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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1327537
審判番号 不服2015-21790  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-08 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2011-238431「はんだ上での酸化物の生成を抑制する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開、特開2012-104817、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月31日(パリ条約による優先権主張 2010年11月5日 米国、2011年9月13日 米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 7月18日 審査請求
平成26年 2月 7日 拒絶理由通知
平成26年 8月18日 意見書・手続補正書
平成27年 1月15日 拒絶理由通知(最後)
平成27年 4月17日 意見書・手続補正書
平成27年 8月 4日 補正の却下の決定・拒絶査定
平成27年12月 8日 審判請求・手続補正書
平成28年12月13日 拒絶理由通知(当審)
平成29年 3月21日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年3月21日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載される事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
複数のウエハのうちの少なくとも第1ウエハの表面にはんだを堆積する堆積システム;
内部が実質的に真空で、少なくとも前記第1ウエハがプラズマ洗浄され、かつ、前記複数のウエハのうちの第2ウエハが前記第1ウエハに結合される、真空チャンバを有するプラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは:
はんだが前記第1ウエハ上に堆積された後に前記第1ウエハをプラズマ洗浄して前記第1ウエハから金属酸化物を除去し、かつ、プラズマ洗浄後に、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記第1ウエハ上に堆積する、ように構成されるプラズマ洗浄システム;及び、
前記キャップ層が堆積された後であって前記第1ウエハが大気曝露される前に前記第1ウエハを前記第2ウエハへ結合させるように構成される、ボンディングシステム;
を有し、
前記キャップ層は、前記第1ウエハの表面に堆積されることで、金属酸化物の再生成を少なくとも抑制する、
システム。
【請求項2】
前記真空チャンバは、前記少なくとも第1ウエハがプラズマ洗浄され、かつ前記複数のウエハがボンディングされる、単一のチャンバを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プラズマ/ボンディングシステムが:
前記少なくとも第1ウエハがプラズマ洗浄される、前記真空チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ;及び、
前記複数のウエハがボンディングされる、前記真空チャンバ内部に設けられたボンディングチャンバ;
を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
複数のウエハのうち少なくとも1つのウエハの表面にはんだを堆積する工程;
チャンバ内に前記複数のウエハを供する工程;
前記チャンバ内で前記少なくとも1つのウエハをプラズマ洗浄することで、前記少なくとも1つのウエハから金属酸化物を除去する工程;
前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後に、前記チャンバ内で、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つのウエハ上に堆積する工程;及び、
前記チャンバ内で前記複数のウエハのボンディングを行う工程;
を有する方法。
【請求項5】
前記複数のウエハのボンディングを行う工程が:
前記複数のウエハのボンディングを、前記チャンバ内のプラズマチャンバと結合された、前記チャンバ内のボンディングチャンバ内で行う工程;
を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバは真空チャンバを有し、
前記複数のウエハのボンディングを行う工程が:
前記真空チャンバ内に設けられたボンディングチャンバ内で前記複数のウエハのボンディングを行う工程;
を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記チャンバは、窒素気体を用いて酸素気体を当該チャンバの外部へ押し出すように構成された窒素チャンバであり、
前記チャンバ内で前記少なくとも1つのウエハをプラズマ洗浄する工程が、前記窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つのウエハをプラズマ洗浄する工程を有し、
前記チャンバ内で前記複数のウエハのボンディングを行う工程が、前記窒素チャンバ内に設けられたボンディングチャンバ内で前記複数のウエハのボンディングを行う工程を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記キャップ層が金を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
第1ウエハの表面にはんだを堆積する堆積システム;及び、
プラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは、
チャンバ内で、前記第1ウエハをプラズマ洗浄して、前記第1ウエハからの金属酸化物を除去し、
前記チャンバ内で、前記第1ウエハの表面にキャップ層を堆積することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制し、かつ、
前記チャンバ内で、前記第1ウエハと第2ウエハとをボンディングする、
ように構成されている、
システム。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「1.平成26年 8月18日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。



・請求項 1-7
・理由 1
補正後の請求項1には、『内部が実質的に真空で、少なくとも第1基板がプラズマ洗浄され、かつ、複数の基板のうちの第2基板が前記第1基板に結合される、真空チャンバ;前記真空チャンバ内部に設けられ、少なくとも前記第1基板の表面にはんだを堆積する堆積システム』と、プラズマ洗浄及び基板結合のための真空チャンバ内部に、はんだ堆積システムが設けられるという旨の記載がある。一方、出願当初明細書等(段落【0013】?【0017】のうち、特に、段落【0017】を参照)には、『プリントシステム20及びプラズマ/ボンディングシステム24は、・・(中略)・・、両システムの1つ以上の動作を実行するように、一のシステム内で結合しても良い。』という記載があるものの、当該記載は、両システムを単に結合可能であることを意味するものであって、プラズマ/ボンディングシステムの真空チャンバ内部にプリントシステムを設けることを意味するものでないことは文脈上明かである。また、出願時の技術常識を考慮しても、出願当初明細書等の記載から、プラズマ/ボンディングシステムの真空チャンバ内部にプリントシステムを設けることが自明な事項であると認めることもできない。

・請求項 8-18
・理由 2
(特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定)
請求項8-18に係る発明は、請求項1に係る発明と、『第1基板の表面にはんだを堆積し』、『第1基板からの金属酸化物を除去し、前記第1基板の表面にキャップ層を堆積することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制し』、及び『前記第1基板と第2基板とをボンディングする』という共通の技術的特徴を有している。しかしながら、当該技術的特徴は、特開2001-308144号公報(特に、請求項8-11を参照)の開示内容に照らして、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴であるとはいえない。また、請求項1に係る発明と、請求項8-18に係る発明との間に、他に同一の又は対応する特別な技術的特徴は存在しない。」

2 原査定の理由についての当審の判断
(1)理由1(特許法第17条の2第3項)について
原査定の「理由1」において、平成26年8月18日付けでした手続補正後の請求項1には、プラズマ洗浄及び基板結合のための真空チャンバ内部にはんだ堆積システムが設けられるという旨の記載があるところ、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面には、プラズマ洗浄及び基板結合のための真空チャンバ内部にはんだ堆積システムが設けられることが記載されていないから、平成26年8月18日付けでした手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨が指摘された。
しかしながら、平成29年3月21日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9には、プラズマ洗浄及び基板結合のための真空チャンバ内部にはんだ堆積システムが設けられることは記載されていない。
したがって、原査定の「理由1」によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)理由2(特許法第37条)について
原査定の「理由2」において、請求項8-18に係る発明と、請求項1に係る発明とは、「第1基板の表面にはんだを堆積し」、「第1基板からの金属酸化物を除去し、前記第1基板の表面にキャップ層を堆積することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制し」、及び「前記第1基板と第2基板とをボンディングする」という共通の技術的特徴を有しているものの、当該技術的特徴は、特開2001-308144号公報(特に、請求項8-11を参照)の開示内容に照らして、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴であるとはいえず、また、請求項1に係る発明と、請求項8-18に係る発明との間に、他に同一の又は対応する特別な技術的特徴は存在しないから、本願は特許法第37条に規定する要件を満たしていない旨が指摘された。
しかしながら、本願の請求項1ないし9に係る発明は、ウエハの表面にはんだを堆積し、チャンバ内でウエハをプラズマ洗浄して金属酸化物を除去し、ウエハにキャップ層を堆積し、上記チャンバ内でウエハを結合するという、共通の技術的特徴を有しており、当該技術的特徴が特開2001-308144号公報に記載されているとは認められない。
したがって、原査定の「理由2」によっては、本願を拒絶することはできない。

3 原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、原査定の「理由1」及び「理由2」によっては、本願を拒絶することはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年12月13日付けで当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(新規事項)平成27年12月8日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
4.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
5.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1 理由1(サポート要件)について
(1)請求項1ないし7に係る発明について
本願の請求項1に係る発明は、
『【請求項1】
内部が実質的に真空で、少なくとも第1基板がプラズマ洗浄され、かつ、複数の基板のうちの第2基板が前記第1基板に結合される、真空チャンバ;
前記真空チャンバ内部に設けられ、少なくとも前記第1基板の表面にはんだを堆積する堆積システム;
前記堆積システムとやり取りするように動作可能で、前記真空チャンバ内部に設けられ、かつ内部では前記第1基板がプラズマ洗浄される、プラズマチャンバ;及び、
前記プラズマチャンバ内部に設けられ、かつ実質的に真空状態であるプラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは:
はんだが前記第1基板上に堆積された後に前記第1基板をプラズマ洗浄し、前記第1基板から金属酸化物を除去し、かつ、プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記第1基板上に堆積するプラズマ洗浄システム;及び、
前記プラズマ洗浄システムとやり取りするように動作可能で、前記キャップ層が堆積された後であって前記第1基板が大気曝露される前に前記第1基板を前記第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム;
を有し、
前記キャップ層は、前記第1基板の表面に堆積されることで、金属酸化物の再生成を少なくとも抑制し、
前記キャップ層は、はんだの堆積及びプラズマ洗浄後であって前記第1基板が大気曝露される前に堆積される、
システム。』
というものである。(当審注.下線は参考のため当審において付したもの。以下において同じ。)
請求項1の記載を総合すると、請求項1に係る発明においては、『堆積システム』によって第1基板の表面にはんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、第1基板が大気曝露されないものと解される。
他方、本願明細書の段落[0003]ないし[0008]の記載によれば、本願に係る発明が解決しようとする課題は『プラズマ/ボンディングシステム』におけるはんだの再酸化を抑止することであると認められ、そのための具体的な手段として、本願明細書の段落[0011]ないし[0035]及び[図1]ないし[図5]には、『プラズマ/ボンディングシステム』を真空チャンバ(あるいは窒素チャンバ)内に配置することによりプラズマ洗浄後に基板を酸素に曝露しないこと、及び、プラズマ洗浄後に基板上にキャップ層を堆積することが記載されている。しかしながら、本願の『発明の詳細な説明』には、はんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間における酸化物の生成を抑止するという技術課題については記載されておらず、『堆積システム』によってはんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しないことについても記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
請求項1を引用する請求項2ないし請求項7に係る発明についても、上記と同様である。
よって、請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
なお、本願明細書の段落[0017]には『プリントシステム20及びプラズマ/ボンディングシステム24は、各々が独自の動作を実行するように、区分けされた複数のシステム内で各独立しても良いし又は、両システムの1つ以上の動作を実行するように、一のシステム内で結合しても良い。』と記載されているが、当該記載は『プリントシステム20』による処理と『プラズマ/ボンディングシステム24』による処理を単一のシステムにおいて実行してもよい旨を述べているに過ぎず、はんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しないことについて記載したものとは認められない。

(2)請求項8ないし13に係る発明について
本願の請求項8に係る発明は、
『【請求項8】
真空チャンバ内に複数の基板を供する工程;
前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程;
前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程;
前記少なくとも1つの基板から金属酸化物を除去する工程;
前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後であって前記少なくとも1つの基板が大気曝露される前にプラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程;及び、
前記複数の基板のボンディングを行う工程;
を有する方法。』
というものである。
請求項8の記載を総合すると、請求項8に係る発明においては、『前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程』の後、『プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程』までの間、『少なくとも1つの基板』が大気曝露されないものと解される。
しかしながら、上記(1)のとおり、本願の『発明の詳細な説明』には、はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しないことについては記載されていない。
したがって、請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
請求項8を引用する請求項9ないし13に係る発明についても、上記と同様である。
よって、請求項8ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 理由2(新規事項)について
(1)請求項1に係る補正について
平成27年12月8日付け手続補正書による補正後の請求項1には、
『【請求項1】
内部が実質的に真空で、少なくとも第1基板がプラズマ洗浄され、かつ、複数の基板のうちの第2基板が前記第1基板に結合される、真空チャンバ;
前記真空チャンバ内部に設けられ、少なくとも前記第1基板の表面にはんだを堆積する堆積システム;
前記堆積システムとやり取りするように動作可能で、前記真空チャンバ内部に設けられ、かつ内部では前記第1基板がプラズマ洗浄される、プラズマチャンバ;及び、
前記プラズマチャンバ内部に設けられ、かつ実質的に真空状態であるプラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは:
はんだが前記第1基板上に堆積された後に前記第1基板をプラズマ洗浄し、前記第1基板から金属酸化物を除去し、かつ、プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記第1基板上に堆積するプラズマ洗浄システム;及び、
前記プラズマ洗浄システムとやり取りするように動作可能で、前記キャップ層が堆積された後であって前記第1基板が大気曝露される前に前記第1基板を前記第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム;
を有し、
前記キャップ層は、前記第1基板の表面に堆積されることで、金属酸化物の再生成を少なくとも抑制し、
前記キャップ層は、はんだの堆積及びプラズマ洗浄後であって前記第1基板が大気曝露される前に堆積される、
システム。』
と記載されている。
補正後の請求項1の記載を総合すると、補正後の請求項1に係る発明においては、『堆積システム』によって第1基板の表面にはんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、第1基板が大気曝露されないものと解される。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、はんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しないことについて記載されていない。
よって、平成27年12月8日付け手続補正書による請求項1についての補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

(2)請求項8に係る補正について
平成27年12月8日付け手続補正書による補正後の請求項8には、
『【請求項8】
真空チャンバ内に複数の基板を供する工程;
前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程;
前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程;
前記少なくとも1つの基板から金属酸化物を除去する工程;
前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後であって前記少なくとも1つの基板が大気曝露される前にプラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程;及び、
前記複数の基板のボンディングを行う工程;
を有する方法。』
と記載されている。
補正後の請求項8の記載を総合すると、補正後の請求項8に係る発明においては、『前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程』の後、『プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程』までの間、『少なくとも1つの基板』が大気曝露されないものと解される。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しないことについて記載されていない。
よって、平成27年12月8日付け手続補正書による請求項8についての補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

3 理由3(明確性)について
(1)請求項1ないし7について
ア 本願の請求項1に、『前記堆積システムとやり取りするように動作可能で、前記真空チャンバ内部に設けられ、かつ内部では前記第1基板がプラズマ洗浄される、プラズマチャンバ』と記載されているが、『堆積システム』と『プラズマチャンバ』との間で『やり取り』されるものが何であるのかが不明である。
請求項1を引用する請求項2ないし7についても上記と同様のことが言える。
よって、請求項1ないし7に係る発明は明確でない。
イ 本願の請求項1に、『前記プラズマ洗浄システムとやり取りするように動作可能で、前記キャップ層が堆積された後であって前記第1基板が大気曝露される前に前記第1基板を前記第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム』と記載されているが、『プラズマ洗浄システム』と『ボンディングシステム』との間で『やり取り』されるものが何であるのかが不明である。
請求項1を引用する請求項2ないし7についても上記と同様のことが言える。
よって、請求項1ないし7に係る発明は明確でない。

(2)請求項6について
本願の請求項6が引用する請求項1には、『前記プラズマチャンバ内部に設けられ、かつ実質的に真空状態であるプラズマ/ボンディングシステム』と記載されており、当該記載からは、請求項6に係る発明における『プラズマ/ボンディングシステム』は『実質的に真空状態である』ものと解される。
他方、本願の請求項6の記載からは、請求項6に係る発明における『プラズマ/ボンディングシステム』は、窒素を含むものであると解される。
このように、請求項6が引用する請求項1の記載と、請求項6の記載が齟齬しているために、請求項6に係る発明における『プラズマ/ボンディングシステム』が『実質的に真空状態である』のか、窒素を含むものであるのかが不明である。
よって、請求項6に係る発明は明確でない。

(3)請求項13について
ア 本願の請求項13に『前記前記真空チャンバ』と記載されているが、『前記前記』なる記載の意味が不明である。
よって、請求項13に係る発明は明確でない。
イ 本願の請求項13に『前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程であって、前記窒素チャンバは、窒素気体を用いて、酸素気体を前記窒素チャンバ外部へ押し出す、工程』と記載されているが、当該記載からは、プラズマ洗浄を『真空チャンバ』内で行うのか、『窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ』内で行うのかが不明である。
よって、請求項13に係る発明は明確でない。
ウ 本願の請求項13には、『前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程であって、前記窒素チャンバは、窒素気体を用いて、酸素気体を前記窒素チャンバ外部へ押し出す、工程;及び、前記複数の基板のボンディングを行う工程が、前記窒素チャンバ内に設けられたボンディングチャンバ内で複数の基板のボンディングを行う工程;を有する、請求項8に記載の方法。』と記載されている。当該記載には、2つの主部(『前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、』及び『前記複数の基板のボンディングを行う工程が、』)に対して、述部(『を有する』)が1つしか存在せず、主部と述部との対応関係が不明確であるから、文意を把握することができない。
よって、請求項13に係る発明は明確でない。
なお、『前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程であって、前記窒素チャンバは、窒素気体を用いて、酸素気体を前記窒素チャンバ外部へ押し出す、工程を有し、前記複数の基板のボンディングを行う工程が、前記窒素チャンバ内に設けられたボンディングチャンバ内で複数の基板のボンディングを行う工程;を有する、請求項8に記載の方法。』と記載した場合には、この点は明確となる。

(4)請求項15及び請求項18について
本願の請求項15には『前記の第1基板と第2基板とをボンディングする工程の前に、前記第1基板を大気曝露することを可能にする工程をさらに有する、請求項14に記載の方法。』と記載されているが、『大気曝露することを可能にする』との記載が、基板を大気中に搬出することを意味するのか、基板を大気曝露しても問題が生じないようにするための処理(例えば、はんだの再酸化を抑制するための処理)を施すことを意味するのかが不明である。
請求項18の『前記プラズマ/ボンディングシステムが、前記第1基板と第2基板とをボンディングする前に、前記第1基板を大気曝露することを可能にする』との記載についても上記と同様のことがいえる。
よって、請求項15及び18に係る発明は明確でない。

4 理由4(新規性)について
(1)請求項14及び15について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『第1基板の表面にはんだを堆積する工程』に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記第1基板から金属酸化物を除去する工程;前記第1基板の表面にキャップ層を堆積することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制する工程;』に相当する。引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記第1基板と第2基板とをボンディングする工程』に相当する。引用文献1の段落【0025】には、接合を大気中で行うことが記載されており、本願の請求項15に係る発明の『前記第1基板を大気曝露することを可能にする工程』に相当する。
してみれば、請求項14及び15に係る発明と引用文献1に記載された発明との間に相違はない。

(2)請求項17及び18について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『第1基板の表面にはんだを堆積する堆積システム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、また、引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『プラズマ/ボンディングシステム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0025】には、接合を大気中で行うことが記載されており、本願の請求項18に係る発明の『前記第1基板を大気曝露することを可能にする』ことに相当する。
してみれば、請求項17及び18に係る発明と引用文献1に記載された発明との間に相違はない。

5 理由5(進歩性)について
(1)請求項1ないし7について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『堆積システム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『プラズマ洗浄システム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『ボンディングシステム』の動作に相当する。
引用文献1に記載された発明において、半田バンプの形成及び基板の接合を真空チャンバ内のチャンバで行うこと、及び、各チャンバをロードロックモジュールで結合することは、当業者であれば適宜なし得たことである。
したがって、請求項1ないし7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求項8ないし13について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程』に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程;前記少なくとも1つの基板から金属酸化物を除去する工程;前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後であって前記少なくとも1つの基板が大気曝露される前にプラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程;』に相当する。引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記複数の基板のボンディングを行う工程』に相当する。
引用文献1に記載された発明において、半田バンプの形成及び基板の接合を真空チャンバ内のチャンバで行うこと、及び、各チャンバをロードロックモジュールで結合することは、当業者であれば適宜なし得たことである。
したがって、請求項8ないし13に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求項14及び15について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『第1基板の表面にはんだを堆積する工程』に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記第1基板から金属酸化物を除去する工程;前記第1基板の表面にキャップ層を堆積することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制する工程;』に相当する。引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『前記第1基板と第2基板とをボンディングする工程』に相当する。引用文献1の段落【0025】には、接合を大気中で行うことが記載されており、本願の請求項15に係る発明の『前記第1基板を大気曝露することを可能にする工程』に相当する。
したがって、請求項14及び15に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求項16について
はんだの酸化を防止するためにはんだの表面に金層を設けることは、引用文献2の段落【0016】等に記載されているように、本願の優先日前に周知の技術であった。
また、引用文献1の段落【0025】に記載されているように、引用文献1に記載された発明における『フッ素系不活性液体』は『半田バンプ』への酸化膜の付着を防止するためのものであり、引用文献2に記載された周知技術における『金層』と同様の機能を有するものであるといえる。
そうすると、引用文献1に記載された発明において、『半田バンプ』への酸化膜の付着を防止するために、MEMS基板を『フッ素系不活性液体』で被覆する構成に代えて、半田バンプを金層で被覆する構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
その他の点については、請求項14と同様である。
したがって、請求項16に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求項17及び18について
引用文献1の段落【0018】等には、HEMS基板に半田バンプを形成することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『第1基板の表面にはんだを堆積する堆積システム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0019】ないし【0021】等には、真空チャンバー内にHEMS基板を載置し、プラズマにより半田バンプ表面に付着した酸化膜を除去した後に、真空チャンバー内に窒素ガスを充填し、フッ素系不活性液体によってHEMS基板の表面を被覆することが記載されており、また、引用文献1の段落【0023】ないし【0024】等には、MEMS基板と回路基板を接合することが記載されており、本願の上記請求項に係る発明の『プラズマ/ボンディングシステム』の動作に相当する。引用文献1の段落【0025】には、接合を大気中で行うことが記載されており、本願の請求項18に係る発明の『前記第1基板を大気曝露することを可能にする』ことに相当する。
したがって、請求項17及び18に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>

1.特開2006-222381号公報
2.特開2006-279062号公報」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)理由1(サポート要件)について
ア 当審拒絶理由の「1 理由1(サポート要件)について」の(1)において、請求項1ないし7に係る発明では、「堆積システム」によって第1基板の表面にはんだを堆積した後、「プラズマ/ボンディングシステム」による処理が行われるまでの間、第1基板が大気曝露されないものと解されるところ、発明の詳細な説明には、「堆積システム」によってはんだを堆積した後、「プラズマ/ボンディングシステム」による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しないことについて記載されていないから、請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9に係る発明は、「『堆積システム』によってはんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しない」という構成を含まないものとなった。
イ 当審拒絶理由の「1 理由1(サポート要件)について」の(2)において、請求項8ないし13に係る発明では、「前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程」の後、「プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程」までの間、「少なくとも1つの基板」が大気曝露されないものと解されるところ、発明の詳細な説明には、はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しないことについて記載されていないから、請求項8ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9に係る発明は、「はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しない」という構成を含まないものとなった。
ウ 以上より、当審拒絶理由の「1 理由1(サポート要件)について」に示した理由によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。

(2)理由2(新規事項)について
ア 当審拒絶理由の「2 理由2(新規事項)について」の(1)において、平成27年12月8日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明では、「堆積システム」によって第1基板の表面にはんだを堆積した後、「プラズマ/ボンディングシステム」による処理が行われるまでの間、第1基板が大気曝露されないものと解されるところ、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、「堆積システム」によってはんだを堆積した後、「プラズマ/ボンディングシステム」による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しないことについて記載されていないから、平成27年12月8日付け手続補正書による請求項1についての補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9に係る発明は、「『堆積システム』によってはんだを堆積した後、『プラズマ/ボンディングシステム』による処理が行われるまでの間、基板を大気に曝露しない」という構成を含まないものとなった。
イ 当審拒絶理由の「2 理由2(新規事項)について」の(2)において、平成27年12月8日付け手続補正書による補正後の請求項8に係る発明では、「前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板の表面にはんだを堆積する工程」の後、「プラズマ洗浄後に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に堆積する工程」までの間、「少なくとも1つの基板」が大気曝露されないものと解されるところ、当初明細書等には、はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しないことについて記載されていないから、平成27年12月8日付け手続補正書による請求項8についての補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9に係る発明は、「はんだを堆積した後、基板を大気に曝露しない」という構成を含まないものとなった。
ウ 以上より、当審拒絶理由の「2 理由2(新規事項)について」に示した理由によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。

(3)理由3(明確性)について
ア 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(1)アにおいて、本願の請求項1に「前記堆積システムとやり取りするように動作可能で、前記真空チャンバ内部に設けられ、かつ内部では前記第1基板がプラズマ洗浄される、プラズマチャンバ」と記載されているが、「堆積システム」と「プラズマチャンバ」との間で「やり取り」されるものが何であるのかが不明である旨が指摘された。
これに対し,平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9は、「やり取りする」との記載を含まないものとなった。
イ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(1)イにおいて、本願の請求項1に「前記プラズマ洗浄システムとやり取りするように動作可能で、前記キャップ層が堆積された後であって前記第1基板が大気曝露される前に前記第1基板を前記第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム」と記載されているが、「プラズマ洗浄システム」と「ボンディングシステム」との間で「やり取り」されるものが何であるのかが不明である旨が指摘された。
これに対し,平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9は、「やり取りする」との記載を含まないものとなった。
ウ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(2)において、請求項6が引用する請求項1には、「前記プラズマチャンバ内部に設けられ、かつ実質的に真空状態であるプラズマ/ボンディングシステム」と記載されており、当該記載からは、「プラズマ/ボンディングシステム」は「実質的に真空状態である」ものと解されるのに対し、請求項6の記載からは、「プラズマ/ボンディングシステム」は窒素を含むものであると解されるため、「プラズマ/ボンディングシステム」が「実質的に真空状態である」のか、窒素を含むものであるのかが不明である旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9は、「実質的に真空状態であるプラズマ/ボンディングシステム」との記載を含まないものとなった。
エ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(3)アにおいて、本願の請求項13に「前記前記真空チャンバ」と記載されているが、「前記前記」なる記載の意味が不明である旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9は、「前記前記」との記載を含まないものとなった。
オ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(3)イにおいて、本願の請求項13に「前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程であって、前記窒素チャンバは、窒素気体を用いて、酸素気体を前記窒素チャンバ外部へ押し出す、工程」と記載されているが、当該記載からは、プラズマ洗浄を「真空チャンバ」内で行うのか、「窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ」内で行うのかが不明である旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項7に係る発明においては、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内でプラズマ洗浄を行うことが明確となった。また、上記手続補正書による補正後の請求項1ないし6、並びに8及び9に係る発明は、「窒素チャンバ」との記載を含んでいない。
カ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(3)ウにおいて、本願の請求項13には、「前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、窒素チャンバ内部に設けられたプラズマチャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程であって、前記窒素チャンバは、窒素気体を用いて、酸素気体を前記窒素チャンバ外部へ押し出す、工程;及び、前記複数の基板のボンディングを行う工程が、前記窒素チャンバ内に設けられたボンディングチャンバ内で複数の基板のボンディングを行う工程;を有する、請求項8に記載の方法。」と記載されているが、当該記載には、2つの主部(「前記前記真空チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄する工程が、」及び「前記複数の基板のボンディングを行う工程が、」)に対して、述部(「を有する」)が1つしか存在せず、主部と述部との対応関係が不明確であるから、文意を把握することができない旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9の記載では、主部と述部との対応関係が明確となった。
キ 当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」の(4)において、本願の請求項15には「前記の第1基板と第2基板とをボンディングする工程の前に、前記第1基板を大気曝露することを可能にする工程をさらに有する、請求項14に記載の方法。」と記載されているが、「大気曝露することを可能にする」との記載が、基板を大気中に搬出することを意味するのか、基板を大気曝露しても問題が生じないようにするための処理(例えば、はんだの再酸化を抑制するための処理)を施すことを意味するのかが不明である旨が指摘された。
これに対し、平成29年3月21日付けで手続補正書が提出され、当該手続補正書による補正後の請求項1ないし9は、「大気曝露することを可能にする」との記載を含まないものとなった。
ク 以上より、当審拒絶理由の「3 理由3(明確性)について」に示した理由によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。

(4)理由4(新規性)及び理由5(進歩性)について
ア 引用文献の記載事項と引用発明
(ア)引用文献1の記載事項並びに引用発明1及び2
a 当審拒絶理由に引用され、本願の優先権の主張の基礎とされた出願の日(以下「本願の優先日」という。)の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-222381号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。)。
「【請求項1】
被接合物の金属接合部同士を接合する実装方法において、
金属接合部表面の接合阻害物を除去する工程と、
非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する工程と、
前記金属接合部同士を位置合せする工程と、
前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する工程と、
からなる電子部品の実装方法。
【請求項2】
被接合物の金属接合部同士を接合する電子部品の実装装置において、
金属接合部表面の接合阻害物を除去する除去手段と、
非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する手段と、
前記金属接合部同士を位置合せする手段と、
前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する手段と、
を具備することを特徴とする電子部品の実装装置。
・・・
【0015】
図1に示すように本実施形態において、半田バンプがMEMS基板の電極上に予め形成する工程(ステップS1)と、MEMS基板上の半田バンプ表面及び回路基板に配置した電極表面に発生又は付着している接合阻害物となる酸化膜と図示しない有機物をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する工程(ステップS2)と、窒素ガスによる不活性雰囲気において、接合阻害物を除去したMEMS基板上の半田バンプ及び回路基板に配置した電極の表面上に、半田の融解温度以下の融解温度有するフッ素系不活性液体が塗布される接合面を被覆する工程(ステップS3)と、フッ素系不活性液体で表面を被覆されたMEMS基板の半田バンプと、回路基板の電極表面を対向する位置に位置合せする工程(ステップS4)と、半田バンプと電極を接触させた後に、接触部に荷重をかけつつフッ素系不活性液体の沸点以上且つ半田の融解温度以下の温度で加熱して、半田バンプと電極を固相拡散接合する工程(ステップS5)と、から構成される。
・・・
【0018】
図2に示したステップS1の工程において、MEMS基板5に配置された電極6上に半田バンプ7が予め形成されている。半田バンプ7が大気に触れた際には、図4に示した回路基板9に対して接合阻害物となる酸化膜8aが半田バンプ7の表面に発生する。さらに半田バンプ7の形成の過程で表面には、図示しない接合阻害物となる有機物が付着している場合もある。また、同様に回路基板9に配置された電極10の表面にも、MEMS基板5に対して接合阻害物となる酸化膜8bが発生する。
【0019】
図3に示すステップS2の工程においてMEMS基板5は、図3(a)に示すように真空チャンバー11内に配置された下部電極12bに載置される。真空チャンバー11内を真空状態にした後にアルゴン(Ar)ガスが導入される。次に、高周波電源13が駆動して上部電極12a、下部電極12bに高周波電圧を印加させることで、Arガス雰囲気中にプラズマ14を発生させる。このArガス雰囲気中のプラズマ14は、MEMS基板5に載置されている電極6上の半田バンプ7表面に付着した接合阻害物となる酸化膜8aや図示しない有機物に衝突する。衝突することにより図3(b)に示すように半田バンプ7表面から接合阻害物となる酸化膜8aや図示しない有機物を除去する。次に、真空チャンバー11内のArガスを排気系33により排気した後、窒素ガスを導入して、通常の大気圧まで戻した後に、仮被覆工程に移行する。
【0020】
図4に示すステップS2の工程において図4(a)は、図3(a)に示した工程と同様に回路基板9を真空チャンバー11内の下部電極12bに載置させる。真空ポンプを含む排気系33により真空チャンバー11内を排気して所定圧力の真空状態にした後にArガスを導入する。次に、高周波電源13を駆動して上下部電極12a,12bに高周波電圧を印加してArガス雰囲気中にプラズマ14を発生させる。図4(b)に示すように発生したプラズマ14は、電極表面に付着している接合阻害物となる酸化膜8bを除去する。
【0021】
次に図5に示すステップS3の仮被覆工程において、酸化膜8aや図示しない有機物を表面から除去した半田バンプ7を形成する電極6を載置するMEMS基板5は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台17上に固定される。次に、フッ素系不活性液体18を充填したシリンジ19は、半田バンプ7と対向配置する位置に移動する。移動したシリンジ19は、半田バンプ7全表面を含む電極6全表面上にフッ素系不活性液体18aを塗布して仮被覆する。同様に、残り全ての電極6及び半田バンプ7は、フッ素系不活性液体18aによって仮被覆し、接合装置に搬出される。
【0022】
図6に示すステップS3の工程においても、図5に示したステップS3の工程と同様に、酸化膜8bや図示しない有機物を表面から除去した電極10を配置している回路基板9は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台20に固定される。回路基板9に配置された電極10表面は、フッ素系不活性液体18bによって塗布され仮被覆される。全電極表面を被覆した回路基板9は、接合装置に搬出する。フッ素系不活性液体18によって仮被覆された電極10表面は、接合阻害物となる酸化膜や有機物の再付着が防止できる。
【0023】
図7に示すステップS4の工程において、接合装置に搬入された回路基板9は、基台20に固定される。一方、接合装置に搬入されたMEMS基板5は接合面(半田バンプ7が形成されている面)が回路基板9の接合面(電極10が形成されている面)と対向するように接合ハンド21に装着されて保持される。接合前には、MEMS基板5及び回路基板9の仮被覆部であるフッ素系不活性液体18a,18bは、互いに接触しないようにする。次に、MEMS基板5に配置された電極6上の半田バンプ7と回路基板9に配置された電極10は、所定位置で対向するように、接合ハンド21及び基台20のどちらか一方、又は両方を水平方向に移動させて位置合わせを行う。
【0024】
図8(a)に示すステップS5の工程において、接合ハンド21が下降して、半田バンプ7表面を覆うフッ素系不活性液体18aは、電極10を覆うフッ素系不活性液体18bと当接する。
この当接した後にさらに荷重を加えつつ、フッ素系不活性液体18の沸点(100℃)以上の温度で接触部分を加熱するとフッ素系不活性液体18a,bは気化する。図8(b)に示すように荷重により半田バンプ7の先端は、潰れて半田バンプ7の表面と回路基板9に配置された電極10表面が密着し固相拡散接合する。
【0025】
このように本実施形態によれば、接合部材として半田バンプのみを用いるために、例えば電子部品と回路基板とを接合する際の製造工程が短い。半田バンプ7は、フッ素系不活性液体18によって仮被覆されることで接合阻害物となる酸化膜8aや有機物の再付着が防止できる。さらに半田バンプ7を覆う仮被覆部材は、フッ素系不活性液体のために接合時における加熱による引火の危険性がない。さらに仮被覆部材の供給手段がシリンジによるフッ素系不活性液体による塗布のため、部品や基板ごとの治工具が不要であり大気中での接合が可能であるため、接合装置のコストを押えることができる。
【0026】
本実施形態では、接合阻害物となる酸化膜8a及び酸化膜8bの除去はMEMS基板5と回路基板9とを別々に除去をしたが、同時に実施しても構わない。 本実施形態では、半田バンプ7としては、融点183℃のSn/Pbの共晶半田、フッ素系不活性液体18としては、3M社のフロリナートFC77(沸点97℃)[商標登録]、電極20の材質としては、Cuに半田メッキ(Sn/Pb共晶)とするが、必ずしもその必要はなく、条件が合えば他の材料でも構わない。
【0027】
本実施形態は、基板の大部分に可動部1を有するMEMS基板5と、可動部1に対応する駆動電極15を有する回路基板9をフリップチップ実装した静電駆動型デバイスを例に適用した例である。」
b 上記aの引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「MEMS基板5の電極6上に半田バンプ7を形成する手段と、
真空チャンバ内にMEMS基板5及び回路基板9を配置する手段と、
前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段と、
MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段と、
MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段と、
を有する、電子部品を実装するためのシステム。」
c また、上記aの引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献1には、上記引用発明1を方法の発明として記載した次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「MEMS基板5の電極6上に半田バンプ7を形成する工程と、
真空チャンバ内にMEMS基板5及び回路基板9を配置する工程と、
前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する工程と、
MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する工程と、
MEMS基板5と回路基板9とを接合する工程と、
を有する、電子部品の実装方法。」
(イ)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-279062号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0016】
図30(a)?(c)は、本発明の半導体装置の製造方法の第12の実施の形態を示す工程順の断面図である。本実施の形態は、図7に示した半導体素子の実装方法に係る。本実施の形態においては、柱状突起6の上部に設けられたはんだメッキ層9の表面に金層10が設けられると共にパッド14上にも金層10が設けられる〔図30(a)〕。これら金層が形成されていることにより、はんだメッキ層9およびパッド14の表面は酸化されることなく清浄な状態に保持される。柱状バンプ6がパッド14上に位置するように半導体素子の位置決めを行った後、配線基板12上に半導体素子を搭載し、はんだリフローを行うと、金層10ははんだ内に溶け込み、柱状バンプ6はパッド14にはんだフィレット11を介して接合される〔図30(b)〕。その後、アンダーフィル樹脂17を充填し、硬化させる〔図30(c)〕。
本実施の形態においては、はんだメッキ層9およびパッド14上の双方に金層10が形成されていたが、いずれか一方のみであってもよい。その場合には、保管、搬送、実装の一連の過程は、真空、還元性雰囲気などの非酸化性雰囲気中にて行い、接合部表面が汚染されることのないようにすることが肝要である。
図31(a)?(c)は、本発明の半導体装置の製造方法の第13の実施の形態を示す工程順の断面図である。本実施の形態において用いられる半導体素子の柱状バンプ6の上面および側面の上部部分は、薄い金層10によって被覆されている。また、パッド14上のはんだ層16上にも金層10が形成されている〔図31(a)〕。位置決め後、配線基板12上に半導体素子を搭載し、はんだリフローを行うと、金層10ははんだ内に溶け込み、柱状バンプ6はパッド14にはんだフィレット11を介して接合される〔図31(b)〕。その後、アンダーフィル樹脂17を充填し、硬化させる〔図31(c)〕。
本実施の形態においては、金層10は、柱状バンプ6とはんだ層16上の双方に形成されていたが、いずれか一方のみであってもよい。一方に金層が形成されない場合には、取り扱いは、真空、還元性雰囲気などの非酸化性雰囲気中にて行い、接合部表面が汚染されることのないようにすることが肝要である。」
イ 本願発明と引用発明との対比
(ア)本願発明1と引用発明との対比
a 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明1とを対比する。
b 本願明細書の段落【0016】には「ある実施例では、システム10は、基板(たとえばウエハ)上に動作して良い。」と記載されており、本願発明1における「ウエハ」は、「基板」の一種と認められる。
したがって、引用発明1における「MEMS基板5」と、本願発明1における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通し、下記相違点1において相違するといえる。
また、引用発明1における「回路基板9」と、本願発明1における「第2ウエハ」とは、「第2基板」である点において共通し、下記相違点1において相違するといえる。
さらに、引用発明1における「MEMS基板5」及び「回路基板9」と、本願発明1における「複数のウエハ」とは、「複数の基板」である点において共通し、下記相違点1において相違するといえる。
c 引用発明1における「MEMS基板5の電極6上に半田バンプ7を形成する手段」は、MEMS基板5の上にはんだを堆積する堆積システムであるといえる。
また、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明1における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「複数の基板のうちの少なくとも第1基板の上にはんだを堆積する堆積システム」を有する点において共通し、下記相違点1及び2において相違するといえる。
d 引用発明1における「真空チャンバ」は、「内部が実質的に真空」であるといえる。
また、引用発明1における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段」は、「真空チャンバ内でMEMS基板5をプラズマ洗浄するプラズマ洗浄システム」であるといえる。
さらに、引用発明1における「MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段」は、「ボンディングシステム」であるといえ、引用発明1における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段」、「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段」及び「MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段」を合わせたものは、「プラズマ/ボンディングシステム」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明1における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「内部が実質的に真空で、少なくとも前記第1基板がプラズマ洗浄される、真空チャンバを有するプラズマ/ボンディングシステム」を有する点において共通し、下記相違点1及び3において相違するといえる。
e 引用発明1における「MEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜」は「金属酸化物」であるといえ、引用発明1における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段」は、「はんだがMEMS基板5上に堆積された後に前記MEMS基板5をプラズマ洗浄して前記MEMS基板5から金属酸化物を除去」するものであるといえる。
また、引用発明1における「フッ素系不活性液体」は、「酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層」であるといえ、引用発明1における「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段」は、「プラズマ洗浄後に、MEMS基板5上に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を形成」するものであるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明1における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」が「はんだが前記第1基板上に堆積された後に前記第1基板をプラズマ洗浄して前記第1基板から金属酸化物を除去し、かつ、プラズマ洗浄後に、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記第1基板上に形成する、ように構成されるプラズマ洗浄システム」を有する点において共通し、下記相違点1及び4において相違するといえる。
f 引用発明1における「MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段」は、「前記キャップ層が形成された後にMEMS基板5を回路基板9へ結合させるように構成されるボンディングシステム」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明1における「第1ウエハ」とは「第1基板」である点において共通し、引用発明1における「回路基板9」と本願発明1における「第2ウエハ」とは「第2基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」が「前記キャップ層が堆積された後に前記第1基板を前記第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム」を有する点において共通し、下記相違点1及び5において相違するといえる。
g 上記ア(ア)aの引用文献1の記載(段落【0025】)より、引用発明1における「フッ素系不活性液体」は、「金属酸化物の再生成を少なくとも抑制する」ものであるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「前記キャップ層は、前記第1基板の表面に形成されることで、金属酸化物の再生成を少なくとも抑制する」点において共通するといえ、下記相違点4において相違するといえる。
h 以上から、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
(a)一致点
「複数の基板のうちの少なくとも第1基板の上にはんだを堆積する堆積システム;
内部が実質的に真空で、少なくとも前記第1基板がプラズマ洗浄される、真空チャンバを有するプラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは:
はんだが前記第1基板上に堆積された後に前記第1基板をプラズマ洗浄して前記第1基板から金属酸化物を除去し、かつ、プラズマ洗浄後に、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記第1基板上に形成する、ように構成されるプラズマ洗浄システム;及び、
前記キャップ層が形成された後に前記第1基板を第2基板へ結合させるように構成される、ボンディングシステム;
を有し、
前記キャップ層は、前記第1基板の表面に形成されることで、金属酸化物の再生成を少なくとも抑制する、
システム。」
(b)相違点
・相違点1 本願発明1では、「第1ウエハ」(第1基板)及び「第2ウエハ」(第2基板)がいずれも「ウエハ」であるのに対し、引用発明1では、「MEMS基板5」(第1基板)及び「回路基板9」(第2基板)が「ウエハ」であるとは特定しない点。
・相違点2 本願発明1では、「第1ウエハ」(第1基板)の「表面」にはんだを堆積するのに対し、引用発明1では、「MEMS基板5」(第1基板)の電極6上に半田バンプ7を形成しており、「MEMS基板5」(第1基板)の「表面」にはんだを堆積すると言い得るのか不明である点。
・相違点3 本願発明1では、「第1ウエハ」(第1基板)と「第2ウエハ」(第2基板)との結合が真空チャンバ内で行われるのに対し、引用発明1では、「MEMS基板5」(第1基板)と「回路基板9」(第2基板)との結合が真空チャンバ内で行われるとは特定しない点。
・相違点4 本願発明1では、「キャップ層」を「堆積」するのに対し、引用発明1では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)を「塗布」しており、「堆積」と言い得るのか不明である点。
・相違点5 本願発明1では、キャップ層が堆積された後、第1ウエハ(第1基板)が大気曝露される前に前記第1ウエハ(第1基板)を第2ウエハ(第2基板)へ結合させるのに対し、引用発明1では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)を塗布した後、「MEMS基板5」(第1基板)が大気曝露される前に「MEMS基板5」(第1基板)を「回路基板9」(第2基板)へ結合させるとは特定しない点。
(イ)本願発明4と引用発明との対比
a 本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明4」という。)と引用発明2とを対比する。
b 本願明細書の段落【0016】には「ある実施例では、システム10は、基板(たとえばウエハ)上に動作して良い。」と記載されており、本願発明4における「ウエハ」は、「基板」の一種と認められる。
したがって、引用発明2における「MEMS基板5」及び「回路基板9」と、本願発明4における「複数のウエハ」とは、「複数の基板」である点において共通し、下記相違点6において相違するといえる。
また、引用発明2における「MEMS基板5」と、本願発明4における「複数のウエハのうち少なくとも一つのウエハ」とは、「複数の基板のうち少なくとも一つの基板」である点において共通し、下記相違点6において相違するといえる。
c 引用発明2における「MEMS基板5の電極6上に半田バンプ7を形成する工程」は、MEMS基板5の上にはんだを堆積する工程であるといえる。
また、上記bのとおり、引用発明2における「MEMS基板5」と本願発明4における「複数のウエハのうち少なくとも一つのウエハ」とは、「複数の基板のうち少なくとも一つの基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明4と引用発明2とは、「複数の基板のうち少なくとも1つの基板の上にはんだを堆積する工程」を有する点において共通し、下記相違点6及び7において相違するといえる。
d 引用発明2における「真空チャンバ」は「チャンバ」であるといえる。
また、引用発明2における「真空チャンバ内にMEMS基板5及び回路基板9を配置する工程」は、「真空チャンバ内にMEMS基板5及び回路基板9を供する工程」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明2における「MEMS基板5」及び「回路基板9」と、本願発明4における「複数のウエハ」とは、「複数の基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明4と引用発明2とは、「チャンバ内に前記複数の基板を供する工程」を有する点において共通し、下記相違点6において相違するといえる。
e 引用発明2における「MEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜」は「金属酸化物」であるといえる。
また、引用発明2における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する工程」は、「真空チャンバ内でMEMS基板5をプラズマ洗浄することで、MEMS基板5から酸化膜を除去する工程」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明2における「MEMS基板5」と本願発明4における「複数のウエハのうち少なくとも一つのウエハ」とは、「少なくとも一つの基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明4と引用発明2とは、「前記チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄することで、前記少なくとも1つの基板から金属酸化物を除去する工程」を有する点において共通し、下記相違点6において相違するといえる。
f 引用発明2における「フッ素系不活性液体」は、「酸化に対する耐性を有する材料を含」む「キャップ層」であるといえ、引用発明2における「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する工程」は、「MEMS基板5上に酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を形成する工程」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明2における「MEMS基板5」と本願発明4における「複数のウエハのうち少なくとも一つのウエハ」とは、「少なくとも一つの基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明4と引用発明2とは、「前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後に、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に形成する工程」を有する点において共通し、下記相違点6、8及び9において相違するといえる。
g 引用発明2における「MEMS基板5と回路基板9とを接合する工程」は、「MEMS基板5と回路基板9とのボンディングを行う工程」であるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明2における「MEMS基板5」及び「回路基板9」と、本願発明4における「複数のウエハ」とは、「複数の基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明4と引用発明2とは、「前記複数の基板のボンディングを行う工程」を有する点において共通し、下記相違点6及び10において相違するといえる。
h 以上から、本願発明4と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
(a)一致点
「複数の基板のうち少なくとも1つの基板の上にはんだを堆積する工程;
チャンバ内に前記複数の基板を供する工程;
前記チャンバ内で前記少なくとも1つの基板をプラズマ洗浄することで、前記少なくとも1つの基板から金属酸化物を除去する工程;
前記はんだの堆積及びプラズマ洗浄後に、酸化に対する耐性を有する材料を含むキャップ層を前記少なくとも1つの基板上に形成する工程;及び、
前記複数の基板のボンディングを行う工程;
を有する方法。」
(b)相違点
・相違点6 本願発明4では、「複数のウエハ」(複数の基板)が「ウエハ」であるのに対し、引用発明2では、「MEMS基板5」及び「回路基板9」(複数の基板)が「ウエハ」であるとは特定しない点。
・相違点7 本願発明4では、「少なくとも1つのウエハ」(少なくとも1つの基板)の「表面」にはんだを堆積するのに対し、引用発明2では、「MEMS基板5」(少なくとも1つの基板)の電極6上に半田バンプ7を形成しており、「MEMS基板5」(少なくとも1つの基板)の「表面」にはんだを堆積すると言い得るのか不明である点。
・相違点8 本願発明4では、キャップ層の堆積を「チャンバ内」で行うのに対し、引用発明2では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)の塗布を「真空チャンバ」(チャンバ)内で行うとは特定しない点。
・相違点9 本願発明4では、「キャップ層」を「堆積」するのに対し、引用発明2では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)を「塗布」しており、「堆積」と言い得るのか不明である点。
・相違点10 本願発明4では、複数のウエハ(複数の基板)のボンディングをチャンバ内で行うのに対し、引用発明2では、「MEMS基板5」及び「回路基板9」(複数の基板)の接合を「真空チャンバ」(チャンバ)内で行うとは特定しない点。
(ウ)本願発明9と引用発明との対比
a 本願の請求項9に係る発明(以下「本願発明9」という。)と引用発明1とを対比する。
b 本願明細書の段落【0016】には「ある実施例では、システム10は、基板(たとえばウエハ)上に動作して良い。」と記載されており、本願発明9における「ウエハ」は、「基板」の一種と認められる。
したがって、引用発明1における「MEMS基板5」と、本願発明9における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通し、下記相違点11において相違するといえる。
また、引用発明1における「回路基板9」と、本願発明1における「第2ウエハ」とは、「第2基板」である点において共通し、下記相違点11において相違するといえる。
c 引用発明1における「MEMS基板5の電極6上に半田バンプ7を形成する手段」は、MEMS基板5の上にはんだを堆積する堆積システムであるといえる。
また、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と、本願発明9における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明9と引用発明1とは、「第1基板の上にはんだを堆積する堆積システム」を有する点において共通し、下記相違点11及び12において相違するといえる。
d 引用発明1における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段」、「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段」及び「MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段」を合わせたものは、「プラズマ/ボンディングシステム」であるといえる。
そうすると、本願発明9と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」を有する点において共通するといえる。
e 引用発明1における「真空チャンバ」は「チャンバ」であるといえる。
また、引用発明1における「MEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜」は「金属酸化物」であるといえる。
さらに、引用発明1における「前記真空チャンバ内でMEMS基板5の半田バンプ7の表面に発生している酸化膜をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する手段」は、「真空チャンバ内でMEMS基板5をプラズマ洗浄して、MEMS基板5からの酸化膜を除去」するものであるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明9における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明9と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」が「チャンバ内で、前記第1基板をプラズマ洗浄して、前記第1基板からの金属酸化物を除去」するように構成されている点において共通し、下記相違点11において相違するといえる。
f 引用発明1における「フッ素系不活性液体」は「キャップ層」であるといえる。
また、上記ア(ア)aの引用文献1の記載(段落【0025】)より、引用発明1における「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段」は、「はんだの再酸化を少なくとも抑制」するものであるといえる。
さらに、引用発明1における「MEMS基板5上の半田バンプ7の表面上に、フッ素系不活性液体を塗布する手段」は、「MEMS基板5上にキャップ層を形成する」ものであるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明9における「第1ウエハ」とは、「第1基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明9と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」が「前記第1基板の上にキャップ層を形成することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制」するように構成されている点において共通し、下記相違点11、13及び14において相違するといえる。
g 引用発明1における「MEMS基板5と回路基板9とを接合する手段」は、「MEMS基板5と回路基板9とをボンディングする」ものであるといえる。
そして、上記bのとおり、引用発明1における「MEMS基板5」と本願発明9における「第1ウエハ」とは「第1基板」である点において共通し、引用発明1における「回路基板9」と本願発明9における「第2ウエハ」とは「第2基板」である点において共通するといえる。
そうすると、本願発明9と引用発明1とは、「プラズマ/ボンディングシステム」が「第1基板と第2基板とをボンディングする」ように構成されている点において共通し、下記相違点11及び15において相違するといえる。
h 以上から、本願発明9と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
(a)一致点
「第1基板の上にはんだを堆積する堆積システム;及び、
プラズマ/ボンディングシステム;
を有するシステムであって、
前記プラズマ/ボンディングシステムは、
チャンバ内で、前記第1基板をプラズマ洗浄して、前記第1基板からの金属酸化物を除去し、
前記第1基板の表面にキャップ層を形成することで、前記はんだの再酸化を少なくとも抑制し、かつ、
前記第1基板と第2基板とをボンディングする、
ように構成されている、
システム。」
(b)相違点
・相違点11 本願発明9では、「第1ウエハ」(第1基板)及び「第2ウエハ」(第2基板)がいずれも「ウエハ」であるのに対し、引用発明1では、「MEMS基板5」(第1基板)及び「回路基板9」(第2基板)が「ウエハ」であるとは特定しない点。
・相違点12 本願発明9では、「第1ウエハ」(第1基板)の「表面」にはんだを堆積するのに対し、引用発明1では、「MEMS基板5」(第1基板)の電極6上に半田バンプ7を形成しており、「MEMS基板5」(第1基板)の「表面」にはんだを堆積すると言い得るのか不明である点。
・相違点13 本願発明9では、キャップ層の堆積を「チャンバ内」で行うのに対し、引用発明1では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)の塗布を「真空チャンバ」(チャンバ)内で行うとは特定しない点。
・相違点14 本願発明9では、「キャップ層」を「堆積」するのに対し、引用発明1では、「フッ素系不活性液体」(キャップ層)を「塗布」しており、「堆積」と言い得るのか不明である点。
・相違点15 本願発明9では、「第1ウエハ」(第1基板)と「第2ウエハ」(第2基板)のボンディングをチャンバ内で行うのに対し、引用発明2では、「MEMS基板5」(第1基板)と「回路基板9」(第2基板)の接合を「真空チャンバ」(チャンバ)内で行うとは特定しない点。
ウ 判断
(ア)本願発明1の新規性及び進歩性について
a 本願発明1の新規性について
本願発明1と引用発明1とは、上記イ(ア)h(b)の相違点1ないし5において相違する。したがって、本願発明1が引用発明1であるということはできない。
b 本願発明1の進歩性について
引用文献1及び2には、相違点1、3及び5に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、本願発明1は、相違点1、3及び5に係る構成を備えることにより、ウエハレベルプロセスにおいて、プラズマ洗浄、キャップ層の堆積及びウエハの接合を大気曝露することなく行うことができるという、引用文献1及び2に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものであるといえる。
したがって、相違点2及び4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本願の請求項2及び3に係る発明の新規性及び進歩性について
a 本願の請求項2及び3に係る発明の新規性について
本願の請求項2及び3は、請求項1を引用しており、本願の請求項2及び3に係る発明は本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、上記(ア)aのとおり、本願発明1が引用発明1と同一であるとはいえない以上、本願の請求項2及び3に係る発明は、引用発明1と同一であるとはいえない。
b 本願の請求項2及び3に係る発明の進歩性について
本願の請求項2及び3は、請求項1を引用しており、本願の請求項2及び3に係る発明は本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、上記(ア)bのとおり、本願発明1が引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2及び3に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本願発明4の新規性及び進歩性について
a 本願発明4の新規性について
本願発明4と引用発明2とは、上記イ(イ)h(b)の相違点6ないし10において相違する。したがって、本願発明4が引用発明2であるということはできない。
b 本願発明4の進歩性について
引用文献1及び2には、相違点6、8及び10に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、本願発明4は、相違点6、8及び10に係る構成を備えることにより、ウエハレベルプロセスにおいて、プラズマ洗浄、キャップ層の堆積及びウエハの接合を単一のチャンバ内で行うことができるという、引用文献1及び2に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものであるといえる。
したがって、相違点7及び9について検討するまでもなく、本願発明4は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)本願の請求項5ないし8に係る発明の新規性及び進歩性について
a 本願の請求項5ないし8に係る発明の新規性について
本願の請求項5ないし8は請求項4を引用しており、本願の5ないし8に係る発明は本願発明4の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、上記(ウ)aのとおり、本願発明4が引用発明2と同一であるとはいえない以上、本願の請求項5ないし8に係る発明は、引用発明2と同一であるとはいえない。
b 本願の請求項5ないし8に係る発明の進歩性について
本願の請求項5ないし8は請求項4を引用しており、本願の5ないし8に係る発明は本願発明4の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、上記(ウ)bのとおり、本願発明4が引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項5ないし8に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本願発明9の新規性及び進歩性について
a 本願発明9の新規性について
本願発明9と引用発明1とは、上記イ(ウ)h(b)の相違点11ないし15において相違する。したがって、本願発明9が引用発明1であるということはできない。
b 本願発明9の進歩性について
引用文献1及び2には、相違点11、13及び15に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、本願発明9は、相違点11、13及び15に係る構成を備えることにより、ウエハレベルプロセスにおいて、プラズマ洗浄、キャップ層の堆積及びウエハの接合を単一のチャンバ内で行うことができるという、引用文献1及び2に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものであるといえる。
したがって、相違点12及び14について検討するまでもなく、本願発明9は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由4(新規性)及び理由5(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、引用発明1又は2ではないから、当審拒絶理由の「4 理由4(新規性)について」に示した理由によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。
また、以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、当審拒絶理由の「5 理由5(進歩性)について」に示した理由によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。

3 当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由の「理由1」ないし「理由5」によっては、もはや、本願を拒絶することはできない。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 結言
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2011-238431(P2011-238431)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 65- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関根 崇粟野 正明  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 須藤 竜也
加藤 浩一
発明の名称 はんだ上での酸化物の生成を抑制する方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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