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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1327407 |
審判番号 | 不服2016-7778 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-27 |
確定日 | 2017-04-17 |
事件の表示 | 特願2013-129496「同行判断装置、同行判断方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 5102〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月20日に出願された特許出願であって、平成27年7月17日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年9月2日に意見書が提出されたが、平成28年3月24日付けで拒絶の査定がなされ、同拒絶査定の謄本は同月29日に送達された。 これに対して、同年5月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年5月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正における請求項1の補正 本件補正は、特許請求の範囲を変更するものであり、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1(下記ア。以下「補正前の請求項1」という。)の記載を、平成28年5月27日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1(下記イ。以下「補正後の請求項1」という。)のとおりに補正することを、その一部に含むものである。(分説のため、A?Eを付した。) ア 補正前の請求項1 「A 2以上の各ユーザに装着されたセンサによって取得された観測情報と、当該観測情報を取得した時点を示す時点情報とを対応付けたセンサ情報を、当該センサからそれぞれ受け付けるセンサ情報受付手段と、 B1 前記センサ情報受付手段が受け付けたセンサ情報にそれぞれ含まれる観測情報の組であり、同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報にそれぞれ対応する観測情報の組である観測情報セットの類似に関する情報である類似情報を算出する類似情報算出手段と、 C 前記類似情報が、あらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に、当該類似情報を算出するのに用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが前記判断時点に同行していたと判断する同行判断手段と、 D 前記同行判断手段が判断した結果に関する情報を出力する出力手段とを具備する E 同行判断装置。」 イ 補正後の請求項1 「A 2以上の各ユーザに装着されたセンサによって取得された観測情報と、当該観測情報を取得した時点を示す時点情報とを対応付けたセンサ情報を、当該センサからそれぞれ受け付けるセンサ情報受付手段と、 B1 前記センサ情報受付手段が受け付けたセンサ情報にそれぞれ含まれる観測情報の組であり、同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報にそれぞれ対応する観測情報の組である観測情報セットの類似に関する情報である類似情報を算出する類似情報算出手段と、 C 前記類似情報が、あらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に、当該類似情報を算出するのに用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが前記判断時点に同行していたと判断する同行判断手段と、 D 前記同行判断手段が判断した結果に関する情報を出力する出力手段とを具備し, B2 前記類似情報算出手段は,観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出,または,観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出を行う, E 同行判断装置。」 (2)独立特許要件違反の検討の要否について 請求項1の補正は、補正前の請求項1における発明特定事項である「類似情報算出手段」を「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出、または、観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出を行う」ものに限定しようとするものである。そして、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。よって、請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、2、3において、請求項1の補正を含む本件補正が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)を満たすものか否かを検討する。 2 独立特許要件違反(特許法第29条第2項に規定する要件に係るもの)についての検討 (1)本願補正発明 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1(1)イにおいて示した、補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由において引用された、特開2012-3322号公報(以下、「引用文献」という。)は、本願の特許出願前である平成24年1月5日に出願公開がなされた特許文献であり、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) ア 「【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところが、非特許文献1に記載された技術では、GPSにより計測された位置情報を用いてグループメンバの推定を行っている。また、非特許文献2に記載された技術では、ユーザが所持する端末間の近接情報のみからグループメンバの推定を行っている。このため、これらの技術では、いずれも屋内、屋外にかかわらず多くのユーザが密集した状態では計測精度の面から特定のグループメンバの推定が困難となる。 【0006】 この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、多数のユーザが密集した状態でも特定のグループメンバを高精度に推定することが可能なグループ行動推定方法及びそのプログラムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、グループ行動推定装置としての機能を有する情報処理装置が、以下のような処理工程を実行するようにしたものである。すなわち、先ず複数のユーザがそれぞれ所持する計測端末から当該ユーザの歩行動作の加速度を表す計測データを時系列的に受信して、この受信した計測データをユーザ又は計測端末の識別情報と関連付けて記憶する。この状態で、上記複数のユーザのうち推定対処となるユーザの各々について、当該ユーザ又は計測端末の識別情報をもとに上記記憶された加速度を表す計測データを読み出し、この読み出された計測データをもとに歩行動作の周期的変化を表す歩行周期変化量を算出する。そして、この算出された歩行周期変化量の類似度を算出して、この算出された歩行周期変化量の類似度を予め設定した第1のしきい値と比較し、その比較結果をもとに上記複数のユーザが同一グループのメンバとして行動しているか否かを判定するようにしたものである。 【0008】 すなわち、この発明の第1の観点は、同一グループで行動しているユーザはその歩行周期、つまり歩行速度が速くなったり遅くなったりする歩行パターンが類似することに着目し、推定対象となるユーザの歩行周期の類似度をもとに同一グループに属するか否かを推定するようにしたものである。 したがって、多数のユーザが密集している場所においても、ユーザがどのグループに属しているかを精度良く判定することが可能となる。」 イ 「【0014】・・ (第1の実施形態)[構成] 図1は、この発明の第1の実施形態に係わるグループ行動推定方法を実現するためのシステムの概略構成図である。 このシステムは、複数のユーザにそれぞれ計測端末MT1?MTnを所持させると共に、ネットワーク上にグループ行動推定装置SVを設け、上記計測端末MT1?MTnからグループ行動推定装置SVへ通信ネットワークNWを介してセンシングデータを送信可能としたものである。 ・・・ 【0016】計測端末MT1?MTnは、例えば図2に示すように近接センサ11及び3軸加速度センサ12を備えている。そして、この近接センサ11及び3軸加速度センサ12の計測信号をもとに、制御部13において一定のサンプリングタイミングごとに、周辺の他の計測端末との近接状態を表すセンシングデータと、加速度を表すセンシングデータを生成し、この生成された各センシングデータを制御部13の制御の下で通信部14からグループ行動推定装置SVへ向けて送信するように構成される。なお、計測端末MT1?MTnは、万歩計(登録商標)等のセンシング専用端末に機能を内蔵させたものとして構成してもよいし、また携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)、スマートホン、携帯型のパーソナル・コンピュータに機能を内蔵させたものとして構成してもよい。 【0017】 グループ行動推定装置SVは、例えば通信事業者又はサービス事業者が運用するサーバコンピュータからなるもので、以下のように構成される。図3はその構成を示すブロック図である。・・・」 ウ 「【0027】[動作]次に、以上のように構成されたシステムによるグループ行動推定処理動作を説明する。 (1)計測端末MT1?MTnにおけるセンシング ユーザが所持する計測端末MT1?MTnではそれぞれ、近接センサ11及び3軸加速度センサ12の計測信号をもとに、制御部13において予め設定された一定のサンプリング周期で、他の計測端末との近接状態を表すセンシングデータと、加速度を表すセンシングデータがそれぞれ生成される。これらのセンシングデータには、計測タイミングを表すタイムスタンプと、計測端末IDが付与される。そして、この生成された各センシングデータは、制御部13の制御の下で通信部14からグループ行動推定装置SVへ向けて送信される。」 エ 「【0029】(2)グループ行動推定装置SVの動作 グループ行動推定装置SVでは、制御ユニット30の制御の下で以下のような処理が実行される。図4はその全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。 (2-1)センシングデータの収集 先ずステップS1において、センシングデータ収集処理部31が起動される。そして、計測端末MT1?MTnから定期的に送信される端末間の近接状態及び加速度を表すセンシングデータが、上記センシングデータ収集処理部31の制御の下で、通信インタフェースユニット20により受信され、送信元の計測端末の端末IDに関連付けられかつタイムスタンプにより表される計測時刻順にソートされてセンシングデータ記憶部41に記憶される。」 オ 「【0030】(2-2)グループメンバ候補の検出 次にステップS2において、グループメンバ候補検出部32が起動される。そして、このグループメンバ候補検出部32により、各計測端末MT1?MTnにおける他の端末との近接状態を表すセンシングデータが上記センシングデータ記憶部41から読み出される。そして、この読み出された近接状態を表すセンシングデータをもとに、他の端末を検知している計測端末の有無が判定される。この判定の結果、他の端末を検知している計測端末が存在する場合には、ステップS3において、他の端末を検知しているすべての計測端末がグループメンバ候補として抽出され、この抽出された計測端末の端末IDの集合がグループメンバ候補記憶部42に一時保存される。 【0031】(2-3)加速度センシングデータに基づく同行推定 次にステップS4において、上記グループメンバ候補に含まれる計測端末(言い換えればそのユーザ)が同行しているか否かを推定する処理が、その加速度センシングデータに基づいて以下のように行われる。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。」 カ 「【0032】(2-3-1)歩行状態の判定 先ず歩行判定処理部33が起動され、この歩行判定処理部33により、上記グループメンバ候補記憶部42に保存されているグループメンバ候補の端末IDをもとに、その計測端末のユーザの歩行状態が以下のように判定される。 【0033】すなわち、グループメンバ候補に含まれる計測端末の端末IDがグループメンバ候補記憶部42から読み出され、この計測端末IDをもとに当該計測端末の最新のNサンプリング分の加速度センシングデータがセンシングデータ記憶部41から読み出される。そして、この読み出された加速度センシングデータに基づいて、当該計測端末を所持するユーザの歩行状態、つまり歩行中か停止しているかがサンプリングタイミングごとに判定され、その判定結果を表す時系列データが該当する計測端末IDに関連付けられて歩行判定結果記憶部43に記憶される。 【0034】歩行判定方法としては、事前にユーザの歩行時における加速度のリファレンスデータを計測して保存しておき、このリファレンスデータと計測データとを比較するといった方式が考えられる。具体的には、先ずリファレンスデータと計測データのそれぞれにおいて3軸加速度の計測値から各サンプルタイミングにおける加速度の絶対値を算出し、リファレンスデータと計測データのそれぞれにおける加速度絶対値のNサンプル分の時系列データを算出する。次に、この算出されたリファレンスデータ及び計測データの各加速度絶対値の時系列データをそれぞれ周波数解析することで、これらの時系列データのパワースペクトラムのピーク周波数[Hz]を算出する。そして、この算出された2つのピーク周波数の変化率Δfpを、下式により算出する。 Δfp =(fpDET-fpREF)/fpREF ただし、fpDETは計測データにより算出されたパワースペクトラムのピーク周波数、fpREFはリファレンスデータにより算出されたパワースペクトラムのピーク周波数である。 【0035】続いて、上記算出されたピーク周波数の変化率Δfpを、予め設定したしきい値と比較し、この比較の結果ピーク周波数の変化率Δfpがしきい値よりも小さい場合には、上記計測データを歩行中のデータに相当すると判定する。以後、歩行中と判定された計測データのピーク周波数を歩行周期として保存する。」 キ「【0036】(2-3-2)歩行時間帯の類似度に基づく同行判定 次に、ステップS42?ステップS45において第1の類似度範囲処理部34が起動され、この第1の類似度範囲処理部34により、上記グループメンバ候補に含まれる計測端末間の歩行時間帯の類似度が以下のように判定される。 【0037】すなわち、先ずステップS42により、上記グループメンバ候補に含まれる複数の計測端末の中から1つが選択される。そしてステップS43において、上記選択された計測端末の端末IDもとに歩行判定結果記憶部43から対応するユーザの歩行状態判定結果の時系列データが読み出される。続いてステップS44において、注目するユーザの計測端末と上記選択された計測端末との間で、上記歩行状態判定結果の時系列データの類似度が計算される。 【0038】上記歩行時間帯の類似度の計算は、例えば2つの計測端末について得られた歩行判定結果をグラフ化してこの2つのグラフ間で類似度を求めることにより行える。具体的には、図6に示すように、歩行中と判定された時間区間を“1”、それ以外の時間区間を“-1”とすることで、歩行判定結果の時系列グラフを作成する。そして、この2つの時系列グラフにおける最新のMサンプルタイミング分の歩行判定結果に対してガウス窓等の窓関数を掛ける。そして、この窓関数が掛けられた波形間の類似度を相互相関関数等の手法を用いて算出する。 【0039】続いてステップS45により、上記計算された歩行状態判定結果の類似度が予め設定されたしきい値と比較される。この比較の結果、類似度がしきい値より小さければ、注目ユーザと選択された計測端末のユーザとは同行していないと判定され、ステップS48に移行する。 【0040】一方、上記類似度がしきい値より大きかった場合には、上記注目ユーザと上記選択された計測端末のユーザとは同一グループに属するものと仮判定され、ステップS46に移行する。」 ク 「【0041】(2-3-3)歩行周期の類似度に基づくグループ行動の判定 ステップS46に移行すると第2の類似度判定処理部35が起動し、この第2の類似度判定処理部35により以下のようにグループ行動の判定処理が行われる。 すなわち、先ずステップS46において、上記第1の類似度判定処理部34による仮判定の結果、歩行時間帯の類似度がしきい値より高いと判定された各ユーザについて、その加速度センシングデータをもとに上記最新の一定時間区間分の歩行周期変化量がそれぞれ算出される。そして、ステップS47において、上記算出された歩行周期変化量の時系列データ間の類似度が算出され、この算出された類似度が予め設定したしきい値と比較されることで、当該ユーザが同一グループに属しているか否かが最終的に判定される。 【0042】具体的には、上記最新のMサンプル区間におけるサンプリングレートTごとの歩行周期の変化量ΔCを、 ΔC=(Ct’ -Ct’-T)/T (t-T*M≦t’≦t) により計算する。 ただし、Ct’は時刻t’にて算出された歩行周期、Ct’-Tは時刻t’-Tにて算出された歩行周期である。 【0043】続いて、上記算出された歩行周期の変化量ΔCの時系列グラフ間の類似度を、相互相関関数等の手法を用いて計算する。そして、この算出された類似度が予め設定されたしきい値よりも大きい場合に、判定対象の各ユーザがその時間区間において同一グループに属していたと判定する。図7はこの歩行周期の変化量の類似度に基づく判定結果を説明するためのもので、ユーザ間の歩行時間帯の類似度に基づく判定結果A1,A2に比べ、歩行周期の変化量の類似度に基づく判定結果B1,B2は、さらに限定されたものとなる。」 ケ「【0044】上記ステップS47による判定が終了すると、ステップS48において、上記グループメンバ候補記憶部42に保存されたグループメンバ候補の中に未選択の計測端末が残っているか否かが判定される。この判定の結果、未選択の計測端末が残っていればステップS42に戻って未選択の計測端末が1つ選択され、この選択された計測端末のユーザに対し先に述べたステップS43?S47による処理が行われる。以後同様に、グループメンバ候補中から未選択の計測端末が1つずつ順次選択されるごとに、上記ステップS43?S47による処理が繰り返し行われる。 【0045】(2-4)判定結果の記憶 グループメンバ候補中の未選択の計測端末がなくなると、ステップS49に移行して判定結果記憶制御部36が起動し、この判定結果記憶制御部36の制御の下で、上記ステップS45又はステップS47の判定により最終的に得られたグループ行動の判定結果を表す情報が判定結果記憶部44に格納される。」 コ「【0046】以上詳述したように第1の実施形態では、グループ行動推定装置SVにおいて、先ず各計測端末MT1?MTnから収集した端末間の近接状態のセンシングデータをもとにグループメンバ候補が検出される。次に、このグループメンバ候補に含まれる計測端末から収集した加速度のセンシングデータをもとに各ユーザの歩行状態、つまり歩行中か否かが判定され、続いてこの歩行状態の判定結果に基づいてユーザ間の歩行時間帯の類似度が計算される。そして、この歩行時間帯の類似度がしきい値以上のユーザについて、さらに歩行周期変化量の類似度が計算され、この歩行周期変化量の類似度がしきい値以上のユーザが最終的に同一のグループに属するユーザとして判定される。 【0047】すなわち、第1の実施形態では、同一グループで行動しているユーザは歩行時間帯が類似することに着目して、先ず歩行時間帯の類似度をもとに同一グループに属しているか否か仮判定され、さらに同一グループで行動しているユーザはその歩行周期、つまり歩行速度が速くなったり遅くなったりする歩行パターンが類似することに着目して、歩行周期変化量の類似度をもとに同一グループに属するか否かが最終的に判定される。 【0048】したがって、多数のユーザが密集している場所においても、特定のユーザがどのユーザと同行しているかを精度良く判定することが可能となる。・・・」 (3)引用発明 ア (2)イ、(2)ウ、(2)エの記載によれば、複数のユーザがそれぞれ所持する計測端末の加速度センサ等の計測信号をもとに生成された加速度を表すセンシングデータ等が、計測タイミングを表すタイムスタンプ等が付与された上で送信され,タイムスタンプにより表される計測時刻順に記憶される。 イ (2)オの記載によれば、センシングデータをもとに、他の端末を検知しているすべての計測端末がグループメンバ候補とされ、(2)キ、(2)クの記載によれば、グループメンバ候補のうち、同一グループに属するものと仮判定された各ユーザについて、歩行周期の最新のMサンプル区間分(t-T*M≦t’≦t)の変化量ΔC=(Ct’ -Ct’-T)/Tの時系列グラフ間の類似度が算出される。 なお、歩行周期とは、(2)カの記載によれば、最新のNサンプル分の加速度を表すセンシングデータの絶対値の時系列データのパワースペクトラムのピーク周波数fpDETであり、変化率Δfp=(fpDET-fpREF)/fpREF(fpREFは,同様に加速度のリファフェンスデータの絶対値の時系列データにつき算出されたピーク周波数)がしきい値よりも小さい場合と判定されたものである。 ウ (2)クの記載によれば、イで算出された類似度が予め設定したしきい値よりも大きい場合に,各ユーザがその時間区間において同一グループに属していたと判定する。 エ (2)ケの記載によれば、グループメンバ候補中に未選択の計測端末が残っていればこの1つが選択され、イ、ウの算出及び判定が行われ、未選択の計測端末がなくなると、ウの判定により得られたグループ行動の判定結果が格納される。 オ (2)ア、(2)オ、(2)コの記載によれば、ア乃至エで上記した手段により、引用文献のグループ行動判定装置は、複数のユーザが同一グループのメンバとして行動しているか否かを判定して、計測端末を所持するユーザが同行しているか否かを推定するものである。 カ ア乃至オに示したところによれば、(1)の引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。(引用発明のA’乃至E’は、それぞれ、ア乃至オを踏まえたものである。) A' 計測タイミングを表すタイムスタンプ等が付与されて送信された,複数のユーザがそれぞれ所持する計測端末の加速度センサ等の計測信号をもとに生成された加速度を表すセンシングデータ等を受信してタイムスタンプにより表される計測時刻順に記憶する手段と, B' グループメンバ候補のうち同一グループに属すると仮判定されたユーザの、記憶されたセンシングデータ等に基づき算出された歩行周期、 すなわち、最新のNサンプル分の加速度を表すセンシングデータの絶対値の時系列データのパワースペクトラムのピーク周波数fpDETであり、変化率Δfp=(fpDET-fpREF)/fpREF(fpREFは,同様に加速度のリファフェンスデータの絶対値の時系列データにつき算出されたピーク周波数)がしきい値よりも小さい場合と判定されたもの、 の最新のMサンプル区間分(t-T*M≦t’≦t)の変化量ΔC=(Ct’ -Ct’-T)/Tの時系列グラフ間の類似度を算出する手段と、 C’ この類似度が予め設定されたしきい値よりも大きい場合に,仮判定されたユーザがその時間区間において同一グループに属していたと判定する手段と, D' 全てのグループメンバ候補の計測端末についてのグループ行動の判定結果を格納する手段と、を有する, E' 複数のユーザが同一グループのメンバとして行動しているか否かの判定により計測端末を所持するユーザが同行しているか否かを推定するグループ行動推定装置。 (4)本願補正発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「ユーザ」、「計測端末の加速度センサ等」は、それぞれ、本願補正発明の「ユーザ」、「センサ」に相当し、引用発明のユーザがセンサを「所持」することは、本願補正発明のユーザがセンサを「装着」することに相当する。 引用発明の「グループ行動推定装置」(E’)は、センサを装着したユーザの同行を推定するために同一グループのメンバとして行動しているか否かを判定してユーザの同行を判断する装置であり、オで後述する相違点を除いて、本願補正発明の「同行判断装置」に対応している。 イ 引用発明の「(センサの)計測信号をもとに生成された加速度を表すセンシングデータ等」は、本願補正発明の「(センサによって)取得された観測情報」に相当する。 引用発明の「(計測タイミングを表す)タイムスタンプ」は、センサにより観測情報を取得した時点である計測タイミングを表すものであるから、本願補正発明の「時点情報」に相当し、引用発明の、時点情報が付与されて送信された観測情報は、本願補正発明の、時点情報と対応付けられた観測情報である「センサ情報」に相当する。 引用発明において、センサ情報を受信して計測時刻順に記憶することは、本願補正発明において、センサ情報を受け付けることに相当するから、引用発明のA’は、本願補正発明のAの「センサ情報受付手段」に相当する。 ウ 引用発明の「最新のMサンプル区間分(t-T*M≦t’≦t)」は、ユーザの同行を判断する時点であるから、本願補正発明の「同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報」に「対応する」に相当する。 引用発明の「同一グループに属すると仮判定されたユーザ」についての「変化量ΔC=(Ct’-Ct’-T)/Tの時系列グラフ」は、他のユーザについてのそれと類似する対象であるから、ユーザと他のユーザにそれぞれ対応する「変化量ΔC=(Ct’-Ct’-T)/Tの時系列グラフ」の組は、「センサ情報受付手段が受け付けたセンサ情報」に含まれる「観測情報」の組ではないものの、同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報にそれぞれ対応する、2以上のユーザについての情報の組である点で、本願補正発明の「観測情報セット」に対応している。 引用発明の「類似度」は、観測情報である加速度を表すセンシングデータを用いて算出されるものであり、情報の組の類似に関する情報である類似情報であるから、本願補正発明の「類似情報」に対応している。そして、引用発明の「類似度が予め設定されたしきい値よりも大きい場合」は、この類似情報を算出するために用いた観測情報である加速度を表すセンシングデータを取得したセンサを装着する2以上のユーザが判断時点で同行していたと判断する条件であるから、本願補正発明の「類似情報が、あらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合」に対応している。 エ 上記ア乃至ウを踏まえれば、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致する。 <一致点> A” 2以上の各ユーザに装着されたセンサによって取得された観測情報と、当該観測情報を取得した時点を示す時点情報とを対応付けたセンサ情報を、当該センサからそれぞれ受け付けるセンサ情報受付手段と、 B” 2以上のユーザにそれぞれ対応する情報の組であり、同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報にそれぞれ対応する情報の組の類似に関する情報である類似情報を算出する類似情報算出手段と、 C” 前記類似情報があらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に、当該類似情報を算出するのに用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが前記判断時点に同行していたと判断する同行判断手段と、を具備する E” 同行判断装置。 オ そして、次の相違点1乃至相違点3で相違している。 <相違点> (相違点1) 2以上のユーザにそれぞれ対応する情報の組であり、同行しているのかどうかを判断する時点を示す判断時点に応じた時点情報にそれぞれ対応する情報の組が、本願補正発明では、「センサ情報受付手段が受け付けたセンサ情報にそれぞれ含まれる観測情報の組である観測情報セット」であるのに対し、引用発明では、2以上のユーザにそれぞれ対応する「変化量ΔC=(Ct’-Ct’-T)/Tの時系列グラフ」の組である点。 (相違点2)類似情報が、本願補正発明では、「観測情報の波形の類似度を用いた」もの又は「観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた」ものであるのに対し、引用発明ではその旨明示されていない点。 (相違点3) 本願補正発明では、「前記同行判断手段が判断した結果に関する情報を出力する出力手段」を具備するのに対し、引用発明は、全てのグループメンバ候補の計測端末についてのグループ行動の判定結果を格納する手段を有するものの、「前記同行判断手段が判断した結果に関する情報を出力する出力手段」を具備するか否か明示されていない点。 (5)相違点の判断 ア 相違点1及び相違点2について パワースペクトルやパワースペクトルのピーク周波数は、データを波形として捉えることを前提としたものであり、引用発明では、受け付けられたセンサ情報である加速度を表すセンシングデータを他のデータと比較するための特徴を捉えるべくパワースペクトル及びパワースペクトルのピーク周波数が算出されて、これを用いて歩行周期の変化量が算出されている。(実効値ではなく絶対値を用いるスペクトルも、データを波形として捉えることを前提としたものであることは同様である。) このことから、引用発明の変化量の時系列グラフは、受け付けられたセンサ情報である加速度を表すセンシングデータに係るパワースペクトルのピーク周波数という波形として捉えた特徴を反映したものとなっているのであり、この時系列グラフ同士が類似することは、算出されたパワースペクトルのピーク周波数という波形として捉えた特徴を反映した変化量(の時系列グラフ)における類似という観点からこの算出に用いられた加速度を表すセンシングデータ同士が類似することをも意味している。 この点、本願補正発明は、文言上、受け付けられたセンサ情報からの加速度を表すセンシングデータに係るパワースペクトルのピーク周波数のような波形として捉えた特徴を反映したものを除外する旨を特定していないし、3で後述するように、発明の詳細な説明にも特許請求の範囲の文言に示された以上の具体的な開示がないから、発明の詳細な説明を参酌しても、この旨が特定されている旨を認定できない。 このことに照らせば、引用発明も、観測情報の波形の類似度を用いた類似情報があらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に類似情報の算出に用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが判断時点に同行していたと判断するものといえるのであり、相違点1及び相違点2は、表現上の相違であって、実質的なものでない。 イ 相違点3について 引用発明の格納された判定結果には同行判断手段の判断結果が含まれており、また、参照するためにはこれを出力する必要があるから、引用発明において、同行判断手段の判断結果に関する情報を出力する手段を備えることは、当業者が適宜なし得たことである。 ウ 本願補正発明の奏する効果について 本願補正発明の奏する効果も、引用発明に照らして予測できる範囲のものであり、格別のものでない。 エ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書(及び平成27年9月2日提出の意見書)において、本願補正発明は観測情報から直接的に類似情報を算出するのに対し引用発明はそうではない、本願補正発明は事前にユーザ毎の情報取得する必要がないが引用発明では取得する必要がある、等と主張している。 しかし、特許請求の範囲の記載によれば、観測情報から直接的に類似情報を算出する旨やユーザ毎に事前に取得した情報を用いない旨は、本願補正発明の発明特定事項でないものと整理されている。補正後の請求項1も、「類似情報算出手段」は、「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出」を行うものであり得る旨を明示しており、「観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出を行う」ものに限定されていない。そして、「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報」が観測情報から直接的に算出されるものである旨や事前に取得した情報を用いずに算出されるものである旨は特定されていない。そして、アで述べたとおり、引用発明も、観測情報の波形の類似度を用いた類似情報があらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に類似情報の算出に用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが判断時点に同行していたと判断するものといえる。 審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものとなっていない。 (6)小括 よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができない。 3 独立特許要件違反(特許法第36条に規定する要件の違反に係るもの)についての検討 (1)補正後の請求項1は、「類似情報算出手段」が(A)「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出」または(B)「観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出」のいずれかを行う旨を特定している。 これに対し、明細書の発明の詳細な説明では、(B)について記載はあるものの、(A)については、段落【0024】に「波形の類似度を用いて類似情報を算出する方法は、公知技術であるため、その詳細な説明を省略する。」と記載されるにとどまり、「波形の類似度」の意義やこれを用いた同行判定に係る技術的事項の内容が、段落【0004】【0005】に示された課題を解決する手段として特定可能な程度に記載されていないから、補正後の請求項1における(A)または(B)という一般化した記載をサポートする内容が記載されているとは認められない。 してみると、本願の発明の詳細な説明は、補正後の請求項1に係る発明について特許法第36条第6項第1号に規定する記載要件を満たすように記載されたものでない。 (2)補正後の請求項1は、「類似情報算出手段」が(A)「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出」または(B)「観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出」のいずれかを行う旨を特定しているところ、このうち、(1)について、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなっていない。 (A)について、発明の詳細な説明では、段落【0024】に「波形の類似度を用いて類似情報を算出する方法は、公知技術であるため、その詳細な説明を省略する。」と記載されるにとどまり、「波形の類似度」の意義やこれを用いた同行判定に係る技術的事項の内容が特定されるように記載されていない。 してみると、本願の発明の詳細な説明は、補正後の請求項1に係る発明について特許法第36条第4項第1号に規定する記載要件を満たすように記載されたものでない。 (3)小括 よって、補正後の請求項1により特定される発明は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たさない出願に係るものであるから、独立して特許を受けることができない。 4 補正の却下の決定のまとめ 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項が規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記第2の補正の却下の決定により、本件補正は、却下された。よって、本願の請求項1乃至7に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、第2 1(1)アにおいて示した、補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 引用文献の記載事項、引用発明 引用文献の記載事項は、第2 2(2)に上記したとおりであり、引用発明は、同(3)のとおりである。 3 判断 (1)対比 本願発明は、本願補正発明における「類似情報算出手段」が「観測情報の波形の類似度を用いた類似情報の算出、または、観測情報の比率を用いる数式もしくは観測情報の差を用いる数式を用いた類似情報の算出を行う」ものである旨の限定を除くものである。 してみると、本願発明と引用発明とは、第2 2(4)エに上記したとおりの一致点で一致し、第2 2(4)オに上記した相違点1乃至相違点3のうち相違点1及び相違点3において、相違する。 (2)判断 ア 相違点1について 引用発明において、受け付けられたセンサ情報である加速度を表すセンシングデータを用いて算出された歩行周期の変化量ΔC=(Ct’-Ct’-T)/Tの時系列グラフ同士が類似することは、算出された変化量(の時系列グラフ)における類似という観点からこの算出に用いられた加速度を表すセンシングデータ同士が類似することをも意味している。 このことに照らせば、引用発明も、類似情報があらかじめ決められた条件を満たすほど類似することを示す場合に類似情報の算出に用いた観測情報を取得したセンサを装着する2以上のユーザが判断時点に同行していたと判断するものといえるのであり、相違点1及び相違点2は、表現上の相違であって、実質的なものでない。 イ 相違点3について 第2 2(5)イのとおりである。 ウ 本願発明の奏する効果について 本願発明の奏する効果も、引用発明に照らして予測できる範囲のものであり、格別のものでない。 (3) 小括 よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-17 |
結審通知日 | 2017-02-21 |
審決日 | 2017-03-07 |
出願番号 | 特願2013-129496(P2013-129496) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋口 龍弥、田中 秀樹 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 石川 正二 |
発明の名称 | 同行判断装置、同行判断方法、およびプログラム |
代理人 | 森本 悟道 |
代理人 | 谷川 英和 |
代理人 | 谷川 英和 |
代理人 | 森本 悟道 |