• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1325662
審判番号 不服2016-6659  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-03-22 
事件の表示 特願2013-135020「マルチアングル画像撮影システム、回転台装置、撮影装置およびマルチアングル画像撮影方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 12375、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月27日の出願であって、平成27年8月5日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成27年10月16日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月4日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成28年5月6日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1?4に対して
引用文献1?4,6

・請求項5に対して
引用文献1?6

引用文献等一覧
1:特開2002-232768号公報
2:特開2002-162671号公報(周知技術を示す文献)
3:特開平8-101431号公報(周知技術を示す文献)
4:特開2003-232622号公報
5:特開2008-109481号公報
6:特開2006-352723号公報(周知技術を示す文献)

本願請求項1?5に記載された発明は、引用文献1、4、5に記載された発明、及び引用文献2、3及び6の開示する周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものである。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれの項番にしたがい「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成27年10月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
被写体を回転させる回転台装置と、
前記被写体の静止画像を異なる高さ位置から同時に撮影する撮影装置と
を備え、
複数の異なる方向および複数の異なる高さから前記被写体の静止画像を撮影するマルチアングル画像撮影システムであって、
前記回転台装置は、
水平回転可能に支持され且つ前記被写体を載せることが可能なターンテーブルと、
撮影中に停止することなく連続的に前記ターンテーブルを回転駆動する駆動部と、
前記ターンテーブルの回転角を検出する回転角センサと、
前記回転角センサによる検出値に基づいて、前記ターンテーブルが予め定められた一定の回転角だけ回転したときに前記撮影装置に対してレリーズ信号を送信するレリーズ指示部と
を含み、
前記撮影装置は、
前記ターンテーブル上の被写体を異なる高さから撮影できるように垂直方向について異なる位置に設置した複数台のカメラと、
当該複数台のカメラによる撮影時に閃光を発光するストロボと、
前記ストロボの発光の開始時刻を遅延させる発光遅延部と、
を含み、
前記撮影装置は、前記レリーズ指示部からのレリーズ信号を受信したときに、前記発光遅延部により遅延され且つ前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に、前記ストロボが発生する閃光によって前記複数台のカメラを露光し前記被写体を同時に撮影する
ことを特徴とするマルチアングル画像撮影システム。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記ターンテーブルを回転させるモータと、
当該モータに電力を供給するバッテリと
を備える請求項1に記載のマルチアングル画像撮影システム。
【請求項3】
前記レリーズ指示部は、無線通信により前記レリーズ信号を前記撮影装置へ送信する
請求項1または2に記載のマルチアングル画像撮影システム。
【請求項4】
被写体を水平回転可能なターンテーブルに載せて当該ターンテーブルを撮影中に停止することなく連続的に回転させることにより前記被写体を回転させる工程と、
前記ターンテーブルが予め定められた一定の回転角だけ回転したときに、垂直方向について異なる位置に設置した複数台のカメラに対してレリーズ信号を送信する工程と、
前記レリーズ信号が前記カメラに送信されたときにストロボを発光させて当該ストロボが発生する閃光により前記複数台のカメラの露光を行いこれら複数台のカメラにより前記被写体を同時に撮影する工程と
を含む静止画像の撮影方法であって、
前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う
ことを特徴とする静止画像の撮影方法。
【請求項5】
被写体とカメラを結ぶ線を中心としてカメラを回転させる方向への回転変位を傾きと称した場合に、
重力によって垂直に垂れ下がる長尺部材を前記複数台のカメラの各々によって撮影することにより、前記複数台のカメラの各々によって撮影される被写体の画像の傾きを検出する補正用画像を得る工程をさらに含む
請求項4に記載の静止画像の撮影方法。

第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1について
a.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「全周囲画像撮影装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0038】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0039】(第1の実施の形態)この第1の実施の形態による全周囲画像撮影装置は、複数の撮影装置が円周上の所定の空間位置に、予め、固定されている場合の例である。
【0040】図1は、本発明の第1の実施の形態による全周囲画像撮影装置の構成を示す図である。
【0041】すなわち、図1に示すように、この実施の形態による全周囲画像撮影装置において、撮影の対象となる目標物100は、撮影対象物を置く支持部としてのターンテーブル101により所定の空間位置に保持されている。
【0042】また、複数の撮影装置102が、それぞれ、撮影装置を設置する支持部としての撮影装置支持部103によって所定の空間位置、すなわち、この場合、前記撮影の対象となる目標物100を中心とした円周上に所定の間隔をおいて固定されている。
【0043】前記撮影の対象となる目標物100を置く支持部としてのターンテーブル101は、ターンテーブル制御部104aに対してターンテーブル制御用線106により接続されている。
【0044】また、前記複数の撮影装置102は、それぞれ、撮影装置制御部104bに対して撮影装置制御用線105により接続されている。
【0045】本実施の形態では、前記撮影の対象となる目標物100に対して投光(照明)するための発光(照明)装置を記述していないが、ストロボなどの発光(照明)装置が前記撮影装置制御部104bあるいは前記複数の撮影装置102に対して接続されていてもよい。
【0046】また、前記複数の撮影装置102によって撮影された画像は、各撮影装置102において保持し、一括して画像処理装置(図示しない)に転送するようにしてもよいし、あるいは、撮影毎に逐次、画像処理装置(図示しない)に転送するようにしてもよい。
【0047】また、この実施の形態による全周囲画像撮影装置においては、各撮影装置102、撮影の対象となる目標物100及び発光(照明)装置の空間的な位置関係が明確であればよいため、撮影の対象となる目標物100の大きさに対しての制限はないとともに、物、自然物、人工物など撮影の対象となる目標物100そのものについての制限はない。
【0048】また、前記複数の撮影装置102は、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、電子スチールカメラでもよい。
【0049】図2は、この実施の形態による全周囲画像撮影装置の処理フローを説明するためのフローチャートである。
【0050】まず、ステップS1において、ターンテーブル制御部104aは、処理開始時に、ターンテーブル101に対して該ターンテーブル101のキャリブレーションとしてゼロ点調整を行わせるためのキャリブレーション信号を送出する。
【0051】なお、このターンテーブル101のキャリブレーションについては、ユーザによる手動調整であってもよい。
【0052】このターンテーブル101のゼロ点調整後、ステップS2において、撮影装置制御部104bは、各撮影装置102に対して撮影開始信号を送出することにより、後述する所定の角度毎に各撮影装置102による撮影の対象となる目標物100の撮影を開始させる。
【0053】この撮影開始信号の送出と同時に、ステップS3において、ターンテーブル制御部104aは、ターンテーブル101に対して該ターンテーブル101を所定の角度に回転させる回転角指示信号を送出する。
【0054】そして、ステップS4において、ターンテーブル制御部104aは、ターンテーブル101が所定の回転角に到達し、ターンテーブル101が安定した状態で目標となる最終の回転角度(例えば、360度)に到達したかどうかを確認するとともに、、撮影装置制御部104bはその間の所定の角度毎に各撮影装置102による撮影の対象となる目標物100の撮影が終了したかどうかを、すなわち、所定の撮影動作が終了したか否かを確認する。
【0055】ここで、目標角度に達していない場合には、撮影装置制御部104bは、ステップS2に戻り、再度、残りの各撮影装置102に対して撮影開始信号を送出し、ステップS3において、ターンテーブル制御部104aは、ターンテーブル101に対して該ターンテーブル101を残りの所定の角度に回転させる回転角指示信号を送出することにより、残りの所定の角度毎に各撮影装置102による撮影の対象となる目標物100の撮影を行わせる。
【0056】そして、ステップS4において、ターンテーブル101が安定した状態で目標となる最終の回転角度(例えば、360度)に到達し、その間の所定の角度毎に各撮影装置102による撮影の対象となる目標物100の撮影が終了した場合、すなわち、所定の撮影動作が終了した場合、ターンテーブル制御部104aおよび撮影装置制御部104bは、それぞれ、終了処理を行う。」

b.引用文献1に記載された発明
(a)引用文献1の段落【0039】,【0041】,【0043】,【0049】ないし【0056】,図1の記載によれば、引用文献1には、目標物をターンテーブルに置きターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させて、所定の回転角の位置毎に複数の撮影装置による撮影を行う「全周囲撮影装置」の処理フローが記載されている。また、図1も参照すれば、ターンテーブルは水平回転可能なものである。さらに、段落【0048】には、撮影装置は電子スチールカメラでもよいことが記載されているから、引用文献1の撮像装置は、静止画像を撮影するものといえる。
よって、引用文献1には、『目標物を水平回転可能なターンテーブルに置きターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ』て、所定の回転角の位置毎に複数の撮影装置による撮影を行う『静止画像の撮影方法』に関する発明が記載されている。

(b)引用文献1の段落【0039】ないし【0042】の記載によれば、引用文献1の複数の撮像装置は、『撮影の対象となる目標物を中心とした円周状の撮影装置支持部に所定の間隔で固定されている』ものである。
そして、図1も参照すれば、円周状の撮影装置支持部は、ターンテーブルの水平回転面に対して垂直方向へ円周状に設置されるものである。
また、引用文献1の段落【0052】ないし【0056】によれば、各撮影装置に対して撮影開始信号を送出することとターンテーブルを所定の角度に回転させる回転角指示信号を送出することを繰り返し行うものである。すなわち、引用文献1には、『ターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ、その位置で、各撮影装置に対して撮影開始信号を送出』することが記載されているといえる。
よって、引用文献1の撮影方法は、『ターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ、その位置で、撮影の対象となる目標物を中心とした垂直方向の円周状の撮影装置支持部に所定の間隔で固定されている複数の撮影装置に対して撮影開始信号を送出』するものである。

(c)引用文献1の段落【0045】によれば、引用文献1には、撮影の対象となる目標物に対して投光するためのストロボなどの発光装置を有し、そのストロボなどの発光装置は撮像装置制御部または複数の撮影装置と接続されていることが記載されている。そして、このストロボなどの発光装置は、複数の撮像装置が撮影開始信号により撮影を行う時に発光させられて複数の撮像装置の露光を行うものと認められ、それにより、複数の撮影装置により目標物を同時に撮影させるものといえる。
すなわち、引用文献1の撮像方法は、『複数の撮像装置が撮影開始信号により撮影を行う時にストロボが発光させられて複数の撮像装置の露光を行い、複数の撮影装置により目標物を同時に撮影する』ものといえる。

(d)以上によると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
目標物を水平回転可能なターンテーブルに置きターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ、
ターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ、その位置で、撮影の対象となる目標物を中心とした垂直方向の円周状の撮影装置支持部に所定の間隔で固定されている複数の撮影装置に対して撮影開始信号を送出し、
複数の撮像装置が撮影開始信号により撮影を行う時にストロボが発光させられて複数の撮像装置の露光を行い、複数の撮影装置により目標物を同時に撮影する、
静止画像の撮影方法。

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「複数の撮影手段と光源の同期装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上述したような従来技術は、複数の撮影手段を単一の閃光発光光源に対して同期するという点について対応することができない。
【0007】これは、閃光発光時聞が非常に短いことから、複数の撮影手段のシャッターユニットの固体差などによる撮影装置間の微小な時間差を無視できなくなるために生じる問題であり、単一の閃光発光指示信号に基づいて閃光発光を行った場合、他の撮影装置のシャッターユニットは開放されていないといった現象が生じ、露光に閃光発光が寄与しない撮影装置が出る。」

「【0065】図3は、本発明による複数の撮影手段と光源の同期装置の第1の実施の形態をより具体的に示す構成説明図である。
【0066】すなわち、図3に示すように、それぞれの撮影装置1a,1b,1cは、単体では、閃光発光光源装置2との同期に対応しているXシンクロ端子15等を有している。
【0067】複数の撮影装置1a,1b,1cは、撮影を同期して行うために、レリーズ装置6をレリーズ端子やリモコン端子の受信部16を用いて同時に撮影を行うように、レリーズ装置6に接続されている。
【0068】さらに、図3に示すように、同期装置3は、複数の撮影装置1a,1b,1cからの発光指示信号を受ける入力装置17と、その発光指示信号を保持する記憶装置18と、この記憶装置18からの出力を処理する判定装置19と、この判定装置19の判定結果により閃光発光光源装置2へ閃光発光指示信号を出力する出力装置20からなる。
【0069】次に、以上のように構成される第1の実施の形態の作用について説明する。
【0070】複数の撮影装置1a,1b,1cは、レリーズ端子やリモコン端子の受信部16を用いてレリーズ装置6に接続されており、撮影を実施するよう指示があった場合に、この複数の撮影装置1a,1b,1cは、ほぼ同期して撮影を実施することになる。
【0071】ここで、各撮影装置1a,1b,1cには、内部の制御要素による個体差、具体的には、機械式シャッターの個体差やデジタルスチルカメラの動作周期やビデオカメラの撮像周期の個体差等が生じる。
【0072】また、各撮影装置1に生じる個体差には、リモコンの処理の遅延、などにより生じる時間差があるが、これらの時間差は計測可能であり、それらの値を予測することが可能である。
【0073】各撮影装置1a,1b,1cの露光時間を、この時間差に加えて発光時間以上となるように、各撮影装置1a,1b,1cのシャッター設定機能を用いて予め設定しておく。
【0074】各撮影装置1a,1b,1cの発光指示信号は、各撮影装置1a,1b,1cの時間差に応じたばらつきをもって、同期装置3における各入力装置17a,17b,17cに入力される。
【0075】これらの入力装置17a,17b,17cでは、各撮影装置1a,1b,1cからの閃光発光指示信号を、各記憶装置18a,18b,18cで記憶可能な信号に変換する。
【0076】各記憶装置18a,18b,18cは、それぞれ、入力があると、その状態を記憶し、記憶状態にあることを判定装置19に出力する。
【0077】この判定装置19では、すべての記憶装置18a,18b,18cに発光指示信号が入力されることにより、すべての記憶装置18a,18b,18cが記憶状態にあるときに、出力装置20に出力を指示する。
【0078】この出力装置20は、閃光発光光源装置2への発光指示信号を生成し、それを閃光発光光源装置2に出力する。
【0079】そして、閃光発光光源装置2が発光し、照明もしくはパターン像5を被写体4に対して照射する。
【0080】被写体4に照射された反射光は、各撮影装置1a,1b,1cにより撮像される。
【0081】図4は、図1における各撮影装置1a,1b,1c(カメラA,B,C)それぞれのシャッターの状態、閃光発光指示信号、それぞれに対応する同期装置3内の記憶装置18a,18b,18cの出力、出力装置20の出力を示すタイミングチャートである。
【0082】各記憶装置18a,18b,18cは、閃光発光指示信号を受けると、それに対応したタイミングでそれぞれ一定期間だけ出力を行う。
【0083】これを受ける判定装置19では、すべての記憶装置18a,18b,18cからの入力がある期間だけ出力装置20に対して、図4に示すような出力装置出力すなわち発光信号の生成出力を指示する。
【0084】この段階で、出力装置20から発光信号を生成出力することで、各撮影装置1a,1b,1c間で、閃光発光指示信号の生成に時間差が生じていても接続されているすべての撮影装置1a,1b,1cに対する閃光発光指示信号が発生されることになる。
【0085】これにより、すべての撮影装置1a,1b,1cのシャッターの開放状態で閃光発光を実施し、発光光源からの光線が被写体4に照射され、被写体4からの反射光がすべての撮影装置1a,1b,1cで撮影露光されることになる。
【0086】なお、この発明の第1の実施の形態の各構成は、当然、各種の変形、変更が可能である。
【0087】図5は、本発明による複数の撮影手段と光源の同期装置の第1の実施の形態の変形例を示す構成説明図である。
【0088】すなわち、予め、各発光信号のばらつき時間が十分にわかっている場合には、図5に示すように、記憶装置18と判定装置19の代わりに最大時間差プラス発光時間を露光時間としてシャッター設定機能を用いすべての撮影装置1a,1b,1cに設定し、最初の発光信号の入力からその時間分の遅延時間後に発光指示信号を生成して出力する遅延装置21を用いるようにしてもよい。
【0089】図6は、図5における各撮影装置1a,1b,1c(カメラA,B,C)それぞれのシャッターの状態、閃光発光指示信号、同期装置3内の遅延装置21の作動、出力装置20の出力を示すタイミングチャートである。
【0090】すなわち、図6に示すように、最初の発光指示信号の入力により遅延装置21が作動し、一定時間後に出力装置20の出力が行われる。」

「【0114】図11は、本発明の第1の実施の形態による第2の実施例を示す図である。
【0115】すなわち、この図11に示す構成は、図1に示した構成に対して、図示下側にも撮影装置1と、閃光発光光源装置2を付加的に配置したものである。
【0116】そして、この図11に示すような構成とすることにより、静止物のみならず動体に対しても、同時撮影による瞬間的な両眼立体視用の写真や映像、もしくはステレオマッチングによる三次元形状の計測、パターン投影法による距離画像計測、異なるアングルからの閃光発光による瞬間固定写真などを撮影することが可能となる。」

これらの記載によれば、引用文献2には、『被写体の瞬間固定写真などを複数の撮影装置により同期して撮影するために、すべての撮影装置のシャッターの開放状態で閃光発光光源装置からの閃光が被写体に照射されるように、各撮像装置の発光指示信号のうちの最初の発光指示信号の入力から設定された時間分の遅延時間後に発光指示信号を生成して出力する技術』が記載されている。

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「カメラ及び写真撮影方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0006】
【実施例】次に図面に示す1実施例を参照して本発明を更に具体的に説明する。本発明のカメラ及び写真撮影方法は、図1及び図2に、その構成例を図解的に示す様に、1台の営業用大型カメラAと1台以上の小型カメラBとからなり、これら複数のカメラA及びBのシャッター機構及びストロボが電気的に接続されており、いずれか一台のカメラのシャッター、例えば、カメラBのシャッターを開状態とすることによって、その信号がカメラAのシャッターを作動させ、各カメラのシャッターが開放されている間にストロボが作動する様に構成されている。
【0007】全てのシャッターは電動式になっており、カメラBのシャッターを開状態にする電気信号が瞬時に他のカメラAの電動式シャッター機構に伝達され、伝達された電気信号によって、他のカメラAのシャッターはカメラBのシャッターと殆ど同時に作動して、各シャッターは全て開の状態になる。カメラBのシャッターと他のカメラAのシャッターの作動には極短時間のタイムラグが発生するが、各シャッターが開の状態にある時間は通常1/60秒程度であり、一方、フラッシュ露光時間は通常1/300秒程度であるので、フラッシュ露光によって、全てのシャッターが開の状態にある間にすべてのカメラに内蔵されているフイルムを充分に感光させることが出来る。」

これらの記載によれば、引用文献3には、『一台のカメラのシャッターを開状態とする電気信号が他のカメラのシャッターを作動させて開状態とし、各カメラのシャッターが開放されている間にストロボを作動させる技術』が記載されている。

(4)引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、「立体情報取得装置及び立体情報取得方法並びに立体情報取得プログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来技術では、立体情報の精度を向上させるためには、前述した所定角度を小さくする必要があるため、撮影回数が増え、撮影時間が増大するという問題がある。
【0010】また、撮影角度を最初に設定するため、回転テーブルは運動と停止を繰り返し、対象物体に加速度がかかり、転倒、変形等の恐れがあるという問題がある。」

「【0087】(ステップS1)次に、ステップS1において回転テーブルRUに対象物体BEを置き、対象物体BEを回転させながらカメラCUによって、対象物体BEを背景BBとともに撮影し、物体画像A1,A2,…,Anを得る。
【0088】例えば、対象物体Bを回転数1rpmで回転させながら1回転する間にほぼ等間隔に36回撮影(つまり60/36=約1.67秒間隔で撮影)し、図7に示すように複数の物体画像A01,A02,…,A36を得る。
【0089】このとき必要に応じて被写体照明用のフラッシュFUを同期させて点灯させるようにしても良い。
【0090】この場合、シャッタースピード1/500で撮影したとすると、撮影の間に、対象物体Bは360÷60÷500=0.012度しか回転しないため、画像がぶれるという問題は起こりにくい。
【0091】ここで、回転数は対象物体Bが安定して回転し、画像がぶれない回転数であれば良い。」

これらの記載によれば、引用文献4には、『回転テーブルに対象物体を置き、対象物体を回転させながら、1回転する間にほぼ等間隔にカメラによって対象物体を複数回撮影し、複数の物体画像を得る技術』が記載されている。

(5)引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、「画像生成装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像生成装置を示す構成図である。
図1の画像生成装置の場合、N台のカメラを使用して、ある3次元領域をそれぞれ異なる方向から撮影した複数の画像に対して、上記領域内に存在するある物体が、全ての画像で同じ大きさになるように各画像を拡大または縮小し、かつ、画像内の同じ座標に位置するよう移動し、さらに、水平方向や垂直方向の歪を補正するようにしている。
なお、上記のような画像を、N台のカメラにより撮影されたN枚の画像を用いて生成した後、それらの画像をカメラの並びの順番に表示すると、ある物体を中心に等距離の視点をカメラの並びに沿って順番に移動させたような画像効果を得ることができる。以後、上記のような効果をマルチビュー効果または単にマルチビューと称する。
これ以降の説明では、N台のカメラで、水平な平面である床面にいくつかの物体が置かれている領域を撮影し、その領域に対してマルチビュー効果を有する画像を生成するものとする。」

「【0012】
床面座標読取部5は画像データ一時保存部2に保存されているオリジナル画像n(1≦n≦8)の床面上に共通に存在しているマーキング(図2を参照)の頂点(1)、頂点(2)、頂点(3)、頂点(4)の画像座標を読み取る処理を実施する。なお、床面座標読取部5はマーキング位置取得手段を構成している。
水平消失点算出部6は画像データ一時保存部2に保存されているオリジナル画像n(1≦n≦8)毎に、オリジナル画像nの水平消失点(カメラ1-nの光軸を床面に垂直な方向に投影した床面上の直線の無限遠点を撮影画像に投影した消失点)の画像座標を算出する処理を実施する。
垂直消失点算出部7は画像データ一時保存部2に保存されているオリジナル画像n(1≦n≦8)毎に、オリジナル画像nの垂直消失点(床面に垂直な直線の無限遠点を画像に投影した消失点)の画像座標を算出する処理を実施する。
なお、水平消失点算出部6及び垂直消失点算出部7から消失点算出手段が構成されている。」

「【0017】
カメラ水平軸歪補正パラメータ算出部12は垂直消失点算出部7により算出されたオリジナル画像nの垂直消失点から、オリジナル画像nを撮影する際のカメラ1-nの傾きに起因する水平軸歪の補正パラメータを算出する処理を実施する。
透視投影歪補正パラメータ算出部13は垂直消失点算出部7により算出されたオリジナル画像nの垂直消失点から、カメラ1-nの撮影時に3次元空間を2次元平面に透視投影することに起因する画像の透視投影歪の補正パラメータを算出する処理を実施する。」

「【0029】
図2の垂直基準棒は、全体の長さの2分の1の位置にマーキングが施されているが、2分の1の位置でなくてもよく、その比率が分っていればよい。
また、図2の垂直基準棒は、「全カメラの視野に入る床面領域」の中央付近に立てられているが、中央付近でなくてよい。
また、図2の垂直基準棒は、最上位の頂点と、床面と接している接点と、中央のマーキングが、全てのカメラ1-n(1≦n≦8)から撮影可能としているが、必ずしも同じ垂直基準棒が撮影可能でなくてもよい。例えば、カメラ1-1とカメラ1-2で共通に撮影された垂直基準棒Aと、カメラ1-1とカメラ1-3で共通に撮影された垂直基準棒Bとが同じでなくてもよい。この場合は、カメラ1-1において、垂直基準棒Aの大きさと、垂直基準棒Bの大きさが分ればよい。なお、この実施例では、垂直方向や大きさの基準として、棒である垂直基準棒を利用した。この場合、いったん設置してしまえば形が崩れにくく、直線を測定しやすいという利点がある。一方、この用途として、棒ではなく、紐などを利用しても良い。この場合、先端に錘などをつけ、それを垂直に垂らして、先端が床に接するようにすればよい。この場合、垂直方向の制度が高く、また長さを調整しやすいという効果がある。」

これらの記載によれば、引用文献5には、『垂直基準棒、または先端に錘などをつけ、それを垂直に垂らした紐などを撮影して、撮影されたオリジナル画像の垂直消失点(床面に垂直な直線の無限遠点を画像に投影した消失点)を算出し、その垂直消失点を利用して複数台のカメラの画像の傾きを補正する技術』が記載されている。

(6)引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、「撮像装置、撮像システムおよび同期方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0005】
このように複数の撮像装置を利用した撮像システムにおいて、例えば、ステレオ写真やパノラマ写真などの特殊効果画像を生成する場合、撮像装置間の同期が正確に取れていないと正確な画像を得ることができない。また、複数の撮像装置がフラッシュ発光を伴う同時撮影を行う場合、露光期間の同期と併せてフラッシュ発光の同期についても考慮する必要がある。」

「【0018】
本実施形態では、各撮像装置10は、主装置モードと副装置モードとの2つのモードで動作可能であり、主装置モードに設定された撮像装置10がプレ発光を行い、副装置モードに設定された撮像装置10がそのプレ発光を検知して、その検知タイミングにおいて撮像装置間の同期を取る。ここで、プレ発光とは、撮影の際に適正露出となるように被写体を照明するための本発光に先立って少光量の発光を行うことをいい、赤目防止を行う場合などに実行される撮像装置の一般的な機能である。本実施形態では、このようにプレ発光をトリガとして撮像装置間で同期をとることにより、各撮像装置10に特別な通信手段を設けることなく、各撮像装置間での同期を取る。」

「【0045】
図7は、主装置モードに設定した撮像装置10-1が行うプレ発光をトリガとして、撮像装置10-1と副装置モードに設定した撮像装置10-2とが同期をして、同時撮影を行う場合のタイミングチャートを示す図である。図7に示す通り、本実施形態によれば、プレ発光をトリガとして各タイミングジェネレータ40に同時にリセット信号が出力され、各垂直同期信号は同期するため、各撮像装置は、同じタイミングで露光を開始し、終了することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、各撮像装置は同期が取られているため、主装置モードもしくは副装置モードに設定されたいずれか1台の撮像装置が撮影時に被写体を照明するためのフラッシュ発光を行えば、同時撮影を行う残りの撮像装置は、他の撮像装置が行うフラッシュ発光によって被写体が照明されているため、フラッシュ発光を行わなくてもフラッシュ撮影を行うことができる。」

これらの記載によれば、引用文献6には、『複数の撮像装置がフラッシュ発光を伴う同時撮影を行う場合、主装置モードに設定された撮像装置がプレ発光を行い、副装置モードに設定された撮像装置がそのプレ発光を検知して、その検知タイミングにおいて撮像装置間の同期を取ることにより、各撮像装置が、同じタイミングで露光を開始し、終了するため、主装置モードもしくは副装置モードに設定されたいずれか1台の撮像装置が撮影時に被写体を照明するためのフラッシュ発光を行えば、同時撮影を行う残りの撮像装置は、他の撮像装置が行うフラッシュ発光によってフラッシュ撮影を行うことができるという技術』が記載されている。

2.本願発明4について
(1)本願発明4
本願発明4は、上記「第3 本願発明」の請求項4に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
なお、本願発明4の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A、構成Bなどと称する。

(前掲:本願発明4)
(A)被写体を水平回転可能なターンテーブルに載せて当該ターンテーブルを撮影中に停止することなく連続的に回転させることにより前記被写体を回転させる工程と、
(B)前記ターンテーブルが予め定められた一定の回転角だけ回転したときに、垂直方向について異なる位置に設置した複数台のカメラに対してレリーズ信号を送信する工程と、
(C)前記レリーズ信号が前記カメラに送信されたときにストロボを発光させて当該ストロボが発生する閃光により前記複数台のカメラの露光を行いこれら複数台のカメラにより前記被写体を同時に撮影する工程と
(D)を含む静止画像の撮影方法であって、
(E)前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う
(D′)ことを特徴とする静止画像の撮影方法。

(2)対比
本願発明4と上記引用発明とを対比する。

a.本願発明4の構成Aについて
引用発明は「目標物を水平回転可能なターンテーブルに置きターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ」るものである。ここで、目標物は被写体に相当し、ターンテーブルの回転により目標物も回転させられることは当然のことであるから、引用発明は、本願発明4の構成Aと「被写体を水平回転可能なターンテーブルに載せて当該ターンテーブルを回転させることにより前記被写体を回転させる工程」を有するものである点で一致する。
もっとも、本願発明4は、当該ターンテーブルを「撮影中に停止することなく連続的に」回転させるものであるが、引用発明はそのような構成は特定されていない点で相違する。

b.本願発明4の構成Bについて
引用発明は「ターンテーブルを所定の回転角の位置に回転させ、その位置で、撮影の対象となる目標物を中心とした垂直方向の円周状の撮影装置支持部に所定の間隔で固定されている複数の撮影装置に対して撮影開始信号を送出」するものである。
この「垂直方向の円周状の撮影装置支持部に所定の間隔で固定されている複数の撮影装置」は、垂直方向について異なる位置に設置したものといえる。
そして、複数の撮影装置に対して撮影開始信号を送出することは、複数台の撮影装置に対してレリーズ信号を送信して撮影を開始するものといえる。
すなわち、引用発明は、本願発明4の構成Bの「前記ターンテーブルが予め定められた一定の回転角だけ回転したときに、垂直方向について異なる位置に設置した複数台のカメラに対してレリーズ信号を送信する工程」を有する。

c.本願発明4の構成Cについて
引用発明は「複数の撮像装置が撮影開始信号により撮影を行う時にストロボが発光させられて複数の撮像装置の露光を行い、複数の撮影装置により目標物を同時に撮影する」ものであるから、本願発明4の構成Cの「前記レリーズ信号が前記カメラに送信されたときにストロボを発光させて当該ストロボが発生する閃光により前記複数台のカメラの露光を行いこれら複数台のカメラにより前記被写体を同時に撮影する工程」を有する。

d.本願発明4の構成D、D′について
引用発明の「静止画像の撮影方法」は、本願発明4の構成D、D′の「静止画像の撮影方法」と相違しない。

e.本願発明4の構成Eについて
引用発明は、本願発明4の構成Eの「前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う」という構成を備えていない点で本願発明4と相違する。

f.以上をまとめると、本願発明4と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
被写体を水平回転可能なターンテーブルに載せて当該ターンテーブルを回転させることにより前記被写体を回転させる工程と、
前記ターンテーブルが予め定められた一定の回転角だけ回転したときに、垂直方向について異なる位置に設置した複数台のカメラに対してレリーズ信号を送信する工程と、
前記レリーズ信号が前記カメラに送信されたときにストロボを発光させて当該ストロボが発生する閃光により前記複数台のカメラの露光を行いこれら複数台のカメラにより前記被写体を同時に撮影する工程と
を含む静止画像の撮影方法。

<相違点>
(相違点1)
本願発明4は、当該ターンテーブルを「撮影中に停止することなく連続的に」回転させるものであるが、引用発明はそのような構成は特定されていない点。

(相違点2)
引用発明は、本願発明4の「前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う」という構成を備えていない点。

(3)相違点の判断
上記1.(4)で認定したように、引用文献4には、『回転テーブルに対象物体を置き、対象物体を回転させながら、1回転する間にほぼ等間隔にカメラによって対象物体を複数回撮影し、複数の物体画像を得る技術』が開示されている。
また、上記1.(2)で認定したように、引用文献2には、『被写体の瞬間固定写真などを複数の撮影装置により同期して撮影するために、すべての撮影装置のシャッターの開放状態で閃光発光光源装置からの閃光が被写体に照射されるように、各撮像装置の発光指示信号のうちの最初の発光指示信号の入力から設定された時間分の遅延時間後に発光指示信号を生成して出力する技術』が開示されている。

ここで、引用発明に引用文献2及び引用文献4記載の技術を個別に適用することを検討すると、引用文献4記載の技術は、回転テーブルに対象物体を置き、対象物体を連続的に回転させながら撮影する技術であるから、引用発明に対して引用文献4記載の技術を適用することにより、相違点1に係る当該ターンテーブルを「撮影中に停止することなく連続的に」回転させながら目標物を撮影する構成を採用して、複数台のカメラによる複数の異なる方向からの迅速な撮影を可能とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、引用文献2記載の技術は、任意の時間に複数の撮影装置を確実に同期させて被写体を撮影する技術であるから、引用発明の所定の回転角の位置において静止させた被写体を撮影する発明に対して引用文献2記載の技術を適用することにより、相違点2に係る「前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う」という構成を採用して、所定の回転角の位置において静止させた被写体を複数台のカメラを確実に同期させて撮影することを可能とすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

しかしながら、本願発明4は、相違点1に係る構成及び相違点2に係る構成を同時に備えた発明であり、それらの構成を備えることにより、被写体を連続的に回転させて撮影することで撮影の確認や撮り直しを行うことが困難な状況においても、複数台の総てのカメラについて確実にストロボによる露光を行うことを可能とし、1回の回転によって迅速にかつ確実に、複数の異なる方向及び複数の異なる高さからの被写体の静止画像を撮影することができるという格別の効果を奏するものである。

引用発明に引用文献4記載の技術を適用した、相違点1に係る当該ターンテーブルを「撮影中に停止することなく連続的に」回転させながら迅速に目標物を撮影する構成を有する発明に、さらに引用文献2記載の技術を適用し、相違点2に係る「前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う」という構成を備えさせることで、被写体を連続的に回転させて撮影する場合に、複数台の総てのカメラについて確実にストロボによる露光を行うことを可能とするような顕著な効果を奏する発明を導き出すことは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
また、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、相違点2に係る「前記ストロボは、前記複数台の総てのカメラがシャッタを開放している共通のシャッタ開放時間内に発光が行われるように発光遅延部により予め設定された時間だけ遅延された時刻に発光を行う」という構成を有することで、所定の回転角の位置において静止させた被写体を複数台のカメラを確実に同期させて撮影することを可能とする発明に、さらに引用文献4記載の技術を適用し、相違点1に係る当該ターンテーブルを「撮影中に停止することなく連続的に」回転させながら目標物を撮影する構成を備えさせることで、被写体を連続的に回転させて撮影する場合に、複数台の総てのカメラについて確実にストロボによる露光を行うことを可能とするような顕著な効果を奏する発明を導き出すことは、当業者が容易になし得ることとはいえない。

このように、引用発明に相違点1及び相違点2に係る構成を個別に備える発明は、引用発明に引用文献4記載の技術及び引用文献2記載の技術を適用することによって当業者が容易に想到し得るものであるが、相違点1及び相違点2に係る構成を渾然一体に備える本願発明4は、当業者が容易に想到し得るものではなく、本願発明4は、そのような構成を備えることにより、本願明細書の段落【0031】に示される、マルチアングル画像の基画像となる被写体の静止画像を迅速簡便にかつ高精度に撮影することが出来るという顕著な効果を奏すものといえる。

さらに、他の引用文献について検討すると、上記1.(3)で認定したように、引用文献3には、『一台のカメラのシャッターを開状態とする電気信号が他のカメラのシャッターを作動させて開状態とし、各カメラのシャッターが開放されている間にストロボを作動させる技術』が開示され、また、上記1.(5)で認定したように、引用文献5には、『垂直基準棒、または先端に錘などをつけ、それを垂直に垂らした紐などを撮影して、撮影されたオリジナル画像の垂直消失点(床面に垂直な直線の無限遠点を画像に投影した消失点)を算出し、その垂直消失点を利用して複数台のカメラの画像の傾きを補正する技術』が開示され、さらに、上記1.(6)で認定したように、引用文献6には、『複数の撮像装置がフラッシュ発光を伴う同時撮影を行う場合、主装置モードに設定された撮像装置がプレ発光を行い、副装置モードに設定された撮像装置がそのプレ発光を検知して、その検知タイミングにおいて撮像装置間の同期を取ることにより、各撮像装置が、同じタイミングで露光を開始し、終了するため、主装置モードもしくは副装置モードに設定されたいずれか1台の撮像装置が撮影時に被写体を照明するためのフラッシュ発光を行えば、同時撮影を行う残りの撮像装置は、他の撮像装置が行うフラッシュ発光によってフラッシュ撮影を行うことができるという技術』が開示されている。
しかしながら、それらの各引用文献には、本願発明4の上記相違点2の構成が開示されていないばかりでなく、上記相違点1及び相違点2を組み合わせた構成も開示されていない。
すなわち、引用発明とそれらの各引用文献に記載の技術をみても、本願発明4の構成は当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明4は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし6に記載される技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.請求項1ないし3,5に係る発明について
本願発明1の「マルチアングル画像撮影システム」は、本願発明4の「静止画像の撮影方法」の方法の発明に対応するシステムの発明であり、本願発明4に対応する構成を備えるものであるから、本願発明4と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし6記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

また、本願発明2及び本願発明3は本願発明1を引用する発明であり、本願発明5は本願発明4を引用する発明である。
本願発明2及び本願発明3は本願発明1の構成を備え、本願発明5は本願発明4の構成を備える発明であるから、本願発明2及び本願発明3は本願発明1と同様の理由により、本願発明5は本願発明4と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし6記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし5に係る発明は、引用文献1に記載された発明、並びに引用文献2ないし6記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の拒絶理由によっては拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2013-135020(P2013-135020)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 祐一郎  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 清水 正一
渡辺 努
発明の名称 マルチアングル画像撮影システム、回転台装置、撮影装置およびマルチアングル画像撮影方法  
代理人 増子 尚道  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ