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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1325657
審判番号 不服2016-5575  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-15 
確定日 2017-03-01 
事件の表示 特願2014-178720「携帯機器、その画像表示制御方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 5301〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年10月14日に出願した特願2009-237059号の一部を平成26年9月3日に新たな出願としたものであって、平成27年9月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日付けで手続補正がなされたが、平成28年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成28年4月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成28年4月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、
平成27年12月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された、

「【請求項4】
表示部と前記表示部に対応して設けられたタッチ操作部とを有する携帯機器における画像表示制御方法であって、
前記表示部に画像を表示するステップと、
タッチ動作検出手段が前記タッチ操作部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチを検出すると、前記表示部に表示されている画像を前記スライドタッチによる回転方向に回転させるステップとを有し、
前記回転させるステップにおいては、前記表示するステップにおいて表示されている画像の画像データに対して回転処理を施し、回転処理された画像データを前記表示部に表示させることによって、前記表示部に表示されている画像の回転を行う
ことを特徴とする画像表示制御方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された、

「【請求項2】
表示部と前記表示部に対応して設けられたタッチ操作部とを有する携帯機器における画像表示制御方法であって、
前記表示部に画像を表示するステップと、
タッチ動作検出手段が前記タッチ操作部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチを検出すると、前記表示部に表示されている画像を前記スライドタッチによる回転方向に回転させるステップとを有し、
前記回転させるステップにおいては、前記表示するステップにおいて表示されている画像の画像データに対して回転処理を施し、回転処理された画像データを前記表示部に表示させることによって、前記表示部に表示されている画像の回転を行うステップと、
前記表示部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチが所定移動量以上であれば、前記表示部に表示されている画像を前記回転方向に同時に90°だけ回転させるステップと、
前記表示部の上に前記タッチ操作部が重ねられ、前記表示部の表示画面に応じて前記タッチ操作部が制御されるステップと、を有することを特徴とする画像表示制御方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。


2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正のうち上記補正事項は、補正前の請求項4に記載された「回転させるステップ」において、「前記表示部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチが所定移動量以上であれば、前記表示部に表示されている画像を前記回転方向に同時に90°だけ回転させるステップと、前記表示部の上に前記タッチ操作部が重ねられ、前記表示部の表示画面に応じて前記タッチ操作部が制御されるステップと」を有する点を付加して限定することにより、特許請求の範囲を限定的に減縮するものであって、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するものでもない。

(2)独立特許要件

本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

イ.引用発明
(ア)引用例1
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2009-99067号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器におけるタッチセンサを利用した操作を、より効率的にするための技術に関する。」(3頁9-12行)

b.「【0009】
≪実施例1≫
<概要>
図1は、本実施例の携帯型電子機器の、把持の一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の携帯型電子機器は、表示画面の例えば左右の両サイドにタッチセンサα1およびタッチセンサα2が備えられている。したがって図1(a)にあるように、ユーザは電子機器の両脇をそれぞれの手で把持しながら、タッチセンサα1、α2に触れ操作をすることができる。具体的には、例えばチューナにて受信し選局可能なチャンネルの番組サムネイルやチャンネルアイコンが左側タッチセンサα1及びα2に沿って並べて表示されている。そこで、ユーザは携帯型電子機器を両手で挟むように把持しながら、右親指又は左親指にて、所望のチャンネルアイコンに対応する側のタッチセンサに触れる。すると、図1(b)にあるように、その選択されたチャンネルの番組がチューナにて受信されディスプレイに表示される、という具合である。
また、このとき、表示しきれないチャンネルアイコンについては、タッチセンサをスライド操作してスクロールさせることで表示されるよう構成しても良い。
【0010】
このように本実施例の携帯電子機器では、機器本体両脇を挟むように把持しながら操作することができるので、操作中であっても電子機器を安定して把持することが可能となる。
【0011】
<本実施例の構成>
図2は、本実施例の携帯型電子機器における正面視の一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の「携帯型電子機器」(0200)は、「表示パネル」(0201)と、一組の「タッチセンサ」(0202a、0202b)とを備えている。なお、「携帯型電子機器」は、基本的に携行されることを前提とした電子機器であって、例えば、携帯電話やスマートフォン、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、PHS(パーソナル・ハンディフォン・システム)、携帯型音楽/動画プレイヤー、可搬型フォトストレージ、タブレット型ノートパソコン、デジタルカメラなどが挙げられる。また、携行されることを前提としていなくとも、例えばデジタル写真立てなども操作の際には両手で把持するため、やはり本発明に適した電子機器である。また車輌のハンドルも、両手で把持するため本発明に適した電子機器として挙げられる。なお、円形ハンドルの場合、後述する「対向辺でのタッチパネルの配置」という構成は、外周円に沿った略対向辺とすると良い。
【0012】
「表示パネル」(0201)は、情報表示用のディスプレイであって、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が挙げられる。また、この表示パネルが表示機能を備えるタッチセンサであるいわゆる「タッチスクリーン」で構成され、後述するタッチセンサの機能も合わせて実現するようにしても良い。
【0013】
「タッチセンサ」(0202a、0202b)は、表示パネルの対向辺に沿って配置されることを特徴する。なお、「対向辺」とは、完全に平行に向かい合った辺でなくとも構わない。例えばディスプレイや電子機器の外形が円状であれば、その外周円に沿った略対向辺であれば良い。そして、一組のタッチセンサがこのように配置されることによって、ユーザは、操作のために図1(a)に示すように機器本体両脇を挟むようにして把持することになる。したがって、タッチセンサに対して操作を実行中であっても携帯型電子機器を安定して把持することができる、という具合である。なお、このタッチセンサは、表示パネル外側に隣接して設けられていても良いし、表示パネルをタッチスクリーンとして構成することで表示パネル上に設けられるようにしても良い。また、このタッチセンサは、例えば静電式や感圧式、光学式、電波式などによる接触検知、あるいは非接触検知を行うセンサであって良く、その検知方式は特段限定しない。
【0014】
また、このタッチセンサの配置形態を含む携帯型電子機器の構成は、図2に示すものに限定されない。以下、図3や図4を用いて、本実施例の携帯型電子機器の構成例について説明する。
【0015】
図3は、本実施例の携帯型電子機器におけるタッチセンサの配置例を表す各種正面図である。図3(a)にあるように、タッチセンサ(0302)は、表示パネル上下および左右の対向辺に沿って表示パネルを囲むように配置されても良い。このように配置することで、携帯型電子機器を縦持ちとした場合でも横持ちとした場合でも、機器本体を両手で把持しながらタッチパネルの操作を行うことができる。あるいは、図3(b)に示すように、物理的に分割された複数のタッチセンサ(0302a?f)が表示パネルの対向辺に沿って配置されていても良い。このように配置することで、タッチセンサの検知領域を正確に区別し、タッチ箇所の検知ミスを減らすことができる。
」(4頁30行-5頁41行)

c.「【0061】
≪実施例5≫
<概要>
本実施例は、実施例1を基本として、さらに表示パネルの対向辺に配置された一組タッチセンサに対する各スライド操作をさまざま組合せることによって、拡大表示や回転表示などの画像表示に関する各種操作を行うことを特徴とする携帯型電子機器である。
【0062】
図21は、本実施例の携帯型電子機器における操作用の表示画面の一例を表す図である。この図にあるように、表示パネルの左側に配置されたタッチセンサα1に対して上方向へのスライド操作を行う。また、それとともに表示パネルの右側に配置されたタッチセンサα2に対しても上方向へのスライド操作を行う。すると、表示パネルに表示されている画像が拡大して表示される、という具合である。このように本実施例では、例えば左右それぞれのタッチセンサに対するスライド操作を組合せることで、各種操作を実現することができる。
【0063】
<機能的構成>
図22は、本実施例の携帯型電子機器における機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の「携帯型電子機器」(2200)は、実施例1を基本として、「表示パネル」(2201)と、その対向辺に一組の「タッチセンサ」(2202a、2202b)と、を有する。なお、これら「表示パネル」や「タッチセンサ」は、実施例1で記載したものと同様であるのでその説明は省略する。そして、本実施例の携帯型電子機器の特徴点は、さらに「スライダー値取得部」(2203)と、「編集処理実行部」(2204)と、を有する点である。
【0064】
「スライダー値取得部」(2203)は、タッチセンサ部分への操作に応じてタッチセンサ部に対応するスライダー値を取得する機能を有する。ここで取得されるスライダー値は、スライダインジケーターの表示を伴わないこと以外は前述のスライダインジケーター値と同様であって、タッチセンサ上でのスライド量やそのスライド方向を示す値である。また、その取得も、上記同様、例えば静電式のタッチセンサであれば、格子状に配した電極によって、指がタッチセンサ上を移動することで生じる電気容量の変化を格子状電極によって検知し、そのスライド方向およびスライド量を検出する方法などが挙げられる。
【0065】
「編集処理実行部」(2204)は、スライダー値取得部(2203)での取得結果に応じて表示パネルに表示される画像の編集処理を実行する機能を有する。「画像の編集処理」とは、例えば、拡大縮小処理、回転表示処理、縦横スクロール処理の他、トリミング処理、色数の変更処理、画像圧縮形式の変更処理、RGB値や輝度値、ガンマ値の補正処理等が挙げられる。そして、本実施例の編集処理実行部では、スライダー値取得部で取得された例えば左右のタッチセンサそれぞれのスライド方向の組合せやスライド値に応じて、上記各編集処理を実行する、という具合である。以下、図23および図24を用いて、タッチセンサへのスライド操作に応じた画像の各種編集処理の一例を説明する。
【0066】
図23は、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサに対する各スライド操作の組合せに応じた画像の編集処理の一例を表す図である。この図23(a)にあるように、左右のタッチパネルに対するスライド操作が、双方とも下向きの組合せである場合、画像の縮小表示処理が実行される。また、図23(b)にあるように、左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである場合、画像の時計回りへの回転表示処理が実行される。また、図23(c)にあるように、左のタッチパネルでは下向きのスライド操作、右のタッチパネルでは上向きのスライド操作、という組合せである場合、画像の反時計回りへの回転表示処理が実行される、という具合である。
【0067】 ・・・ 中略 ・・・
【0068】 ・・・ 中略 ・・・
【0069】
<処理の流れ>
図25は、本実施例の携帯型電子機器における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。この図にあるように、まず、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ部分へのタッチを検出する(ステップS2501)と、タッチを検出したタッチセンサ部分に対応するスライダー値を取得する(ステップS2502)。そして、取得したスライダー値に応じて、表示パネルに表示される画像の編集処理を実行する(ステップS2503)。」(12頁42行-14頁15行)


上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、

(a)上記c.の段落【0063】の記載によれば、引用例1には、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ、スライダー値取得部、及び、編集処理実行部を有する携帯型電子機器が記載されている。
また、段落【0061】、及び、【0065】の記載によれば、前記携帯型電子機器は、一組タッチセンサに対する各スライド操作をさまざま組合せることによって、表示パネルに表示される画像の回転表示処理を実行する機能を有するものである。
さらに、上記c.の段落【0069】及び図25には、前記携帯型電子機器における処理の流れの一例を表すフローチャートが記載されており、引用例1には、前記携帯型電子機器における処理方法が記載されているといえる。
したがって、引用例1には、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ、スライダー値取得部、及び、編集処理実行部を有し、前記一組のタッチセンサに対する各スライド操作をさまざま組合せることによって、前記表示パネルに表示される画像の回転表示処理を実行する機能を有する携帯型電子機器における処理方法、が記載されているといえる。

(b)上記c.の段落【0064】の記載によれば、前記スライダー値取得部は、タッチセンサ部分への操作に応じたスライド量やそのスライド方向を示す値であるスライダー値を取得する機能を有する、ものである。

(c)上記c.の段落【0065】の記載によれば、前記編集処理実行部は、前記スライダー値取得部で取得された左右のタッチセンサそれぞれのスライド方向の組合せやスライド値に応じて、表示パネルに表示される画像の編集処理を実行する、ものである。

(d)上記c.の段落【0069】、及び、図25には「処理の流れ」が、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ部分へのタッチを検出する(ステップS2501)と、タッチを検出したタッチセンサ部分に対応するスライダー値を取得する(ステップS2502)と、取得したスライダー値に応じて、表示パネルに表示される画像の編集処理を実行する(ステップS2503)とからなることが、記載されている。
また、段落【0066】には、画像の編集処理の一例としての回転表示処理は、左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである場合に、画像の時計回りへの回転表示処理が実行される、ことが記載さている。
したがって、引用例1には、前記処理方法は、表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ部分へのタッチを検出するステップと、タッチを検出したタッチセンサ部分に対応するスライダー値を取得するステップと、取得したスライダー値に応じて、表示パネルに表示される画像の編集処理を実行するステップとからなり、前記画像の編集処理である回転表示処理として、左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである場合に、画像の時計回りへの回転表示処理が実行すること、が記載されているといえる。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ、スライダー値取得部、及び、編集処理実行部を有し、前記一組のタッチセンサに対する各スライド操作をさまざま組合せることによって、前記表示パネルに表示される画像の回転表示処理を実行する機能を有する携帯型電子機器における処理方法において、
前記スライダー値取得部は、前記タッチセンサ部分への操作に応じたスライド量やそのスライド方向を示す値であるスライダー値を取得する機能を有し、
前記編集処理実行部は、前記スライダー値取得部で取得された左右のタッチセンサそれぞれのスライド方向の組合せやスライド値に応じて、表示パネルに表示される画像の編集処理を実行するものであって、
前記表示パネルの対向辺に配置された前記一組のタッチセンサ部分へのタッチを検出するステップと、
前記タッチを検出した前記タッチセンサ部分に対応するスライダー値を取得するステップと、
取得した前記スライダー値に応じて、前記表示パネルに表示される画像の編集処理を実行するステップとからなり、
前記画像の編集処理である回転表示処理として、左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである場合に、画像の時計回りへの回転表示処理を実行する処理方法。」

(ア)引用例2
原査定の拒絶の理由において引用された、国際公開第2008/86218号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。([当審注]:当審仮訳は、引用例2の公表公報である特表2010-515978号公報の記載に基づく。)

(a)「[0018] In accordance with some embodiments, a computer-implemented method for use at a device with a touch screen display includes detecting a multifinger twisting gesture on or near the touch screen display. The multifinger twisting gesture has a corresponding degree of rotation. If the corresponding degree of rotation exceeds a predefined degree of rotation, a 90° screen rotation command is executed. If the corresponding degree of rotation is less than the predefined degree of rotation, a screen rotation command with an acute angle of rotation is executed and, upon ceasing to detect the multifinger twisting gesture, a screen rotation command with an angle of rotation opposite to the acute angle is executed.」
(当審仮訳:
[0018] ある実施形態によれば、タッチスクリーンディスプレイを伴う装置に関連して使用するためのコンピュータ実施方法は、タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近において複数指ねじれジェスチャーを検出するステップを備えている。この複数指ねじれジェスチャーは、それに対応する回転度を有する。この対応回転度が規定の回転度を越える場合には、90°スクリーン回転コマンドが実行される。この対応回転度が規定の回転度より小さい場合には、鋭角の回転を伴うスクリーン回転コマンドが実行され、そして複数指ねじれジェスチャーの検出を停止する際に、その鋭角とは逆の回転角度を伴うスクリーン回転コマンドが実行される。)

(b)「[00191] A multifinger twisting gesture (e.g., 1506, Figure 15A, or 1508, Figure 15C) is detected (1402) on or near the touch screen display. The multifinger twisting gesture has a corresponding degree of rotation. In some embodiments, the multifinger twisting gesture includes gestures by two thumbs 1604-L and 1604-R (Figures 16A and 16D)
[00192] If the corresponding degree of rotation exceeds a predefined degree of rotation(1404-Yes), a 90°screen rotation command is executed (1406). For example, the digital image 1502 of Figures 15A and 16A is rotated from a portrait orientation to a landscape orientation, as shown respectively in Figures 15B and 16B.」
(当審仮訳:
[00191] タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近で複数指ねじれジェスチャー(例えば、1506、図15A、又は1508、図15C)が検出される(1402)。この複数指ねじれジェスチャーは、対応する回転度を有する。ある実施形態では、複数指ねじれジェスチャーは、2本の親指1604-L及び1604-R(図16A及び16D)によるジェスチャーを含む。
[00192] 対応する回転度が規定の回転度を越える(1404-イエス)場合には、90°スクリーン回転コマンドが実行される(1406)。例えば、図15A及び16Aのデジタル映像1502は、各々、図15B及び16Bに示すように、縦向き方向(portrait orientation)から横向き方向(landscape orientation)へ回転される。)

(c)「[00196] In the example of Figure 15A, the multifinger twisting gesture 1506 has a corresponding degree of rotation that exceeds a predefined degree of rotation. Thus, a 90° screen rotation command is executed, with the result that the digital image is displayed in a landscape orientation, as shown in Figure 15B. In the example of Figure 15C, however, the multifinger twisting gesture 1508 has a corresponding degree of rotation that does not exceed a predefined degree of rotation. A screen rotation command with an acute angle of rotation is executed, with the result shown in Figure 15D. Upon ceasing to detect the multifinger twisting gesture 1508, a screen rotation command with an angle opposite to the acute angle is executed, with the result that the portrait orientation of the digital image 1502 is restored, as shown in Figure 15E.」
(当審仮訳:
[00196]図15Aの実施例では、複数指ねじれジェスチャー1506は、対応する回転度が規定の回転度を越える。従って、90°スクリーン回転コマンドが実行され、その結果、図15Bに示すように、デジタル映像が横向き方向(landscape orientation)に表示される。しかしながら、図15Cの実施例では、複数指ねじれジェスチャー1508は、対応する回転度が規定の回転度を越えない。鋭角の回転を伴うスクリーン回転コマンドが実行され、その結果が図15Dに示されている。複数指ねじれジェスチャー1508の検出を停止すると、その鋭角と逆の角度でのスクリーン回転コマンドが実行され、その結果、図15Eに示すように、デジタル映像1502の縦向き方向(portrait orientation)が回復される。)

上記引用例2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用例2には以下の技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が開示されていると認められる。

「スライドタッチの操作量が所定量以上であれば、表示部の画像を90°回転させること。」


ウ.対比・判断

補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「表示パネル」、及び、「携帯型電子機器」は、補正後の発明の「表示部」、及び、「携帯機器」に相当する。
また、引用発明の「表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ」は、「表示パネル」に重ねられるものではないが、「表示パネル」に対応して配置はされているものであるから、引用発明の「表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ」と、補正後の発明の「表示部に対応して設けられたタッチ操作部」は、「表示部に対応して設けられたタッチ手段」である点で共通するといえる。

b.引用発明の「処理方法」は、「携帯型電子機器」において「画像の回転表示処理を実行する」ものであるから、引用発明の「処理方法」は、補正後の発明の「携帯機器における画像表示制御方法」に相当する。

c.引用発明の「処理方法」は、「前記表示パネルに表示される画像の回転表示処理を実行する」ものであるから、引用発明の「処理方法」は、補正後の発明の「表示部に画像を表示するステップ」を有しているといえる。

d.引用発明では「検出するステップ」、「取得するステップ」、及び、「実行するステップ」によって「前記画像の回転表示処理として、左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである場合に、画像の時計回りへの回転表示処理を実行する」ものであるから、引用発明は、「左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作、という組合せである」ことを検出する手段を備えているものと認められる。
さらに、ここで、「左のタッチパネルでは上向きのスライド操作、右のタッチパネルでは下向きのスライド操作」は、「一組のタッチセンサ」において逆方向に移動するスライドタッチであって、時計回りへのスライド操作といえる。
したがって、引用発明の「検出するステップ」、「取得するステップ」、及び、「実行するステップ」を合わせたステップと、補正後の発明の「タッチ動作検出手段が前記タッチ操作部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチを検出すると、前記表示部に表示されている画像を前記スライドタッチによる回転方向に回転させるステップ」とは、「タッチ動作検出手段が前記タッチ手段で逆方向に移動するスライドタッチを検出すると、前記表示部に表示されている画像を前記スライドタッチによる回転方向に回転させるステップ」の点では共通する。
さらに、引用発明の「実行するステップ」は、「表示パネルに表示される画像」の「回転表示処理」である「編集処理」を行うものであるから、補正後の発明の「前記回転させるステップにおいては、前記表示するステップにおいて表示されている画像の画像データに対して回転処理を施し、回転処理された画像データを前記表示部に表示させることによって、前記表示部に表示されている画像の回転を行うステップ」に相当する。

e.また、 引用発明の「取得するステップ」、及び、「実行するステップ」では、「スライド量」と、「スライド方向を示す値」である「スライダー値」に応じて、「前記表示パネルに表示される画像の時計回りへの回転表示処理を実行する」ものであり、「スライドタッチが所定移動量以上」で「90°だけ回転させる」ものではないが、通常、操作部への操作と、該操作に対応した表示は格別の遅滞なく、実質的に同時に行われるものであるから、引用発明の「取得するステップ」、及び、「実行するステップ」と、補正後の発明の「前記表示部の両端部で逆方向に移動するスライドタッチが所定移動量以上であれば、前記表示部に表示されている画像を前記回転方向に同時に90°だけ回転させるステップ」とは、「逆方向に移動するスライドタッチが検出されると、前記表示部に表示されている画像を前記回転方向に同時に回転させるステップ」の点では共通するといえる。


したがって、補正後の発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「表示部と前記表示部に対応して設けられたタッチ手段とを有する携帯機器における画像表示制御方法であって、
前記表示部に画像を表示するステップと、
タッチ動作検出手段が前記タッチ手段で逆方向に移動するスライドタッチを検出すると、前記表示部に表示されている画像を前記スライドタッチによる回転方向に回転させるステップとを有し、
前記回転させるステップにおいては、前記表示するステップにおいて表示されている画像の画像データに対して回転処理を施し、回転処理された画像データを前記表示部に表示させることによって、前記表示部に表示されている画像の回転を行うステップと、
逆方向に移動するスライドタッチが検出されると、前記表示部に表示されている画像を前記回転方向に同時に回転させるステップと、
を有する画像表示制御方法。」


(相違点)
(相違点1)
「回転させるステップ」が、補正後の発明では、逆方向に移動するスライドタッチが「所定移動量以上」であれば、「90°だけ」回転させるものであるステップを有するのに対して、引用発明では、具体的に「スライド量」に応じてどのように「回転」させるかは特定されていない点。

(相違点2)
「タッチ手段」が、補正後の発明では、「表示部」の上に重ねられた「タッチ操作部」であり、「タッチ操作部の両端部」で「スライドタッチ」が検出され、「前記回転させるステップ」においては、「前記表示部の両端部で」逆方向に移動するスライドタッチに基づいて、「前記表示部の上に前記タッチ操作部が重ねられ、前記表示部の表示画面に応じて前記タッチ操作部が制御されるステップ」を有するのに対して、引用発明では、「表示パネルの対向辺に配置された一組のタッチセンサ」であり、各「タッチセンサ」で「スライドタッチ」が検出される点。

以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1)について
上記引用例2には、スライドタッチの操作量が所定量以上であれば、画像を90°回転させる技術が記載されている。
引用発明において、スライドタッチの操作量に応じて具体的にどのような回転を行うかは、当業者が設計時に適宜選択なし得た事項と認められ、また、引用発明において、スライドタッチが操作量が移動量以上であれば90°だけ回転させることができないものではないことは明らかである。
したがって、引用発明における、スライドタッチのスライド量に対する具体的な回転として、引用例2の技術を適用することにより相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
引用例1には、他の実施の形態である実施例1における「タッチセンサ」の構成として段落【0013】に「このタッチセンサは、表示パネル外側に隣接して設けられていても良いし、表示パネルをタッチスクリーンとして構成することで表示パネル上に設けられるようにしても良い。」と記載されており、「表示パネル」の上に「タッチセンサ」を配置するものが記載されている。
また、引用発明は、引用例1の実施例5の記載に基づくものではあるが、引用発明の「タッチセンサ」として、実施例1のものを適用できないものでないことは明らかである。
したがって、引用発明における「タッチセンサ」に代え、引用例1の実施例1に記載の「表示パネル」の上に「タッチセンサ」を配置するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、このとき「前記表示部の上に前記タッチ操作部が重ねられ、前記表示部の表示画面に応じて前記タッチ操作部が制御されるステップ」を備えるものであることは明らかである。
そして、そのようにすることによって、引用発明において、相違点2に係る補正後の発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである


そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明、引用例1及び引用例2に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について

1.本願発明
平成28年4月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明」の項で「引用発明」として認定したとおりである。


3.対比・判断

そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記各引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-03 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2014-178720(P2014-178720)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浜岸 広明猪瀬 隆広  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
稲葉 和生
発明の名称 携帯機器、その画像表示制御方法および装置  
代理人 丸山 隆夫  

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