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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
管理番号 1325757
審判番号 不服2015-8103  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-30 
確定日 2017-03-09 
事件の表示 特願2013- 36487「癌治療のための医薬品およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日出願公開、特開2013-163674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成19年1月19日(パリ条約に基づく優先権主張 平成18年1月20日,中華人民共和国)にされたとみなされる特許出願(特願2008-550619号)の一部を新たに特許出願したものであって,平成26年12月24日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成27年4月30日に拒絶査定不服審判が請求され,平成28年6月15日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知されたものである。

第2 本願発明及び本件拒絶理由について
本願の請求項1?23に係る発明は,平成26年8月14日に補正された特許請求の範囲の請求項1?23に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
また,本件拒絶理由の内容は,本審決末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
請求人は,本件拒絶理由に対して,指定期間内に特許法159条2項で準用する同法50条所定の意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして,本件拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせず,本願は本件拒絶理由により拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

以下,本件拒絶理由の内容を掲記する。

1)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3)この出願の下記の請求項に係る発明は,同日出願された下記の出願に係る発明と同一と認められ,かつ,下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから,特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。



1.この出願の請求項1?23に係る発明は,平成26年8月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(以下,「本願発明1?23」という。)。

2.理由1(特許法第36条第6項第2号)
本願発明10には「前記エンドスタチンが,エンドスタチンの活性断片,変異体,誘導体,または異性体である」とあるが,本願明細書の記載(【0028】,【0061】,【0062】)を参酌しても,どのようなものがエンドスタチンの活性断片,変異体,誘導体,または異性体に包含されるのかが特定できないから,本願発明10の複合体に何が包含されるのかが特定できない。
よって,本願発明10は不明確である。

3.理由2(特許法第36条第6項第1号)
(1)本願発明1
ア.本願発明1の解決しようとする課題は,【0001】,【0006】等からみて,「エンドスタチンの代謝的特徴が改善され,その結果,生体内でのより高い安定性,より長い半減期,さらには,より高い治癒効果を生じ,それによって治療の頻度およびコストを低減し,患者の負担を減少させる可能性がある複合体を提供すること」にあるものと認められる。
そこで,本願発明1によって,当業者が上記課題を解決できると認識できるといえるか,検討する。
イ.便宜的に,修飾するPEGの平均分子量とエンドスタチンの種類とに分けて検討する。
(ア)PEGの平均分子量について
本願明細書をみると,上記課題を解決したことを客観的データで示している実施例は実施例5?7,11であるが,当該実施例で使用されているPEGの平均分子量は20kDaである。(実施例1?4は,複合体の製造,精製の例であり,実施例8?10は,エンドスタチンのリジン残基側鎖のε-アミノ基のPEG修飾の例である。)
そこで,本願発明1の「1kDaから100kDa」にまで上記実施例を拡張乃至一般化でき,本願発明1によって,当業者が上記課題を解決できると認識できるといえるか検討する。
本願明細書をみても,明細書の【0014】,【0045】に数値範囲として1kDaから100kDaが記載されているだけで,本願発明1の「1kDaから100kDa」にまで上記実施例を拡張乃至一般化できることについて,技術的に合理的に説明した記載はない。
ここで,タンパク質製剤のPEG修飾において,生体内半減期が増加するか否かやその増加の程度,また,薬理効果が増大するか否かやその増大の程度は,PEGの平均分子量等の物性等に依存するのが技術常識である。(PEGの平均分子量が小さすぎれば,タンパク質製剤の酵素による分解や腎臓による除去等を防ぐことができないから,生体内半減期は増加しないか,増加してもその程度は小さい。また,PEGの平均分子量が大きすぎれば,タンパク質製剤がその受容体に結合できないから,薬理効果は増大しないか,増大してもその程度は小さい。)
そして,上記技術常識に照らして本願明細書をみると,平均分子量が20kDaであるPEGの実施例5で生体内半減期が増加したことが示されていても,平均分子量が1kDa等であるPEGで修飾したエンドスタチンが酵素による分解や腎臓による除去等を必ず防げるとまではいえないから,本願発明1の「1kDaから100kDa」にまで上記実施例を拡張乃至一般化することはできない。また,平均分子量が20kDaであるPEGの実施例6,7,11で薬理活性が増大することが示されていても,平均分子量が100kDa等であるPEGで修飾したエンドスタチンが受容体に必ず結合するとまではいえないから,本願発明1の「1kDaから100kDa」にまで上記実施例を拡張乃至一般化することはできない。
よって,本願発明1によって,当業者が上記課題を解決できると認識できるとはいえない。
(イ)エンドスタチンの種類について
上記実施例で使用されているエンドスタチンは本願明細書記載の配列番号2,6のものであるが,当該配列番号は,いずれもエンドスタチンのアミノ酸配列の全長に関するものである。(本願明細書には,エンドスタチンのN末端側のアミノ酸配列の部分に関する配列番号3,5,エンドスタチンのC末端側のアミノ酸配列の部分に関する配列番号4が記載されているが,配列番号3?5の実施例は記載されていない。)
そこで,本願発明1の「エンドスタチン」にまで上記実施例を拡張乃至一般化でき,本願発明1によって,当業者が上記課題を解決できると認識できるといえるか検討する。
本願明細書をみると,エンドスタチンには種々の種類のものがあることが記載されており(【0028】,【0061】,【0062】),配列番号3?5のものは,固形癌を阻害する作用があることが記載されている(【0062】)。
そして,エンドスタチンはN末端に受容体と結合して活性を発揮する部分があることが記載されているが(【0046】),エンドスタチンのC末端側のアミノ酸配列の部分に関する配列番号4でも固形癌を阻害する作用があることからすれば,エンドスタチンはC末端にも受容体に結合する等して活性の発揮に寄与する部分があるといえるにも関わらず,エンドスタチンのアミノ酸配列の全長以外(N末端部分のみ,C末端部分のみ)を包含する本願発明1の「エンドスタチン」にまで上記実施例を拡張乃至一般化できることについて,本願明細書には技術的に合理的に説明した記載はない。
ここで,タンパク質製剤のPEG修飾において,生体内半減期が増加するか否かやその増加の程度,また,薬理効果が増大するか否かやその増大の程度は,タンパク質の種類等に依存するのが技術常識である。(タンパク質の種類が異なれば,タンパク質製剤の酵素による分解や腎臓による除去等を防ぐことができないから,生体内半減期は増加しないか,増加してもその程度は小さい。また,タンパク質の種類が異なれば,タンパク質製剤がその受容体に結合できないから,薬理効果は増大しないか,増大してもその程度は小さい。)
そして,上記技術常識に照らして本願明細書をみると,配列番号2,6のエンドスタチンの実施例5で生体内半減期が増加したことが示されていても,エンドスタチンのN又はC末端側のアミノ酸配列の部分のみに関する配列番号3?4等のエンドスタチンと,エンドスタチンのアミノ酸配列の全長に関する配列番号2,6のエンドスタチンとは,タンパク質製剤のPEG修飾においてはタンパク質の種類が異なるといえ,酵素による分解や腎臓による除去等を必ず防げるとまではいえないから,本願発明1の「エンドスタチン」にまで上記実施例を拡張乃至一般化することはできない。また,配列番号2,6のエンドスタチンの実施例6,7,11で薬理活性が増大することが示されていても,エンドスタチンのN又はC末端側のアミノ酸配列の部分のみに関する配列番号3?4等のエンドスタチンは,タンパク質製剤のPEG修飾においては上記したように配列番号2,6のエンドスタチンとタンパク質の種類が異なるといえ,受容体に必ず結合できるとまではいえないから,本願発明1の「エンドスタチン」にまで上記実施例を拡張乃至一般化することはできない。
よって,本願発明1によって,当業者が上記課題を解決できると認識できるとはいえない。
ウ.以上から,本願発明1は,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。

(2)本願発明2?23
上記(1)参照。同様の理由で,本願発明2?23は,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。

4.理由3(特許法第39条第2項)

同日出願:特願2008-550619号(特許第5687823号)(本願の原出願である。)

(1)本願発明9
本願発明9に着目し,本願発明9を上記同日出願の請求項1に係る発明(以下,「原出願発明1」などという。)に対して対比すると,本願発明9は,エンドスタチンの由来を「哺乳類由来」(引用する本願発明7参照。)又は「ヒト由来またはネズミ由来」(引用する本願発明8参照。)に限定すると共に,生物学的活性を「in vitro」に限定している点で,原出願発明1と一応相違する。
しかしながら,エンドスタチンの由来を限定している点は,エンドスタチンを周知の由来で限定しているに過ぎず,そして,当該由来の限定に特段の技術的意義があるとは解されないから,実質的な相違点であるとはいえない。また,生物学的活性の点も,複合体が有する性質等を限定しているに過ぎないから,実質的な相違点であるとはいえない。
そして,原出願発明1に着目し,原出願発明1を本願発明9に対して対比すると,原出願発明1は,本願発明9を包含する関係にあるから,本願発明9と実質的に同一である。
以上のとおり,本願発明9と原出願発明1とは,どちらの発明に注目しても他の発明に対して実質的に同一であるといえるから,同日出願の両発明は,互いに実質的に同一である。

(2)本願発明12?22
上記(1)で述べたのと同様の理由で,本願発明12?22と原出願発明7?17とは,それぞれ,互いに実質的に同一である。
 
審理終結日 2016-10-14 
結審通知日 2016-10-17 
審決日 2016-10-28 
出願番号 特願2013-36487(P2013-36487)
審決分類 P 1 8・ 4- WZF (A61K)
P 1 8・ 537- WZF (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 小川 慶子
大熊 幸治
発明の名称 癌治療のための医薬品およびその使用  
代理人 中山 ゆみ  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 伊佐治 創  
代理人 中山 ゆみ  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 伊佐治 創  

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