記画面の明るさが予め決められた範囲となるよう、前記注目画素と前記注目画素の複数の周辺画素を画素加算する場合の前記係数を制御する制御手段」とを備え、
「前記制御手段はさらに、前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行うことにより、輝度制御を行う」のに対し、
引用発明が、当該「演算手段」、当該「加算手段」、当該「制御手段」を備えておらず、当該「制御手段」が、さらに、「前記利得制御手段による感度アップが上限に達した場合に、前記加算手段の加算処理を行うことにより、輝度制御を行う」ものではない点

3 相違点の判断
上記(1)イ(イ)のとおり、引用文献2には、『プログラマブル利得増幅回路の増幅利得が所定の上限値よりも大きくなった後は、画素加算するように制御する』技術が記載されている。
引用発明に引用文献2に記載された技術を適用すると、引用発明において、「増幅利得が所定の上限値よりも大きくなった後は、画素加算するように制御する」ようになる。
しかしながら、画素加算する場合の係数を画面の明るさで制御し(構成要件D)、画素値に係数を掛け(構成要件B)、係数が掛けられた画素値を加算する(構成要件C)構成には、到達しない。
したがって、本願発明1は、引用文献1、引用文献2に記載された発明に基づいて容易にすることができたものとは認められない。

4 小括
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明2?4は、請求項1を直接又は間接的に引用しているので、本願発明1と同じ理由で、本願発明2?4は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
また、本願発明5は、本願発明1における「撮像装置」を「方法」の発明としたものであり、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明5は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明6は、本願発明1から「撮像手段」を除き、「輝度制御を行う撮像素子」を「輝度制御装置」としたものであり、本願発明1における相違点と同じ相違点があるから、本願発明1と同じ理由で、本願発明6は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-28 
出願番号 特願2011-255190(P2011-255190)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 渡辺 努
小池 正彦
発明の名称 撮像装置、輝度制御方法、及び輝度制御装置  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 松井 重明  
代理人 村上 加奈子  
代理人 倉谷 泰孝  

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