• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1325626
審判番号 不服2015-10908  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-09 
確定日 2017-03-01 
事件の表示 特願2009-292610「高アスペクト比の接続孔へのタングステン堆積方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 35366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
2009年(平成21年)12月24日(パリ条約による優先権主張外国受理2009年8月4日、米国)の出願であって、平成24年12月25日付けで審査請求がなされ、平成26年2月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成27年2月5日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成27年6月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月9日付けの手続補正についての却下の決定

[補正却下の結論]
平成27年6月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年6月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)

「【請求項1】
部分的に製造された半導体基板に設けられた高アスペクト比の接続孔を充填する方法であって、
タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、
前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で高アスペクト比の前記接続孔を部分的に充填する堆積工程と、
開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程と
を備え、
前記堆積層の前記平均厚とは、前記半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された前記堆積層の膜厚の平均であり、
前記エッチャントは、前記高アスペクト比の接続孔の前記開口付近よりも、前記高アスペクト比の接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入され、
前記選択的除去工程における前記エッチャントの流量が500sccm以下である方法。」

(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る記載は次のとおりである。

「【請求項1】
部分的に製造された半導体基板に設けられた高アスペクト比の接続孔を充填する方法であって、
タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、
前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で高アスペクト比の前記接続孔を部分的に充填する堆積工程と、
開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程と
を備え、
前記堆積層の前記平均厚とは、前記半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された前記堆積層の膜厚の平均である方法。」

2 補正の適否について
(1)補正の目的について
補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明に対応し、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明に次の補正がなされたものである。

(a)補正前の請求項1に「前記エッチャントは、前記高アスペクト比の接続孔の前記開口付近よりも、前記高アスペクト比の接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入され」ることを加える補正。

補正事項(a)について検討すると、補正事項(a)により加えられた部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項(a)は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項(a)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項(a)は、補正前の「リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャントを前記プロセスチャンバーに導入する」ことについて、「前記エッチャントは、前記高アスペクト比の接続孔の前記開口付近よりも、前記高アスペクト比の接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入され」るとする限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項(a)は、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(b)補正前の請求項1に「前記選択的除去工程における前記エッチャントの流量が500sccm以下である」ことを加える補正。

補正事項(b)について検討すると、補正事項(b)により加えられた部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項(b)は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項(b)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項(b)は、補正前の「リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャント」について、「前記選択的除去工程における前記エッチャントの流量が500sccm以下である」との限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項(b)は、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(c)小括
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、特許法第17条の2第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)進歩性について
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記[理由]1の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(a)各引用例について
(a-1)引用例1の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2002-9017号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(ア)「【0016】実施の形態2.図4および図5はこの発明の実施の形態2の半導体装置の製造方法を示す断面図である。図に基づいて、実施の形態2の半導体装置の製造方法について説明する。まず、上記実施の形態1と同様に、半導体基板1上に絶縁膜2を積層し、所望箇所に開口部としてのコンタクトホール3を形成する。次に、半導体基板1上に後述するタングステン膜と絶縁膜2との密着性を保つための窒化チタン膜4を形成する。」

(イ)「【0017】次に、例えば熱CVD法を用い、温度を400?500℃、圧力を数Torr?数十Torrとし、成膜ガスを六フッ化タングステンガス5と水素ガス6とを用いてこれらの水素還元反応により、導電膜としてのタングステン膜17を成膜していくと、図4に示すように、CVD法での一般的なステップカバレッジ特性から、タングステン膜17はコンタクトホール3の下部に比べて、上部の方が厚く成膜される。」

(ウ)「【0018】次に、ある程度タングステン膜17が成膜されるとこの成膜工程を一旦終了する。次に、タングステン膜17をエッチングすることができるエッチングガスとしての三フッ化塩素ガス9にて、タングステン膜17を所望量までエッチングする。すると、タングステン膜17の上部は三フッ化塩素ガス9によりエッチングされるため、従来のように、コンタクトホール3の上部がタングステン膜により閉じることはなく、結果として、図5に示すよう、タングステン膜17はコンタクトホール3の下部と、上部とがほぼ同様の厚さにて成膜される。
【0019】この際のエッチングガスの濃度は、上記に示したように、エッチングガスがタングステン膜17の上部との反応により消費され、コンタクトホール3の下部に到達しない量が適当であることはいうまでもなく、例えば、上記実施の形態1と同様の程度の微量な濃度が考えられる。」

(エ)「【0020】そして、上記に示した成膜工程とエッチング工程とを交互に行い、タングステン膜17を膜厚数百nm程度積層すると、上記実施の形態1と同様に図3に示すように、タングステン膜17はコンタクトホール3内に完全に埋め込まれて形成される。
【0021】上記実施の形態2の半導体装置の製造方法によれば、上記実施の形態1と同様にコンタクトホール3内がタングステン膜17にて完全に埋め込まれるため、コンタクトホール3内に流れる電流に対する抵抗が高くならず、所望の素子速度を得ることができる。」

上記(ア)?(エ)の記載を参照すると、次のことがいえる。

(あ)上記(ア)の記載から、引用例1に記載された発明は、半導体装置の製造方法であることが分かる。また、引用例1に記載された発明は、半導体基板1上に絶縁膜2を積層し、所望箇所に開口部としてのコンタクトホール3を形成することがわかる。
(い)上記(イ)の記載から、引用例1に記載された発明は、熱CVD法を用い、温度を400?500℃、圧力を数Torr?数十Torrとし、成膜ガスを六フッ化タングステンガス5と水素ガス6とを用いてこれらの水素還元反応により、導電膜としてのタングステン膜17をコンタクトホール3の下部に比べて、上部の方が厚く成膜することがわかる。
(う)上記(ウ)の記載から、引用例1に記載された発明は、ある程度タングステン膜17が成膜されるとこの成膜工程を一旦終了し、三フッ化塩素ガス9がタングステン膜17の上部との反応により消費され、コンタクトホール3の下部に到達しない量でタングステン膜17を所望量までエッチングすることにより、結果として、タングステン膜17はコンタクトホール3の下部と、上部とがほぼ同様の厚さにて成膜されることがわかる。
(え)上記(エ)の記載から、引用例1に記載された発明は、成膜工程とエッチング工程とを交互に行い、タングステン膜17はコンタクトホール3内に完全に埋め込まれて形成されることがわかる。

上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体装置の製造方法であって、
半導体基板1上に絶縁膜2を積層し、所望箇所に開口部としてのコンタクトホール3を形成し、
熱CVD法を用い、温度を400?500℃、圧力を数Torr?数十Torrとし、成膜ガスを六フッ化タングステンガス5と水素ガス6とを用いてこれらの水素還元反応により、導電膜としてのタングステン膜17をコンタクトホール3の下部に比べて、上部の方が厚く成膜する、成膜工程と、
三フッ化塩素ガス9がタングステン膜17の上部との反応により消費され、コンタクトホール3の下部に到達しない量でタングステン膜17を所望量までエッチングすることにより、タングステン膜17がコンタクトホール3の下部と、上部とがほぼ同様の厚さとなる、エッチング工程と、
を有し、
成膜工程とエッチング工程とを交互に行い、タングステン膜17がコンタクトホール3内に完全に埋め込まれて形成される、半導体装置の製造方法。」


(a-2)引用例2の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平9-326436号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)「【0004】上述したコンタクトホールへ導電体膜を埋め込む方法の従来例の一例として、CVDによるブランケットW膜形成とその後のエッチバック等とを組み合わせた埋め込みプラグ形成法を用いた配線形成方法を、図3の半導体装置の概略断面図を参照して説明する。まず、図3(a)に示すように、半導体装置を構成するMOSトランジスタ素子等が形成されている半導体基板11上に層間絶縁膜12を堆積する。その後、ソース・ドレイン層等の不純物拡散層13に電極を形成するコンタクトホール部1に、コンタクトホールの開口14を形成する。次に、不純物拡散層13と電極とのオーミックコンタクト確保や、層間絶縁膜と電極(埋め込みプラグ)となるブランケットW膜との密着性確保のために、スパッタリング法によりTi膜15を厚さ約30nmほど堆積する。続いて、同じくスパッタリング法により、バリアメタルとなるTiN膜16を厚さ約70nmほど堆積する。その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)炉を用いて、N_(2) ガス雰囲気中で短時間の熱処理を行い、Ti膜15と半導体基板11の不純物拡散層13表面部とを反応させてTiSi_(2) 層17を形成すると同時に、TiN膜16の金属拡散に対するバリア性を向上させる。
【0005】次に、図3(b)に示すように、WF_(6)/SiH_(4)/H_(2)/Arガスを用いたCVD法により、第1のブランケットW膜18を膜厚約50nm程堆積し、続いてWF_(6)/H_(2)/Arを用いたCVD法により、第2のブランケットW膜19を膜厚約600nm程堆積する。この2ステップでブランケットW膜を形成する理由は、第1のブランケットW膜18形成のCVD条件を用いると、コンタクトホールの開口14底部の周辺部におけるバリア層のTiN膜16が一般的には薄く形成されているためにWF6 ガスによる半導体基板のSiが浸食されてできるワームホール(Worm Hole)が発生し難いためである。ただ、この第1のブランケットW膜18形成のCVD条件によるブランケットW膜は、ステップカバレージが悪く、成長速度も遅いので、上述した如く2ステップによって、ブランケットW膜を形成している。
【0006】次に、図3(c)に示すように、第1および第2のブランケットW膜18、19をエッチバックして、コンタクトホール部1にタングステンプラグ20を形成する。次に、Ti膜21とTiN膜22をスパッタリング法により堆積し、続いて配線膜とする1%のSiを含有するAl合金膜23をスパッタリング法により堆積する。その後は、図面を省略するが、上記のAl合金膜23をパターニングして配線形成をする。
【0007】しかしながら、上述した半導体装置の配線形成方法においては、コンタクトホールの開口径が小さくなって、コンタクトホールのアスペクト比が大きくなってくると、ブランケットW膜形後に、図4に示すようなボイド24がコンタクトホールの開口14下部に発生するという問題が起こる。これは、コンタクトホールのアスペクト比が大きくなると、スパッタリング法により堆積するTi膜15やTiN膜16のコンタクトホールの開口14でのステップカバレージが悪くなり、Ti膜15やTiN膜16がコンタクトホールの開口14部でオーバーハング形状の堆積膜となり、更にこのオーバーハング形状のコンタクトホールの開口14部に、ワームホール発生抑止効果はあるが、反応が供給律速であるCVD条件で第1のブランケットW膜18を堆積するために、コンタクトホールの開口14部は更に大きなオーバーハング形状となるためである。」

(イ)「【0022】実施例2
本実施例は半導体装置の配線形成方法に本発明を適用した例であり、これを図1および図2を参照して説明する。まず、図1(a)に示すように、実施例1と同様にして半導体基板11上に層間絶縁膜12堆積、コンタクトホールの開口14部形成、Ti膜15、TiN膜16、第1のブランケットW膜18堆積を行う。
【0023】次に、コンタクトホール部1のコンタクトホールの開口14上部にオーバーハング状に形成された第1のブランケットW膜18を除去するため、第1のブランケットW膜18をRIE(Reactive Ion Etching)法により約40nm程エッチバックする。この第1のブランケットW膜18のRIE条件は、例えば下記のようなものである。
〔第1のブランケットW膜18のRIE条件〕
SF_(6)ガス流量 : 140 sccm
Arガス流量 : 25 sccm
圧力 : 50 Pa
RFパワー : 250 W」

上記(ア)(イ)の記載によれば、引用例2には、次の事項が記載されているといえる。

<引用例2の記載事項-1>
CVDによるブランケットタングステン膜形成とその後のエッチバック等とを組み合わせた埋め込みプラグ形成法を用いた半導体装置の配線形成方法において、コンタクトホールの開口径を小さくして、コンタクトホールのアスペクト比を大きくすること。
<引用例2の記載事項-2>
半導体基板上の層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールの開口上部にオーバーハング状に形成されたブランケットタングステン膜をエッチングする際に、SF_(6)ガスの流量を140sccmとすること。

(a-3)引用例3の記載について
原査定で周知技術として引用された、優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平10-178014号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)「【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明による半導体装置の製造方法の実施例を図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明による半導体装置の製造方法の第1の実施例を実施するために適した放電分離型のマイクロ波励起ドライエッチング装置を示したものである。真空容器1のエッチング室2内には、被処理物Wを載置する載置台3が設置されている。この載置台3は温度調節機構を有し、載置された被処理物Wの加熱温度を制御可能である。真空容器1の上壁にはガス導入管4が連通し、このガス導入管4には放電管5が接続されている。この放電管5にはそのガス導入口6から反応性ガスが導入される。放電管5にはマイクロ波導波管7が接続され、このマイクロ波導波管7は放電管5にマイクロ波を印加して、放電管5内にプラズマを発生させる。また、真空容器1の下壁には排気管8が接続されている。
【0015】次に、載置台3に載置された被処理物Wの構造について説明する。被処理物Wは、図2に示したようにシリコン基板9と、この上に積層されたシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜10と、この層間絶縁膜10に穿孔された電極接続孔11と、この電極接続孔11内及び層間絶縁膜10の表面に形成されたバリヤメタル膜として機能するチタン膜12及び窒化チタン膜13と、電極接続孔11を埋めるようにシリコン基板9の全面に積層されたタングステン膜14とから構成される。なお、このタングステン膜14はタングステン合金膜やその他の金属膜を使用することもできる。
【0016】なお、電極接続孔11は、層間絶縁膜10にレジストを塗布しそれをパターニングした後に、ドライエッチングを行うことによって穿孔される。また、チタン膜12及び窒化チタン膜13はスパッタリングによって成膜され、タングステン膜14はCVD(化学気相成長)法によって成膜される。
【0017】図2に示した構成の被処理物Wが図1の載置台3に載置されると、第1のエッチング処理が行われる。この第1のエッチング処理では、被処理物Wは載置台3に内蔵された温度調節機構によって約25℃に加熱され、エッチング室2の圧力は30Paに選定され、マイクロ波パワーは700Wに選定されている。この状態で、CF4ガスとCl2ガスとO2ガスとを混合した第1の反応性ガスがガス導入口6から放電管5に導入されると共に、700Wパワーのマイクロ波がマイクロ波導波管7から放電管5に印加されてプラズマを発生させる。放電管5に導入された第1の反応性ガスは、プラズマによって活性化されてエッチング室2に流入し、載置台3に載置された被処理物Wのタングステン膜14をエッチングして、排気管8から排出される。」

上記(ア)の記載によれば、引用例3には、次の周知技術が記載されているといえる。

<引用例3の記載の周知技術>
真空容器に反応性ガスを導入する際に、真空容器の上壁に放電管が接続されたガス導入管を連通し、放電管にマクロ波導波管が接続され、放電管にマイクロ波を印加して、放電管内にプラズマを発生させ、反応性ガスをプラズマとする放電分離型のマイクロ波励起ドライエッチング装置によって、シリコン基板上の層間絶縁膜に穿孔された電極接続孔を埋めるようにシリコン基板の全面に積層されたタングステン膜をエッチングすること。


(b)対比
(b-1)本件補正発明と引用例1発明とを対比する。
(ア)引用例1発明の「コンタクトホール3」は、本件補正発明の「接続孔」に相当する。
そして、引用例1発明は、「半導体基板1上に絶縁膜2を積層し、所望箇所に開口部としてのコンタクトホール3を形成し、」「成膜工程とエッチング工程とを交互に行い、タングステン膜17がコンタクトホール3内に完全に埋め込まれて形成される、半導体装置の製造方法」であるから、本件補正発明の「部分的に製造された半導体基板に設けられた高アスペクト比の接続孔を充填する方法」と、「部分的に製造された半導体基板に設けられた」「接続孔を充填する方法」である点で、共通する。
(イ)引用例1発明の「六フッ化タングステンガス5」、「水素ガス6」、及び「熱CVD」は、それぞれ本件補正発明の「タングステン含有前駆体」、「還元剤」、及び「化学気相成長反応」に相当する。
そして、引用例1発明の「成膜工程」は、プロセスチャンバにて行われることは技術常識であり、また、そのためには、「成膜工程」を行うために、「六フッ化タングステンガス5」および「水素ガス6」をプロセスチャンバに導入する必要があることは自明であることを考慮すると、引用例1発明の「熱CVD法を用い、温度を400?500℃、圧力を数Torr?数十Torrとし、成膜ガスを六フッ化タングステンガス5と水素ガス6とを用いてこれらの水素還元反応により、導電膜としてのタングステン膜17をコンタクトホール3の下部に比べて、上部の方が厚く成膜する、成膜工程」と、本件補正発明の「タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で高アスペクト比の前記接続孔を部分的に充填する堆積工程」とは、「タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で」「前記接続孔を部分的に充填する堆積工程」をである点で、共通する。
(ウ)引用例1発明の「三フッ化塩素ガス9」は、本件補正発明の「エッチャント」に相当する。
そして、引用例1発明の「三フッ化塩素ガス9がタングステン膜17の上部との反応により消費され、コンタクトホール3の下部に到達しない量でタングステン膜17を所望量までエッチングすること」は、コンタクトホール3の開口付近よりも、コンタクトホール内部の方が、低いエッチャントの濃度でプロセスチャンバーに導入されることを示している。
加えて、このことにより、半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された堆積層の膜厚の平均の減少が、コンタクトホール3の開口付近とコンタクトホール3の内部の減少を比べた際に、コンタクトホール3の開口付近の減少が、コンタクトホール3の内部の減少よりも大きくなることを示している。
さらに、「タングステン膜17がコンタクトホール3の下部と、上部とがほぼ同様の厚さとなる」ことは、堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成することである。
してみれば、引用例1発明の「三フッ化塩素ガス9がタングステン膜17の上部との反応により消費され、コンタクトホール3の下部に到達しない量でタングステン膜17を所望量までエッチングすることにより、タングステン膜17がコンタクトホール3の下部と、上部とがほぼ同様の厚さとなる、エッチング工程」と、本件補正発明の「開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程」および、「前記エッチャントは、前記高アスペクト比の接続孔の前記開口付近よりも、前記高アスペクト比の接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入され」ることは、「開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、」「エッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程」である点、および、「前記エッチャントは、」「接続孔の前記開口付近よりも、」「接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入され」る点で、共通する。
またその際、前記「堆積層の平均厚」は、引用例1に記載された発明も、本件補正発明も、「前記半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された前記堆積層の膜厚の平均であ」る点で、共通する。

(b-2)以上(ア)?(ウ)のことから、本件補正発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「部分的に製造された半導体基板に設けられた接続孔を充填する方法であって、
タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、
前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で前記接続孔を部分的に充填する堆積工程と、
開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、エッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程と
を備え、
前記堆積層の前記平均厚とは、前記半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された前記堆積層の膜厚の平均であり、
前記エッチャントは、前記接続孔の前記開口付近よりも、前記接続孔の内部の方が、低い前記エッチャントの濃度で前記プロセスチャンバーに導入される方法。」

[相違点1]
本件補正発明が、「高アスペクト比の接続孔」を対象としているのに対して、引用例1発明の「接続孔」が「高アスペクト比」であるとの限定がされていない点。

[相違点2]
本件補正発明の「エッチャント」は、「インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャント」であるのに対して、引用例1発明の「エッチャント」はそのようなエッチャントではない点。

[相違点3]
本件補正発明は、「前記選択的除去工程における前記エッチャントの流量が500sccm以下である」のに対して、引用例1発明はエッチャントの流量について記載されていない点。


(c)当審の判断
上記各相違点について検討する。

(c-1)[相違点1]について
上記(a)の(a-2)における<引用例2の記載事項-1>にみられるように、CVDによるブランケットタングステン膜形成とその後のエッチバック等とを組み合わせた埋め込みプラグ形成法を用いた半導体装置の配線形成方法において、コンタクトホールの開口径を小さくして、コンタクトホールのアスペクト比を大きくすることは、当業者が普通に行い得るものと認められるから、引用例1発明の「コンタクトホール」を、「高アスペクト比の接続孔」とすることは、当業者が半導体装置の設計において、適宜行う事項である。

(c-2)[相違点2]について
上記(a)の(a-3)より、真空容器に反応性ガスを導入する際に、真空容器の上壁に放電管が接続されたガス導入管を連通し、放電管にマクロ波導波管が接続され、放電管にマイクロ波を印加して、放電管内にプラズマを発生させ、反応性ガスをプラズマとする放電分離型のマイクロ波励起ドライエッチング装置によって、シリコン基板上の層間絶縁膜に穿孔された電極接続孔を埋めるようにシリコン基板の全面に積層されたタングステン膜をエッチングすることは、引用例3にみられるように、周知の技術である。
そして、引用例1発明において、「インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で」エッチャントを生成するようにし、このエッチャントをもちいてエッチングを行うことは、上記周知技術に接した当業者が適宜為し得る事項である。

(c-3)[相違点3]について
引用例1発明において、エッチャントの流量をどのようにするかは、チャンバーの大きさ、エッチング速度、エッチングの均一性、およびその他のパラメータより、設計時に適宜決定することであり、また、上記(a)の(a-2)における<引用例2の記載事項-2>に、半導体基板上の層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールの開口上部にオーバーハング状に形成されたブランケットタングステン膜をエッチングする際に、SF_(6)ガスの流量を140sccmとすることが記載されているように、エッチャントの流量を500sccm以下とすることは、当業者が普通に行い得るものと認められる。
そうすると、引用例1発明において、「前記選択的除去工程における前記エッチャントの流量が500sccm以下」とすることは、当業者が適宜為し得る事項である。

(c-4)小括
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用例1発明及び引用例2,3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(d)進歩性についての結論
したがって、本件補正発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
「2 補正の適否について」で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 補正却下の決定を踏まえた検討

(1)本願発明
平成27年6月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年7月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「部分的に製造された半導体基板に設けられた高アスペクト比の接続孔を充填する方法であって、
タングステン含有前駆体および還元剤をプロセスチャンバーに導入する工程と、
前記タングステン含有前駆体と前記還元剤との間の化学気相成長反応によって前記部分的に製造された半導体基板にタングステン含有材料の層を堆積し、前記堆積された堆積層で高アスペクト比の前記接続孔を部分的に充填する堆積工程と、
開口付近の前記堆積層の平均厚の減少が、前記接続孔内部における前記堆積層の平均厚の減少よりも大きくなるように、インサイチュープラズマを用いないで、リモートプラズマ発生器内で生成されたエッチャントを前記プロセスチャンバーに導入することにより前記堆積層の一部を選択的に除去して、エッチングされた層を形成する選択的除去工程と
を備え、
前記堆積層の前記平均厚とは、前記半導体基板の表面に垂直な方向に堆積された前記堆積層の膜厚の平均である方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1乃至3には、上記「第2 [理由]2(2)(a)」に記載したとおりの事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から、上記「第2 [理由]2(1)」に記載した補正事項(a)および(b)に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]2(2)」に記載したとおり、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-30 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2009-292610(P2009-292610)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 正山 旭  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 高アスペクト比の接続孔へのタングステン堆積方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ