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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B07B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B07B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B07B |
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管理番号 | 1327895 |
異議申立番号 | 異議2016-701031 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-11-04 |
確定日 | 2017-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5914179号発明「粉粒体材料の捕集装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5914179号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8〕について訂正することを認める。 特許第5914179号の請求項1、2、4ないし8に係る特許を維持する。 特許第5914179号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5914179号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成24年6月1日に出願され、当該出願は、平成28年4月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人原田淳司(以下、「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされ、平成28年12月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年2月20日に意見書の提出及び訂正の請求があった。 第2 訂正の適否についての判断 1. 訂正の内容 上記平成29年2月20日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を、単に「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1ないし7からなるものである(下線は、当審が付した訂正箇所である)。 (1) 訂正事項1 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に、「前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されていることを特徴とする」とあるのを、 「前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、前記フィルターの底部は、空気の流通を阻止する封止部とされていることを特徴とする」と訂正する。 (2) 訂正事項2 本件特許の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 訂正事項3、4 本件特許の特許請求の範囲の請求項4及び5に、それぞれ「請求項1乃至3のいずれか1項において」とあるのを、「請求項1または2において」と訂正する。 (4) 訂正事項5、6 本件特許の特許請求の範囲の請求項6及び7に、それぞれ「請求項1乃至5のいずれか1項において」とあるのを、「請求項1、2、4、5のいずれか1項において」と訂正する。 (5) 訂正事項7 本件特許の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至5のいずれか1項において、前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする」とあるうち、請求項1を引用するものについて、以下のとおり書き下し、請求項8としたものである。 「下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、 前記接続管には、前記捕集ホッパー内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の補修装置。」 2. 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項3で特定されていた事項を請求項1に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、新規事項を追加するものでも無く、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもないことは明らかである。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、新規事項を追加するものでも無く、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもないことは明らかである。 (3) 訂正事項3ないし6 訂正事項3ないし6は、訂正事項2により請求項3が削除されたことと整合させるために、引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、新規事項を追加するものでも無く、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもないことは明らかである。 (4) 訂正事項7 訂正事項7は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項7について、請求項1を引用する部分を書き下したものであるから、不明瞭な記載の釈明の該当する。また、新規事項を追加するものでも無く、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもないことは明らかである。 (6) 一群の請求項についての検討 本件訂正は、引用・被引用の関係にある請求項1、2、4ないし7と、独立形式請求項である請求項8を訂正するものであるから、それぞれ一群の請求項について訂正するものである。 (7) 特別の事情の有無について 本件訂正は、実質的には、本件訂正前の請求項1及び2を削除するものである(本件訂正後の請求項1、2は、実質的には、本件訂正前の請求項1、2を引用する請求項3である。)。したがって、特許法第120条の5第5項に規定される特別の事情があるときにあたるから、申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1ないし7〕及び〔8〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1. 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4ないし8に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし8にそれぞれ記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、 前記接続管には、前記捕集ホッパー内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、 前記フィルターの底部は、空気の流通を阻止する封止部とされていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項2】 請求項1において、 前記垂下管部は、前記捕集ホッパー内の平面視における略中心に位置するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項4】 請求項1または2において、 前記フィルターの前記垂下管部を囲む部位は、略直筒状に形成されていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項5】 請求項1または2において、 前記フィルターの前記垂下管部を囲む部位は、前記底部から上部側に向かうに従い拡開する拡開筒状に形成されていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項6】 請求項1、2、4、5のいずれか1項において、 前記材料導入口は、前記垂下管部内に二重管状に設けられ、かつ前記フィルターの底部を貫通するように設けられた材料導入管部の下端に設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項7】 請求項1、2、4、5のいずれか1項において、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項8】 下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、 前記接続管には、前記捕集ホッパー内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の補修装置。」 2. 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、上記平成28年12月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである(以下、本件訂正前の請求項に係る発明を、「本件特許発明1」等という。)。 (なお、甲第○号証を、以下「甲○」という。甲第○号証に記載された発明及び事項を、以下、それぞれ「甲○発明」及び「甲○事項」という。特に、本件特許異議申立書の11ページ13行ないし12ページ1行に記載された甲1発明を甲1発明1といい、同12ページ10及び11行に記載された構成を甲1発明1に加えた甲1発明を、甲1発明2といい、同12ページ20及び21行に記載された構成を甲1発明2に加えた甲1発明を、甲1発明3といい、同13ページ9及び10行に記載された構成を甲1発明3に加えた発明を、甲1発明4という。) なお、上記取消理由通知によって、本件特許異議申立てのすべての取消理由が通知された。 取消理由1 本件特許発明1ないし3及び5は、それぞれ以下の4.に示す甲1発明1ないし4にそれぞれ同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許を取り消すべきである。 取消理由2 本件特許発明3、4及び6は、以下の(1)ないし(3)に示したように、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (1)本件特許発明3は、甲1発明3及び甲2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許を取り消すべきである。 (2)本件特許発明4は、甲1発明1ないし甲1発明3のいずれか、及び、甲3事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 あるいは、本件特許発明3を引用する本件特許発明4は、甲1発明3、甲2事項、及び甲3事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、その特許を取り消すべきである。 (3)本件特許発明6は、甲1発明1ないし甲1発明4のいずれか、甲2事項、甲3事項又は甲2事項及び甲3事項、並びに、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許を取り消すべきである。 取消理由3 本件特許発明1の「材料導入口」は、「捕集ホッパー」の「下部側」に設けられている旨規定されている。 一方、本件特許発明1を引用する本件特許発明7の「材料導入口」は、「排出管」の内周面に設けられ、かつ、「捕集ホッパー」の下端側に設けられていると規定されている。すなわち、「排出管」は、「捕集ホッパー」に設けられたものではなく、別部材として「捕集ホッパー」の下端側に設けられたものである。したがって、「材料導入口」が「捕集ホッパー」自体に設けられたものであるか否かについて、両発明の間で矛盾しており、この点、特許を受けようとする発明が不明確なものとなっている。 <引 用 文 献 等 一 覧> 1. 特開2001-10725公報(甲第1号証) 2. 特開2010-188283号公報(甲第2号証) 3. 特開平9-29175号公報(甲第3号証) 4. 国際出願公開第2004/028711号公報(甲第4号証) 5. 特開2008-81694号公報(甲第5号証) 3. 取消理由3について 事案に鑑み、まずは取消理由3について検討する。 本件訂正後の請求項1及び7には、それぞれ以下の記載がある。 「【請求項1】 下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、・・・」 「【請求項7】 請求項1、2、4、5のいずれか1項において、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。」 上記請求項1に記載された「材料導入口」は、「捕集ホッパー」の「下部側」(下線は、当審で付した。)に設けられたものであるから、「材料導入口」が「捕集ホッパー」自体の下方の部分に設けられたものであるに加え、上下方向において、「捕集ホッパー」よりも下の方向であって、かつ、「捕集ホッパー」自体に設けられない「材料導入口」も、文言上包含し得る。そして、本件訂正後の請求項7の「前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられている」との記載は、上記請求項1に記載された「捕集ホッパー」の「下部側」の具体的な位置として、「捕集ホッパー」の下端側に設けられた排出管を選択したものに限定するものであると理解できる。 そして、本件特許の明細書等には、例えば、段落【0010】ないし【0014】、及び、【図1】に、「捕集ホッパー10」内部の下部に設けた「材料導入口24」が記載されている。加えて、同段落【0058】及び【0059】、並びに、【図6】には、「捕集ホッパー10A」の下部側に伸びる「排出管13A」の内周面に「材料導入口24A」を設けたものも記載されている。よって、上記のように理解しても、本件特許明細書及び図面との間で矛盾は生じない。 したがって、本件訂正発明1及び7は明確であるから、取消理由3によって、本件訂正発明1、2、4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件訂正発明8は、実質的には、本件特許発明1を引用する本件特許発明7であり、特許異議申立ての対象となった発明であるから検討する。本件訂正発明8には、「捕集ホッパー」の「下部側」に「材料導入口」を設ける事項と、「材料導入口」を、「捕集ホッパー下端側に設けられた排出管の内周面に開口するように」設ける事項が特定されている。そうすると上記と同様に、本件訂正発明8も明確であるから、取消理由3によって、取り消すことはできない。 4. 取消理由1について (1) 甲1の記載 甲1には、図面とともに、段落【0023】ないし【0025】、【0027】、【0030】、【0033】及び【0034】の記載がある。そうすると、甲1には、以下の甲1発明1、甲1発明2、甲1発明3及び甲1発明4が記載されている。 甲1発明1: 「ホッパ本体12の下部側にある管部16に気力輸送される粉粒体を供給する粉粒体供給口25を設け、 この粉粒体25よりも上部側にある上側ホッパ部15に、吸引式気力源に接続される一次側副吸引管34及びこの一次側副吸引管34に向かう気力輸送されている空気から粉粒体を分離させるパンチングフィルタ20を設けたホッパ本体12を備え且つ粉粒体から粉体を分離させるローダホッパであって、 前記一次側副吸引管34には、前記ホッパ本体12内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記パンチングフィルタ20は、前記垂下管部を囲むような皿状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の一次側吸引口19が対向するように配置されているローダホッパ。」 甲1発明2: 甲1発明1の「前記垂下管部」について、「前記垂下管部は、ホッパ本体12内の平面視における略中心に位置しているように設けられている」点を、限定した発明。 甲1発明3: 甲1発明1あるいは甲1発明2の「パンチングフィルタ20」について、「パンチングフィルタ20は、粒体の通過を阻止し粉塵のみを通過させることができるパンチ孔が形成された部分と、空気の流通を阻止する穴の存在しない部分からなる底部を有する」点を、限定した発明。 甲1発明4: 甲1発明1ないし甲1発明3の「パンチングフィルタ20の前記垂下管部を囲む部分」について、「パンチングフィルタ20の前記垂下管部を囲む部分は、底部から上部に移るに従い拡開する拡開形状に形成されている」点を、限定した発明。 (2) 対比・検討 ア. 本件訂正発明1について 本件訂正発明1と甲1発明3とを対比すると、両者は以下の点で少なくとも相違する。 <相違点> 本件訂正発明1は、「フィルターの底部」が、「空気の流通を阻止する封止部」とされているのに対し、甲1発明3は、「パンチングフィルタ20」の底部が、「粒体の通過を阻止し粉塵のみを通過させることができるパンチ孔が形成された部分と、空気の流通を阻止する穴の存在しない部分からなる」ものである点。 上記相違点について検討する。本件特許明細書には以下の記載がある。 「【0041】 また、本実施形態では、フィルターユニット30の底部34を、空気の流通を阻止する封止部34としている。従って、下方に向く水平面となる底部34への上述のような粉粒体材料の吸い付きを防止することができる。また、この底部34を空気流通可能な構成とした場合と比べて、下部側の材料導入口24から垂下管部26の吸引口27に向かう気流を底部34上側のフィルター(直筒状フィルター部)31廻りに分散させることができ、より効果的に粉粒体材料を流動させることができる。また、底部34の上面側に付着、堆積した粉塵等の落下を確実に防止することができ、この底部34の上面側に付着、堆積した粉塵等を吸引空気源6aに接続される空気管路接続管25を介してより効果的に吸引し、捕集ホッパー10外へ排出させることができる。」 そうすると、本件訂正発明1は、「フィルターの底部」を「空気の流通を阻止する封止部」としたことで、特に、上記「下部側の材料導入口24から垂下管部26の吸引口27に向かう気流を底部34上側のフィルター(直筒状フィルター部)31廻りに分散させることができ、より効果的に粉粒体材料を流動させることができる」との効果を奏するから、上記相違点は実質的な相違点である。したがって、本件訂正発明1は、甲1発明3と同一ではない。 また、甲1発明1及び2のパンチフィルタの底部は、上記相違点に係る甲1発明3の構成である「粒体の通過を阻止し粉塵のみを通過させることができるパンチ孔が形成された部分と、空気の流通を阻止する穴の存在しない部分からなる」ものですらないから、本件訂正発明1は、甲1発明1あるいは甲1発明2と同一であるとはいえない。 甲1発明4は、パンチフィルタの底部は、上記甲1発明3と同じ構成を備えたものであるから、上記相違点で、本件訂正発明1と甲1発明4と相違する。したがって、本件訂正発明1は、甲1発明4と同一であるとはいえない。 イ. 本件訂正発明2及び5について 本件訂正発明2及び5の各々は、本件訂正発明1を直接あるいは間接に引用するものである。上記ア.で示したように、本件訂正発明1は、甲1発明1ないし甲1発明4と同一であるとはいえないから、本件訂正発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定したものである本件訂正発明2及び5も、甲1発明1ないし甲1発明4と同一であるとはいえない。 (3) 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2及び5は、取消理由1によって取り消すことはできない。 5. 取消理由2について (1)甲1の記載、対比 上記4.(1)に示したように、甲1には、甲1発明1ないし甲1発明4がそれぞれ記載されている。 訂正前の請求項3は、訂正後の請求項1になっているので、まず、本件訂正発明1と甲1発明3とを対比すると、少なくとも上記4.(2)ア.に示した<相違点>において、本件訂正発明1と甲1発明3は相違する。 (2)判断 甲1には、以下の記載がある。 「【0008】 本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、吸引式気力源の吸引によって、常に一定量の粉粒体を導入できながら、粉塵と粒体との分離および粒体の混合を簡易かつ十分に行なうことができ、しかも、大気中の粉塵や水分などの混入がない、ローダホッパを提供することにある。」 「【0025】上側ホッパ部15の上端の開口部分は、上蓋板18により閉鎖されており、この上蓋板18の中央部分には、吸引管14が接続される一次側吸引口19が形成されている。また、この上蓋板18の裏面側には、この一次側吸引口19を所定の間隔を隔てて覆うようにして形成される皿状のパンチングフィルタ20が設けられている。このパンチングフィルタ20は、その目的および用途に応じて径の大きさが異なるが、粒体の通過を阻止し粉塵のみを通過させることができるパンチ孔が多数形成されている。」 そうすると、甲1記載の「パンチングフィルタ20」が、「空気の流通を阻止する」ものであると、上記「粉塵と粒体との分離」との作用を奏することができないことは明らかである。したがって、「パンチングフィルタ20」を上記<相違点>に係る構成である「空気の流通を阻止する」ものとすることは、「粉塵と粒体との分離」する作用を損なうものであり、阻害事由が存在するといえる。 さらに、甲1発明1及び甲1発明2に特定された「パンチングフィルタ20」に、「パンチ孔が多数形成されている」との事項は明記されてはいないものの、上記甲1記載の作用を奏するためには、少なくとも「パンチングフィルタ20」が、「空気の流通を阻止する」ものであってはならないことが当業者には明らかである。 以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1は、甲1発明1ないし甲1発明3のいずれか、及び、甲3事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。そして、本件訂正特許発明1を引用する本件特許発明6は、甲1発明3、甲2事項、及び、甲3事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、4、6は、取消理由2によっては取り消すことができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件訂正後の本件請求項1、2、4ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、4ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、 前記接続管には、前記捕集ホッパー内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、 前記フィルターの底部は、空気の流通を阻止する封止部とされていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項2】 請求項1において、 前記垂下管部は、前記捕集ホッパー内の平面視における略中心に位置するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 請求項1または2において、 前記フィルターの前記垂下管部を囲む部位は、略直筒状に形成されていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項5】 請求項1または2において、 前記フィルターの前記垂下管部を囲む部位は、前記底部から上部側に向かうに従い拡開する拡開筒状に形成されていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項6】 請求項1、2、4、5のいずれか1項において、 前記材料導入口は、前記垂下管部内に二重管状に設けられ、かつ前記フィルターの底部を貫通するように設けられた材料導入管部の下端に設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項7】 請求項1、2、4、5のいずれか1項において、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 【請求項8】 下部側に空気輸送される粉粒体材料を受け入れる材料導入口を設け、この材料導入口よりも上部側に吸引空気源に接続される接続管及びこの接続管に向かう輸送空気から粉粒体材料を分離させるフィルターを設けた捕集ホッパーを備えた粉粒体材料の捕集装置であって、 前記接続管には、前記捕集ホッパー内に垂れ下がるように配置された垂下管部が設けられており、 前記フィルターは、前記垂下管部を囲むような形状で、その下端に底部を設けた形状とされ、かつ、その底部に前記垂下管部の吸引口が対向するように配置されており、 前記材料導入口は、前記捕集ホッパーの下端側に設けられた排出管の内周面において開口するように設けられていることを特徴とする粉粒体材料の捕集装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-03-29 |
出願番号 | 特願2012-125863(P2012-125863) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B07B)
P 1 651・ 113- YAA (B07B) P 1 651・ 537- YAA (B07B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 河内 誠 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 久保 克彦 |
登録日 | 2016-04-08 |
登録番号 | 特許第5914179号(P5914179) |
権利者 | 株式会社松井製作所 |
発明の名称 | 粉粒体材料の捕集装置 |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 奥村 公敏 |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 奥村 公敏 |