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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G03F
管理番号 1327387
審判番号 不服2016-8100  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2012- 57959「溶剤現像ネガ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開,特開2013-190693,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年3月14日の出願であって,平成27年8月25日付けで拒絶理由が通知され,同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成28年2月23日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年6月1日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。


第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1及び2に係る発明は,平成28年6月1日提出の手続補正書によって補正された請求項1及び2に記載された事項によって特定されたとおりのものと認められるところ,請求項1及び2の記載は次のとおりである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「【請求項1】
酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A),露光により酸を発生する酸発生剤成分(B),及び塩基性化合物成分(D)を含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって,
前記基材成分(A)が,3?7員環のエーテル含有環式基を含む構成単位(a0)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と,-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a5)と,を有する樹脂成分(A1)を含有し,
前記3?7員環のエーテル含有環式基が,下記一般式(a0-r-1)?(a0-r-5)のいずれかで表される基であり,
前記塩基性化合物成分(D)が,下記一般式(d1)で表される化合物(d1)を含み,
前記酸発生剤成分(B)が,下記式(b1)?(b3),(b6)?(b9)のいずれかで表されるアニオン部を有する化合物を含むことを特徴とする溶剤現像ネガ型レジスト組成物。
【化1】

[式中,R’はそれぞれ独立に水素原子,アルキル基,アルコキシ基,ハロゲン原子,ハロゲン化アルキル基,水酸基,-COOR”,-OC(=O)R”,ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;n_(a01)は0または1であり,n_(a02)は0?2の整数である。]
【化2】

[式中,R^(8)はフッ素化アルキル基である。M^(m+)はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【化3】

[式中,q1?q2はそれぞれ独立に1?5の整数であり,q3は1?12の整数であり,t3は1?3の整数であり,r1?r2はそれぞれ独立に0?3の整数であり,gは1?20の整数であり,R^(107)は置換基であり,n3?n6はそれぞれ独立に0または1であり,v0,v3?v6はそれぞれ独立に0?3の整数であり,w3?w6はそれぞれ独立に0?3の整数であり,Q”は炭素数1?5のアルキレン基,-O-,-S-,-O-R^(94)-または-S-R^(95)-であり,R^(94)およびR^(95)はそれぞれ独立に炭素数1?5のアルキレン基である。]
【請求項2】
請求項1に記載の溶剤現像ネガ型レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。」


第3 原査定の拒絶の理由
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,概略次のとおりである。

本願の請求項1及び2(審決注:平成27年10月26日提出の手続補正書による補正後の請求項1及び2である。)に係る発明は,本願の出願の日前の特許出願であって,本願の出願後に出願公開がされた下記先願1の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができない。(以下,「原査定理由1」という。)
また,本願の請求項1に係る発明は,本願の出願の日前の特許出願であって,本願の出願後に出願公開がされた下記先願2の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができない。(以下,「原査定理由2」という。)

先願1:特願2011-285196号(国際公開第2012/169620号)
先願2:特願2011-233564号(特開2013-292590号)

2 原査定における判断の概要
先願1については「実施例123」や【0181】の記載等を参照した上で,備考欄において,本願の請求項1に記載の化学式(b1)?(b3),(b6)?(b9)のいずれかで表されるアニオン部を有する化合物を酸発生剤として用いた発明も記載されているに等しい旨の判断を示し,先願2については,「実施例20」や【0125】の記載等を参照した上で,備考欄において,本願の請求項1に記載の化学式(b3)で表されるアニオン部を有する化合物を酸発生剤として用いた発明も記載されているに等しい旨の判断を示している。


第4 原査定理由1についての判断
1 先願1
(1)先願1の拡大先願該当性
先願1は,本願の出願の日前である平成23年12月27日の特許出願であって,当該先願1に基づく優先権主張を伴う日本語特許出願(指定国に日本を含む日本語でされた国際出願)がされ,当該日本語特許出願について2012年12月13日に国際公開がされたから,日本語特許出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面を「当初明細書等」という。)に記載された発明のうち,先願1の当初明細書等に記載された発明についての特許法29条の2本文の適用においては,同法41条3項及び同法184条の15第2項の規定により,国際公開がされた2012年(平成24年)12月13日(本願の出願後である。)に先願1の出願公開がされたものとみなされる。
また,本願の発明者は先願1の発明者と同一ではなく,また本願の出願の時において,本願の出願人が先願1の出願人と同一でもない。
したがって,先願1は,いわゆる拡大先願としての形式的要件を満たしている。

(2)先願1の明細書等における記載
先願1の当初明細書等には次の記載がある。また,これらの記載は,先願1に基づく優先権主張を伴う日本語特許出願の当初明細書等にも記載されている。(下線は,後述する先願1発明の認定に特に関係する箇所を示す。また,各記載事項の末尾に付したカッコ書き中の段落番号等は,摘記した記載が記載されている国際公開中の段落番号等を示す。)
ア 「【請求項1】
酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A),及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって,
前記基材成分(A)が,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,及び5?7員環のカーボネート含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(a2)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)とを有する樹脂成分(A1)を含有し,
前記酸発生剤成分(B)が,露光によりスルホン酸を発生する化合物からなる酸発生剤(B1)を含むことを特徴とする溶剤現像ネガ型レジスト組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記酸発生剤(B1)が,下記一般式(b1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の溶剤現像ネガ型レジスト組成物。
【化1】

[式中,Xは置換基を有していてもよい炭素数3?30の炭化水素基であり,Q^(1)は酸素原子を含む2価の連結基であり,Rfは置換基を有していてもよい炭素数1?4のフッ素化アルキレン基であり,Z^(+)は有機カチオンである。]
・・・(中略)・・・
【請求項6】
前記樹脂成分(A1)が,さらに,-SO_(2)-含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a0)を有する請求項1?5のいずれか一項に記載の溶剤現像ネガ型レジスト組成物。」([請求項1]ないし[請求項6])

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,溶剤現像ネガ型レジスト組成物,レジストパターン形成方法,及びブロックコポリマーを含む層のパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上に微細なパターンを形成し,これをマスクとしてエッチングを行うことによって該パターンの下層を加工する技術(パターン形成技術)は,半導体素子や液晶表示素子の製造において広く採用されている。微細パターンは,通常,有機材料からなり,例えばリソグラフィー法やナノインプリント法等の技術によって形成される。たとえばリソグラフィー法においては,基板等の支持体の上に,樹脂等の基材成分を含むレジスト材料を用いてレジスト膜を形成し,該レジスト膜に対し,光,電子線等の放射線にて選択的露光を行い,現像処理を施すことにより,前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。そして,上記レジストパターンをマスクとして,基板をエッチングにより加工する工程を経て半導体素子等が製造される。
・・・(中略)・・・
【0005】
ポジ型の化学増幅型レジスト組成物,つまり露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化学増幅型レジスト組成物とアルカリ現像液とを組み合わせたポジ型現像プロセスでは,上記のように,レジスト膜の露光部がアルカリ現像液により溶解,除去されてレジストパターンが形成される。該ポジ型現像プロセスは,ネガ型の化学増幅型レジスト組成物とアルカリ現像液とを組み合わせたネガ型現像プロセスに比べて,フォトマスクの構造を単純にできる,像形成のために充分なコントラストが得やすい,形成されるパターンの特性が優れる等の利点がある。そのため,現在,微細なレジストパターンの形成にはポジ型現像プロセスが用いられる傾向がある。
しかし,該ポジ型現像プロセスによりトレンチパターン(孤立スペースパターン)やホールパターンを形成する場合,ラインパターンやドットパターンを形成する場合に比べて,弱い光入射強度下でのパターン形成を強いられ,露光部および未露光部にそれぞれ入射する光の強度のコントラストも小さい。そのため,解像力等のパターン形成能に制限が生じやすく,高解像のレジストパターンを形成することが難しい傾向がある。
逆に,ネガ型の化学増幅型レジスト組成物,つまり露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が減少する化学増幅型レジスト組成物とアルカリ現像液とを組み合わせたネガ型現像プロセスは,前記ポジ型現像プロセスとは逆に,トレンチパターンやホールパターンの形成に有利と考えられる。
【0006】
近年ではネガ型現像プロセスとして,前記ポジ型の化学増幅型レジスト組成物と,有機溶剤を含有する現像液(以下「有機系現像液」ということがある。)とを組み合わせたプロセス(以下,有機系現像液を用いるプロセスを「溶剤現像プロセス」,「溶剤現像ネガ型プロセス」ということがある)も提案されている。ポジ型の化学増幅型レジスト組成物は,露光によってアルカリ現像液に対する溶解性が増大するが,このとき相対的に有機溶剤に対する溶解性が減少する。そのため,該溶剤現像ネガ型プロセスにおいては,レジスト膜の未露光部が有機系現像液により溶解,除去されてレジストパターンが形成される(例えば,特許文献2参照)。
【0007】
近年,大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い,より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対して,互いに非相溶性のポリマー同士を結合させたブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して,より微細なパターンを形成する試みが始まっている。
ブロックコポリマーの相分離を利用するためには,ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を特定の領域のみに形成し,かつ所望の方向へ配列させることが必須となる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために,ガイドパターンによって,相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーと,基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシーといった方法が提案されている(例えば,非特許文献1参照。)。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今後,リソグラフィー技術のさらなる進歩,レジストパターンの微細化がますます進むなか,レジスト材料には,LWR等の種々のリソグラフィー特性及びレジストパターン形状のさらなる向上が望まれる。
上述した理由により,トレンチパターンやホールパターンにおいて高いコントラストを有するパターンが得られることから,溶剤現像プロセスにおいては露光時に放射線の透過部位の多いマスク(Bright mask)が多用されている。しかしながら,Bright maskを用いた場合,露光部において光酸発生剤から大量の酸が発生するため,該酸の一部が未露光部に影響を与えることによるリソグラフィー特性やパターン形状の劣化が問題となっている。
また,上述したようなグラフォエピタキシーにおけるガイドパターン形成用としてレジスト組成物を用いる場合等であれば,レジストパターンには耐溶剤性や耐熱性が要求される。そして,耐溶剤性の観点から,レジストパターンが形成された時点での,パターン部の現像液による膜減りが少ないことレジスト組成物が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって,有機溶剤を含有する現像液を用いた溶剤現像ネガ型プロセスにおいて,リソグラフィー特性及びパターン形状に優れ,且つ,膜減りの少ないレジストパターンを形成できるレジストパターン形成方法,及び該レジストパターン形成方法に用いられる溶剤現像ネガ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために,本発明は以下の構成を採用した。
すなわち,本発明の一態様は,酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A),及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって,酸の作用により極性が増大し,有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性が減少する基材成分(A),及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有し,前記基材成分(A)が,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,及び5?7員環のカーボネート含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(a2)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)とを有する樹脂成分(A1)を含有し,前記酸発生剤成分(B)が,露光によりスルホン酸を発生する化合物からなる酸発生剤(B1)を含むことを特徴とする溶剤現像ネガ型レジスト組成物である。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,リソグラフィー特性及びパターン形状に優れ,且つ,膜減りの少ない溶剤現像ネガ型レジスト組成物,該溶剤現像ネガ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法,及び該溶剤現像ネガ型レジスト組成物を用いるブロックコポリマーを含む層のパターン形成方法を提供できる。」([0001]ないし[0015])

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0017】
≪レジスト組成物≫
本発明の第一の態様の溶剤現像ネガ型レジスト組成物(以下,単に「レジスト組成物」ということがある。)は,酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)(以下,「(A)成分」という。)と,露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下,「(B)成分」という。)とを含有するものであって,該レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法において用いられる。
かかるレジスト組成物においては,放射線が照射(露光)されると,露光部では,(B)成分から酸が発生し,該酸の作用により(A)成分の有機溶剤に対する溶解性が減少する。そのため,レジストパターンの形成において,当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと,当該レジスト膜における露光部の,前記有機溶剤を含有する有機系現像液に対する溶解性が減少する一方で,未露光部の該有機系現像液に対する溶解性は変化しないため,該有機系現像液を用いたネガ型現像を行うことにより未露光部が除去されてレジストパターンが形成される。
【0018】
<(A)成分>
本発明において,「基材成分」とは,膜形成能を有する有機化合物を意味する。
基材成分としては,通常,分子量が500以上の有機化合物が用いられる。分子量が500以上であることにより,充分な膜形成能を備えるとともに,ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
・・・(中略)・・・
【0019】
[樹脂成分(A1)]
本発明において,(A)成分は,少なくとも,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位,及び5?7員環のカーボネート含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(a2)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)とを有する樹脂成分(A1)(以下,「(A1)成分」という。)を含有する。
【0020】
本発明の(A1)成分は,露光により(B)成分から酸が発生すると,後述するように構成単位(a1)中の酸分解性基の一部の結合が解裂して,露光部における(A1)成分の極性が増大する。このことにより,露光部では有機溶剤を含有する有機系現像液への溶解性が減少する一方,未露光部では有機系現像液への溶解性が変化せず高い溶解性を維持するため,未露光部と露光部との溶解コントラストによりパターンを形成することができる。
さらに,本発明の(A1)成分は,露光により(B)成分から酸が発生すると,上記極性増大と併せて,構成単位(a2)中のラクトン含有環式基,エーテル含有環式基,又はカーボネート含有環式基が開裂して互いに重合し,結果として露光部における(A1)成分の分子量が増大しうる。このことにより,エポキシ樹脂と重合開始剤とを含む従来の溶剤現像ネガ型レジスト組成物と同様に,露光部では分子量の増大により有機系現像液への溶解性が減少する一方,未露光部では有機系現像液への溶解性が変化せず高い溶解性を維持するため,未露光部と露光部との溶解コントラストがさらに向上し,より解像性に優れたパターンを形成することが可能となる。また,重合した(A1)成分は,重合していない(A1)成分に比して耐熱性及び耐溶剤性に優れるパターン部となる。
・・・(中略)・・・
【0022】
(A1)成分は,構成単位(a1)及び(a2)に加えて,さらに,-SO2-含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a0)を有していてもよい。
・・・(中略)・・・
【0023】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
・・・(中略)・・・
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては,たとえば,酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては,たとえばカルボキシ基,水酸基,アミノ基,スルホ基(-SO_(3)H)等が挙げられる。これらのなかでも,構造中に-OHを含有する極性基(以下,OH含有極性基ということがある。)が好ましく,カルボキシ基または水酸基が好ましく,カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には,前記極性基を酸解離性基で保護した基(たとえばOH含有極性基の水素原子を酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0024】
構成単位(a1)における酸解離性基としては,これまで,化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを使用することができる。一般的には,(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基;アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
・・・(中略)・・・
【0094】
(構成単位(a2))
構成単位(a2)は,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下,「構成単位(a21)」という。),3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下,「構成単位(a22)」という。),及び5?7員環のカーボネート含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下,「構成単位(a23)」という。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位である。
これらの環状化合物は,後述する特定の光酸発生剤を用いることで開環重合する。かかる開環重合により,架橋剤の添加の有無に関わらず,リソグラフィー特性に優れたレジストパターンを形成することができる。
・・・(中略)・・・
【0095】
・構成単位(a21):
構成単位(a21)は,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
・・・(中略)・・・
【0097】
構成単位(a21)の例として,より具体的には,下記一般式・・・(中略)・・・で表される構成単位が挙げられる。
【0098】
【化28】
・・・(中略)・・・

[式中,Rは前記同様であり;R’はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1?5のアルキル基,炭素数1?5のハロゲン化アルキル基,シアノ基,水酸基,炭素数1?5のアルコキシ基または-COOR”であり;R29は単結合または2価の連結基であり,s”は0または1?2の整数であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1?5のアルキレン基,酸素原子または硫黄原子であり;mは0または1の整数である。]
・・・(中略)・・・
【0106】
・構成単位(a22):
構成単位(a22)は,3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
・・・(中略)・・・
【0108】
構成単位(a22)の例として,より具体的には,下記一般式(a22-1)?(a22-5)で表される構成単位が挙げられる。
【0109】
【化35】

[式中,R,R’,R29,s”,mはそれぞれ前記同様である。]
・・・(中略)・・・
【0112】
・構成単位(a23):
構成単位(a23)としては,5?7員環のカーボネート含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
・・・(中略)・・・
【0113】
構成単位(a23)としては,下記一般式(a23-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0114】
【化37】

[式中,R,R’,R29はそれぞれ前記同様であり,q”は1?3の整数である。]
・・・(中略)・・・
【0119】
(構成単位(a0))
構成単位(a0)は,-SO_(2)-含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
・・・(中略)・・・
【0120】
・・・(中略)・・・-SO_(2)-含有環式基として,より具体的には,下記一般式(3-1)?(3-4)で表される基が挙げられる。
【0121】
【化39】

[式中,A’は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1?5のアルキレン基,酸素原子または硫黄原子であり,zは0?2の整数であり,R27はアルキル基,アルコキシ基,ハロゲン化アルキル基,水酸基,-COOR”,-OC(=O)R”,ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり,R”は水素原子またはアルキル基である。]
・・・(中略)・・・
【0159】
<(B)成分>
[(B1)成分]
本発明のレジスト組成物において,(B)成分は,露光によりスルホン酸を発生する化合物からなる酸発生剤(B1)(以下,「(B1)成分」という。)を含む。
(B1)成分としては,露光によりスルホン酸を発生する化合物であれば特に限定されず,これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
(B1)成分として具体的には,スルホネートアニオンを有するオニウム塩系酸発生剤,オキシムスルホネート系酸発生剤,スルホニルジアゾメタン系酸発生剤,イミドスルホネート系酸発生剤,ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤が挙げられる。
【0160】
(スルホネートアニオンを有するオニウム塩系酸発生剤)
スルホネートアニオンを有するオニウム塩系酸発生剤としては,下記一般式(b0)で表される化合物が挙げられる。
【0161】
【化55】

[式中,R4”は,置換基を有していても良いアルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基,またはアルケニル基を表し,Z^(+)は有機カチオンである。]
・・・(中略)・・・
【0166】
・・・(中略)・・・なかでも,R4”としては,置換基としてX-Q1-を有するフッ素化アルキル基であることが好ましく,特に好ましい(B1)成分としては,下記一般式(b1)で表される化合物が挙げられる。なお,式(b0)中のZ^(+)については後述する。
【0167】
【化56】

[式中,X,Q^(1),Z^(+)は前記同様であり,Rfは置換基を有していてもよい炭素数1?4のフッ素化アルキレン基である。]
・・・(中略)・・・
【0180】
以下に式(b1)中のアニオン部の具体例を挙げる。
【0181】
【化58】

[式中,pは1?3の整数であり,q1?q2はそれぞれ独立に1?5の整数であり,q3は1?12の整数であり,t3は1?3の整数であり,r1?r2はそれぞれ独立に0?3の整数であり,gは1?20の整数であり,R^(7)は置換基であり,n1?n5はそれぞれ独立に0または1であり,v0?v5はそれぞれ独立に0?3の整数であり,w1?w5はそれぞれ独立に0?3の整数であり,Q”は前記と同じである。]
・・・(中略)・・・
【0215】
<任意成分・(D)成分>
本発明のレジスト組成物は,任意の成分として,塩基性化合物成分(D)(以下,「(D)成分」という。)を含有していてもよい。本発明において,(D)成分は,酸拡散制御剤,すなわち露光により前記(B)成分等から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものである。なお,本発明において「塩基性化合物」とは,(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物をいう。
本発明における(D)成分は,カチオン部と,アニオン部とからなる塩基性化合物(D1)(以下,「(D1)成分」という。)であってもよく,該(D1)成分に該当しない塩基性化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)であってもよい。
【0216】
[(D1)成分]
本発明において,(D1)成分は,下記一般式(d1-1)で表される化合物(d1-1))(以下,「(d1-1)成分」という。),下記一般式(d1-2)で表される化合物(d1-2)(以下,「(d1-2)成分」という。),及び下記一般式(d1-3)で表される化合物(d1-3)(以下,「(d1-3)成分」という。)からなる群から選ばれる1つ以上を含有することが好ましい。
【0217】
【化67】

[式中,R^(1)は置換基を有していてもよい炭化水素基であり,Z^(2c)は置換基を有していてもよい炭素数1?30の炭化水素基(ただし,Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり,R^(2)は有機基であり,Y^(3)は直鎖状,分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり,Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり,M^(+)はそれぞれ独立に有機カチオンである。]
【0218】
[(d1-1)成分]
・アニオン部
式(d1-1)中,R1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
・・・(中略)・・・
【0219】
また,R1の置換基を有していてもよい炭化水素基としては,直鎖状,分岐鎖状,あるいは脂環式アルキル基,又は,フッ素化アルキル基であることも好ましい。」([0017]ないし[0219])

エ 「【実施例】
【0343】
以下,本発明を実施例により具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
【0344】
[高分子化合物1?66の製造]
高分子化合物1?66は,各高分子化合物を構成する構成単位を誘導する下記モノマー(1)?(30)を表1?6に示すモル比で用い,常法により合成した。得られた高分子化合物の分子量(Mw(k))及び分子量分散量(Mw/Mn)を表1?6に併記する。
【0345】
【化84】

・・・(中略)・・・

【0346】
【化85】

・・・(中略)・・・
【0352】
【表6】

・・・(中略)・・・
【0356】
表7?8中の各略号は以下の意味を有する。
・・・(中略)・・・
(B)-5:下記化合物(B)-5。
・・・(中略)・・・
(E)-1:サリチル酸。
(S)-1:PGMEA/PGME:6/4(質量比)の混合溶剤。
【0357】
【化86】

・・・(中略)・・・
【0370】
[残膜率評価]
上記のようにして形成されたスペース幅65nm,ピッチ130nmの1:1SLパターンのパターン部において,現像後の残膜率残膜率(単位:%,現像後のレジスト膜厚/成膜時(露光前)のレジスト膜厚×100)を求めた。結果を表11に示す。
【0371】
[パターン倒れの耐性(倒れマージン)の評価]
上記スペース幅65nmの1:1SLパターンが形成される最適露光量Eopで形成されたスペース幅65nm,ピッチ130nmのSLパターンにおいて,各パターンのEopよりも高露光量側へ露光量を変動させていった際のLSパターンの倒れの耐性を走査型電子顕微鏡(商品名:SU-8000,日立ハイテクノロジー社製)を用いて観測し,以下の基準で評価した。結果を表11に示す。
○:パターン倒れがある。
△:ややパターン倒れがある。
×:パターン倒れがある。(審決注:○,△,×は,国際公開ではそれぞれA,B,Cと表現されている。なお,後に摘記する【0404】の【表21】においても同様。)
【0372】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
上記スペース幅65nmの1:1SLパターンが形成される最適露光量Eopで形成されたスペース幅65nm,ピッチ130nmのSLパターンにおいて,測長SEM(走査型電子顕微鏡,加速電圧300V,商品名:S-9380,日立ハイテクノロジーズ社製)により,スペース幅を,スペースの長手方向に400箇所測定し,その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め,400箇所の3sについて平均化した値を,LWRを示す尺度として算出した。その結果を表11に示す。
この3sの値が小さいほど,その線幅のラフネスが小さく,より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。
・・・(中略)・・・
【0403】
[実施例111?137,比較例24?26]
表21?22に示す各成分を混合して溶解し,溶剤現像ネガ型レジスト組成物を調製した。
【0404】
【表21】

・・・(中略)・・・
【0406】
表21?22中の各略号中,(A)-1?8,(A)-45?47,(B)-1?5,(D)-1?4,(E)-1,(S)-1は前記同様であり,それ以外はそれぞれ以下の意味を有する。また,[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)-56?(A)-66:上記高分子化合物56?66。
(D)-5:下記化合物(D)-5。
(F)-1:下記高分子化合物(F)-1[Mw=25000,Mw/Mn=1.5,l/m=80/20(モル比)]。
(F)-2:下記高分子化合物(F)-A[Mw=28000,Mw/Mn=2.0,l/m=30/70(モル比)]。
(F)-3:下記高分子化合物(F)-A[Mw=50000,Mw/Mn=2.0,l/m=50/50(モル比)]。
(F)-4:下記高分子化合物(F)-3[Mw=25000,Mw/Mn=1.8,l/m=80/20(モル比)]。
(F)-5:下記高分子化合物(F)-4[Mw=30000,Mw/Mn=2.0,l/m=30/70(モル比)]。
【0407】
【化90】

【0408】
[レジストパターンの形成6]
8インチのシリコンウェーハ上に,有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(商品名,ブリュワーサイエンス社製)を,スピンナーを用いて塗布し,ホットプレート上で205℃,60秒間焼成して乾燥させることにより,膜厚89nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして,該有機系反射防止膜上に,各例のレジスト組成物をそれぞれ,スピンナーを用いて塗布し,ホットプレート上で90℃,60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い,乾燥することにより,膜厚100nmのレジスト膜を形成した。その後,実施例136では,形成されたレジスト膜上に,保護膜形成用塗布液「TILC-323」(商品名,東京応化工業株式会社製)を,スピンナーを用いて塗布し,90℃で60秒間加熱することにより,膜厚35nmのトップコートを形成した。
次に,ArF液浸露光装置NSR-S609(ニコン社製;NA(開口数)=1.07,Cross pole(in/out=0.78/0.97)with Polano)により,ArFエキシマレーザーを,マスクパターンを介して選択的に照射した。そして,120℃,60秒間のPEB処理を行い,さらに23℃にて表23に示す現像液で13秒間パドル現像処理を行い,実施例120?121,124及び135では表23に示すリンス液で20秒間リンス処理を行った後,振り切り乾燥を行った。なお,表23に示す現像液及びリンス液の略号は前記同様である。
続いて,ホットプレート上で100℃,40秒間のポストベークを行った。
その結果,全ての例において前記レジスト膜に,スペース幅65nm,ピッチ130nmの1:1スペースアンドライン(SL)パターンが形成された。
得られたレジストパターンにおいて,残膜率,倒れマージン,及びLWRの評価を上記同様に行った。結果を表23に示す。
【0409】
【表23】

【0410】
上記の結果から,本発明に係る実施例111?137のレジスト組成物は,比較例24?26のレジスト組成物に比べて,残膜率,倒れマージン,及びLWR耐熱性(審決注:「LWR耐熱性」は誤記であり,正しくは「LWR」と解される。)に優れることが確認できた。」(【0343】ないし【0372】は[0343]ないし[0372]に,【0403】ないし【0410】は[0397]ないし[0404]に記載されており,【表21】ないし【表23】は国際公開では[表19]ないし[表21]と表現されている。)

(3)先願1の当初明細書等に記載された発明
【0345】及び【0346】に示されたモノマー(3),モノマー(11),モノマー(12)及びモノマー(30)から,それぞれ構成単位(a22),構成単位(a1),構成単位(a0)及び構成単位(a1)が誘導されることが当業者に自明であるから,前記(2)アないしウを含む先願1の当初明細書等全体の記載から,先願1の当初明細書等に,請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する請求項6に係る発明の具体的な実施例である「実施例123」に対応する発明として,次の発明が記載されていると認められる。

「酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A),及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法に用いられ,
前記基材成分(A)が,4?12員環のラクトン含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a21),3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a22),及び5?7員環のカーボネート含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a23)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(a2)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)と,-SO_(2)-含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a0)とを有する樹脂成分(A1)を含有し,
前記酸発生剤成分(B)が,露光によりスルホン酸を発生する下記一般式(b1)で表される化合物からなる酸発生剤(B1)を含む,溶剤現像ネガ型レジスト組成物であって,
前記基材成分(A)として,前記構成単位(a22)が誘導される下記モノマー(3),前記構成単位(a1)が誘導される下記モノマー(11),前記構成単位(a0)が誘導される下記モノマー(12),下記モノマー(13)及び前記構成単位(a1)が誘導される下記モノマー(30)をそれぞれ20,30,20,20及び10というモル比で常法により合成した,分子量(Mw(k))が10で分子量分散量(Mw/Mn)が1.78の高分子化合物57が100質量部と,
前記酸発生剤成分(B)として,下記化合物(B)-5が15質量部と,
露光により前記酸発生剤成分(B)等から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用する下記化合物(D)-5が5質量部と,
サリチル酸が0.1質量部と,
下記高分子化合物(F)-A[Mw=28000,Mw/Mn=2.0,l/m=30/70(モル比)]が4質量部と,
PGMEA/PGME:6/4(質量比)の混合溶剤が2500質量部と,
からなり,
スペースアンドラインパターンを形成する際の残膜率,倒れマージン及びLWRに優れる溶剤現像ネガ型レジスト組成物。

【一般式(b1)】

[式中,Xは置換基を有していてもよい炭素数3?30の炭化水素基であり,Q^(1)は酸素原子を含む2価の連結基であり,Rfは置換基を有していてもよい炭素数1?4のフッ素化アルキレン基であり,Z^(+)は有機カチオンである。]

【モノマー(3),(11),(12),(13)及び(30)】

【化合物(B)-5】


【化合物(D)-5】


【高分子化合物(F)-A】

」(以下,「先願1発明」という。)

2 本願発明と先願1発明の対比
先願1発明の「酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)」,「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)」,「レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法」,「樹脂成分(A1)」及び「溶剤現像ネガ型レジスト組成物」が,本願発明の「酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)」,「露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)」,「レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法」,「樹脂成分(A1)」及び「溶剤現像ネガ型レジスト組成物」にそれぞれ相当し,
引用発明の「3?7員環のエーテル含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a22)」,「酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)」,「-SO_(2)-含有環式基を含み,α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a0)」は,本願発明の「3?7員環のエーテル含有環式基を含む構成単位(a0)」,「酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)」,「-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a5)」にそれぞれ該当する構成単位であり,
引用発明の「モノマー(3)」から誘導される「構成単位(a22)」は,本願発明の「一般式(a0-r-1)」で表されるエーテル含有環式基を有しており,
引用発明の「化合物(D)-5」は,本願発明の「一般式(d1)」で表される化合物に該当するから,
本願発明と先願1発明は,
「酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A),露光により酸を発生する酸発生剤成分(B),及び塩基性化合物成分(D)を含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程,前記レジスト膜を露光する工程,及び前記レジスト膜を,前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程,を含むレジストパターン形成方法に用いられるレジスト組成物であって,
前記基材成分(A)が,3?7員環のエーテル含有環式基を含む構成単位(a0)と,酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)と,-SO_(2)-含有環式基を含む構成単位(a5)と,を有する樹脂成分(A1)を含有し,
前記3?7員環のエーテル含有環式基が,下記一般式(a0-r-1)?(a0-r-5)のいずれかで表される基であり,
前記塩基性化合物成分(D)が,下記一般式(d1)で表される化合物(d1)を含む溶剤現像ネガ型レジスト組成物。
【化1】

[式中,R’はそれぞれ独立に水素原子,アルキル基,アルコキシ基,ハロゲン原子,ハロゲン化アルキル基,水酸基,-COOR”,-OC(=O)R”,ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;n_(a01)は0または1であり,n_(a02)は0?2の整数である。]
【化2】

[式中,R^(8)はフッ素化アルキル基である。M^(m+)はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明の酸発生剤成分(B)が,「式(b1)?(b3),(b6)?(b9)のいずれかで表されるアニオン部を有する化合物」を含むのに対して,
先願1発明の酸発生剤成分(B)は,化合物(B)-5であって,本願発明のような化合物を含んでいない点。

3 判断
(1) 本願発明と先願1発明の間に相違点が存在する以上,本来,両発明は同一でないというべきであるが,先願1の当初明細書等の【0166】及び【0167】には,酸発生剤成分(B)として,一般式(b1)で表されるオニウム塩系酸発生剤が特に好ましいことが記載され,【0180】及び【0181】には,一般式(b1)中のアニオン部の具体例として,(b1-1)ないし(b1-8)が例示されていて,これら具体例のうちの(b1-1)ないし(b1-3),(b1-6)ないし(b1-8)が,相違点に係る本願発明の式(b1)ないし(b3),(b6)ないし(b8)で表されるアニオン部にそれぞれ相当するから,本願発明が先願1の当初明細書等に記載された発明が実質的に同一であるといえる余地がある。
そこで,本願発明が,先願1の当初明細書等に記載された発明と実質的に
同一といえるのか否かについて,以下に検討する。

(2) 本願発明及び先願1発明は,含有成分等の物の構造に基づく効果の予測が困難な感光性レジスト組成物という技術分野に属するところ,このような技術分野においては,たとえ含有成分として用いることができる化合物の種類について明細書に示唆があるとしても,当該化合物を用いて具体例を製造し,その効果を確かめているとか,当該化合物が,効果が確かめられた実施例で用いているものと同等のものであることが,具体例を用いて確かめるまでもなく当業者に自明であるということがない限りは,当該化合物を用いた感光性レジスト組成物に係る発明が明細書に実質的に記載されているとはいえないというべきである。
先願1の当初明細書等においては,確かに,酸発生剤成分(B)として,相違点1に係る本願発明の式(b1)ないし(b3),(b6)ないし(b8)で表されるアニオン部を有する化合物(以下,「相違点1化合物」という。)を用いることができることが記載されているものの,先願1発明の他の含有成分と相違点1化合物を含む酸発生剤成分(B)とを用いた具体例及びその効果が当初明細書に記載されているわけではなく,かつ,これら相違点1化合物が,先願1発明の「化合物(B)-5」と同等のものであることが,具体例を用いて確かめるまでもなく当業者に自明であるとまではいえないから,先願1の当初明細書等に,「先願1発明の他の含有成分」と「相違点1化合物を含む酸発生剤成分(B)」とを含有する「溶剤現像ネガ型レジスト組成物」が先願1の当初明細書等に実質的に記載されているとはいえない。

(3) 加えて,次に示すとおり,本願発明と先願1の当初明細書等に記載された発明とは,異なる技術思想に基づくものといえる。
ア 本願明細書の【0005】の記載によれば,本願発明が解決しようとする課題は,「リソグラフィー特性に優れ,且つ,パターン部の膜減りが低減されたレジストパターンを形成できる」ネガ型レジスト組成物を提供することにあると理解され,【0003】に記載された従来の技術,【0006】に記載された課題を解決する手段及び技術常識に照らせば,本願発明は,前記課題を解決するために,基材成分として,3?7員環のエーテル含有環式基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を用い,さらに,フッ素原子を有する塩基性化合物成分(D1)を含有させるという手段を採用したものと理解される。
そして,本願明細書の【0198】ないし【0204】に示された実施例1及び比較例1ないし3の評価によって,前記課題を課題を解決できることは具体的に確かめられている。また,当該評価の記載から,本願発明の課題における「リソグラフィー特性」とは,具体的には,「コンタクトホールのCDの均一性」であると理解される。
すなわち,本願発明は,3?7員環のエーテル含有環式基を含む構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)と,フッ素原子を有する塩基性化合物成分(D1)とを,必須成分として含有させることで,形成されるコンタクトホールの寸法のばらつきを小さくできるという技術思想に基づくものと解される。

イ 一方,先願1発明は,先願1の当初明細書等における請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する請求項6に係る発明(以下,「先願1請求項6発明」という。)の実施例である「実施例123」に対応する発明である。
先願1請求項6発明が解決しようとする課題は,当初明細書等の【0010】の記載によれば,リソグラフィー特性及びパターン形状に優れ,且つ,膜減りの少ないレジストパターンを形成できるレジストパターン形成方法に用いられる溶剤現像ネガ型レジスト組成物を提供することであると理解され,請求項1,3及び6の記載等からみて,当該課題を解決するために,先願1請求項6発明では,「構成単位(a21),構成単位(a22)及び構成単位(a23)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位(a2)と,構成単位(a1)と,構成単位(a0)とを有する樹脂成分(A1)」及び「一般式(b1)で表される化合物からなる酸発生剤(B1)」を必須成分として含有させるという手段を採用したものと理解される。(なお,本願明細書に記載された比較例2及び3は,当該先願1請求項6発明においては,実施例に該当する。)
そして,【表23】等に示された「実施例123」を含む各実施例及び比較例の評価についての記載から,先願1請求項6発明の課題における「リソグラフィー特性及びパターン形状」とは,具体的には,「スペースアンドラインパターンにおけるパターン倒れの耐性及び線幅のラフネス」であると理解される。
しかるに,先願1の当初明細書等には,「構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)」と「フッ素原子を有する塩基性化合物成分(D1)」とを含有させることで,形成されるコンタクトホールの寸法のばらつきを小さくできることについては記載も示唆もされていない。

(4) 以上によれば,先願1の当初明細書等に,本願発明と同一の発明が記載されているとはいえない。

(5) 本願の請求項2は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであるところ,先願1の当初明細書等に,本願発明と同一の発明が記載されているとはいえない以上,本願発明と同様の理由で,先願1の当初明細書等に請求項2に係る発明と同一の発明が記載されているとはいえない。

4 小括
以上のとおり,本願の請求項1及び2に係る発明は,先願1の当初明細書等に記載された発明と同一ではないから,原査定理由1によって,本願を拒絶することはできない。


第5 原査定理由2についての判断
先願2の当初明細書等に記載された実施例20及び45は,少なくとも,塩基性化合物成分として「一般式(d1)」で表される化合物(本件審判の請求と同時の補正により限定された点である。)を用いていないから,本願発明と同一ではない。
また,その他の実施例等を含め,本願の請求項1に規定された各成分を全て含有するレジスト組成物は,記載も示唆もされていない。
したがって,本願発明は,先願2の当初明細書等に記載された発明と同一とはいえないから,原査定理由2によって,本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-24 
出願番号 特願2012-57959(P2012-57959)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 裕勝  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
清水 康司
発明の名称 溶剤現像ネガ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松本 将尚  
代理人 宮本 龍  
代理人 志賀 正武  
代理人 飯田 雅人  
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