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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  G03G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03G
管理番号 1326948
異議申立番号 異議2016-700588  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-01 
確定日 2017-02-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5856634号発明「トナーバインダー及びトナー」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5856634号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-20〕について訂正することを認める。 特許第5856634号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5856634号の請求項1?20に係る特許(以下,それぞれ「本件特許1」?「本件特許20」といい,総称して「本件特許」という。)についての出願は,平成26年2月20日(優先権 平成25年8月26日,同年9月2日)に特許出願され,平成27年12月18日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について,平成28年2月10日に特許掲載公報が発行されたところ,特許掲載公報の発行の日から6月以内である平成28年7月1日に特許異議申立人 田中眞喜子から本件特許に対して特許異議の申立(以下「特許異議申立1」という。)がされ,また,同じく6月以内である同年8月5日に特許異議申立人 川上佳弘から本件特許1,本件特許4,本件特許5,本件特許13?本件特許20に対して特許異議の申立て(以下「特許異議申立2」という。)がされた。
特許異議申立1及び特許異議申立2は,特許法120条の3第1項の規定により,異議2016-700588号事件として併合して審理されることとなったところ,その後の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年10月 4日付け:取消理由通知書
(同年同月7日発送,この取消理由通知書によって通知された取消理由を,以下「本件取消理由」という。)
平成28年12月 5日付け:意見書(同年同月6日受付)
平成28年12月 5日付け:訂正請求書
(同年同月6日受付,この訂正請求書による訂正の請求及び訂正を,以下,それぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。)
平成28年12月12日付け:通知書
(特許法120条の5第5項の規定による訂正請求があった旨の通知,なお,通知書は同年同月15日に発送されたが,発送の日から30日以内に,いずれの特許異議申立人からも意見書は提出されなかった。)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に「(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)及び/又は結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり」とあるのを,「(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり」に訂正する,というものである(下線は当合議体が付した。)。
なお,請求項1の記載を引用して記載された請求項2?請求項20も,請求項1の記載の訂正に伴い連動して訂正されたこととなる。

2 訂正の適否
以下,本件訂正前の請求項1?請求項20を,それぞれ「訂正前請求項1」?「訂正前請求項20」というとともに,総称して「訂正前請求項」という。また,訂正前請求項1?訂正前請求項20に係る発明を,それぞれ,「訂正前発明1」?「訂正前発明20」というとともに,総称して「訂正前発明」という。訂正後についても,同様に,「訂正後請求項1」,「訂正後発明1」などという。
(1) 訂正前請求項1及び訂正後請求項1
ア 訂正前請求項1
訂正前請求項1の記載は,次のものである。
「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり,(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)及び/又は結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり,(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下であるトナーバインダー。」

イ 訂正後請求項1
訂正後請求項1の記載は,次のものである。
「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり,(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり,(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下であるトナーバインダー。」

(2) 特許法120条の5第2項について
訂正前請求項1には,「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり,(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)及び/又は結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり」と記載されている。
したがって,訂正前発明1は,「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり,(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)」である発明,すなわち,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まないトナーバインダーの発明を,発明の要旨に含むものと解釈できる。
ところが,訂正前請求項1には,「(A2)が(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり」とも記載されている。そして,この記載は,特許権者が,特許を受けようとする発明を特定するために必要と認めた事項である。
そうしてみると,訂正前発明1においては,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まないトナーバインダーの発明は,発明の要旨から除かれているという解釈が,一応,可能である。
したがって,訂正前発明1は,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まないトナーバインダーの発明を,発明の要旨に含むとも含まないとも解釈することが,一応,可能であるから,この点において,訂正前発明1は,必ずしも明確であるとはいえない状況であった。
これに対して,訂正後発明1は,本件訂正により,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であること(結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まないトナーバインダーの発明は,発明の要旨に含まれないこと)が明らかとなった。このことは,訂正後発明2?20についてみても,同様である。
そうしてみると,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
よって,本件訂正は,特許法120条の5第2項の規定に適合する。

(3) 特許法120条の5第4項について
本件訂正請求は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である,〔請求項1?請求項20〕ごとにされたものである。
したがって,本件訂正請求は,特許法120条の5第4項の規定に適合する。

(4) 特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条4項について
本件訂正は,願書に添付した明細書又は図面を訂正するものではない。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する特許法126条4項の規定に違反しない。

(5) 特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項について
結晶性樹脂(A)について,願書に添付した明細書の段落【0036】には,「結晶性樹脂(A)のうち,低温定着性の観点から好ましいのは,結晶性ポリエステル樹脂(A1),結晶性ポリウレタン樹脂(A2)及びそれらの併用であり,更に好ましいのは(A2)である。」と記載されている。
そうしてみると,本件訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項の規定に適合する。

(6) 特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条6項について
前記(2)で述べたとおり,訂正前発明1は必ずしも明確であるとはいえない状況であったが,訂正前発明1の発明の要旨に,少なくとも,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)である発明が含まれていたことは,明らかである。このことは,訂正前発明2?20についてみても,同様である。
そうしてみると,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく,また,実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条6項の規定に適合する。

(7) 小括
以上のとおりであるから,訂正後の請求項〔1?20〕について,訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後発明
訂正後発明は,本件訂正により訂正された,特許請求の範囲の請求項1?20に記載されたとおりのものであるところ,訂正後発明1は,前記2(1)イに記載されたものである。また,訂正後発明2?訂正後発明19は,訂正後発明1のトナーバインダーに対して,さらに他の発明特定事項を付加したトナーバインダーの発明であり,訂正後発明20は,訂正後発明1?訂正後発明19のいずれかのトナーバインダーと,着色剤を含有するトナーの発明である。

2 取消理由の概要
本件取消理由は,概略,以下のとおりである。なお,本件取消理由は,特許異議申立人が主張する取消理由を全て含むものである。
(1) 取消理由1-1
本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。

(2) 取消理由1-2
本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。また,本件特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。

(3) 取消理由2-1
本件特許1?本件特許3,本件特許12及び本件特許20は,特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたものであるから,取り消されるべきである。あるいは,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから,取り消されるべきである。
甲1:特開2007-279653号公報
甲2:特開2008-191260号公報

(4) 取消理由2-2
本件特許4及び本件特許5は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。

3 特許法36条の取消理由について
事案に鑑みて,取消理由1-1,取消理由1-2,取消理由2-2について,先に判断を示す。
(1) 取消理由1-1について
取消理由1-1は,結晶性樹脂(A)について,訂正前請求項1に「(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)及び/又は結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり」と記載されている結果,訂正前発明の要旨に,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まない発明が含まれるという,一応の疑念があることを前提としたものである。
しかしながら,本件訂正により,訂正前請求項1の前記記載は,「(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり」と訂正された。そして,訂正後発明の結晶性樹脂(A)は,結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であることが明らかとなったから,訂正後発明は,いずれも明確である。
また,特許法120条の5第9項において準用する128条の規定により,本件特許は,本件訂正後における特許請求の範囲により特許権の設定の登録がされたものとみなされる。
よって,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。

(2) 取消理由1-2について
ア 特許法36条6項1号について
訂正後発明の発明が解決しようとする課題は,願書に添付した明細書の段落【0004】に記載されたとおりの,「低温定着性と耐熱保存安定性との両立が可能であり,定着画像の画像強度が高いトナーバインダーを提供すること」にある。
この点に関して,本件特許の発明の詳細な説明には,訂正後発明の要旨に含まれるトナー(実施例20?実施例28,実施例31?実施例34,実施例36,実施例38,実施例40?実施例48,実施例50?実施例60)が開示されている(段落【0107】?【0126】,【0131】?【0156】)。そして,これらトナーは,低温定着性が120℃以下であるにも関わらず,耐熱保存安定性は○(ブロッキングが発生していない)となっており,また,画像強度も2B以上となっている(段落【0160】及び【0161】)。加えて,段落【0162】には,これらトナーに対して,「本発明のトナーバインダーは,低温定着性と耐熱保存安定性との両立が可能であり,定着画像の画像強度が高いことから,電子写真トナー,静電記録トナー及び静電印刷トナー等として有用である。」との評価が記載されている。そうしてみると,これらトナーは,訂正後発明の発明が解決しようとする課題を解決できるものと解される。
これに対して,本件出願の発明の詳細な説明を参照しても,訂正後発明の要旨に含まれ,かつ,訂正後発明の発明が解決しようとする課題を解決できないトナーは開示されていない。例えば,比較例4?9のトナーは,低温定着性は120℃以下であるが,耐熱保存安定性は×(ブロッキングが発生している)となっており,少なくとも,「低温定着性と耐熱保存安定性との両立が可能」となっていない。また,技術常識を参酌しても,訂正後発明の要旨に含まれ,かつ,訂正後発明の発明が解決しようとする課題を解決できないトナーを想定することができない。
以上勘案すると,訂正後発明は,発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えないものと判断するのが相当である。
よって,本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。

イ 特許法36条4項1号について
本件特許に関して,発明の詳細な説明には,例えば,実施例1の結晶性樹脂(A-1)が,製造方法及び物性値とともに記載されている(段落【0108】及び段落【0131】の表1)。また,発明の詳細な説明には,例えば,結晶性樹脂(A-1)を配合してなるトナーバインダー及びトナー(E-1)が,製造方法とともに記載されている(段落【0146】)。
ここで,実施例1の結晶性樹脂(A-1)の前駆体である結晶性樹脂(A’-1)は,概略,1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸を反応させてなる直鎖状高分子であるから(段落【0108】),結晶性を示すことが明らかなポリエステル樹脂である。また,実施例1の結晶性樹脂(A-1)は,前記結晶性樹脂(A’-1)の末端をヒドロキシル化した後,ヘキサメチレンジイソシアネートと反応させてなる直鎖状高分子であるから(段落【0108】),結晶性ポリエステル樹脂と炭素数6のジイソシアネート(当合議体注:段落【0030】の定義によりNCO基中の炭素を除く。)を構成単位とする,結晶性を示すことが明らかなポリウレタン樹脂である。そして,結晶性樹脂(A-1)の物性値についてみると,融点Tm=70℃,重量平均分子量Mw=27400,酸価0.1mgKOH/g,分子量1500以下の成分の含有率が7.0重量%である。
そうしてみると,本件特許の発明の詳細な説明には,訂正後発明の要旨に含まれる具体的な実施例が,製造方法とともに,トナーとして利用可能なように記載されている。
よって,本件特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。

(3) 取消理由2-2について
取消理由2-2は,訂正前発明の要旨に,結晶性樹脂(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)を含まない発明が含まれることを前提としたものである。
しかしながら,訂正後発明の結晶性樹脂(A)は,結晶性ポリウレタン樹脂(A2)である。
よって,本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。

4 特許法29条の取消理由(取消事由2-1)について
取消事由2-1は,訂正前発明の結晶性樹脂(A)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)であることを前提としたものである。
しかしながら,訂正後発明の結晶性樹脂(A)は,結晶性ポリウレタン樹脂(A2)である。
したがって,本件特許が,特許法29条1項3号又は特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるとはいえないことは,もはや明らかではあるが,念のため,以下,検討する。
(1) 甲1について
ア 甲1の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1(特開2007-279653号公報)には,以下の記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体上の静電潜像を現像し,被転写体上に転写され,熱及び/又は圧力をかけて定着され,トナー画像を形成するトナーにおいて,
前記トナーは,少なくともトナーバインダと,着色剤と,離型剤とを含有し,該トナーバインダは少なくとも1種の非晶性ポリエステル樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)とを含有し,該非晶性ポリエステル(A)及び/又は結晶性ポリエステル(B)が,下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に形成されてなる樹脂であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
Ti(-X)m(-OH)n (I)
O=Ti(-X)p(-OR)q (II)
〔前記式(I)または(II)中,Xは炭素数2?12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり,ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく,他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2?5である。RはH,または1?3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1?8のアルキル基である。mは1?4の整数,nは0?3の整数,mとnの和は4である。pは1?2の整数,qは0?1の整数,pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合,それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。〕」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真や静電記録などにおいて,感光体等の像担持体表面に形成された静電荷像を可視像化するトナー,及びこのトナーを使用する画像形成装置に関する。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と定着時の低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れた,非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステルからなるトナー及び,該トナーを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。」

(エ)「【発明の効果】
【0037】
このように,本発明によれば,少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に形成された非晶性ポリエステル樹脂及び/又は結晶性ポリエステルを含むトナーバインダからなるトナーを用いることで,高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と定着時の低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れたトナー及び,該トナーを用いた画像形成装置を提供することができる。」

(オ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明者らは,上述した問題点を解決するべく鋭意検討した結果,特定の触媒の存在下で形成された重縮合ポリエステル樹脂からなるトナーバインダを用い,かつ,重縮合ポリエステル樹脂として非晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)とを組み合わせて用いることで上記問題を解決できることを見出し,本発明に到達した。
【0039】
また本発明のトナーは,トナーバインダの粒子を水系触媒中で乳化,分散させ,更に凝集させる工程を経ること,もしくはトナーバインダを溶融,混練,粉砕させる工程を経ることで提供することが可能である。
【0040】
以下,本実施形態について詳細に説明する。なお,本実施形態は以下に述べるものに限定されずその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
…(省略)…
【0142】
シェル用樹脂粒子(S)は,水系中で安定に分散可能な樹脂粒子であれば,特に限定されるものではなく,公知の樹脂組成系・製造方法が適用可能である。特にシェル層の融着・成膜性の観点から必要となる樹脂成分S1は,比較的低分子のスチレンアクリル系共重合樹脂やポリエステル系樹脂などが好適に用いられる。シェル層の強度の観点から必要となる樹脂成分S2は比較的高分子のスチレンアクリル系共重合樹脂やポリエステル系樹脂などが好適に用いられる。特に樹脂成分S2について機械的強度に優れる樹脂組成系としては,ポリエステル樹脂やポリエステルプレポリマーをウレタンで伸張させた高分子体が好適に用いられ,更に強度を高めるために,架橋構造を有していてもよい。」

イ 甲1発明
甲1には,請求項1に係る発明として,次の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。
「 潜像担持体上の静電潜像を現像し,被転写体上に転写され,熱及び/又は圧力をかけて定着され,トナー画像を形成するトナーにおいて,
前記トナーは,少なくともトナーバインダと,着色剤と,離型剤とを含有し,該トナーバインダは少なくとも1種の非晶性ポリエステル樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)とを含有し,該非晶性ポリエステル(A)及び/又は結晶性ポリエステル(B)が,下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(a)の存在下に形成されてなる樹脂であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
Ti(-X)m(-OH)n (I)
O=Ti(-X)p(-OR)q (II)
〔前記式(I)または(II)中,Xは炭素数2?12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり,ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく,他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2?5である。RはH,または1?3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1?8のアルキル基である。mは1?4の整数,nは0?3の整数,mとnの和は4である。pは1?2の整数,qは0?1の整数,pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合,それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。〕」

ウ 対比
甲1発明と訂正後発明1を対比する。
(ア)トナーバインダー
甲1発明の「トナー」は,「少なくともトナーバインダと,着色剤と,離型剤とを含有」する。ここで,甲1発明の「トナーバインダ」は,技術的にみて,訂正後発明1の「トナーバインダー」に相当する。

(イ)結晶性樹脂(A)
甲1発明の「トナーバインダ」は,「少なくとも1種の非晶性ポリエステル樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)とを含有」する。ここで,甲1発明の「結晶性ポリエステル(B)」は,その名のとおり「結晶性」のものであり,また,技術的にみて,「エステル基を有する」「樹脂」である。
そうしてみると,甲1発明の「結晶性ポリエステル(B)」は,訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」に相当するとともに,訂正後発明1の「(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり」の要件を満たす。
また,甲1発明の「トナーバインダ」は,訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダー」の要件を満たす。

エ 一致点及び相違点
(ア)一致点
訂正後発明1と甲1発明は,次の構成で一致する。
「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂である,
トナーバインダー。」

(イ)相違点
訂正後発明1と甲1発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」は,「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり,(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下である」のに対して,甲1発明の「結晶性ポリエステル(B)」は,「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」ではなく,したがって,「(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり」とはいえない点。

(相違点2)
訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」は,「(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下である」のに対して,甲1発明の「結晶性ポリエステル(B)」は,このような物性値を有するものとは特定されていない点。

オ 判断
まず,訂正後発明1と甲1発明は,少なくとも相違点1において相違する。
したがって,訂正後発明1と甲1発明は,同一であるということができない。

次に,訂正後発明1と甲1発明は,相違点1において相違する。また,甲1発明の「結晶性ポリエステル(B)」を,相違点1に係る構成を具備する「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」に替えることについて,甲1には記載も示唆もない。また,甲1発明の「トナーバインダ」に対して,さらに相違点1に係る構成を具備する「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」を加えることについても,甲1には記載も示唆もない。
なお,甲1の段落【0142】には,「樹脂成分S2について機械的強度に優れる樹脂組成系としては,ポリエステル樹脂やポリエステルプレポリマーをウレタンで伸張させた高分子体が好適に用いられ,更に強度を高めるために,架橋構造を有していてもよい。」との記載がある。しかしながら,この記載は,シェル用樹脂に関する記載である。したがって,この記載は,甲1発明のトナーバインダとして,ポリエステル樹脂をウレタンで伸張させた高分子体を使用することを示唆するものではない。

カ 小括
訂正後発明1は,甲1発明と同一ではなく,また,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。訂正後請求項1の記載を引用して記載された訂正後発明2?訂正後発明20についても,同様である。

(2) 甲2について
ア 甲2の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2(特開2008-191260号公報)には,以下の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも,結着樹脂,着色剤及び離型剤を含み,
前記結着樹脂が非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し,該非晶性ポリエステル樹脂にスズ含有触媒が含まれ,前記結晶性ポリエステル樹脂にチタン含有触媒が含まれることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は,静電荷像現像用トナー,静電荷像現像剤,トナーカートリッジ,プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,低温定着化及び画像光沢の安定化を両立することが可能な静電荷像現像用トナー,静電荷像現像剤,トナーカートリッジ,プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。」

(エ)「【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明によれば,結晶性ポリエステル樹脂を含む場合でも,定着後に被記録体が冷却されにくい定着条件においても,画像光沢度や光透過性の低下がなく,2次色画像の発色性にも優れた画像形成を形成できる。」

(オ)「【0016】
以下,本発明を詳細に説明する。
<静電荷像現像用トナー>
本発明の静電荷像現像用トナー(以下,単に「トナー」と称する場合がある)は,少なくとも,結着樹脂,着色剤及び離型剤を含み,前記結着樹脂が非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し,該非晶性ポリエステル樹脂にスズ含有触媒が含まれ,前記結晶性ポリエステル樹脂にチタン含有触媒が含まれることを特徴とする。
…(省略)…
【0047】
また,結着樹脂には,非晶性樹脂として前記非晶性ポリエステル樹脂以外に他の樹脂を併用することができる。ただし,非晶性樹脂の主体は前記非晶性ポリエステル樹脂である。
他の樹脂として使用可能な樹脂としては,例えば,ポリスチレン,ポリ(メタ)アクリル酸及びそのエステル化物などが挙げられる。具体的には,例えば,スチレン,パラクロロスチレン,α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n-プロピル,アクリル酸n-ブチル,アクリル酸ラウリル,アクリル酸2-エチルヘキシル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n-プロピル,メタクリル酸ラウリル,メタクリル酸2-エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル,メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル,ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン,ビニルエチルケトン,ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン,プロピレン,ブタジエンなどのポリオレフィン類;などの単量体の重合体,これらを2種以上組み合せて得られる共重合体又はこれらの混合物を挙げることができ,さらにはエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,セルロース樹脂,ポリエーテル樹脂等,非ビニル縮合系樹脂,あるいはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等も使用できる。中でも,帯電性や定着性の観点で,スチレンアクリル共重合樹脂,特にスチレンブチルアクリレート共重合樹脂が好ましい。」

イ 甲2発明
甲2には,請求項1に係る発明として,次の発明が記載されている(以下「甲2発明」という。)。
「 少なくとも,結着樹脂,着色剤及び離型剤を含み,
前記結着樹脂が非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し,該非晶性ポリエステル樹脂にスズ含有触媒が含まれ,前記結晶性ポリエステル樹脂にチタン含有触媒が含まれる,
静電荷像現像用トナー。」

ウ 対比
甲2発明と訂正後発明1を対比する。
(ア)トナーバインダー
甲2発明の「静電荷像現像用トナー」は,「少なくとも,結着樹脂,着色剤及び離型剤を含」むものである。ここで,甲2発明の「結着樹脂」は,技術的にみて,訂正後発明1の「トナーバインダー」に相当する。

(イ)結晶性樹脂(A)
甲2発明の「結着樹脂」は,「非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有」する。ここで,甲2発明の「結晶性ポリエステル樹脂」は,その名のとおり「結晶性」のものであり,また,技術的にみて,「エステル基を有する」樹脂である。
そうしてみると,甲2発明の「結晶性ポリエステル樹脂」は,訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」に相当するとともに,訂正後発明1の「(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり」の要件を満たす。
また,甲2発明の「結着樹脂」は,訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダー」の要件を満たす。

エ 一致点及び相違点
(ア)一致点
訂正後発明1と甲2発明は,次の構成で一致する。
「結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって,(A)がエステル基を有する結晶性樹脂である,
トナーバインダー。」

(イ)相違点
訂正後発明1と甲2発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」は,「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり,(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり,(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下である」のに対して,甲2発明の「結晶性ポリエステル樹脂」は,「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」ではなく,したがって,「(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり,(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり」とはいえない点。

(相違点2)
訂正後発明1の「結晶性樹脂(A)」は,「(A)の融点が30?100℃,重量平均分子量が5,000?50,000であり,(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり,(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が,(A)の重量に対して8重量%以下である」のに対して,甲2発明の「結晶性ポリエステル樹脂」は,このような物性値を有するものとは特定されていない点。

オ 判断
まず,訂正後発明1と甲2発明は,少なくとも相違点1において相違する。
したがって,訂正後発明1と甲2発明は,同一であるということができない。

次に,訂正後発明1と甲2発明は,相違点1において相違する。また,甲2発明の「結晶性ポリエステル樹脂」を,相違点1に係る構成を具備する「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」に替えることについて,甲1には記載も示唆もない。また,甲2発明の「結着性樹脂」に対して,さらに相違点1に係る構成を具備する「結晶性ポリウレタン樹脂(A2)」を加えることについても,甲1には記載も示唆もない。
なお,甲2の段落【0047】には,「結着樹脂には,非晶性樹脂として前記非晶性ポリエステル樹脂以外に他の樹脂を併用することができる。…他の樹脂として使用可能な樹脂としては,例えば,ポリスチレン,ポリ(メタ)アクリル酸及びそのエステル化物などが挙げられる。…さらにはエポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,セルロース樹脂,ポリエーテル樹脂等,非ビニル縮合系樹脂,あるいはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等も使用できる。」との記載がある。しかしながら,この記載は,非晶性樹脂に関する記載である。したがって,この記載は,甲2発明の結着樹脂として結晶性のポリウレタン樹脂を使用することを示唆するものではない。

カ 小括
訂正後発明1は,甲2発明と同一ではなく,また,甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。訂正後請求項1の記載を引用して記載された訂正後発明2?訂正後発明20についても,同様である。

(3) 小括
本件特許は,特許法29条1項3号又は特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるとはいえない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本件取消理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)がエステル基を有する結晶性樹脂であり、(A)が結晶性ポリウレタン樹脂(A2)であり、(A2)が結晶性ポリエステル樹脂(A1)とジイソシアネート(f)を構成単位とするものであり、(f)が炭素数6?15の芳香族ジイソシアネート及び/又は炭素数4?15の鎖状脂肪族ジイソシアネートであり、(A)の融点が30?100℃、重量平均分子量が5,000?50,000であり、(A)の酸価が0.1?20mgKOH/gであり、(A)中の分子量が1,500以下の成分の含有率が、(A)の重量に対して8重量%以下であるトナーバインダー。
【請求項2】
結晶性樹脂(A)中の分子量が1,500以下の成分が、環状エステル化合物を含有する請求項1に記載のトナーバインダー。
【請求項3】
結晶性樹脂(A)中の環状エステル化合物の含有率が、(A)の重量に対して7.3重量%以下である請求項2に記載のトナーバインダー。
【請求項4】
結晶性樹脂(A)が、脂肪族ジカルボン酸(a)及び脂肪族ジアルコール(b)を構成単位とする結晶性樹脂であって、(a)がドデカンジカルボン酸を含有し(b)が1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,9-ノナンジオールからなる群から選ばれる1種類以上を含有する請求項1?3のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項5】
結晶性樹脂(A)中のドデカンジカルボン酸の構成比率が、(A)を構成する全ての酸の総モル数に対して20モル%以上である請求項4に記載のトナーバインダー。
【請求項6】
結晶性樹脂(A)がリン化合物を含有する請求項1?5のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項7】
リン化合物の含有率が、結晶性樹脂(A)の重量に対して、リン元素換算で10?10,000ppmである請求項6に記載のトナーバインダー。
【請求項8】
リン化合物が、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸、ポリリン酸及びこれらのエステル化物の群から選ばれる1種以上である請求項6又は7に記載のトナーバインダー。
【請求項9】
結晶性ポリエステル樹脂(A1)が、ポリカルボン酸(a)、ポリアルコール(b)と、モノカルボン酸(c)及び/又はモノアルコール(d)を構成単位として有し、(c)と(d)の合計比率が、結晶性樹脂(A)の重量に対し15重量%以下である請求項8に記載のトナーバインダー。
【請求項10】
モノカルボン酸(c)が、脂肪族モノカルボン酸(c1)である請求項9に記載のトナーバインダー。
【請求項11】
モノアルコール(d)が、脂肪族モノアルコール(d1)である請求項9に記載のトナーバインダー。
【請求項12】
結晶性ポリウレタン樹脂(A2)のウレタン基濃度が、(A2)の重量に対し0.1?10.0重量%である請求項1?11のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項13】
結晶性樹脂(A)の水酸基価が15mgKOH/g以下である請求項1?12のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項14】
結晶性樹脂(A)に加え、非結晶性樹脂(B)を含有する請求項1?13のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項15】
結晶性樹脂(A)と非結晶性樹脂(B)の相溶性パラメータの差の絶対値が0.2?2.0(cal/cm3)1/2である請求項14に記載のトナーバインダー。
【請求項16】
非結晶性樹脂(B)がエステル基を有する樹脂である請求項14または15のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項17】
トナーバインダー中の結晶性樹脂(A)の含有率が、トナーバインダーの重量に対して1?49重量%である請求項1?16のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項18】
更にチタン化合物を含有する請求項1?17のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項19】
チタン化合物の含有率が、トナーバインダーの重量に対して、チタン元素換算で10?5,000ppmである請求項18に記載のトナーバインダー。
【請求項20】
請求項1?19のいずれかに記載のトナーバインダーと着色剤を含有するトナー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-15 
出願番号 特願2014-30812(P2014-30812)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G03G)
P 1 651・ 853- YAA (G03G)
P 1 651・ 121- YAA (G03G)
P 1 651・ 537- YAA (G03G)
P 1 651・ 113- YAA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 樋口 信宏
清水 康司
登録日 2015-12-18 
登録番号 特許第5856634号(P5856634)
権利者 三洋化成工業株式会社
発明の名称 トナーバインダー及びトナー  

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