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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1326268
審判番号 不服2016-10561  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-12 
確定日 2017-03-16 
事件の表示 特願2012-188103「装置、方法、プログラム、及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日出願公開、特開2013- 65291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月28日の出願(優先権主張平成23年8月29日)であって、平成27年4月1日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月5日に手続補正がされ、平成27年7月31日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成27年10月5日に手続補正がされ、平成27年10月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成27年12月25日に手続補正がされ、平成28年4月7日付けで平成27年12月25日にされた手続補正について補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、これに対し、平成28年7月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。


第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年7月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項4は、

「【請求項4】
タッチスクリーンディスプレイを備える装置を制御する方法であって、
実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれかを示す複数のオブジェクトを含む画面を前記タッチスクリーンディスプレイに表示するステップと、
複数の前記オブジェクトのいずれかに対して接触した状態で前記画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャが前記タッチスクリーンディスプレイを介して検出されると、当該フリックが検出された前記オブジェクトの表示を消去するとともに、他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示するステップと、
を含む方法。」(下線部は補正箇所を示す。)

と補正された。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項4に記載された「複数の前記オブジェクトのいずれかに対して前記画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャ」について、「接触した状態で」との限定を付加して特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

3.独立特許要件について
上記本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の請求項4に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正発明
本件補正により補正された請求項4に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記「1.補正後の本願発明」に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原審の拒絶理由に引用された中国特許出願公開第102063253号明細書(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)

(段落[0071])

(パテントファミリー文献である特表2013-530433号公報に基づく当審訳:
[0071] 次に、タッチセンシティブディスプレイを備えたポータブルデバイスの実施形態に注目する。図1A及び図1Bは、いくつかの実施形態に係るタッチセンシティブディスプレイ112を備えたポータブル多機能デバイス100を示すブロック図である。タッチセンシティブディスプレイ112は、便宜上「タッチスクリーン」と呼ばれる場合があり、タッチセンシティブディスプレイシステムとして既知であるか又はタッチセンシティブディスプレイシステムと呼ばれる。デバイス100は、メモリ102(1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体を含んでもよい)、メモリコントローラ122、1つ以上の処理ユニット(CPU)120、周辺インタフェース118、RF回路108、オーディオ回路110、スピーカ111、マイク113、入出力(I/O)サブシステム106、他の入力又は制御デバイス116及び外部ポート124を含む。デバイス100は、1つ以上の光センサ164を含む。これらの構成要素は、1つ以上の通信バス又は信号線103を介して通信する。)(下線は当審で付した。以下同様。)

(イ)

(段落[0205]-[0221])

(当審訳:
[0205] 図5A?図5HHは、いくつかの実施形態に係る同時にオープンしているアプリケーションを管理するための例示的なユーザインタフェースを示す。これらの図面におけるユーザインタフェースは、図6A?図6C、図7、図8A?図8C、図9、図10、並びに図11A及び図11Bの処理を含む以下に説明する処理を示すために使用される。
[0206] 明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、「オープンしているアプリケーション」(開いているアプリケーション)という用語は、保持された状態の情報(例えば、デバイス/グローバル内部状態157及び/又はアプリケーション内部状態192の一部として)を含むソフトウェアアプリケーションを示す。オープンしている(開いている)アプリケーションは、以下の種類のアプリケーションのうちのいずれか1つである。
[0207] ・ディスプレイ112上に現在表示されているアクティブなアプリケーション(あるいは、対応するアプリケーションビューがディスプレイ上に現在表示されている)
[0208] ・ディスプレイ112上に現在表示されていないバックグラウンドアプリケーション(又はバックグラウンド処理)。しかし、対応するアプリケーションに対する1つ以上のアプリケーション処理(例えば、命令)は、1つ以上のプロセッサ120により処理されている(すなわち、実行している)
[0209] ・現在実行していない中断されたアプリケーションであり、揮発性メモリ(例えば、DRAM、SRAM、DDR RAM又はメモリ102の他の揮発性ランダムアクセス固体メモリ素子)に格納される
[0210] ・実行していない休止状態のアプリケーションであり、不揮発性メモリ(例えば、1つ以上の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリ素子又はメモリ102の他の不揮発性ランダムアクセス固体メモリ素子)に格納される
[0211] 本明細書で使用されるように、「閉じられたアプリケーション」という用語は、保持された状態の情報を含まないソフトウェアアプリケーションを示す(例えば、閉じられたアプリケーションに対する状態情報は、デバイスのメモリに格納されない)。従って、アプリケーションを閉じることは、アプリケーションに対するアプリケーション処理を停止及び/又は除去すること、並びにアプリケーションに対する状態情報をデバイスのメモリから除去することを含む。一般に、第1のアプリケーションのある間に第2のアプリケーションを開いても第1のアプリケーションは閉じない。第2のアプリケーションが表示され且つ第1のアプリケーションの表示を中止する場合、表示された時にアクティブなアプリケーションであった第1のアプリケーションは、バックグラウンドアプリケーション、中断されたアプリケーション又は休止状態のアプリケーションになるが、その状態情報がデバイスにより保持されている間は第1のアプリケーションはオープンしているままである。
[0212] 図5A?図5Dは、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを選択し且つ対応するアプリケーションビューを表示するための例示的なユーザインタフェースを示す。
[0213] 図5Aは、ポータブル電子デバイス(例えば、ポータブル多機能デバイス100)のタッチスクリーン112上に複数のアプリケーションアイコン5002(例えば、5002-21?5002-38)を表示する例示的なユーザインタフェース(「ホーム画面」5001)を示す。図5Aにおいて、フィンガージェスチャ505(例えば、タップジェスチャ)は、マップアプリケーションアイコン5002-27に対応する場所においてタッチスクリーン112で検出される。(尚、図5Aに表示されたホームページ上のアプリケーションアイコン5002はオープンしているアプリケーションアイコンに対応してもしなくてもよく、図5C?図5Zのアプリケーションアイコン5002はオープンしているアプリケーションに対応する。)
[0214] 図5Bにおいて、フィンガージェスチャを検出することに応答して、マップアプリケーションが起動され、マップアプリケーションビュー5004-1はタッチスクリーン112に表示される。この例において、マップアプリケーションビューは、地図の一部、並びに検索入力フィールド、検索アイコン及び方向アイコン等のユーザインタフェースオブジェクトを含む。更に図5Bにおいて、入力507(例えば、ホームボタン204上のクリック又はダブルクリック)が検出される。
[0215] 図5Cは、入力507を検出することに応答して、マップアプリケーションビュー5004-1の一部及びアプリケーションアイコン領域5006が同時に表示されることを示す。いくつかの実施形態において、入力507を検出することに応答して、デバイスは、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを選択するアプリケーション選択モードを開始し、マップアプリケーションビュー5004-1の一部及びアプリケーションアイコン領域5006は、アプリケーション選択モードの一部として同時に表示される。アプリケーションアイコン領域5006は、同時にオープンしているアプリケーションのうちの少なくとも一部に対応する、オープンしているアプリケーションアイコンの初期グループを含む。この例において、多機能デバイスは、同時にオープンしているが同時に表示されない多数のアプリケーションを有する。更にこの例において、アプリケーションアイコン領域5006は、ウェブブラウザ(Safari)、音楽アプリケーション(iPod)、金融アプリケーション(株価)及びマルチメディアストアアプリケーション(iTunes)に対するアプリケーションアイコンを含む。
[0216] いくつかの実施形態において、マップアプリケーションビュー及びアプリケーションアイコン領域の同時表示はアニメーションを含む。例えばマップアプリケーションビューは、マップアプリケーションビューの一部が移動してディスプレイから消え且つ一部がディスプレイ上に留まるようにスライドアップできる。アニメーションは、マップアプリケーションビュー及びアプリケーションアイコン領域が連結されて見えるように、アプリケーションアイコン領域が、画面の下部から同時にスライドインできる。
[0217] 図5Cにおいて、フィンガージェスチャ509(例えば、タップジェスチャ)は、ウェブブラウザアプリケーションアイコン5002-37に対応する場所においてタッチスクリーン112で検出される。
[0218] 図5Dは、ウェブブラウザアプリケーションアイコンに対応する場所におけるフィンガージェスチャを検出することに応答して、ウェブブラウザアプリケーションビュー5004-2がタッチスクリーン112に表示されることを示す。
[0219] 図5E及び図5Fは、アプリケーションアイコン領域のスクロールを示す。図5Eにおいて、接触511(例えば、指の接触)は、アプリケーションアイコン領域5006に対応する場所511-Aにおいてタッチスクリーン112で検出される。図5E及び図5Fにおいて、接触511は、タッチスクリーン112上を異なる場所(例えば、511-B)に移動し、アプリケーションアイコン領域5006におけるアプリケーションアイコンは、接触511の移動に従ってスクロールされる。
[0220] 図5G?図5Iは、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを閉じるための例示的なユーザインタフェースを示す。図5Gにおいて、フィンガージェスチャ513(例えば、押下及び保持ジェスチャ)は、音楽アプリケーションアイコン5002-38に対応する場所においてタッチスクリーン112で検出され、デバイスはアプリケーション選択モードである。図5Hは、フィンガージェスチャを検出することに応答して、多機能デバイスがアプリケーション終了モードを開始することを示す。アプリケーション終了モードにおいて、音楽アプリケーションアイコンは、タッチスクリーン112に表示された残りのアプリケーションアイコンと視覚的に区別される。この例において、音楽アプリケーションアイコンはアニメーション化され(例えば、揺れ)、残りの表示されたアプリケーションアイコンは淡色表示される。また、アプリケーション終了の印(例えば、「-」アイコン5012-1等のアプリケーション終了アイコン)は、音楽アプリケーションアイコンに隣接して表示される。
[0221] 図5Hにおいて、フィンガージェスチャ515(例えば、タップジェスチャ)は、視覚的に区別されたアプリケーションアイコン(例えば、音楽アプリケーションアイコン5002-38)に対応する場所においてタッチスクリーン112で検出される。図5Iは、ジェスチャを検出することに応答して、視覚的に区別されたアプリケーションアイコン(例えば、5002-38)がアプリケーションアイコン領域から除去されることを示す。更にジェスチャに応答して、多機能デバイスは対応するアプリケーション(例えば、音楽アプリケーション)を閉じる。視覚的に区別されたアプリケーションアイコン(例えば、5002-38)が除去された後、多機能デバイスは、視覚的な区別なしで(例えば、アプリケーションアイコンは淡色表示されない)アプリケーションアイコンの新しいセットを表示する。アプリケーションアイコンの新しいセットは、閉じられたアプリケーションアイコンを除けば、アプリケーションアイコンの初期のセットに含まれたアプリケーションアイコンを含む(例えば、5002-37、5002-26及び5002-32)。更なるアプリケーションアイコン(例えば、5002-35)は、アプリケーションアイコンの新しいセットに追加される。また、視覚的に区別されたアプリケーションアイコンを除去した後、多機能デバイスは、アプリケーション終了モードを終了してアプリケーション選択モードに戻る。いくつかの実施形態において、アプリケーション終了アイコン5012-1に対応する場所におけるフィンガージェスチャ(例えば、タップジェスチャ)は、視覚的に区別されたアプリケーションアイコンを除去する。)

上記引用例1の記載、引用例1の図5A-5I及びこの分野の技術常識を考慮すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「タッチスクリーンを備えたポータブルデバイスを制御する方法において、
タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを選択するアプリケーション選択モードを開始すると、同時にオープンしているアプリケーションのうちの少なくとも一部に対応する、オープンしているアプリケーションアイコンが表示され、
前記アプリケーション選択モードにおいて、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを閉じるために、アプリケーションアイコンに対応する場所において押下及び保持ジェスチャが検出されるとアプリケーション終了モードが開始されて、前記アプリケーションアイコンは、タッチスクリーンに表示された残りのアプリケーションアイコンと視覚的に区別され、この状態でさらに視覚的に区別されたアプリケーションアイコンに対応する場所においてタップジェスチャが検出されると、前記視覚的に区別されたアプリケーションアイコンが除去された後、アプリケーションアイコンの新しいセットを表示する方法。」

イ 引用例2
原審の拒絶理由に引用された国際公開第2011/099803号(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

「[71] FIG. 4 is a flowchart illustrating a process of performing multi-tasking in a mobile terminal according to another embodiment of the present invention. FIG. 5 is a view explaining an operation of overlapping and displaying at least one executed application window in FIG. 4. FIG. 6 is a view explaining an operation of displaying at least one executed application window as a foreground window of a screen in FIG. 4. FIG. 7 is a view explaining an operation of canceling the selection of at least one executed application window in FIG. 4, FIG. 8 is a view explaining an operation of terminating at least one executed application window in FIG. 4, and FIGs. 9 and 10 are views explaining a zoom operation for at least one executed application window in FIG. 4.
[72] Referring to FIG. 4, while an operating application window being currently operated is being displayed in the display unit 160 of the mobile terminal, the controller 110 performs step 403. Here, the controller 110 determines if there is an application being executed in the mobile terminal. In step 403, when there is at least one executed application, the controller 110 senses it and informs the task manager 170.
[73] The called task manager 170 sets a currently operating application window as a background, and performs a list-up process (see FIG. 5) of overlapping and displaying at least one executed application window on a predetermined region of the screen of the display unit 160 to display the executed application window and the currently operating application window at the same time.
[74] FIG. 5 illustrates step 403 and shows an operation where a currently operating application window 161 is set as a background in the screen of the display unit 160, and at least one executed application window 162 is overlapped and displayed on a predetermined region of the screen, e.g. the lower portion of the screen, so that both the executed application window and the currently operating application window are displayed at the same time.
[75] In step 403, the task manager 170 determines a gesture of the user. When a first gesture is performed by the user in step 403, the task manager 170 senses it in step 404, the task manager 170 proceeds to step 405, (see FIG. 6) where the task manager 170 displays selected executed application as a foreground of the screen.
[76] FIG. 6 explains step 405. In particular, FIG. 6(a) illustrates an operation where a first gesture, e.g. a flick up or drag/drop up, is performed on one 502 of the executed application window 162, which is being displayed on the lower portion of the screen. Fig. 6(b) illustrates an operation of displaying the selected application window 502, which has been flicked up or dragged/dropped up, as a foreground.
[77] In operation, when a background is touched by the user in step 403, the task manager 170 senses it in step 404, the task manager 170 proceeds to step 406, where the task manager 170 shifts the currently operating application window, which has been set as the background, into a foreground of the screen, thereby returning to the original operating application window.
[78] Meanwhile, when a second gesture is performed by the user in step 403 (see FIG. 7), the task manager 170 senses it in step 404, and proceeds to step 407, where the task manager 170 again moves an application window, which has been selected from the predetermined region of the screen, into the predetermined region of the screen, thereby canceling the selection of the application. In step 407 (see FIG. 7), an application, which has been selected from a predetermined region of the screen in order to shift the selected application into a foreground of the screen, is again moved to and displayed in the predetermined region of the screen, so that the selection of the application is canceled.
[79] FIG. 7 explains step 407 and illustrates an operation where an application 503, which has been selected from a predetermined region of the screen, i.e. the lower portion of the screen, in order to display the application 503 as a foreground of the screen is moved to and displayed in the lower portion of the screen through a second gesture, e.g. a drag down, thereby canceling the selection of the application 503.
[80] Further, when a third gesture is performed by the user in step 403, the task manager 170 senses the gesture in step 404 and proceeds to step 408, where the task manager 170 terminates the application window selected from a predetermined region of the screen.
[81] FIG. 8 explains step 408 and illustrates an operation where an application 504 selected from the lower portion of the screen, which is a predetermined region of the screen, is terminated by the third gesture, e.g. a flick down or drag/drop down.」(段落[71]-[81])

(パテントファミリー文献である特表2013-519935号公報に基づく当審訳:
[71] 図4は、本発明の他の実施形態による携帯端末機でマルチタスキングを実行する手順を示すフローチャートであり、図5は、図4で実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーをオーバーラッピングし表示する動作を説明するための図であり、図6は、図4で実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーを画面のフォアグラウンドウィンドーとして表示する動作を説明するための図であり、図7は、図4で実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーの選択を取り消す動作を説明するための図であり、図8は、図4で実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーの終了動作を説明するための図であり、図9及び図10は、図4で実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーに対するズーム動作を説明するための図である。
[72] 図4を参照すると、携帯端末機の表示部160に現在操作中のアプリケーションウィンドーを表示する間に、制御部110はステップ403を実行する。この時に、制御部110は、携帯端末機で実行中のアプリケーションが存在するか否かを判定する。ステップ403で、実行中の少なくとも1つのアプリケーションが存在する場合に、制御部110は、これを感知しタスクマネージャー170を呼び出す。
[73] この呼び出されたタスクマネージャー170は、現在操作中のアプリケーションウィンドーをバックグラウンドとして設定し、この実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーを表示部160の画面の所定の領域にオーバーラッピングし表示するリストアップ工程(図5を参照)を実行することにより、この実行中のアプリケーションウィンドー及び現在操作中のアプリケーションウィンドーを同時に表示する。
[74] 図5は、ステップ403を説明するための図であり、表示部160の画面に現在操作中のアプリケーションウィンドー161をバックグラウンドとして設定し、この実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドー162をこの画面の所定の領域、例えば、この画面の下部にオーバーラッピングさせると同時に表示し、これにより、この実行中のアプリケーションウィンドー及び現在操作中のアプリケーションウィンドーを同時に表示する動作を示す。
[75] ステップ403で、タスクマネージャー170は、ユーザのジェスチャーを判定する。第1のジェスチャーがステップ403でユーザにより実行される場合に、タスクマネージャー170は、ステップ404でこれを感知し、ステップ405に進み、この画面のフォアグラウンドとして実行中の選択されたアプリケーションを表示する。
[76] 図6は、ステップ405を説明するための図である。特に、図6Aは、この画面の下部に表示されているこの実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドー162のうちのいずれか1つ502に対して第1のジェスチャー、例えば、フリックアップ又はドラッグ/ドロップアップが実行される動作を示す。図6Bは、このフリックアップ又はドラッグ/ドロップアップが実行された選択されたアプリケーションウィンドー502をフォアグラウンドとして表示する動作を示す。
[77] 動作において、バックグラウンドがステップ403でユーザによりタッチされる場合に、ステップ404でタスクマネージャー170はこれを感知し、ステップ406に進み、このバックグラウンドとして設定された現在操作中のアプリケーションウィンドーを画面のフォアグラウンドに切り替えすることにより、元々の操作中のアプリケーションウィンドーに戻る。
[78] 一方、ステップ403で、第2のジェスチャーがユーザにより実行される場合に(図7を参照)、タスクマネージャー170は、ステップ404でこれを感知し、ステップ407に進み、この画面の所定の領域から選択されたアプリケーションウィンドーをこの画面の所定の領域にさらに移動することによりアプリケーションの選択を取り消す。ステップ407(図7を参照)において、この選択されたアプリケーションをこの画面のフォアグラウンドに切り替えするために、この画面の所定の領域から選択されたアプリケーションは、この画面の所定の領域に移動し表示することによりこのアプリケーションの選択を取り消す。
[79] 図7は、ステップ407を説明するための図であり、この画面のフォアグラウンドとしてアプリケーション503を表示するために、この画面の所定の領域、すなわち、この画面の下部から選択されたアプリケーション503を第2のジェスチャー、例えば、ドラッグダウンを介してこの画面の下部に移動させ表示することによりアプリケーション503の選択を取り消す動作を示す。
[80] また、第3のジェスチャーがステップ403でユーザにより実行される場合に、タスクマネージャー170はステップ404でこのジェスチャーを感知し、ステップ408に進み、この画面の所定の領域から選択されたアプリケーションウィンドーを終了する。
[81] 図8は、ステップ408を説明するための図であり、この画面の所定の領域であるこの画面の下部から選択されたアプリケーション504が第3のジェスチャー、例えば、フリックダウン又はドラッグ/ドロップダウンにより終了される動作を示す。)

上記引用例2の記載及び図4、5、8によれば、引用例2には、「実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーを画面の下部に表示し、例えばフリックダウン又はドラッグ/ドロップダウンである第3のジェスチャーが実行される場合に、選択されたアプリケーションウィンドーを終了すること」が記載されており、特に段落[80]、[81]及び図8を参酌すると、前記「フリックダウン又はドラッグ/ドロップダウンである第3のジェスチャー」は「接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャ」であるといえる。

また、アプリケーションウィンドーは「実行中の」アプリケーションに対して表示するものであるから、「選択されたアプリケーションウィンドーを終了する」際には、「選択されたアプリケーションウィンドーが消去される」ものと認められる。

以上を総合すると、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

「実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーを画面の下部に表示し、接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャが実行される場合に、選択されたアプリケーションウィンドーを消去すること」

(3)対比・判断

補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「タッチスクリーン」は、補正発明の「タッチスクリーンディスプレイ」に相当する。

イ 引用発明1の「ポータブルデバイス」は、補正発明の「装置」に相当する。

ウ したがって、引用発明1の「タッチスクリーンを備えたポータブルデバイスを制御する方法」は、後述する相違点を除き、補正発明の「タッチスクリーンディスプレイを備える装置を制御する方法」に相当する。

エ 引用発明1の「タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーション」は、補正発明の「実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれか」と、「所定の状態のアプリケーション」である点で共通する。

オ 引用発明1の「アプリケーションアイコン」は、補正発明の「アプリケーション」「を示す複数のオブジェクト」に相当する。

カ したがって、引用発明1の「タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを選択するアプリケーション選択モードを開始すると、同時にオープンしているアプリケーションのうちの少なくとも一部に対応する、オープンしているアプリケーションアイコンが表示され」る構成は、補正発明の「実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれかを示す複数のオブジェクトを含む画面を前記タッチスクリーンディスプレイに表示するステップ」の構成と、「所定の状態のアプリケーションを示す複数のオブジェクトを含む画面をタッチスクリーンディスプレイに表示するステップ」である点で共通する。

キ 引用発明1の「アプリケーションアイコン」(上記オのとおり、補正発明の「アプリケーション」「を示す複数のオブジェクト」に相当する)を除去するための操作として、引用発明1の「押下及び保持ジェスチャ」及び「タップジェスチャ」と、補正発明の「接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャ」とは、「ジェスチャ」である点で共通する。

ク 引用発明1の「アプリケーションアイコンが除去され」ることは、補正発明の「オブジェクトの表示を消去する」ことに相当する。

ケ 引用発明1の「アプリケーションアイコンの新しいセットを表示する」ことは、補正発明の「他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示する」ことに相当する。

コ したがって、引用発明1の「前記アプリケーション選択モードにおいて、同時にオープンしているアプリケーションのうちの1つを閉じるために、アプリケーションアイコンに対応する場所において押下及び保持ジェスチャが検出されるとアプリケーション終了モードが開始されて、前記アプリケーションアイコンは、タッチスクリーンに表示された残りのアプリケーションアイコンと視覚的に区別され、この状態でさらに視覚的に区別されたアプリケーションアイコンに対応する場所においてタップジェスチャが検出されると、前記視覚的に区別されたアプリケーションアイコンが除去された後、アプリケーションアイコンの新しいセットを表示する」ことと、補正発明の「複数の前記オブジェクトのいずれかに対して接触した状態で前記画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャが前記タッチスクリーンディスプレイを介して検出されると、当該フリックが検出された前記オブジェクトの表示を消去するとともに、他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示するステップ」とは、「複数の前記オブジェクトのいずれかに対するジェスチャがタッチスクリーンディスプレイを介して検出されると、当該ジェスチャが検出された前記オブジェクトの表示を消去するとともに、他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示するステップ」である点で共通する。

以上を総合すると、補正発明と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有する。

(一致点)
「タッチスクリーンディスプレイを備える装置を制御する方法であって、
所定の状態のアプリケーションを示す複数のオブジェクトを含む画面を前記タッチスクリーンディスプレイに表示するステップと、
複数の前記オブジェクトのいずれかに対するジェスチャがタッチスクリーンディスプレイを介して検出されると、当該ジェスチャが検出された前記オブジェクトの表示を消去するとともに、他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示するステップと、
を含む方法。」

(相違点1)
一致点の「所定の状態のアプリケーション」が、補正発明では「実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれか」であるのに対し、引用発明1では「タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーション」「のうちの少なくとも一部」である点。

(相違点2)
一致点の「ジェスチャ」が、補正発明では「接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャ」という1つのジェスチャであるのに対し、引用発明1では「押下及び保持ジェスチャ」及び「タップジェスチャ」という2つの一連のジェスチャである点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。

(相違点1)について
補正発明の「実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれか」は、これらアプリケーションからの択一的な選択を意味するから、「実行しているアプリケーションのみ」を含むことは明らかである。
そして、引用発明1の「タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーション」は、少なくとも「実行しているアプリケーション」を含んでいるといえる。
してみれば、補正発明の「実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれかを示す複数のオブジェクトを含む画面を前記タッチスクリーンディスプレイに表示するステップ」は、引用発明1の「タッチスクリーン上に現在表示されているアクティブなアプリケーション、タッチスクリーン上に現在表示されていないが実行されているバックグラウンドアプリケーション、現在実行していない中断されたアプリケーションであり揮発性メモリに格納されるアプリケーション、又は、実行していない休止状態のアプリケーションであり不揮発性メモリに格納されるアプリケーションのいずれかである、同時にオープンしているアプリケーション」「のうちの少なくとも一部に対応する、オープンしているアプリケーションアイコンが表示され」る構成を包含するから、相違点1は実質的な相違点ではない。

(相違点2)について
上記引用例2には、上記「(2)イ」のとおり、「実行中の少なくとも1つのアプリケーションウィンドーを画面の下部に表示し、接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャが実行される場合に、選択されたアプリケーションウィンドーを消去すること」との引用発明2が開示されている。
引用発明1と引用発明2とは、ともにジェスチャによってアプリケーションを示すオブジェクトを消去するものである点で共通するから、引用発明1の「押下及び保持ジェスチャ」及び「タップジェスチャ」という2つの一連のジェスチャに代えて、引用発明2の「接触した状態で画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャ」という1つのジェスチャを採用することにより、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)まとめ
以上のとおり、補正発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年7月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年10月5日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項4】
タッチスクリーンディスプレイを備える装置を制御する方法であって、
実行しているアプリケーション及び実行が終了したアプリケーションのいずれかを示す複数のオブジェクトを含む画面を前記タッチスクリーンディスプレイに表示するステップと、
複数の前記オブジェクトのいずれかに対して前記画面の外へ向かう方向へのフリックジェスチャが前記タッチスクリーンディスプレイを介して検出されると、当該フリックが検出された前記オブジェクトの表示を消去するとともに、他のアプリケーションを示す他のオブジェクトを新たに表示するステップと、
を含む方法。」

2.引用例の記載事項
引用例の記載事項は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用例の記載事項」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-06 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2012-188103(P2012-188103)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 志保中野 裕二篠塚 隆  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 土谷 慎吾
千葉 輝久
発明の名称 装置、方法、プログラム、及び記憶媒体  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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