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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1327481
審判番号 不服2016-7709  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-26 
確定日 2017-04-20 
事件の表示 特願2014-143794「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日出願公開、特開2014-223432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年9月20日を出願日とする特願2007-244464号の一部を平成25年1月9日に新たな特許出願である特願2013- 2171号とし、さらにその一部を平成26年7月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月21日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年9月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月17日付け(発送日:平成28年3月22日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成28年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成28年7月6日付けで前置報告がなされたものである。

第2 平成28年5月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年5月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]

1.本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成27年9月28日付け手続補正)の
「【請求項1】
始動条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
所定の表示手段において図柄を変動表示させた後に該図柄を停止表示させるとともに、前記抽選の結果を表示可能な表示制御手段と、
前記抽選の結果が大当たりであるときに、前記抽選の結果が大当たりである旨が表示された後に大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
前記抽選の結果が表示されるよりも前に、前記図柄の変動表示と停止表示とが行われる期待演出が複数回行われる連続期待演出の実行判定を行う連続期待演出実行判定手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、
前記期待演出が行われているときに前記抽選の結果が大当たりである可能性がある旨を示唆する示唆演出を行いうる示唆演出実行手段を有し、
前記示唆演出には、前記抽選の結果が大当たりである可能性が異なる複数の示唆演出態様が含まれており、
前記示唆演出実行手段は、
前記連続期待演出における一の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出を行う第1示唆演出実行手段、及び
前記連続期待演出における前記一の期待演出において前記第1示唆演出が行われたときに、該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行う第2示唆演出実行手段を有し、
前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能であるとともに、該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されてなる
ことを特徴とする遊技機。」
から、
補正後(本件補正である平成28年5月26日付け手続補正)の
「【請求項1】
始動条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
所定の表示手段において図柄を変動表示させた後に該図柄を停止表示させるとともに、前記抽選の結果を表示可能な表示制御手段と、
前記抽選の結果が大当たりであるときに、前記抽選の結果が大当たりである旨が表示された後に大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、
前記抽選の結果が大当たりとなる可能性を示唆しうる示唆演出を一以上実行する示唆演出実行手段を有し、
前記示唆演出には、前記抽選の結果が大当たりとなる可能性が異なる複数の示唆演出態様が含まれており、
前記示唆演出実行手段は、
前記抽選の結果が大当たりとなる可能性が所定の期待度である旨を示唆する示唆演出を行う第1示唆演出実行手段、及び
前記所定の期待度の示唆演出が行われたときに、該示唆演出の後に行われる次の新たな示唆演出として、前回行われた示唆演出と同じ期待度の示唆演出と、前回の示唆演出の期待度よりも期待度の高い示唆演出とのうちいずれかを行うことにより、前回行われた示唆演出における期待度よりも低い期待度の示唆演出が行われないようにする第2示唆演出実行手段を有し、
前記示唆演出が複数回行われたときに、該示唆演出が複数回行われたことによって前記大当たりとなる可能性が前記所定の期待度より高められる場合と、該示唆演出が複数回行われたにもかかわらず前記所定の期待度が維持される場合とが生じうるようにした
ことを特徴とする遊技機。」
へ補正された(下線は補正箇所を示す)。

2.補正の適否
(1)補正事項
本件補正により、
(ア)補正前の請求項1の「示唆演出実行手段」について、「期待演出が行われているときに」という記載を削除する補正(以下、補正事項1という。)、
(イ)補正前の請求項1の「前記抽選の結果が大当たりである可能性がある旨を示唆する示唆演出を行いうる」を「前記抽選の結果が大当たりとなる可能性を示唆しうる示唆演出を一以上実行する」とする補正(以下、補正事項2という。)、
(ウ)補正前の請求項1の「前記抽選の結果が表示されるよりも前に、前記図柄の変動表示と停止表示とが行われる期待演出が複数回行われる連続期待演出の実行判定を行う連続期待演出実行判定手段」を削除する補正(以下、補正事項3という。)、
(エ)補正前の請求項1の「第1示唆演出実行手段」について、「示唆演出」を特定するための「前記連続期待演出における一の期待演出において」という記載を削除する補正(以下、補正事項4という。)、
(オ)補正前の請求項1の「前記抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出」を「前記抽選の結果が大当たりとなる可能性が所定の期待度である旨を示唆する示唆演出」とする補正(以下、補正事項5という。)、
(カ)補正前の請求項1の「第2示唆演出実行手段」について、「前記連続期待演出における前記一の期待演出において前記第1示唆演出が行われたときに」という記載を「前記所定の期待度の示唆演出が行われたときに」とすることで「連続期待演出における前記一の期待演出において」という記載を削除する補正(以下、補正事項6という。)、
(キ)補正前の請求項1の「該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行う」という記載を「該示唆演出の後に行われる次の新たな示唆演出として、前回行われた示唆演出と同じ期待度の示唆演出と、前回の示唆演出の期待度よりも期待度の高い示唆演出とのうちいずれかを行うことにより、前回行われた示唆演出における期待度よりも低い期待度の示唆演出が行われないようにする」とする補正(以下、補正事項7という。)、
(ク)補正前の請求項1の「前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能であるとともに、該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されてなる」という記載を削除する補正(以下、補正事項8という。)、
(ケ)補正前の請求項1の「前記示唆演出が複数回行われたときに、該示唆演出が複数回行われたことによって前記大当たりとなる可能性が前記所定の期待度より高められる場合と、該示唆演出が複数回行われたにもかかわらず前記所定の期待度が維持される場合とが生じうるようにした」という記載を追加する補正(以下、補正事項9という。)、
がなされた。

(2)補正の根拠
審判請求人は、平成28年5月26日付けの審判請求書の「4.補正の内容及び根拠」において、上記補正のうち、補正事項2の根拠として、出願当初明細書(特に、段落0750?0752、0755)の記載にもとづくものであり、補正事項7の根拠として、出願当初明細書及び図面の段落0767、図186等の記載にもとづくものであると主張している。
また、補正事項5の根拠については明示されていないものの、当該補正事項に関連する補正事項2の根拠と同様の記載に基づくものといえる。
さらに、上記審判請求書の「(3-3) 本願発明の技術的特徴について」の記載からすると、審判請求人は、補正事項9の根拠として、出願当初明細書及び図面の段落0767、図186の記載にもとづくものであると主張しているものといえる。

(3)補正の目的
まず、補正事項3について検討する。
補正事項3により、補正前の請求項1に記載の「遊技機」を特定するために必要な事項である「連続期待演出実行判定手段」を削除することで、「連続期待演出の実行判定を行う連続期待演出実行判定手段」を有しないものも含まれることになるから、特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものではない。また、補正事項3は、特許法第17条の2第5項の他の各号に該当するものでもない。したがって、補正事項3は、特許法第17条の2第5項の規定に適合するものではない。

さらに、補正事項1,4,6,8について検討する。
補正事項1により、「示唆演出実行手段」を特定するための「期待演出が行われているときに」という事項、補正事項4により「第1示唆演出実行手段」を特定するための「前記連続期待演出における一の期待演出において」という事項、補正事項6により「第2示唆演出実行手段」を特定するための「該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において」という事項、補正事項8により「遊技機」を特定するための「前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能であるとともに、該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されてなる」という事項、をそれぞれ削除することで、「遊技機」の「示唆演出」に関する特許請求の範囲を拡張するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものではない。また補正事項1、4、6、8は、特許法第17条の2第5項の他の各号に該当するものでもない。したがって、補正事項1、4、6、8は、特許法第17条の2第5項の規定に適合するものではない。

(4)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明は、平成27年9月28日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した以下のとおりのものである(記号A?B1-3は分説するため当審で付した)。

「【請求項1】
A 始動条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
B 所定の表示手段において図柄を変動表示させた後に該図柄を停止表示させるとともに、前記抽選の結果を表示可能な表示制御手段と、
C 前記抽選の結果が大当たりであるときに、前記抽選の結果が大当たりである旨が表示された後に大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
D 前記抽選の結果が表示されるよりも前に、前記図柄の変動表示と停止表示とが行われる期待演出が複数回行われる連続期待演出の実行判定を行う連続期待演出実行判定手段と、
を備え、
B1 前記表示制御手段は、
前記期待演出が行われているときに前記抽選の結果が大当たりである可能性がある旨を示唆する示唆演出を行いうる示唆演出実行手段を有し、
前記示唆演出には、前記抽選の結果が大当たりである可能性が異なる複数の示唆演出態様が含まれており、
B1-1 前記示唆演出実行手段は、
前記連続期待演出における一の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出を行う第1示唆演出実行手段、及び
B1-2 前記連続期待演出における前記一の期待演出において前記第1示唆演出が行われたときに、該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行う第2示唆演出実行手段を有し、
B1-3 前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能であるとともに、該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されてなる
ことを特徴とする遊技機。」

1.先願明細書等

(1)先願明細書等に記載された発明
原査定の拒絶の理由において提示された、本願の出願遡及日前に出願された特願2007-74622号(特開2008-229120号公報参照;以下、「先願」という)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という)には以下の記載がある。(下線は当審にて付した。以下、同じ)

(ア) 「【0007】
本発明(1)は、遊技球が入球可能な始動口(特図始動口2110)と、
非特別遊技時に、識別情報(装飾図柄)の変動表示及び停止表示に加え、前記識別情報(装飾図柄)の変動表示及び/又は停止表示の結果を事前に報知又は示唆する予告情報を表示可能な、演出を表示するための演出表示部(演出表示装置2140)と、
開状態と閉状態を採り得る可変入賞口(大入賞口2120)と、
前記始動口(特図始動口2110)への遊技球の入球に基づき、遊技内容決定乱数を取得する乱数取得手段(乱数取得判定実行手段1120)と、
前記乱数に基づき、前記識別情報(装飾図柄)の変動態様及び停止態様を決定する、識別情報表示内容決定手段(装図表示内容決定手段2153a-1)と、
前記乱数に基づき、前記予告情報を表示させるか否かを判定すると共に、表示させる場合には前記予告情報の表示内容を決定する、予告情報表示可否判定・内容決定手段と(予告表示可否決定・内容決定手段2153c-1)、
非特別遊技時に、前記識別情報(装飾図柄)の変動開始条件を充足している場合、前記識別情報表示内容決定手段(装図表示内容決定手段2153a-1)により決定された表示内容に従い、前記演出表示部(演出表示装置2140)で前記識別情報(装飾図柄)を前記変動態様で変動表示した後に前記停止態様を表示する、識別情報表示制御手段(装飾図柄表示制御手段2153a)と、
前記識別情報(装飾図柄)が変動表示中に、前記予告情報表示可否判定・内容決定手段(予告表示可否決定・内容決定手段2153c-1)により決定された表示内容に従い、前記演出表示部(演出表示装置2140)で当該内容を表示するよう制御する、予告情報表示制御手段(予告表示制御手段2153c)と、
前記識別情報(装飾図柄)の前記停止態様が所定態様である場合、前記可変入賞口(大入賞口2120)を前記閉状態から前記開状態にする特別遊技を実行するための特別遊技実行手段(特別遊技制御手段1170)と
を有するパチンコ遊技機において、
前記識別情報表示内容決定手段(装図表示内容決定手段2153a-1)は、前記識別情報(装飾図柄)の変動態様として、前記識別情報(装飾図柄)の変動と仮停止を一セットとする擬似変動を複数回実行する擬似連続変動態様を選択可能であり、
前記予告情報表示可否判定・内容決定手段(予告表示可否決定・内容決定手段2153c-1)は、複数の予告表示が時間経過に伴って段階的に発展し得るステップアップ予告を表示するか否かを判定すると共に、表示させる場合には、前記複数の予告表示の内、どの段階まで発展させるかを決定し、
前記予告情報表示制御手段(予告表示制御手段2153c)は、前記識別情報表示内容決定手段(装図表示内容決定手段2153a-1)が前記擬似連続変動態様を選択し且つ前記予告情報表示内容決定手段(予告表示可否決定・内容決定手段2153c-1)が前記ステップアップ予告を表示すると判定した場合、所定条件下で、前記擬似連続変動態様を構成する前記複数回の擬似変動毎に、前記ステップアップ予告を表示するよう制御する
ことを特徴とするパチンコ遊技機である。」

(イ) 「【0029】
ここで、遊技制御手段1100は、各入球口(始動口等)への遊技球の流入を判定するための入球判定手段1110と、各乱数の取得可否を判定し、当該判定結果に基づき当該各乱数を取得するための乱数取得判定実行手段1120と、・・・を有している。」

(ウ) 「【0040】
次に、特別遊技制御手段1170は、特別遊技に移行するための条件を充足しているか否かを判定する条件判定手段1171と、前記条件を充足している場合に、特別遊技を実行するための特別遊技実行手段1172と、特別遊技に関する各種処理の時間管理を行うための特別遊技時間管理手段1173とを有している。」

(エ) 「【0049】
次に、表示制御手段2153は、演出表示装置2140の装図表示部2141上での装飾図柄の変動表示や停止表示に関する制御を司る装飾図柄表示制御手段2153aと、演出表示装置2140の装図保留表示部2142上での保留情報の表示処理に関する一切の制御を司る装図保留情報表示制御手段2153bと、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行の可能性を示唆する予告オブジェクトに関する表示制御を司る予告表示制御手段2153cと、当該演出の際に当該演出に関連する情報を一時記憶する演出表示関連情報一時記憶手段2153dとを有している。
【0050】
ここで、装飾図柄表示制御手段2153aは、メイン側情報一時記憶手段2151a内に一時記憶された主制御装置1000側からの図柄情報に基づき、装飾図柄の停止図柄と変動態様を決定するための装図表示内容決定手段2153a-1と、装飾図柄や装飾図柄の変動態様に関するデータ(各種オブジェクトデータ、動画像データ、音声データ等)を含め演出に関する一切のデータを記憶するための装図変動態様記憶手段2153a-2とを更に有している。ここで、装図表示内容決定手段2153a-1は、装飾図柄の変動態様を決定する際に参照するための装図変動内容決定用抽選テーブル2153a-1-1を有している。」

(オ) 「【0056】
ここで、フローチャートの説明をする前に、本最良形態に係るパチンコ遊技機が有する各種演出機能と、当該演出機能に関連した主なパラメータを説明する。
【0057】
《ステップアップ予告》
ステップアップ予告は、一回の装飾図柄変動の間に、時間経過と共に段階的に発展していく予告を指す。例えば、図39(a)に示すように、ステップアップ予告S1表示タイミングに到達した場合、S1(第一段階)予告が表示され、その後、ステップアップ予告S2表示タイミングに到達した場合、S2(第二段階)予告が表示される。このように、より先の段階(本最良形態では最大で第四段階)まで予告が発展すると、特別遊技への期待度が高まるように構成されている。・・・
【0058】
《擬似連続ステップアップ予告》
擬似連続ステップアップ予告は、装飾図柄の擬似連続変動の際、各擬似変動毎に、前述のステップアップ予告を行う演出を指す。例えば、図44(a-1)?(a-3)に示すように、まず、第一回目の擬似変動の際に、S1までしか発展しないステップアップ予告が表示され、二回目の擬似変動の際に、S2まで発展するステップアップ予告が表示され、三回目の擬似変動の際に、S3まで発展するステップアップ予告が表示される。このように、ステップアップ予告が擬似的に連続して実行されると共に、より後の擬似変動になる程、より発展するステップアップ予告が表示される。
◎関連パラメータ
・SHmax値:当該変動においてステップアップ予告がどの段階まで発展するのかを示すパラメータ(1?4)」

(カ) 「【0069】
次に、図8は、図4におけるステップ1400のサブルーチンに係る、特別図柄表示処理のフローチャートである。・・・
【0073】
・・・そして、ステップ1417で、遊技制御手段1100は、抽選結果が当たりか否かを判定する。ステップ1417でYesの場合、ステップ1418で、遊技制御手段1100は、フラグ一時記憶手段1191a中の当たりフラグをオンにする。」

(キ) 「【0076】
次に、図10は、図4におけるステップ1500のサブルーチンに係る、特別遊技作動条件判定処理のフローチャートである。まず、ステップ1502で、条件判定手段1171は、フラグ一時記憶手段1191aを参照し、当たりフラグがオンであるか否かを判定する。ステップ1502でYesの場合、ステップ1504で、条件判定手段1171は、特別図柄表示装置2130の特図表示部2131上に表示された特別図柄が所定態様で停止したか否かを判定する。ステップ1504でYesの場合、ステップ1506及びステップ1508で、条件判定手段1171は、フラグ一時記憶手段1191a中の特別遊技移行許可フラグをオンにすると共に当たりフラグをオフにする。次に、ステップ1552及び1554で、特定遊技制御手段1180は、フラグ一時記憶手段1191a中の特定遊技フラグ(確率変動フラグ・時間短縮フラグ)を一旦オフにすると共に、時短回数カウンタ1181aをリセット(時短回数カウンタ値=0)し、次の処理(ステップ1600の特別遊技実行処理)に移行する。尚、ステップ1502及びステップ1504でNoの場合にも、次の処理(ステップ1600の特別遊技実行処理)に移行する。
【0077】
次に、図11は、図4でのステップ1600のサブルーチンに係る、特別遊技実行処理のフローチャートである。まず、ステップ1602で、特別遊技実行手段1172は、フラグ一時記憶手段1191aを参照し、特別遊技移行許可フラグがオンであるか否かを判定する。ステップ1602でYesの場合、ステップ1606及びステップ1608で、特別遊技実行手段1172は、フラグ一時記憶手段1191a中の特別遊技移行許可フラグをオフにすると共に特別遊技実行フラグをオンにする。次に、ステップ1604で、情報送信手段1200は、演出表示制御手段2150側に特別遊技開始信号を送信し、ステップ1612に移行する。他方、ステップ1602でNoの場合、ステップ1610で、特別遊技実行手段1172は、特別遊技実行フラグがオンであるか否かを判定する。そして、ステップ1610でYesの場合には、ステップ1612に移行する。尚、ステップ1610でNoの場合には、特別遊技実行手段1172は、特別遊技の許可が下りていないと判定し、次の処理(賞球払出処理1800)に移行する。
【0078】
次に、ステップ1612で、特別遊技実行手段1172は、フラグ一時記憶手段1191aを参照し、ラウンド継続フラグがオンであるか否か、換言すれば、当該ラウンドが途中であるか否かを判定する。ステップ1612でYesの場合、即ち、当該ラウンドが途中である場合、以下で詳述するステップ1614?1622の処理を行うことなく、ステップ1623に移行する。他方、ステップ1612でNoの場合、即ち、当該ラウンドの開始直前である場合、まず、ステップ1614で、特別遊技実行手段1172は、特別遊技用タイマ1173aをゼロクリアすると共に所定値(例えば、通常当たりに基づく特別遊技であれば30秒、突然確率変動当たりや突然時間短縮当たりに基づく特別遊技であれば0.8秒)をセットする。次に、ステップ1616で、特別遊技実行手段1172は、特別遊技関連情報一時記憶手段1191c中の入賞球カウンタをゼロクリアする。そして、ステップ1618で、特別遊技実行手段1172は、特別遊技関連情報一時記憶手段1191c中のラウンド数カウンタに1を加算する。尚、特別遊技関連情報一時記憶手段1191cに記憶されているラウンド数は、特別遊技開始直後(初期値)は0であり、以後ラウンドを重ねていく毎に1ずつインクリメントされる。次に、ステップ1620で、特別遊技実行手段1172は、フラグ一時記憶手段1191a中のラウンド継続フラグをオンにする。そして、ステップ1622で、特別遊技実行手段1172は、大入賞口2120の電動役物2122を駆動して大入賞口2120を開放し、ステップ1623に移行する。」

(ク) 「【0142】
次に、図面を参照しながら、本発明に係るパチンコ遊技機の作用について説明する。まず、図1を参照しながら一般的な遊技の流れを説明すると、遊技者がハンドルを時計回りに捻ることにより、遊技球が、遊技領域内に放出される。放出された当該遊技球は、釘や風車等の障害物に衝突を繰り返しながら下方に落下する。そして、当該遊技球が特図始動口2110に入球すると、特別図柄表示装置2130内の特図表示部2131上で特別図柄が変動を開始する一方、演出表示装置2140内の装図表示部2141上で装飾図柄が前記特別図柄とシンクロして変動を開始する。そして、所定時間経過後、変動していた特別図柄と装飾図柄が同時に停止する。この際、これら停止図柄が特定態様である場合(例えば「777」)、通常遊技時は閉状態である大入賞口2120が所定条件下で開状態となる特別遊技が実行される。」

(ケ) 「【0170】
《非滞在モード+ステップアップ擬似連続変動(パターン2)》
図45は、非滞在モード下でステップアップ擬似連続変動(パターン2)が実行されている場合の表示内容を示した図である。尚、装飾図柄の擬似連続変動回数として「3回」、ステップアップ予告として「SHmax値=3」が内部決定されている点は、前記「パターン1」の場合と同じである。
【0171】
そこで本例を説明すると、「パターン2」は、装飾図柄の擬似連続変動の2回目の擬似変動の際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告を当初(2回目の擬似変動の当初)からTH予告として固定的に表示すると共に、当該TH予告を超える予告をそれ以後に表示する、というパターンである。換言すれば、前述の滞在モードα1における複数回に亘る変動を、一変動で擬似的に行うパターンである。
【0172】
まず、図45(a-1)は、装飾図柄の擬似連続変動(1回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S2」まで発展)の様子である。まず、三列の装飾図柄が変動を開始し(第一段)、ステップアップ予告S1表示タイミングに到達すると「S1」が表示され(第二段)、更にステップアップ予告S2表示タイミングに到達すると「S2」が表示される(第三段)。その後はこれ以上ステップアップ予告は発展することなく、装飾図柄が「573」で仮停止する(最下欄)。尚、仮停止の状態においては、三個の装飾図柄は揺れ変動状態にある。
【0173】
次に、図45(a-2)は、装飾図柄の擬似連続変動(2回目)における、ステップアップ擬似連続変動(ステップアップ予告は変化無し)の様子である。図45(a-1)で仮停止状態にあった「573」は再び変動を開始するが、この際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)がTH予告として当初(2回目の擬似変動の当初)から固定的に表示されている(第一段)。その後は、ステップアップ予告は発展することなく(第二段?第五段)、装飾図柄が「724」で仮停止する(最下欄)。
【0174】
最後に、図45(a-3)は、装飾図柄の擬似連続変動(3回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S3」まで発展)の様子である。図45(a-2)で仮停止状態にある「724」は再び変動を開始するが、2回目の擬似連続変動のときと同様に、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)がTH予告として当初(3回目の擬似変動の当初)から固定的に表示されている(第一段)。そして、しばらく同じ状態が続いた後(第二段?第三段)、ステップアップ予告S3表示タイミングに到達すると「S3」が表示される(第四段)。そして、これ以上ステップアップ予告は発展することなく、装飾図柄が「777」で停止し大当たりとなる(最下欄)。」

(コ) (ア)の「特図始動口2110への遊技球の入球に基づき、遊技内容決定乱数を取得する乱数取得判定実行手段1120」、(イ)の「遊技制御手段1100は、乱数取得判定実行手段1120とを有している。」、(カ)の「遊技制御手段1100は、抽選結果が当たりか否かを判定する。」から、先願明細書等には「特図始動口2110への遊技球の入球に基づき、遊技内容決定乱数を取得する乱数取得判定実行手段1120を有し、抽選結果が当たりか否かを判定する遊技制御手段1100」が記載されているものといえる。

(サ) (ア)の「装飾図柄の変動表示及び停止表示するための演出表示装置2140」、「演出表示装置2140で前記装飾図柄を変動表示した後に停止態様を表示する装飾図柄表示制御手段2153a」、(エ)の段落【0049】の「表示制御手段2153は、装飾図柄表示制御手段2153aと、予告表示制御手段2153cとを有し」から、先願明細書等には、「装飾図柄の変動表示及び停止表示するための演出表示装置2140で前記装飾図柄を変動表示した後に停止態様を表示する、装飾図柄表示制御手段2153aと、予告表示制御手段2153cとを有する表示制御手段2153」が記載されているものといえる。

(シ) (ア)の「前記乱数に基づき、前記装飾図柄の変動態様及び停止態様を決定する、装図表示内容決定手段2153a-1」、「前記装図表示内容決定手段2153a-1は、前記装飾図柄の変動態様として、前記装飾図柄の変動と仮停止を一セットとする擬似変動を複数回実行する擬似連続変動態様を選択可能であり」から、先願明細書等には、「前記乱数に基づき、前記装飾図柄の変動態様及び停止態様を決定するとともに、前記装飾図柄の変動と仮停止を一セットとする擬似変動を複数回実行する擬似連続変動態様を選択可能である装図表示内容決定手段2153a-1」が記載されているものといえる。

(ス) (ア)の「前記装飾図柄の前記停止態様が所定態様である場合、前記大入賞口2120を開状態にする特別遊技を実行するための特別遊技制御手段1170」、(イ)の段落【0040】の「特別遊技制御手段1170は、条件判定手段1171と、特別遊技実行手段1172とを有し」、(カ)の段落【0076】の「条件判定手段1171は、当たりフラグがオンであるか否かを判定する」、「条件判定手段1171は、特別遊技移行許可フラグをオンにする」、及び段落【0077】の「特別遊技実行手段1172は特別遊技実行フラグをオンにする」、並びに段落【0078】の「特別遊技実行手段1172は、大入賞口を開放し」、(ク)の段落【0142】の「変動していた装飾図柄が停止する際、停止図柄が特定態様である場合(例えば「777」)、大入賞口2120が開状態となる特別遊技が実行される」から、先願明細書等には「当たりフラグがオンであるか否かを判定し、特別遊技移行許可フラグをオンにする条件判定手段1171と、特別遊技実行フラグをオンにし、大入賞口2120を開放する特別遊技実行手段1172を有し、変動していた装飾図柄が停止する際、前記装飾図柄の停止態様が777である場合、大入賞口2120を開状態にする特別遊技を実行するための特別遊技制御手段1170」が記載されているものといえる。

(セ) (ア)の「演出表示装置2140で表示するよう制御する、予告表示制御手段2153c」、「複数の予告表示が時間経過に伴って段階的に発展し得るステップアップ予告」、「前記予告表示制御手段2153cは、前記装図表示内容決定手段2153a-1が前記擬似連続変動態様を選択した場合、所定条件下で、前記擬似連続変動態様を構成する前記複数回の擬似変動毎に、ステップアップ予告を表示するよう制御する」から、先願明細書等には「前記装図表示内容決定手段2153a-1が前記擬似連続変動態様を選択した場合、所定条件下で、前記擬似連続変動態様を構成する前記複数回の擬似変動毎に、複数の予告表示が時間経過に伴って段階的に発展し得るステップアップ予告を演出表示装置2140で表示するよう制御する予告表示制御手段2153c」が記載されているものといえる。

(ソ) (オ)の段落【0058】の「SHmax値:当該変動においてステップアップ予告がどの段階まで発展するのかを示すパラメータ(1?4)」、(ケ)の段落【0170】の「装飾図柄の擬似連続変動回数として「3回」、ステップアップ予告として「SHmax値=3」が内部決定されている」から、先願明細書等には、「擬似連続変動回数として3回、ステップアップ予告が3段階まで発展する」ことが記載されているといえる。

(タ) (ケ)の段落【0172】の「装飾図柄の擬似連続変動(1回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S2」まで発展)」、「まず、三列の装飾図柄が変動を開始し」、「「S1」が表示され」、「更に「S2」が表示され」、「装飾図柄が「573」で仮停止する」から、先願明細書等には、「装飾図柄の擬似連続変動(1回目)における、「S2」まで発展するステップアップ擬似連続変動で、まず、三列の装飾図柄が変動を開始し、「S1」が表示され、更に「S2」が表示され、装飾図柄が「573」で仮停止する」することが記載されているものといえる。
加えて、これらの処理はステップアップ予告を演出表示装置2140で表示するよう制御する予告表示制御手段2153cで実行されることは明らかである。

(チ) さらに、(ケ)の段落【0173】の「装飾図柄の擬似連続変動(2回目)における、ステップアップ擬似連続変動(ステップアップ予告は変化無し)」「仮停止状態にあった「573」は再び変動を開始するが、この際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)が2回目の擬似変動の当初から固定的に表示されて」「装飾図柄が「724」で仮停止」、【0174】の「装飾図柄の擬似連続変動(3回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S3」まで発展)」「仮停止状態にある「724」は再び変動を開始するが」「「S3」が表示され、装飾図柄が「777」で停止し大当たりとなる」から、先願明細書等には、「装飾図柄の擬似連続変動(2回目)における、ステップアップ擬似連続変動(ステップアップ予告は変化無し)で、仮停止状態にあった「573」は再び変動を開始するが、この際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)が2回目の擬似変動の当初から固定的に表示されて、装飾図柄が「724」で仮停止し、装飾図柄の擬似連続変動(3回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S3」まで発展)で、仮停止状態にある「724」は再び変動を開始するが、「S3」が表示され、装飾図柄が「777」で停止し大当たりとなる」ことが記載されているものといえる。
加えて、これらの処理もステップアップ予告を演出表示装置2140で表示するよう制御する予告表示制御手段2153cで実行されることは明らかである。

上記(ア)?(ケ)の記載事項及び上記(コ)?(チ)の認定事項から、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が開示されていると認める(記号A’?B1’-3は分説して本願発明と対比するため当審で付した)。

「A’ 特図始動口2110への遊技球の入球に基づき、遊技内容決定乱数を取得する乱数取得判定実行手段1120を有し、抽選結果が当たりか否かを判定する遊技制御手段1100(認定事項(コ))と、
B’ 装飾図柄の変動表示及び停止表示するための演出表示装置2140で前記装飾図柄を変動表示した後に停止態様を表示する、装飾図柄表示制御手段2153aと、予告表示制御手段2153cとを有する表示制御手段2153(認定事項(サ))と、
C’ 当たりフラグがオンであるか否かを判定し、特別遊技移行許可フラグをオンにする条件判定手段1171と、特別遊技実行フラグをオンにし、大入賞口2120を開放する特別遊技実行手段1172を有し、変動していた装飾図柄が停止する際、前記装飾図柄の停止態様が777である場合、大入賞口2120を開状態にする特別遊技を実行するための特別遊技制御手段1170(認定事項(ス))と、
D’ 前記乱数に基づき、装飾図柄の変動態様及び停止態様を決定するとともに、前記装飾図柄の変動と仮停止を一セットとする擬似変動を複数回実行する擬似連続変動態様を選択可能である装図表示内容決定手段2153a-1(認定事項(シ))と、
を備え、
B1’ 前記表示制御手段2153は、前記装飾図柄が変動表示中に、前記装図表示内容決定手段2153a-1が前記擬似連続変動態様を選択した場合、所定条件下で、前記擬似連続変動態様を構成する前記複数回の擬似変動毎に、複数の予告表示が時間経過に伴って段階的に発展し得るステップアップ予告を演出表示装置2140で表示するよう制御する予告表示制御手段2153c(認定事項(セ))を有し、
B1’-1 予告表示制御手段2153cは、装飾図柄の擬似連続変動(1回目)における、「S2」まで発展するステップアップ擬似連続変動において、まず、三列の装飾図柄が変動を開始し、「S1」が表示され、更に「S2」が表示され、装飾図柄が「573」で仮停止するものであり(認定事項(タ))、
B1’-2 装飾図柄の擬似連続変動(2回目)における、ステップアップ擬似連続変動(ステップアップ予告は変化無し)において、仮停止状態にあった「573」は再び変動を開始するが、この際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)が2回目の擬似変動の当初から固定的に表示されて、装飾図柄が「724」で仮停止し、装飾図柄の擬似連続変動(3回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S3」まで発展)において、仮停止状態にある「724」は再び変動を開始するが、「S3」が表示され、装飾図柄が「777」で停止し大当たりとなる、処理を行い(認定事項(チ))、
B1’-3 擬似連続変動回数として3回、ステップアップ予告が3段階まで発展する(認定事項(ソ))
遊技機。」

2.対比

本願発明と先願発明とを対比する。

(A)先願発明における「遊技制御手段1100」は、始動口への入球に基づき、抽選結果が当たりか否かを判定することから、本願発明の「始動条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段」の機能を備えている。

(B)先願発明における「表示制御手段2153」が有している「装飾図柄表示制御手段2153a」は、演出表示装置2140において図柄を変動表示させた後に停止態様を表示するものであり、先願発明の「演出表示装置2140」は本願発明の「所定の表示手段」に相当するから、先願発明の「表示制御手段2153」が有している「装飾図柄表示制御手段2153a」は、本願発明の「表示制御手段」に相当する。

(C)先願発明における「特別遊技制御手段1170」について、「当たりフラグがオンであるかを判定し、特別遊技移行許可フラグ、特別遊技実行フラグをオンにして」いる状態は、抽選の結果が当たりである状態であり、「変動していた装飾図柄が停止する際、前記装飾図柄の停止態様が777である場合大入賞口を開状態にする特別遊技を実行する」ことは、装飾図柄の停止態様が777である、すなわち、抽選の結果が大当たりである旨が表示された、場合に大当たり遊技を実行するものといえるから、先願発明の「特別遊技制御手段1170」は、本願発明の「大当たり遊技実行手段」に相当する。

(D)先願発明における「表示制御手段2153」が有している「装図表示内容決定手段2153a-1」について検討する。
先願発明における「装飾図柄の変動と仮停止を一セットとする擬似変動を複数回実行する擬似連続変動態様」は、本願発明の「図柄の変動表示と停止表示とが行われる期待演出が複数回行われる連続期待演出」に相当する。
また、先願発明における「装図表示内容決定手段2153a-1」は、擬似連続変動態様を選択可能である以上、擬似連続変動態様の実行判定を行うことは明らかであり、擬似連続変動態様は抽選の結果が表示される前に行われる以上、擬似連続変動態様を実行するかどうかの判定は抽選の結果が表示されるよりも前に行うことも明らかである。
そうすると、先願発明における、「装図表示内容決定手段2153a-1」は、本願発明の「連続期待演出実行判定手段」に相当する。

(B1)先願発明における「表示制御手段2153」に含まれる「予告表示制御手段2153c」について、先願発明における「擬似連続変動態様を構成する複数回の擬似変動毎に」「ステップアップ予告を演出表示装置2140で表示するよう制御する」ことが「所定条件下で」行われることは、本願発明の「期待演出が行われているときに」「抽選の結果が大当たりである可能性がある旨を示唆する示唆演出を行いうる」ことに相当するから、先願発明の「予告表示制御手段2153c」は、本願発明の「示唆演出実行手段」に相当する。

次に、先願発明における「予告表示制御手段2153c」が行う処理について検討する。

(B1-1)先願発明における「装飾図柄の擬似連続変動(1回目)における、「S2」まで発展するステップアップ擬似連続変動において、まず、三列の装飾図柄が変動を開始し、「S1」が表示され、更に「S2」が表示され、装飾図柄が「573」で仮停止する」ことは、「装飾図柄の擬似連続変動(1回目)」、「「S2」まで発展するステップアップ予告」が、それぞれ本願発明の「連続期待演出における一の期待演出」、「抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出」に相当することから、本願発明の「連続期待演出における一の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出を行う」ことに相当する。
また、この場合、先願発明における「予告表示制御手段2153c」は、本願発明における「第1示唆演出を行う第1示唆演出実行手段」を備えている。

(B1-2)先願発明における「装飾図柄の擬似連続変動(2回目)における、ステップアップ擬似連続変動(ステップアップ予告は変化無し)において、仮停止状態にあった「573」は再び変動を開始するが、この際、1回目の擬似変動の際に表示されたステップアップ予告(「S1」?「S2」)が2回目の擬似変動の当初から固定的に表示され」ること、「装飾図柄の擬似連続変動(3回目)における、ステップアップ擬似連続変動(「S3」まで発展)において、仮停止状態にある「724」は再び変動を開始するが、「S3」が表示され」ることは、本願発明における「連続期待演出における一の期待演出において第1示唆演出が行われたときに、該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ第2演出を行う」こと、「前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行う」こと、に相当する。
また、この場合、先願発明における「予告表示制御手段2153c」は、本願発明における「第2示唆演出を行う第2示唆演出実行手段」を備えている。

(B1-3)先願発明における「擬似連続変動回数として3回、ステップアップ予告が3段階まで発展する」について、この場合、先願発明の「装飾図柄の擬似連続変動におけるステップアップ擬似連続変動」を3回行うことになり、これは本願発明における「前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出」を、「期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲」である3回「において所定の上限回数」である3回「まで行なう」ことに相当する。

以上のことから、本願発明と先願発明とは、

(一致点)
「A 始動条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
B 所定の表示手段において図柄を変動表示させた後に該図柄を停止表示させるとともに、前記抽選の結果を表示可能な表示制御手段と、
C 前記抽選の結果が大当たりであるときに、前記抽選の結果が大当たりである旨が表示された後に大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
D 前記抽選の結果が表示されるよりも前に、前記図柄の変動表示と停止表示とが行われる期待演出が複数回行われる連続期待演出の実行判定を行う連続期待演出実行判定手段と、
を備え、
B1 前記表示制御手段は、
前記期待演出が行われているときに前記抽選の結果が大当たりである可能性がある旨を示唆する示唆演出を行いうる示唆演出実行手段を有し、
前記示唆演出には、前記抽選の結果が大当たりである可能性が異なる複数の示唆演出態様が含まれており、
B1-1 前記示唆演出実行手段は、
前記連続期待演出における一の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性を示す第1示唆演出を行う第1示唆演出実行手段、及び
B1-2 前記連続期待演出における前記一の期待演出において前記第1示唆演出が行われたときに、該一の期待演出の後に行われる他の期待演出において、前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行う第2示唆演出実行手段を有し、
B1-3’ 前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能である、
遊技機。」

という点で一致する。

一方、両者は以下の点で一応相違する。

(相違点)
示唆演出実行手段において、本願発明は「該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されている」のに対して、先願発明はそのような特定がなされていない点(B1-3)。

3.相違点に対する判断
上記相違点について判断する。
パチンコ機において、一連の演出を複数回行う演出において、大当たりの場合の演出の上限回数と、ハズレの場合の演出の上限回数を異ならせるようにし、特定回数までの演出がなされた場合、ハズレの場合の演出の上限回数を超え、100パーセントの確率で大当たりとなることを示唆することは、大当たりの可能性の示唆を行う遊技機のステップアップ予告演出において周知技術にすぎない(例えば特開2005-237859号の図8及び段落【0059】-【0061】において、段落【0059】の「リーチハズレ時の変動パターン判定用の乱数振分表」という記載に関し、図8(A)から「通常→晴→雲→雨→雪」という変動パターンに割り振られる乱数は0個であることが看取できること、段落【0059】の「図8(B)は、・・・ステップアップ予告時の大当り時の変動パターン判定用の乱数振分表を示す一覧表図」に関し、【0060】の「40個の乱数が「通常→晴→雲→雨→雪」という変動パターン13に振り分けられる」という記載、段落【0061】の「「通常→晴→雲→雨→雪」という変動パターンの大当り信頼度は100%となる」という記載や、特開2001-680号公報の図19(a)-(f)及び段落【0160】-【0161】において、「期待値ゲージ6gは、5段階のレベル表示が可能な棒グラフ状のバーゲージであり、本実施例では、再変動表示が行われるごとに1つずつ段階的にバーの長さを長くする表示を行う。・・・4段階分表示された場合には大当たり期待度が約50パーセント、5段階分表示された場合には大当たり期待度が100パーセントとなる」という記載を参照。4段階分表示された場合はハズレとなる場合があるが、5段階分表示された場合は大当たり期待度が100パーセントとなる以上、大当りの場合の演出の上限回数は5回、ハズレの場合の演出の上限回数は4回、であるといえる)。
このような周知技術を先願発明の示唆演出実行手段に採用するか否かは単なる設計的事項といえ、新たな効果を奏するものではない。

そうすると、本願発明と先願発明との相違点は、課題解決のための具体化手段における微差であって、先願明細書等に記載されているに等しい事項ということができ、本願発明と先願発明は実質的に同一であるといえる。

4.審判請求人の主張について

審判請求人は平成27年9月28日付け審判請求書の2.本願発明が特許されるべき理由において、次の主張をしている。

「本願出願人は、請求項1において、
「前記第1示唆演出が行われた前記一の期待演出の後の他の期待演出において前記抽選の結果が大当たりである可能性が前記第1示唆演出と同じ又は該第1示唆演出よりも高い第2示唆演出を行うといった一連の演出を、前記期待演出が連続して行われる連続期待演出の範囲において所定の上限回数まで行なうことが可能であるとともに、該上限回数が前記抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとで異なるように構成されてなる」
の記載を追加する補正を行いました。
遊技者は、はずれであるときの実行回数の上限を超えて連続期待演出が実行されることを強く願うようになります。これにより、単に連続期待演出の実行回数が増えれば期待度が高まる遊技機と異なり、一定の回数(はずれであるときの上限)を超えると大当たりとなるため、遊技者は、連続期待演出が実行して欲しいと期待する回数に明確な回数をもって演出を楽しむことが可能になります。
この点、出願1に記載された事項は、審査官殿がご指摘されたとおり、装飾図柄の擬似連続変動の際、「第一回目の擬似変動の際に、S1までしか発展しないステップアップ予告が表示され、二回目の擬似変動の際に、S2まで発展するステップアップ予告が表示され、三回目の擬似変動の際に、S3まで発展するステップアップ予告が表示される」(同文献の段落0058)といったものにすぎず、抽選の結果が大当たりであるときとはずれであるときとでステップアップされる上限が異なる旨の記載はありません。
なお、出願1の段落0057には「このように、より先の段階(本最良形態では最大で第四段階)まで予告が発展すると、特別遊技への期待度が高まるように構成されている」との記載はあるものの、第四段階まで発展すると特別遊技の期待度が高まるといっただけで、抽選の結果がはずれである場合には第四段階まで発展しないといったことについては記載されていません。」

しかしながら、上記3.のとおり、大当たりの場合の演出の上限回数と、ハズレの場合の演出の上限回数を異ならせるようにすることで、一定回数の演出がなされた場合、ハズレの場合の演出の上限回数を超えたことにより、100パーセントの確率で大当たりとなることを示唆することは、大当たりである可能性の示唆を行う遊技機のステップアップ予告を行う技術に関する周知技術であり、当該周知技術においても、抽選の結果がハズレの場合、演出は大当たり信頼度ないし大当たり期待度が100%となる回数まで行われることはない。

以上のとおりであるから、当該主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明と先願発明は、実質的に同一の発明であり、しかも、本願発明と先願発明の発明者が同一であるとはいえず、また、本願の出願遡及日時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-21 
結審通知日 2017-02-22 
審決日 2017-03-08 
出願番号 特願2014-143794(P2014-143794)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 長井 真一
川崎 優
発明の名称 遊技機  

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