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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1326920
審判番号 不服2016-10494  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-12 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2012- 47018「半導体素子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 4961、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年(2012年)3月2日(パリ優先権主張2011年6月10日 台湾)を出願日とする出願であって、平成24年5月23日付で審査請求がなされ、平成25年12月20日付で拒絶理由が通知され、平成26年5月26日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年11月28日付で拒絶理由が通知され、平成27年6月1日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成28年3月10日付で補正却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年7月12日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 補正の適否について
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成28年7月12日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「【請求項1】
GaN系の半導体材料でできている本体(21)と、
外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)とを有する半導体素子であって、
前記電極構造物(23)は、
チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、
チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、
銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含むこと、を特徴とする、半導体素子。
【請求項2】
前記電極構造物(23)を2つ含むとともに、
導体材料でできており、前記本体(21)上に、2つの前記電極構造物(23)から互いに分離されるように形成されるゲート電極層(221)を更に含むこと、を特徴とする、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有するとともに、前記回路層(233)は、銅でできており、50nmから150nmの厚みを有すること、を特徴とする、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記本体(21)は、
主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層(212)と、
主にアルミニウム窒化ガリウムでできており、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記第1のフィルム層(212)上に形成される第2フィルム層(213)とを含むこと、を特徴とする、請求項3に記載の半導体素子。」
(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
GaN系の半導体材料でできている本体(21)、および、
外部回路に接続されるように構成され、本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)であって、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)、前記本体(21)の反対側の前記オーミック接触層(231)上に形成されるバッファ層(232)、および、銅系の材料でできており、前記オーミック接触層(231)の反対側の前記バッファ層(232)と直接接触する回路層(233)を含み、前記オーミック接触層(231)は、チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記バッファ層(232)は、チタンでできている、電極構造物を含むこと、を特徴とする、半導体素子。
【請求項2】
前記電極構造物(23)のうちの2つを含み、そして、導体材料でできており、かつ、前記本体(21)上に形成されて、前記電極構造物(23)から分離されているゲート電極層(221)を更に含むこと、を特徴とする、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有し、そして、前記回路層(233)は、銅でできており、かつ、50nmから150nmの厚みを有すること、を特徴とする、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記本体(21)は、主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層(212)と、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記 第1のフィルム層(212)上に形成され、かつ、主にアルミニウム窒化ガリウムでできている第2フィルム層(213)とを含むこと、を特徴とする、請求項 3に記載の半導体素子。」
2 補正の適否について
(1)補正の内容
補正後の請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ補正前の請求項1ないし4に係る発明に対応し、補正前の請求項に係る発明に次の補正がなされたものである。
ア 補正前の請求項1の「前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)、前記本体(21)の反対側の前記オーミック接触層(231)上に形成されるバッファ層(232)、および、銅系の材料でできており、前記オーミック接触層(231)の反対側の前記バッファ層(232)と直接接触する回路層(233)を含み、前記オーミック接触層(231)は、チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記バッファ層(232)は、チタンでできている、電極構造物を含むこと」を、「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含むこと」とする補正。(以下、「補正事項ア」という。)
イ 補正前の請求項2の「前記電極構造物(23)のうちの2つを含み、そして、導体材料でできており、かつ、前記本体(21)上に形成されて、前記電極構造物(23)から分離されているゲート電極層(221)を更に含むこと」を「前記電極構造物(23)を2つ含むとともに、導体材料でできており、前記本体(21)上に、2つの前記電極構造物(23)から互いに分離されるように形成されるゲート電極層(221)を更に含むこと」とする補正。(以下、「補正事項イ」という。)
ウ 補正前の請求項3の「前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有し、そして、前記回路層(233)は、銅でできており、かつ、50nmから150nmの厚みを有すること」を、「前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有するとともに、前記回路層(233)は、銅でできており、50nmから150nmの厚みを有すること」とする補正。(以下、「補正事項ウ」という。)
エ 補正前の請求項4の「主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層(212)と、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記 第1のフィルム層(212)上に形成され、かつ、主にアルミニウム窒化ガリウムでできている第2フィルム層(213)とを含むこと」を、「主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層(212)と、主にアルミニウム窒化ガリウムでできており、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記第1のフィルム層(212)上に形成される第2フィルム層(213)とを含むこと」とする補正。(以下、「補正事項エ」という。)
(2)補正の適否
ア 補正事項アについて検討すると、補正事項アにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項アは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項アは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項アは、補正前の「前記本体(21)の反対側の前記オーミック接触層(231)上に形成されるバッファ層(232)」について、「前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項アは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、下記「第5」のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
イ 補正事項イについて検討すると、補正事項イにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項イは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項イは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項イは、補正前の「前記電極構造物(23)から分離されているゲート電極層(221)」について、「2つの前記電極構造物(23)から互いに分離されるように形成されるゲート電極層(221)」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項イは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項2に係る発明は、下記「第5」のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
ウ 補正事項ウについて検討すると、補正事項ウにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項ウは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項ウは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項ウは、補正前の「前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有し、そして、前記回路層(233)は、銅でできており、かつ、50nmから150nmの厚みを有すること」について、「前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有するとともに、前記回路層(233)は、銅でできており、50nmから150nmの厚みを有すること」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項ウは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項3に係る発明は、下記「第5」のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
エ 補正事項エについて検討すると、補正事項エにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項エは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項エは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項エは、補正前の「前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記 第1のフィルム層(212)上に形成され、かつ、主にアルミニウム窒化ガリウムでできている第2フィルム層(213)」について、「主にアルミニウム窒化ガリウムでできており、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記第1のフィルム層(212)上に形成される第2フィルム層(213)」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項エは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項4に係る発明は、下記「第5」のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、同法第17条の2第3項、第4項及び第6項のそれぞれの規定に適合するから、適法にされたものである。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年7月12日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし4に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「GaN系の半導体材料でできている本体(21)と、
外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)とを有する半導体素子であって、
前記電極構造物(23)は、
チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、
チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、
銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含むこと、を特徴とする、半導体素子。」

第4 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1?4
・理由1
・引用文献等1?5
・備考
<請求項1?2,4について>
引用文献1(特に実施の形態1、図1?3参照)には、GaNからなる電子走行層3と、AlGaNからなる電子供給層4と、電子供給層4上に形成されたソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7を備えた電界効果トランジスタが記載されており、ソース電極5、ドレイン電極6は、電子供給層4とオーミック接触させるためのTi/AlSi/Moからなる接触部5b,6bと、Cuからなる積層部5c,6cとで構成されることが記載されている。
ここで、例えば、引用文献2(特に段落【0019】参照)、引用文献3(特に段落【0016】参照)に記載されているように、MoがCuの拡散を防止する機能を有することは、当業者に周知の事項であり、また、Cuの拡散を防止する材料として、Mo以外にTiがあることも周知の事項である。
したがって、引用文献1に記載された発明において、Mo層をTi層に置き換えることは、当業者が容易になし得たことである。(なお、出願人は意見書において、Mo層を残したままTi層を追加するものが得られるにすぎない旨主張しているが、MoがTiと同様にCuの拡散を防止するものであるから、Mo層をTi層に置き換えることは、当業者にとって容易である。)
また、Ti,Al,Niからなる合金材料をGaN系半導体材料にオーミック接触させる金属材料として用いることは、引用文献4(特に段落【0037】、【0024】参照)に記載されている。
したがって、引用文献1に記載された発明において、Ti/AlSiをTi,Al,Niからなる合金材料に置き換えることは、当業者が容易になし得たことである。

<請求項1?2,4について>
以上では、引用文献1を主引例としているが、引用文献4を主引例としても、進歩性は否定される。
すなわち、例えば引用文献1(特に実施の形態1、図1?3参照)、引用文献5(特に段落【0048】?【0049】参照)に記載されているように、オーミック電極上に配線等の目的でCuを積層することは通常おこなわれていることであり、例えば引用文献5(特に段落【0049】参照)に記載されているように、層間の反応を防ぐためにバリア金属膜を挿入することも通常おこなわれていることであって、例えば、引用文献2(特に段落【0019】参照)、引用文献3(特に段落【0016】参照)に記載されているように、Cuの拡散を防止する材料として、Tiは周知の事項であるから、引用文献4に記載された発明において、Ti,Al,Niからなる合金材料からなるオーミック電極(オーム接点15,16)上に、Cuの拡散を防止するTiを介してCuを積層することは、当業者が容易になし得たことである。

<請求項3について>
電極を構成する各膜の厚さは、オーミック特性や拡散防止特性等を考慮して、当業者が適宜設定し得た事項にすぎない。本願の請求項3で特定される値に臨界的意義は認められない。


引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2010-278333号公報
2.特開平10-199881号公報
3.特開平08-306694号公報
4.特表2010-537447号公報
5.特開2009-081177号公報」

第5 原査定の理由についての当審の判断
1 引用文献
(1)引用例1について
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-278333号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置1000の模式的な平面図である。この半導体装置1000は、複数の単位素子を含んで構成されている。図2は、図1に示す半導体装置1000の単位素子100を矢印Aの方向から見た断面斜視図である。
【0021】
この単位素子100は、Siからなる基板1と、AlN層とGaN層とを交互に積層して形成したバッファ層2と、アンドープのGaNからなる電子走行層3と、AlGaNからなる電子供給層4と、電子供給層4上に形成されたソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7を備えている。すなわち、この単位素子100は、AlGaN/GaNのヘテロ構造を有する電界効果トランジスタ(HFET)であり、電子走行層3に発生する2次元電子ガスをキャリアとして動作する。
【0022】
また、ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7は、電子供給層4と接触する接触部5b?7bと、接触部5b?7b上に積層した積層部5c?7cを、それぞれ有している。接触部5b、6bは、電子供給層4とオーミック接触させるためにTi/AlSi/Mo構造を有している。また、接触部7bは、電子供給層4とショットキー接触させるためにNi/Au構造を有している。また、積層部5c?7cはいずれもCuからなる。
【0023】
また、ソース電極5、ドレイン電極6はそれぞれ、外部と電気的に接続する共通のボンディングパッド5a、6aから櫛歯状に電極が延伸した構造を有しており、各櫛歯電極は単位素子100を含めた各単位素子に電極を提供している。ゲート電極7は、図示しないボンディングパッドにつながる連結電極7aからループ状に電極が延伸した構造を有しており、各ループ電極は単位素子100を含めた各単位素子に電極を提供している。このため、ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7には、ボンディングパッド5a、6a、連結電極7aから図2における紙面奥行き方向に手前側または奥側に向かって電流が流れることとなる。以下、この方向を電極の長さ方向という。」
イ 引用例1発明について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「アンドープのGaNからなる電子走行層3と、AlGaNからなる電子供給層4を備え、
ソース電極5、ドレイン電極6はそれぞれ、外部と電気的に接続する共通のボンディングパッド5a、6aから櫛歯状に電極が延伸した構造を有しており、
また、ソース電極5、ドレイン電極6は、
電子供給層4と接触する接触部5b,6bと、接触部5b,6b上に積層した積層部5c,6bとを有し、
接触部5b、6bは、電子供給層4とオーミック接触させるためにTi/AlSi/Mo構造を有し、
積層部5c,6cはCuからなる、
AlGaN/GaNのヘテロ構造を有する電界効果トランジスタ(HFET)。」
(2)引用例2について
ア 引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-199881号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0019】ここで、前記金属膜としてのTiN膜106aと106bは配線の主導電層であるCu膜107aを構成するCuの酸化やCuの絶縁膜中への拡散の防止、およぴ下層に存在する絶縁膜との間の密着性を確保する事を自的として形成されるものであり、この実施形態のようなTiN膜に限らず、その他にチタン(Ti)、バナジウム(∨)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)やこれらのケイ化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、およぴこれらを含有する合金を用いる事ができる。また、Cu膜107aも、特性改善を目的として他の元素が添加されたCuを主成分とするCu合金を用いても良い。そして、常法によりTiN膜106b、Cu膜107a、TiN膜106bをエッチングして、配線パターン化する。」
イ 引用例2記載事項について
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「配線の主導電層であるCu膜107aを構成するCuの酸化やCuの絶縁膜中への拡散の防止、およぴ下層に存在する絶縁膜との間の密着性を確保する事を自的として、チタン(Ti)膜もしくはモリブデン(Mo)膜を形成すること。」
(3)引用例3について
ア 引用例3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平08-306694号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例に対し図面を用いて詳細に説明する。図1に示すように、本発明に係る半導体配線構造の第1実施例においては、基板21上面に絶縁層23が積層され、該絶縁層23上面の所定領域に拡散障壁層25が形成され、該拡散障壁層25上面に第1金属の銅薄膜26が形成され、該銅薄膜26表面に前記第1金属の銅と反応した後第2金属化合物に変換された第2金属Tiを含有するTiCu層30と、該TiCu層30の表面上に形成された金属窒化物のTiN膜31とを有するパッシベーション層27が形成される。
【0016】そして、このように構成された本発明に係る半導体配線構造第1実施例の製造方法を説明すると次のようである。図2(A)に示すように、まず、単結晶シリコン基板21上面に絶縁層23が積層され、該絶縁層23上面に銅原子の拡散障壁層25が約500Åの厚さに積層される。この場合、Si_(3 )N_(4) 、TiN、TaN、ZrNの窒化物、またはMo、Ti、W、Ta、Zrの高融点金属、もしくはMoO、RuO_(2) 、Y_(2) O_(3) の伝導性酸化物、その他、銅と反応し金属化合物を形成するLa、Mg、Pt、Sr、Y等の金属中から1つの物質が選択され、該選択された物質が絶縁層23上面にスパッタリングまたはCVD法により拡散障壁層25として積層される。次いで、該拡散障壁層25上面に第1金属として銅またはアルミニウムの薄膜が形成されるが、以下、スパッタリングまたはCVD法により5000Åの厚さの銅薄膜26が形成された場合について説明する。次いで、図2(B)に示すように、該銅薄膜26表面に所定パターンの導電層感光膜(ホトレジスト膜)(図示せず)が形成され、マスクによりマスキングされない領域の銅薄膜26はSiCl_(4) /Cl_(2) /N_(2) の混合ガスのプラズマ雰囲気下でドライエッチングされ、その後マスキングされない領域の拡散障壁層25もドライエッチングされ、銅薄膜26および拡散障壁層25はそれぞれ所望のパターンに形成される。」
イ 引用例3記載事項について
上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体配線構造において、銅原子の拡散障壁層25として、MoもしくはTiが積層されること。」
(4)引用例4について
ア 引用例4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特表2010-537447号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0021】
(詳細な説明)
図1は、本発明の実施形態に従って構成されているHEMT10に基づくAlGaN/GaNの概略的な断面図を図示する。HEMTは、当該分野内で一般的によく理解されている材料(例えば、炭化ケイ素(SiC)またはサファイア(Al_(2)O_(3)))から形成された基板11を含む。GaN層12は、基板11上に提供される。HEMT10は、GaN層12の上に提供されたAlGaN層13を含む。
【0022】
好適には、SiCは、基板11を形成する。SiCの結晶格子構造は、サファイアよりも密にIII族窒化物に適合し、高品質のIII族窒化物薄膜をもたらす。さらには、SiCは、非常に高い熱伝導性を有し、非常に高い熱伝導性は、デバイスのより大きな総出力電力を可能にする。
【0023】
AlGaN層13は、GaN層12よりも広いバンドギャップを有し、そのことは、AlGaN層13からGaN層12への自由電荷移動をもたらす。電荷は、AlGaN層13とGaN層12との界面で蓄積し、二次元電子気体(2DEG)(図示されていない)を形成する。2DEGは、非常に高い電子移動度を有し、高周波数で非常に高い相互コンダクタンスを有するHEMT10をもたらす。ゲート14に印加される電圧は、ゲート14の下で2DEG内の電子の流れを制御し、電子の流れ全体に対する制御を可能にする。好適には、ゲート14は、ショットキーゲートである。
【0024】
AlGaN層13に提供されたソース接点15およびドレイン接点16は、好適にはチタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)で形成される。オーム接点15およびオーム接点16のために用いられる従来の合金は、Ti、Al、Niおよび金(Au)で形成される。Auの付加は、合金に形成しにくさを与え、そのため本発明の接点15および接点16は、好適にはAuを含まない。オーム接点に対する他の候補組成物は、窒化チタンタングステン(Ti-W-N)、窒化チタン(Ti-N)、モリブデン(Mo)およびケイ化モリブデンを含む。」
イ 引用例4発明および引用例4記載事項について
上記アの記載から、引用例4には、実質的に次の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されているものと認められる。
「炭化ケイ素(SiC)またはサファイア(Al_(2)O_(3))から形成された基板11上に、GaN層12が提供され、GaN層12の上にAlGaN層13に提供され、
AlGaN層13に提供されるオーム接点である、ソース接点15およびドレイン接点16は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)の合金で形成される、
HEMT10。」
また、上記アの記載から、引用例4には、実質的に次の事項(以下、「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「AlGaN層13に提供されるオーム接点である、ソース接点15およびドレイン接点16は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)の合金であること。」
(5)引用例5について
ア 引用例5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2009-081177号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0048】
図6に、エアブリッジ配線の概略断面図を示す。図4の上面図において、横方向に延びるソース配線23を、ドレイン配線24bが中空で持ち上げられてドレイン電極10aとドレイン電極パッド25を接続する箇所の概略断面図である。半絶縁性GaAs基板2の上にオーム性配線(第1層配線)として、ドレイン電極10a、ソース配線23、広い方形のドレイン電極パッド25が形成され、窒化シリコン(SiN)等の保護絶縁膜45で覆われる。オーム性配線10a,23,25は主に金(Au)で、厚さが0.5?1μm程度、保護絶縁膜45の厚さは50?200nm(=0.05?0.2μm)程度とすることができる。ドレイン電極10aの上で保護絶縁膜45が開口され、ドレイン配線24bが接続される。広い方形のドレイン電極パッド25の上でも保護絶縁膜45が開口され、広い方形のドレインパッド24aが接続される。そして、ドレイン電極10aに接続されるドレイン配線24bは、ドレインパッド24aに連なるように、ソース配線23の上を1?5μm程度の高さで、下側を中空48として持ち上げる。ドレイン配線24bおよびドレインパッド24aは、金(Au)等の低抵抗な配線金属膜47が、厚さ0.5?5μm程度で設けられる。また、エアブリッジ配線はフォトレジスト膜パターンを下敷きにし、最後に除去して中空とする。上層配線の金属をこのフォトレジスト膜パターンの上でエッチング加工するため、端が上に突き出た形状になる。加工精度を高めてこの突き出た部分をほとんど無くしてもよい。また、エアブリッジ配線の下の第1層配線をソース配線23としたが、ゲート電極と同時に形成された配線であってもよい。
【0049】
また、各々の配線膜はAuに限定されず、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の低抵抗な金属でもよい。必要に応じて配線層間の反応を防ぐため、白金(Pt)や窒化チタン(TiN)や珪化チタン(TiSi)等のバリア金属膜46を下地として厚さ数十?数百nm程度と挿入してもよい。特にAlとAuの配線層間は異常反応を生じ易いため、このようなバリア金属膜が有効である。例えば、高価なAuを削減するため、Auを含むオーム性配線を薄くし、この上にバリア金属膜を介して廉価なAlやCuなどの低抵抗な金属膜を厚く堆積することも可能である。」
イ 引用例5記載事項について
上記アの記載から、引用例5には、実質的に次の事項(以下、「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半絶縁性GaAs基板2の上にオーム性配線(第1層配線)として、ドレイン電極10a、ソース配線23、広い方形のドレイン電極パッド25を形成する際に、
オーム性配線10a,23,25として、銅(Cu)をもちい、
配線層間の反応を防ぐため、窒化チタン(TiN)や珪化チタン(TiSi)等のバリア金属膜46を下地として厚さ数十?数百nm程度挿入すること。」

2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明の「アンドープのGaNからなる電子走行層3と、AlGaNからなる電子供給層4」および「AlGaN/GaNのヘテロ構造を有する電界効果トランジスタ(HFET)」は、それぞれ本願発明の「GaN系の半導体材料でできている本体(21)」および「半導体素子」に相当する。
イ 引用例1発明の「ソース電極5」および「ドレイン電極6」は、「外部と電気的に接続」され、また、「電子供給層4と接触する接触部5b,6b」を有し、「接触部5b,6b」は、「Ti/AlSi/Mo構造」により「電子供給層4とオーミック接触」しているから、本願発明の「外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)」に相当する。
ウ 引用例1発明の「電子供給層4とオーミック接触させるためにTi/AlSi/Mo構造」を有する「接触部5b、6b」は、本願発明の「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)」と、「前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)」である点で共通する。
エ 引用例1発明の「Cuからなる」「積層部5c,6c」は、本願発明の「銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)」と、「銅系の材料でできて」いる「回路層(233)」である点で共通する。

そうすると、本願発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「GaN系の半導体材料でできている本体(21)と、
外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)とを有する半導体素子であって、
前記電極構造物(23)は、
前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、
銅系の材料でできている回路層(233)とを含むこと、を特徴とする、半導体素子。」
[相違点]
本願発明は、「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)」を有しているのに対して、引用例1発明は、「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできて」いる「オーミック接触層(231)」を有しておらず、また、「チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)」を有さず、さらに「銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)」を有していない点。
(2)本願発明と引用例1発明との対比についての当審の判断
[相違点]について検討する。
引用例1には、「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)」を備える「電極構造物(23)」について記載されておらず、また、引用例1の記載から、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
また、引用例2ないし4には、「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)と、チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)」を備える「電極構造物(23)」について記載されていない。
そうすると、引用例2ないし4の記載から、引用例1発明において、上記[相違点]について、本願発明と同様の方法を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明は、特に[相違点]に係る構成を有することによって、「高い信頼性を有する半導体素子を供給する」という(【0012】)格別の効果を有するものであるから、[相違点]に係る構成は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本願発明と引用例4発明とを対比する。
ア 引用例4発明の「GaN層12」および「AlGaN層13」は、本願発明の「GaN系の半導体材料でできている本体(21)」に相当する。
イ 引用例4発明の「ソース接点15およびドレイン接点16」は、「AlGaN層13に提供されるオーム接点」であり、「チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニッケル(Ni)の合金で形成され」ているから、本願発明の「チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)」に相当する。
また、引用例4発明の「ソース接点15およびドレイン接点16」は、外部の回路に接続されるものであることは明らかであるから、引用例4発明の「ソース接点15およびドレイン接点16」は、本願発明の「外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)」に相当する。
ウ 引用例4発明の「HEMT10」は、本願発明の「半導体素子」に相当する。

そうすると、本願発明と引用例4発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「GaN系の半導体材料でできている本体(21)と、
外部回路に接続されるように構成され、前記本体(21)上にこれとオーミック接触するように配置された少なくとも1つの電極構造物(23)とを有する半導体素子であって
前記電極構造物(23)は、
チタン、アルミニウム、ニッケルを含む合金でできており、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)を含むこと、を特徴とする、半導体素子。」

[相違点]
本願発明は「前記電極構造物(23)」が、「チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含」んでいるのに対して、引用例4発明は対応する構成が明記されていない点。
(4)本願発明と引用例4発明との対比についての当審の判断
[相違点]について検討する。
引用例4には、「前記電極構造物(23)」が、「チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含」むことについて記載されておらず、また、引用例4の記載から、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
また、引用例2,3および5には、「前記電極構造物(23)」が、「チタンでできており、前記オーミック接触層(231)上に形成され、後述する回路層(233)からの銅の拡散を防止するとともに該回路層(233)と前記オーミック接触層(231)との間のオーミック接触を確保するためのバッファ層(232)と、銅系の材料でできており、前記バッファ層(232)上にこれと直接接触するように形成される回路層(233)とを含」むことは、記載されていない。
そうすると、引用例2,3および5の記載から、引用例4発明において、上記[相違点]について、本願発明と同様の方法を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明は、特に[相違点]に係る構成を有することによって、「高い信頼性を有する半導体素子を供給する」という(【0012】)格別の効果を有するものであるから、[相違点]に係る構成は、引用例2ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明は、引用例2ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願の請求項2ないし4に係る発明の進歩性について
本願の請求項2ないし4は、請求項1を引用しており、本願の請求項2ないし4に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明が引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2ないし4に係る発明も、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 原査定の理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 結語
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由は発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-11 
出願番号 特願2012-47018(P2012-47018)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 朋一  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
飯田 清司
発明の名称 半導体素子  
代理人 岡田 全啓  

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