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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1325852
異議申立番号 異議2016-700460  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-20 
確定日 2017-02-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5819465号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5819465号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5819465号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5819465号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成22年7月23日を出願日とする特願2010-165722号の一部を、平成26年3月28日に新たな特許出願とした出願であって、平成27年10月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人馬場智理(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年8月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年9月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を、「本件訂正」という。)があり、本件訂正請求に対して申立人から平成28年11月22日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。

本件特許明細書の段落【0114】の【表2】中に「VI」とあるのを、以下のとおり「VIA」と訂正する。
[訂正前]

[訂正後]


2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項についての本件特許明細書の記載
本件訂正に係る事項について、本件特許明細書には以下の記載がある。
(なお、下線は理解の便のため、当審で付した。)

「【0076】
さらに第2塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤を使用することにより、塗布層が強固になるために、耐湿熱性や耐擦傷性がより向上する場合がある。架橋剤としては、例えば、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。」

「【0106】
・メラミン化合物:(VIA)ヘキサメトキシメチルメラミン
・エポキシ化合物:(VIB)ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX-521(ナガセケムテックス製)。・・・」

「【0107】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(C)をそれぞれ85%、15%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A1を塗布し(第1塗布層の形成)、反対面に下記表2に示す塗布液B1を塗布し(第2塗布層の形成)、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が0.05μmの第1塗布層、0.10μmの第2塗布層を有する厚さ38μm(表層4μm、中間層30μm)のポリエステルフィルムを得た。・・・」

(2)本件訂正について
上記(1)に摘記した本件特許明細書の記載から、本件訂正前の段落【0114】の【表2】のVIは、第2塗布層中に混合させる架橋剤についての記載であることが明らかであり、当該架橋剤は、上記段落【0106】の摘記から、「メラミン化合物:(VIA)ヘキサメトキシメチルメラミン」であるか、あるいは「エポキシ化合物:(VIB)ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX-521(ナガセケムテックス製)」のいずれかであることが当業者には理解できる。したがって、「VI」が、「VIA」あるいは「VIB」であるものは、本件特許明細書に記載されたに等しい事項である。
そうすると、本件訂正は、「VIA」か「VIB」のいずれかである、上記【表2】のVIを、「VIA」であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、本件訂正は、上記のとおり、本件特許の明細書に記載されているに等しい事項である「VIA」に訂正するものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、本件訂正は、本件特許の請求項1と、請求項1を引用する請求項2を対象とするものであるから、一群の請求項ごとに請求するものである。


3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明1及び2
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2にそれぞれ記載された、以下の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する第1塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有し、当該第1塗布層上に、ポリビニルアルコールからなる接着剤層を有し、ポリエステルフィルムのもう一方の面に第2塗布層を有する積層ポリエステルフィルムであって、上記第1塗布層、上記ポリエステルフィルム、上記第2塗布層から構成されたフィルムの、上記第2塗布層表面を明細書に記載の測定法により測定した絶対反射率が波長300?800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.5%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。」

2.取消理由の概要
平成28年8月29日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
なお、当該取消理由の通知により、本件特許異議申立ての全ての理由が通知された。
(以下、甲第○号証を、単に「甲○」という。また、甲第○号証に記載された発明及び事項を、それぞれ「甲○発明」及び「甲○事項」という。)

(1)【理由1】特許法第29条第2項
ア.本件発明1は、甲1発明、甲2事項、及び、甲4ないし7に例示される従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.本件発明2は、甲1発明、甲2事項、及び、甲3ないし7に例示される従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<刊 行 物 等 一 覧>
甲1:特開平9-281333号公報
甲2:特開2000-329941号公報
甲3:特開平11-301104号公報
甲4:特開2010-84067号公報
甲5:特開2010-89311号公報
甲6:特開2010-89310号公報
甲7:特開2010-66301号公報

(2)【理由2】特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号
本件特許明細書段落【0114】の【表2】に記載された「VI」は、同段落【0106】記載の「メラミン化合物(VIA)」及び「エポキシ化合物(VIB)」のいずれかであるか不明である。したがって、【表2】に記載された塗布液「B1」と「C1」の組成を特定することができず、ひいては、塗布液「B1」と「C1」を用いる実施例1?9、13?20及び比較例1?10の「第2塗布層」の組成が特定されないものとなっている。
また、上記実施例1?9、13?20及び比較例1?10の「第2塗布層」の組成が特定されないのであるから、残りの実施例10?12により特定される「膜厚」は「0.10(μm)」のみである。一方、本件発明1の記載は、「膜厚」が特定されていないから、本件発明1は、本件特許の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

3.甲号証の記載

(1)甲1
甲1の、段落【請求項3】、【請求項4】、【0012】、【0048】、【0049】、【0054】、【0057】、【0058】、【0061】、【0062】、【0068】、【0100】、及び、【0102】の記載から、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。

「ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層を、単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体又は/及び当該共重合体の加水分解物を含む層の上に有し、当該共重合体又は/及び当該共重合体の加水分解物を含む層を、ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルムの偏光膜が存在する側の面に有し、当該ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層上に、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系接着剤の層を有し、当該ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルムのもう一方の面にカール防止加工のための塗布された層を有する積層体。」

(2)甲2
甲2の、段落【請求項1】、【0028】?【0031】、【0035】の記載から、甲2には、以下の甲2事項が記載されている。

「偏光板が偏光フィルムと保護板からなり、表面における反射率が波長430?500nmの範囲において1%以下、好ましくは0.5%以下であり、保護板はポリエステルフィルム上に反射防止処理がコーティング法で施されること。」

4.判断

(1)【理由2】について
事案に鑑み、まず【理由2】について検討する。
上記第2.に示したように、本件訂正によって、本件特許明細書段落【0114】の【表2】に記載された「VI」は、「VIA」と訂正され、メラミン化合物であることが明らかとなった。したがって、上記【理由2】は、当該本件訂正前の本件特許明細書の記載を根拠とするものであるから、【理由2】については、取消理由は解消した。

申立人は、平成28年11月22日付け意見書において、
「明細書の【0106】には、『メラミン化合物(VIA)』の記載と共に『エポキシ化合物(VIB)』の記載もあり、明細書の【0114】に示される【表2】に『VI』とあるのが、『VIA』であると決めつける根拠は何もない。従って、明細書の【0114】に示される【表2】に『VI』とあるのを、『VIA』と訂正することは、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲を超えて訂正されることとなり、120条の5第9項において準用する126条第5項違反の訂正拒絶理由に該当する」(4ページ1ないし11行)
と主張している。
しかし、上記第2.で示したように、本件特許明細書の記載から、上記【表2】の「VI」が、「VIA」あるいは「VIB」のいずれかであることが当業者には理解できるから、「VI」を、「VIA」としたものも、「VIB」としたものも、本件特許明細書にはいずれも記載されているに等しい事項であるといえる。
そうすると、「VI」を「VIA」と訂正することは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、上記申立人の主張は失当である。

(2)【理由1】について

ア.本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層」は、本件発明1の「ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する第1塗布層」に相当する。
甲1発明の「ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルム」は、本件発明の「ポリエステルフィルム」に相当する。
甲1発明の「ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルムの偏光膜が存在する側の面」及び「もう一方の面」は、本件発明の「一方の面」及び「もう一方の面」に相当する。
甲1発明の「ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系接着剤の層」は、本件発明の「ポリビニルアルコールからなる接着剤層」に相当する。
甲1発明の「カール防止加工のための塗布された層」は、本件発明の「第2塗布層」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1の「ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する第1塗布層」は、「ポリエステルフィルムの一方の面」に有するものであるのに対し、甲1発明の「ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層」は、「ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルム」の「偏光膜が存在する側の面」に有する「単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体又は/及び当該鏡重合体の加水分解物を含む層」の上に有するものである点。

<相違点2>
本件発明1の「第2塗布層」の表面は、「明細書に記載の測定法により測定した絶対反射率が波長300?800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.5%以下である」であるのに対し、甲1発明の「カール防止加工のための塗布された層」が、そのようなものであるかが不明である点。

イ.相違点についての検討
相違点1について検討する。
甲1には、以下の記載がある。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のようなアルカリ液ケン化処理した保護フィルムを作成するには高濃度アルカリ液を使用するため、作業安全上充分に留意しなければならず、そのため生産効率は満足できるものではなかった。また、アルカリ液ケン化処理による接着性向上技術は特定の透明樹脂フィルムには有効であるが、すべての透明樹脂フィルムにも適用できるというわけではなく、種々の透明樹脂フィルム、例えばポリカーボネート系樹脂を偏光板用保護フィルムとして用いたい場合には、新たな易接着手段が必要になってくる。また、高耐久性の偏光板を作成するには偏光板用保護フィルムと偏光膜との接着の良さが重要であり、優れた接着性を付与する手段が必要であった。
【0005】すなわち、本発明の第1の目的は、偏光膜と接着し易い偏光板用保護フィルムを提供することにある。」

「【0046】本発明の偏光板用保護フィルムに用いる、単量体としてスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合物又は/及び当該共重合物の加水分解物は1種類であっても2種類以上併用してもよく、その使用量は、10?3000mg/m^(2)であることが好ましく、更には20?1000mg/m^(2)であることが特に好ましい。
【0047】本発明においては、単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体を含む層の上に更に、少なくとも1種の親水性高分子化合物を含む層を設けると、よりいっそう接着力が強化され本発明の効果を奏するので好ましい。」

そうすると、甲1発明は、「単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体又は/及び当該鏡重合体の加水分解物を含む層」の上に、「ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層」を設けることにより、「よりいっそう接着力が強化され」るとの効果を発揮せしめ、「偏光膜と接着しやすい変更用保護フィルムを提供する」との甲1発明の課題を解決するものである。
したがって、甲1発明において、「単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体又は/及び当該鏡重合体の加水分解物を含む層」を介在させずに、「ポリビニルアルコールを代表例とする親水性高分子化合物、親水性ポリエステル誘導体、及び、イソシアネート化合物を含有する層」を、「ポリエステル系樹脂からなる透明樹脂フィルムの偏光膜が存在する側の面」に有するようにすることは、上記甲1発明が解決しようとする課題の解決を妨げるものであるから、甲1発明には、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えることを阻害する事由があるといえる。

一方、本件発明1は、「ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する第1塗布層」を、「ポリエステルフィルムの一方の面」に有し、当該第1塗布層上に、「ポリビニルアルコールからなる接着剤層」を有するようにしたから、「ポリエステルフィルム」を、「例えば偏光板の保護フィルム、特に後面側偏光板の後面側の保護フィルムとして使用する場合、偏光膜を接着させるための接着剤との接着力が良好・・・」(本件特許明細書、段落【0010】)との格別な作用効果を奏するものである。

以上のとおりであるから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2事項、及び従来周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項の全てを含み、さらに、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有するとの構成を付加し、限定するものである。
上記イ.に示したように、本件発明1は、甲1発明、甲2事項、及び従来周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1を上記のとおり更に限定した発明である本件発明2も、甲1発明、甲2事項、及び従来周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ.申立人の主張について
申立人は、平成28年11月22日付け意見書において、
「ア. 特許権者は、異議意見書において、『甲第1号証記載の発明には、本件特許発明1の第1塗布層に相当する『親水性高分子化合物を含有する層』以外に『特定の共重合体又は/及び当該共重合体の加水分解物を含む層』も記載されており、甲第1号証には、本件特許発明1の第1塗布層に記載されている『ポリビニルアルコール』と『イソシアネート』化合物以外の親水性高分子化合物以外の記載もあるから、本件特許請求項1に当業者が想到できない旨、主張するが失当である。
本件特許発明1の第1塗布層を規定する構成要件のすべてが甲第1号証に記載されており、甲第1号証に記載されている偏光板用保護フィルムが、ポリビニルアルコールの接着剤を用いて、偏光膜であるPVAフィルムと接着され、かかる接着性に優れる課題や効果も記載されており、当業者であれば、特に困難性なく、甲第1号証の記載に基づいて、本件特許発明1の第1塗布層に想到できる。」(5ページ14ないし24行)
しかし、上記イ.に示したように、甲1発明において、「単量体として少なくともスチレン類若しくはビニルエステル類と無水マレイン酸類とアクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類を含む共重合体又は/及び当該鏡重合体の加水分解物を含む層」を設けないことの阻害事由が、甲1には存在するから、上記申立人の主張は失当である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立て理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層ポリエステルフィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、特に、液晶ディスプレイに使用される偏光板を保護する部材として好適に用いることのできる積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイが、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。液晶ディスプレイは、表示側を前面側、その反対側(バックライト側)を後面側とするとき、前面側偏光板//液晶//後面側偏光板の構成を有する。偏光板は通常、染色一軸延伸されたポリビニルアルコール膜の偏光膜に、保護フィルム等を貼り合わせた構成である(保護フィルム/偏光膜/保護フィルム)。前面側偏光板を構成する偏光膜の前面側および後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムA、保護フィルムBとし、後面側偏光板を構成する偏光膜の前面側および後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムC、保護フィルムDとすると、全体的な構成は、前面側から、保護フィルムA/前面側偏光膜/保護フィルムB//液晶//保護フィルムC/後面側偏光膜/保護フィルムDとなる。
【0003】
保護フィルムとしては、高い透明性や光学等方性を有することから、トリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルムと略記することがある)が多く使用されている。
しかし、寸法安定性、耐湿熱性に劣り、また、偏光膜と接着させるために、あらかじめアルカリ液で表面をケン化処理しなければいけないという欠点を持っていた。近年の液晶ディスプレイの大型化、高品質化が進むにしたがって、機械的強度や高温高湿環境下での安定性の向上が求められ、また、アルカリ処理による低分子材料のブリードアウトやヘーズ上昇による品質低下を避ける必要性が出てきた。さらに、上記アルカリ処理は高濃度のアルカリ液を使用するため、作業安全性、環境保全の上で好ましいものではない。
【0004】
これらの課題を解決するために、ノルボルネン系フィルム等、TACフィルム以外の素材の検討も行われている(特許文献1、2)。しかしながら、他素材でのフィルムは汎用樹脂を使用していないため、コストが高いという課題がある。そこで、寸法安定性が確保でき、各種の問題を有するアルカリ処理の工程を必要とせず、さらにコスト的にも問題ない、汎用樹脂であるポリエステルフィルムを使用するという方法も提案されている。
【0005】
しかしながら、ポリエステルフィルム単体では、偏光膜と保護フィルムを接着させるために使用する接着剤との接着性が劣ることや、およびTACフィルムと比較した場合に全光線透過率が低くなり、偏光板にしたときに輝度が低下するという欠点がある。ポリエステルフィルムの接着性を向上させるために、アンカー層を設ける構成も提案されているが、いずれも具体的な開示はなく、接着剤によっては十分な接着性を確保することが困難なものである(特許文献3?5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-51117号公報
【特許文献2】特開2006-227090号公報
【特許文献3】特開2002-116320号公報
【特許文献4】特開平8-271733号公報
【特許文献5】特開平8-271734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、TACフィルムの各種課題を解決することができ、かつ、接着剤との接着性が良好であり、さらに全光線透過率が高く、偏光膜の保護フィルム、特に後面側偏光板の後面側の保護フィルム(上述の保護フィルムD)として好適に利用することができる積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する第1塗布層をポリエステルフィルムの一方の面に有し、当該第1塗布層上に、ポリビニルアルコールからなる接着剤層を有し、ポリエステルフィルムのもう一方の面に第2塗布層を有する積層ポリエステルフィルムであって、上記第1塗布層、上記ポリエステルフィルム、上記第2塗布層から構成されたフィルムの、上記第2塗布層表面を明細書に記載の測定法により測定した絶対反射率が波長300?800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.5%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、例えば偏光板の保護フィルム、特に後面側偏光板の後面側の保護フィルムとして使用する場合、偏光膜を接着させるための接着剤との接着力が良好で、かつ、偏光板を形成後の全光線透過率に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0013】
本発明のポリエステルフィルム中には液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止するために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0014】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0015】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0016】
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-ブチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-フェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-(1-または2-ナフチル)-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-(4-ビフェニル)-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-p-ニトロフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-m-ニトロフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-p-ベンゾイルフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-p-メトキシフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-o-メトキシフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-シクロヘキシル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-p-(またはm-)フタルイミドフェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、N-フェニル-4-(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)フタルイミド、N-ベンゾイル-4-(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)アニリン、N-ベンゾイル-N-メチル-4-(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)アニリン、2-(p-(N-メチルカルボニル)フェニル)-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-エチレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-テトラメチレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-デカメチレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-または1,5-ナフチレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,4-シクロヘキシレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、1,3,5-トリ(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリ(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)ナフタレン、2,4,6-トリ(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン-2-イル)ナフタレン、2,8-ジメチル-4H,6H-ベンゾ(1,2-d;5,4-d’)ビス(1,3)-オキサジン-4,6-ジオン、2,7-ジメチル-4H,9H-ベンゾ(1,2-d;4,5-d’)ビス(1,3)-オキサジン-4,9-ジオン、2,8-ジフェニル-4H,8H-ベンゾ(1,2-d;5,4-d’)ビス(1,3)-オキサジン-4,6-ジオン、2,7-ジフェニル-4H,9H-ベンゾ(1,2-d;4,5-d’)ビス(1,3)-オキサジン-4,6-ジオン、6,6’-ビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-ビス(2-エチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-ビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-メチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-メチレンビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-エチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-エチレンビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-ブチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-ブチレンビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-オキシビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-オキシビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-スルホニルビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-スルホニルビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-カルボニルビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,6’-カルボニルビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-メチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-メチレンビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-ビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-エチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-オキシビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-スルホニルビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、7,7’-カルボニルビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,7’-ビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,7’-ビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、6,7’-メチレンビス(2-メチル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、6,7’-メチレンビス(2-フェニル-4H,3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが挙げられる。
【0017】
上記化合物のうち、色調を考慮した場合、黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系の化合物が好適に用いられ、その例としては、下記の一般式(1)で表されるものがより好適に用いられる。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表しX^(1)およびX^(2)はそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0020】
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、アルコキシル基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基
上記構造式で表される化合物の中でも、本発明においては、2、2’-(1、4-フェニレン)ビス[4H-3、1-ベンゾオキサジン-4-オン]が特に好ましい。
【0021】
本発明の積層ポリエステルフィルム中に含有させる紫外線吸収剤の量は、通常10.0重量%以下、好ましくは0.3?3.0重量%の範囲である。10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させた場合は、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下等、表面機能性の悪化を招くおそれがある。
【0022】
また、多層構造のフィルムの場合、少なくとも3層構造のものが好ましく、紫外線吸収剤は、その中間層に配合することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を配合することにより、当該化合物がフィルム表面へブリードアウトしてくるのを防ぐことができ、その結果、フィルムの接着性等の特性を維持することができる。
【0023】
偏光膜の保護フィルムとして使用する場合、本発明の積層ポリエステルフィルムによって、紫外線による液晶の劣化を防止するならば、目安として、波長380nmの光線透過率が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以下である。波長380nmの光線透過率は上述の紫外線吸収剤の種類と量を変更することにより調整することが可能である。
【0024】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0025】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01?5μm、好ましくは0.1?3μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において不具合が生じる場合がある。
【0027】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.0001?5重量%、好ましくは0.0003?3重量%の範囲である。粒子含有量が0.0001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0028】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0029】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0030】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0031】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10?200μm、好ましくは25?50μmの範囲である。
【0032】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70?120℃、好ましくは80?110℃であり、延伸倍率は通常2.5?7.0倍、好ましくは3.0?6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70?170℃であり、延伸倍率は通常3.0?7.0倍、好ましくは3.5?6.0倍である。そして、引き続き180?270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0033】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70?120℃、好ましくは80?110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4?50倍、好ましくは7?35倍、さらに好ましくは10?25倍である。そして、引き続き、170?250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0034】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
【0035】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0036】
本発明においては、ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリビニルアルコールおよびイソシアネート系化合物を含有する塗布層(以下、第1塗布層と略記することがある)を有し、ポリエステルフィルムのもう一方の面に、絶対反射率が波長300?800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.5%以下である塗布層(以下、第2塗布層と略記することがある)を有することを必須の要件とするものである。
【0037】
本発明のフィルムの第1塗布層は、各種の機能層との接着性を向上させるための塗布層であり、例えば、偏光膜と本発明の積層ポリエステルフィルムを貼り合わせるために使用する各種の接着剤との接着性を向上させるために使用することができる。
【0038】
本発明者らは、ポリエステルフィルムとの密着性改良のためにポリエステル樹脂を、また、接着剤層との接着性改良のためにポリビニルアルコールをそれぞれ検討したが、それぞれを単独で形成した塗布層では接着性は全くなかった。また、ポリエステル樹脂とポリビニルアルコールの組み合わせによる塗布層の検討も行ったが、接着性の大きな向上は見られなかった。さらに各種の材料の組み合わせを検討したところ、ポリビニルアルコールとイソシアネート系化合物を組み合わせるとともに、その組成比率を工夫することにより、接着性を向上させることができ、偏光膜保護用として接着性がある塗布層を形成することに成功した。さらに、ポリエステル樹脂も組み合わせることにより、接着性が大幅に改善されることも見出した。
【0039】
本発明のフィルムの第1塗布層に含有するポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有するものであり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300?40000の範囲のものが用いられる。重合度が100未満の場合、塗布層の耐水性が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、70mol%以上、好ましくは70?99.9mol%の範囲であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0040】
本発明のフィルムの第1塗布層に含有するイソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体由来の化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0041】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0042】
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いても良いし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0043】
本発明の第1塗布層には接着性向上のために、ポリエステル樹脂を併用することが好ましい。
【0044】
本発明における第1塗布層に含有し得る、ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸および、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0045】
ポリエステル樹脂を水分散させて使用する場合、一般的には親水性の官能基をポリエステル樹脂に含有させる。親水性の官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられるが、接着性が向上するという点において、カルボン酸基による分散体が好ましい。
【0046】
本発明の第1塗布層に占めるポリビニルアルコールの含有量は、通常10?80重量%、好ましくは15?60重量%、より好ましくは20?50重量%である。10重量%未満の場合は、ポリビニルアルコール成分が少ないことにより、接着剤層との接着性が十分でない場合があり、80重量%を超える場合は、他成分が少ないことにより、ポリエステルフィルムとの密着性が十分でない場合がある。
【0047】
本発明の第1塗布層に占めるイソシアネート系化合物の含有量は、通常10?80重量%、好ましくは15?60重量%、より好ましくは20?40重量%である。10重量%未満の場合は、架橋成分が少ないことにより、塗布層がもろくなり、耐湿熱性が低下する場合があり、80重量%を超える場合は、他成分が少ないことにより、ポリエステルフィルムとの密着性や、接着剤層との接着性が十分でない場合がある。
【0048】
本発明のフィルムの第1塗布層に含有し得るポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは15?65重量%、さらに好ましくは20?40重量%である。
【0049】
本発明の第1塗布層に含有するポリビニルアルコール:イソシアネート系化合物の重量比は、通常1.0?8.0:1.0?8.0の範囲、好ましくは1.0?4.0:1.0?4.0、さらに好ましくは1.0?2.5:1.0?2.5の範囲である。
【0050】
本発明のフィルムにおける第1塗布層には、塗布面状や透明性を向上させるために、ポリエステル樹脂やポリビニルアルコール以外のポリマーを併用することも可能である。
【0051】
ポリマーの具体例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0052】
さらに第1塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、イソシアネート系化合物以外の架橋剤を併用することも可能である。架橋剤としては、種々公知の化合物が使用できるが、例えば、オキサゾリン系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。
【0053】
オキサゾリン系化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0054】
メラミン系化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことである。例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0055】
エポキシ系化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0056】
また、これら架橋剤は、インラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0057】
また、第1塗布層中には、塗布層のブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を含有することが好ましく、その平均粒子径はフィルムの透明性の観点から1μm以下の範囲であり、好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、ブロッキング性および滑り性の観点から、平均粒子径は好ましくは0.01μm以上の範囲、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上の範囲である。粒子としては、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられ、その中でもシリカが特に好ましい。塗布層中の粒子の含有量は、平均粒子径にも依存するが、好ましくは0.1?30重量%の範囲、より好ましくは0.5?10重量%の範囲、さらに好ましくは1?6重量%の範囲である。
【0058】
本発明のフィルムの第2塗布層は、低反射率設計にしたものであり、後面側偏光板の後面側の保護フィルムとして使用した場合、偏光板にしたときの全光線透過率を向上させることができる塗布層である。積層ポリエステルフィルムの全光線透過率は、ポリエステルフィルム、第1塗布層、第2塗布層の光学特性を考慮したものであるが、偏光膜と貼り合わせる保護フィルムとして使用する場合、貼り合わせる側の光学特性は偏光板全体の全光線透過率に大きくは寄与しないため、光学特性として最も重要となるものは、偏光膜と貼り合わせない側、すなわち第2塗布層側である。積層ポリエステルフィルムの全光線透過率としては、第1塗布層の影響もあるので、正確には議論できないが、一般的には、90.0%以上、好ましくは90.5%以上、より好ましくは91.0%以上である。
【0059】
第2塗布層のみの光学特性をより正確に把握し、偏光板にしたときの全光線透過率を考察するために、各種検討をした結果、第2塗布層のみの絶対反射率を考慮することが重要であることが判明した。反射率と透過率は相互に関係する特性であり、光の吸収が少なく、透明性が高いポリエステルフィルムでは、一般的には、高い透過率は低い反射率を示すことに着目した。
【0060】
本発明においては、偏光板としたときの全光線透過率を高くするために、第2塗布層は、絶対反射率が波長300?800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.5%以下であることが必須である。極小値の波長としてより好ましい条件は、400?700nmの範囲、さらに好ましくは450?650nmの範囲である。また、極小値は3.0%以下、さらには2.5%以下でが好ましい。
【0061】
積層ポリエステルフィルムの第2塗布層の絶対反射率が上記条件を満足しない場合、偏光板にしたときの全光線透過率が低くなることにより、偏光板の輝度の低下を招き、液晶ディスプレイにしたときに画面が暗くなる。
【0062】
アクリル樹脂やウレタン樹脂は一般的には屈折率が低いため、上述したような絶対反射率を達成するため、すなわち偏光板としたときの全光線透過率を高くするためには適した材料であり、本発明における第2塗布層の形成に有効な材料である。また、膜厚を0.04?0.15μmの範囲に制御することにより、より効果的に全光線透過率を向上させることができる。
【0063】
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、より効率よく全光線透過率を向上させるために、屈折率が低いフッ素原子含有の化合物を使用することも可能である。
【0064】
上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0065】
ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0066】
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0067】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0068】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0069】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0070】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0071】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0072】
本発明で使用するウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0073】
本発明のフィルムにおいて、第2塗布層中に占めるアクリル樹脂またはウレタン樹脂の含有量に関しては、アクリル樹脂やウレタン樹脂の屈折率にも依存するため一概には議論できないが、好ましくは40重量%以上の範囲、より好ましくは50重量%以上の範囲、さらに好ましくは60重量%以上の範囲である。40重量%未満の場合、全光線透過率が十分に向上しない場合がある。
【0074】
本発明のフィルムにおける第2塗布層には、塗布面状や透明性を向上させるために、アクリル樹脂やウレタン樹脂以外のポリマーを併用することも可能である。併用するポリマーとしては全光線透過率への影響を考慮して、屈折率が高いものを多く使わないことが好ましい。
【0075】
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0076】
さらに第2塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤を使用することにより、塗布層が強固になるために、耐湿熱性や耐擦傷性がより向上する場合がある。架橋剤としては、例えば、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0077】
また、第2塗布層中には、塗布層のブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を含有してもよく、第1塗布層中に用いられる粒子と同様な粒子を使用することができる。
【0078】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、第1塗布層および第2塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0079】
塗布層中の各種成分の分析は、例えば、TOF-SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0080】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1?50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0081】
本発明における積層ポリエステルフィルムの第1塗布層の膜厚は、通常0.002?1.0μm、より好ましくは0.03?0.5μm、さらに好ましくは0.04?0.2μmの範囲である。膜厚が0.002μm未満の場合は十分な接着性が得られない可能性があり、1.0μmを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。
【0082】
本発明における積層ポリエステルフィルムの第2塗布層の膜厚は、通常0.04?0.15μmの範囲であり、より好ましくは0.06?0.13μmの範囲である。塗布層の屈折率にも依存するので一概には言えないが、膜厚がこの範囲より外れる場合は、偏光板としたときに高い全光線透過率が得られない場合がある。
【0083】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0084】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80?200℃で3?40秒間、好ましくは100?180℃で3?40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0085】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70?280℃で3?200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0086】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0087】
本発明の積層ポリエステルフィルムを例えば、偏光板における偏光膜の保護フィルムとして使用する場合、一般的には、第1塗布層側に偏光膜を接着させるための接着剤を介して偏光膜を貼り合わせる。接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリブチルアクリレート等のアクリル系化合物、グリシジル基やエポキシシクロヘキサンに例示される脂環式エポキシ基を有するエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0088】
作成した接着剤層の上に、例えば一軸延伸され、ヨウ素等で染色されたポリビニルアルコールを偏光膜として貼り合わせる。偏光膜の反対側にも保護フィルムや位相差フィルム等を貼り合わせて偏光板とすることができる。すなわち、本発明の積層ポリエステルフィルムを偏光板に使用する場合の、上記で例示した層構成は、保護フィルム/偏光膜/接着剤/第1塗布層/ポリエステルフィルム/第2塗布層となる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0090】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0091】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0092】
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO_(4)で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO_(4)で染色し、塗布層断面をTEM(Hitachi製 H-7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0093】
(4)接着性の評価方法
積層ポリエステルフィルムの第1塗布層面に接着剤として重合度1000、ケン化度98.5mol%のポリビニルアルコール5重量%水溶液を乾燥膜厚が2μmになるように塗布・乾燥し、接着剤層とした。この接着剤層の上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)、エルパック(登録商標)LP-18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、剥離面積が5%以下なら◎、5%を超え20%以下ならば○、20%を超え50%以下ならば△、50%を超えるならば×とした。
【0094】
(5)ポリエステルフィルムにおける第2塗布層表面からの絶対反射率極小値の測定方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面(第1塗布層面)に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT-50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V-570 および自動絶対反射率測定装置 AM-500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで、塗布層表面を波長範囲300?800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と絶対反射率を評価した。
【0095】
(6)全光線透過率の測定方法
村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、JIS K 7361で測定した。
【0096】
(7)偏光板にしたときの全光線透過率の評価方法
積層ポリエステルフィルムの第1塗布層面側に、重合度1000、ケン化度98.5mol%のポリビニルアルコール5重量%水溶液を塗布して、ロール機を用いてポリビニルアルコール-ヨウ素の偏光膜を貼合し、70℃で4分間乾燥することにより偏光板とした。一方、リファレンスとして、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)に関しても同様な方法で偏光板を作成した。作成した偏光板において、全光線透過率を村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、JIS K 7361で測定し、積層ポリエステルフィルムから形成された偏光板の全光線透過率を評価した。すなわち、TACフィルムから形成された偏光板の全光線透過率と比較して、低下量が1%以下であれば○、低下量が1%を超えて、輝度の低下が懸念される場合を×とした。
【0097】
(8)波長380nmの透過率の測定
分光光度計(株式会社島津製作所社製UV-3100PC型)により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300?700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nm波長での光線透過率を検出した。
【0098】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0099】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径2μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0100】
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2’-(1,4-フェニレン)ビス[4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン](CYTEC社製 CYASORB UV-3638 分子量369 ベンゾオキサジノン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステル(C)を作成した。得られたポリエステル(C)の極限粘度は、0.59であった。
【0101】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ポリビニルアルコール:(I)
ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール
【0102】
・イソシアネート系化合物:(II)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とマレイン酸とのポリエステル(分子量2000)200重量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート33.6重量部を添加し、100℃で2時間反応を行った。次いで系の温度を一旦50℃まで下げ、30%重亜硫酸ナトリウム水溶液73重量部を添加し、45℃で60分間攪拌を行った後、水718重量部で希釈したブロックイソシアネート系化合物。
【0103】
・ポリエステル樹脂:(IIIA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂のカルボン酸系水分散体
モノマー組成:(酸成分)イソフタル酸/トリメリット酸//(ジオール成分)ジエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=96/4//80/20(mol%)
・ポリエステル樹脂:(IIIB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂のカルボン酸系水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール/ネオペンチルグリコール/ジメチロールプロピオン酸=20/80//16/64/12/8(mol%)
・ポリエステル樹脂:(IIIC)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂のスルホン酸系水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0104】
・アクリル樹脂:(IV)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0105】
・ウレタン樹脂:(V)
カルボン酸水分散型ポリエステルポリウレタン樹脂である、ハイドランAP-40(DIC社製)
【0106】
・メラミン化合物:(VIA)ヘキサメトキシメチルメラミン
・エポキシ化合物:(VIB)ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX-521(ナガセケムテックス製)。
・粒子:(VII)平均粒径65nmのシリカゾル
【0107】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(C)をそれぞれ85%、15%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A1を塗布し(第1塗布層の形成)、反対面に下記表2に示す塗布液B1を塗布し(第2塗布層の形成)、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が0.05μmの第1塗布層、0.10μmの第2塗布層を有する厚さ38μm(表層4μm、中間層30μm)のポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、第1塗布層の接着性は良好であり、第2塗布層の極小値絶対反射率は2.5%と低く抑えられ、また380nmにおける透過率は4%であり、紫外線を吸収していることが確認できた。このフィルムの特性を下記表3に示す。
【0108】
実施例2?17:
実施例1において、塗布剤組成を表1および表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表3に示すとおりであった。
【0109】
実施例18:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(C)をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として使用する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表3に示すとおりであり、また、380nmにおける透過率は1%であり、紫外線を吸収していることが確認できた。
【0110】
実施例19:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(C)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として使用する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表3に示すとおりであり、また、380nmにおける透過率は9%であり、紫外線を吸収していることが確認できた。
【0111】
実施例20:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)を中間層の原料として使用する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表3に示すとおりであった。
【0112】
比較例1?10:
実施例1において、塗布剤組成を表1および表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すとおりであり、接着性が弱いものや、反射率の極小値が見られないものや、反射率の極小値が高いものであった。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のフィルムは、例えば、液晶ディスプレイに使用される偏光膜の保護フィルム、特に後面側偏光板の後面側保護フィルム等、各種の接着剤と良好な接着性、加工後において高い全光線透過率が必要な用途に好適に利用することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-20 
出願番号 特願2014-67545(P2014-67545)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 大輔岩本 昌大  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 蓮井 雅之
久保 克彦
登録日 2015-10-09 
登録番号 特許第5819465号(P5819465)
権利者 三菱樹脂株式会社
発明の名称 積層ポリエステルフィルム  
代理人 岡田 数彦  
代理人 岡田 数彦  
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