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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1326873 |
審判番号 | 不服2015-21098 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-27 |
確定日 | 2017-04-06 |
事件の表示 | 特願2012-212785「電子機器、制御方法、及び制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 67266〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年9月26日の出願であって,平成27年5月26日付けで拒絶理由通知がなされ,同年7月1日に手続補正がなされたが,同年8月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月27日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,当審において,平成28年8月26日付けで拒絶理由通知(最後)がなされ,同年10月26日に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年10月26日付け手続補正の補正却下の決定について [補正却下の決定の結論] 平成28年10月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1. 手続補正の内容 上記手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は次のように補正された(下線は,審判請求人が付与したものである。)。 <本件補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージと, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラとを有する電子機器。 【請求項2】 前記画像のファイル一覧を表示するディスプレイをさらに有し, 前記コントローラは,前記ストレージのフォルダに記憶されている前記画像のファイル一覧を表示する前記ディスプレイ上で,前記グループの設定または設定解除の操作をユーザから受け付ける請求項1に記載の電子機器。 【請求項3】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージとを有する電子機器を制御する制御方法であって, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定を受け付けるステップと, 前記グループに紐付けて前記画像のデータを前記ストレージのフォルダに格納するステップとを含む制御方法。 【請求項4】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージとを有する電子機器に, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定を受け付けるステップと, 前記グループに紐付けて前記画像のデータを前記ストレージのフォルダに格納するステップとを実行させる制御プログラム。」 <本件補正後の特許請求の範囲> 「【請求項1】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージと, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,コメントを入力して挿入した撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラとを有する電子機器。 【請求項2】 前記画像のファイル一覧を表示するディスプレイをさらに有し, 前記コントローラは,前記ストレージのフォルダに記憶されている前記画像のファイル一覧を表示する前記ディスプレイ上で,前記グループの設定または設定解除の操作をユーザから受け付ける請求項1に記載の電子機器。 【請求項3】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージとを有する電子機器を制御する制御方法であって, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定を受け付けるステップと, 前記グループに紐付けてコメントを入力して挿入した前記画像のデータを前記ストレージのフォルダに格納するステップとを含む制御方法。 【請求項4】 カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージとを有する電子機器に, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定を受け付けるステップと, 前記グループに紐付けてコメントを入力して挿入した前記画像のデータを前記ストレージのフォルダに格納するステップとを実行させる制御プログラム。」 2. 独立特許要件について 本件補正は,拒絶理由通知(最後)に係る指定期間内にする補正であることから,特許法第17条の2第1項第3号に掲げる場合(最後に受けた拒絶理由通知に係る指定期間内にするとき)の補正に該当する。 さらに,本件補正は,請求項1において,「撮影した画像」を「コメントを入力して挿入した撮影した画像」に限定し,請求項3,4において,「前記画像のデータ」を「コメントを入力して挿入した前記画像のデータ」に限定するものであるから,同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか,すなわち,同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるかについて検討する。 (1) 引用文献 (1-1) 特開2008-5344号公報 当審の拒絶理由通知において引用された特開2008-5344号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア.「【0040】 図3は,本実施形態のデジタルカメラ20のブロック図であり,本実施形態の構成を理解する上で直接,必要とされない要素,例えば,CPUや,画像再生に関係する部分などは省略している。 【0041】 図3において,撮影システム201は,撮影を行うための一連の装置が含まれており,例えば,レンズや絞り,CCD,画像処理装置などがこれに含まれる。 【0042】 UI管理システム202は,デジタルカメラ本体のUIを制御するためのもので,液晶画面209での表示内容の管理,また,操作ボタン210からの入力を管理する。なお,操作ボタン210は実際には図4での2101?2106の各種ボタンが相当し,複数個あることになる。 【0043】 ファイル管理システム203はデジタルカメラ20の記憶装置であるメモリーカード208へのアクセスを管理するものである。本実施形態のデジタルカメラ20では,メモリーカードとしてSD(登録商標)メモリーカードを備えている。撮影システム201で生成された画像データはファイルとしてSDカードに格納される。なお,デジタルカメラ20では,DCF(Design Rule for Camera File System)規格に準じたフォルダ構成,ファイルフォーマットで画像データをSDカードに記録する。 【0044】 通信管理システム204は,USBインターフェース205を介してPC本体10との通信を行う。 【0045】 タグ付け管理システム221は,本実施形態による画像ファイルへのタグ情報の付加に関する一連の処理を行う。 【0046】 不揮発性ROM211は,デジタルカメラ20の動作等を制御するための各種パラメータ等を格納する。本実施形態では,タグ付け管理システム221の管理情報もこのROM211に格納される。また,UI管理システム202で必要となるフォントデータもこの ROM211に格納される。 【0047】 上記各システム201から204,221,不揮発性ROM211,操作ボタン210液晶画面209,メモリーカード208,USBインターフェース205は中央制御制御システム200により統括して制御される。」 イ.「【0049】 ユーザは,デジタルカメラ20で画像を撮影する前に,図4に示すタグ付けメニュー画面2090を介して撮影画像に付加するタグ情報を指定,選択する。図4に示すタグ付けメニュー画面を表示するには,モード切替スイッチ2106を"REC"(撮影モード)にし,メニューボタン2103を押せばよい。タグ付けメニュー画面では,移動ボタン2105を押し,予め用意された複数のタグ2092から所望のタグを選択することができる。また,タグを付加しない場合は,タグ無し2093を選択すればよい。 【0050】 図4では,"☆ Star"タグ2091が選択された状態を示している。所望のタグを選択している状態で,セットボタン2104を押すことにより,画像ファイルに付加されるタグ情報が決定される。その後,撮影可能状態に戻り,撮影を行って生成された画像ファイルには,上記のように選択したタグ情報が付加される。 【0051】 図5は,タグ情報が付加された画像ファイルをデジタルカメラの液晶画面209で再生したときの画面を例示している。 【0052】 本実施形態のデジタルカメラ20では,各タグ情報5001?5004に応じて再生する画像を選別できる再生モード("PLAY")を備えている。図5では,タグ情報として"☆"5001が付加された画像299のみを選別して表示する場合の画面を示している。」 ウ.「【0078】 図11は,本実施形態のデジタルカメラによるタグ付け処理を示すフローチャートである。 【0079】 図11において,S11では,撮影システム201が撮影を行い,画像データが生成される。撮影に関する処理については,本実施形態とは,直接関係ないため説明は省略する。 【0080】 次に,S12では,画像ファイルを構成するヘッダー情報,具体的には,図10に示す画像ファイルにおける1002の部分を生成する。 【0081】 次に,S13では,タグ付け管理システム221は,図4のタグ付けメニューによりタグ付けが設定されているか判定する。タグ付け管理システム221では,不揮発性ROM211に格納されたタグデータ管理テーブル70の現在の設定74をチェックし,Trueのがあるか判定する。そして,タグ付けが設定されている場合には,S14に移行し,設定されていない場合には,S15に移行する。 【0082】 S14では,画像ファイル内のMakerNote領域1003に,タグ付け管理テーブル70の現在の設定74で指定されているタグデータを設定する。・・・(中略)・・・ 【0083】 S15では,上記のようにタグ情報が設定されたヘッダー情報を画像ファイルに付加してメモリーカードに格納する。」 前記ア.?ウ.及び関連する図の記載によれば,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「撮影システム201と, デジタルカメラ本体のUIを制御し,液晶画面209での表示内容の管理,また,操作ボタン210からの入力を管理するUI管理システム202と, 撮影システム201で生成された画像データを,DCF(Design Rule for Camera File System)規格に準じたフォルダ構成,ファイルフォーマットでメモリーカードに記録するファイル管理システム203と, 画像ファイルへのタグ情報の付加に関する一連の処理を行うタグ付け管理システム221と, 前記各システム,操作ボタン,液晶画面,メモリーカードを統括して制御する中央制御システム200とを有し, デジタルカメラ20で画像を撮影する前に,タグ付けメニュー画面2090を介して撮影画像に付加するタグ情報を指定,選択し, その後,撮影を行って生成された画像ファイルに,選択したタグ情報を付加して,メモリーカードに格納し, 各タグ情報に応じて再生する画像を選別できる再生モードを備えた,デジタルカメラ20。」 (2-2) 特開2002-300513号公報 当審において新たに引用する特開2002-300513号公報(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 エ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,撮影した画像に所望のコメントを付加することのできる電子カメラに関する。」 オ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで,撮影時の感想や撮影情報(だれと一緒に行ったか,どこへ行ったか,エピソード)などのコメントを,被写体を撮影したときに撮影画像とともに記録できれば,その画像を再生した時に撮影当時の風景や状況などの記憶をより鮮明に蘇らせることが可能となるので望ましい。 【0004】従来の画像処理装置にあっては,記録媒体に記録されたすべてのコマの画像に,撮影画像を記録した後の編集作業でコメントを添付するものであるため,撮影時に抱いた感想や詳細な撮影情報を添付することは難しい。特に,撮影時から編集時までに時間が空いていると,撮影時の感想等を思い出すことは困難で,添付される情報は撮影直後に添付したものと異なることが多い。 ・・・(中略)・・・ 【0007】本発明は,上記に鑑みてなされたもので,各コマの撮影時に当該コマの撮影画像に関する情報を,撮影画像とともに記録することのできる電子カメラを提供することを目的とする。」 カ.「【0024】以上の構成に加えて,上述したように,本実施形態に係るデジタルカメラ1は,撮影者の希望により,各コマの撮影時に,撮影画像に対する種々の文字情報を入力することができるようになっている。デジタルカメラ1は,撮影画像データをメモリカード20に記録する前にコメントを付加するか否かを撮影者に選択させ,コメントの付加が撮影者により選択されると,文字情報を入力するためのモード(以下,コメント付加モードという)となり,このモードにおいて所望の文字情報が入力されると,この文字情報を撮影画像データとともにメモリカード20に記録するように構成している。 【0025】シャッターボタン5を全押ししてレリーズを行うと,図3に示すように,画面左側に撮影画像Gが,画面右側にこの撮影画像Gの取り扱いについて撮影者に選択させる複数の項目キーKがそれぞれ表示された画面(以下,この画面をメニュー画面という)がLCD表示部60に表示される。この時点では,撮影画像Gの画像データはメモリカード20に記録されておらず,撮影画像データをメモリカード20に記録する前に,「記録」キーK1,「写しこみ」キーK2及び「削除」キーK3によって,メモリカード20へ撮影画像データを記録するか否か,メモリカード20へ撮影画像データを記録する場合にはコメントをその撮影画像に付加するか否かを撮影者に選択させるようになっている。」 キ.「【0027】このメニュー画面で「写しこみ」キーK2が選択されると,デジタルカメラ1はコメント付加モードとなり,LCD表示部60には図4に示すコメント入力画面が表示される。このコメント入力画面には,各種のアルファベットや数字等のキャラクタを入力するためのキャラクタキーが表示されている。」 ク.「【0032】コメント入力画面においてコメント入力が完了すると,LCD表示部60には,図5の矢印Pで示すように,入力したコメントが例えば撮影画像の下側の位置に各キャラクタを横方向に並べて合成された合成画像G’が,当該画像G’のメモリカードMへの記録処理が完了するまでの間,表示される。」 ケ.「【0070】次に,本発明の第2の実施形態について説明する。 【0071】本実施形態においては,キャラクタデータの記録方式が上記第1実施形態と異なり,それ以外の部分については第1の実施形態と略同様であるから,上記相違点についてのみ説明し,同様の部分については説明を省略するものとする。 ・・・(中略)・・・ 【0073】図11に示すように,第1の実施形態においては,メモリカード20にnコマの画像ファイルが記録されているものとすると,各コマの画像ファイルには,キャラクタデータと撮影画像データとが合成された一の画像データとタグデータとが存在する。一方,第2の実施形態においては,このようにキャラクタデータと撮影画像データとを一の画像データに合成してメモリカード20に記録するのではなく,図12に示すように,撮影画像データとキャラクタデータとを相互に独立したデータとして扱い,上記両データを互いに関連付けた状態でそれらを一つのファイルとしてまとめて記録するようにしている。」 前記エ.?ケ.及び関連する図の記載によれば,引用文献2には,第2の実施形態に係る電子カメラとして,次の発明が記載されている。 <引用文献2記載の発明> 「撮影した画像に所望のコメントを付加することのできる電子カメラであって, シャッターボタン5を全押ししてレリーズを行うと,撮影画像Gと,この撮影画像Gの取り扱いについて選択させるメニュー画面を表示し, この時点では,撮影画像Gの画像データはメモリカード20に記録されておらず,メモリカード20へ撮影画像データを記録するか否か,メモリカード20へ撮影画像データを記録する場合にはコメントをその撮影画像に付加するか否かを撮影者に選択させ, コメントを撮影画像に付加することが選択されると,コメント入力画面を表示し, コメント入力画面においてコメント入力が完了すると,撮影画像データとコメントとを相互に独立したデータとして扱い,上記両データを互いに関連付けた状態でそれらを一つのファイルとしてまとめてメモリーカードに記録する,電子カメラ。」 (2) 対比 次に,補正発明と引用発明とを対比する。 ・補正発明の「カメラ」について検討する。 本願明細書には,「カメラ」について次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した)。 「【0011】 図1に示すように,スマートフォン1は,ディスプレイ2と,ボタン3と,照度センサ4と,近接センサ5と,通信ユニット6と,レシーバ7と,マイク8と,ストレージ9と,コントローラ10と,スピーカ11と,カメラ12と,姿勢検出ユニット15と,バイブレータ18と,タッチスクリーン21とを備える。」 「【0033】 カメラ12は,撮影した画像を電気信号へ変換する。カメラ12には,例えば,ディスプレイ2に面している物体を撮影するインカメラ,ディスプレイ2の反対側の面に面している物体を撮影するアウトカメラが含まれる。」 上記記載によれば,「カメラ」は,撮影した画像を電気信号へ変換する構成部分を指し,コントローラ10やディスプレイ2,ボタン3などは「カメラ」に含まれない。 そうすると,引用発明は,「撮影システム201」,「中央制御システム200」,「液晶画面209」,「操作ボタン210」などを備えた「デジタルカメラ20」であるものの,そのうち,「撮影システム201」が,補正発明の「カメラ」に相当するといえる。 ・引用発明の「メモリーカード」は,撮影システムで生成された画像データを,DCF規格に準じたフォルダ構成で記録する。 したがって,引用発明の上記「メモリーカード」と,補正発明の「前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージ」は,「前記カメラにより撮影された画像のデータをフォルダに記憶するストレージ」の点で共通する。 ・引用発明のタグ情報は,再生する画像の選別に使用されるから,画像をグループ化する情報である。したがって,タグ情報を指定・選択することは,グループの指定にほかならない。 よって,引用発明の「デジタルカメラ20で画像を撮影する前に,タグ付けメニュー画面2090を介して撮影画像に付加するタグ情報を指定,選択し」は,補正発明の「前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い」に相当する。 ・引用発明の「その後,撮影を行って生成された画像ファイルに,選択したタグ情報を付加して,メモリーカードに格納し」は,タグ情報を付加することで撮影した画像をグループに紐付け,DCF規格に準じたフォルダに格納することといえる。 したがって,引用発明の上記構成と,補正発明の「前記カメラにより画像を撮影した後に,コメントを入力して挿入した撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納する」は,「前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納する」の点で共通する。 ・引用発明においては,「前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い」の動作,及び,「前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納する」の動作を,「デジタルカメラ本体のUIを制御し,液晶画面209での表示内容の管理,また,操作ボタン210からの入力を管理するUI管理システム202と, 撮影システム201で生成された画像データを,DCF(Design Rule for Camera File System)規格に準じたフォルダ構成,ファイルフォーマットでメモリーカードに記録するファイル管理システム203と, 画像ファイルへのタグ情報の付加に関する一連の処理を行うタグ付け管理システム221と, 前記各システム,操作ボタン,液晶画面,メモリーカードを統括して制御する中央制御システム200」において行うから,これらの構成は,全体として,上記動作を行うためのコントローラといえる。 したがって,引用発明の上記構成と,補正発明の「前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,コメントを入力して挿入した撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラ」は,「前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラ」の点で共通する。 ・引用発明の「デジタルカメラ」と「メモリーカード」は,全体として補正発明の「電子機器」に相当する。 したがって,補正発明と引用発明は,次の点で一致及び相違する。 <一致点> 「カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータをフォルダに記憶するストレージと, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラとを有する電子機器。」 <相違点1> 「フォルダ」が,補正発明では,「同一のフォルダ」であるのに対し,引用発明では「同一」であるか否か不明である点。 <相違点2> 「撮影した画像」が,補正発明では「コメントを入力して挿入した」ものであるのに対し,引用発明では,「コメントを入力して挿入した」ものではない点。 (3) 判断 <相違点1>について 引用発明は,DCF規格に準じたフォルダに画像データを格納するが,このDCF規格において,撮影された複数の画像データが,4桁の連番数字を含んだファイル名で,同一のDCFディレクトリ(フォルダ)に格納されることは周知である。 してみると,引用発明において,DCF規格の周知事項に基づき,カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶することは,容易に想到し得ることである。 <相違点2>について 補正発明の「コメントを入力して挿入した撮影した画像」について,本願明細書には次の事項が記載されている。 「【0027】 ・・・(中略)・・・画像のデータには,コメントのデータが挿入される場合がある。コメントのデータは,テキストデータとして,画像のデータに関連付けられる。」 「【0046】 図3に示すように,スマートフォン1は,タッチスクリーン21を介して,画面50の撮影ボタン50aに対する操作を検出すると(ステップS21),カメラ12により撮影された画像のデータを取得し,画像に挿入するコメントをユーザから受け付けるためのコメント入力ウィンドウ50eをディスプレイ2に表示する(ステップS22)。・・・(中略)・・・ 【0047】 続いて,スマートフォン1は,コメント入力ウィンドウ50eに入力された文字が確定されると(ステップS23),選択中のグループ(例えば,旅行)に紐付けて,取得した画像のデータ,及び入力されたコメントを画像フォルダ9Bに格納し,ユーザに対するメッセージを表示する(ステップS24)。」 上記記載によれば,スマートフォンは,画像を撮影した後にコメント入力ウィンドウを表示し,コメント入力ウィンドウに入力された文字をテキストデータとして撮影した画像に関連付け,このコメントデータと画像データとを画像フォルダに格納する。 したがって,補正発明の「コメントを入力して挿入した撮影した画像」は,コメント入力のための画面を介して入力されたコメントが関連付けられた「撮影した画像」を含む。 一方,引用文献2には,「従来の画像処理装置にあっては,記録媒体に記録されたすべてのコマの画像に,撮影画像を記録した後の編集作業でコメントを添付するものであるため,撮影時に抱いた感想や詳細な撮影情報を添付することは難しい。特に,撮影時から編集時までに時間が空いていると,撮影時の感想等を思い出すことは困難で,添付される情報は撮影直後に添付したものと異なることが多い。」(前記3.(2-2)オ.参照)という課題を解決するための電子カメラが記載されている。 この電子カメラは,「シャッターボタン5を全押ししてレリーズを行うと,撮影画像Gと,この撮影画像Gの取り扱いについて選択させるメニュー画面」を表示し,そのメニュー画面において「コメントを撮影画像に付加することが選択されると,コメント入力画面を表示し,コメント入力画面においてコメント入力が完了すると,撮影画像データとコメントとを相互に独立したデータとして扱い,上記両データを互いに関連付けた状態でそれらを一つのファイルとしてまとめてメモリーカードに記録する」ものである。 撮影時に抱いた感想や詳細な撮影情報を添付できるようにするために,引用発明に,引用文献2に記載されたコメントの記録機能を付加して,画像を撮影した後に,コメント入力画面を表示し,入力されたコメントを撮影した画像に関連付け,このコメントとタグ情報と画像データとを同一のフォルダに格納することは格別困難ではない。 してみると,引用発明において,撮影時に抱いた感想や詳細な撮影情報を添付できるように,引用文献2に記載されたコメントの記録機能を付加し,相違点2に係る補正発明の構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。 そして,補正発明の作用効果も,引用発明,引用文献2記載の発明,及び,周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,補正発明は,引用発明,引用文献2記載の発明,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3. 補正却下の決定のまとめ 以上のとおり,補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1. 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年11月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 <本願発明> 「カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶するストレージと, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラとを有する電子機器。」 2.引用発明 引用発明は,「第2 平成28年10月26日付け手続補正の補正却下の決定について」の「2.」「(1)」「(1-1) 特開2008-5344号公報」において「引用発明」として認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は,上記補正発明から,「撮影した画像」について「コメントを入力して挿入した」の限定を除いたものである。 したがって,本願発明と引用発明との一致点は,補正発明と引用発明との前記一致点と同じであり,本願発明と引用発明との相違点は,補正発明と引用発明との相違点1のみである。 <一致点> 「カメラと, 前記カメラにより撮影された画像のデータをフォルダに記憶するストレージと, 前記カメラにより画像を撮影する前に,撮影する画像のグループの指定の受け付けを行い,前記カメラにより画像を撮影した後に,撮影した画像を前記グループに紐付けて前記フォルダに格納するコントローラとを有する電子機器。」 <相違点> 「フォルダ」が,補正発明では,「同一のフォルダ」であるのに対し,引用発明では「同一」であるか否か不明である点。 上記相違点については,補正発明と引用発明との相違点1について検討したとおりであり,引用発明は,DCF規格に準じたフォルダに画像データを格納するが,このDCF規格において,撮影された複数の画像データが,4桁の連番数字を含んだファイル名で,同一のDCFディレクトリ(フォルダ)に格納されることは周知であり,引用発明において,DCF規格の周知事項に基づき,カメラにより撮影された画像のデータを同一のフォルダに記憶することは,容易に想到し得ることである。 そして,本願発明の作用効果も,引用発明,及び,周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 よって,本願発明は,引用発明,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-01-25 |
結審通知日 | 2017-01-31 |
審決日 | 2017-02-22 |
出願番号 | 特願2012-212785(P2012-212785) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀樹 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
手島 聖治 相崎 裕恒 |
発明の名称 | 電子機器、制御方法、及び制御プログラム |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |