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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H04N
管理番号 1327862
異議申立番号 異議2016-700613  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-13 
確定日 2017-03-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5841861号発明「テレビドアホンシステムの玄関子機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5841861号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5841861号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第5841861号の請求項2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5841861号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年2月28日に特許出願され、平成27年11月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人伊藤次郎により特許異議の申立てがされ、平成28年8月30日付けで取消理由が通知され、平成28年10月25日に意見書の提出があり、平成28年11月10日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年1月12日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人伊藤次郎に意見を求めたが、意見書は提出されなかった。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載「前記密着片は円盤状に形成されて周囲側部に周期的な凹凸を有する」を、
「前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、
前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」と訂正する。
(イ)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0007】に記載された「密着片は円盤状に形成されて周囲側部に周期的な凹凸を有する」とあるのを、「ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、密着片はレンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、弾性が形成される」に訂正する。

イ 請求項2に係る訂正
(ア)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(イ)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0010】を削除する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 請求項1に係る訂正
明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】には「密着片13bは板状に形成され、この前面にリング状の弾性部材18を配置してケース6の背部に密着させることで、開口されたカメラ窓17が気密封止される。尚、ケース6のカメラ窓17の裏面には、後方に突出した環状突起19が形成され、弾性部材18の密着を確実なものにしている。」と記載され、段落【0017】には、「密着片13bの径W2はレンズ鏡枠13のケース6から露出する先端径W1に対して大きな径で形成され、」と記載され、図3、図4を参酌すると、「前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」ことは、明細書に記載されているものと認められる。
また、訂正事項2は、訂正事項1に伴う願書に添付した明細書の訂正であるから、訂正事項1と同様に明細書に記載されているものと認められる。
訂正事項1の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「密着片」、「ケース」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、訂正事項2の訂正は、訂正事項1に伴う願書に添付した明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 請求項2に係る訂正
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項4は、訂正事項3に伴う願書に添付した明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1(以下「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。ただし、(A)?(H)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。

(本件発明1)
(A)居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するカメラとを有し、呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送すると共に、前記カメラの撮像映像を伝送するテレビドアホンシステムの玄関子機であって、
(B)前記カメラのレンズユニットは、画角180度以上の広角なエリアを撮像する複数のレンズから成る広角レンズ群と、前記広角レンズ群を支持するレンズ鏡枠と、前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持するためのレンズホルダとで構成され、
(C)前記広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置されると共に、
(D)前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え、
(E)更に前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、
(F)前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、
(G)前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成されることを特徴とする
(H)テレビドアホンシステムの玄関子機。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成28年11月10日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1、2に係る特許は、取り消されるべきものである。

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証(特開2010-93648号公報)には、「インターホン装置の玄関子機」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【請求項1】
来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を有すると共に、来訪者を撮像するためのカメラを備えたインターホン装置の玄関子機であって、
前記カメラの本体は玄関子機ケース内に配置され、左右180度の広角撮像を実施しても玄関子機ケースの前面が写り込むことがないよう、前記カメラのレンズ先端が、前記玄関子機ケースの前面より所定量突出して配置されて成ることを特徴とするインターホン装置の玄関子機。」

「【0001】
本発明はインターホン装置の玄関子機に関し、特に広角カメラを組み込んだ玄関子機に関する。」

「【0006】
そこで、カメラに広角カメラを使用して、来訪者の立ち位置によらず、またパン/チルト操作することなく、来訪者を常に撮像可能とする構成が考えられるが、来訪者の立ち位置によらず確実に来訪者を撮像可能とする為には、180°近い画角(180°近い左右方向まで撮像できるもの)が必要となる。」

「【0013】
本発明によれば、画角が略180°の超広角カメラを搭載しても、玄関子機ケースが映り込むことを無くすことができる。よって、カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させることができるし、モニタ映像に玄関子機が映る事がないので撮像された映像が見やすい。また、従来の玄関子機の構成に対して、カメラのレンズを前方に突出させるだけの僅かな変更で本発明を構成することが可能であり、既存の玄関子機の部材を使用して構成でき、コストの上昇を抑えることができる。」

「【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1?図3は、本発明に係る玄関子機の一例を示し、図1はカメラカバーを分離した状態の斜視図、図2は側面図、図3はカメラカバーを装着した部分斜視図である。各図において、1は玄関子機ケース、2は居住者を呼び出すための呼出ボタン、3は通話するためのマイクを収納したマイク部、4は通話するためのスピーカを収納したスピーカ部、5はカメラカバー、6はカメラである。呼出ボタン2、マイク部3、スピーカ部4、カメラ6は玄関子機ケース1のほぼ平坦に形成された前面に配置されている。」

「【0017】
一方、図5は図2に示すA-A線断面説明図であり、(a)は玄関子機全体、(b)はE部拡大図である。6aはカメラ6のレンズ、6bはカメラ本体であり、Mはカメラ6の中心線であり、撮像方向である玄関子機正面方向を向いている。尚、図5では玄関子機前面を上に向けている。
カメラ本体6bは玄関子機ケース1内に収容され、レンズ6aは玄関子機ケース1の前面よりD1だけ突出した配置となっている。具体的に、レンズ6aの前端はケース前面より3mm(=D1)突出して搭載されている。また、レンズ6aとカメラカバー5の距離D2は1mmとなっている。」

「【0019】
本発明の玄関子機に組み込まれるカメラ6は、中心線Mから90°方向まで撮像できる180°カメラを考えているが、カメラ6の玄関子機ケース1内への組み付けにおいて発生する組み付け誤差を考慮すると、100°方向を撮像しても玄関子機ケース1が映り込まない構成が望ましい。」

「【0024】
このように、カメラカバーを上述した形状とすることで、カメラ正面から100°の方向から光が入射された場合でも、玄関子機ケースが映り込むことがない。従って、画角が略180°の超広角カメラを搭載しても、玄関子機ケースが映り込むことがない。よって、カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させることができ、モニタ映像に玄関子機が映る事がないので撮像された映像が見やすい。
また、従来の玄関子機の構成に対して、カメラのレンズを前方に突出させるだけの僅かな変更で本発明を構成することが可能であり、既存の玄関子機の部材を使用して構成でき、コストの上昇を抑えることができる。」

「【図5】



甲第1号証には、「インターホン装置の玄関子機」が記載されており、この「インターホン装置の玄関子機」を甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)として認定する。甲1発明は以下の構成を有する。
・居住者を呼び出すための呼出ボタン(段落【0014】)
・来訪者を撮像するためのカメラ(【請求項1】、段落【0017】)
・来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を有する(【請求項1】)
・カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させる(段落【0013】)
・画角が180°の広角レンズ(段落【0006】、【0019】、【0024】)
・レンズを支持するレンズ鏡枠(図5(b)より、レンズ6aの周囲にレンズ6aを支持するレンズ鏡枠(レンズ6aに接した右上から左下の斜線によりハッチングされた部材)があると認められる。)
・レンズ鏡枠を玄関子機ケースに支持する(図5(a)より、レンズ鏡枠は玄関ケースに支持されていると認められる。)

以上まとめると、甲1発明は、次のとおりである。

(甲1発明)
(a)居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するためのカメラと、来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を有し、カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させるインターホン装置の玄関子機であって、
(b)画角が180°の広角レンズと、レンズを支持するレンズ鏡枠があり、
(c)レンズ鏡枠を玄関子機ケースに支持する
(d)ことを特徴とするインターホン装置の玄関子機

なお、(a)?(d)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。

イ 甲第2号証
甲第2号証(特開2009-216774号公報)には、「光学部品及び撮像ユニット」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0018】
撮像ユニット100は、図1に示すように、基板Pに実装されている撮像素子5と、撮像素子5に被写体光を導くレンズ群をなす第一レンズ1と第二レンズ2と第三レンズ3と、各レンズを所定の配置に支持する支持部材4と、光学部材としての第一レンズ1の外周面と支持部材4の内周面との間に介装され、光学部材の光軸方向と略直交する方向に圧縮される環状の封止部材であるOリング6と、第一レンズ1の下面に備えられている移動規制手段としての遮光板7と、撮像素子5及び支持部材4を覆うケース体としての外枠部材30等を備えている。
この撮像ユニット100は、例えば、車載用カメラとして車両や、監視カメラ用として監視装置など、各種機器に組み付けられるものである。
【0019】
撮像素子5は、例えば、CCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサであり、基板Pの上面に取り付けられている。
また、基板Pは固定部材8に固定されており、その基板Pに取り付けられているケーブル9は、所定の機器(車両、監視装置)に接続するために、外枠部材30の外側に延在するように備えられている。
なお、固定部材8と外枠部材30の間には弾性部材35が介在しており、基板Pや撮像素子5が外枠部材30に安定して支持されるようになっている。
【0020】
支持部材4は、例えば、変性PA樹脂やPPA樹脂からなる略円筒形状を呈する部材であり、その内周面側に光学部材が取り付けられる上部取付位置4a、中部取付位置4b、下部取付位置4cを有している。
【0021】
レンズ群は、被写体側となる最前部に位置する第一レンズ1と、撮像素子5側に位置する第三レンズ3と、第一レンズ1と第三レンズ3の間に位置する第二レンズ2と、からなる広角レンズ群を構成しており、第一レンズ1は支持部材4の上部取付位置4aに、第二レンズ2は支持部材4の中部取付位置4bに、第三レンズ3は支持部材4の下部取付位置4cに、それぞれ固定されている。
なお、第一レンズ1は、広角レンズ群の最前列に位置する負レンズまたは物体側凸形状のメニスカスレンズである。」

「【0027】
なお、支持部材4に第一レンズ1と第二レンズ2と第三レンズ3とが固定されて、レンズユニット20が構成されている。
そして、レンズユニット20における支持部材4の下部側の外周面が固定部材8に螺着されており、その支持部材4を固定部材8に螺入する程度を調整するように、レンズユニット20と基板Pとの距離を調節することによって、撮像素子5に対するレンズの位置合わせを行うことが可能になっている。
【0028】
外枠部材30は、前ケース体31と後ケース体32とからなり、前ケース体31の前方開口部31aから第一レンズ1が露出するようにレンズユニット20が配設された後、基板P側から前ケース体31に後ケース体32を取り付けることで、外枠部材30内にレンズユニット20や撮像素子5が収容されるようになっている。なお、前ケース体31の内周面と支持部材4の外周面との間にはゴムパッキン33が備えられ、前ケース体31と後ケース体32との接合部分にはゴムパッキン34が備えられており、それぞれ隙間が生じないように密着している。
この外枠部材30が光学部品22(レンズユニット20)を内部に収容することで、撮像ユニット100が構成される。」

「【図1】



甲第2号証に記載された監視カメラ用撮像ユニット(段落【0018】)は、次の構成を備えていると認められる(当該監視カメラ用撮像ユニットを以下「甲2発明」という。)。
・複数のレンズからなる広角レンズ群(段落【0021】)と複数のレンズを支持する略円筒形状の支持部材4(段落【0018】、【0020】)とからなるレンズユニット(段落【0027】)
・撮像素子5が実装された基板Pが固定された固定部材8(段落【0018】、【0019】)
・前ケース体31と後ケース体32からなる外枠部材30(段落【0018】、【0028】)
・固定部材8は外枠部材30に支持される(段落【0019】)
・支持部材4と固定部材8とが調整可能に螺合すること(段落【0027】)
・前ケース体31の前方開口部から第一レンズが露出するようにレンズユニットを配設(段落【0028】)
・前ケース体31の内周面と支持部材4の外周面との間にはゴムパッキン33が備えられる(段落【0028】)
・ゴムパッキン33が設けられている支持部材の部分は、円盤状の鍔部分であり、該鍔部分は支持部材4の先端の外形より大きい(図1、支持部材は略円筒形状(段落【0020】であるから、鍔部分は円盤状であると認められる。)

以上まとめると、甲2発明は、次のとおりである。

(甲2発明)
複数のレンズからなる広角レンズ群と複数のレンズを支持する略円筒形状の支持部材とからなるレンズユニットと、
撮像素子が実装された基板が固定された固定部材と、
前ケース体と後ケース体からなる外枠部材とを備え、
固定部材は外枠部材に支持され、
支持部材と固定部材とが調整可能に螺合し、
前ケース体の前方開口部から第一レンズが露出するようにレンズユニットを配設し、
前ケース体の内周面と支持部材の外周面との間にはゴムパッキンが備えられ、
ゴムパッキンが設けられている支持部材の部分は、円盤状の鍔部分であり、該鍔部分は支持部材4の先端の外形より大きい
監視カメラ用撮像ユニット

ウ 甲第3号証
甲第3号証(特開平10-137182号公報)には、結像レンズ群25が収納されたレンズ枠35を固定したレンズ枠支持筒40が、バヨネットマウント21の中央部分に形成されたネジ部に螺合されて取り付けられ(段落【0020】、【0021】)、レンズ枠支持筒40の鍔部の外周部に形成されたローレットに工具等を係合させてレンズ枠支持筒40を回転させてフォーカス調整する(段落【0022】)ことが記載されている。すなわち、『レンズ群を固定したレンズ枠支持筒を固定部(バヨネットマウントの中央部分)に螺合させ調整を行う構成において、レンズ枠支持筒の鍔部にローレットを設ける技術』が開示されている。

エ 甲第6号証
甲第6号証(特開2004-357102号公報)には、ローレットの溝として、段落【0006】に示される形状(周期的な凹凸)を設ける技術、すなわち、『ローレットの溝として、周期的な凹凸を設ける技術』が開示されている。

(4)対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成要件Aと構成aとを対比する。
甲1発明の「居住者を呼び出すための呼出ボタン」、「来訪者を撮像するためのカメラ」は、本件発明1の「居住者を呼び出すための呼出ボタン」、「来訪者を撮像するためのカメラ」に一致する。甲1発明の「インターホン装置の玄関子機」は、「カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させ」ており、映像を用いたインターホン装置の玄関子機であるから、本件発明1の「テレビドアホンシステムの玄関子機」に相当する。
甲1発明は、「来訪者が居住者を呼び出して通話する機能を有し」ているから、「呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送する」といえ、この点で本件発明1と一致する。
また、甲1発明は、「カメラの機能を発揮させて居室親機のモニタに確実に来訪者映像を表示させる」から、「カメラの撮像映像を伝送する」といえ、この点で本件発明1と一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するカメラとを有し、呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送すると共に、前記カメラの撮像映像を伝送するテレビドアホンシステムの玄関子機」として、一致する。

(イ)構成要件B、Cと構成b、cとを対比する。
甲1発明の「画角が180°の広角レンズ」は、「画角180度以上の広角なエリアを撮像する広角レンズ」といえるから、本件発明1と甲1発明とは、「カメラのレンズユニット」が「画角180度以上の広角なエリアを撮像する広角レンズ」で構成されている点で共通する。しかしながら、「広角レンズ」が、本件発明1においては「複数のレンズから成る広角レンズ群」であるのに対し、甲1発明においては、「複数のレンズから成る広角レンズ群」でない点で相違し、それに伴い、「レンズ鏡枠」が、本件発明1においては、前記広角レンズ群を支持するのに対し、甲1発明においては、前記広角レンズ群を支持するものではない点で相違する。
さらに、甲1発明においては、「前記広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置される」ものではなく、本件発明1と相違する。
ここで、広角レンズを玄関子機のケースに支持するにあたり、甲1発明では、広角レンズを支持するレンズ鏡枠をケースに支持していることから、広角レンズとレンズ鏡枠が「カメラのレンズユニット」を構成しているといえるのに対して、本件発明1では、広角レンズを支持するレンズ鏡枠をレンズホルダで支持した上でケースに支持していることから、広角レンズとレンズ鏡枠とレンズホルダが「カメラのレンズユニット」を構成しているといえる。
以上のように、甲1発明と本件発明1は、広角レンズとレンズ鏡枠とで構成されたレンズユニットを有する点で共通するが、本件発明1のレンズユニットがレンズホルダを更に有している点で相違する。

(ウ)構成要件D、E、F、Gについて
甲1発明は、構成D、E、F、Gを備えていない。
したがって、本件発明1は、「前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え」ているのに対し、甲1発明は、「前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え」ていない点で相違し、
本件発明1においては、「前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」のに対し、甲1発明においては、「前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」ものでない点で相違する。

(エ)構成要件Hと構成dとを対比する。
上記(ア)のとおり、本件発明1と甲1発明とは、「テレビドアホンシステムの玄関子機」として一致する。

(オ)以上まとめると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するカメラとを有し、呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送すると共に、前記カメラの撮像映像を伝送するテレビドアホンシステムの玄関子機であって、
前記カメラのレンズユニットは、画角180度以上の広角なエリアを撮像する広角レンズと、前記広角レンズを支持するレンズ鏡枠と、で構成され、前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持することを特徴とするテレビドアホンシステムの玄関子機。

(相違点1)
「広角レンズ」が、本件発明1においては、「複数のレンズから成る広角レンズ群」であるのに対し、甲1発明においては「複数のレンズから成る広角レンズ群」でなく、
それに伴い、「前記広角レンズを支持するレンズ鏡枠」における「前記広角レンズ」が、本件発明1においては、「前記広角レンズ群」であるのに対し、甲1発明においては「前記広角レンズ群」ではなく、
さらに、本件発明1においては、
「前記広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置される」のに対し、
甲1発明においては、
「前記広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置され」てない点

(相違点2)
「レンズユニット」に関し、
本件発明1においては、「前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持するためのレンズホルダとで構成され」ているのに対し、甲1発明においては、「前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持するためのレンズホルダとで構成され」ておらず、
また、本件発明1においては、
「前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え、
更に前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」
のに対し、甲1発明においては、
「前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え、
更に前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」
ものではない点

イ 判断
甲2発明は、上記(3)イのとおり、
「複数のレンズからなる広角レンズ群と複数のレンズを支持する略円筒形状の支持部材とからなるレンズユニットと、
撮像素子が実装された基板が固定された固定部材と、
前ケース体と後ケース体からなる外枠部材とを備え、
固定部材は外枠部材に支持され、
支持部材と固定部材とが調整可能に螺合し、
前ケース体の前方開口部から第一レンズが露出するようにレンズユニットを配設し、
前ケース体の内周面と支持部材の外周面との間にはゴムパッキンが備えられ、
ゴムパッキンが設けられている支持部材の部分は、円盤状の鍔部分であり、該鍔部分は支持部材4の先端の外形より大きい
監視カメラ用撮像ユニット」
であり、監視カメラ用撮像ユニットの発明であって、広角レンズの特定の構成と、該広角レンズをケースに保持する特定の構成を開示するものであるから、同様の技術分野の発明である甲1発明の広角レンズと、該広角レンズをケースに保持する構成に適用することは、当業者が容易に着想することである。
したがって、甲1発明に甲2発明の広角レンズの構成を適用することにより、甲1発明のレンズは、複数のレンズから成る広角レンズ群となり、広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、「レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置され」ることになる(相違点1)。
そして、甲1発明に甲2発明の広角レンズをケースに支持する構成を適用することにより、甲1発明の「前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持する」構成は、甲2発明の広角レンズをケースに支持する構成となり、本件発明1のレンズ鏡枠に相当する「支持部材」と螺合する「固定部材」は、本件発明1の「レンズホルダ」といえることとなり、さらに、「支持部材と固定部材とが調整可能に螺合すること」は「前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される」(構成要件E)といえることとなり、また、本件発明1の弾性部材に相当する「ゴムパッキン」が備えられている「支持部材」の鍔部分は、「前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片」(構成要件D)といえることになる。
なお、支持部材を固定部材に螺合する際、甲第3号証に記載の慣用技術により鍔部にローレットを設けて螺合を容易ならしめることは当業者が行い得る設計事項である。また、ローレットの形状を甲第6号証に記載のような周知の「周期的な凹凸」形状とすることは選択事項にすぎない。

しかしながら、本件発明1の「前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成る」構成(構成要件F)及び「前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成される」構成(構成要件G)は、甲2発明、甲第3号証?甲第13号証に開示されておらず、当該構成が、自明な事項であるとは認められない(相違点2)。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2発明、甲第3号証?甲第13号証に記載された技術から、当業者が容易になし得るものではない。

(5)特許異議申立理由について
特許異議申立理由は、本件発明1が、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び甲第3号証記載事項並びに周知技術(甲第4号証乃至甲第13号証)から容易想到であるというものであるが、容易想到でない理由は、上記(4)のとおりである。

4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
テレビドアホンシステムの玄関子機
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムの玄関子機に関し、詳しくは玄関子機にカメラを設けて玄関の状況を居室親機のモニタで確認できるテレビドアホンシステムの玄関子機に関する。
【背景技術】
【0002】
防犯ニーズの高まりから、来訪者の呼出時において来訪者を玄関子機のカメラで撮像し、その映像を居室親機のモニタで表示させ、居住者がモニタを見て来訪者を判別した後に応答する機能や、留守中に訪れた来訪者を録画して帰宅後にモニタにて確認する機能を備えたテレビドアホンシステムが普及している。
また、近年ではカメラの死角をなくすため、画角180度以上の広角レンズを備えたカメラで撮像し、見たい場所を電子ズームしたり、パン/チルトして確認できるテレビドアホンシステムも登場している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は広角レンズを備えた従来の玄関子機の横断面説明図を示し、カメラ部の断面を示している。図5において、31はカメラ30のレンズ、32はレンズを保護するレンズカバー、33は玄関子機のケースである。この図5に示すように、レンズ31はケース33前面から突出し、レンズカバー32はその前方に円弧状に突出して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-93648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画角180度以上のこの種のカメラは、玄関子機ケース33の映り込みを防ぐために、玄関子機ケース33の表面位置よりレンズ天頂を突出させる必要がある。そのため、図5に示すようにレンズカバー32が前方に大きく突出した形状となり傷つき易く、カメラ30の解像度を低下させるなど映像品位を劣化させる要因となっていた。
また、玄関子機のように太陽光線があたり易い場所に設置されるカメラ30は、レンズカバー32の界面で発生する太陽光の反射が、有害なゴーストやフレアの原因になり、更に映像品位を劣化させていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、太陽光が直接あたっても、有害なフレアやゴーストを低減でき、居室親機のモニタから表示されるカメラ撮像映像の視認性を確保できるテレビドアホンシステムの玄関子機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するカメラとを有し、呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送すると共に、カメラの撮像映像を伝送するテレビドアホンシステムの玄関子機であって、カメラのレンズユニットは、画角180度以上の広角なエリアを撮像する複数のレンズから成る広角レンズ群と、広角レンズ群を支持するレンズ鏡枠と、レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持するためのレンズホルダとで構成され、広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねてケースのカメラ窓から露出して配置されると共に、レンズ鏡枠がカメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え、更にレンズ鏡枠とレンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、密着片はレンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、弾性部材が密着片の前面に配置されて、環状突起が弾性部材に密着して防水構造が形成されることを特徴とする。
この構成によれば、カメラレンズはケースから露出した状態で固定されるため、周囲の光は直接レンズに入射し、側方からの光であってもフレアやゴーストが発生することがなく、カメラ側方の映像であっても明瞭な映像を出力できる。また、カメラ窓は弾性部材と密着片により封止でき、レンズカバーが無くても雨水等の浸入の恐れがない。
更に、レンズ鏡枠とレンズホルダとの螺合状態を回転して変更することでレンズの軸方向の長さを変更でき、フォーカス調整ができる。そしてこの回転操作は密着片の外周に形成した周期的な凹凸を利用してスムーズに実施できる。
【0008】
尚、レンズユニットの最前部に配置されるレンズは、ガラスレンズであれば十分な強度を有するためカバーが無くても傷は付き難いし、プラスチックレンズであっても近年の表面加工技術の向上により十分な強度を得ることができ、カバーが無くても傷がつき難く、そのようなレンズを使用することでカバーを無くすことが可能である。
【0009】
【0010】 (削除)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カメラレンズはケースから露出した状態で固定されるため、周囲の光は直接レンズに入射し、側方からの光であってもフレアやゴーストが発生することがなく明瞭な映像で撮像できる。また、カメラ窓は弾性部材と密着片により封止でき、レンズカバーが無くても、雨水等の浸入の恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る玄関子機の一例を示す正面図である。
【図2】A-A線断面説明図である。
【図3】B部拡大図である。
【図4】レンズを収容したレンズ鏡枠を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】従来の玄関子機の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るテレビドアホンシステムの玄関子機の一例を示す正面図であり、玄関子機1は居住者を呼び出すための呼出ボタン2、来訪者を撮像するためのカメラ3を備え、通話するためのマイク4及びスピーカ5がケース6の内部に設けられている。
テレビドアホンシステムは、玄関等の戸外に設置したこの玄関子機1と、住戸内に設置されて呼び出しに対して応答するため居室親機(図示せず)とで構成される。
【0014】
図2は図1のA-A線断面説明図、図3はB部の拡大図を示し、カメラ3の断面を示している。カメラ3は、レンズユニット10と撮像素子11、そして図示しないメモリやDSP等で構成され、レンズユニット10は、複数のレンズで構成されるレンズ群12、このレンズ群12を収容して支持するレンズ鏡枠13、レンズ鏡枠13を固定するレンズホルダ14により構成されている。
【0015】
レンズ群12は、画角180度以上の広角レンズ群であり、カメラ3は180度以上の範囲を撮像する広角カメラとなっている。そして、撮像素子11からの出力信号をメモリに保存するとともに、DSPにて歪み補正して所望の画像が居室親機に送出される。
レンズホルダ14はネジ止め孔14aを有し、ネジ15により基板16に固定される。
【0016】
レンズ鏡枠13は、円筒状に形成されたレンズ収納部13aを有し、その先端部近傍の周囲にはケース6に形成したカメラ窓17の隙間を気密封止して雨水の浸入を防止するための密着片13bがフランジ状に周設されている。密着片13bは板状に形成され、この前面にリング状の弾性部材18を配置してケース6の背部に密着させることで、開口されたカメラ窓17が気密封止される。尚、ケース6のカメラ窓17の裏面には、後方に突出した環状突起19が形成され、弾性部材18の密着を確実なものにしている。
【0017】
図4はレンズ群12を収容したレンズ鏡枠13を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示している。図4に示すように、密着片13bの径W2はレンズ鏡枠13のケース6から露出する先端径W1に対して大きな径で形成され、更に密着片13bの周囲側部には周期的な切り欠き13cが形成されている。具体的に、レンズ鏡枠13の先端径W1=16mmφ、密着片13bの径W2=23mmφで形成され、切り欠き13cは45°の等間隔で形成されている。
【0018】
また、レンズ鏡枠13の撮像素子11側である密着片13bの下部は、ネジ溝が設けられて雄ねじ部13dを形成している。一方、この雄ねじ部13dに対向するレンズホルダ14には、雌ねじが形成(図示せず)され、レンズホルダ14とレンズ鏡枠13とは螺合して連結されている。こうして、レンズホルダ14がレンズ鏡枠13を螺合により保持することで、フォーカス調整を可能としている。
【0019】
このように、レンズ鏡枠13の先端径W1に対して密着片13bの径W2を大きくすることで、ケース6との間で十分な密着エリアを確保すると共に、レンズ鏡枠13の回転操作をし易くしている。特に、密着片13bの外周に45°ごとに切り欠き13cを設けたことで、回転工具を係合させ易く、フォーカス調整がし易いし自動化調整機能にも拡張し易い。
尚、レンズ鏡枠13の径W1と密着片13bの径W2の関係は、W2がW1より大きければカメラ窓17の隙間を気密封止することは可能であるが、密着片13bの径W2が20mmφ以上であれば、回転操作し易いし弾性部材18の密着も良好となり、利便性が良い。
【0020】
そして、玄関子機1のケース6は、図2に示すように玄関子機1の前面側を形成する上ケース6aと壁側となる背部を形成する下ケース6bとで構成され、カメラ3が固定された基板16は、上ケース6aに組み付けられると、レンズ群12のうち最前部のレンズ12a(図3に示す)は上ケース6aのカメラ窓17から露出し、更に下ケース6bを組み付けることで、密着片13bと上ケース6aとで弾性部材18が圧縮され、カメラ窓17の気密性が維持される。
尚、最前部のレンズ12aは表面加工により高い表面強度を備えたプラスチックレンズが使用されている。また7は基台であり、ケース6を露出させて壁面に設置する場合等に使用される。
【0021】
このように、カメラ3のレンズ群12の最前部のレンズ12aは、ケース6から露出した状態で固定されるため、周囲の光は直接レンズに入射し、側方からの光であってもフレアやゴーストが発生することがなく、カメラ3の側方の映像であっても明瞭な映像を出力でき、居室親機のモニタの視認性を向上することができる。
また、カメラ窓17は弾性部材18と密着片13bにより封止でき、レンズカバーが無くても雨水等の浸入の恐れがないし、レンズ鏡枠13とレンズホルダ14との螺合状態を回転してレンズ群12の軸方向の長さを変更できるので、フォーカス調整ができる。
更に、この回転操作は密着片13bの外周に形成した周期的な凹凸を利用してスムーズに実施できるし、密着片13bは大きな径を有するため、回転操作し易いし密着面が広く十分な密着エリアを確保できる。
【0022】
尚、上記実施形態では、密着片13bを平坦な面で形成したが、弾性部材18の密着面にケース6に設けた環状突起19に合わせてレンズの光軸を中心にリング状に凹凸を設けて弾性部材18の密着性を更に上げても良い。また、密着片13bは円盤状に形成したが、四角形であっても良いし多角形としても良い。
【符号の説明】
【0023】
1・・玄関子機、2・・呼出ボタン、3・・カメラ、6・・ケース、10・・レンズユニット、12・・レンズ群(広角レンズ群)、12a・・最前部のレンズ、13・・レンズ鏡枠、13b・・密着片、13c・・切り欠き、14・・レンズホルダ、17・・カメラ窓、18・・弾性部材。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者を撮像するカメラとを有し、呼出操作を受けたら住戸内に設置されている居室親機に対して呼出信号を伝送すると共に、前記カメラの撮像映像を伝送するテレビドアホンシステムの玄関子機であって、
前記カメラのレンズユニットは、画角180度以上の広角なエリアを撮像する複数のレンズから成る広角レンズ群と、前記広角レンズ群を支持するレンズ鏡枠と、前記レンズ鏡枠を玄関子機のケースに支持するためのレンズホルダとで構成され、
前記広角レンズ群の最前部に配置されたレンズは、レンズカバーを兼ねて前記ケースのカメラ窓から露出して配置されると共に、前記レンズ鏡枠が前記カメラ窓周囲のケースとの間で弾性部材を介して防水構造を形成するための密着片を備え、
更に前記レンズ鏡枠と前記レンズホルダとは、相互にネジ溝を有して螺合により連結される一方、
前記ケースのカメラ窓の裏面には環状突起が形成されて成ると共に、前記密着片は前記レンズ鏡枠の露出する先端の外径より大きい円盤状の板体であって、周囲側部に周期的な凹凸を有し、
前記弾性部材が前記密着片の前面に配置されて、前記環状突起が前記弾性部材に密着して前記防水構造が形成されることを特徴とするテレビドアホンシステムの玄関子機。
【請求項2】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-15 
出願番号 特願2012-41965(P2012-41965)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (H04N)
P 1 651・ 853- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲徳▼田 賢二  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 冨田 高史
小池 正彦
登録日 2015-11-20 
登録番号 特許第5841861号(P5841861)
権利者 アイホン株式会社
発明の名称 テレビドアホンシステムの玄関子機  
代理人 上田 恭一  
代理人 上田 恭一  

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