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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1327925 |
異議申立番号 | 異議2017-700056 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-01-20 |
確定日 | 2017-05-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5967160号発明「減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5967160号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第5967160号は、平成26年9月16日に出願された特願2014-187582号の特許請求の範囲に記載された請求項1?7に係る発明について、平成28年7月15日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1?7に係る特許に対し、特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。 第2.本件発明 本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1?7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 【請求項1】 8?1mm超のスピネル粒子の配合量が20?70質量%、1?0.3mmのスピネル粒子の配合量が30?50質量%、0.3mm未満のスピネル粒子の配合量が30質量%以下の範囲内にあり、その合計量が75?99.5質量%及びカーボン0.5?25質量%を含有するスピネル-カーボン質煉瓦からなることを特徴とする、減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項2】 二次精錬処理後の取鍋スラグの組成が、塩基度(CaO/SiO_(2)質量比)0.5?3.0、Al_(2)O_(3)含量20?40質量%となる条件下で操業される二次精錬設備に使用される、請求項1記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項3】 スピネルの0.3mm未満の粒子として0.01mm以下のスピネル微粉を30質量%以下の量で使用する、請求項1または2記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項4】 0.01mm以下のスピネル微粉を5?25質量%の量で使用する、請求項3記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項5】 スピネルが理論組成を有するスピネルまたはアルミナリッチスピネルである、請求項1ないし4のいずれか1項記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項6】 アルミナリッチスピネルのMgO含有量が7質量%以上28.3質量%未満、Al_(2)O_(3)含有量が71.7質量%を超え93質量%以下の範囲内にある、請求項5記載の減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。 【請求項7】 減圧処理を行うための二次精錬設備の内張りライニング構造において、二次精錬設備の少なくともスラグライン部、湯面近傍に、請求項1ないし6のいずれか1項記載の減圧処理を行うための二次精錬設備用内張り耐火物を配設してなることを特徴とする減圧処理を行うための二次精錬設備の内張りライニング構造。 第3.申立理由 特許異議申立人は、証拠として、下記の甲第1?4号証(以下、「甲1?4」という。)を提出し、本件発明1?7は、甲1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。 甲1:中国特許出願公開第101691303号明細書 甲2:国際公開第2014/119593号 甲3:特開2002-241182号公報 甲4:特開2006-200027号公報 第4.当審の判断 1.甲号証の記載 甲1抜粋(訳文) 【0006】本発明の目的は、マグネシアアルミナスピネルがMgAlONおよび炭素と結合した不焼成れんがを追求することにあり、このような不焼成れんがは、れんがの黒鉛含有量を低減した後、高温真空の精錬条件下で安定的に使用することができる。 【0015】前記マグネシアスピネルは熱膨張率が低く、融点が2135℃にまで達し、塩基性スラグに対する耐食性が、類似した熱膨張率のコランダムやアルミナ質材料よりも著しく優れている。・・・ 【0025】実施例2:マグネシアリッチな電融マグネシアアルミナスピネル(Al_(2)O_(3) 64?66%、MgO 33?34%)であって、粒度が5?3mmのもの25%、3?1mmのもの25%、1?0mmのもの25%、325メッシュのもの15%;粒度が200メッシュのMgAlON4%;カーボンブラック1%;熱硬化性フェノール樹脂液体2.5%;ピッチ粉末2.5%を含有する。 【0026】予め、マグネシアアルミナスピネル(325メッシュ)、MgAlON(200メッシュ)、・・・窯出しして該れんがを包装する。該れんがはRH精錬炉の下部槽に用いることができ、剥落しにくく使用寿命が長いという特徴を有する。 甲2抜粋 [0010]以上に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、MgO-Cれんがの一層の緻密性向上(気孔率低減)を図り、今までになかった耐用性の高いMgO-Cれんがの提供をすることである。 [0016]また、マグネシア原料は加熱、冷却の過程で膨張、収縮するが、周囲の黒鉛よりも膨張率が大きいため収縮する際にその周囲に空隙が生成する。粒径1mm超の粗粒の周囲には比較的大きな空隙が生成し容易に開放気孔化してしまい見かけ気孔率の上昇が大きいことから、粒径1mm超の粗粒は少なく、粒径0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量が多いほうが好ましい。具体的には、その中間粒の配合量はマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で35重量%以上さらに43重量%以上が好ましい。 2.引用発明の認定 甲1の【0025】【0026】には、RH精錬炉の下部槽に用いることができるれんがの実施例として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「マグネシアリッチな電融マグネシアアルミナスピネル(Al_(2)O_(3) 64?66%、MgO 33?34%)であって、粒度が5?3mmのもの25%、3?1mmのもの25%、1?0mmのもの25%、325メッシュのもの15%;粒度が200メッシュのMgAlON4%;カーボンブラック1%;熱硬化性フェノール樹脂液体2.5%;ピッチ粉末2.5%を含有するRH精錬炉の下部槽用れんが。」 3.発明の対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「マグネシアリッチな電融マグネシアアルミナスピネル」「RH精錬炉の下部槽」「れんが」はそれぞれ、本件発明1の「スピネル粒子」「減圧を伴う二次精錬設備」「耐火物」に相当し、引用発明の「カーボンブラック」及び「ピッチ粉末」に「熱硬化性フェノール樹脂液体」が加熱により炭化したものはいずれも、本件発明1の「カーボン」に相当する。 してみると、フェノール樹脂が炭化により減量することを考慮しても、本件発明1のうち、 「8?1mm超のスピネル粒子の配合量が20?70質量%、1?0.3mmのスピネル粒子の配合量、0.3mm未満のスピネル粒子の配合量、その合計量が75?99.5質量%及びカーボン0.5?25質量%を含有するスピネル-カーボン質煉瓦からなる減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物。」 の点は引用発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点:本件発明では、「1?0.3mmのスピネル粒子の配合量が30?50質量%、0.3mm未満のスピネル粒子の配合量が30質量%以下の範囲内にあ」るのに対し、引用発明では、「マグネシアリッチな電融マグネシアアルミナスピネル」の配合量が、「粒度が1?0mmのもの25%、325メッシュのもの15%」である点。 4.相違点の判断 上記相違点に関し、325メッシュは0.043mmであるから、引用発明の「マグネシアリッチな電融マグネシアアルミナスピネル」の配合量は、正しくは「粒度が1?0.043mmのもの25%、0.043mm以下のもの15%」であると認められる。 してみると、粒度が0.3?0.043mmのものの配合量が不明ではあるものの、引用発明は、1?0.3mmのスピネル粒子の配合量が30質量%未満であると認められる。 これについて、申立人は、甲2の[0010][0016]に、MgO-Cれんがにおいて、粒径0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量を35重量%以上にすることで緻密性が向上することが記載されているから、引用発明において、1?0.3mmのスピネル粒子の配合量を増やすことは容易であると主張している。 そこで検討するに、甲2の[0016]には、MgO-Cれんがにおいて中間粒の配合量を増やす理由が、マグネシアの熱膨張率が炭素に比べ大きいためであると記載されているが、甲1の【0006】【0015】には、引用発明で使用しているマグネシアスピネルは熱膨張率が低く、また、引用発明は黒鉛含有量も少ないことが記載されている。 してみると、甲2の上記記載は、引用発明において、中間粒の配合量を増やすことを示唆するものとはいえない。 また、甲3,4には、マグネシアスピネルれんがにおいて、1?0.3mmのスピネル粒子の配合量を30質量%以上にすることについて記載も示唆もない。 したがって、引用発明において上記相違点を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、上記相違点に係る発明特定事項を有する本件発明1?7は、甲1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由には理由がない。 第5.むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-05-02 |
出願番号 | 特願2014-187582(P2014-187582) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C04B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 立木 林、阪野 誠司、佐溝 茂良 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 瀧口 博史 |
登録日 | 2016-07-15 |
登録番号 | 特許第5967160号(P5967160) |
権利者 | 品川リフラクトリーズ株式会社 |
発明の名称 | 減圧を伴う二次精錬設備用内張り耐火物 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 大宅 一宏 |
代理人 | 特許業務法人英和特許事務所 |