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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1327861
異議申立番号 異議2016-700689  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-05 
確定日 2017-04-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5856060号発明「ポリシロキサン組成物及びその硬化物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5856060号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第5856060号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5856060号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2011年8月16日(優先権主張 平成22年8月31日)を国際出願日とする特許出願(特願2012-531784号)であって、平成27年12月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人信越化学工業株式会社(以下、単に「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし15に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成28年10月28日付けで請求項1ないし15に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月16日付け(受理日:同年12月19日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成29年1月5日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知がされたところ、特許異議申立人から意見書が提出されなかったものである。



第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項(1)ないし(3)のとおりである。

訂正事項(1) 請求項1において、
「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン」とあるのを、
「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」と訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし15も同様に訂正する。)。

訂正事項(2) 明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0011】)において、
「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン」とあるのを、
「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」と訂正する。

訂正事項(3) 明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0031】)において、
「なお、(A)成分は、一価有機基として水酸基やメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素原子数1?12のアルコキシ基を有していてもよい。」とあるのを削除する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項毎に訂正の請求をする場合に、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行っているか否か、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 上記訂正事項(1)の訂正は、請求項1において、「(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」との特定を付加するもの、すなわち、いわゆる除くクレームとすることで、分子中に加水分解性シリル基を有するものを除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 上記訂正事項(2)及び(3)の訂正は、訂正事項(1)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項(2)及び(3)は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、全ての請求項について行われているので、当該明細書の訂正に係る全ての請求項について行われている。

エ そして、これら訂正は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の明細書の発明の詳細な説明の段落【0011】及び【0031】、並びに、訂正後の請求項1ないし15について訂正を認める。



第3 本件発明について

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」?「本件特許発明15」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化反応触媒、及び、
(D)長短径比が1?1.5であり、且つ、全粒子中における粒子径50μm以上の粒子の割合が5重量%以下である無機粒子
を含むポリシロキサン組成物であり、
(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率が0.5?10重量%であり、
ポリシロキサン組成物に対する(D)無機粒子の配合比率が55?85体積%であり、
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8であり、
25℃における粘度が500Pa・s以下であるポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(A)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.05?20Pa・sである、請求項1記載のポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率が0.1重量%以上である、請求項1又は2記載のポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が0.1Pa・s以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項5】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.1?7である、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項6】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.5?4.5である請求項1乃至5のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項7】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数]/[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル数]の値が0.5?1.5である、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項8】
前記(C)ヒドロシリル化反応触媒が白金族金属系触媒である、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項9】
前記(D)無機粒子が少なくとも1種の金属酸化物粒子を含む、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子がシリカである、請求項9記載のポリシロキサン組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の(E)接着付与剤を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項12】
溶剤を含まない、請求項1乃至11のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項13】
30℃?300℃の線膨張係数が100×10^(-6)/K以下である硬化物を与える、請求項1乃至12のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項14】
30℃?300℃の線膨張係数が50×10^(-6)/K以下である硬化物を与える、請求項13記載のポリシロキサン組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載のポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物。」



第4 取消理由の概要

当審において平成28年10月28日付けで通知した取消理由の概要は、請求項1ないし9及び11ないし15に係る発明は、本件特許の優先日前の平成17年11月24日に頒布された特開2005-325212号公報(特許異議申立人による特許異議の申立てにおける甲第1号証。以下、「甲1文献」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は取り消すべきものであり(以下、「取消理由1」という。)、請求項10に係る発明は、甲1文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許は取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)、というものである。



第5 当審の判断

1.取消理由1の検討
(1)本件特許発明1に係る特許についての検討
ア 甲1文献に記載された発明
甲1文献の実施例1の記載から、甲1文献には、以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
「(A)成分
成分a-1:

100質量部
(B)成分
成分b-1:25℃の粘度が5mPa・sの(CH_(3))_(3)SiO[SiH(CH_(3))O]_(8)Si(CH_(3))_(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.01451mol/g) 2.0質量部
成分b-2:塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%) 0.2質量部
(C)成分
成分c-1:平均粒径10μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-41R、商品名、(株)アドマテックス製) 1600質量部
成分c-2:平均粒径0.7μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-502、商品名、(株)アドマテックス製) 400質量部
(F)成分
成分f-1:トリアリルイソシアヌレート 1質量部
成分f-2:エチニルシクロヘキサノール/50%トルエン溶液 0.3質量部
を配合してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物。」
また、甲1文献の実施例2の記載から、甲1文献には、以下の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
「(A)成分
成分a-2:

100質量部
(B)成分
成分b-1:25℃の粘度が5mPa・sの(CH_(3))_(3)SiO[SiH(CH_(3))O]_(8)Si(CH_(3))_(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.01451mol/g) 2.0質量部
成分b-2:塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%) 0.2質量部
(C)成分
成分c-1:平均粒径10μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-41R、商品名、(株)アドマテックス製) 1600質量部
成分c-2:平均粒径0.7μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-502、商品名、(株)アドマテックス製) 400質量部
(F)成分
成分f-1:トリアリルイソシアヌレート 1質量部
成分f-2:エチニルシクロヘキサノール/50%トルエン溶液 0.3質量部
を配合してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物。」

イ 本件特許発明1と甲1発明1との対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「成分a-1」は本件特許発明1における「(A)成分」に、「成分b-1」は「(B)成分」に、「成分b-2」は「(C)成分」に、「成分c-1」及び「成分c-2」は「成分(D)」に、各々対応するといえる。
そこで、甲1発明1における「成分a-1」と本件特許発明1における「(A)成分」とを対比すると、甲1発明1における「成分a-1」は、

との構造を有するものであり、当該構造式の右端には加水分解性シリル基としてのトリメトキシシリル基を有するものであるところ、本件訂正請求により、請求項1において、「但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない」との事項を本件特許発明1における発明特定事項とする訂正がなされたことにより、本件特許発明1における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明1における「成分a-1」と重複するところはなく、両者は相違する。
そうすると、他の点について検討するまでもなく、本件特許発明1と甲1発明1とは相違する。

ウ 本件特許発明1と甲1発明2との対比
本件特許発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「成分a-2」は本件特許発明1における「(A)成分」に、「成分b-1」は「(B)成分」に、「成分b-2」は「(C)成分」に、「成分c-1」及び「成分c-2」は「成分(D)」に、各々対応するといえる。
そこで、甲1発明2における「成分a-2」と本件特許発明1における「(A)成分」とを対比すると、甲1発明2における「成分a-2」は、

との構造を有するものであり、当該構造式の右端には加水分解性シリル基としてのトリメトキシシリル基を有するものであるところ、本件訂正請求により、請求項1において、「但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない」との事項を本件特許発明1における発明特定事項とする訂正がなされたことにより、本件特許発明1における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明2における「成分a-2」と重複するところはなく、両者は相違する。
そうすると、他の点について検討するまでもなく、本件特許発明1と甲1発明2とは相違する。

エ 本件特許発明1についての小括
したがって、本件特許発明1は、甲1文献に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件特許発明2ないし15に係る特許についての検討
本件特許発明2ないし15は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、上記(1)にて示した判断と同様の理由により、甲1文献に記載された発明であるとはいえない。

2.取消理由2の検討
(1)本件特許発明10に係る特許についての検討
ア 本件特許発明10と甲1発明1との対比
本件特許発明10は、第3のとおり、金属酸化物粒子がシリカであることを特定するものである。
そこで、本件特許発明10と甲1発明1とを対比すると、1.(1)イで述べたとおり、本件特許発明10における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明1における「成分a-1」と重複するところはなく、成分(A)が「分子中に加水分解性シリル基を有」するか否かの点で両者は相違する。
この相違点について検討すると、甲1文献においては、「(A)一分子中に(i)2個以上のケイ素原子結合アルケニル基と(ii)1個以上の加水分解性シリル基とを有するオルガノポリシロキサン」(特許請求の範囲請求項1)、「(A)成分の一分子中に(i)2個以上、好ましくは2?20個、より好ましくは2?10個のケイ素原子結合アルケニル基と(ii)1個以上、好ましくは1?10個、より好ましくは1?6個の加水分解性シリル基とを有するオルガノポリシロキサンは、本組成物の主剤(ベースポリマー)となるものであり、(C)成分の熱伝導性充填剤を多量に配合しても取扱性及び成形性がよく、かつ良好なゴム物性と接着性とを有する硬化物となり得るという本組成物の特徴を付与する成分である。(A)成分の構造としては、下記一般式(I)で表される構造であることが好ましい。

」(段落【0014】)及び「本発明においては、組成物の粘度及び可塑度を低下させる効果を更に向上させるため、下記一般式(II)で表される片末端又は両末端3官能の加水分解性シリル基含有オルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。

」(段落【0019】)と記載されていることから、甲1発明1における「成分a-1」において、(A)成分の構造中に加水分解性シリル基を有することは甲1文献における特徴を付与する部分であると認められることから、当該成分a-1に代えて、加水分解性シリル基を有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分として使用することの動機付けは存在しないといわざるを得ない。
そうすると、この相違点は、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明10と甲1発明2との対比
本件特許発明10と甲1発明2とを対比すると、1.(1)ウで述べたとおり、本件特許発明10における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明2における「成分a-2」と重複するところはなく、成分(A)が「分子中に加水分解性シリル基を有」するか否かの点で両者は相違する。
この相違点について検討すると、アで述べたとおり、甲1発明2における「成分a-2」において、(A)成分の構造中に加水分解性シリル基を有することは甲1文献における特徴を付与する部分であると認められることから、当該成分a-2に代えて、加水分解性シリル基を有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分として使用することの動機付けは存在しないといわざるを得ない。
そうすると、この相違点は、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明10についての小括
したがって、本件特許発明10は、甲1文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。



第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件特許発明1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリシロキサン組成物及びその硬化物
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年8月31日に日本国に出願された特願2010-194013号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
本発明は、耐熱性及び成形加工性に優れるポリシロキサン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリシロキサン系材料の耐熱性を改良するためにシリカ、アルミナ、マイカ、タルク等の無機粒子を当該材料に充填する技術が広く行われているが、無機粒子の充填量の増大と共に耐熱性は良好になる一方で当該材料の加工性又は流動性は悪化する。そこで、耐熱性及び加工性という相反する特性を両立させるため、例えば、特開2003-137627号公報、特表2005-503467号公報には、充填する無機材料の形状及び大きさを制御し、球状の粒子を配合することが開示されている。また、例えば、特開2007-332104号公報、2008-19426号公報、2008-38137号公報には、無機粒子の表面を適切な材料で処理し、ポリシロキサンに高濃度で分散させる手法が、開示されている。しかし、これらの技術により得られた材料は硬質ではなく、また、熱膨張が大きいため高温での使用に適さない。
【0004】
ところで、SiC、GaN等のパワー半導体の広範囲な実用化の時期が近づいている。この実用化の鍵となるのが高耐熱性の封止材料であるが、これには200℃以上での連続使用にも耐え、熱履歴による基板からの剥離を起こさない、線膨張係数に代表される熱膨張の小さい材料が望まれている。
【0005】
低熱膨張性のポリシロキサン系材料として、例えば、特表2006-503142号公報には硬化可能な新規シリコーン樹脂が開示されている。このシリコーン樹脂の硬化物は、通常のシリコーン樹脂の硬化物に比べると低熱膨張性であるが、室温から100℃までの温度域での線膨張係数が約100ppmの値となっており、熱膨張が未だ大きい。しかも、特表2006-503142号公報には、200℃前後までの線膨張係数が記載されているに過ぎない。
【0006】
250℃以上の高温域に渡って低熱膨張性を維持するためには、無機粒子の充填が重要である。特開平5-105814号公報には球状の無機粒子を硬化性ポリシロキサンに配合した組成物が開示されているが、硬化後はゲル状であるため、耐熱性は不十分であり、線膨張係数も大きい。また、再公表2003-29353号公報にはエポキシ基含有ポリシロキサンと球状の無機粒子からなる低熱膨張性材料が開示されているが、この材料は溶剤を使用して流動性を確保する組成物であるため、封止材料としては適さない。
【0007】
また、トランスファー成形が可能な固体エポキシ樹脂は広く知られているが(例えば、特開平8-311159号公報参照)、粘度の高い流動物を型内に高圧で注入することから緻密な形状の成形や電子部品の封止には不向きである上、ガラス転移温度が低いものが多く、その温度以上での線膨張係数は十分小さいとはいえない。
【0008】
このように、現在のところ、加工性が良好で、且つ、硬化後に線膨張係数の非常に小さい硬質材料を与えるポリシロキサン組成物、及び、その低熱膨張性硬化物は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-137627号公報
【特許文献2】特表2005-503467号公報
【特許文献3】特開2007-332104号公報
【特許文献4】特開2008-19426号公報
【特許文献5】特開2008-38137号公報
【特許文献6】特表2006-503142号公報
【特許文献7】特開平5-105814号公報
【特許文献8】再公表2003-29353号公報
【特許文献9】特開平8-311159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、加工性が良好で、且つ、硬化後に熱膨張率の非常に小さく、硬質の硬化物を与えるポリシロキサン組成物、及び、その硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、
(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化反応触媒、及び、
(D)長短径比が1?1.5であり、且つ、全粒子中における粒子径50um以上の粒子の割合が5重量%以下である無機粒子
を含むポリシロキサン組成物であり、
(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率が0.5?10重量%であり、
ポリシロキサン組成物に対する(D)無機粒子の配合比率が55?85体積%であり、
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8であり、
25℃における粘度が500Pa・s以下であるポリシロキサン組成物によって達成される。
【0012】
前記(A)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は0.05?20Pa・sであることが好ましい。
【0013】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率は0.1重量%以上であることが好ましい。
【0014】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は0.1Pa・s以下であることが好ましい。
【0015】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値は0.1?7が好ましい。
【0016】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値は0.5?4.5であることがより好ましい。
【0017】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数]/[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル数]の値は0.5?1.5であることが好ましい。
【0018】
前記(C)ヒドロシリル化反応触媒は白金族金属系触媒であることが好ましい。
【0019】
前記(D)無機粒子は少なくとも1種の金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0020】
前記金属酸化物粒子はシリカであることが好ましい。
【0021】
本発明のポリシロキサン組成物は更に少なくとも1種の(E)接着付与剤を含むことが好ましい。
【0022】
本発明のポリシロキサン組成物は溶剤を含まないことが好ましい。
【0023】
本発明のポリシロキサン組成物は、30℃?300℃の線膨張係数が80×10^(-6)/K以下、好ましくは50×10^(-6)/K以下、である硬化物を与えることができる。
【0024】
本発明は、上記ポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物にも関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポリシロキサン組成物は、比較的多量の無機粒子を含むにも係わらず、低粘度のため加工性が良好で、且つ、硬化後に熱膨張率が非常に小さい硬質の硬化物を与えることができる。
【0026】
特に、本発明のポリシロキサン組成物が溶剤を含まない場合は、溶剤による基板、電子材料等の変質の恐れがなく、また、硬化物中に溶剤に起因するボイド、溶剤の揮発による硬化物のクラックが発生することがない。したがって、半導体等の封止材料として好適に使用することができる。
【0027】
そして、本発明の硬化物は、30℃?300℃の線膨張係数が100×10^(-6)/K以下、好ましくは70×10^(-6)/K以下、より好ましくは50×10^(-6)/K以下であり、膨張率が非常に小さく、しかも、十分な硬度を保持することができる。したがって、本発明の硬化物は200℃を超えるような環境下でも長時間連続して使用することができ、例えば基板から剥離することがないので、特にパワー半導体の封止に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[(A)成分]
(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンとしては、一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭化水素基を有する限り構造上の制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は網状のオルガノポリシロキサンを使用することができる。オルガノポリシロキサン上の脂肪族不飽和炭化水素基の位置についても制限はなく、主鎖上、又は、末端のいずれに位置してもかまわない。(A)成分は単独で使用することもできるし、構造の異なる二種以上のオルガノポリシロキサンを併用することも可能である。
【0029】
(A)成分中の不飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数2?20のものが好ましい。炭素原子数2?20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐状のアルケニル基、並びに、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、更には、シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基が挙げられる。アルケニル基が好ましく、ビニル基及びヘキセニル基が特に好ましい。
【0030】
(A)成分の不飽和脂肪族炭化水素基以外のケイ素原子に結合する基は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は、反応性官能基を有する一価有機基である。
【0031】
置換若しくは非置換の一価炭化水素基は、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素原子数1?20、好ましくは炭素原子数1?10、より好ましくは炭素原子数1?4の一価の飽和炭化水素基、炭素原子数6?20、より好ましくは炭素原子数6?12の一価の芳香族炭化水素基である。
【0032】
炭素原子数1?20の一価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基、並びに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0033】
炭素原子数6?20の一価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等のアリール基が挙げられる。フェニル基が好ましい。なお、本明細書において芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素のみからなる基以外に、芳香族炭化水素と脂肪族飽和炭化水素が複合した基をも含む。芳香族炭化水素と飽和炭化水素が複合した基の例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0034】
上記の一価炭化水素基上の水素原子は、1以上の置換基によって置換されていてもよく、当該置換基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、水酸基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、及び、イソシアネート基からなる群から選択される。上記置換基を少なくとも1つ有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、3,3,3-トリフロロプロピル基、3?クロロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3-カルボキシプロピル基、10-カルボキシデシル基、3-イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
【0035】
反応性官能基を有する一価有機基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、及び、イソシアネート基からなる群から選択される反応性官能基を有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基が挙げられる。一価有機基に存在する反応性官能基は1つであっても、複数であってもよい。好ましいR^(1)は、上記の反応性官能性基を少なくとも1つ有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基である。反応性官能基としては、具体的には、3-ヒドロキシプロピル基、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3-メルカプトプロピル基、2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N-ブチルアミノプロピル基、N,N-ジブチルアミノプロピル基、3-(2-アミノエトキシ)プロピル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基、3-カルボキシプロピル基、10-カルボキシデシル基、3-イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
【0036】
(A)成分としては、直鎖状又は分岐状のポリシロキサンが好ましいが、環状のメチルビニルポリシロキサンを少量含んでもよい。直鎖状の(A)成分としては、ジオルガノシロキサン単位およびトリオルガノシロキシ単位を含む重合体であることが好ましく、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルポリシロキサン、これらの重合体のメチル基の一部がエチル基、プロピル基等のメチル基以外のアルキル基や3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換された重合体、および、これらの重合体の2種以上の混合物が例示され、特に、分子鎖両末端のみに不飽和脂肪族炭化水素基、特にアルケニル基を有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0037】
分枝鎖状の(A)成分としては、特に、ジオルガノシロキサン単位、オルガノシルセスキオキサン単位、およびトリオルガノシロキシ単位を含む重合体であることが好ましい。これらの単位中のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の一価炭化水素基が好ましく、少量の水酸基、さらにはメトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよいが、この重合体中の少なくとも2個のケイ素原子結合有機基は不飽和脂肪族炭化水素基、特にアルケニル基であることが必要である。また、これらの単位の比率は限定されないが、この重合体において、ジオルガノシロキサン単位が80.00?99.65モル%の範囲内の量であり、オルガノシルセスキオキサン単位が0.10?10.00モル%の範囲内の量であり、および残りのモル%がトリオルガノシロキシ単位であることが好ましい。
【0038】
次に、(A)成分の粘度について説明する。(A)成分として二種以上のオルガノポリシロキサンを併用する場合は、成分(A)の粘度とは、その混合物の粘度を指す。粘度は、通常用いられる方法、例えば、レオメーター、回転粘度計等を用いて測定されるが、JIS K7117-2に記載された方法で、せん断速度10s^(-1)における粘度を用いることが推奨される。その値は、ポリシロキサン組成物の加工性及び機械強度を良好に保つために25℃で0.05Pa・s以上20Pa・s以下であることが好ましい。0.05Pa・s未満では、ポリシロキサン組成物の力学強度が不十分となり、20Pa・sを超えると、ポリシロキサン組成物の加工性が低下する恐れがある。好ましい粘度範囲は、25℃で0.1Pa・s以上10Pa・s以下である。
【0039】
次に、(A)成分の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率について説明する。(A)成分として二種以上のオルガノポリシロキサンを併用する場合は、成分(A)の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率とは、その混合物の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率を指す。前記重量分率は(A)成分の不飽和脂肪族炭化水素基の含有量を表し、その値は0.5重量%以上10重量%以下である。この範囲を外れる場合は、ポリシロキサン組成物の硬化物の線膨張係数を所望の値に制御することが困難となり、また、硬化物が脆弱となるおそれがある。好ましい範囲は、0.8重量%以上10重量%以下であり、より好ましい範囲は1重量%以上7重量%以下である。
【0040】
本発明の組成物における(A)成分の配合量は、後述する(B)成分に関して、[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8となる限り、特に限定されるものではないが、例えば、当該組成物の1?20質量(重量)%、或いは、5?10質量(重量)%を占めることができる。
【0041】
[(B)成分]
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する限り構造上の制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は網状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサン上のケイ素原子結合水素原子の位置についても制限はなく、主鎖上、又は、末端のいずれに位置しても問題はない。(B)成分は単独で使用することもできるし、構造の異なる二種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することも可能である。
【0042】
例えば(B)成分としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位とからなる共重合体、(CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位と(C_(6)H_(5))SiO_(3/2)単位とからなる共重合体が例示される。
【0043】
次に、(B)成分の粘度について説明する。(B)成分として二種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用する場合は、成分(B)の粘度とは、その混合物の粘度を指す。粘度は、通常用いられる方法、例えば、レオメーター、回転粘度計等を用いて測定されるが、JIS K7117-2に記載された方法で、せん断速度10s^(-1)における粘度を用いることが推奨される。(B)成分の粘度は、ポリシロキサン組成物の加工性及び機械強度を良好に保つために25℃で0.1Pa・s以下であることが好ましい。25℃で0.1Pa・sを超えると、ポリシロキサン組成物の加工性が低下する恐れがある。好ましい範囲は、25℃で0.05Pa・s以下である。
【0044】
次に、(B)成分のケイ素原子結合水素原子の重量分率について説明する。(B)成分として二種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用する場合は、成分(B)のケイ素原子結合水素原子の重量分率とは、その混合物のケイ素原子結合水素原子の重量分率を指す。前記重量分率は(B)成分のケイ素原子結合水素原子の含有量を表し、その値は、0.1重量%以上が好ましい。この範囲を外れる場合は、ポリシロキサン組成物の硬化物の線膨張係数を所望の値に制御することが困難となる恐れがある。好ましい範囲は、0.15重量%以上であり、より好ましい範囲は0.2重量%以上である。
【0045】
本発明のポリシロキサン組成物においては、[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8である。この値が0.04未満であると、ポリシロキサン組成物の硬化物の線膨張係数が十分低くならず、8を超える場合は、ポリシロキサン硬化物が非常に脆弱になるため不適である。この値の好ましい範囲は、0.1以上7以下、より好ましい範囲は0.5以上4.5以下であり、さらに好ましい範囲は1以上4.5以下である。
【0046】
本発明のポリシロキサン組成物における[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数]/[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル数]の値は0.5?1.5であることが好ましい。この範囲を外れる場合には、硬化が不十分になり、残存反応性基の分解による保存安定性低下が生じる恐れがある。より好ましい範囲は、0.5以上1.4以下であり、更により好ましい範囲は0.7以上1.3以下である。
【0047】
本発明の組成物における(B)成分の配合量は、(A)成分に関して、[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8となる限り、特に限定されるものではないが、例えば、当該組成物の1?10質量(重量)%、或いは、2?5質量(重量)%を占めることができる。
【0048】
[(C)成分]
(C)成分はヒドロシリル化反応触媒であり、(A)成分の不飽和脂肪族炭化水素基と(B)成分のケイ素原子結合水素原子の付加反応を促進し本発明のポリシロキサン組成物を硬化させるための触媒である。(C)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、白金系触媒、パラジウム系触媒等の白金族金属系触媒が好ましく、白金系触媒がより好ましい。
【0049】
(C)成分の配合量は触媒量であり、(C)成分として白金系触媒を用いた場合には、本発明のポリシロキサン組成物中に、この触媒の白金金属が重量単位で0.01?1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1?500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0050】
[(D)成分]
(D)成分は、長短径比が1以上1.5以下である無機粒子である。ここで、長短径比は、走査型電子顕微鏡等顕微鏡法で測定した粒子の[長径]/[短径]の比率である。この比率が1.5を超える場合、得られるポリシロキサン組成物の加工性が著しく低下するため、不適である。長短径比は1.2以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、1.0が更により好ましい。したがって、球状無機粒子が好適である。また、(D)成分の全粒子中における粒子径50um以上の粒子の割合は5重量%以下である必要がある。ここで、粒子径とは、レーザー散乱・回折式粒度分布測定装置等で測定された粒子の長径をさす。この割合が5重量%を超えると、組成物の均一性が失われやすくなるため不適である。
【0051】
本発明のポリシロキサン組成物の全量に対する(D)成分の配合比率は55?85体積%であり、60?85体積%がより好ましい。55体積%未満では、硬化後の低熱膨張性と硬化前の良好な加工性の両者を同時に満足させることはできないため不適である。線膨張係数を60ppm/K以下にする場合は、(D)成分の配合量は、70?85体積%であることが好ましく、より好ましい範囲は75?82体積%である。重量百分率では、(D)成分の配合量は60?95重量%が好ましく、75?90重量%がより好ましい。
【0052】
(D)成分は単一の無機粒子でもよく、また、2種類以上の無機粒子の混合物でもよい。無機粒子の材質は無機物質である限り特に限定されないが、金属酸化物が好ましい。したがって、(D)成分の無機粒子は少なくとも1種の金属酸化物粒子を含むことが好ましい。金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、タルク、ガラス、酸化亜鉛等が挙げられるが、耐熱性、加工性及び経済的観点からは、シリカが好ましい。特に、(D)成分中の90重量%以上がシリカであることが好ましい。
【0053】
[任意成分]
本発明のポリシロキサン組成物には、上述した(A)?(D)成分以外にも、必要に応じて公知の各種添加剤を配合することができる。例えば、接着性を付与するため、(E)接着付与剤を配合することができる。接着付与剤としては、一分子中にケイ素原子結合水素原子、ケイ素原子結合アルケニル基(一例としてビニル基)、ケイ素原子結合アルコキシ基、ケイ素原子結合エポキシ基含有有機基、ケイ素原子結合アクリル基含有有機基から選ばれる反応性基を少なくとも2種含有する直鎖状又は環状のポリシロキサン類であることが好ましい。具体的には、接着付与剤として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基含有オルガノアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有オルガノアルコキシシラン等のシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランと分子鎖末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンの縮合反応生成物、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランと分子鎖末端シラノール基封鎖メチルビニルポリシロキサンの縮合反応生成物、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランと分子鎖末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体の縮合反応生成物が挙げられる。接着付与剤の配合量については特に制限は無いが、接着付与剤の効果を十分に発揮させるためにはポリシロキサン組成物の全量に対し0.2?3重量%の範囲が好ましい。この範囲を外れると、硬化後に得られる接着性が不十分であったり、低熱膨張性が損なわれたりする恐れがある。
【0054】
本発明のポリシロキサン組成物には、貯蔵安定性および取扱作業性を向上させるための反応抑制剤を含有してもよい。反応抑制剤としては、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールが挙げられる。反応抑制剤の配合量は限定されないが、本発明のポリシロキサン組成物の全量に対して0.0001?5重量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明のポリシロキサン組成物は溶剤を含まないことが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、ブチロニトリル等のニトリル系溶剤等が挙げられる。本発明のポリシロキサン組成物が溶剤を含まない場合は、硬化物の乾燥が不要なため加工時間を短縮することができる。特に、溶剤を含まない本発明のポリシロキサン組成物を半導体等の封止材料として使用する場合は、溶剤による基板、電子材料等の変質の恐れがなく、また、硬化物中に溶剤に起因するボイド、溶剤の揮発による硬化物のクラックが発生することがない。
【0056】
本発明のポリシロキサン組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合することによって製造することができる。成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を混合する手法について制限は無く、リボンブレンダー、自転・公転ミキサー、粉砕・混合機等の公知の混合手法を採用することができる。混合する順序についても制限は無く、上記成分を一括混合することも可能であるし、二種若しくは三種の成分をあらかじめ混合し、その後残りの成分を混合することも可能である。また、混合の際の温度についても特に制限は無く、室温から200℃の間で適宜選択される。例えば、成分(A)と(D)、又は成分(B)と(D)をあらかじめ50から150℃程度で加温しながら混合し、続いて残りの成分を混合することにより、より良好な混合が達成される場合がある。
【0057】
本発明のポリシロキサン組成物は25℃で500Pa・s以下、好ましくは0.05?400Pa・s、より好ましくは0.1?300Pa・s、更により好ましくは1?200Pa・sの粘度を有する。粘度は、通常用いられる方法、例えば、レオメーター、回転粘度計等を用いて測定されるが、JIS K7117-2に記載された方法で、せん断速度10s^(-1)における粘度を用いることが推奨される。粘度が500Pa・sを超えると、取扱い性、及び、加工性が低下する。
【0058】
本発明のポリシロキサン組成物は、室温又は加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、300℃以下が好ましく、50?200℃の範囲内であることが好ましい。
【0059】
本発明のポリシロキサン組成物の硬化物は、30℃?300℃の線膨張係数が100×10^(-6)/K以下であることが好ましく、80×10^(-6)/K以下であることがより好ましく、70×10^(-6)/K以下であることがさらに好ましく、50×10^(-6)/K以下であることがさらに好ましい。ここで、線膨張係数は、JIS K7197に準拠する方法によって測定される。したがって、本発明の硬化物は熱膨張率が非常に小さい。
【0060】
また、本発明のポリシロキサン組成物の硬化物は、ASTM D2240に準拠する方法に基づき、アスカー硬度計タイプDにより測定した場合に、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更により好ましくは40以上、特に好ましくは50以上の硬度を有する。したがって、本発明の硬化物は十分な硬度を有する。
【0061】
そして、本発明のポリシロキサン組成物の硬化物は、各種の基板に対して良好な接着性をも備える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のポリシロキサン組成物は、低粘度のため加工性が良好で、且つ、硬化後に熱膨張率が非常に小さい、硬質の硬化物を与えることができる。したがって、本発明の硬化物は200℃を超えるような環境下でも長時間連続して使用することができ、例えば基板から剥離することがないので、各種の光学・電気・電子部品用の接着剤・封止剤として有用であり、半導体の封止、特にパワー半導体の封止に好適である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1?8及び比較例1?5において使用したポリシロキサン成分、並びに、それらのビニル基及び水素原子の含有量、及び、粘度は表1及び表2に記載のとおりである。但し、実施例1?8及び比較例1?5のポリシロキサン組成物には、ヒドロシリル化反応触媒として、塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のポリシロキサン溶液(白金含有量0.2重量%)を、ポリシロキサン組成物中の白金含有量が10?15ppmになるように配合した。
【0065】
ポリシロキサンA1としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンを使用した。
【0066】
ポリシロキサンA2としては、分子鎖両末端ジメチルシラノール基封鎖メチルビニルシロサン・ジメチルシロキサン共重合体を使用した。
【0067】
ポリシロキサンBとしては、分子鎖両末端トリメチルシリル基封鎖メチルハイドロジェンシロサン・ジメチルシロキサン共重合体を使用した。
【0068】
接着付与剤Eとしては、分子鎖両末端グリシドキシプロピルジメトキシシリル基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体を使用した。
【0069】
金属酸化物粒子Dとしては、下記の粒子を使用した。
微粒子D1:株式会社龍森製MSS-7LV(シリカ)
平均粒子径:9μm; 長短比:1.05; 粒子径50um以上の粒子は含まない
微粒子D2:株式会社アドマテックス製FEB24D 1(G)(シリカ)
平均粒子径:11μm; 長短比:1.05; 粒子径50um以上の粒子は含まない
微粒子D3:電気化学工業株式会社製DAW-07(アルミナ)
平均粒子径:9μm; 長短比:1.1; 粒子径50um以上の粒子を4重量%含む
微粒子D4:US Silica製MIN-U-SIL 10(シリカ)
平均粒子径:10μm; 長短比:3.0(非球形); 粒子径50um以上の粒子は含まない
【0070】
ポリシロキサン組成物の粘度は、JIS K7117-2に準拠し、ティー・エイ・インスツルメント製AR2000EXにてせん断速度10s^(-1)における25℃の値を測定した。
【0071】
ポリシロキサン硬化物の線膨張係数は、JIS K7197に準拠し、30℃から300℃での値をアルバック理工製TM9200にて測定した。
【0072】
ポリシロキサン硬化物の硬度は、ASTM D2240に準拠し、アスカー硬度計タイプDにより測定した。
【0073】
ポリシロキサン硬化物の接着性は、面積50mm^(2)の円形被着部位で硬化した硬化物の放熱基板としてのアルミナに対する接着強度を西進商事製ボンドテスターModel SS-100KPにより測定した。
【0074】
[実施例1?8]
ポリシロキサンAと金属酸化物粒子Dを自転・公転ミキサーで混合後、150℃で30分間加熱した。得られた混合物と残りの成分をよく混合し、実施例1?8のポリシロキサン組成物を調製した。この組成物中における[ポリシロキサンB中の水素原子のモル数]/[ポリシロキサンA中のアルケニル基のモル数]の値は1.3とした。表1に示すように、実施例1?8の組成物の粘度はいずれも200Pa・s以下であり、良好な流動性を有することが確認された。また、実施例1?8の組成物を200℃で90分間加熱し、硬化させたところ、白色硬質固体となった。そして、実施例1?8の硬化物の線膨張係数を測定したところ、表1に示すように、線膨張係数はいずれも80×10^(-6)K^(-1)以下であり、低熱膨張性であることが示された。更に、実施例1?8の硬化物の硬度を測定したところ、硬度はいずれも20以上であり、良好な硬度を示した。
【0075】
[比較例1?5]
実施例1?8と同様にしてポリシロキサン組成物を調製した。[ポリシロキサン中のアルケニル基重量分率]×[水素原子重量分率]の値が0.04未満のもの(比較例1)及び8を超えるもの(比較例2)、金属酸化物粒子Dの含有量が少ないもの(比較例3)、非球形の金属酸化物粒子Dを使用したもの(比較例4)、並びに、ケイ素原子結合不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合アルケニル基の含有量が0.5重量%未満のもの(比較例5)は、線膨張係数又は粘度が高すぎて耐熱性又は作業性が乏しいものであり、或いは、硬化物が脆弱で試験片が作製できなかった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化反応触媒、及び、
(D)長短径比が1?1.5であり、且つ、全粒子中における粒子径50μm以上の粒子の割合が5重量%以下である無機粒子
を含むポリシロキサン組成物であり、
(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率が0.5?10重量%であり、
ポリシロキサン組成物に対する(D)無機粒子の配合比率が55?85体積%であり、
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04?8であり、
25℃における粘度が500Pa・s以下であるポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(A)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.05?20Pa・sである、請求項1記載のポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率が0.1重量%以上である、請求項1又は2記載のポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が0.1Pa・s以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項5】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.1?7である、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項6】
[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.5?4.5である請求項1乃至5のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項7】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数]/[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル数]の値が0.5?1.5である、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項8】
前記(C)ヒドロシリル化反応触媒が白金族金属系触媒である、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項9】
前記(D)無機粒子が少なくとも1種の金属酸化物粒子を含む、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子がシリカである、請求項9記載のポリシロキサン組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の(E)接着付与剤を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項12】
溶剤を含まない、請求項1乃至11のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項13】
30℃?300℃の線膨張係数が100×10^(-6)/K以下である硬化物を与える、請求項1乃至12のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項14】
30℃?300℃の線膨張係数が50×10^(-6)/K以下である硬化物を与える、請求項13記載のポリシロキサン組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載のポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-23 
出願番号 特願2012-531784(P2012-531784)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山村 周平  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 小野寺 務
守安 智
登録日 2015-12-18 
登録番号 特許第5856060号(P5856060)
権利者 東レ・ダウコーニング株式会社
発明の名称 ポリシロキサン組成物及びその硬化物  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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