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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1327484
審判番号 不服2016-10512  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-12 
確定日 2017-04-20 
事件の表示 特願2012-184585「送受信装置、情報送受信システム、送受信装置の制御方法、管理装置、管理装置の制御方法、送受信装置のプログラム、及び、管理装置のプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月 6日出願公開、特開2014- 41562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成24年8月23日の出願であって,平成27年9月24日付け拒絶理由通知に対して同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが平成28年4月25日付けで拒絶査定がなされ,これを不服として同年7月12日に審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年7月12日に提出された手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
本件補正は,平成27年11月25日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項16に記載された
「 複数の送受信装置と,当該送受信装置と通信可能で,当該複数の送受信装置間で情報を受け渡す管理装置とを備える情報送受信システムにおける前記送受信装置の制御方法であって,
前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し,
前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し,
前記送信対象を受信し,
前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し,
前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御する,
ことを特徴とする送受信装置の制御方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,補正後の特許請求の範囲の請求項12に記載された
「 複数の送受信装置と,当該送受信装置と通信可能で,当該複数の送受信装置間で情報を受け渡す管理装置とを備える情報送受信システムにおける前記送受信装置の制御方法であって,
前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し,
前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し,
前記送信対象を受信し,
前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し,
前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御し,
前記閲覧可能条件が充足されていないと判断された場合に,前記送信対象を受信したことを報知しないように制御する,
ことを特徴とする送受信装置の制御方法。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2 新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件について
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲若しくは図面に記載した事項の範囲内において,補正前の特許請求の範囲の請求項16に記載された「前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し」た後の制御として,「前記閲覧可能条件が充足されていないと判断された場合に,前記送信対象を受信したことを報知しないように制御する」点を付加して限定することにより特許請求の範囲を限定的に減縮するものであって,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。
また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

3 独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明と周知技術
A 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-233571号公報(以下,「引用例」という。)には,「電子メールの送受信方法,電子メールシステム及び電子メール通信装置」(発明の名称)に関し,以下の事項が記載されている。(当審注:下線部は当審が注目箇所に対して付したものである。以下,同様。)

ア 「【0015】
【発明の実施の形態】[第1の実施の形態]以下,本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態となる電子メールシステムの送信側電子メール通信装置1の構成を示すブロック図,図2は電子メールシステムの受信側電子メール通信装置2の構成を示すブロック図である。電子メールシステムは,送信側電子メール通信装置1と,受信側電子メール通信装置2と,送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2とを接続する図示しない通信ネットワークとから構成される。
【0016】送信側電子メール通信装置1は,複数のキースイッチからなる操作部101と,画面表示を行う液晶パネル等の表示部102と,送信すべき電子メールを蓄積する蓄積部103と,蓄積部103に蓄積された電子メールを送信するメール送信処理部104と,インターネットに接続してウエブページを表示するブラウザ105と,地図情報を記憶する地図データベース106と,電話帳及び電子メールアドレス帳のデータを記憶する電話帳/アドレス帳記憶部107と,送信側電子メール通信装置全体を制御する制御部108とから構成される。
【0017】操作部101と制御部108は設定手段を構成し,メール送信処理部104は送信手段を構成している。
【0018】受信側電子メール通信装置2は,操作部201と,表示部202と,電子メールのデータをアナログ音声信号に変換してスピーカから音声出力する音声出力部203と,電子メールを受信するメール受信処理部204と,メール受信処理部204で受信された電子メールを蓄積する蓄積部205と,電子メールを送信するメール送信処理部206と,メール受信処理部204及びメール送信処理部206によるメール通信処理を常時監視するメール監視部207と,他の端末装置との間で電話通信処理を行う電話発着処理部208と,電話発着処理部208による電話通信処理を常時監視する電話発着監視部209と,通信時間を常時監視する通信時間監視部210と,自装置の位置(緯度,経度)を検出するGPS(Global Positioning System )211と,自装置の位置を常時監視するGPS監視部212と,現在の日時を計時する時計213と,現在の日時を監視するタイマー監視部214と,ブラウザ215と,自装置のインターネットへのアクセスを監視するURL監視部216と,基地局からの電波の受信レベルを検出する電波センサ217と,基地局からの電波の受信レベルを常時監視する受信レベル監視部218と,操作部201から暗証番号が入力されたか否かを常時監視する暗証番号監視部219と,地図データベース220と,電子メールに付加されて送られてきた動作指定情報を記憶するマッチングテーブル221と,受信側電子メール通信装置全体を制御する制御部222,図示しない位置情報サーバーに対して自装置と他の特定の端末装置の監視を要求する監視要求部223とから構成される。
【0019】メール受信処理部204は受信手段を構成し,メール監視部207,電話発着監視部209,通信時間監視部210,GPS監視部212,タイマー監視部214,URL監視部216,受信レベル監視部218及び暗証番号監視部219は監視手段を構成し,制御部222は制御手段を構成している。本実施の形態では,受信した電子メールに付加した処理開始条件と受信側電子メール通信装置の状況とが一致したとき,処理開始条件を付加した電子メールが受信側電子メール通信装置で処理される。ここで,受信側電子メール通信装置の状況とは,受信側電子メール通信装置の動作若しくは受信側電子メール通信装置に対する受信者の行為を表す。」

イ 「【0020】次に,本実施の形態の電子メールシステムの動作について,送信側電子メール通信装置1の動作から説明する。図3は送信側電子メール通信装置1の動作を示すフローチャート図である。まず,送信側電子メール通信装置1の電源が立ち上がると,制御部108は,自装置の利用者(以下,送信者と呼ぶ)からの操作を待つ(図3ステップ301)。
【0021】送信者は,送信しようとする電子メールの文書を操作部101を用いて入力する。制御部108は,操作部101から電子メールが入力された場合(ステップ302においてYES),入力された電子メールのデータを蓄積部103にいったん蓄積する(ステップ303)。
【0022】メールの文書を一通り入力し終えた後,送信者は,このメールに対する受信側電子メール通信装置2の動作を指定したい場合,所望の動作を指定する動作指定情報を操作部101を用いて入力する。制御部108は,操作部101から動作指定情報が入力された場合(ステップ304においてYES),この動作指定情報を先に蓄積した電子メールのデータに付加して蓄積部103に蓄積する(ステップ305)。蓄積部103のデータ構造は,例えば図4のような構成とする。蓄積部103には,送信先電子メールアドレスと,送信元電子メールアドレス(自装置のアドレス)と,電子メールの本文と,この電子メールに付加される動作指定情報とが格納される。
【0023】動作指定情報は,受信側電子メール通信装置2で受信メールの処理が開始される条件を示す処理開始条件と,受信メールの処理の内容を指定するアクション指定情報と,受信メールの処理回数を指定する処理回数指定情報と,受信メールを自動的に更新するか否かを指定する自動更新指定情報と,受信メールの有効期限を指定する有効期限指定情報とを含んでいる。送信者は,アクション指定情報と処理回数指定情報と自動更新指定情報と有効期限指定情報については設定しなくてもよいが,処理開始条件の設定は必須である。
【0024】処理開始条件には,受信側電子メール通信装置2が所望の位置に到着したときに受信メールの処理を開始させる位置指定情報と,特定の電話番号の端末装置と受信側電子メール通信装置2との間で特定の電話通信処理が行われたときに受信メールの処理を開始させる電話通信指定情報と,特定の電子メールアドレスの端末装置と受信側電子メール通信装置2との間で特定のメール通信処理が行われたときに受信メールの処理を開始させるメール通信指定情報と,受信側電子メール通信装置2からインターネット上の特定のリソースへのアクセスが行われたときに受信メールの処理を開始させるリソース指定情報と,受信側電子メール通信装置2の通信時間が所定値を経過したときに受信メールの処理を開始させる通信時間指定情報と,基地局からの電波を受信側電子メール通信装置2で受信したときの受信レベルが予め設定された受信レベルしきい値より大又は小のときに受信メールの処理を開始させる受信レベル指定情報と,受信者が受信側電子メール通信装置2に特定の暗証番号を入力したときに受信メールの処理を開始させる暗証番号指定情報と,所望の日時を指定する日時指定情報とがある。
【0025】本実施の形態では,受信側電子メール通信装置2が所望の位置に到着した場合にメール処理を開始させるため,処理開始条件として位置指定情報を設定する。位置指定情報を設定するためには,送信者は,送信側電子メール通信装置1に地図を表示させる。すなわち,制御部108は,送信者の操作に応じて,地図データベース106のデータを基に表示部102に地図を表示させる。そして,送信者は,この地図上で所望の位置を操作部101を用いて指定する。
【0026】制御部108は,地図データベース106を参照して,指定された位置の座標データ(例えば,東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒)を得る。そして,制御部108は,取得した座標データを処理開始条件(位置指定情報)として電子メールのデータに付加する(ステップ305)。ここでの処理は具体的には図5のような処理ステップとなる。制御部108は,表示部102に図6のような地図を表示させる(図5ステップ401)。図6において,x,yは表示画面上の縦軸,横軸を意味する。送信者は,表示された地図上で所望の位置を操作部101を用いてポインティングする(ステップ402)。制御部108は,ポインティングされた表示位置x,yを求め(ステップ403),この表示位置x,yと地図データベース106とを比較して座標データ(緯度,経度)を取得する(ステップ404)。なお,本実施の形態では,地図データベース106から座標データを取得するようにしているが,インターネット上の地図データサービスサイトにアクセスして,座標データを取得するようにしてもよい。
【0027】送信者が全てのデータ入力を終え,メール送信を開始する操作を行った場合(ステップ301においてYES),制御部108は,蓄積部103に蓄積した電子メールのデータとこれに付加した動作指定情報とをメール送信処理部104に渡す。メール送信処理部104は,図示しない通信ネットワークと回線接続した後,制御部108から渡された電子メールのデータと動作指定情報とを送信先の受信側電子メール通信装置2に向けて送信する(ステップ306)。以上で送信側電子メール通信装置1の動作が終了する。電子メールに動作指定情報を付加する方法の具体例としては,通常のメール本文に対し,動作指定情報を例えば添付ファイルとして付加し,添付ファイル付きのメールを受信側電子メール通信装置に向けて送信する。ここで,添付ファイルのファイル名は動作指定情報であることを意味する特別なファイル名(例えばdousashitei )とする。」

ウ 「【0028】次に,受信側電子メール通信装置2の動作を説明する。図7は受信側電子メール通信装置2の動作を示すフローチャート図である。まず,受信側電子メール通信装置2の電源が立ち上がると,制御部222は,メール受信処理部204に自装置宛の電子メールを受信するよう指示する。メール受信処理部204は,通信ネットワークのメールサーバとの回線を確立して,メールサーバに自装置宛の電子メールが存在する場合(図7ステップ501においてYES),メール受信処理を行う(ステップ502)。図8は受信側電子メール通信装置2のメール受信処理を示すフローチャート図である。
【0029】メール受信処理において,メール受信処理部204は,メールサーバから自装置宛の電子メールを受信して,受信した電子メールのデータを蓄積部205に蓄積する(図8ステップ601)。このとき,メール受信処理部204は,動作指定情報を意味する添付ファイルがある場合,メール本文に表示プロテクトをかけて蓄積部205に蓄積する。蓄積部205のデータ構造は,例えば図9のような構成とする。蓄積部205には,表示プロテクトがかかっているか否かを示すプロテクトフラグと,電子メールの受信日時と,送信元電子メールアドレスと,電子メールのヘッダーと,電子メールの題名と,電子メールの本文と,電子メールに付加された動作指定情報と,メール番号とが格納される。メール受信処理部204は,各受信メールに固有のメール番号を付与する。次に,制御部222は,蓄積部205に蓄積された受信メールに動作指定情報が付加されているか否かを判定する(ステップ602)。
【0030】受信メールに動作指定情報が付加されている場合(ステップ602においてYES),制御部222は,この動作指定情報を受信メールのメール番号と対応付けてマッチングテーブル221に書き込む(ステップ603)。以上でメール受信処理が終了する。
【0031】図10にマッチングテーブル221の1例を示す。前述のとおり,本実施の形態では,動作指定情報中の処理開始条件として位置指定情報が設定されている。ここで,受信した電子メールにメール番号「1」が付与されたとすると,図10に示すように位置指定情報「東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒」がメール番号「1」と共にマッチングテーブル221に格納される。
【0032】受信側電子メール通信装置2の利用者(以下,受信者と呼ぶ)は,受信メールに動作指定情報が付加されている場合,動作指定情報中の処理開始条件と受信側電子メール通信装置2の状況とが一致しない限り,受信メールの内容を読むことはできないが,メールのヘッダ情報及び動作指定情報を表示部202で参照することは可能である。
【0033】すなわち,制御部222は,受信者から受信メールの開封指示があったとき,受信メールに動作指定情報が付加されていない場合(図9のプロテクトフラグがNOである場合)には,メール本文を開封表示するが,受信メールに動作指定情報が付加されている場合(プロテクトフラグがYESである場合)には,この受信メールのヘッダー情報と動作指定情報のみを表示部202に表示させる。本実施の形態では動作指定情報として位置指定情報のみが設定されているので,地図を用いて位置指定情報を表示する。すなわち,制御部222は,位置指定情報「東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒」を基に地図データベース220を参照して,東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒の位置を地図上で表示する。これにより,受信者は,位置指定情報で指定された具体的な場所を確認することができる。
【0034】次に,メール受信処理が終了した場合あるいはステップ501において自装置宛の電子メールが無い場合,制御部222は,自装置に何らかのイベントが発生したか否かを判定する(図7ステップ503)。受信側電子メール通信装置2に発生するイベントとしては,自装置の位置の変化,電話の発着信,メールの送受信,インターネットへのアクセス,通信時間の変化,基地局から受信する電波の変化(電子メール通信装置が通信媒体として無線を用いる場合),受信者からの暗証番号の入力,日時の変化などがある。
【0035】例えば,GPS211は,自装置の位置を常時検出して,検出した位置を示す座標データをGPS監視部212に出力する。GPS監視部212は,GPS211から取得した現在の座標データが直前の座標データに対して変化した場合,自装置の位置が変化したと判断して,現在の座標データを含む位置変化イベント通知を制御部222に送出する。
【0036】位置変化イベント通知を受けた制御部222は,イベント発生と判断して(ステップ503においてYES),受信メール処理を行う(ステップ504)。図11は受信メール処理を示すフローチャート図である。受信メール処理において,制御部222は,位置変化イベント通知を記憶し,この位置変化イベント通知に含まれる座標データを基にマッチングテーブル221を参照して該当する位置指定情報が登録されているか否かを検索する(図11ステップ701)。
【0037】該当する位置指定情報が登録されていない場合(ステップ702においてNO),制御部222は,受信メール処理を終了する。該当する位置指定情報が登録されている場合,制御部222は,該当する位置指定情報が付加された該当メールに他の処理開始条件が付加されているか否かを判定する(ステップ703)。
【0038】例えば,位置指定情報「東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒」がマッチングテーブル221に登録されているとき,受信側電子メール通信装置2を持った受信者が東経139度44分53秒,北緯35度39分3秒の位置に到着すると,ステップ702において判定YESとなる。本実施の形態では,処理開始条件として位置指定情報のみが設定されているので,ステップ703では判定NOとなり,ステップ704に進む。
【0039】ステップ704において,制御部222は,該当メールのメール番号をマッチングテーブル221から取得する。そして,制御部222は,取得した番号のメールのデータを蓄積部205から取り出し,取り出したメールを動作指定情報中のアクション指定情報に応じて処理する(ステップ705)。
【0040】本実施の形態ではアクション指定情報が設定されていないため,制御部222は,受信者によって予め設定されたデフォルトのアクション指定情報に従って受信メールを処理する。例えば,デフォルトのアクション指定情報として「開封表示」が予め設定されている場合,制御部222は,蓄積部205から取り出した受信メールのデータを表示部202に表示させる。
【0041】以上のようにして,送信者が設定した動作指定情報中の処理開始条件と受信側電子メール通信装置2の状況とが一致した場合,送信者が送った電子メールが表示部202に表示されるので,送信者の意図するタイミングで受信者に電子メールを読ませることができる。本実施の形態の具体的な利用方法としては,例えば送信者と受信者が恋人同士である場合が考えられる。送信者が特定の場所を指定すると,恋人である受信者がその場所に到着したときにメールを読ませることができる。」

上記摘記事項及びこの分野における技術常識を総合勘案すると,上記引用例には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 送信側電子メール通信装置1と,受信側電子メール通信装置2と,送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2とを接続する通信ネットワークとから構成され,該通信ネットワークにはメールサーバが接続された電子メールシステムにおける送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2の動作方法であって,
送信側電子メール通信装置1において,
蓄積部103には,送信先電子メールアドレスと,送信元電子メールアドレス(自装置のアドレス)と,電子メールの本文と,この電子メールに付加される動作指定情報とが格納され,動作指定情報は,受信側電子メール通信装置2で受信メールの処理が開始される条件を示す処理開始条件を含み,
送信者が全てのデータ入力を終え,メール送信を開始する操作を行った場合,制御部108は,蓄積部103に蓄積した電子メールのデータとこれに付加した動作指定情報とをメール送信処理部104に渡し,メール送信処理部104は,通信ネットワークと回線接続した後,制御部108から渡された電子メールのデータと動作指定情報とを送信先の受信側電子メール通信装置2に向けて送信し,
受信側電子メール通信装置2において,
メールサーバから自装置宛の電子メールを受信して,受信した電子メールのデータを蓄積部205に蓄積し,動作指定情報を意味する添付ファイルがある場合,メール本文に表示プロテクトをかけて蓄積部205に蓄積し,
受信メールに動作指定情報が付加されている場合,制御部222は,この動作指定情報を受信メールのメール番号と対応付けてマッチングテーブル221に書き込み,以上でメール受信処理が終了し,
該動作指定情報中の処理開始条件として位置指定情報が設定されており,
GPS監視部212は,GPS211から取得した現在の座標データが直前の座標データに対して変化した場合,自装置の位置が変化したと判断して,現在の座標データを含む位置変化イベント通知を制御部222に送出し,位置変化イベント通知を受けた制御部222は,イベント発生と判断して,受信メール処理を行い,受信メール処理において,制御部222は,位置変化イベント通知を記憶し,この位置変化イベント通知に含まれる座標データを基にマッチングテーブル221を参照して該当する位置指定情報が登録されているか否かを検索し,
該当する位置指定情報が登録されている場合,制御部222は,該当メールのメール番号をマッチングテーブル221から取得し,取得した番号のメールのデータを蓄積部205から取り出し,取り出した受信メールを表示部202に表示させ,
該当する位置指定情報が登録されていない場合,制御部222は,受信メール処理を終了する,
送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2の動作方法。」

B 周知技術
例えば,特開2009-205660号公報(以下,「周知例1」という。)には以下の事項エ,オが,また,特開2005-234660号公報(以下,「周知例2」という。)には以下の事項カ,キが,それぞれ記載されている。

エ 「【0008】
本発明は,このような課題に鑑み,受信端末における電子メールの開封タイミングを送信端末側で指定し,電子メールをより有効に利用することが可能な通信システムを提供することを目的としている。」

オ 「【0050】
上記メール受信部244は,他のPHS端末110から送信された電子メールを受信する。ここで受信された電子メールに開封条件が設定されている場合,その開封条件が満たされるまでユーザ閲覧が不可能な状態で上述したメール保持部228に保持される。かかる構成により,送信側のユーザが電子メールを利用して例えば誕生日の思いがけない電子メールで他のユーザを驚かせたい場合に,その内容を他のユーザのPHS端末110内で秘密にしておくことができる。
【0051】
上記開封判定部246は,電子メールに開封条件として設定された日時や地理的領域に対し,その時のPHS端末110の状態がその開封条件を満たすかどうかを所定間隔で周期的に判定する。
【0052】
上記メール報知部248は,開封判定部246によって開封条件を満たしていると判定された電子メールの受信を報知する。ユーザは,かかる報知を受けて,PHS端末110を操作し,その電子メールを開封する。」

カ 「【0008】
本発明の目的は,受信側の端末に保持されているメールを送信側で管理可能とすることを目的とする。」

キ 「【0022】
次に,本例の携帯電話10がメールを受信する側の端末として利用される場合,制御部111は,メール管理手段111dとして主に機能する。以下,このメール管理手段111dについて図1及び図3を参照しながら説明する。ここでも,送信側の携帯電話10を「携帯電話10a」,受信側の携帯電話10を「携帯電話10b」として区別する。
【0023】
携帯電話10bがメールを受信すると,制御部111はメール管理手段111dとして機能する。メール管理手段111dとして機能する制御部111は,受信されたメールにそのメールの処理に関する条件が付加されているか否かを自動的に判断し,付加されている場合にはその条件に従ってメールを処理する。具体的は,メールを受信すると自動的にメール管理機能を起動させ(Step4-1),受信したメールに表示条件が付加されているか否かを判断する(Step4-2)。その結果,表示条件が付加されている場合には,付加されている表示条件を満たしているか否かをさらに判断する(Step4-3)。例えば,表示許可日時が指定されている場合には,内蔵時計が示す日時を参照し,表示許可日時に至っているか否かを判断する。そして,表示許可日時に至っている場合には,液晶ディスプレイへの所定メッセージの表示,バイブレータの振動等といった所定の報知手段によって携帯電話10bのユーザ(受信者)に受信メールの表示が可能な状態である旨を報知する(Step4-4)。報知によって条件が満たされていることを知った受信者は,キーボードを操作することによって,新規メールを少なくとも一回閲覧することができる。一方,表示許可日時に至っていない場合には,表示許可日時に至るまで受信メールの表示が禁止され,条件を満たした時点で上記報知がなされる。尚,メールの表示を禁止する具体的手段としては,メモリ103に保存されているメールデータの読出し属性をオフにしたり,データレコードのロックをオンにしたりといった手段が考えられるが,特定の手段に限定されるものではない。要するに,メールの内容が表示されないようにすることができれば如何なる手段であってもよい。」

例えば上記周知例1,2に開示されているように,
電子メールシステムにおいて「送信側で指定した電子メールの開封条件が満たされない場合はその電子メールの受信を受信者に報知しないようにすること。」(以下,「周知技術」という。)は周知である。

(3)対比
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a1 引用発明の「送信側電子メール通信装置1」及び「受信側電子メール通信装置2」と補正後の発明の「送受信装置」とは,「装置」の点で共通する。
a2 引用発明の「メールサーバ」が「送信側電子メール通信装置1」及び「受信側電子メール通信装置2」と通信可能でありこれらの装置間で電子メールを受け渡すものであることは技術常識であるから,引用発明の「メールサーバ」は補正後の発明の「管理装置」に相当し,また,引用発明の「電子メールシステム」は補正後の発明の「情報送受信システム」に相当する。
a3 引用発明の「送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2」の「動作方法」は,「送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2」を制御する方法,即ち,「送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2」の「制御方法」とも言い得るものである。
a4 そうすると,
引用発明の「送信側電子メール通信装置1と,受信側電子メール通信装置2と,送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2とを接続する通信ネットワークとから構成され,該通信ネットワークにはメールサーバが接続された電子メールシステムにおける送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2の動作方法であって」と,
補正後の発明の「複数の送受信装置と,当該送受信装置と通信可能で,当該複数の送受信装置間で情報を受け渡す管理装置とを備える情報送受信システムにおける前記送受信装置の制御方法であって」は,
「複数の装置と,当該装置と通信可能で,当該複数の装置間で情報を受け渡す管理装置とを備える情報送受信システムにおける前記装置の制御方法であって」で共通する。
b1 引用発明の「送信先電子メールアドレス」,「電子メールの本文」は,それぞれ,補正後の発明の「情報の送信先」,「送信する情報」に相当する。
b2 引用発明の「この電子メールに付加される動作指定情報」は「受信側電子メール通信装置2で受信メールの処理が開始される条件を示す処理開始条件」を含むが,該「受信メールの処理」として「受信側電子メール通信装置2において」「受信メールを表示部202に表示させ」る処理を行うから,引用発明の「この電子メールに付加される動作指定情報とが格納され,動作指定情報は,受信側電子メール通信装置2で受信メールの処理が開始される条件を示す処理開始条件を含」むことは,補正後の発明の「当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件」を「指定」することに相当する。
b3 そうすると,
引用発明の「送信側電子メール通信装置1において,蓄積部103には,送信先電子メールアドレスと,送信元電子メールアドレス(自装置のアドレス)と,電子メールの本文と,この電子メールに付加される動作指定情報とが格納され,動作指定情報は,受信側電子メール通信装置2で受信メールの処理が開始される条件を示す処理開始条件を含み」は,
補正後の発明の「前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し」とは,
「前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し」の点で共通するものの,引用発明が「送信側電子メール通信装置1において」と特定している点で相違する。
c1 引用発明の「送信者が全てのデータ入力を終え,メール送信を開始する操作を行った場合」の「蓄積部103に蓄積した電子メールのデータ」と「これに付加した動作指定情報」は,それぞれ補正後の発明の「前記情報」と「前記閲覧可能条件」に相当する。
c2 引用発明の「制御部108から渡された電子メールのデータと動作指定情報とを送信先の受信側電子メール通信装置2に向けて送信」する点に関し,「受信側電子メール通信装置2において,メールサーバから自装置宛の電子メールを受信」することを勘案すると,電子メールが「メールサーバ」を経由して「受信側電子メール通信装置2」に送信されることは明らかであるから,「送信先電子メールアドレスと,送信元電子メールアドレス(自装置のアドレス)と,電子メールの本文と,この電子メールに付加される動作指定情報」は「メールサーバ」に送信されているものと認められる。
c3 そうすると,
引用発明の「送信側電子メール通信装置1において」「送信者が全てのデータ入力を終え,メール送信を開始する操作を行った場合,制御部108は,蓄積部103に蓄積した電子メールのデータとこれに付加した動作指定情報とをメール送信処理部104に渡し,メール送信処理部104は,通信ネットワークと回線接続した後,制御部108から渡された電子メールのデータと動作指定情報とを送信先の受信側電子メール通信装置2に向けて送信し」と,
補正後の発明の「前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し」とは,
「前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し」の点で共通するものの,引用発明が「送信側電子メール通信装置1において」と特定している点で相違する。
d1 引用発明の「自装置宛の電子メール」が「送信側電子メール通信装置1」から送信されたものであることは明らかであるから,「(受信した)電子メールのデータ」の「メール本文」は補正後の発明の「送信する情報」に相当する。
d2 引用発明の「動作指定情報」は「処理開始条件」としての「位置指定情報」であり,「受信メールを表示部202に表示させる」条件を指定する情報であって,補正後の発明の「当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件」に相当する。
d3 そして,引用発明の「自装置宛の電子メール」の「メール本文」及び「動作指定情報」は,補正後の発明の「送信対象」に相当するものである。
d4 そうすると,
引用発明の「受信側電子メール通信装置2において,メールサーバから自装置宛の電子メールを受信して,受信した電子メールのデータを蓄積部205に蓄積し,動作指定情報を意味する添付ファイルがある場合,メール本文に表示プロテクトをかけて蓄積部205に蓄積し,受信メールに動作指定情報が付加されている場合,制御部222は,この動作指定情報を受信メールのメール番号と対応付けてマッチングテーブル221に書き込み,以上でメール受信処理が終了し,該動作指定情報中の処理開始条件として位置指定情報が設定されており」と,
補正後の発明の「前記送信対象を受信し」とは,
「前記送信対象を受信し」の点で共通するものの,引用発明が「受信側電子メール通信装置2において」と特定している点で相違する。
e1 上記d2での検討によれば,引用発明の「位置指定情報」は補正後の発明の「閲覧可能条件」に相当するものであり,引用発明において「位置変化イベント通知に含まれる座標データを基にマッチングテーブル221を参照して該当する位置指定情報が登録されているか否かを検索」することは,「閲覧可能条件が充足されたか否かを判断」することといえる。
e2 そうすると,
引用発明の「GPS監視部212は,GPS211から取得した現在の座標データが直前の座標データに対して変化した場合,自装置の位置が変化したと判断して,現在の座標データを含む位置変化イベント通知を制御部222に送出し,位置変化イベント通知を受けた制御部222は,イベント発生と判断して,受信メール処理を行い,受信メール処理において,制御部222は,位置変化イベント通知を記憶し,この位置変化イベント通知に含まれる座標データを基にマッチングテーブル221を参照して該当する位置指定情報が登録されているか否かを検索し」と,
補正後の発明の「前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し」とは,
「前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し」の点で共通するものの,引用発明が「受信側電子メール通信装置2において」と特定する点で相違する。
e3 同様に,
引用発明の「該当する位置指定情報が登録されている場合,制御部222は,該当メールのメール番号をマッチングテーブル221から取得し,取得した番号のメールのデータを蓄積部205から取り出し,取り出した受信メールを表示部202に表示させ」は,
補正後の発明の「前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御し」とは,
「前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御し」の点で共通するものの,引用発明が「受信側電子メール通信装置2において」と特定する点で相違する。
e4 さらに,
引用発明の「該当する位置指定情報が登録されていない場合」は,
補正後の発明の「前記閲覧可能条件が充足されていないと判断された場合に」に含まれる。

以上をまとめると,両発明は以下の点で一致し,また,相違する。

(一致点)
「 複数の装置と,当該装置と通信可能で,当該複数の装置間で情報を受け渡す管理装置とを備える情報送受信システムにおける前記装置の制御方法であって,
前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し,
前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し,
前記送信対象を受信し,
前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し,
前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御する,
装置の制御方法。」

(相違点1)
一致点の「複数の装置」が,補正後の発明では「複数の送受信装置」であるのに対し,引用発明では「送信側電子メール通信装置1と,受信側電子メール通信装置2と」である点。

(相違点2)
一致点の「装置の制御方法」が,補正後の発明では「送受信装置の制御方法」であるのに対し,引用発明では「送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2の動作方法」である点。

(相違点3)
一致点の「前記情報の送信先と,送信する情報と,当該情報を当該送信先の受信者に閲覧可能にするための閲覧可能条件とを指定し,前記指定した前記送信先と,前記情報と,前記閲覧可能条件とを前記管理装置に送信し」という制御を実行する主体が,補正後の発明では「送受信装置」であるのに対し,引用発明では「送信側電子メール通信装置1」である点。

(相違点4)
一致点の「前記送信対象を受信し,前記受信した前記送信対象に含まれる前記閲覧可能条件が充足されたか否かを判断し,前記閲覧可能条件が充足されたと判断された場合に,前記情報が受信者に閲覧可能となるように制御する」という制御を実行する主体が,補正後の発明では「送受信装置」であるのに対し,引用発明では「受信側電子メール通信装置2」である点。

(相違点5)
補正後の発明が「前記閲覧可能条件が充足されていないと判断された場合に,前記送信対象を受信したことを報知しないように制御」し,その制御を実行する主体が「送受信装置である」のに対し,
引用発明は「該当する位置指定情報が登録されていない場合,制御部222は,受信メール処理を終了」し,その動作を実行する主体が「受信側電子メール通信装置2」である点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。

まず,(相違点1)?(相違点4)についてまとめて検討する。
電子メールシステムにおいて,送信側電子メール通信装置と受信側電子メール通信装置とがメール送受信のための同一の構成を備え同一の送受信動作をすることは技術常識であり,引用発明において,「送信側電子メール通信装置1」と「受信側電子メール通信装置2」の各々を,同一の送受信機能を備えた「送受信装置」とすることに何ら困難性はない。
そして,その場合,引用発明の「送信側電子メール通信装置1と,受信側電子メール通信装置2と」は「複数の送受信装置」と言え(相違点1),引用発明の「送信側電子メール通信装置1と受信側電子メール通信装置2の動作方法」は「送受信装置の制御方法」と言える(相違点2)。
さらに,引用発明における「送信側電子メール通信装置1において」実行される動作(制御)と「受信側電子メール通信装置2において」実行される動作(制御)は,いずれも「送受信装置」における動作(制御)ということができる(相違点3及び相違点4)。
したがって,上記(相違点1)?(相違点4)は格別の相違ということはできない。

次に,(相違点5)について検討する。
引用発明の「該当する位置指定情報が登録されていない場合,制御部222は,受信メール処理を終了する」処理に関し,引用例には「動作指定情報中の処理開始条件と受信側電子メール通信装置2の状況とが一致しない限り,受信メールの内容を読むことはできないが,メールのヘッダ情報及び動作指定情報を表示部202で参照することは可能である。」(【0032】)こと,即ち,電子メールの閲覧制限として,受信メール本文を読むことはできないが,メールを受信したことの報知自体は行うようにすることが記載されている。
しかしながら,上記「(2)引用発明と周知技術 B 周知技術」に記したように,電子メールシステムにおいて「送信側で指定した電子メールの開封条件が満たされない場合はその電子メールの受信を受信者に報知しないようにすること。」という閲覧制限自体は周知技術であり,電子メールの閲覧制限を,引用発明のように電子メール本文のみの閲覧制限とするか,あるいは,周知技術のように電子メール受信の非報知まで含めた閲覧制限とするかは,当業者が必要に応じて選択し得るものである。さらに,周知技術のように電子メール受信の非報知という閲覧制限を採用した場合の効果も,上記周知例1に「送信側のユーザが電子メールを利用して例えば誕生日の思いがけない電子メールで他のユーザを驚かせたい場合に,その内容を他のユーザのPHS端末110内で秘密にしておくことができる。」(【0050】)と記載されているように,当業者にとり容易に予測可能なものに過ぎない。
したがって,引用発明の「該当する位置指定情報が登録されていない場合,制御部222は,受信メール処理を終了する」場合の具体的な処理として,引用例に記載された「受信メールの内容を読むことはできない」ようにする制御に加え,上記周知技術の「電子メールの受信を受信者に報知しないようにする」制御を行うようにすること,即ち,補正後の発明のように「前記閲覧可能条件が充足されていないと判断された場合に,前記送信対象を受信したことを報知しないように制御」することは,当業者であれば容易に想到し得たものである。
また,そのような制御を実行する主体を「送受信装置」とする点については,上記(相違点1)?(相違点4)について検討したとおり,格別の相違とすることはできない。

そして,補正後の発明が奏する効果も引用発明及び周知技術から容易に予測できる範囲内のものである。

(5)まとめ
以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定 1 本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2 引用発明
引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3 独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明と周知技術 A 引用発明」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明との相違点は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3 独立特許要件について」の項中の「(3)対比」の項に記した(相違点1)?(相違点4)であるが,これらの相違点は「(4)判断」で検討したようにいずれも格別の相違ということはできず,本願発明は引用発明から容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-14 
結審通知日 2017-02-21 
審決日 2017-03-06 
出願番号 特願2012-184585(P2012-184585)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 新川 圭二
山田 正文
発明の名称 送受信装置、情報送受信システム、送受信装置の制御方法、管理装置、管理装置の制御方法、送受信装置のプログラム、及び、管理装置のプログラム  
代理人 大林 章  

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